JP4197871B2 - 放射線イメージセンサ及びシンチレータパネル - Google Patents

放射線イメージセンサ及びシンチレータパネル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用等で用いられる放射線画像を検出するイメージセンサ及び放射線画像をイメージセンサで検出可能な光画像に変換するシンチレータパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
医療、工業用のX線撮影では、従来、X線感光フィルムが用いられてきたが、利便性や撮影結果の保存性の面から放射線検出素子を用いた放射線イメージングシステムが普及してきている。このような放射線イメージングシステムにおいては、複数の画素を有する放射線検出素子を用いて放射線による2次元画像データを電気信号として取得し、この信号を処理装置により処理して、モニタ上に表示している。代表的な放射線検出素子は、1次元あるいは2次元に配列された光検出器上にシンチレータを配して、入射する放射線をシンチレータで光、例えば可視光に変換して、検出する仕組みになっている。
【0003】
典型的なシンチレータ材料であるCsIは、吸湿性材料であり、空気中の水蒸気(湿気)を吸収して溶解する。この結果、シンチレータの特性、特に解像度が劣化するため、シンチレータを湿気から保護する構造を採用する必要がある。このようなシンチレータを湿気から保護する構造としては、特開平5−196742号公報や特開平5−242841号公報、国際公開番号WO98/36290号及び同36291号公報にそれぞれ開示された技術が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−196742号公報や特開平5−242841号公報に開示された技術は、防湿構造の形成が容易ではない。国際公開番号WO98/36290号及び同36291号公報に開示された技術の場合は、これらの問題は解消されるが、強度の点で充分とはいえない。
そこで、本発明は、耐湿性と強度を充分に兼ね備えた保護手段を有する放射線イメージセンサ及びシンチレータパネルを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る放射線イメージセンサは、(1)複数の受光素子が1次元あるいは2次元的に配列されて構成されているイメージセンサと、(2)このイメージセンサの受光表面上に柱状構造で形成された放射線をこのイメージセンサで検出可能な波長帯域を有する光に変換するシンチレータと、(3)シンチレータの柱状構造を覆って全面に密着形成されている保護膜と、(4)このシンチレータの周りにシンチレータから離隔して配置され、保護膜をイメージセンサ上に固定している枠と、(5)この枠によりこの保護膜を挟んでシンチレータおよびイメージセンサと反対側にその表面が前記イメージセンサの受光表面と略平行になるように固定配置されている放射線透過板と、を備えており、枠と放射線透過板との間には一部に開口部を設けていることを特徴とする。
【0006】
一方、本発明に係るシンチレータパネルは、(1)基板と、(2)基板上に柱状構造で形成され、放射線を前記基板を透過しうる光に変換するシンチレータと、(3)シンチレータの柱状構造を覆って全面に密着形成されている保護膜と、(4) シンチレータの周りにシンチレータから離隔して配置され、保護膜をイメージセンサ上に固定している枠と、(5)枠により保護膜を挟んで基板と反対側にその表面が前記基板の表面と略平行になるように固定配置されている放射線透過板と、を備えており、枠と放射線透過板との間には一部に開口部を設けていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る放射線イメージセンサは、このシンチレータパネルと、基板を透過した光像を検出する検出器を組み合わせたものでもよい。
【0008】
本発明に係るシンチレータパネル及び放射線イメージセンサにおいては、保護膜がシンチレータを覆って密着形成されているので、シンチレータは湿気から好適に保護される。さらに、保護膜の上に固定配置された放射線透過板により保護膜を覆うため、強度も確保される。さらに、保護膜、放射線透過板が枠を介して固定されているので、製造が容易であるほか、全体の強度確保にも資する。
【0009】
枠と放射線透過板との間には一部に開口部を設けることより、放射線透過板とシンチレータ周囲との間の空間は密閉されないので、製造時に熱処理等を行う際に、放射線透過板や基板、イメージセンサの変形、破損が防止される。
【0010】
この放射線透過板は、シンチレータで発生される光に対して反射性を有することが好ましく、例えば、金属板や放射線透過基板上に反射膜、例えば金属膜を有しているものが適用できる。ここで、放射線透過基板は、ガラス、樹脂、炭素性基板のいずれかであることが好ましい。
【0011】
放射線透過板を光反射性とすることにより、シンチレータで発生した光のうち放射線入射面側へ逆行した光が再び、シンチレータ側に戻されるため、シンチレータから出力される可視光像の出力強度を向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。また、各図面における寸法、形状は実際のものとは必ずしも同一ではなく、理解を容易にするため誇張している部分がある。
【0013】
図1に、本発明に係る放射線イメージセンサの第一の実施形態の断面図を、図2にその一部拡大図、図3にその上面図を示す。
【0014】
この放射線イメージセンサ9の固体撮像素子1は、絶縁性、例えばガラス製の基板11上に、光電変換を行う受光素子12が2次元上に配列されて、受光部を形成している。この受光素子12は、アモルファスシリコン製のフォトダイオード(PD)や薄膜トランジスタ(TFT)から構成されている。
【0015】
固体撮像素子1の受光部上には、入射した放射線を所定の波長帯域を有する光(可視光のみでなく、紫外線、赤外線等の所定の波長の電磁波を含む)に変換する柱状構造のシンチレータ2が形成されている。シンチレータ2には、各種の材料を用いることができるが、可視光を発光し、その発光効率が良いTlドープのCsI等が好ましい。このシンチレータ2の各柱状構造の頂部は図2に示されるように平らではなく、頂部に向かって尖った形状をなしている。
【0016】
シンチレータ2の柱状構造を覆ってその隙間まで入り込み、シンチレータ2を密閉するように保護膜3が形成されている。そして、その表面には微細な凹凸が形成されている。この保護膜3は、X線を透過し、水蒸気を遮断する材料、例えばポリパラキシリレン樹脂(スリーボンド社製、商品名パリレン)、特にポリパラクロロキシリレン(同社製、商品名パリレンC)を用いることが好ましい。パリレンによるコーティング膜は、水蒸気及びガスの透過が極めて少なく、撥水性、耐薬品性も高いほか、薄膜でも優れた電気絶縁性を有し、放射線、可視光線に対して透明であるなど保護膜3にふさわしい優れた特徴を有している。
【0017】
パリレンによるコーティングの詳細については、スリーボンド・テクニカルニュース(平成4年9月23日発行)に記されており、ここでは、その特徴を述べる。
【0018】
パリレンは、金属の真空蒸着と同様に真空中で支持体の上に蒸着する化学的蒸着(CVD)法によってコーティングすることができる。これは、原料となるジパラキシリレンモノマーを熱分解して、生成物をトルエン、ベンゼンなどの有機溶媒中で急冷しダイマーと呼ばれるジパラキシリレンを得る工程と、このダイマーを熱分解して、安定したラジカルパラキシリレンガスを生成させる工程と、発生したガスを素材上に吸着、重合させて分子量約50万のポリパラキシリレン膜を重合形成させる工程からなる。
【0019】
パリレン蒸着と金属の真空蒸着には、2つの大きな違いがある。まず、パリレン蒸着時の圧力は、金属真空蒸着の場合の圧力約0.1Paに比べて高い約10〜20Paであること、そして、パリレンの蒸着の適応係数が金属蒸着の適応係数1に比べて2桁から4桁低いことである。このため、蒸着時には、単分子膜が被着物全体を覆った後、その上にパリレンが蒸着していく。したがって、0.2μm厚さからの薄膜をピンホールのない状態で均一な厚さに生成することができ、液状では不可能だった鋭角部やエッジ部、ミクロンオーダの狭い隙間へのコーティングも可能である。また、コーティング時に熱処理等を必要とせず、室温に近い温度でのコーティングが可能なため、硬化に伴う機械的応力や熱歪みが発生せず、コーティングの安定性にも優れている。さらに、ほとんどの固体材料へのコーティングが可能である。
【0020】
この保護膜3上には、放射線透過材41に反射膜42をコーティングして形成された放射線透過板4が反射膜42側表面(反射面)を保護膜3側に向けて配置されている。ここで、反射面と固体撮像素子1の受光表面とは略平行に配置される。保護膜3の表面は前述したように微細な凹凸が存在するので、保護膜3の表面と放射線透過板4(反射膜42)の表面との間には空間5が形成される。放射線透過材41としては、ガラス、塩化ビニル等の樹脂、炭素性基板等が好適に使用できる。また、反射膜42は蒸着等で形成された金属膜や誘電体多層膜が好適に使用でき、金属膜としては、例えばアルミ蒸着膜が光反射率が高く好ましい。
【0021】
この放射線透過板4は、枠6により固体撮像素子1の表面に固定されている。この枠6は、図1、図3に示されるように、シンチレータ2の周囲に、シンチレータ2を取り囲むようにその側面から離隔して配置されている。この枠6は、固体撮像素子1に近い側から6a、6b、6cの三層構造をなしており、第一層6aと第二層6bとの間に保護膜3が挟み込まれてその外縁部が固定されている。この枠6には、シリコン樹脂である信越化学製のKJR651あるいはKE4897、東芝シリコン製TSE397、住友3M製DYMAX625T等を用いることが好ましい。これらは、半導体素子の機械的、電気的保護のための表面処理用に広く用いられており、保護膜3との密着性も高いからである。あるいは、保護膜3との接着性が良好な樹脂、例えばアクリル系接着剤である協立化学産業株式会社製WORLD ROCK No.801−SET2(70,000cPタイプ)を用いてもよい。この樹脂接着剤は、100mW/cm2の紫外線照射により約20秒で硬化し、効果皮膜は柔軟かつ十分な強度を有し、耐湿、耐水、耐電触性、耐マイグレーション性に優れており、各種材料、特にガラス、プラスチック等への接着性が良好という好ましい特性を有する。もちろん、層ごとに適切な素材、樹脂、接着剤を選択して組み合わせてもよく、第一層6a、第二層6bの素材としては金属枠やガラス製の枠を用いてもよい。さらに、第一層6については、固体撮像素子1と一体成形してもよい。
【0022】
枠6の第三層6cは、枠6の第一層6a、第二層6bと放射線透過板4とを接合する役目を果たす。そして、第三層6cは、放射線透過板4の外縁全部を覆っている必要はなく、例えば、固体撮像素子1の隣接する二辺に沿って電極部13が配置されている場合、この電極部13が配置されていない側の放射線透過板4の一辺側に、第三層6cを設けず、内部の空間5と連通する開口部51を一ヶ所または複数箇所設けるようにしてもよい。
【0023】
放射線透過板4を設けることにより、薄膜である保護膜3を誤って傷つけることが防止され、確実に保護できるとともに、放射線イメージセンサの強度を確保することもできる。その結果、取り扱いも容易になるという利点を有する。
【0024】
次に、図1〜図3と図4A〜図4Dを参照して、この実施形態の製造工程について説明する。まず、図4Aに示されるように固体撮像素子1の受光面(受光素子12の形成側)上にTlをドープしたCsIの柱状結晶を蒸着法によって600μmの厚さだけ成長させることによりシンチレータ2を形成する。
【0025】
その後、シンチレータ2が蒸着された固体撮像素子1を200〜210℃でアニール処理した後に、シンチレータ2の周辺に枠状にUV硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、枠6の第一層6aを形成する。この枠形成には、例えば、岩下エンジニアリング製AutoShooter-3型のような自動X−Yコーティング装置を用いるとよい。この時に、上部に形成される保護膜3との密着性をさらに向上させるため、枠6の表面を粗面処理すればより好ましい。粗面処理としては、筋をいれたり、表面に多数の小さなくぼみを形成する処理がある。
【0026】
シンチレータ2を形成するCsIは、吸湿性が高く、露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して溶解してしまう。そこで、これを防止するために、CVD法により厚さ10μmのパリレンを蒸着して固体撮像素子1を覆い、保護膜3を形成する。CsIの柱状結晶には図2に示されるように隙間があるが、パリレンはこの狭い隙間まで入り込む。この結果、保護膜3が、シンチレータ2に密着形成される。さらに、パリレンコーティングにより、凹凸のあるシンチレータ2表面に略均一な厚さの精密薄膜コーティングが得られる。また、パリレンのCVD形成は、前述したように、金属蒸着時よりも真空度が低く、常温で行うことができるため、加工が容易である。
【0027】
こうして形成した保護膜3を図4Bに示されるように枠6の第一層6aの長手方向に沿ってカッターで切断する。枠6の第一層6aで凸部が形成されているため、切断箇所の確認が容易なほか、枠6の第一層6aの厚みの分だけカッターを挿入する際の余裕があるため、枠6の下にある固体撮像素子1を傷つけるおそれがなくなり、加工が簡単になり、製品の歩留まりが向上する。そして、この切断部から外側及び入射面裏側に形成された保護膜3を除去する。
【0028】
その後、保護膜3の外周部と露出した枠6の第一層6aを覆うようにアクリル樹脂を塗布して紫外線照射により硬化させることで図4Cに示されるように枠6の第二層6bを形成する。このとき、第二層6bの高さがシンチレータ2の頂面より0.5mm程度高くなるよう形成する。
【0029】
このように枠6の第一層6aと第二層6bとで保護膜3を挟み込むことで、固体撮像素子1上への保護膜3の密着性がより一層向上して好ましい。この結果、保護膜3によりシンチレータ2が完全に密封されるので、シンチレータ2への水分の侵入を確実に防ぐことができ、シンチレータ2の吸湿劣化による素子の解像度低下を防ぐことができる。
【0030】
次に、図4Cに示されるように厚さ0.4mmのガラス板からなる放射線透過材41の片側表面にアルミを厚さ1000Å蒸着して反射膜42が形成されている放射線透過板4をその反射面、つまり反射膜42形成面が保護膜3側に向くように固体撮像素子1上に配置する。このとき、固体撮像素子1の受光面と反射膜42の反射表面が略平行で、保護膜3と反射膜42とが接触あるいは近接するよう配置する。そして、図4Dに示されるように放射線透過板4と枠6の第二層6bとの間にUV硬化樹脂を塗布して紫外線を照射して硬化させることで第三層6cを形成し、放射線透過板4を固体撮像素子1上に固定する。このとき、固体撮像素子1の電極部13を設けていない側に位置する放射線透過板4の一辺側で一部にUV効果樹脂を塗布しないことにより、開口部51を設けることができる。こうして図1に示される本実施形態の放射線イメージセンサ9が得られる。
【0031】
こうして製造される放射線イメージセンサ9に熱処理を行う必要がある場合や、温度の変動する環境で使用する場合、開口部51を通じて空間5内へと空気の出入りを確保できるので、空間5内の空気の膨張、収縮に伴う放射線透過板4をはじめとする放射線イメージセンサ9の構成部材の変形を抑制することができる。
【0032】
続いて、本実施形態の動作について説明する。入射面、つまり図1、図2において上側から入射したX線(放射線)は、放射線透過板4(放射線透過材41と反射膜42)、空間5、保護膜3を透過してシンチレータ2に達する。このX線は、シンチレータ2で吸収され、X線の光量に比例した可視光が放射される。放射された可視光のうち、X線の入射方向に逆行した可視光は、保護膜3の界面で一部が反射されて再びシンチレータ2に戻ってくる。そして、保護膜3から放出された可視光も反射膜42で反射されて再度シンチレータ2に戻る。このため、シンチレータ2で発生した可視光はほとんど全てが、受光素子2へと入射する。このため、効率の良い高感度の測定が可能となる。
【0033】
各々の受光素子2では、光電変換により、この可視光の光量に対応する電気信号が生成されて一定時間蓄積される。この可視光の光量は入射するX線の光量に対応しているから、つまり、各々の受光素子2に蓄積されている電気信号は、入射するX線の光量に対応することになり、X線画像に対応する画像信号が得られる。受光素子2に蓄積されたこの画像信号を外部に転送し、これを所定の処理回路で処理することにより、X線像を表示することができる。
【0034】
図5A〜図5Cは、本発明に係る放射線イメージセンサの第二の実施形態の製造工程を説明する図である。この放射線イメージセンサは図5Dに示されるように保護膜3の端は固定撮像素子1の表面に固定されており、その外縁部が上から枠6により固定されている点が図1に示される第一の実施形態と相違する。
【0035】
固体撮像素子1にシンチレータ2を蒸着してアニール処理するまでは、第一の実施形態の製造方法と同一である。その後、CVD法により厚さ10μmのパリレンを蒸着して固体撮像素子1を覆い、図5Aに示されるように保護膜3を形成する。保護膜3形成の詳細については第一の実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0036】
こうして形成した保護膜3をシンチレータ2の外側部分で図5Bに示されるようにカッターで切断する。そして、この切断部から外側及び入射面裏側に形成された保護膜3を除去する。
【0037】
その後、保護膜3の外縁部に沿って枠状にUV硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、枠6の第一層6aを形成する。この枠形成には、例えば、岩下エンジニアリング製AutoShooter-3型のような自動X−Yコーティング装置を用いるとよい。このとき、第一層6aの高さがシンチレータ2の頂面より0.5mm程度高くなるよう形成する。
【0038】
このように枠6の第一層6aで保護膜3の外縁部を押え込むことで、固体撮像素子1上への保護膜3の密着性がより一層向上して好ましい。この結果、保護膜3によりシンチレータ2が完全に密封されるので、シンチレータ2への水分の侵入を確実に防ぐことができ、シンチレータ2の吸湿劣化による素子の解像度低下を防ぐことができる。
【0039】
次に、図5Cに示されるように厚さ0.4mmのガラス板からなる放射線透過材41の片側表面にアルミを厚さ1000Å蒸着して反射膜42が形成されている放射線透過板4をその反射面、つまり反射膜42形成面が保護膜3側に向くように固体撮像素子1上に配置する。このとき、固体撮像素子1の受光面と反射膜42の反射表面が略平行で、保護膜3と反射膜42とが接触あるいは近接するよう配置する。そして、図5Dに示されるように放射線透過板4と枠6の第一層6aとの間にUV硬化樹脂を塗布して紫外線を照射して硬化させることで第二層6bを形成し、放射線透過板4を固体撮像素子1上に固定する。
【0040】
もちろん、本実施形態においても、第一層6aは樹脂に限られるものではなく、金属枠、ガラス枠等を用いてもよい。その場合は、第一層6aと固体撮像素子1との接合は接着剤あるいは樹脂によって行うことが好ましい。
【0041】
図6A〜6Dは、本発明に係る放射線イメージセンサの第三の実施形態の製造工程を説明する図である。この放射線イメージセンサは図6Dに示されるように枠6の第一層6aが第一の実施形態より高く、その上に設けられた第二層6bで放射線透過板4を固定している点が図1に示される第一の実施形態と相違する。
【0042】
固体撮像素子1にシンチレータ2を蒸着してアニール処理するまでは、第一の実施形態の製造方法と同一である。その後で第一の実施形態と同様に枠6の第一層6aを形成するが、この時、第一層6aをシンチレータ2の頂面より0.5mm程度高くなるよう形成しておく。そして、第一の実施形態と同様にパリレンにより保護膜を形成する(図6A参照)。
【0043】
こうして形成した保護膜3を図6Bに示されるように枠6の第一層6aの長手方向に沿ってカッターで切断して、この切断部から外側及び入射面裏側に形成された保護膜3を除去する。その詳細は、第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
次に、図6Cに示されるように厚さ0.4mmのガラス板からなる放射線透過材41の片側表面にアルミを厚さ1000Å蒸着して反射膜42が形成されている放射線透過板4をその反射面、つまり反射膜42形成面が保護膜3側に向くように固体撮像素子1上に配置する。このとき、固体撮像素子1の受光面と反射膜42の反射表面が略平行で、保護膜3と反射膜42とが接触あるいは近接するよう配置する。
【0045】
そして、保護膜3の外周部と露出した枠6の第一層6aを覆い、放射線透過板4との隙間に入り込むようにアクリル樹脂を塗布して紫外線照射により硬化させることで図6Dに示されるように枠6の第二層6bを形成する。このようにして、放射線透過板4を固体撮像素子1上に固定する。こうして本実施形態の放射線イメージセンサが得られる。
【0046】
このように枠6の第一層6aと第二層6bとで保護膜3を挟み込むことで、固体撮像素子1上への保護膜3の密着性がより一層向上して好ましい。この結果、保護膜3によりシンチレータ2が完全に密封されるので、シンチレータ2への水分の侵入を確実に防ぐことができ、シンチレータ2の吸湿劣化による素子の解像度低下を防ぐことができる。
【0047】
本実施形態における第一層6aは、固体撮像素子1の基板上に予め一体成形しておくか、金属枠やガラス枠を接合しておくことで形成することも可能である。
【0048】
図7、図8に本発明に係る放射線イメージセンサの第四の実施形態を示す。この放射線イメージセンサは図1、図2に示される第一の実施形態の放射線透過板4の代わりに単一部材からなる放射線透過板4aを用いたものである。放射線透過板4aとしては、光反射性の部材、光透過性の部材のいずれでも用いることができ、光反射性の部材としては金属板、例えば厚さ0.05mm程度のアルミシートを用いることができる。金属板を用いる場合は、装置を薄型化することが可能となる。一方、光透過性の部材を用いた場合は、受光素子の位置確認が容易になる。
【0049】
図9、図10に本発明に係る放射線イメージセンサの第五の実施形態を示す。この放射線イメージセンサは図1、図2に示される第一の実施形態では放射線透過板4が保護膜3に接触あるいは近接するよう配置されていたのに対して、放射線透過板4と保護膜3とを離隔して配置している点が異なっている。そして、放射線透過板4を離隔して配置するためにスペーサ7が用いられている。このスペーサ7もまた保護膜3の外周からのはがれを防止する役目を果たしている。もちろん、スペーサ7を用いることなく、枠6を高くして放射線透過板4を離隔させてもよい。放射線透過板4と保護膜3とを離隔させることにより生じた空間5a内は空気層としても、特定のガスを封入してもよく、あるいは減圧、真空状態にしてもよい。もちろん、第一の実施形態で説明したように、空間5aと外部の空間とを連通する開口部51を設けてもよい。
【0050】
さらに空間5aのシンチレータ2より外側の、固体撮像素子1の受光素子12が配置されているより外側の空間内に吸湿剤を配置してもよい。空間5a内に吸湿剤を配置することによって、空間5a内の湿度を所定以下の状態に維持し、防湿効果を高めることができる。
【0051】
図11は、本発明に係るシンチレータパネルの第一の実施形態を示す断面図である。このシンチレータパネルは、図1、図2に示される放射線イメージセンサの固体撮像素子1に代えて光透過性基板1aを用いたもので、他の構成は同一である。光透過性基板1aとしては、ガラス板、アクリル等の樹脂等を好適に用いることができる。また、図4〜図10に示される放射線透過板、枠の構造、配置を図11に示されるシンチレータパネルに適用することも可能である。これらのシンチレータパネルとテレビカメラ等を組み合わせれば本発明に係る放射線イメージセンサを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る放射線イメージセンサの第一の実施形態の断面図である。
【図2】 図1のII部分の拡大図である。
【図3】 図1の上面図である。
【図4】 図1のイメージセンサの製造過程を説明する図である。
【図5】 本発明に係る放射線イメージセンサの第二の実施形態とその製造工程を説明する図である。
【図6】 本発明に係る放射線イメージセンサの第三の実施形態とその製造工程を説明する図である。
【図7】 本発明に係る放射線イメージセンサの第四の実施形態の断面図である。
【図8】 図7のVIII部分の拡大図である。
【図9】 本発明に係る放射線イメージセンサの第五の実施形態の断面図である。
【図10】 図9のX部分の拡大図である。
【図11】 図11は、本発明に係るシンチレータパネルの第一の実施形態の断面図である。

Claims (13)

  1. 複数の受光素子が1次元あるいは2次元的に配列されて構成されているイメージセンサと、
    前記イメージセンサの受光表面上に柱状構造で形成された放射線を前記イメージセンサで検出可能な所定波長帯域を有する光に変換するシンチレータと、
    前記シンチレータの柱状構造を覆って全面に密着形成されている保護膜と、
    前記シンチレータの周りにシンチレータから離隔して配置され、前記保護膜を前記イメージセンサ上に固定している枠と、
    前記枠により前記保護膜を挟んで前記シンチレータおよび前記イメージセンサと反対側にその表面が前記イメージセンサの受光表面と略平行になるように固定配置されている放射線透過板と、
    を備えており、前記枠と前記放射線透過板との間の一部に開口部が設けられている放射線イメージセンサ。
  2. 前記放射線透過板は、前記シンチレータで発生される光に対して反射性を有する請求項記載の放射線イメージセンサ。
  3. 前記放射線透過板は、金属板である請求項記載の放射線イメージセンサ。
  4. 前記放射線透過板は、放射線透過基板上に前記シンチレータで発生される光に対する反射膜を備えている請求項記載の放射線イメージセンサ。
  5. 前記反射膜は、金属膜である請求項記載の放射線イメージセンサ。
  6. 前記放射線透過基板は、ガラス、樹脂、炭素性基板のいずれかである請求項あるいはに記載の放射線イメージセンサ。
  7. 基板と、
    前記基板上に柱状構造で形成され、放射線を前記基板を透過し得る光に変換するシンチレータと、
    前記シンチレータの柱状構造を覆って全面に密着形成されている保護膜と、
    前記シンチレータの周りにシンチレータから離隔して配置され、前記保護膜を前記基板上に固定している枠と、
    前記枠により前記保護膜を挟んで前記シンチレータおよび前記基板と反対側にその表面が前記基板の表面と略平行になるように固定配置されている放射線透過板と、
    を備えており、前記枠と前記放射線透過板との間の一部に開口部が設けられているシンチレータパネル。
  8. 前記放射線透過板は、前記シンチレータで発生される光に対して反射性を有する請求項記載のシンチレータパネル。
  9. 前記放射線透過板は、金属板である請求項記載のシンチレータパネル。
  10. 前記放射線透過板は、放射線透過基板上に前記シンチレータで発生する光に対する反射膜を備えている請求項記載のシンチレータパネル。
  11. 前記反射膜は、金属膜である請求項10記載のシンチレータパネル。
  12. 前記放射線透過基板は、ガラス、樹脂、炭素性基板のいずれかである請求項10あるいは11に記載のシンチレータパネル。
  13. 請求項12に記載のいずれかのシンチレータパネルと、前記基板を透過した光像を検出する検出器を備えている放射線イメージセンサ。
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