JP4196398B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液二次電池に関し、特に初期容量劣化の少ないリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やノートパソコン等のモバイル端末の普及により、その電力源となる電池の役割が重要視されている。これら電池には小型・軽量でかつ高容量であり、充放電を繰り返しても、劣化しにくいという性能が求められる。他の電池と比較して動作電圧が高く、エネルギー密度の高いリチウム二次電池はこれら用途には最適である。このリチウム二次電池には正極材料として、LiCoO2、マンガンスピネルを主成分とするものが使用されており、一方負極材料としては黒鉛を始めとするリチウム吸蔵材料が使用されている。しかしながらこれら材料はほぼ理論容量に近い性能が得られており、更なる高エネルギー密度化のために様々な工夫がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特開2000−82498号公報には正極集電体上にリチウム金属を形成することで、電池の不可逆容量を減少させ容量を上げる試みがなされている。これら電池では正極から最初に負極にリチウムがドープされる際、負極が放出できるリチウム量は吸蔵した量の80〜93%前後である。正極に戻ってこないリチウムは負極内に留まっており、その留まった分だけ電池としては使用できるリチウムが減少するので、電池の容量は減少する。
そしてこの不可逆容量は十分に補填されにくい。その理由は正極の活物質が堆積されていない集電体上にリチウム金属を形成しても、実際に充放電が行われる正極活物質と負極活物質が向かい合った部分からは距離があるためである。
本発明の目的は、リチウムに二次電池の不可逆容量を補填する機能を持たせることで、エネルギー密度の高い非水電解液二次電池特にリチウム二次電池を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
リチウム二次電池には、活物質内にリチウムが捕獲されたり、電解液の分解により電極表面に皮膜が形成されたりすることのため、初回充放電の際に不可逆容量が存在する。そこで本発明では、リチウム二次電池の正極表面の負極対向面にリチウム金属層を形成することでこの不可逆容量を補填し電池のエネルギー密度を向上させる。
【0005】
従って、本発明は、リチウムイオンを挿入放出可能な正極及び負極を有する非水電解液二次電池において、
前記負極が黒鉛層、リチウム吸蔵層及び酸化膜層から形成され、充放電前の前記正極表面の負極対向面にリチウム金属膜を形成したことを特徴とする非水電解液二次電池を提供する
【0006】
以下本発明を詳細に説明する。
リチウム二次電池では、充電の際正極から放出されたリチウムが実質的に全て負極に吸蔵されて負極のリチウム吸蔵容量と一致し、放電の際充電時に移動してきたリチウムが全て正極に戻った場合に、最もエネルギー密度が高い状態となる。
しかしながら、実際には、初回の充放電の際に生じる不可逆容量により、正極―負極間を移動できるリチウム量が減るため電池の容量が減少する。特に負極活物質の中でもリチウム吸蔵量の大きい合金系材料では、不可逆容量が大きい傾向にある。そこであらかじめ不可逆容量分に相当するリチウムを電池内に保持しておけば不可逆容量に起因する容量低下は防ぐことができる。電池組み立て時リチウムを保持しているのは正極活物質であり、この正極活物質をあらかじめ不可逆容量分だけ多く仕込むことが考えられるが、正極活物質は負極活物質と比較してリチウム吸蔵量が低いため、容量劣化分を補充すると、体積・重量とも大きくなってしまい、エネルギー密度が低い電池となってしまう。
【0007】
リチウム金属はその容量が3860mAh/gと大きく、密度は0.534g/ccと小さい。そこで電池内にリチウム金属を含ませて不可逆容量を補填すれば、その容量の高さと、軽さからエネルギー密度のロスを少なくすることができる。
よって本発明では金属リチウム層を正極の表面に負極に対向するように形成することにより不可逆容量を効果的に補填することを意図する。これにより補填したリチウムは最短距離で負極に到達できるからである。
【0008】
また初回充電の際バイアスによってリチウムを移動させるため、正極表面に形成したリチウムはイオンとして負極に達するのでより効果的に補填ができる。その結果エネルギー密度の高い電池を得ることができる。
更に本発明ではリチウム金属を層状に形成しているため、正極活物質の表面に位置させるのみで良く、正極活物質内にドープしたりする必要がないため、容易に製造できる。更に一旦所定箇所に形成すると膜状であるため運転中も確実にリチウムイオンを放出し、不可逆容量の補填に寄与できる。更にリチウム金属膜形成を蒸着で行うと、正極と該リチウム金属膜が強固に密着して一体化するため、より確実に不可逆容量の補填が可能になる。
【0009】
次に本発明に係る非水電解液二次電池の各構成要素について説明する。
非水電解液二次電池は、正極及び負極の他に、両極を区画するセパレータ、及び充放電の際電流を電池の外部に取り出したり、外部から電池内に電流を取り込むための正極集電体及び負極集電体を有する。
負極を構成する負極活物質はリチウムを吸蔵可能な材料で構成し、該材料の例として黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、ハードカーボンを始めとした炭素材料、シリコン、スズ、アルミニウムやこれら金属の酸化物、あるいはこれら材料の2種類以上を組み合わせて形成される材料がある。この負極の厚みは4〜200μmが望ましい。
【0010】
正極を構成する正極活物質はリチウムを吸蔵・放出可能な材料で構成し、該材料の例としてLiCoO2、LixCo1-yy2、LiNiO2、LixMnO2、LixMnF2、LixMnS2、LixMn1-yy2、LixMn1-yy2-zz、LixMn1-yy2-zz、LixMn24、LixMn24、LixMn24、LixMn2-yy4、LixMn2-yy4-zz及びLixMn2-yy4-zz(0<x≦1.5、0<y<1.0、Z≦1.0、Mは、少なくとも1つ以上の遷移金属を表す)が挙げられ、その厚みは10〜500 μmであることが望ましい。
これらの負極材料及び正極材料は、カーボンブラック等の導電性物質、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤を使用してN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤と分散混練したものを負極集電体及び正極集電体にそれぞれ塗布し、負極活物質及び正極活物質とする。
【0011】
前記負極集電体及び正極集電体の材料は、導電性の金属であれば、特に限定されず、例としてアルミニウム、銅、ステンレス、金、タングステン、モリブデンが挙げられる。またこの負極集電体及び正極集電体は厚みが5〜25μmの箔状とすることが好ましい。
この負極と正極の間には、両極間を絶縁しかつイオン導電性を有するセパレータが設置される。このセパレータは、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、フッ素樹脂等の多孔性フィルムからなることが望ましい。
このセパレータと前記正極との間には リチウム金属層が形成される。このリチウム金属層は電池の不可逆容量を補填するものでありその膜厚は10μm以下が望ましい。該リチウム金属層は、リチウム金属箔を正極又はセパレータに貼り付けたり、リチウム金属を蒸着して層状に形成したりすることができる。
【0012】
これらの各構成要素は、正極集電体−正極活物質−リチウム金属層−セパレータ−負極活物質−負極集電体の順に積層し、あるいは積層したものを巻回した後に、電解液を満たした電池缶に収容したり、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可撓性フィルム等によって封口することによって電池を製造することができる。
正極活物質とリチウム金属層間にイオン導電膜、特にリチウム導電膜を挿入しても良く、このイオン導電膜は正極活物質上に存在する吸着物質とリチウム金属層との反応を防ぎ、金属リチウムが有効に利用されるようにしている。 該イオン導電膜は、Li2O−SiO2系、Li2O−B23−SiO2系、Li2O−B23−P25系、Li2O−WO3系、Li2O−B23−P25−SiO2系及びLi2O−B23系あるいはDLC膜、CN(窒化炭素)及びBN(窒化ホウ素)膜等から成ることが好ましい。なおこのイオン導電膜を使用する場合も、正極活物質、負極活物質、正極集電体、負極集電体、セパレータ及びリチウム金属層等の他の構成要素は前述したものと同じにものを使用できる。
【0013】
前記電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ-ブチロラクトン等のγ-ラクトン類、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒を単独で又は二種以上を混合して使用し、これらの有機溶媒に溶解するリチウム塩を溶解させる。リチウム塩としては、例えばLiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(CF3SO22、LiN(CF3SO22、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、イミド類などがあげられる。また、電解液に代えてポリマー電解質を用いてもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
図1は本発明の第一の実施形態を示す非水電解液二次電池の部分断面図である。
【0015】
負極集電体1a及び正極集電体2aはアルミニウムや銅などの導電性金属又は合金なら成る箔状物質で、充放電の際電流を電池の外部に取り出したり、外部から電池内に電流を取り込む電極として機能する。
前記負極集電体1aの内側に位置する負極活物質3aは充放電の際リチウムを吸蔵あるいは放出する負極部材であり、前記正極集電体2aの内側に位置する正極活物質4aは組立て時又は放電時にリチウム金属を保持する機能を有する。
この正極活物質4aの正極集電体2aとの反対面には、箔状のリチウム金属層5aが形成され、更に該リチウム金属層5aと前記負極活物質3a間には、両極間を絶縁するセパレータ6aが設置されている。
【0016】
次にこのような構成から成る本実施形態の非水電解液二次電池の動作について詳細に説明する。
充電の際まずリチウム金属層5aからリチウムイオンがセパレータ6aを通過し、負極活物質3a中に挿入される。次に正極活物質4aからリチウムイオンが放出され、電解液及びセパレータ6aを介し負極活物質3aに挿入される。一方放電の際はリチウムイオンが負極活物質3aから放出され、セパレータ6aを通って正極活物質4aに吸蔵される。
【0017】
従来の非水電解液二次電池では充電の際に正極から負極に移動したリチウムイオン量と比較し、放電の際に負極から正極に移動するリチウムイオン量は少なく、この差が不可逆容量に相当する。
しかし本実施形態では、従来の非水電解液二次電池にはないリチウム金属層5aを形成し、充電時に該リチウム金属層5aから負極活物質3aに金属リチウムを供給して前記不可逆容量に相当する容量を補填し、不可逆容量を大幅に減少させているので、エネルギー密度の高い電池が得られる。
【0018】
なお本実施形態における正極活物質及び負極活物質層は単層である必要はなく、例えば図2に示すように、負極集電体1b表面に、厚い第1負極活物質層31bと薄い第2負極活物質32bから成る負極活物質3bを被覆しても良い。更に図3に示すように、負極集電体1c表面に、該負極集電体1c側から順に、比較的厚い第1負極活物質層31c−薄い第2負極活物質32c−薄い第3負極活物質33cを積層した負極活物質3cを被覆しても良い。更に図4に示すように、負極集電体1d表面に、薄い第1負極活物質層31dと厚い第2負極活物質層32dから成る負極活物質3dを被覆しても良い。
【0019】
図5は本発明の第二の実施形態を示す非水電解液二次電池の部分断面図である。
この態様では、負極集電体1e−負極活物質3e−セパレータ6e−リチウム金属層5e−リチウム導電膜7e−正極活物質4e−正極集電体2eの順に積層されて電池が構成され、リチウム金属層5eと正極活物質4e間にリチウム導電膜7eが挿入されている点で第一の実施形態と異なっている。第一の実施形態では、正極活物質4a上に存在する吸着物質あるいは負極活物質自身がリチウム金属層5aと反応し補填した金属リチウム容量分が全て使われない可能性がある。そこで本実施形態では前記リチウム導電膜7eを設け正極活物質4e上に存在する吸着物質とリチウム金属層5eとの反応を防ぎ、金属リチウムが有効に利用されるようにしている。
【0020】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
[実施例1及び比較例1]
負極集電体1aとして10μm厚の銅箔を用い、正極集電体2aとしては15μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3aには60μm厚の黒鉛、正極活物質4aには100μm厚のLi1.1Mn2O4を用いた。
リチウム金属層5aは厚みが1μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6aはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用して実施例1のリチウム二次電池とした。
【0022】
一方リチウム金属層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様のリチウム二次電池を作製した。つまり比較例1のリチウム二次電池は図6に示すように、負極集電体1f−負極活物質3f−セパレータ6f−正極活物質4f−正極集電体2fの順に積層して構成した。
実施例1及び比較例1で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ408Wh/L及び390Wh/Lであった。この結果から実施例1のリチウム二次電池では、リチウム金属層5aにより不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0023】
[実施例2及び比較例2]
負極集電体1aとして12μm厚の銅箔を用い、正極集電体2aとしては12μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3aには50μm厚のハードカーボン、正極活物質4aには90μm厚のLi1.1Mn2O4を用いた。
リチウム金属層5aは厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6aにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用して実施例2のリチウム二次電池とした。
【0024】
一方リチウム金属層を形成しなかったこと以外は実施例2と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例2のリチウム二次電池とした。
実施例2及び比較例2で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ410Wh/L及び392Wh/Lであった。この結果から実施例2のリチウム二次電池では、リチウム金属層5aにより不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0025】
[実施例3及び比較例3]
負極集電体1aとして12μm厚の銅箔を用い、正極集電体2aとして20μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3aには10μm厚のシリコン層、正極活物質4aには90μm厚のLi1.1Mn2O4を用いた。
リチウム金属層5aは厚みが3μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6aにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用して実施例3のリチウム二次電池とした。
【0026】
一方リチウム金属層を形成しなかったこと以外は実施例3と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例3のリチウム二次電池とした。
実施例3及び比較例3で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ451Wh/L及び432Wh/Lであった。この結果から実施例3のリチウム二次電池では、リチウム金属層5aにより不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0027】
[実施例4及び比較例4]
負極集電体1bとして12μm厚の銅箔を用い、正極集電体として20μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3bは図2に示すように全厚が60μmである2層構造とし、負極集電体1b側の58μm厚の黒鉛層31bに2μm厚のシリコン層32bを積層した。正極活物質には80μm厚のLi2CoO2を用いた。
リチウム金属層は厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用して実施例4のリチウム二次電池とした。
【0028】
一方リチウム金属層を形成しなかったこと以外は実施例4と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例4のリチウム二次電池とした。
実施例4及び比較例4で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ431Wh/L及び408Wh/Lであった。この結果から実施例4のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0029】
[実施例5及び比較例5]
負極集電体1cとして8μm厚の銅箔を用い、正極集電体として15μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3cは図3に示すように全厚が60μmである3層構造とし、負極集電体側の58μm厚の黒鉛層31cに、全厚が2μm厚であるシリコン層32cとシリコン酸化膜33cを積層した。正極活物質には80μm厚のLi2CoO2を用いた。
リチウム金属層は厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用して実施例5のリチウム二次電池とした。
【0030】
一方リチウム金属層を形成しなかったこと以外は実施例5と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例5のリチウム二次電池とした。
実施例5及び比較例5で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ428Wh/L及び405Wh/Lであった。この結果から実施例5のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0031】
[実施例6及び比較例6]
負極集電体1dとして10μm厚の銅箔を用い、正極集電体として15μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3dは図4に示すように全厚が60μmである2層構造とし、負極集電体側の1.5μm厚のシリコン層31dに、58μm厚の黒鉛層32dを積層した。正極活物質には80μm厚のLi2CoO2を用いた。
リチウム金属層は厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用して実施例6のリチウム二次電池とした。
【0032】
一方リチウム金属層を形成しなかったこと以外は実施例5と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例6のリチウム二次電池とした。
実施例6及び比較例6で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ428Wh/L及び405Wh/Lであった。この結果から実施例6のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0033】
[実施例7]
負極集電体として10μm厚の銅箔を用い、正極集電体として15μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質は60μm厚の黒鉛層とし、正極活物質には100μm厚のLi1.1Mn24を用いた。
リチウム金属層は厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用し実施例7のリチウム二次電池とした。
【0034】
更に実施例7のリチウム二次電池の金属リチウムの容量を3860mAh/gとし、負極容量と金属リチウム量の比と、300サイクル後の容量維持率の関係を図7のグラフに示した。このグラフから金属リチウム補填量が負極容量の50%以下であれば、容量維持率が80%を確保できることが判明した。リチウム補填量が多くなると容量維持率が低下するのは、負極容量に対してリチウム量が多くなりすぎ、負極表面にリチウムが析出しているためと考えられる。またリチウム補填量0でも容量維持率は高いが、不可逆容量が存在するため電池のエネルギー密度は低かった。
【0035】
[実施例8及び比較例8]
図5に示すように、負極集電体1eとして10μm厚の銅箔を用い、正極集電体2eとして15μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3eは60μm厚の黒鉛層とし、正極活物質4eには100μm厚のLi1.1Mn24を用いた。
リチウム金属層5eは厚みが1μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6eにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用し、更にリチウム導電膜7eとして厚み10nmのLi2O−SiO2系膜をリチウム金属層5eと正極活物質4e間に挿入して実施例8のリチウム二次電池とした。
【0036】
一方リチウム金属層及びリチウム導電膜を形成しなかったこと以外は実施例8と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例8のリチウム二次電池とした。
実施例8及び比較例8で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ410Wh/L及び388Wh/Lであった。
この結果から実施例8のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0037】
[実施例9及び比較例9]
図5に示すように、負極集電体1eとして12μm厚の銅箔を用い、正極集電体2eとして20μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3eは50μm厚の黒鉛層とし、正極活物質4eには90μm厚のLi1.1Mn24を用いた。
リチウム金属層5eは厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6eにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用し、更にリチウム導電膜7eとして厚み12nmのLi2O−B23−SiO2系膜をリチウム金属層5eと正極活物質4e間に挿入して実施例9のリチウム二次電池とした。
【0038】
一方リチウム金属層及びリチウム導電膜を形成しなかったこと以外は実施例9と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例9のリチウム二次電池とした。
実施例9及び比較例9で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ413Wh/L及び390Wh/Lであった。
この結果から実施例9のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0039】
[実施例10及び比較例10]
図5に示すように、負極集電体1eとして12μm厚の銅箔を用い、正極集電体2eとして20μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3eは10μm厚のシリコン層とし、正極活物質4eには90μm厚のLi1.1Mn24を用いた。
リチウム金属層5eは厚みが3μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6eにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用し、
更にリチウム導電膜7eとして厚み15nmのLi2O-B23−P25系膜をリチウム金属層5eと正極活物質4e間に挿入して実施例10のリチウム二次電池とした。
【0040】
一方リチウム金属層及びリチウム導電膜を形成しなかったこと以外は実施例10と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例10のリチウム二次電池とした。
実施例10及び比較例10で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ453Wh/L及び430Wh/Lであった。
この結果から実施例10のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0041】
[実施例11及び比較例11]
図8に示すように、負極集電体1gとして12μm厚の銅箔を用い、正極集電体2gとして20μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3gは全厚が60μmである2層構造とし、負極集電体側の58μm厚の黒鉛層31gに、2μm厚のシリコン層32gを積層した。正極活物質4gには80μm厚のLi2CoO2を用いた。
リチウム金属層5gは厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6gにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用し、更にリチウム導電膜7gとして厚み15nmのLi2O−WO3系膜をリチウム金属層5gと正極活物質4g間に挿入して実施例11のリチウム二次電池とした。
【0042】
一方リチウム金属層及びリチウム導電膜を形成しなかったこと以外は実施例11と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例11のリチウム二次電池とした。
実施例11及び比較例11で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ435Wh/L及び405Wh/Lであった。この結果から実施例11のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0043】
[実施例12及び比較例12]
図9に示すように、負極集電体1hとして8μm厚の銅箔を用い、正極集電体2hとして15μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3hは全厚が60μmである3層構造とし、負極集電体側の58μm厚の黒鉛層31hに、全厚が2μm厚であるシリコン層32hとシリコン酸化膜33hを積層した。正極活物質4hには80μm厚のLi2CoO2を用いた。
リチウム金属層5hは厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6hにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用し、更にリチウム導電膜7hとして厚み15nmのDLC膜をリチウム金属層5hと正極活物質4h間に挿入して実施例12のリチウム二次電池とした。
【0044】
一方リチウム金属層及びリチウム導電膜を形成しなかったこと以外は実施例12と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例12のリチウム二次電池とした。
実施例12及び比較例12で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ430Wh/L及び402Wh/Lであった。
この結果から実施例12のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0045】
[実施例13及び比較例13]
図10に示すように、負極集電体1jとして10μm厚の銅箔を用い、正極集電体2jとして15μm厚のアルミニウムを使用した。負極活物質3jは全厚が60μmである2層構造とし、負極集電体側の1.5μm厚のシリコン層31jに、58μm厚の黒鉛層32jを積層した。正極活物質4jには80μm厚のLi2CoO2を用いた。リチウム金属層5jは厚みが2μmとなるように蒸着で作製し、セパレータ6jにはポリプロピレンとポリエチレンが層状に重なったものを使用した。電解液にはEC/DEC=3:7で混合したものに支持塩としてLiPF6を加えたものを使用し、更にリチウム導電膜7jとして厚み15nmのDLC膜をリチウム金属層5jと正極活物質4j間に挿入して実施例13のリチウム二次電池とした。
【0046】
一方リチウム金属層及びリチウム導電膜を形成しなかったこと以外は実施例13と同様のリチウム二次電池を作製し、比較例13のリチウム二次電池とした。
実施例13及び比較例13で作製したリチウム二次電池の充放電容量(体積エネルギー密度)は表1に示す通り、それぞれ430Wh/L及び404Wh/Lであった。
この結果から実施例13のリチウム二次電池では、リチウム金属層により不可逆容量が補填されているため、結果として高いエネルギー密度が得られたものと考えられる。
【0047】
【表1】
Figure 0004196398
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の第1の効果は、負極表面にリチウム金属層を形成、特に蒸着することでエネルギー密度をあげていることである。つまり本発明では、従来の非水電解液二次電池にはないリチウム金属層を形成し、充電時に該リチウム金属層から負極活物質に金属リチウムを供給して不可逆容量に相当する容量を補填し、不可逆容量を大幅に減少させているので、エネルギー密度の高い電池が得られるのである。
第2の効果はリチウム補填を効果的に行えることである。これは正極表面の負極対向面にリチウム金属膜を形成して、負極表面と最短距離の位置にリチウム金属層を形成するようにしているからである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す非水電解液二次電池の分解断面図。
【図2】本発明で使用可能な多層負極活物質の例を示す縦断面図。
【図3】本発明で使用可能な多層負極活物質の他の例を示す縦断面図。
【図4】本発明で使用可能な多層負極活物質の更に他の例を示す縦断面図。
【図5】本発明の第二の実施の形態を示す非水電解液二次電池の分解断面図。
【図6】比較例1の非水電解液二次電池を示す分解断面図。
【図7】実施例7における、負極容量と金属リチウム量の比と、300サイクル後の容量維持率の関係を示すグラフ。
【図8】実施例11における第二の実施の形態を示す非水電解液二次電池の分解断面図。
【図9】実施例12における第二の実施の形態を示す非水電解液二次電池の分解断面図。
【図10】実施例13における第二の実施の形態を示す非水電解液二次電池の分解断面図。
【符号の説明】
1a、1b、1c、1d、1e、1g、1h、1j・・・・負極集電体
2a、2e、2g、2h、2j・・・・正極集電体
3a、3b、3c、3d、3e、3g、3h、3j・・・・負極活物質
31b・・・第1負極活物質層
32b・・・第2負極活物質層
31c・・・第1負極活物質層
32c・・・第2負極活物質層
33c・・・第3負極活物質層
31d・・・第1負極活物質層
32d・・・第2負極活物質層
31g・・・黒鉛層
32g・・・シリコン層
31h・・・黒鉛層
32h・・・シリコン層
33h・・・シリコン酸化膜
31j・・・シリコン層
32j・・・黒鉛層
4a、4e、4g、4h、4j・・・・正極活物質
5a、5e、5g、5h、5j・・・・リチウム金属層
6a、6e、6g、6h、6j・・・・セパレータ
7e、7g、7h、7j・・・・リチウム導電膜

Claims (8)

  1. リチウムイオンを挿入放出可能な正極及び負極を有する非水電解液二次電池において、
    前記負極が黒鉛層、リチウム吸蔵層及び酸化膜層から形成され、充放電前の前記正極表面の負極対向面にリチウム金属膜を形成したことを特徴とする非水電解液二次電池。
  2. リチウム金属膜を蒸着により形成した請求項1記載の非水電解液二次電池。
  3. リチウム金属量が負極容量の50%以下に相当する請求項1又は2記載の非水電解液二次電池。
  4. 前記正極の正極活物質とリチウム金属膜間にイオン導電膜を有する請求項1から3のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
  5. イオン導電膜がLiO−SiO系、LiO−B−SiO系、LiO−B−P系、LiO−WO系、LiO−B−P−SiO系及びLiO−B系の1種以上から形成される膜である請求項4記載の非水電解液二次電池。
  6. イオン導電膜がダイヤモンド状炭素、窒化炭素及び窒化ホウ素の1種以上から形成される膜である請求項4記載の非水電解液二次電池。
  7. リチウム吸蔵層がシリコン、スズ及び/又はアルミニウムから形成される請求項1〜6の何れか一に記載の非水電解液二次電池。
  8. 酸化膜がリチウム吸蔵層を酸化したものである請求項1〜7の何れか一に記載の非水電解液二次電池。
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