JP4196323B2 - 濃度調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医用診断画像をフィルムに形成するときにフィルムの仕上がり濃度を調整する濃度調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療用レーザイメージャ(画像形成装置)には、診断画像を濃淡階調で表現するため濃度を常に安定して出力するという基本機能に対する要望が非常に強い。また、医療用レーザイメージャには、診断装置や撮影装置から送られるデジタル・ビデオの信号(指定濃度信号)がフィルム上で一定濃度となるように画像形成部分を制御するため、いわゆるキャリブレーション機能が設けられている。
【0003】
しかし、キャリブレーションを実施した直後は一定濃度が得られるが、キャリブレーション後の時間経過に伴って、様々な要因で濃度が変動する。特に、熱現像プロセスでは濃度変動が発生し易く、例えば、次のような原因による濃度変動が考えられる。
【0004】
(1)環境温度による露光系変動
(2)フィルム処理に伴う熱現像特性の変動
(3)装置内に保存されたフィルムの感度特性変動
(4)加熱ドラムの特性変化
(5)熱現像特性の違うフィルムの使用
【0005】
上記変動の内、(1)、(2)のような変動は装置内温度のモニタで濃度変動への影響の度合いは、ある程度予測可能であり、仕上がり濃度を一定に保つべくフィードフォワードとして補正可能である。一方、(3)、(4)、(5)のような変動は事前予測をし難いため、(3)、(4)、(5)の影響を含めてオーバーオールの影響を受けた仕上がり濃度を測定し、次以降の画像形成ヘフィードバック補正をかける、いわゆるパッチ濃度方式が用いられることがある。
【0006】
このパッチ濃度方式とは、フィルムの所定箇所に5×10mm程度の矩形状エリアを予め定めた光量で露光し、このエリアの仕上がり濃度を測定し、本来得られるはずの濃度(以下、比較用濃度と言う)との差分を基に次以降の画像を最適濃度にすべく、露光量及び/又は熱現像条件を可変するものである。
【0007】
従って、もしこの比較用濃度値の設定を間違えると、プロセス系は適性な濃度を再現しているにも係わらず、補正系は不適と判断し、プロセス系の条件変更を行うため、結果として濃度低下や濃度上昇を生じることになる。また、露光系・熱現像系は装置毎にばらつきの要素を含んでいるため、この比較用濃度値を一律な値で設定することは好ましくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、診断画像形成において露光系・現像系等に特性変動が生じても、またフィルム特性に差が生じても、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることのできる濃度調整方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による濃度調整方法は、試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含む濃度調整方法であって、前記試験用露光データで露光した所定領域の濃度を測定し、この濃度値を前記比較用濃度値として使用するとともに、診断画像を形成するときに前記一部領域を露光するに際し前記所定領域の露光量と同一露光量で露光することを特徴とする。
【0010】
この濃度調整方法によれば、一部領域を所定の露光量で露光し、露光条件及び現像条件の少なくとも一方を補正するときの比較用濃度値として、予め設定した固定値ではなく、その前に実行したキャリブレーションのときに所定の露光量で露光した領域の測定濃度値を用いるとともに、一部領域における所定の露光量を前記所定の領域の露光量と同一とすることで、キャリブレーション後に、露光系・現像系等に特性変動が生じても、またフィルム特性に差が生じても、より的確に画像濃度を補正でき、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができる。また、比較用濃度値の濃度測定をキャリブレーションと同時に自動的に行うことができる。従って、使用するフィルムは1枚ですむので経済的である。
【0011】
上記濃度調整方法では、前記所定領域において濃度が1.0乃至2.0の範囲内にある部分を使用することが好ましい。また、前記試験用露光データで露光された画像のうち、前記フィルムの先端部の所定領域を前記濃度測定のために使用することが好ましい。また、前記診断画像を形成するときの前記一部領域をフィルムの先端部分に設けることが好ましい。
【0012】
本発明による別の濃度調整方法は、試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含む濃度調整方法であって、前記ルックアップテーブルの作成後に、そのルックアップテーブルから所定の濃度を得る露光量を求め、その露光量でフィルムを露光し、その画像の濃度を測定し、その濃度を前記比較用濃度とするとともに、以後の診断画像の一部領域をその露光量と同一の露光量で露光することを特徴とする。
【0013】
この濃度調整方法によれば、一部領域を所定の光量で露光し露光条件及び現像条件の少なくとも一方を補正するときの比較用濃度値として、予め設定した固定値ではなく、その前に実行したキャリブレーションで作成したルックアップテーブルから得た所定の露光量で露光した領域の測定濃度値を用いるとともに、一部領域における所定の露光量を前記領域の露光量と同一とすることで、キャリブレーション後に、露光系・現像系等に特性変動が生じても、またフィルム特性に差が生じても、より的確に画像濃度を補正でき、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができる。また、キャリブレーションの実施後に特性変動に敏感な濃度域(例えばD=1.0)を維持するようにルックアップテーブルにより露光量を得ることができるので、一部領域の測定濃度値と比較用濃度値との差分に基づく補正の精度が向上する。更に、一部領域の露光量と診断画像の露光量とはいずれも、ルックアップテーブルを経由して決定されるので、診断画像の露光量を決定する回路構成・データ処理が簡便になる。
【0014】
上記濃度調整方法では、前記所定の濃度として1.0乃至2.0の範囲内の濃度を使用することが好ましい。また、前記フィルムの先端部の所定領域における濃度を前記比較用濃度として使用することが好ましい。この場合、前記所定領域における濃度を複数回測定しそれらの平均値を前記比較用濃度とすることが好ましい。
【0015】
本発明による更に別の濃度調整方法は、試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含み、前記ルックアップテーブルの作成後、そのルックアップテーブルにより所定の濃度を得る露光量を求め、その露光量でフィルムを露光し、その画像の濃度を測定し、その濃度を前記比較用濃度とするとともに、以後の診断画像の一部領域をその露光量と同一の露光量で露光する濃度調整方法であって、前記フィルム、前記現像工程、前記露光工程及び前記濃度測定工程のうちの少なくとも1つの状態を変更したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことを特徴とする。
【0016】
この濃度調整方法によれば、キャリブレーション後に、露光系・現像系等に特性変動が生じても、またフィルム特性に差が生じても、より的確に画像濃度を補正でき、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができるが、フィルム、現像工程、露光工程及び濃度測定工程のうちの少なくとも1つの状態を変更したときに、この前後で特性が比較的急激に変化しても、ルックアップテーブルを再作成し、比較用濃度値を再設定するので、その特性の変化による影響を排除でき、より的確に画像濃度を補正できる。なお、フィルムの状態の変更とは、ロットの異なるフィルムに変わること等を意味し、フィルムの現像特性がロットにより比較的急激に変化する場合がある。
【0017】
また、例えば、前記現像工程は、前記フィルムを加熱する加熱部材を含む加熱部及び前記加熱されたフィルムを冷却しながら搬送する冷却搬送部で実行され、前記加熱部材の交換及び/又は前記冷却搬送部のメンテナンスを実行したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことで、加熱部材の交換や冷却搬送部のフィルムが接触するガイド部材等の不織布等の交換等でプロセス条件が比較的急激に変わっても、その条件の変動による影響を排除できる。
【0018】
上記濃度調整方法では、前記所定の濃度として1.0乃至2.0の範囲内の濃度を使用することが好ましい。また、前記フィルムの先端部の所定領域における濃度を前記比較用濃度として使用することが好ましい。また、前記所定領域における濃度を複数回測定しそれらの平均値を前記比較用濃度とすることが好ましい。
【0019】
本発明による更に別の濃度調整方法は、試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含み、前記試験用露光データで露光した所定領域の濃度を測定し、この濃度値を前記比較用濃度値として使用するとともに、診断画像を形成するときに前記一部領域を露光するに際し前記所定領域の露光量と同一露光量で露光する濃度調整方法であって、前記フィルム、前記現像工程、前記露光工程及び前記濃度測定工程のうちの少なくとも1つの状態を変更したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことを特徴とする。
【0020】
この濃度調整方法によれば、キャリブレーション後に、露光系・現像系等に特性変動が生じても、またフィルム特性に差が生じても、より的確に画像濃度を補正でき、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができるが、フィルム、現像工程、露光工程及び濃度測定工程のうちの少なくとも1つの状態を変更したときに、この前後で特性が比較的急激に変化しても、ルックアップテーブルを再作成し、比較用濃度値を再設定するので、その特性の変化による影響を排除でき、より的確に画像濃度を補正できる。なお、フィルムの状態の変更とは、ロットの異なるフィルムに変わること等を意味し、フィルムの現像特性がロットにより比較的急激に変化する場合がある。
【0021】
また、例えば、前記現像工程は、前記フィルムを加熱する加熱部材を含む加熱部及び前記加熱されたフィルムを冷却しながら搬送する冷却搬送部で実行され、前記加熱部材の交換及び/又は前記冷却搬送部のメンテナンスを実行したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことで、加熱部材の交換や冷却搬送部のフィルムが接触するガイド部材等の不織布等の交換等でプロセス条件が比較的急激に変わっても、その条件の変動による影響を排除できる。
【0022】
また、前記所定領域において濃度が1.0乃至2.0の範囲内にある部分を使用することが好ましい。また、前記試験用露光データで露光された画像のうち、前記フィルムの先端部の所定領域を前記濃度測定のために使用することが好ましい。また、前記診断画像を形成するときの前記一部領域をフィルムの先端部分に設けることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態による画像形成装置の要部を示す正面図であり、図2は図1の画像形成装置の制御系を示すブロック図であり、図3は図1の画像形成装置の露光部を概略的に示す図である。
【0024】
図1に示すように画像形成装置100は、シート状の熱現像感光材料であるフィルムを所定枚数でパーケージした包装体を装填する第1及び第2の装填部11,12と、フィルムを1枚づつ露光・現像のために搬送し供給するサプライ部90とを有する供給部110と、供給部110から給送されたフィルムを露光し潜像を形成する露光部120と、潜像を形成されたフィルムを熱現像する現像部130と、現像されたフィルムの濃度を測定し濃度情報を得る濃度計200と、を備える。供給部110の第1及び第2の装填部11,12からフィルムが1枚づつサプライ部90、搬送ローラ対39,41,141により図1の矢印方向(1)に搬送されるようになっている。
【0025】
図2に示すように、画像形成装置100は、供給部110、露光部120,現像部130及び濃度計200等を制御するための制御部99を備え、また、制御部99は上述の各部分からの制御信号を装置全体の制御のために受信する。
【0026】
次に、図3により画像形成装置100の露光部120について説明する。図3に示すように、露光部120は画像信号Sに基づき強度変調された波長780〜860nm範囲内の所定波長のレーザ光Lを、回転多面鏡113によって偏向して、フィルムF上を主走査すると共に、フィルムFをレーザ光Lに対して主走査の方向と略直角な方向であるほぼ水平方向に相対移動させることにより副走査し、レーザ光Lを用いてフィルムFに潜像を形成するものである。
【0027】
露光部120のより具体的な構成を以下に述べる。図3において、画像信号出力装置121から出力されたデジタル信号である画像信号Sを受信すると、画像信号Sは、D/A変換器122においてアナログ信号に変換され、変調回路123に入力される。変調回路123は、かかるアナログ信号に基づきレーザ光源部110aのドライバ124を制御して、レーザ光源部110aから変調されたレーザ光Lを照射させる。また、高周波重畳部118により変調回路123及びドライバ124を介してレーザ光に高周波成分を重畳してフィルムにおける干渉縞の形成を防止する。
【0028】
また、露光部120のレンズ112とレーザ光源部110aとの間に、音響光学変調器88を配置している。この音響光学変調器88は、変調量を調整する補正制御部71からの信号に基づいて音響光学変調(AOM)ドライバ89により制御され駆動される。補正制御部71は、制御部99からの補正信号に基づいて露光時に最適な変調量(入射光量に対する出射光量の比率)になるようにAOMドライバ89を介して音響光学変調素子88を制御する。
【0029】
次に、レーザ光源部110aから照射され音響光学変調素子88で光量が適正に調整されたレーザ光Lは、レンズ112を通過した後、シリンドリカルレンズ115により上下方向にのみ収束されて、図3の矢印A方向に回転する回転多面鏡113に対し、その駆動軸に垂直な線像として入射するようになっている。回転多面鏡113はレーザ光Lを主走査方向に反射偏向し、偏向されたレーザ光Lは、4枚のレンズを組み合わせてなるシリンドリカルレンズを含むfθレンズ114を通過した後、光路上に主走査方向に延在して設けられたミラー116で反射されて、搬送装置142により矢印Y方向に搬送されている(副走査されている)フィルムFの被走査面117上を、矢印X方向に繰り返し主走査される。これにより、レーザ光LはフィルムF上の被走査面117全面にわたって走査する。
【0030】
fθレンズ114のシリンドリカルレンズは、入射したレーザ光LをフィルムFの被走査面上に、副走査方向にのみ収束させるものとなっており、またfθレンズ114からフィルムFの被走査面までの距離は、fθレンズ114全体の焦点距離と等しくなっている。このように、露光部120においては、シリンドリカルレンズ115及びシリンドリカルレンズを含むfθレンズ114を配設しており、レーザ光Lが回転多面鏡113上で一旦副走査方向にのみ収束させるようになっているので、回転多面鏡113に面倒れや軸ブレが生じても、フィルムFの被走査面上において、レーザ光Lの走査位置が副走査方向にずれることがなく、等ピッチの走査線を形成することができるようになっている。回転多面鏡113は、例えばガルバノメータミラー等、その他の光偏光器に比べ走査安定性の点で優れているという利点がある。以上のようにして、フィルムFに画像信号Sに基づく潜像が形成される。
【0031】
次に、図1の画像形成装置の現像部130及び冷却搬送部150について説明する。図1に示すように、現像部130はフィルムFを外周に保持しつつ加熱可能なドラム14と、ドラム14との間でフィルムを挟んで保持する複数のロール16とを有する。ドラム14は、ヒータ(図示省略)を内部に備え、フィルムFを所定の最低熱現像温度(例えば110℃前後)以上の温度に所定の熱現像時間維持することでフィルムFを熱現像する。これによって、上述の露光部120でフィルムFに形成された潜像を可視画像として形成する。また、ドラム14のヒータは、図2の制御部99で制御され、ヒータの温度を変えて現像温度を変えることで濃度調整を行うことができる。
【0032】
熱現像部130の左側方には、複数の搬送ローラ対144及び濃度計200を内部に備えるとともに加熱されたフィルムを冷却するための冷却搬送部150が設けられている。加熱ドラム14から離れたフィルムFを冷却搬送部150で図1の矢印(3)に示すように右斜め下方に搬送しつつ、冷却する。そして、搬送ローラ対144が冷却されたフィルムFを搬送しつつ、濃度計200がフィルムFの濃度を測定する。その後、複数の搬送ローラ対144は、フィルムFを図1の矢印(4)のように更に搬送し、画像形成装置100の上部から取り出せるように、熱現像装置100の右上方部に設けられた排出トレイ160に排出する。
【0033】
図10は、図1の冷却搬送部150において加熱ドラム14の近傍に配置されたガイド部材21を示す要部正面図である。図10に示すように、ガイド部材21は、フィルムFを案内する案内面30を構成しかつ不織布からなり断熱性を有する第1部材22と、第1部材22の下面に一体的に設けられアルミニウム等の金属材料からなり熱導伝性の第2部材23と、から構成されている。ガイド部材21は、図10の破線で示すフィルムFが加熱ドラム14と案内ローラ16との間で搬送されて外周面14aから離れた後に最初にその案内面30がフィルムFを案内する。
【0034】
図1の濃度計200は、発光部200aと受光部200bとを備え、現像後のフィルムが発光部200aと受光部200bとの間を上述のように搬送され、通過する際に、発光部200aから照射した光をフィルムを通して受光部200bで受け、その受光量の減衰の程度に基づいて濃度を測定するようになっている。
【0035】
なお、本実施の形態において、現像部130は露光部120とともに画像形成装置100に組み込まれているが、露光部120とは独立した装置であっても良い。この場合、露光部120から現像部130へとフィルムFを搬送する搬送部があることが好ましい。また、ドラム14の周囲は断熱材で覆われていた方が、ドラム14の温度制御がしやすく、好ましい。
【0036】
次に、本実施の形態におけるキャリブレーションについて図9を参照して説明する。図9(a)はフィルムをテスト的に露光した露光量と、現像後測定した濃度との関係を示す図であり、図9(b)はキャリブレーションを行うことで再度求めた露光量と濃度との関係を示す図である。
【0037】
図3の露光部120では、露光部120に入力する画像信号(診断装置等の画像信号出力装置121からの仕上がり濃度を指定する信号)に応じてある時点の画像形成装置に固有の濃度と露光量との換算表であるルックアップテーブル(LUT)を用いて、露光量を計算するが、このために、露光部120に入力した所定の露光パターン信号によりテスト的に光量を徐々に変化させたいわゆるウエッジパターンの潜像をフィルムに形成し、このときの光量と現像されたウエッジパターンの濃度を測定し、図9(a)のような光量と濃度との関係を示すカーブaを作成する。このようにしてルックアップテーブル(LUT)を作成するまでの工程をキャリブレーションという。
【0038】
そして、以降の画像形成において、図9(a)のように、画像信号(=仕上がり濃度指定)で指定された濃度Dに基づいて上記ルックアップテーブルから光量Mを算出し、この算出された光量でフィルムを露光することによりフィルムの仕上がり濃度を指定された濃度にできる。このように、ルックアップテーブルでは、診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけている。
【0039】
一方、例えば、画像形成装置本体への衝撃等で露光部120での光学系のアライメント変化等により、光路中の一部でけられが発生すると、図9(a)の光量Mを得るように制御しても、フィルムに到達する光量に増減が発生することになり、潜像の形成段階で仕上がり濃度が異なる画像を形成することになり、現像条件、フィルム特性が一定であれば、フィルムの仕上がり濃度が異なってしまう。従って、フィルムの仕上がり濃度を一定に保つには、濃度と光量との関係を表すLUTを変更する必要がある。このため、再度、同じ露光パターン信号により形成した潜像を現像し、そのパターンの濃度を測定し、図9(b)のような光量と濃度との関係を示すカーブbを作成し、LUTを再作成する。
【0040】
図9(b)に示すように、再作成後のLUTにより、画像信号(=仕上がり濃度指定)で指定された濃度Dに基づいて光量M1を算出し、この算出された光量でフィルムを露光することによりフィルムの仕上がり濃度を指定された濃度とすることができる。このように、再作成後のLUTで新たに求めた光量が新たに制御すべき光量となる。なお、例えば露光部120での光学系のアライメント変化等に起因して濃度と光量の関係がカーブbのように変化しているにも拘わらず、カーブaをそのまま使用すると、光量Mで露光することになり、図9(b)から分かるように、フィルムの仕上がり濃度がDよりも低下したD1になってしまう。
【0041】
また、通常、フィルム特性のばらつきは製造ロット間等で比較的多いので、フィルム包装体が新たに装填される毎にLUTを作成する。更に、加熱ドラム14の使用時間が長くなると伝熱性能の劣化等により熱現像特性が変化してしまい、この場合も仕上がり濃度が異なってくるので、これらの変化が想定されるときには、上述と同様にLUTを作成し直す必要ある。
【0042】
具体的には、上記キャリブレーションは、図3の画像信号Sとして試験用露光データ信号を入力し、露光量を領域毎に変えた所定の露光パターンにより露光部120でフィルムを露光し、現像部130で現像することでフィルムに形成された露光パターンの各領域の濃度を濃度計200で測定し、その測定した濃度とその露光量との関係を図9(a)のように求め、画像信号における指定濃度と露光量の関係を示すLUTを作成し、このLUTを露光部120の補正制御部71のメモリが記憶することで、実行される。
【0043】
図3の露光部120に画像信号出力装置121から画像信号Sが入力すると、レーザ光源部110aから変調されたレーザ光Lを照射することでフィルムFにレーザ露光し画像の潜像を形成するが、このとき、補正制御部71は、上記LUTから画像信号における指定濃度に対応した露光量を求め、この露光量となるように補正信号をAOMドライバ89を介して音響光学変調素子88にフィードバックし、音響光学変調素子88で変調量を制御することによりフィルムにおける仕上がり濃度を指定濃度とすることができる。
【0044】
なお、試験用露光データとしての露光パターンは、5〜100段階程度の多数段階(例えば20段階)の所定光量を搬送方向に位置を順々に変えて露光する画像や、5〜100段階程度の多数段階(例えば20段階)の所定光量を位置をマトリックス状に順々に変えて露光する画像などがあるが、他のパターンのテスト画像であってもよい。
【0045】
上述のように、キャリブレーションを新たなフィルム包装体を装填部11,12に装填したときに実行することで、製造ロット等に起因してフィルム包装体ごとにフィルム特性のばらつきが大きくても、そのフィルム特性に対応したLUTを作成するので、フィルム特性のばらつきを補正した露光が可能になる。
【0046】
また、装置内温度の変動等によりフィルムの感度が変化したり、露光部120においてAOMドライバ89や高周波重畳部118が影響を受けてレーザ光Lの光量が変化したり、また露光部120の光学系のアライメントが変化したり、更に加熱ドラム14の特性が変化したりしても、適切なタイミングでキャリブレーションを行いLUTを作成することで、かかる変動を補正した露光が可能になる。
【0047】
更に、図1の画像形成装置100では、通常の診断画像を露光・現像する場合、フィルム先端側の隅に一定の条件で濃度管理用の5×10mm程度の濃度画像(パッチ画像)を形成し、レーザ光の変調量を制御し濃度を最適化するようにしている。即ち、診断画像を形成する際にフィルム先端側の隅にパッチ画像を形成し、そのパッチ画像の濃度を濃度計200で測定し、このパッチ画像の測定濃度値を比較用濃度値と比較し、その濃度差が一定以上である場合には、補正制御部71が次のフィルムの露光時に最適な変調量となるように制御する。
【0048】
上述のパッチ画像による濃度調整では、比較用濃度値として、予め設定した固定値ではなく、前回のキャリブレーションのときに取得した測定濃度値を用いる。これにより、キャリブレーションでLUTを作成した以降に比較的なだらかな時間軸で発生する上述の(1)乃至(5)等による濃度変動をパッチ画像による補正で相殺すべく、熱現像条件や露光条件(露光量)にフィードバックし、仕上がり濃度を精度よく一定に保つことができる。即ち、LUT作成後に、装置内温度の変化等の影響によるフィルムの感度変化、露光部120のAOMドライバ89や高周波重畳部118等における特性変化、または加熱ドラム14の特性変化等のために現像濃度が変化し、一定以上の変動が起きると、パッチ画像の濃度測定により、比較用濃度値との差分に基づく補正を行うので、常に適性な仕上がり濃度を得ることができる。
【0049】
なお、後述の図6の場合等に、比較的急激な状態の変化が予想される場合には、LUTを再作成し、このLUT再作成に併せて比較用濃度値も再度定する。
【0050】
次に、画像形成装置100の動作について図1〜図3を参照しながら図4のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
〈キャリブレーション〉
【0052】
まず、制御部99等のメモリに記憶された試験用露光データ信号が露光部120に入力され(S01)、フィルムFが図1の方向(1)、(2)に搬送され、この入力信号に基づいて露光部120によりフィルムFがレーザ光により走査されて所定の露光パターンで露光される(S02)。次に、所定の露光パターンで試験画像の潜像が形成されたフィルムFは、更に図1の方向(2)にローラ対142により搬送され、更にローラ対143により現像部130内へ搬送され、ドラム14と複数のローラ16との間を通りドラム14の回転によりドラム14の周囲で加熱されながら方向(3)に搬送されることで熱現像され、その試験画像の潜像が可視像化される(S03)。
【0053】
次に、可視化された試験画像の形成されたフィルムFがローラ対144により搬送され、濃度計200によりフィルムFの試験画像の濃度を読み取ることで濃度を測定し(S04)、更にローラ対144により方向(4)へ搬送され、装置100の外部の排出トレイ部160に排出される。また、上記露光工程S02で所定の露光量で露光した所定領域の濃度測定を行い、その測定した濃度値を補正制御部71のメモリに記憶させる(S09)。この濃度値は後でパッチ画像の測定濃度値を比較するときの比較用濃度値として使用される。なお、フィルムにおいて所定の露光量で露光する所定領域は、フィルム先端部の領域が好ましい。
【0054】
上記濃度測定で得た濃度と露光量との図9(a)のような関係からLUTを作成し、露光部120の補正制御部71のメモリに記憶させる(S05)。以上のようにして、試験用露光データによりキャリブレーションを行う。
【0055】
〈診断画像の形成〉
【0056】
次に、図3のように、露光部120において画像信号出力装置121から画像信号Sとして診断画像信号を入力し(S06)、D/A変換器122、変調回路123、及びドライバ124を介してレーザ光源部110aから変調されたレーザ光Lを照射することでフィルムFにレーザ露光し診断画像の潜像を形成する(S07)。この露光のとき、上記LUTによる濃度補正が行われる。
【0057】
また、上記露光時に、フィルムFの先端側の隅に、上記キャリブレーションの工程S09で濃度測定を行った所定領域に対する露光量と同一の露光量でパッチ画像を露光することで、パッチ画像の潜像を形成する(S10)。
【0058】
次に、図1のように、フィルムFを搬送し、現像部130で熱現像し、可視像である診断画像及びパッチ画像を得る(S08)。そして、パッチ画像が隅に形成されたフィルムFを更に搬送し、濃度計200でパッチ画像の濃度を測定してから(S11)、画像形成装置100の外部の排出トレイ部160に排出する。
【0059】
一方、上述のキャリブレーションのときの工程S09で、パッチ画像の露光量と同じ露光量で露光した所定領域の測定濃度値を比較用濃度値とし(S12)、パッチ画像の測定濃度値と上記比較用濃度値との差分を求め(S13)、その濃度差に基づいて補正を行うか否かを判断し(S14)、濃度差が一定以上である場合には、補正制御部71が次のフィルムの露光時に最適な変調量となるような補正量をメモリに記憶させる(S15)。
【0060】
なお、キャリブレーションのときの露光工程S02で所定の露光量で露光した所定領域は、濃度が1.0乃至2.0の範囲内の部分を使用することが好ましい。
【0061】
そして、次の診断画像データ信号が入力すると(S06)、上記と同様の工程を実行し、露光工程(S07)において上記補正量を加味して変調されたレーザ光によりレーザ露光が行われるので、装置内温度の変化等の影響によるフィルムの感度変化、露光部120のAOMドライバ89や高周波重畳部118等における特性変化、または加熱ドラム14の特性変化等に起因して現像濃度が変化し、一定以上の濃度変動が起き得る状況となっても、その状況に応じて濃度補正するので、常に適性な濃度の診断画像を得ることができる。
【0062】
以上のように、図4の濃度調整方法によれば、パッチ画像の露光量を直前のキャリブレーションで測定濃度値を得たときの露光量と同一とし、パッチ画像の測定濃度値と比較する比較用濃度値として、所定の固定値ではなく、その直前のキャリブレーションで得た測定濃度値を自動的に読み込んで用いることができるので、露光部120,現像部130等の露光系・現像系の特性に変動が生じたりまたフィルムの特性に差が生じても、その都度、より的確に画像濃度を補正でき、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができる。また、比較用濃度値の濃度測定S09はキャリブレーションのときの濃度測定S04と同時に自動的に行うことができるので、使用するフィルムは1枚ですみ、経済的である。
【0063】
次に、図5に示すフローチャートを参照して別の濃度調整方法について説明する。まず、図4と同様にして、次のようにキャリブレーションを実行する。即ち、試験用露光データ信号が露光部120に入力され(S21)、この信号に基づいてフィルムFが所定の露光パターンで露光され(S22)、試験画像の潜像が形成されたフィルムFが現像部130内で熱現像される(S23)。そして、試験画像の形成されたフィルムFから濃度計200が試験画像の濃度を読み取ることで濃度を測定し(S24)、この濃度測定で得た濃度と露光量との関係からLUTを作成し、露光部120の補正制御部71のメモリに記憶させる(S25)。
【0064】
次に、上記LUTから所定の濃度を得る露光量を求め(S26)、この求めた露光量でフィルムを露光し(S27)、現像し(S28)、その露光した領域の画像の濃度を測定し、その測定した濃度値を補正制御部71のメモリに記憶させる(S29)。この測定した濃度値を後でパッチ画像の測定濃度値を比較するときの比較用濃度値とする(S30)。
【0065】
次に、診断画像信号が露光部120に入力すると(S31)、図4と同様にして、フィルムFにレーザ露光し診断画像の潜像を形成し(S32)、このとき、フィルム先端部の隅に、上記工程S26で求めた露光量と同一の露光量で露光しパッチ画像を形成する(S33)。そして、現像部130で熱現像し(S34)、フィルムFの隅に形成されたパッチ画像の濃度を濃度計200で測定する(S35)。
【0066】
次に、上記パッチ画像の測定濃度値と、上記工程S30で得た比較用濃度値とから求めた濃度差(S36)に基づいて補正を行うか否かを判断し(S37)、濃度差が一定以上である場合には、補正制御部71が次のフィルムの露光時に最適な変調量となるような補正量をメモリに記憶させる(S38)。
【0067】
そして、上記工程S31に戻り、次の診断画像信号が入力すると上記と同様の工程を実行し、露光工程S32において上記補正量を加味して変調されたレーザ光によりレーザ露光が行われる。
【0068】
以上のように、図5の濃度調整方法によれば、パッチ画像の測定濃度値と比較する比較用濃度値として、所定の固定値ではなく、その直前のキャリブレーションで得たLUTから求めた露光量で露光した画像の濃度を測定し、その測定した濃度値を用いるので、図4と同様に、露光部120,現像部130等の露光系・現像系の特性に変動が生じたりまたフィルムの特性に差が生じても、その都度、より的確に画像濃度を補正でき、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができる。
【0069】
また、図4では、絶対的な光量指定で目標濃度値を読み取るので、現像特性が変化していると、本来特性変動に敏感な濃度域(例えばD=1.O)となるように光量を指定していても、仕上がり濃度域が例えばD=0.5近傍で、特性変動に対する感度が比較的弱い濃度域をベースにパッチ画像の濃度の差分による補正を繰り返すことになり、精度がやや劣るのに対し、図5では、キャリブレーション実施後の敏感な濃度域(例えばD=1.0)を維持するようにLUTに従い光量を計算するので、パッチ画像の濃度の差分による補正の精度が向上する。また、パッチ画像における露光量と診断画像の露光量とはいずれもLUTを経由して決定されるので、診断画像の光量を決定する回路構成・データ処理が簡便になる。
【0070】
なお、図4では、LUTを経由しないパッチ画像の露光量と、LUTを経由する診断画像の露光量とが混在するため回路構成・データ処理が複雑になるが、図4では使用するフィルムが1枚ですむのに対し、図5では、フィルムが少なくとも2枚(キャリブレーション用に1枚、比較用濃度値測定用に少なくとも1枚)必要となる。
【0071】
次に、図6に示すフローチャートを参照して更に別の濃度調整方法について説明する。図6の濃度調整方法は、図5と同様の濃度調整方法であるが、画像形成装置100において加熱ドラム14の交換や冷却搬送部150の交換・清掃等のメンテナンスが実施されたときに、この前後で現像特性が比較的急激に変化するので、LUTの再作成を行うとともに、パッチ画像の測定濃度値と比較する比較用濃度値を再設定するようにしたものである。
【0072】
まず、図5と同様にして、キャリブレーションを実行する。即ち、試験用露光データ信号が露光部120に入力され(S41)、フィルムFが所定の露光パターンで露光され(S42)、現像部130内で熱現像される(S43)。そして、濃度計200が試験画像の濃度を読み取ることで濃度を測定し(S44)、この濃度測定で得た濃度と露光量との関係からLUTを作成し、露光部120の補正制御部71のメモリに記憶させる(S45)。
【0073】
次に、上記LUTから所定の濃度を得る露光量を求め(S46)、この求めた露光量でフィルムを露光し(S47)、現像し(S48)、その露光した領域の画像の濃度を測定し、その測定した濃度値を補正制御部71のメモリに記憶させる(S49)。この測定した濃度値を後でパッチ画像の測定濃度値を比較するときの比較用濃度値とする(S50)。
【0074】
次に、上記LUTの作成及び比較用濃度値の設定後に、画像形成装置100において加熱ドラム14の交換や冷却搬送部150の清掃等のメンテナンスが実施されていなければ(S51)、診断画像信号が露光部120に入力し(S52)、図5と同様にして、フィルムFに露光し診断画像の潜像を形成し(S53)、このとき、フィルム先端部の隅に、上記工程S46で求めた露光量と同一の露光量で露光しパッチ画像を形成する(S54)。そして、現像部130で熱現像し(S55)、フィルムFの隅に形成されたパッチ画像の濃度を濃度計200で測定する(S56)。
【0075】
次に、上記パッチ画像の測定濃度値と、上記工程S50で得た比較用濃度値とから求めた濃度差(S57)に基づいて補正を行うか否かを判断し(S58)、濃度差が一定以上である場合には、補正制御部71が次のフィルムの露光時に最適な変調量となるような補正量をメモリに記憶させる(S59)。
【0076】
そして、上記工程S51に戻り、画像形成装置100において加熱ドラム14の交換や冷却搬送部150の清掃等のメンテナンスが実施されたときには(S51)、上記工程S41に戻り、工程S41乃至S45を実行することでLUTを再作成し、かつ工程S46乃至S50を実行することで比較用濃度値を再設定する。
【0077】
以上のように、図6の濃度調整方法によれば、図5と同様に、露光部120,現像部130等の露光系・現像系の特性に変動が生じたりまたフィルムの特性に差が生じても、その都度、より的確に画像濃度を補正でき、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができる。また、パッチ画像の濃度の差分による補正の精度が向上し、また診断画像の光量を決定する回路構成・データ処理が簡便になる。
【0078】
更に、画像形成装置100のメンテナンス時に加熱ドラム14の交換を実行したり、冷却搬送部150で図10のガイド部材21の案内面30を構成する第1部材22の不織布を交換したり案内面30や搬送ローラ対144を清掃したときに、この前後でそれらの特性が比較的急激に変化するが、その後に、LUTの再作成を行いかつパッチ画像の測定濃度値と比較する比較用濃度値を再設定するので、かかるメンテナンスや交換による特性変化を相殺し適切に補正できる。
【0079】
なお、図5,図6の工程S26,工程S46における所定の濃度としては、1.0乃至2.0の範囲内の濃度とすることが好ましい。
【0080】
また、図5,図6の工程S29,工程S49における比較用濃度値を得るために測定する濃度値は、複数回濃度測定を行い、その平均値を用いることが好ましく、より正確な値を得ることができる。
【0081】
また、図6の濃度調整方法は図5にメンテナンス実施の有無を判断する工程S51を付加したものであるが、同様に図4にメンテナンス実施の有無を判断する工程を付加することで、図6と同様の効果を得ることができる。
【0082】
次に、図7,図8により本実施の形態における熱現像感光材料であるフィルムFにおける潜像形成及び熱現像ついて説明する。図7は、フィルムFの断面図であり、露光時におけるフィルムF内の化学的反応を模式的に示した図である。図8は、加熱時におけるフィルムF内の化学的反応を模式的に示した、図7と同様な断面図である。
【0083】
フィルムFは、PETからなる支持体(基層)上に、耐熱性バインダを主成分とする感光層が形成され、更に、その上に耐熱性バインダを主成分とする保護層が形成されている。感光層には、ハロゲン化銀粒子と、有機酸銀の一種であるベヘン酸銀(Beh.Ag)と、還元剤及び調色剤とが配合されている。また、支持体の裏面にも耐熱性バインダを主成分とする裏面層が設けられている。
【0084】
上述の露光時に、露光部120よりレーザ光LがフィルムFに対して照射されると、図7に示すように、レーザ光Lが照射された領域に、ハロゲン化銀粒子が感光し、潜像が形成される。一方、上述のようにフィルムFが現像部130のドラム14で加熱されて最低熱現像温度以上になると、図8に示すように、ベヘン酸銀から銀イオン(Ag+)が放出され、銀イオンを放出したベヘン酸は調色剤と錯体を形成する。その後銀イオンが拡散して、感光したハロゲン化銀粒子を核として還元剤が作用し、化学的反応により銀画像が形成されると思われる。このようにフィルムFは、感光性ハロゲン化銀粒子と、有機銀塩と、銀イオン還元剤とを含有し、40℃以下の温度では実質的に熱現像されず、80℃以上である最低現像温度(例えば約110℃)以上の温度で熱現像される。
【0085】
以上のように本発明を実施の形態により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、濃度補正のためにレーザ光の強度(光量)を調整するようにしたが、現像部130のドラム14のヒータ温度を制御し現像温度を調整するようにしてもよく、またレーザ光の強度(光量)及び現像温度の両方を調整するようにしてもよい。
【0086】
【発明の効果】
本発明の濃度調整方法によれば、診断画像形成において露光系・現像系等に特性変動が生じても、またフィルム特性に差が生じても、同一の診断画像信号に対してその画像濃度をほぼ等しい濃度範囲に収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による画像形成装置の要部を示す正面図である。
【図2】図1の画像形成装置の制御系を示すブロック図であり、
【図3】図1の画像形成装置の露光部を概略的に示す図である。
【図4】図1の画像形成装置における濃度調整を行うステップを示すフローチャートである。
【図5】図1の画像形成装置における別の濃度調整を行うステップを示すフローチャートである。
【図6】図1の画像形成装置における更に別の濃度調整を行うステップを示すフローチャートである。
【図7】フィルムFの断面図であり、図1の画像形成装置での露光時におけるフィルムF内の化学的反応を模式的に示した図である。
【図8】図1の画像形成装置での加熱時におけるフィルムF内の化学的反応を模式的に示した、図7と同様な断面図である。
【図9】図9(a)は本実施の形態のキャリブレーションにおいて求めた光量と濃度との関係を示す図であり、図9(b)は再キャリブレーションを行うことで再度求めた光量と濃度との関係を示す図である。
【図10】図1の冷却搬送部において加熱ドラムの近傍に配置されたガイド部材を示す要部正面図である。
【符号の説明】
100・・・画像形成装置
110・・・供給部
120・・・露光部
130・・・熱現像部
150・・・冷却搬送部
200・・・濃度計
11・・・第1の装填部
12・・・第2の装填部
14・・・ドラム
71・・・補正制御部
88・・・音響光学変調器
89・・・AOMドライバ
99・・・制御部
110a・・・レーザ光源部
F・・・フィルム
S・・・画像信号(診断画像信号)
Claims (18)
- 試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、
前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、
前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、
前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含む濃度調整方法であって、
前記試験用露光データで露光した所定領域の濃度を測定し、この濃度値を前記比較用濃度値として使用するとともに、診断画像を形成するときに前記一部領域を露光するに際し前記所定領域の露光量と同一露光量で露光することを特徴とする濃度調整方法。 - 前記所定領域において濃度が1.0乃至2.0の範囲内にある部分を使用することを特徴とする請求項1に記載の濃度調整方法。
- 前記試験用露光データで露光された画像のうち、前記フィルムの先端部の所定領域を前記濃度測定のために使用することを特徴とする請求項1または2に記載の濃度調整方法。
- 前記診断画像を形成するときの前記一部領域をフィルムの先端部分に設けることを特徴とする請求項1,2または3に記載の濃度調整方法。
- 試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、
前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、
前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、
前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含む濃度調整方法であって、
前記ルックアップテーブルの作成後に、そのルックアップテーブルから所定の濃度を得る露光量を求め、その露光量でフィルムを露光し、その画像の濃度を測定し、その濃度を前記比較用濃度とするとともに、以後の診断画像の一部領域をその露光量と同一の露光量で露光することを特徴とする濃度調整方法。 - 前記所定の濃度として1.0乃至2.0の範囲内の濃度を使用することを特徴とする請求項5に記載の濃度調整方法。
- 前記フィルムの先端部の所定領域における濃度を前記比較用濃度として使用することを特徴とする請求項5または6に記載の濃度調整方法。
- 前記所定領域における濃度を複数回測定しそれらの平均値を前記比較用濃度とすることを特徴とする請求項7に記載の濃度調整方法。
- 試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、
前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、
前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、
前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含み、
前記ルックアップテーブルの作成後、そのルックアップテーブルにより所定の濃度を得る露光量を求め、その露光量でフィルムを露光し、その画像の濃度を測定し、その濃度を前記比較用濃度とするとともに、以後の診断画像の一部領域をその露光量と同一の露光量で露光する濃度調整方法であって、
前記フィルム、前記現像工程、前記露光工程及び前記濃度測定工程のうちの少なくとも1つの状態を変更したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことを特徴とする濃度調整方法。 - 前記所定の濃度として1.0乃至2.0の範囲内の濃度を使用することを特徴とする請求項9に記載の濃度調整方法。
- 前記フィルムの先端部の所定領域における濃度を前記比較用濃度として使用することを特徴とする請求項9または10に記載の濃度調整方法。
- 前記所定領域における濃度を複数回測定しそれらの平均値を前記比較用濃度とすることを特徴とする請求項11に記載の濃度調整方法。
- 前記現像工程は、前記フィルムを加熱する加熱部材を含む加熱部及び前記加熱されたフィルムを冷却しながら搬送する冷却搬送部で実行され、
前記加熱部材の交換及び/又は前記冷却搬送部のメンテナンスを実行したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の濃度調整方法。 - 試験用露光データまたは診断画像信号に基づいてフィルムを露光し画像形成を行う露光工程と、
前記露光されて形成された潜像を現像する現像工程と、
前記現像された画像の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記試験用露光データとその試験用露光データによりフィルムに形成された画像の測定濃度とに基づいて診断画像信号が指定する濃度を再現するように画像信号と露光量とを関連づけるルックアップテーブルを作成する工程と、
前記診断画像信号により診断画像を形成するときにフィルムの一部領域を所定の光量で露光し、その一部領域を濃度測定して得られた測定濃度値と、前記所定の露光量に対応する比較用濃度値との差分に基づいて次以降のフィルムの濃度が最適化するように前記露光工程における露光条件及び前記現像工程における現像条件の少なくとも一方を補正する工程と、を含み、
前記試験用露光データで露光した所定領域の濃度を測定し、この濃度値を前記比較用濃度値として使用するとともに、診断画像を形成するときに前記一部領域を露光するに際し前記所定領域の露光量と同一露光量で露光する濃度調整方法であって、
前記フィルム、前記現像工程、前記露光工程及び前記濃度測定工程のうちの少なくとも1つの状態を変更したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことを特徴とする濃度調整方法。 - 前記所定領域において濃度が1.0乃至2.0の範囲内にある部分を使用することを特徴とする請求項14に記載の濃度調整方法。
- 前記試験用露光データで露光された画像のうち、前記フィルムの先端部の所定領域を前記濃度測定のために使用することを特徴とする請求項14または15に記載の濃度調整方法。
- 前記診断画像を形成するときの前記一部領域をフィルムの先端部分に設けることを特徴とする請求項14,15または16に記載の濃度調整方法。
- 前記現像工程は、前記フィルムを加熱する加熱部材を含む加熱部及び前記加熱されたフィルムを冷却しながら搬送する冷却搬送部で実行され、
前記加熱部材の交換及び/又は前記冷却搬送部のメンテナンスを実行したときに、前記ルックアップテーブルを作成するとともに、前記比較用濃度値の設定を行うことを特徴とする請求項14乃至17のいずれか1項に記載の濃度調整方法。
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