JP4195281B2 - 気泡緩衝シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、多数の独立中空室を有する気泡緩衝シートに関し、さらに詳しくは多数の独立中空室を有し、しかも環境に左右されずに有効な帯電防止性を保持する気泡緩衝シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂シートの層間に多数の独立した中空室を形成させた気泡緩衝シートは、緩衝材料や包装材料や断熱材料として物流面で広く活用されている。通常、熱可塑性樹脂としてはポリオレフィン樹脂が用いられているが、ポリオレフィン樹脂は容易に帯電してほこりや毛髪を吸着しやすく、包装する対象物によって不都合が生じた。また、ICやトランジスターといった電子部品の緩衝シートとして使用した場合、帯電した静電気の放電によって電子部品が損傷するといった問題も抱えていた。このような問題は、特に空気中の湿度が低い冬場にしばしば発生しており、このような現象を防止するために帯電防止処理を施す試みがなされており、例えば、プラスチック製品の帯電防止の目的で用いられる界面活性剤を熱可塑性樹脂シート素材に配合する試みが考えられた。
【0003】
確かに、例えば脂肪酸モノグリセライドのような低分子量の界面活性剤は大気中の水分を取り込んで帯電を防止する作用を発現することから、気泡緩衝シートの樹脂素材に界面活性剤を練り込む試みもなされていた(特許文献1)。この場合、低分子量の界面活性剤は成形品の表面にブリードアウトすることによって帯電防止機能を発揮するので、所望の機能が発現するまでに時間を要するという欠点があった。また、例えば気泡緩衝シートを使用する環境や季節、すなわち大気中の湿度によって帯電防止効果が影響を受けやすく、空気中の湿度が低い場合には十分な効果が得られないという事態が起こった。さらに、低分子量の界面活性剤は、例えば洗浄によって容易に洗い流され、その結果帯電防止効果が失われる虞れもあった。加えて、界面活性剤の種類によっては被包装体への移行による汚染、腐食などの悪影響も懸念された。ともあれ、低分子量の界面活性剤は安価で帯電防止性に優れてはいるが、低分子量の界面活性剤であるが故の新たなる問題が発生した。
【0004】
【特許文献1】
実公平6−8055号公報、実用新案登録請求の範囲、第4欄第8行〜第22行
低分子量の界面活性剤による不都合を避けるために、例えば特許文献2には、「多数の凸部を有するキャップフィルムに平滑なバックフィルムを貼着した気泡シートにおいて、その材質が合成樹脂中に、メタクリル酸にエチレンを共重合させ、金属イオンによって架橋されたアイオノマー樹脂を0.5から35%混合した樹脂であることを特徴とする気泡シート」が提案されている。
【0005】
この特許文献2の記載によると、金属イオンの働きによって帯電防止が達成され、しかもその働きは半永久的であると言う。
【0006】
特許文献3には、「多数の凸部を形成してなる合成樹脂フィルムに平坦な合成樹脂フィルムを貼着してなる気泡シートまたは該気泡シートと他のシートを積層してなる積層気泡シートにおいて、気泡シートを構成するフィルムのうちの少なくとも1枚のフィルムが、導電化材である化学式1または化学式2の有機ホウ素化合物を0.2〜5%練り込んだことを特徴とする非帯電性気泡シート」が提案されている。
【0007】
この提案では、導電化材はブリードし難いので被包装物を腐食することがないと言う。
【0008】
しかし、上記いずれの提案においても、気泡緩衝シートの素材樹脂にアイオノマー樹脂や有機ホウ素化合物を配合しているのでシート同士の層間接着が十分には達成されない怖れがあり、必ずしも実用的であるとは言えない。
【0009】
【特許文献2】
特開平10−16099号公報、特許請求の範囲、【0017】欄
【特許文献3】
特開平5−77346号公報、特許請求の範囲、【0020】欄
上記の通り、大気中の湿度といった環境要素に左右されない帯電防止剤としてポリマータイプの帯電防止剤が近年開発され、永久帯電防止効果を示す材料として注目されている。しかし、気泡緩衝シートの製造においては、所望の帯電防止性能を発揮させるためには素材樹脂に対してかなりの量のポリマータイプの帯電防止剤を配合する必要があり、ポリマータイプの帯電防止剤を配合することによって素材樹脂の伸びが著しく損なわれて薄肉のフィルムを形成しにくくなるばかりでなく、フィルムとしての接着性が阻害されて、気泡緩衝シートを製造する際の一分間当たり数十メートル(通常、遅くとも50m/分)のラインスピードでは、押出し直後の2層のシートの層間接着が行われず層間剥離を起こし、良好な中空室が形成されていない不良品が発生しやすいという問題があった。さらには、ポリマータイプの帯電防止剤の配合はフィルムにヘイズを発生させる原因になり、得られる気泡緩衝シートの透明性が損なわれる結果を招く。加えて、ポリマータイプの帯電防止剤は高価であり、大量の配合は決して経済的ではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の課題は、中空室を形成するに際しての層間接着不良がなく、しかも半永久的な帯電防止効果を奏することのできる気泡緩衝シートを提供することにある。この発明の他の課題は、中空室を形成するに際しての層間接着不良がなく、半永久的な帯電防止効果を奏し、且つ透明性のある気泡緩衝シートを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、
(1) 熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂シートと熱可塑性樹脂を用いて形成された別の樹脂シートとが、これら両方の樹脂シートの間に多数の独立中空室が形成されるように、接合されている気泡緩衝シートにおいて、少なくとも何れか一方の前記樹脂シートの、他方の樹脂シートとは反対側の表面にはポリマータイプの帯電防止剤が含有され、該表面のエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が1×10〜1×1013(Ω)であり、両樹脂シートにおける接合面が実質的に前記帯電防止剤無含有であり、少なくとも何れか一方の前記樹脂シートが、前記帯電防止剤を含有する帯電防止層を含む多層構造樹脂シートであり、前記多層構造樹脂シートが共押出しして形成されており、前記帯電防止層が、前記多層構造樹脂シートに接合される他方の樹脂シートに対してもっとも外側に位置するように配置形成されてなることを特徴とする気泡緩衝シートであり、
更には、前記課題を解決するための手段は、
(2) 熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂シートと熱可塑性樹脂を用いて形成された別の樹脂シートとが、これら両方の樹脂シート間に多数の独立中空室が形成されるように、接合されている気泡緩衝シートにおいて、少なくとも何れか一方の前記樹脂シートが、ポリマータイプの帯電防止剤を含有する表面固有抵抗率が1×10〜1×1013(Ω)の帯電防止層を含む多層構造樹脂シートであり、前記多層構造樹脂シートが共押出しして形成されており、前記帯電防止層が前記多層構造樹脂シートに接合される他方の樹脂シートに対して最も外側に位置するように配置形成されて成ることを特徴とする気泡緩衝シートであり、
(3) 前記(1)又は(2)に記載の気泡緩衝シートにおいて、前記帯電防止層は、その坪量(単位:g/m)がこの帯電防止層を有する多層構造樹脂シートの坪量(単位:g/m)の多くとも40%であり、
(4) 前記(1)、(2)又は(3)に記載の気泡緩衝シートにおいて、前記帯電防止層は、帯電防止剤を3〜30重量%の割合で含有してなり、
前記(1)〜(4)の何れかに記載の気泡緩衝シートにおいて、前記帯電防止層は、融点が100〜230℃である帯電防止剤を含有してなり、
(6) 前記(1)〜(5)の何れかに記載の気泡緩衝シートにおいて、前記帯電防止層は、ポリエーテルを主成分とする帯電防止剤を含有してなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明に係る気泡緩衝シート1は、図1に示されるように、多数の独立中空室2が形成されるように二枚の樹脂シート3,4が張り合わされており、二枚の樹脂シートの少なくとも一方の樹脂シートの、他方の樹脂シートとは反対側の表面3A及び/又は4Aにおけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が1×10〜1×1013(Ω)であり、二枚の樹脂シート3,4が接合される表面、即ち接合面3B及び4Bが帯電防止層無含有となっている。
【0013】
なおここで、エタノール洗浄後の表面固有抵抗率は、試験片の状態調整以降はJIS K6911(1995)に準拠して測定する。具体的には、測定対象物であるシートから切り出した試験片(縦100mm×横100mm×厚み:試験片厚み)を23℃のエタノール中に沈めて超音波洗浄を24時間行った後、該試験片を温度30℃、相対湿度30%の雰囲気下で36時間放置して乾燥することにより試験片の状態調整を完了し、印加電圧500Vの条件にて電圧印加を開始して1分経過後の表面抵抗を測定して表面固有抵抗率を求める。なお、気泡緩衝シートの独立中空室による凸部が形成されている表面の表面固有抵抗率を測定する場合は、該独立中空室に針穴を空けて前記凸部を潰してから測定を行う。
【0014】
この発明の気泡緩衝シートにおいて、樹脂シートの最外表面の、表面固有抵抗率が1×1013(Ω)を越えると、帯電防止効果が不十分になり、気泡緩衝シートの表面に静電荷が蓄積して埃が付着し、あるいは放電を起こす。また逆に、この発明の気泡緩衝シートにおいて、樹脂シートの最外表面の表面固有抵抗率が1×10(Ω)よりも小さいと、帯電防止というよりも導電性を示す範疇のものとなり、用途によっては不具合を生ずる虞れがある。
【0015】
この発明において「実質的に帯電防止剤無含有」という意味は、帯電防止剤が全く含有されていないことのみを意味するのではなく、独立中空室を形成する二枚の樹脂シートが接合される際に、接合不良乃至接着不良を実質的に生じさせるほどに帯電防止剤が接合面に含有されていない場合も包含するという意味に理解されるべきである。したがって、接合面に実質的に帯電防止剤無含有の樹脂シートは、気泡緩衝シートとして使用可能な程度に両樹脂シートが接合されていればよく、前記接合不良乃至接着不良が生じない限り、後述するポリマータイプ等からなる帯電防止剤が若干量接合面に含有されていても良い。該接合面に若干量の帯電防止剤が含まれる場合としては、帯電防止剤を含む回収原料を使用して樹脂シートを形成する等の態様が想定される。
【0016】
このような条件を満たす限り、この発明に係る気泡緩衝シートは、様々の構造が採用される。例えば、図2に示されるように、気泡緩衝シート11は、多数の独立中空室12が形成されるように、二枚の樹脂シート13,14を張り合わせて成り、一方の樹脂シート13が帯電防止層13A(樹脂シート14に対して最も外側に位置するように配置形成されてなる帯電防止層)と帯電防止剤無含有の樹脂層13Bとからなる二層構造であり、他方の樹脂シート14が単層であり、前記帯電防止層13Aの、樹脂層14側とは反対側の表面におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が前記値となっている。他方の樹脂シート14は、熱可塑性樹脂から形成されており、樹脂層13Bと接合する表面が帯電防止剤無含有となっている。
【0017】
この発明に係る気泡緩衝シートの他の例として、図3に示されるように、気泡緩衝シート21は、多数の独立中空室22が形成されるように、二枚の樹脂シート23,24を張り合わせて成り、一方の樹脂シート24が帯電防止層24A(樹脂シート23に対して最も外側に位置するように配置形成されてなる帯電防止層)と帯電防止剤無含有の樹脂層24Bとからなる二層構造であり、他方の樹脂シート23が単層であり、前記帯電防止層24Aの、樹脂層23側とは反対側の表面におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が前記値となっている。他方の樹脂シート23は、熱可塑性樹脂から形成されており、樹脂層24Bと接合する表面が帯電防止剤無含有となっている。
【0018】
この発明に係る気泡緩衝シートの他の例として、図4に示されるように、気泡緩衝シート31は、多数の独立中空室32が形成されるように、二枚の樹脂シート33,34を張り合わせて成り、一方の樹脂シート33が帯電防止層33A(樹脂シート34に対して最も外側に位置するように配置形成されてなる帯電防止層)と帯電防止剤無含有の樹脂層33Bとからなる二層構造であり、他方の樹脂シート34もまた帯電防止層34A(樹脂シート33に対して最も外側に位置するように配置形成されてなる帯電防止層)と帯電防止剤無含有の樹脂層34Bとからなる二層構造であり、前記帯電防止層33Aの、樹脂層34側とは反対側の表面におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が前記値となり、また前記帯電防止層34Aの、樹脂層33側とは反対側の表面におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が前記値となっている。
【0019】
この発明に係る気泡緩衝シートの他の例として、図5に示されるように、気泡緩衝シート41は、多数の独立中空室42が形成されるように、二枚の樹脂シート43,44を張り合わせて成り、一方の樹脂シート43が帯電防止層43A(樹脂シート44に対して最も外側に位置するように配置形成されてなる帯電防止層)と機能性樹脂層43Cと帯電防止剤無含有の樹脂層43Bとからなる三層構造であり、他方の樹脂シート44は単層であり、前記帯電防止層43Aの樹脂層44側とは反対側の表面におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が前記値となっている。他方の樹脂シート44は、熱可塑性樹脂から形成されており、樹脂層43Bと接合する表面が帯電防止剤無含有となっている。また、この図5に示す層構成の気泡緩衝シートの他の変形例として、他方の樹脂シート44が、図4に示される樹脂シート34と同様の層構成であっても良い。機能性樹脂層43Cは、この気泡緩衝シートに要求される性能に応じて形成され、例えばガスバリヤー層、紫外線透過防止層、防湿層、臭気透過防止層、光反射層等であって良い。なお、上記機能性樹脂層としては、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、その他エチレン酢酸ビニル共重合体けん化物などから形成されるもの、更にはアルミ箔、アルミ蒸着膜等の金属層を有する樹脂層等が挙げられる。
【0020】
この発明に係る気泡緩衝シートの他の例として、図6に示されるように、気泡緩衝シート51は、多数の独立中空室52が形成されるように、二枚の樹脂シート53,54を張り合わせて成り、一方の樹脂シート53が帯電防止層53A(樹脂シート54に対して最も外側に位置するように配置形成されてなる帯電防止層)と機能性樹脂層53Cと帯電防止剤無含有の樹脂層53Bとからなる三層構造であり、他方の樹脂シート54もまた、帯電防止層54Aと機能性樹脂層54Cと帯電防止剤無含有の樹脂層54Bとからなる三層構造であり、前記帯電防止層53Aの、樹脂層54側とは反対側の表面におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が前記値となり、また、前記帯電防止層54Aの、樹脂層53側とは反対側の表面におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が前記値となっている。前記機能性樹脂層53C,54Cは、図5における機能性樹脂層43Cと同様であって良い。
【0021】
更に、図7に示すように、図3に示した気泡緩衝シートの凸部形状に形成された樹脂シート23上に更に熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂シート65を設けてなるような両面が平坦な表面を有する気泡緩衝シートであっても良い。
【0022】
図1から図7に示される層構成の気泡緩衝シートは、一例を示すのであって、この発明の気泡緩衝シートが図示された層構成の気泡緩衝シートに限定されることはない。
【0023】
この発明においては、独立中空室を形成するに当たり二枚の樹脂シートの接合面が実質的に帯電防止剤無含有となっているので、二枚の樹脂シートの接着性が良好であり、しかも二枚の樹脂シートの少なくとも何れかの樹脂シートの、他の樹脂シートとは反対側の表面が特定の表面固有抵抗率に調整されているので、帯電防止効果が発揮される。
【0024】
また、該樹脂シートの内少なくとも一方の樹脂シートが帯電防止層を含む多層構造樹脂シートであることが好ましい。このことにより帯電防止層の厚みを薄く形成し、帯電防止層中に含まれる帯電防止剤の濃度を維持して十分な帯電防止効果を発揮させつつ帯電防止剤の使用量を、当該帯電防止層の厚みを薄くした分だけ、減らすことができる。更に、帯電防止層の厚みを薄くすると、後述する気泡緩衝シートの透明性の課題も解決することができる。また、独立中空室を形成する二枚の樹脂シートの接着性において、両樹脂シートの接合面が帯電防止剤を全く含有していないことがより好ましく、帯電防止剤を全く含有していない接合面を実現するために、図2から図7において説明したような少なくとも一方の樹脂シートが当該多層構造の樹脂シートからなるシート、更に、図4および図6に示すような両方の樹脂シートが当該多層構造からなるシートが好ましく採用され、接合面の接着性が極めて優れた気泡緩衝シートを得ることができる。
【0025】
一方の表面における表面固有抵抗率がこの発明で規定する範囲にあり、他方の表面には帯電防止剤無含有である樹脂シートは、それが単層又は多層構造である場合には、この発明で規定する表面固有抵抗率にすることのできる帯電防止剤含有の溶融樹脂と帯電防止剤無含有の溶融樹脂とを共押出しして形成することができる。
【0026】
また、一方の表面における表面固有抵抗率がこの発明で規定する範囲にあり、他方の表面は帯電防止剤無含有である樹脂シートは、それが多層構成であるときには、前記の共押出し方法のほかに、表面固有抵抗率がこの発明で規定する範囲にある樹脂シートと、帯電防止剤無含有の樹脂シートとを、直接に接合し、又は機能性樹脂シートを介在させて接合することにより形成することができる。この場合、樹脂シート同士の接合は、溶融接着、接着剤による接着等の手段を講じて行うことができる。
【0027】
なお、単層及び多層構造樹脂シートの形成には、共押出しによる方法を採用することが、帯電防止層又は帯電防止剤を多く含む部分を薄く形成することができること、帯電防止層が他の層と良好に接合したものができることなどから、好ましい。
【0028】
表面固有抵抗率がこの発明で規定する範囲にある帯電防止層は、従来から公知の気泡緩衝シートに用いられる公知の樹脂又は気泡緩衝シートに要求される特性に応じて適切に選択される樹脂と、一般に永久帯電防止剤と呼ばれる帯電防止剤とを含有してなる。
【0029】
帯電防止層を形成するための基材樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば特に制約がなく、好適例として、ポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、柔軟性に富み、引張り強度等の物理的強度に優れ、耐薬品性を有し、押出成形性適性があるので、この発明の気泡緩衝シートを構成する基材樹脂として優れた素材である。ポリオレフィン系樹脂の中でも特に剛性や耐熱性に優れるポリプロピレン系樹脂、及び柔軟性と成形性とに優れるポリエチレン系樹脂が好ましく使用される。
【0030】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他の共重合成分としては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらにまた二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
前記基材樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂に、さらに必要に応じて他の重合体を混合したブレンド物も使用することができる。他の重合体としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物、エチレン−オクテンブロック共重合、エチレン−ブチレンブロック共重合等の熱可塑性エラストマー;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等のエチレン系樹脂;ブテン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;スチレン系樹脂等が挙げられる。これらの他の重合体を混合する場合には、その混合量は、基材樹脂総重量の40重量%以下にすることが好ましい。
【0032】
基材樹脂として使用される前記ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体またはエチレンと炭素数が3〜12個のα−オレフィンとからなる共重合体を挙げることができる。前記ポリエチレン系樹脂として、具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選択される1種または2種以上の混合物、更には40重量%以下の割合でプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等のその他の重合体を混合したブレンド物も挙げられる。
【0033】
帯電防止剤の好適例としては、ポリマータイプの帯電防止剤(所謂、永久帯電防止剤)が挙げられる。このポリマータイプの帯電防止剤は、少なくとも数平均分子量が300以上であり、好ましくは300〜300000であり、更に好ましくは600〜15000であり、かつ表面固有抵抗率が1×1013Ωよりも小さい値を持つ高分子化合物を挙げることができる。このポリマータイプの帯電防止剤は、無機塩又は低分子量有機プロトン酸塩、例えばLiClO4、LiCF3SO3、NaClO4、LiBF4、NaBF4、KBF4、KClO4、KPF3SO3、Ca(ClO4)2、Mg(ClO42、Zn(ClO4)2等を含有していても良い。上記分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーを用いて常法に従って測定された数値である。
【0034】
この発明において、ポリマータイプの帯電防止剤は、具体的には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、エチレン−メタクリル酸共重合体などのアイオノマー、ポリエチレングリコールメタクリレート系重合体等の第四級アンモニウム塩から選択される1種、または2種以上の混合物、または2種以上の共重合体、更にそれらとポリプロピレンなどの他の樹脂との共重合体等の中で、分子鎖中に極性基を有していて無機塩又は低分子量有機プロトン酸塩を錯体形成または溶媒和することが可能な樹脂、又は、無機塩又は有機プロトン酸塩等を錯体形成または溶媒和した樹脂を挙げることができる。
【0035】
尚、ポリマータイプの帯電防止剤が有する融点の上限はおおむね230℃であり、下限はおおむね100℃であり、好ましくは130〜220℃である。融点が上記範囲内にある帯電防止剤を選択することにより、帯電防止剤が添加される基材樹脂の基礎物性を維持しつつ、良好な帯電防止性が発現する。
【0036】
また、ポリマータイプの帯電防止剤が有する結晶化温度は、帯電防止層がポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする場合、そのポリオレフィン系樹脂が有する結晶化温度(Tc)を基準として、(Tc+40℃)以下であることが好ましい。尚、該帯電防止剤の結晶化温度の下限はおおむね60℃である。帯電防止剤の結晶化温度が上記範囲内のものを選択することにより、帯電防止効果に優れた帯電防止層が得られる。
【0037】
なお、ポリマータイプの帯電防止剤及び基材樹脂の融点及び結晶化温度は、JIS K7121−1987に準拠して、熱流束示差走査熱量測定により求めることができる。測定条件の詳細は以下の通りである。
【0038】
融点:「JIS K7121−1987、3.試験片の状態調節(2)」の条件(但し、冷却速度10℃/分。)により試験片を状態調整した試験片を使用して、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。尚、帯電防止剤が組成物であることによる等して融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。但し、最も面積の大きな融解ピークが複数存在する場合は、それらの融解ピークの頂点の温度の算術平均値を融点とする。
【0039】
結晶化温度:「JIS K7121−1987、3.試験片の状態調節(2)」の条件において、冷却速度10℃/分の降温時に得られる発熱ピークの頂点の温度を結晶化温度とする。尚、発熱ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな発熱ピークの頂点の温度を結晶化温度とする。但し、最も面積の大きな発熱ピークが複数存在する場合は、それらの発熱ピークの頂点の温度の算術平均値を結晶化温度とする。
【0040】
この発明における帯電防止剤の中でも好適な帯電防止剤としては、ポリエーテルエステルアミドを主成分とする帯電防止剤、及びポリエーテルを主成分とする帯電防止剤を挙げることができる。これらの帯電防止剤は、帯電防止層を形成する基材樹脂のメルト・フロー・レイトと帯電防止剤のメルト・フロー・レイトとの比に大きく左右されずに優れた帯電防止効果を発揮させることができる。更に、これらの帯電防止剤は、帯電防止層を形成する基材樹脂との相溶性が良好である。
【0041】
前記ポリエーテルエステルアミドを主成分とする帯電防止剤は、下記に例示するポリアミド(1)とビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(2)との重合反応により得ることができる。
【0042】
ポリアミド(1)としては、(a)ラクタム開環重合体、(b)アミノカルボン酸の重縮合体、若しくは(c)ジカルボン酸とジアミンとの重縮合体を例示することができる。
【0043】
ラクタム開環重合体としてはカプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、ウンデカラクタム等の開環重合体が挙げられる。
【0044】
前記アミノカルボン酸としては、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペルゴン酸、ω-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0045】
前記ジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、イソフタル酸等が挙げられ、またジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等が挙げられる。
【0046】
上記ポリアミドを与えるモノマーとして例示したものは二種類以上使用しても良い。これらのうち好ましいものは、カプロラクタム、12-アミノドデカン酸、及びアジピン酸−ヘキサメチレンジアミンであり、特に好ましいものはカプロラクタムである。
【0047】
前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(2)のビスフェノール類としては、ビスフェノールA(4,4'-ジヒドロキシジフェニル-2,2-プロパン)、ビスフェノールF(4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン)、ビスフェノールS(4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン)、4,4'-ジヒドロキシジフェニル-2,2-ブタン等が挙げられ、これらのうち特に好ましいものはビスフェノールAである。
【0048】
また前記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(2)のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-若しくは1,4-ブチレンオキサイド、及びこれらの二種類以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものはエチレンオキサイドである。
【0049】
ポリエーテルエステルアミドを主成分とする帯電防止剤の融点は、230℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。該融点が230℃を超えると、ポリオレフィン系樹脂と該帯電防止剤とを溶融し、これらを混合する際、両樹脂の温度を必要以上に高くしなければならないので、ポリオレフィン系樹脂が劣化する虞れがある。
【0050】
ポリエーテルエステルアミドを主成分とする帯電防止剤の融点が200℃以下の場合は、最外樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂が劣化する虞れが殆どない。
【0051】
前記ポリエーテルを主成分とする帯電防止剤としては、a)フェノール類・ジビニルベンゼン付加重合体にアルキレンオキサイドを付加反応させることにより得られるオキシアルキレンエーテル、又はb)ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物等のジグリシジルエーテルと、ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、オクタデシル、オレイルなどの炭素数1〜22(好ましくは炭素数6〜22)の脂肪族炭化水素基を有するアミン化合物と、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のアルキル硫酸エステル;ジメチル炭酸、ジエチル炭酸等のアルキル炭酸エステル;トリメチルホスフェイト、アルキルベンジルクロライド、ベンジルクロライド、アルキルクロライド、アルキルブロマイド等の各種ホスフェイトまたはハライドなどの4級化剤との反応物であり、かつ分子内に2個以上の4級アンモニウム塩基を有するカチオン型の化合物等が挙げられる。
【0052】
上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドが挙げられ、これらの内、エチレンオキサイド及びエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体が好ましい。アルキレンオキサイドの付加モル数は、通常1〜500、好ましくは20〜300であり、オキシアルキレンエーテル中のオキシアルキレン含量は、10〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%である。
【0053】
上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA(4,4'−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(4,4'−ジヒドロキシジフェニルメタン)、ビスフェノールS(4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン)、4,4'−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタンなどが挙げられる。
【0054】
上記ジグリシジルエーテルのうち特に好ましいものは、ポリオキシエチレングリコールのグリシジルエーテル、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加物のジグリシジルエーテルおよびこれらの混合物である。
【0055】
上記アミン化合物のうち特に好ましいものは、N−アルキル(炭素数1〜18)ジエタノールアミンである。
【0056】
上記4級化剤のうち特に好ましいものは、ジメチル硫酸およびジエチル硫酸である。
【0057】
前述したポリエーテルエステルアミドまたはポリエーテルを主成分とする帯電防止剤は、これを基材樹脂と混合することにより帯電防止層における帯電防止効果又は物性の低下を抑制することを目的に、帯電防止層を構成しているポリオレフィン系樹脂と同種類のポリオレフィン系樹脂(特に、数平均分子量が800〜25000の変性ポリオレフィン系樹脂)及び/又はポリアミドと併用されることが、好ましい。ここで使用されるポリアミドとしては、ジアミン及びジカルボン酸及び/又はアミノカルボン酸又は相当するラクタムから誘導されたポリアミド及びコポリアミドが挙げられる。具体的には、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、6/10、6/9、6/12、4/6、12/12、ポリアミド11、ポリアミド12、m−キシレンジアミンとアジピン酸との芳香族ポリアミド、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸及び/又はテレフタル酸とから、必要に応じてエラストマーを添加して得られるポリアミド、上記ポリアミドとポリオレフィン、オレフィンコポリマー、アイオノマー又はエラストマーとの共重合体、ポリアミドとポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールとのブロックコポリマー、EPDM又はABSで変性させたポリアミド又はコポリアミド等が例示される。これらのポリオレフィン系樹脂やポリアミドの含有量は50重量%以下、好ましくは25重量%以下である。
【0058】
以上に詳述したポリマータイプの帯電防止剤の、帯電防止層中の含有量は、通常3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは8〜20重量%である。帯電防止剤の含有量が前記範囲よりも多いとコスト高となってしまい、また、樹脂シート成形時にシート切れといった不都合を生じることがあり、含有量が前記範囲よりも少ないと充分な帯電防止効果を奏することができないことがある。
【0059】
上述したポリマータイプの帯電防止剤を含有する帯電防止層は、エタノールによる超音波洗浄前後においても、帯電防止効果は失われない。一方、モノグリセリンエステル系等の界面活性剤からなる帯電防止剤の場合は、成形品表面にブリードアウトして空気中の水分を取り込み、帯電防止効果を発揮していても上記エタノールによる超音波洗浄後には帯電防止効果は失われてしまう。よって、使用されている帯電防止剤が界面活性剤からなる帯電防止剤か否かを判別する手段として、上記エタノールによる超音波洗浄が有効である。
【0060】
この発明における樹脂シートが前記帯電防止層と帯電防止剤無含有の樹脂層とを含有する積層構造を有する場合、その帯電防止剤無含有の樹脂層は、前記帯電防止層を形成する基材樹脂と同様の基材樹脂で形成することができる。
【0061】
前記帯電防止層は、その坪量(単位:g/m)がこの帯電防止層を有する多層構造樹脂シートの坪量(単位:g/m)の多くとも40%、更に30%未満、特に20%以下であるのが、好ましい。帯電防止層の坪量が40%を越えると、コスト高となり、また多層構造樹脂シートの絶対的な厚みにもよるが一般的な厚みの樹脂シートの場合には得られる気泡緩衝シートの透明性において不十分なものとなってしまう虞れがある。尚。該帯電防止層の坪量の下限はおおむね2%である。
【0062】
この発明の気泡緩衝シートにおける一方の樹脂シート及び他方の樹脂シートのそれぞれの厚みは、気泡緩衝シートの用途に応じて適宜に決定されるのであるが、例えば、電子部品等を包装するための気泡緩衝シートである場合には、前記樹脂シートの厚みは、通常、5〜300μmであり、好ましくは10〜150μmである。
【0063】
この発明に係る気泡緩衝シートは、基本的には、樹脂シートと樹脂シートとを、この発明において規定でする表面固有抵抗率を有する表面を外側にして、例えば特公昭52−44357号公報、特開昭61−5923号公報及び実開昭52−167474号公報に記載された加工機を用いて製造することができる。
【0064】
また、この発明は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂シートと熱可塑性樹脂を用いて形成された別の樹脂シートとが、これら両方の樹脂シート間に多数の独立中空室が形成されるように、接合されている気泡緩衝シートにおいて、少なくとも何れか一方の前記樹脂シートが、ポリマータイプの帯電防止剤を含有する表面固有抵抗率が1×10〜1×1013(Ω)の帯電防止層を含む多層構造樹脂シートであり、前記帯電防止層が前記多層構造樹脂シートに接合される他方の樹脂シートに対して最も外側に位置するように配置形成されて成ることを特徴とする気泡緩衝シート(以下において、「気泡緩衝シートB」と称する。)を、第2の発明とする。そして、当然のことながら、この気泡緩衝シートBは、上記両樹脂シートが十分に接合し、気泡緩衝シートを形成するために、両樹脂シート接合面は実質的に帯電防止剤が無含有である。
【0065】
なお、この気泡緩衝シートBにおける表面固有抵抗率は、JIS K6911(1995)に準拠して測定される。具体的には、気泡緩衝シートから切り出した試験片(縦100mm×横100mm×試験片の厚み)を23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間放置して状態調整した後に、印加電圧500Vの条件にて電圧印加を開始して1分経過後の表面抵抗から表面固有抵抗率を求める。なお、凸面については針穴を空けて凸面を潰してから測定を行う。
【0066】
上記気泡緩衝シートBの帯電防止層の組成、多層構造樹脂シートの構成、樹脂シートの構成、ポリマータイプの帯電防止剤の組成等、更にそれらの好ましい態様、また気泡緩衝シートBの製法等については、前記気泡緩衝シートと同様である。
【0067】
【実施例】
以下、実施例に基づいてこの発明の帯電防止性気泡緩衝シートを詳細に説明する。
実施例に示す各物性は、以下の方法によって測定した。
メルト・フロー・レイト(MFR):
JIS K7210(1999) A法 に準拠して試験温度190℃、荷重21.18Nで測定した。
表面固有抵抗率(表1中の一般条件による表面固有抵抗率):
表面固有抵抗率は、基本的にJIS K6911(1995)に準拠して測定する。具体的には、気泡緩衝シートから切り出した試験片(縦100mm×横100mm×厚み:試験片厚み)を23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間放置して状態調整をした後に、タケダ理研工業(株)製「TR8601 HIGH MEGOHM METER」を使用して印加電圧500Vの条件で電圧印加を開始してから1分後に表面固有抵抗率を測定した。なお、凸面については凸面の裏側の樹脂シートに針穴を空けて凸面を潰してから測定を行った。
【0068】
融点:
JIS K7121−1987に準拠して、熱流束示差走査熱量測定により求められる値である。測定条件の詳細は、以下の通りである。
【0069】
JIS K7121−1987、3.試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度10℃/分)により状態調整した試験片を使用し、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。なお、融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。但し、最も面積の大きな融解ピークが複数存在する場合は、それらの融解ピークの頂点の温度の算術平均値を融点とする。
【0070】
永久帯電防止性能評価(表1中の洗浄後の表面固有抵抗率):
永久帯電防止性能評価は、エタノール洗浄後の帯電防止効果で評価する。エタノール洗浄とは、23℃のエタノール中に気泡緩衝シートから切り出した試験片を沈めて24時間超音波洗浄した後、該試験片を温度30℃、相対湿度30%の雰囲気下で36時間放置することにより乾燥させる操作を指し、エタノールによる超音波洗浄後の表面固有抵抗率は、超音波洗浄操作直後(該36時間の乾燥操作直後)の試験片を状態調整した試験片とした以外はJIS K6911(1995)に準拠して測定する。さらに、この発明におけるエタノール洗浄後の表面固有抵抗率の測定方法における試験片の状態調整は、以下のようにする。即ち、超音波洗浄装置として、ブランソン社製「BRANSONIC 220」を使用した。先ず最初に500ml用ビーカ中に500mlのエタノールを入れ、エタノールの温度を23℃に維持した。次いで、試験片(縦100mm、横100mm、厚みは試験片の厚み)を前記ビーカ中に、金網を使用して、沈めることにより、23℃のエタノール中に試験片を沈める作業を完了した。その後に、試験片が沈められたビーカにホイルで蓋をし、23℃の水が1.7リットル入った前記超音波洗浄装置の凹状収納部へ前記ビーカを入れて静置した。そして、この超音波洗浄装置のスィッチを入れて洗浄を開始した。洗浄開始から8時間が経過した後に、さらに洗浄開始から16時間経過した後に、ビーカ中のエタノールが500mlとなるように23℃のエタノールを追加する操作を行った。なお、このエタノールの追加操作は、超音波洗浄によりエタノールが揮発して当初ビーカ中に存在していた量よりも減少してしまうので、それを補充する操作である。洗浄開始から24時間経過後に、超音波洗浄装置を停止させ、ビーカ中から試験片を取り出し、直ちにこの試験片を相対湿度30%、温度30℃の雰囲気下で36時間放置して乾燥し、これによって試験片の状態調整を完了した。測定された結果を基に1×1013以下の表面固有抵抗率を示すものを永久帯電防止効果ありと判定した。なお、上記エタノール洗浄後の表面固有抵抗率の測定は、前記一般条件による表面固有抵抗率の測定と同様に気泡緩衝シートから試験片を切り出し、上記エタノールによる超音波洗浄後の、上記状態調整を行った各試験片に対してタケダ理研工業(株)製「TR8601 HIGH MEGOHM METER」を使用して印加電圧500Vの条件で電圧印加を開始してから1分後の表面固有抵抗率を測定した。また、凸面については凸面の裏面側の樹脂シートに針穴を空けて凸面を潰してから測定を行った。
【0071】
気泡緩衝シートの視認性評価:
以下の判定基準で目視にて評価した。
【0072】
透明性に優れ、内容物の確認が容易 ・・・○
やや曇りがあるが、内容物の確認は問題なし・・・△
曇りあり、内容物の確認は困難 ・・・×
〔実施例1〜4〕
図9に示す装置を使用して気泡緩衝シート製造スピード70m/分の速さで、図8に示すように、多数の凸部70を有する平坦部厚みが33μm、凸部厚みが10μmからなる表1に示す構成の二層構造の上層樹脂シートと厚み22μmの表1に示す二層構造の下層樹脂シートとが接合された。図8(a)、(b)に示すように、高さH:3.3mm、直径L:10mm、凸部間距離l:12mm、l:10mm の多数の凸部からなる独立中空室を持つ坪量50g/mの多層構造のポリエチレン系樹脂気泡緩衝シート73を作成した。
【0073】
尚、図9に示されるように、上層及び下層樹脂シートは、共押出法によってTダイ81,82より押出して表1に示す二層構造とし、連続して周知の真空エンボスロール83を有する気泡緩衝シート成形装置を使用して表1に示すポリエチレン層(PE層)を積層面として上層樹脂シートと下層樹脂シートとを互いに張り合わせ、図4に示すように最外層に帯電防止層が配置される構成の気泡緩衝シートとした。
〔比較例1〕
表1に示した通り、下記の界面活性剤系帯電防止剤Cを用い、帯電防止剤1.5%、基材樹脂としてポリエチレン樹脂原料IV98.5%を配合して上層及び下層樹脂シートを単層構造とする以外は、実施例と同様に坪量50g/mの気泡緩衝シートを作成した。
〔比較例2〕
表1に示した通り、下記のポリマータイプの帯電防止剤A20%と基材樹脂IV80%とを配合して単層構造の上層及び下層シートとし、坪量50g/mの気泡緩衝シートを作成することを試みた。しかし、押出された2枚のシートは接着せず、気泡緩衝シートは得られなかった。
上記実施例及び比較例で使用した原料は下記の通りである。
帯電防止剤:
1) ポリマータイプ帯電防止剤
A:三洋化成工業株式会社製、商品名 ペレスタット300(ポリエーテルを主成分とする帯電防止剤)
(MFR:19g/10分、融点:136℃、結晶化温度:90℃)
B:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名IRGASTAT P18
(ポリエーテルエステルアミドを主成分とする帯電防止剤)
(MFR:12g/10分、融点:180℃、結晶化温度:143℃)
2) 界面活性剤系帯電防止剤
C:理研ビタミン株式会社製、商品名B−100(グリセリンモノステアレート)(MFR:測定不能、融点:72℃)、
樹脂:
I: LDPE(低密度ポリエチレン)
(密度:0.992g/m、MFR:0.35g/10分)
II: LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)
(密度:0.937g/m、MFR:2.0g/10分)
III: HDPE(高密度ポリエチレン)
(密度:0.963g/m、MFR:20.0g/10分)
IV: I、II、IIIを重量比50/35/15の割合で配合したブレンド樹脂
(MFR:1.4g/10分、二軸押出機で混練後測定)
上記原料により構成された実施例及び比較例における上層及び下層樹脂シートの配合は、表1に詳しく示した。
【0074】
【表1】
Figure 0004195281
【0075】
【発明の効果】
この発明の気泡緩衝シートは、製造直後から環境による影響を受けない優れた帯電防止効果を示し、上層樹脂シートと下層樹脂シートとが強く接合されることによって形成された良好な多数の独立中空室を持つ気泡緩衝シートであった。洗浄作業を行っても帯電防止効果は損なわれず、半永久的な帯電防止効果を示して表面固有抵抗率は1×1013Ω以下であった。帯電防止剤を配合したシート層と熱可塑性樹脂シート層を組み合わせた多層構造のシート層にしたことで帯電防止剤を配合したシート層の伸びの悪さは補完され、帯電防止剤を配合したシート層を最も外側に配設したことで層間接着も良好で、且つ経済性にも優れた気泡緩衝シートが得られた。更に、多層構造のシート層にし、且つ帯電防止剤を配合したシート層を薄くすることにより、透明性に優れた気泡緩衝シートが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の一実施例である気泡緩衝シートを示す断面説明図である。
【図2】図2はこの発明の一実施例である気泡緩衝シートを示す断面説明図である。
【図3】図3はこの発明の一実施例である気泡緩衝シートを示す断面説明図である。
【図4】図4はこの発明の一実施例である気泡緩衝シートを示す断面説明図である。
【図5】図5はこの発明の一実施例である気泡緩衝シートを示す断面説明図である。
【図6】図6はこの発明の一実施例である気泡緩衝シートを示す断面説明図である。
【図7】図7はこの発明の一実施例である気泡緩衝シートを示す断面説明図である。
【図8】図8(a)は実施例及び比較例において製造された気泡緩衝シートを示す斜視説明図であり、図8(b)は実施例及び比較例において製造された気泡緩衝シートの平面説明図である。
【図9】図9は、実施例及び比較例の気泡緩衝シートを製造するための装置を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,41,51,61,73・・・気泡緩衝シート、
2,12,22,32,42,52・・・独立中空室、
3,13,23,33,43,53・・・樹脂シート
13A,23A,33A,43A,53A・・・帯電防止層、
13B,23B,33B,43B,53B・・・帯電防止剤無含有の樹脂層、
13C,23C,33C,43C,53C・・・機能性樹脂層、
4,14,24,34,44,54,65・・・樹脂シート
70・・・凸部、
71・・・上層樹脂シート、
72・・・下層樹脂シート

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂シートと熱可塑性樹脂を用いて形成された別の樹脂シートとが、これら両方の樹脂シートの間に多数の独立中空室が形成されるように、接合されている気泡緩衝シートにおいて、
    少なくとも何れか一方の前記樹脂シートの、他方の樹脂シートとは反対側の表面にはポリマータイプの帯電防止剤が含有され、該表面のエタノール洗浄後の表面固有抵抗率が1×10〜1×1013(Ω)であり、両樹脂シートにおける接合面が実質的に前記帯電防止剤無含有であり、
    少なくとも何れか一方の前記樹脂シートが、前記帯電防止剤を含有する帯電防止層を含む多層構造樹脂シートであり、
    前記多層構造樹脂シートが共押出しして形成されており、
    前記帯電防止層が、前記多層構造樹脂シートに接合される他方の樹脂シートに対してもっとも外側に位置するように配置形成されてなることを特徴とする気泡緩衝シート。
  2. 熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂シートと熱可塑性樹脂を用いて形成された別の樹脂シートとが、これら両方の樹脂シート間に多数の独立中空室が形成されるように、接合されている気泡緩衝シートにおいて、
    少なくとも何れか一方の前記樹脂シートが、ポリマータイプの帯電防止剤を含有する表面固有抵抗率が1×10〜1×1013(Ω)の帯電防止層を含む多層構造樹脂シートであり、
    前記多層構造樹脂シートが共押出しして形成されており、
    前記帯電防止層が前記多層構造樹脂シートに接合される他方の樹脂シートに対して最も外側に位置するように配置形成されて成ることを特徴とする気泡緩衝シート。
  3. 前記帯電防止層は、その坪量(単位:g/m)がこの帯電防止層を有する多層構造樹脂シートの坪量(単位:g/m)の多くとも40%である前記請求項1又は2に記載の気泡緩衝シート。
  4. 前記帯電防止層は、帯電防止剤を3〜30重量%の割合で含有してなる前記請求項1、2又は3に記載の気泡緩衝シート。
  5. 前記帯電防止剤は、融点が100〜230℃である前記請求項1〜4の何れか一項に記載の気泡緩衝シート。
  6. 前記帯電防止剤は、主成分としてポリエーテルを含有して成る前記請求項1〜5の何れか一項に記載の気泡緩衝シート。
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