以下に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の第1実施形態を示していて、この第1実施形態においては、ステアリングシャフト10が軸方向にて伸縮可能かつトルク伝達可能なアッパシャフト11とロアシャフト12を備える構成とされ、ステアリングシャフト10を回転自在に支持して軸方向にて伸縮可能なステアリングコラム20がアウターチューブ21とインナーチューブ22を備える構成とされている。
アッパシャフト11は、アウターチューブ21に対して軸受13を介して回転自在かつ軸方向移動不能に支持されていて、図1右端の上端部にはエアバッグ装置を装着したステアリングホイール(図示省略)が一体回転可能に組付けられるようになっている。一方、ロアシャフト12は、インナーチューブ22に軸受14を介して回転自在に支持されていて、図1左端の下端部にて自在継手を介して伸縮可能かつトルク伝達可能な中間軸(共に図示省略)に連結されるようになっていて、中間軸は自在継手を介してステアリングギヤボックス(共に図示省略)に連結されるようになっている。
アウターチューブ21は、下端部にてインナーチューブ22の上端部に軸方向へ摺動可能に嵌合連結されていて、下端部に固着したブラケット21aにてチルトおよびテレスコピック調整可能な上方支持機構Aを介して車体の一部(図示省略)に固着される車体側ブラケット(ステアリングサポートブラケットともいわれる)31に組付けられている。一方、インナーチューブ22は、下端部に固着したブラケット22aにて回動可能な下方支持機構Bを介して車体の一部(図示省略)に傾動可能に組付けられるようになっている。
上方支持機構Aは、アウターチューブ21に固着したブラケット21aを上下方向にて傾動可能(チルト可能)に支持するブレークアウエイブラケット41を備えるとともに、ブレークアウエイブラケット41に対してアウターチューブ21に固着したブラケット21aを固定・解除可能なチルト機構と、アウターチューブ21をインナーチューブ22に対して固定・解除可能なテレスコピック機構を備えている。
チルト機構は、それ自体公知のものであり、ハンドル操作にて固定・解除可能であり、解除状態ではステアリングシャフト10とステアリングコラム20をブレークアウエイブラケット41に対して一体的に上下にチルト調整可能とする。テレスコピック機構は、それ自体公知のものであり、ハンドル操作にて固定・解除可能であり、解除状態ではアッパシャフト11とアウターチューブ21をロアシャフト12とインナーチューブ22に対してコラム軸方向にテレスコピック調整可能とする。
ブレークアウエイブラケット41は、左右に延びる一対のアーム41a,41bを有していて、図3にて示したように、各アーム41a,41bに設けた各スリット孔41a1,41b1にて、各樹脂カプセル42と各金属カラー43を介して、各ボルト44を用いて車体側ブラケット31に組付けられるようになっている。なお、各ボルト44は、車体側ブラケット31に予め固着した各ナット32に螺着固定されるようになっている。
ブレークアウエイブラケット41の各スリット孔41a1,41b1は、車両衝突時の二次衝突時にブレークアウエイブラケット41の前方への移動離脱を可能とするものであり、図2に破線で示したように、各アーム41a,41bの略中央から後端に延びて後端にて開口している。各樹脂カプセル42は、各スリット孔41a1,41b1内に嵌合する筒部42aを有していて、各アーム41a,41bの上面に添着固定されており、二次衝突時に所定の荷重にて破壊されるようになっている。各金属カラー43は、各樹脂カプセル42の筒部42aに圧入嵌合されていて、各ボルト44を用いて車体側ブラケット31に組付けられている状態では二次衝突時に各樹脂カプセル42を破壊可能である。
下方支持機構Bは、ステアリングコラム20におけるインナーチューブ22を常に傾動(回動)可能に支持するものであり、インナーチューブ22の下端部に固着したブラケット22aに形成した取付孔22a1に回転自在に嵌合されるカラー51と、このカラー51を車体の一部(図示省略)に固定するボルトおよびナット(図示省略)等によって構成されている。
また、この第1実施形態においては、図1および図2に示したように、アウターチューブ21とインナーチューブ22間に、衝撃エネルギー吸収機構Cが介装されている。衝突エネルギー吸収機構Cは、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギー等の衝撃エネルギーをステアリングシャフト10とステアリングコラム20の軸方向収縮によって吸収するものであり、エネルギー吸収部材61を備えている。
エネルギー吸収部材61は、ステアリングシャフト10とステアリングコラム20が図1および図2に示した初期状態から設定値L1以上に軸方向収縮することによって剪断または塑性変形されてエネルギー吸収荷重を発生させるものであり、樹脂または軽金属等の軽量素材にて断面略C形で円筒状に形成されていて、インナーチューブ22の外側に一体的に組付けられている。
このエネルギー吸収部材61は、アウターチューブ21の下方部位を軸方向へ摺動可能に支持する薄肉の支持部61aと、この支持部61aの下方外周に一体的に形成されてステアリングコラム20の軸方向収縮時にアウターチューブ21の下端部によって剪断または塑性変形される複数個のリブ61bを有している。また、エネルギー吸収部材61には、インナーチューブ22に設けた取付孔22bに嵌合固定される複数の突起61c(図1参照)が中間部内周に一体的に形成されている。
各リブ61bは、所定の厚みで径外方に向けて所定量突出していて、軸方向に所定量延びており、アウターチューブ21がインナーチューブ22に対して図1および図2の初期状態から前方に設定値L1以上に軸方向移動するとき、アウターチューブ21の下端部によって剪断または塑性変形されて、所定のエネルギー吸収荷重を発生させる。なお、各リブ61bの形状・個数は適宜変更可能である。
また、この第1実施形態においては、図1〜図5に示したように、ブレークアウエイブラケット41の略中央部位に衝撃エネルギー吸収部材としてのエネルギー吸収プレート71が樹脂製のガイド49を介して装着されている。エネルギー吸収プレート71は、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーをステアリングコラム20におけるアウターチューブ21の前方移動に伴うブレークアウエイブラケット41の車体に対する車両前方への移動によって吸収する一枚の金属プレートであり、図4および図5に拡大して示したように、ブレークアウエイブラケット41に相対変位可能に装着されたU字状固定部71aを有するとともに、上部後端に車体側ブラケット31に設けた係止凹部31aに係脱可能なT字状係合部71bを有している。
U字状固定部71aは、ブレークアウエイブラケット41の前方からブレークアウエイブラケット41の上端部を上下に挟むようにしてガイド49を介して組付けられていて、ブレークアウエイブラケット41の上端部上下両面に沿って前方から後方に向けて延在している。また、U字状固定部71aでは、ブレークアウエイブラケット41の下面に沿って前方から後方に向けて延在する下方直線状部分71a1がブレークアウエイブラケット41の前方移動によってブレークアウエイブラケット41の前方に装着したガイド49に沿ってしごかれて塑性変形することにより二次衝突エネルギーを吸収するようになっている。
U字状固定部71aの下方直線状部分71a1では、図5に示したように、その前端部分すなわち円弧状湾曲部分71a2に連なる部分が円弧状湾曲部分71a2および上方直線状部分71a3と同じ細幅に形成されていて、T字状係合部71bと係止凹部31aとの係合初期に設定されたエネルギー吸収荷重の立ち上がり(増大)が緩くなるようにされており、また残部が広幅に形成されていて、上記した係合初期を除く係合時に所定のエネルギー吸収荷重が得られるようになっている。
T字状係合部71bは、U字状固定部71aの上部後端を上方に曲げ起こすことにより突片状に形成されていて、ブレークアウエイブラケット41が車体に対して車両前方へ移動していない組付状態では、車体側ブラケット31に設けた係止凹部31aとの係合位置(図1および図4の仮想線で示した位置)から車両後方に所定間隔L2だけ離れて位置し、係止凹部31aとの間に所定の空走間隔L2が設定されている。また、T字状係合部71bは、車体側ブラケット31の係止凹部31aに係合したとき、剪断荷重を受けて支持される。
車体側ブラケット31の係止凹部31aは、車両後方側を開放側とする凹形状に形成されていて、その開口幅はT字状係合部71bの立ち上がり部の幅より僅かに大きくされていて、T字状係合部71bが係止凹部31aと係合する際にT字状係合部71bの移動方向を規定するガイド手段としても機能する。なお、係止凹部31aの開口側端部には、T字状係合部71bの係合(嵌合)を円滑とするための傾斜面が形成されている。
上記のように構成したこの第1実施形態においては、車両の衝突時に、二次衝突によってブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31に対して車両前方に所定荷重以上で移動離脱することにより、ブレークアウエイブラケット41の前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bが車体側ブラケット31の係止凹部31aに嵌合して係合する。
また、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bが車体側ブラケット31の係止凹部31aに係合した後には、ブレークアウエイブラケット41の更なる前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71におけるU字状固定部71aの下方直線状部分71a1がブレークアウエイブラケット41の前方に装着したガイド49に沿って順次しごかれて変形する。このため、エネルギー吸収プレート71のU字状固定部71aは予定通りにブレークアウエイブラケット41の上下両面に沿って変形し、エネルギー吸収プレート71の変形によるエネルギー吸収が安定して得られる。
また、ステアリングシャフト10とステアリングコラム20が図1および図2に示した初期状態から設定値L1以上に軸方向収縮する、具体的には、アッパシャフト11とアウターチューブ21がロアシャフト12とインナーチューブ22に対して前方に設定値L1以上に軸方向移動することによって、エネルギー吸収部材61のリブ61bが剪断または塑性変形されて二次衝突エネルギーが吸収される。
また、この第1実施形態においては、エネルギー吸収プレート71のU字状固定部71aと車体側ブラケット31の係止凹部31a間に所定の空走間隔L2が設定されていて、二次衝突初期にエネルギー吸収プレート71におけるU字状固定部71aの空走間隔L2内での空走を許容することが可能である。このため、ブレークアウエイブラケット41が車体から離脱する際の荷重発生タイミングに対して、エネルギー吸収プレート71のU字状固定部71aがブレークアウエイブラケット41によってしごかれて変形する際の荷重発生タイミングを遅らせることができる。したがって、これらが略同時に発生する場合に比して、二次衝突初期の発生荷重を低くすることが可能である。また、上記した空走間隔L2をチューニングすることにより、エネルギー吸収プレート71のU字状固定部71aがブレークアウエイブラケット41によってしごかれて変形する際の荷重発生タイミングを自由に設定することが可能である。
ところで、この第1実施形態においては、エネルギー吸収プレート71が車体側ブラケット31に組付けられるブレークアウエイブラケット41のみに装着保持される構成であるため、エネルギー吸収プレート71の組付が容易であり、しかもエネルギー吸収プレート71の車体に対する組付精度を頭書に記載した従来技術に比して高めることが容易であって、エネルギー吸収特性のバラツキを少なくすることが可能である。
また、U字状固定部71aにおける下方直線状部分71a1の前端部分すなわち円弧状湾曲部分71a2に連なる部分が円弧状湾曲部分71a2および上方直線状部分71a3と同じ細幅に形成されていて、T字状係合部71bと係止凹部31aとの係合初期に設定されたエネルギー吸収荷重の立ち上がり(増大)が緩くなる。このため、上記した係合初期に生じるエネルギー吸収荷重の急な立ち上がりに起因して乗員が受ける違和感を抑制し、安定したエネルギー吸収を可能とする。
また、車体側ブラケット31の係止凹部31aが、車両後方側を開放側とする凹形状に形成されていて、この係止凹部31aとT字状係合部71b間に所定の空走間隔L2が設定されている。したがって、車体側ブラケット31の係止凹部31aを、エネルギー吸収プレート71におけるT字状係合部71bの移動方向を規定するガイド手段として機能させることができるとともに、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの間に設定される空走間隔として利用することができる。このため、エネルギー吸収プレート71におけるT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの確実な係合を可能とすると共に、エネルギー吸収プレート71におけるT字状係合部71bの車両後方への突出を抑制することができてコンパクト化を図ることが可能である。
また、エネルギー吸収プレート71のU字状固定部71aが、ブレークアウエイブラケット41の前方からブレークアウエイブラケット41を上下に挟むU字状に形成され、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bが、U字状固定部71aの上部後端を上方に曲げ起こすことにより突片状に形成されている。したがって、ブレークアウエイブラケット41を車体側ブラケット31に組付ける前において、エネルギー吸収プレート71のU字状固定部71aをブレークアウエイブラケット41の前方から嵌合することにより、エネルギー吸収プレート71をブレークアウエイブラケット41に装着することが可能である。
また、ブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31から車両前方に移動離脱して、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとが係合した後に、エネルギー吸収プレート71に対してブレークアウエイブラケット41が相対変位する過程で、エネルギー吸収プレート71におけるU字状固定部71aの下方直線状部分71a1をブレークアウエイブラケット41がガイド49を介して塑性変形させることによりエネルギー吸収することが可能である。したがって、当該衝撃吸収式ステアリングコラム装置を部品点数の少ない簡単な構成とすることが可能である。
また、エネルギー吸収プレート71は一枚の金属プレートで形成されていて、このエネルギー吸収プレート71の一端部に形成されるT字状係合部71bは車体側ブラケット31の係止凹部31aに係合したとき剪断荷重を受けて支持される。したがって、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bにて必要とされる強度・剛性を小さな板厚・板幅の金属プレートにて得ることが可能である。このため、衝撃エネルギー吸収部材として機能する金属プレートの板厚を適宜に設定した上で、エネルギー吸収プレート71のU字状固定部71a、T字状係合部71b等各部の板幅をそれぞれ適宜に設定することにより、エネルギー吸収プレート71による所期のエネルギー吸収特性の確保と、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bにて必要とされる強度・剛性の確保との両立を図ることが可能である。
また、ブレークアウエイブラケット41が車幅方向の左右にて車体側ブラケット31に組付けられていて、このブレークアウエイブラケット41の略中央部位にエネルギー吸収プレート71が装着されている。このため、ブレークアウエイブラケット41の略中央部位のスペースを有効に利用してエネルギー吸収プレート71を設置することが可能である。
また、ブレークアウエイブラケット41が、テレスコピック機構にてコラム軸方向にテレスコピック調整可能なステアリングシャフト10とステアリングコラム20を、チルト機構を介して上下にチルト可能に支持している。この構成では、ステアリングシャフト10とステアリングコラム20を、上下にチルトさせても、コラム軸方向にテレスコピックさせても、エネルギー吸収プレート71が装着されたブレークアウエイブラケット41は移動しなくて、エネルギー吸収プレート71はステアリングシャフト10とステアリングコラム20のチルト調整位置、テレスコピック調整位置に拘らず常に同様に機能する。
上記第1実施形態においては、図1〜図5に示したエネルギー吸収プレート71を採用するとともに、車体側ブラケット31に係止凹部31aを設けて実施したが、図6に示したエネルギー吸収プレート71を採用する、または図7に示した車体側ブラケット31を採用して実施することも可能である。図6に示したエネルギー吸収プレート71では、T字状係合部71bの上端部71b1がL字状に折り曲げられていて、T字状係合部71bの強度アップが図られている。また、図7に示した車体側ブラケット31では、その後端部が所定量下方に折り曲げられていて、車体側ブラケット31の強度アップが図られている。
また、上記第1実施形態においては、図1〜図5に示したエネルギー吸収プレート71を採用するとともに、車体側ブラケット31に係止凹部31aを設けて実施したが、図8に示したように、車体側ブラケット131に非加工の係止部131aを設けるとともに、この係止部131aに係脱可能な一対のフック状係合部171bを有するエネルギー吸収プレート171を採用して実施することも可能である。この場合において、図9に示したように、エネルギー吸収プレート171の後端部にL字状折曲部171c,171dを形成して強度アップを図ることも可能である。
また、上記第1実施形態においては、図1〜図5に示したエネルギー吸収プレート71を採用するとともに、車体側ブラケット31に係止凹部31aを設けて実施したが、図10に示したように、車体側ブラケット231に係止凸部231aを設けるとともに、この係止凸部231aに係脱可能な係合部271bを有するエネルギー吸収プレート271を採用して実施することも可能である。なお、エネルギー吸収プレート271の係合部271bには、係止凸部231aが嵌合可能な係合孔271b1が形成されている。
また、上記第1実施形態においては、エネルギー吸収プレート71におけるU字状固定部71aの下方直線状部分71a1にてその前端部分を細幅に形成して、これを初期荷重調整手段、すなわち、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとが係合する際の作動において、その係合初期に生じるエネルギー吸収荷重の立ち上がり(増大)を緩くする手段としたが、この初期荷重調整手段はエネルギー吸収プレート71自体すなわち衝撃エネルギー吸収部材自体に設けなくても、衝撃エネルギー吸収部材と車体の一部間、衝撃エネルギー吸収部材自体、衝撃エネルギー吸収部材とブレークアウエイブラケット間の少なくとも一つに設ければよく、上記実施形態に限定されるものではない。
図11〜図13は本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の第2実施形態の要部を示していて、この第2実施形態においては、車体側ブラケット31上に荷重切換装置80が組付けられている。なお、荷重切換装置80以外の構成は、図1〜図5に示した上記第1実施形態の構成と実質的に同じである。
荷重切換装置80は、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合有無を調整する(切り換える)係合調整手段であり、車体側ブラケット31に組付けた開閉プレート81と、この開閉プレート81の車両前方への移動を規制・許容する電磁アクチュエータ82を備えている。
開閉プレート81は、車体側ブラケット31上に固着したホルダ83を介して車体側ブラケット31上に車両前後方向に沿って移動可能に組付けられていて、車体側ブラケット31の係止凹部31aを開閉可能であり、その中央部には図12に示したように樹脂カラー84の筒部84aが嵌合する貫通孔81aが形成されている。
電磁アクチュエータ82は、乗員または車両の状態を検出するセンサ、例えば、シートベルトの装着・非装着を検出するセンサ(図示省略)の検出結果に基づいて通電・非通電を制御されるものであり、開閉プレート81より上方にてホルダ83に一体的に支持されていて、シートベルトの装着時に、例えば、通電され、図12に示したように下方に突出して樹脂カラー84の筒部84aおよび開閉プレート81の貫通孔81aに嵌合し、シートベルトの非装着時に、例えば、非通電とされ、図13に示したように上方に退避して樹脂カラー84の筒部84aおよび貫通孔81aから抜ける連結ピン82aを有している。
上記のように構成したこの第2実施形態においては、シートベルトの装着時、電磁アクチュエータ82は通電される。このため、電磁アクチュエータ82の連結ピン82aは、図12に示したように下方に突出して樹脂カラー84の筒部84aおよび開閉プレート81の貫通孔81aに嵌合し、開閉プレート81の車両前方への移動を規制する。このため、このときには、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合が阻止される。
したがって、この状態では、車両の衝突時に、ブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31に対して車両前方に所定荷重以上で移動離脱しても、ブレークアウエイブラケット41の前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bは前方に移動するものの車体側ブラケット31の係止凹部31aに係合しない。このため、このときには、エネルギー吸収プレート71によるエネルギー吸収荷重は、T字状係合部71bが折れ曲がる際に得られるのみで小さく、上記第1実施形態にようには得られない。
一方、シートベルトの非装着時には、電磁アクチュエータ82に通電がなされない。このため、電磁アクチュエータ82の連結ピン82aは、図13に示したように上方に退避して樹脂カラー84の筒部84aおよび開閉プレート81の貫通孔81に抜ける。したがって、このときには、樹脂カラー84の筒部84aが破断する荷重(第1実施形態の樹脂カプセル42の破断荷重より小さい荷重)以上の荷重が開閉プレート81に作用することにより、開閉プレート81は車両前方へ移動し、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合を許容する。
したがって、この状態では、車両の衝突時に、ブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31に対して車両前方に所定荷重以上で移動離脱すると、ブレークアウエイブラケット41の前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bは前方に移動し開閉プレート81に当接して樹脂カラー84の筒部84aを破断する。このため、このときには、開閉プレート81がエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bによって車両前方に押されて移動し、車体側ブラケット31の係止凹部31aが開くと同時に、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bが車体側ブラケット31の係止凹部31aに係合して、上記第1実施形態と同様の作動が得られる。
上記第2実施形態においては、エネルギー吸収プレート71によるエネルギー吸収の有無を切り替える手段として荷重切換装置80を採用し、車両の衝突時に、開閉プレート81がエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bによって車両前方に押されて移動することにより、車体側ブラケット31の係止凹部31aが開くようにして実施したが、荷重切換装置80に代えて図14に示した荷重切換装置180または図15〜図17に示した荷重切換装置280を採用して実施することも可能である。
図14に示した荷重切換装置180は、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合有無を調整する(切り換える)係合調整手段であり、車体側ブラケット31に組付けた開閉プレート181と、この開閉プレート181を回動させる電磁アクチュエータ182を備えている。
開閉プレート181は、車体側ブラケット31の係止凹部31aを回動により開閉可能であって、車体側ブラケット31における係止凹部31aの略中間部車両前方にて車体側ブラケット31に固着される支持ピン183を介して車体側ブラケット31上に回動可能に組付けられており、その一部には支持ピン183の径方向に延びる貫通長孔181aが形成されている。
電磁アクチュエータ182は、乗員または車両の状態を検出するセンサ、例えば、シートベルトの装着・非装着を検出するセンサ(図示省略)の検出結果に基づいて通電・非通電を制御されるものであり、開閉プレート181より車両前方にて車体側ブラケット31上に組付けられていて、L字状に折れ曲がった後端(先端)にて開閉プレート181の貫通長孔181aに摺動可能に嵌合するロッド182aを有している。
この電磁アクチュエータ182では、シートベルトの装着時に、例えば、通電され、図14に示したようにロッド182aが後方に突出移動して開閉プレート181を図示実線の復帰位置(車体側ブラケット31の係止凹部31aを閉じる位置)に回動させ、シートベルトの非装着時に、例えば、非通電とされ、ロッド182aが前方に退避移動して開閉プレート181を図示仮想線の退避位置(車体側ブラケット31の係止凹部31aを開く位置)に回動させる。
上記のように構成した図14の実施形態においては、シートベルトの装着時、電磁アクチュエータ182は通電される。このため、電磁アクチュエータ182のロッド182aは、後方に突出移動して開閉プレート181を図示実線の復帰位置に回動させる。この状態では、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bが開閉プレート181に当接しても、その当接荷重は支持ピン183にて受承されて電磁アクチュエータ182のロッド182aには伝わらず、開閉プレート181は車体側ブラケット31の係止凹部31aを閉じた状態に維持される。このため、このときには、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合が阻止される。
したがって、この状態では、車両の衝突時に、ブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31に対して車両前方に所定荷重以上で移動離脱しても、ブレークアウエイブラケット41の前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bは前方に移動するものの車体側ブラケット31の係止凹部31aに係合しない。このため、このときには、エネルギー吸収プレート71によるエネルギー吸収荷重は、T字状係合部71bが折れ曲がる際に得られるのみで小さく、上記第1実施形態にようには得られない。
一方、シートベルトの非装着時には、電磁アクチュエータ182に通電がなされない。このため、電磁アクチュエータ182のロッド182aは、前方に退避移動して開閉プレート181を図示仮想線の退避位置に回動させる。したがって、このときには、車体側ブラケット31の係止凹部31aが開かれて、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合が許容される。
したがって、この状態では、車両の衝突時に、ブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31に対して車両前方に所定荷重以上で移動離脱すると、ブレークアウエイブラケット41の前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bは前方に移動して車体側ブラケット31の係止凹部31aに係合し、上記第1実施形態と同様の作動が得られる。
また、図14に示した荷重切換装置180では、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bが開閉プレート181に当接する際の当接荷重が支持ピン183にて受承されて電磁アクチュエータ182のロッド182aには伝わらないようにしてあり、また、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合時には、開閉プレート181がエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと係合しないように退避していて、エネルギー吸収プレート71によって得られるエネルギー吸収荷重が電磁アクチュエータ182に作用しないようにしてある。このため、電磁アクチュエータ182の小型化・低コスト化を図ることが可能である。
なお、図14に示した荷重切換装置180では、支持ピン183を介して車体側ブラケット31上に回動可能に組付けられている開閉プレート181が電磁アクチュエータ182のロッド182aにて回動されることにより、開閉プレート181が車体側ブラケット31の係止凹部31aを開閉するように実施したが、ホルダを介して車体側ブラケット31上に車両左右方向に移動可能に組付けられている開閉プレートが電磁アクチュエータ182のロッド182aにて左右動されることにより、左右動可能な開閉プレートが車体側ブラケット31の係止凹部31aを開閉するように実施することも可能である。
図15〜図17に示した荷重切換装置280は、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと車体側ブラケット31に組付けた支持プレート281の係止凹部281aとの係合有無を調整する(切り換える)係合調整手段であり、車体側ブラケット31に組付けた支持プレート281と、この支持プレート281を車両前後方向へ移動させる電磁アクチュエータ282を備えている。
支持プレート281は、車体側ブラケット31上に固着したホルダ283を介して車体側ブラケット31上に車両前後方向に沿って移動可能に組付けられていて、その後端部には上記した各実施形態の係止凹部31aに相当する係止凹部281aが形成されている。
電磁アクチュエータ282は、乗員または車両の状態を検出するセンサ、例えば、シートベルトの装着・非装着を検出するセンサ(図示省略)の検出結果に基づいて通電・非通電を制御されるものであり、支持プレート281より前方にて車体側ブラケット31に一体的に組付けられていて、シートベルトの装着時に、例えば、通電され、図16に示したように車両前方に退避し、シートベルトの非装着時に、例えば、非通電とされ、図17に示したように車両後方に突出するロッド282aを有している。ロッド282aは、その後端部に雄ねじ部を有していて、一対のナット284を用いて支持プレート281の前端部に一体的に連結されている。
上記のように構成した図15〜図17の実施形態においては、シートベルトの装着時、電磁アクチュエータ282は通電される。このため、電磁アクチュエータ282のロッド282aと支持プレート281は、図15および図16に示したように車両前方に退避している。このため、このときには、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと支持プレート281の係止凹部281aとの係合が阻止される。
したがって、この状態では、車両の衝突時に、ブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31に対して車両前方に所定荷重以上で移動離脱しても、ブレークアウエイブラケット41の前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bは前方に移動するものの支持プレート281の係止凹部281aに係合しない。このため、このときには、エネルギー吸収プレート71によるエネルギー吸収荷重は、T字状係合部71bが折れ曲がる際に得られるのみで小さく、上記第1実施形態にようには得られない。
一方、シートベルトの非装着時には、電磁アクチュエータ282に通電がなされない。このため、電磁アクチュエータ282のロッド282aと支持プレート281は、図17に示したように車両後方に突出する。したがって、このときには、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと支持プレート281の係止凹部281aとの係合が許容される。
したがって、この状態では、車両の衝突時に、ブレークアウエイブラケット41が車体側ブラケット31に対して車両前方に所定荷重以上で移動離脱すると、ブレークアウエイブラケット41の前方移動に伴ってエネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bは前方に移動して、支持プレート281の係止凹部281aと係合する。このため、このときには、上記第1実施形態と同様の作動が得られる。
また、図15〜図17に示した荷重切換装置280では、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと支持プレート281の係止凹部281aとの係合時には、エネルギー吸収プレート71によって得られるエネルギー吸収荷重が、支持プレート281とホルダ283を介して車体側ブラケット31にて受承されて、電磁アクチュエータ282には作用しない。
このため、エネルギー吸収プレート71のT字状係合部71bと支持プレート281の係止凹部281aとの係合時に、エネルギー吸収プレート71によって得られるエネルギー吸収荷重が電磁アクチュエータ282に付加されることはなく、電磁アクチュエータ282の小型化・低コスト化を図ることが可能である。
図18〜図20は本発明による衝撃吸収式ステアリングコラム装置の第3実施形態の要部を示していて、この第3実施形態においては、エネルギー吸収プレート371が車両の前後方向にて分離可能な二部材で構成されていて、U字状固定部371aとT字状係合部371bの連結部にて電磁アクチュエータ382を介して離脱可能に連結されている。
電磁アクチュエータ382は、乗員または車両の状態を検出するセンサ、例えば、シートベルトの装着・非装着を検出するセンサ(図示省略)の検出結果に基づいて通電・非通電を制御されるものであり、エネルギー吸収プレート371のU字状固定部371aを有する部材371Aに一体的に組付けられていて、エネルギー吸収プレート371のT字状係合部371bを有する部材371Bに形成した貫通孔371cに嵌合する連結ピン382aを有している。
この電磁アクチュエータ382では、シートベルトの非装着時に、例えば、非通電とされ、図19に示したように連結ピン382aが下方に突出して貫通孔371cに嵌合しエネルギー吸収プレート371の二部材371A,371Bを一体的に連結し、シートベルトの装着時に、例えば、通電され、図20に示したように連結ピン382aが上方に退避して貫通孔371cから抜けエネルギー吸収プレート371の二部材371A,371Bを分離可能とする。
上記のように構成した第3実施形態においては、シートベルトの非装着時、電磁アクチュエータ382は非通電とされる。このため、電磁アクチュエータ382の連結ピン382aは、下方に突出してエネルギー吸収プレート371の二部材371A,371Bを一体的に連結する。この状態では、エネルギー吸収プレート371のT字状係合部371bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合時に、エネルギー吸収プレート371が有効に機能して、所期のエネルギー吸収荷重が得られる。
一方、シートベルトの装着時には、電磁アクチュエータ382に通電がなされる。このため、電磁アクチュエータ382の連結ピン382aは、上方に退避してエネルギー吸収プレート371の二部材371A,371Bを分離可能とする。したがって、この状態では、エネルギー吸収プレート371のT字状係合部371bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合時に、エネルギー吸収プレート371が有効に機能せず、所期のエネルギー吸収荷重が得られない。
上記第3実施形態においては、エネルギー吸収プレート371が車両の前後方向にて分離可能な二部材371A,371Bで構成されていて、U字状固定部371aとT字状係合部371bの連結部にて電磁アクチュエータ382を介して離脱可能に連結されているが、図21〜図23に示したように、エネルギー吸収プレート471のT字状係合部471bを車両の上下方向にて分離可能な縦部材471b1と横部材471b2で構成し、これらのクロス連結部にて電磁アクチュエータ482と中空樹脂ピン483を介して離脱可能に連結されるように構成して実施することも可能である。
電磁アクチュエータ482は、乗員または車両の状態を検出するセンサ、例えば、シートベルトの装着・非装着を検出するセンサ(図示省略)の検出結果に基づいて通電・非通電を制御されるものであり、エネルギー吸収プレート471の縦部材471b1背面に一体的に組付けられていて、エネルギー吸収プレート471の縦部材471b1と横部材471b2に形成した両貫通孔および中空樹脂ピン483に嵌合する連結ピン482aを有している。
この電磁アクチュエータ482では、シートベルトの非装着時に、例えば、非通電とされ、図22に示したように連結ピン482aが前方に突出して縦部材471b1と横部材471b2に形成した両貫通孔および中空樹脂ピン483に嵌合しエネルギー吸収プレート471の縦部材471b1と横部材471b2を一体的に連結し、シートベルトの装着時に、例えば、通電され、図23に示したように連結ピン482aが後方に退避して横部材471b2の貫通孔から抜けエネルギー吸収プレート471の縦部材471b1と横部材471b2を分離可能とする。
上記のように構成した図21〜図23の実施形態においては、シートベルトの非装着時、電磁アクチュエータ482は非通電とされる。このため、電磁アクチュエータ482の連結ピン482aは、前方に突出してエネルギー吸収プレート471の縦部材471b1と横部材471b2を一体的に連結する。この状態では、エネルギー吸収プレート471のT字状係合部471bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合時に、エネルギー吸収プレート471が有効に機能して、所期のエネルギー吸収荷重が得られる。
一方、シートベルトの装着時には、電磁アクチュエータ482に通電がなされる。このため、電磁アクチュエータ482の連結ピン482aは、後方に退避してエネルギー吸収プレート471の縦部材471b1と横部材471b2を分離可能とする。したがって、この状態では、エネルギー吸収プレート471のT字状係合部471bと車体側ブラケット31の係止凹部31aとの係合時に、中空樹脂ピン483が破断して、エネルギー吸収プレート471が有効に機能せず、所期のエネルギー吸収荷重が得られない。
上記各実施形態においては、ステアリングコラム20が車体の一部に対して上方支持機構Aと下方支持機構Bからなる支持機構によって支持される実施形態に本発明を実施したが、本発明はステアリングコラムが車体の一部に対して単一の支持機構によって支持される実施形態にも同様に実施することが可能である。
また、上記各実施形態においては、ステアリングコラム20自体に設けた衝突エネルギー吸収機構Cにても、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーを吸収可能として実施したが、上記した衝突エネルギー吸収機構Cと同等の機能を有する他の衝突エネルギー吸収機構をステアリングコラムと車体間に設けて実施することも可能であり、上記各実施形態に限定されず適宜変更可能である。また、上記各実施形態においては、衝突エネルギー吸収機構Cを必要に応じて設ければよく、衝突エネルギー吸収機構Cを設けないで実施することも可能である。
10…ステアリングシャフト、20…ステアリングコラム、31…車体側ブラケット、31a…係止凹部、41…ブレークアウエイブラケット、71…エネルギー吸収プレート(衝撃エネルギー吸収部材)、71a…U字状固定部、71b…T字状係合部、A…上方支持機構、B…下方支持機構、L2…空走間隔