JP4193217B2 - 内燃機関用点火コイル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関用点火コイルに係り、詳しくは、機関本体に形成されたプラグ取付孔内に配設される内燃機関用点火コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、エンジン100に設けられた点火装置を示す概略構成図である。同図に示すように、エンジン100のシリンダヘッド101に形成されたプラグ取付孔101a内には、各気筒の燃焼室102に対応して点火プラグ103がそれぞれ設けられている。各点火プラグ103は高圧コード104を介してディストリビュータ105にそれぞれ接続されている。また、ディストリビュータ105は点火コイル106に接続されている。この点火コイル106は、バッテリ107の電圧(通常、12V)を30kV以上の高電圧にまで昇圧するための変圧器として機能する。
【0003】
上記のような点火装置にあっては、電子制御装置108において生成された点火信号に基づきイグナイタ109によって点火コイル106の1次コイル(図示略)に流れる電流が断続制御される。そして、この断続制御によって点火コイル106の2次コイル(図示略)に発生した高電圧がディストリビュータ105によって各点火プラグ103に順次配電される。
【0004】
上記点火装置では、点火コイル106に発生した高電圧をディストリビュータ105によって各点火プラグ103に配電するようにしているが、近年では、図4に示すように、各点火プラグ103に対応して点火コイル106をそれぞれ設けることにより、ディストリビュータを不要とした、いわゆるDLI点火方式(Distributor Less Ignition system)を採用した点火装置が提案されている。この装置にあっては、ディストリビュータの他、同ディストリビュータから点火プラグ103に高電圧を供給するための高圧コードが不要になる。
【0005】
ところで、図4に示す点火装置にあっては、点火コイル106をエンジン100のシリンダヘッド101に取り付けるようにしているが、このような構成ではエンジン100の大型化を招くことになる。
【0006】
そこで、このようなエンジン100の大型化を回避するために、点火コイル106をプラグ取付孔101a内に配設するようにした構成を採用することが考えられる。特開平8−273949号公報には、このような構成に適用し得る棒状の点火コイル106が記載されている。
【0007】
この点火コイル106は、図5に示すように、熱可塑性樹脂からなる筒状のケース200と、同ケース200内に設けられた棒状の中心鉄心201と、この中心鉄心に外嵌されたボビン202と、ケース200に外嵌された外装鉄心203とを備えている。ボビン202には1次巻線204及び2次巻線205がそれぞれ巻かれている。このボビン202と1次巻線204により1次コイル206が構成され、また、同ボビン202と2次巻線205により2次コイル207が構成されている。
【0008】
ケース200の内部には、ボビン202等を固定するとともに同ケース200内における絶縁性を確保するため、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂が充填硬化されることにより絶縁層208が形成されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のように異種材料を密着させる場合、その密着力は比較的弱くなる。このため、上記点火コイル106において、ケース(熱可塑性樹脂)200内に充填されたエポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)が硬化時の収縮に伴って中心側に移動した際に、同ケース200と絶縁層208との間に微少な空隙が形成される場合がある。そして、このような空隙の内部では絶縁抵抗が低くなることから放電が発生するおそれがある。このような放電が発生した場合、以下のような問題が生じる。
【0010】
図6は、図5に示す点火コイル106のA部を拡大して示している。同図(a)に示すように、ケース200と絶縁層208との間に形成された空隙210内に放電が発生すると、最初にケース200に焼損が進行する。一般に、ケース200の材料である熱可塑性樹脂は絶縁層208の材料である熱硬化性樹脂と比較して焼損に対する耐久性が低いからである。そして、図6(b)に示すように、ケース200が焼損して絶縁層208から外装鉄心203に至る空隙210が形成される一方で、絶縁層208においても同様に焼損が進行する。そして、図6(c)に示すように、2次コイル207(2次巻線205)から外装鉄心203に至る空隙210が形成されてしまうと、点火コイル106に絶縁破壊が生じ、同点火コイル106の耐久性が著しく低下してしまうという問題が生じる。
【0011】
そこで、例えば、ケース200の厚みや絶縁層208の厚みを大きくして、高電圧が発生する2次コイル207と略接地電位にある外装鉄心203との間の距離を増大させることにより、前記空隙210における電位勾配を小さくして放電の発生を抑制することが考えられる。
【0012】
しかしながら、このような構成変更は、必然的に点火コイル106の大型化を招くことから、上記のようにプラグ取付孔101a内に配設される点火コイル106に適用することは望ましくない。点火コイル106において許容される形状変更は、プラグ取付孔101aの大きさによって限定されているからである。
【0013】
この発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関本体のプラグ取付孔内に配設される点火コイルにおいて、その大型化を招くことなく、絶縁破壊の発生を防止して耐久性を向上させることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、内燃機関の機関本体に形成されたプラグ取付孔内に取り付けられた点火プラグに対して点火用電圧を供給すべく前記プラグ取付孔内に配設される内燃機関用点火コイルにおいて、内部コアと、該内部コアの外周に設けられたコイルと、該コイルを被覆する絶縁層と、該絶縁層に外嵌された外部コアと、前記絶縁層の前記点火プラグ側の端部に設けられて前記点火プラグが取り付けられるプラグ用接続部とを備え、前記絶縁層内における異種材料の界面の存在を排除すべく前記絶縁層を単一の材料により形成するとともに前記プラグ用接続部を前記単一の材料により前記絶縁層と一体のものとして形成し、すなわち前記絶縁層及び前記プラグ用接続部を前記単一の材料からなる一体の要素として形成し、前記絶縁層のみを前記コイルと前記外部コアとの間に設けたことをその趣旨とする。
【0015】
上記構成においては、絶縁層を単一の材料により形成するとともに、この単一の材料からなる絶縁層のみをコイルと外部コアとの間に設けているため、空隙が形成され易い異種材料の界面がコイルと外部コアとの間の絶縁層内に存在しない。従って、絶縁層内に存在する空隙が減少し、同空隙に放電が発生することに起因した絶縁層の焼損が抑制される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関用点火コイルにおいて、前記絶縁層は、熱硬化性樹脂材料からなることをその趣旨とする。
【0017】
上記構成によれば、機関本体やコイルの熱による絶縁層の熱変形及び溶融が抑制される。更に、一般に、熱硬化性樹脂材料は例えば熱可塑性樹脂材料と比較して絶縁抵抗が大きいため、その絶縁性能が向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両に搭載された4気筒エンジンに設けられる点火コイルとして具体化した実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、エンジン10のシリンダヘッド11には、各気筒の燃焼室(図示略)に通じる4つのプラグ取付孔12が形成されている。このプラグ取付孔12内に挿入された点火プラグ33(図2に示す)は、その下部が燃焼室内に突出するようにしてシリンダヘッド11に固定されている。
【0020】
点火コイル13は、その上方に位置する接続部14と、同接続部14の下方に位置する円柱状の挿入部15とによって構成されている。点火コイル13は、挿入部15が各プラグ取付孔12内に挿入され、同挿入部15の下部が点火プラグ33の上部に嵌合されることによって、各プラグ取付孔12内に固定されている。これら点火コイル13は車両に設けられた制御装置16にそれぞれ接続されている。また、接続部14にはイグナイタ(図示略)が内蔵されるとともに、その側部には点火コイル13と制御装置16とを信号線を介して接続するためのソケット17が形成されている。
【0021】
図2は点火コイル13を示す断面図である。点火コイル13は、その中心に円柱状をなす内部コア20を有している。この内部コア20は強磁性材料である硅素鋼板を複数枚積層することにより形成されている。
【0022】
この内部コア20の外周には絶縁テープ21が巻かれ、更に、この絶縁テープ21上に1次巻線22が積層して巻かれることにより1次コイル23が構成されている。このように、本実施形態における1次コイル23はボビンレス構造を有している。
【0023】
1次コイル23には略円筒状をなす2次ボビン25が外嵌されている。この2次ボビン25は、耐熱性及び耐絶縁性に優れた変成ポリフェニレンエーテル(PPE)により形成されている。この2次ボビン25の外周には複数のフランジ26が形成されており、各フランジ26間には2次巻線27が積層して巻かれている。これら2次ボビン25及び2次巻線27により2次コイル28が構成されている。
【0024】
この2次コイル28の外周は全周にわたって絶縁層30によって被覆されている。この絶縁層30は熱硬化性樹脂材料であるエポキシ樹脂により形成されている。また、前記接続部14も同様にエポキシ樹脂によって形成されている。絶縁層30の外周には円筒状をなす外部コア31が外嵌されている。この外部コア31は内部コア20と同様に硅素鋼板によって形成されている。
【0025】
挿入部15の下方内部にはその軸方向に延びる取付孔(図示略)が形成されるとともに、2次コイル28と電気的に接続された出力端子(図示略)が設けられている。そして、点火プラグ33の上部端子は、取付孔に嵌合されるとともに出力端子に接触して電気的に接続されている。
【0026】
上記点火コイル13を製造する際には、前記内部コア20、各コイル23,28、イグナイタ等の各部品を成形機の型内に配置し、同型内にエポキシ樹脂を充填させて硬化させた後、更にこれを図2に示す形状となるように機械加工する。その後、絶縁層30の外周に外部コア31を外嵌させる。成形方法は射出成形或いは真空成形のいずれであってもよいが、2次巻線27の各素線間における空隙の発生を防止するうえでは真空成形を採用することが望ましい。また、型は金属製の他、樹脂製の型を採用することができる。樹脂製の型を採用した場合には、離型性を向上させるために、型の内周面にテフロンコート処理することが望ましい。
【0027】
或いは、以下のような製造方法を採用することもできる。
例えば、イグナイタ等を内蔵する接続部14を予め機械加工等によって形成し、その接続部14を内部コア20、各コイル23,28等とともに挿入部(外部コア31を除く)15の外形と同形状の凹部を有した型内に配置する。そして、この型内にエポキシ樹脂を充填して硬化させることにより、挿入部15を接続部14と一体に形成して点火コイル13を製造するようにしてもよい。
【0028】
或いは、絶縁層30の外周部分に相当する円筒材をエポキシ樹脂を押出成形することにより形成する。そして、この円筒材をイグナイタ等を内蔵する接続部14と接合させるとともに、円筒材の内部に内部コア20等の部品をそれぞれ配置する。その後、同円筒材の内部にエポキシ樹脂を充填して硬化させることによって点火コイル13を製造するようにしてもよい。この製造方法を採用すれば、絶縁層30を形成するための型が不要になる。
【0029】
以上のようにして製造された点火コイル13にあっては、制御装置16からの点火信号に基いて1次コイル23に流れる電流がイグナイタによって断続制御されることにより、2次コイル28においてバッテリ50の電圧(12V)が点火用電圧(35kV)にまで昇圧される。そして、この点火用電圧が点火プラグ33に供給されると、同点火プラグ33の電極(図示略)間に火花が生じて燃焼室内の混合気が着火される。
【0030】
前述したように2次コイル28に点火用電圧が発生すると、同2次コイル28と略接地電位に保持される外部コア31との間に極めて大きな電位勾配が生じる。このため、2次コイル28と外部コア31との間にある絶縁層30内に空隙が存在していると、その空隙内に放電が発生して絶縁層30が焼損するおそれがある。また、この焼損が進行した場合には、2次巻線27と外部コア31とを連通する空隙が絶縁層30内に形成され、同空隙において点火コイル13の絶縁破壊が生じるおそれがある。
【0031】
例えば、熱可塑性樹脂からなるケースの内部に熱硬化性樹脂を充填させて硬化させた場合には、ケースの内周面と熱硬化性樹脂との間の密着性が悪いため、同樹脂が硬化収縮する際に両者の間に上記のような空隙が形成されやすい。また、前述したように、ケースや熱硬化性樹脂の厚みを大きくして、2次巻線27及び外部コア31間の電位勾配を小さくするようにした構成にあっては、上記のような放電の発生は抑制されるものの、点火コイル13の大型化を招くことになる。
【0032】
この点、本実施形態によれば、絶縁層30を単一の材料であるエポキシ樹脂のみによって形成するようにしているため、同絶縁層30において2次巻線27と外部コア31との間の部分に空隙が形成され易い異種材料の界面が存在していない。このため、絶縁層30内の空隙が減少し、同空隙内の放電に起因した絶縁層30の焼損が抑制される。その結果、本実施形態によれば、点火コイル13の絶縁破壊を防止して、その耐久性を向上させることができる。また、本実施形態に係る点火コイル13は、大型化を招くことなく絶縁破壊を防止できるため、プラグ取付孔12内に配設される点火コイル13に好適である。
【0033】
更に、本実施形態では、絶縁層30を形成する材料として熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を採用するようにしている。従って、絶縁層30の熱変形や溶融が抑制される。例えば、絶縁層30を熱可塑性樹脂によって構成した場合には、プラグ取付孔12内において絶縁層30がシリンダヘッド11や1次コイル23或いは2次コイル28の熱によって熱変形或いは溶融してしまうことが考えられ、この場合にはエンジン10のメンテナンス性を著しく低下させてしまう。本実施形態によれば、このような絶縁層30の熱変形や溶融が発生しないため、上記のようなメンテナンス性の低下を回避することができる。
【0034】
また、一般に、エポキシ樹脂等の熱熱硬化性樹脂は例えば熱可塑性樹脂と比較して絶縁抵抗が大きい。このため、本実施形態によれば、絶縁層30における絶縁破壊が更に抑制され、点火コイル13の耐久性を更に向上させることができる。
【0035】
上記実施形態は以下のように構成を変更して実施することもできる。このように構成を変更しても上記実施形態と略同等の作用効果を奏することができる。
・上記実施形態では、内部コア20の外周に絶縁テープ21を介して1次巻線22を巻き、その1次巻線22の外周に2次巻線27が巻かれた2次ボビン25を外嵌するようにしている。これに対して、内部コア20にボビンを外嵌するとともに、この同一のボビンに1次巻線及び2次巻線を巻いて1次コイル及び2次コイルを構成するようにしてもよい。また、2次コイル28を1次コイル23よりも内部側に配設することもできる。
【0036】
・上記実施形態では、点火コイル13の接続部14にイグナイタを内蔵するようにしたが、このイグナイタは同点火コイル13の外部に設けられるものであってもよい。
【0037】
・前記絶縁層30を形成するエポキシ樹脂中にガラス繊維等の強化材を添加するようにしてもよい。このように、エポキシ樹脂中に強化材を添加することは、プラグ取付孔12内に配設されるために絶縁層30の厚みが制限される点火コイル13の剛性を増大させるうえで有効である。
【0038】
・上記実施形態では、絶縁層30を熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂により形成するようにしたが、例えば、熱可塑性樹脂により同絶縁層30を形成することもできる。
【0039】
【発明の効果】
請求項1に記載した発明では、絶縁層内における異種材料の界面の存在を排除すべく、絶縁層を単一の材料により形成するとともに、該単一の材料からなる絶縁層のみをコイルと外部コアとの間に設けるようにしている。従って、空隙が形成され易い異種材料の界面がコイルと外部コアとの間の絶縁層内に存在しないため、同絶縁層内に存在する空隙が減少し、空隙内の放電に起因した絶縁層の焼損が抑制される。その結果、本発明によれば、点火コイルの大型化を招くことなく、絶縁破壊の発生を防止して、その耐久性を向上させることができる。
【0040】
請求項2に記載した発明では、絶縁層を熱硬化性樹脂材料により形成するようにしている。従って、機関本体やコイルの熱による絶縁層の熱変形や溶融が抑制される。更に、一般に、熱硬化性樹脂材料は例えば熱可塑性樹脂材料と比較して絶縁抵抗が大きいため、絶縁層における絶縁破壊が更に抑制される。その結果、本発明によれば、請求項1に記載した発明の効果に加えて、点火コイルの耐久性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】点火コイルが設けられたエンジンを示す概略構成図。
【図2】同点火コイルを示す断面図。
【図3】点火装置の構成例を示す概略構成図。
【図4】点火装置の構成例を示す概略構成図。
【図5】従来の点火コイルを示す断面図。
【図6】図5のA部を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
10…エンジン、11…シリンダヘッド、12…プラグ取付孔、20…内部コア、23…1次コイル、28…2次コイル、30…絶縁層、31…外部コア、33…点火プラグ。
Claims (2)
- 内燃機関の機関本体に形成されたプラグ取付孔内に取り付けられた点火プラグに対して点火用電圧を供給すべく前記プラグ取付孔内に配設される内燃機関用点火コイルにおいて、
内部コアと、該内部コアの外周に設けられたコイルと、該コイルを被覆する絶縁層と、該絶縁層に外嵌された外部コアと、前記絶縁層の前記点火プラグ側の端部に設けられて前記点火プラグが取り付けられるプラグ用接続部とを備え、
前記絶縁層内における異種材料の界面の存在を排除すべく前記絶縁層を単一の材料により形成するとともに前記プラグ用接続部を前記単一の材料により前記絶縁層と一体のものとして形成し、すなわち前記絶縁層及び前記プラグ用接続部を前記単一の材料からなる一体の要素として形成し、前記絶縁層のみを前記コイルと前記外部コアとの間に設けた
ことを特徴とする内燃機関用点火コイル。 - 請求項1に記載の内燃機関用点火コイルにおいて、
前記絶縁層は、熱硬化性樹脂材料からなる
ことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
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