JP4191890B2 - ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料を用いた超硬調ネガ画像を形成する処理方法に関するものであり、特に写真製版工程に用いられるハロゲン化銀感光材料に適した超硬調ネガ型写真感光材料の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
グラフィックアーツ分野の写真製版工程では、連続調の写真画像は、画像の濃淡を網点面積の大小によって表現するいわゆる網点画像に変換して、これに文字や線画を撮影した画像と組み合わせて印刷原版を作る方法がおこなわれている。このような用途に用いられるハロゲン化銀感光材料は、文字、線画、網点画像の再現性を良好にするために、画像部と非画像部が明瞭に区別された、超硬調な写真特性を有することが求められてきた。
特に、網写真の拡大(目伸し)、あるいは縮小(目縮め)における網点画像の再現性、明朝/ゴシック文字の混在する原稿での文字の再現性などにおいては、単に超硬調な写真特性だけでなく、微細な線画の再現および網点画像の大点から小点にわたって忠実に再現できる、広いラチチュードを有する画像形成方法が求められてきた。
広いラチチュードの要望に応えるシステムとして、塩臭化銀からなるハロゲン化銀感光材料を、亜硫酸イオンの有効濃度をきわめて低くしたハイドロキノン現像液で処理することにより、高コントラストを有する画像を形成する、いわゆるリス現像方式が知られていた。しかしこの方式では現像液中の亜硫酸イオン濃度が低いため、現像液の空気酸化に対してきわめて不安定であり、液活性を安定に保つために多くの補充量を必要としていた。
【0003】
リス現像方式の画像形成の不安定性を解消し、良好な保存安定性を有する現像液で処理し、超硬調な写真特性が得られる画像形成システムとして、例えば、米国特許第4,166,742号、同第4,168,977号、同第4,221,857号、同第4,224,401号、同第4,243,739号、同第4,269,922号、同第4,272,606号、同第4,311,781号、同第4,332,878号、同第4,618,574号、同第4,634,661号、同第4,681,836号、同第5,650,746号等が挙げられる。これらはヒドラジン誘導体を添加した表面潜像型のハロゲン化銀写真感光材料を、亜硫酸保恒剤を0.15モル/リットル以上含むpH11.0〜12.3のハイドロキノン/メトールあるいはハイドロキノン/フェニドンを現像主薬とする現像液で処理し、γが10を越える超硬調のネガ画像を形成するシステムである。この方法によれば超硬調で高感度の写真特性が得られ、現像液中に高濃度の亜硫酸塩を添加することができるので、現像液の空気酸化に対する安定性は従来のリス現像液に比べて飛躍的に向上する。
ヒドラジン誘導体による超硬調画像を充分発揮させるためには、pH11以上、通常11.5以上の値を有する現像液で処理することが必要であった。高濃度の亜硫酸保恒剤によって現像液の安定性を高めることを可能としたとはいえ、超硬調な写真画像を得るためには上述のようなpH値の高い現像液を用いることが必要であり、保恒剤があっても現像液は空気酸化されやすく不安定なため、さらなる安定性の向上を求めてより低いpHで超硬調画像を実現する工夫が試みられてきた。
【0004】
例えば、米国特許4,269,929号(特開昭61−267759号)、米国特許4,737,452号(特開昭60−179734号)、米国特許5,104,769号、同4,798,780号、特開平1−179939号、同1−179940号、米国特許4,998,604号、同4,994,365号、特開平8−272023号には、pH11.0未満の現像液を用いて超硬調な画像を得るために、高活性なヒドラジン誘導体および造核促進剤を用いる方法が開示されている。
このような画像形成システムによる処理では、シャープな網点品質、処理安定性の向上はみられたが、オリジナル再現性、広い露光ラチチュードの観点でさらなる改良が求められていた。
【0005】
オリジナル再現性を改良する方法として特開平3−39952号、同3−174143号、同4−19647号では、酸化により現像抑制剤を放出するレドックス化合物を含む層とヒドラジン誘導体を含む感光性ハロゲン化銀乳剤層とを有する重層構成の超硬調ハロゲン化銀感光材料をpH11以上の現像液で処理する方法が開示されている。
また特開平4−122926号、同7−43867号、同7−261310号では、酸化により現像抑制剤を放出するレドックス化合物を含む層とヒドラジン誘導体および造核促進剤を含む感光性ハロゲン化銀乳剤層とを有する重層構成の感光材料をpH11以下の現像液で処理して、オリジナル再現性の向上した画像を形成する方法が開示されている。しかしながら、この方法では実技Dmaxが低い、また現像液の補充量を低減させた場合に更に実技Dmaxが低下する問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は網点品質が良好で、オリジナル再現性(網階調再現性)にすぐれたハロゲン化銀写真感光材料の処理方法を提供することである。
本発明の第二の目的は、実技Dmaxが高く、また現像液の補充量を低減させた場合にも実技Dmaxが安定であるハロゲン化銀写真感光材料の処理方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の発明により達成された。
(1)支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有し、該乳剤層またはその他の親水性コロイド層の少なくとも一層中に少なくとも一種の酸化されることにより現像抑制剤を放出する下記一般式(1a)で表されるレドックス化合物、少なくとも一種のヒドラジン造核剤、及び造核促進剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料を現像処理するに当たり、該レドックス化合物のpKaに対して、処理に用いられる現像液のpHを下記式で表される関係にすることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
レドックス化合物pKa≦現像液pH値+1.0
【化1】
(一般式(1a)においてPUGNは現像抑制剤となる、隣接するカルボニル基と窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環基を表す。但し該ヘテロ環基は、その置換基として少なくとも1つのニトロ基を直接もしくは間接的に有し、かつpKa値9〜11を与え得るヘテロ環基を表す。phはフェニル基を表し、該フェニル基は少なくとも1つの下記から選択される解離性基を直接もしくは間接的に置換基として有する。Zはベンゼン環に置換可能な置換基を表し、pは0〜4の整数を表す。)
[解離性基:カルボキシ基、ホスホン酸基、リン酸基、少なくとも1個の電子吸引性基が置換したアリールスルホンアミド基、アルキルスルホンアミド基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基、スルホニルウレイド基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルホニルスルファモイル基、活性メチレン基、またはこれらの塩]
(2)前記一般式(1a)における前記解離性基が、少なくとも1個の電子吸引性基が置換したアリールスルホンアミド基であることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
(3)前記一般式(1a)における前記PUGNをなすヘテロ環基のヘテロ環が、インダゾール環であることを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
(4)前記の造核促進剤が下記一般式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)で表されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0008】
【化4】
【0009】
一般式(a)においてQ1は窒素原子またはリン原子を表し、R100、R110、R120はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表し、これらは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。MはMに含まれる炭素原子でQ1 +と結合するm10価の有機基を表し、ここにm10は1から4の整数を表す。
一般式(b)、一般式(c)または一般式(d)において、A1、A2、A3、A4、A5はそれぞれ、4級化された窒素原子を含む不飽和ヘテロ環を完成させるための有機残基を表し、L10およびL20は二価の連結基を表し、R111、R222、R333は置換基を表す。
一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)または一般式(d)で表される4級塩化合物は、分子内にエチレンオキシ基またはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を、計20個以上有しているが、これは複数箇所にまたがって置換されていてもよい。
【0011】
一般式(e)においてQ2は窒素原子またはリン原子を表す。R200、R210、R220は一般式(a)のR100、R110、R120と同義の基を表す。
一般式(f)においてA6は一般式(b)におけるA1またはA2と同義の基を表す。但しA6が形成する含窒素不飽和ヘテロ環は置換基を有してもよいが、置換基上に1級の水酸基を有することはない。一般式(e)および一般式(f)においてL30はアルキレン基を表し、Yは-C(=O)-または-SO2-を表し、L40は少なくとも一つの親水性基を含有する2価の連結基を表す。
一般式(a)〜一般式(f)においてXn-は、n価の対アニオンを表し、nは1から3の整数を表す。但し、分子内に別にアニオン基を有し、Q1 +、Q2 +またはN+と分子内塩を形成する場合、Xn-は必要ない。
(5)前記現像液のpHが9.0〜11.0であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
(6)前記現像液の補充量がハロゲン化銀写真感光材料1平方メートルあたり250ml以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
最初に、酸化されることにより現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物について説明する。
本発明に使用されるレドックス化合物のpKaが下記式に合致すれば特に限定されることはない。
レドックス化合物pKa≦現像液pH値+1.0
例えば、本発明のレドックス化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料が現像処理される現像液のpHが10.6の場合、レドックス化合物のpKaは11.6以下となる。
ここでpKa値とは、アセトニトリルおよび水の1:1混合溶液を溶媒として、酸−塩基規定によりpHメーターで求められるpKa値である。
pKa値の下限は、化合物の安定性から実用的には8.0以上、より好ましくは8.5以上である。
また、現像液のpH値は全く処理をしていないFr(フレッシュ)液のpH値を指す。
【0013】
レドックス化合物についてさらに詳細に説明する。
レドックス化合物のレドックス基としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトハイドロキノン基、アミノフェノール類、ピラゾリドン類、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類、レダクトン類であることが好ましく、ヒドラジン類であることがさらに好ましい。酸化されることにより現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物として用いられるヒドラジン類として、一般式(R−1)、一般式(R−2)又は一般式(R−3)で表わされる化合物が挙げられる。なお、一般式(R−1)は、後述する本発明に用いられる一般式(1a)の上位概念にあたる。
【0014】
【化5】
【0015】
式中R1は脂肪族基または芳香族基を表わす。G1は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG2R2)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G2R2)−基を表わす。G2は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(R2)−基を表わし、R2はR1と同定義の基または水素原子を表わし、分子内に複数のR2が存在する場合それらは同じであっても異なっても良い。A1、A2は水素原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはアシル基を表わし置換されていても良い。一般式(R−1)ではA1、A2の少なくとも一方は水素原子である。A3はA1と同義または−CH2CH(A4)-(Time)t-PUGを表わす。A4はニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、スルホニル基または−G1−G2−R1(この場合、分子内の2つの−G1−G2−R1は同じであっても異なっても良い。)を表わす。
Timeは二価の連結基を表わし、tは0または1を表わす。PUGは現像抑制剤を表わす。
【0016】
一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)についてさらに詳細に説明する。一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)において、R1で表される脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30のものであって、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基である。このアルキル基は置換基を有していてもよい。
一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)において、R1で表される芳香族基は単環または2環のアリール基または芳香族ヘテロ環基である。ここで芳香族ヘテロ環基はアリール基と縮合してヘテロアリール基を形成してもよい。
例えばベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環等がある。なかでもベンゼン環を含むものが好ましい。
R1として特に好ましいものはアリール基である。
R1のアリール基または芳香族ヘテロ環基は置換されていてもよく、代表的な置換基としては、例えばアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、置換アミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、ウレタン基、アリールオキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、カルボキシル基、リン酸アミド基などが挙げられ、好ましい置換基としては直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜20のもの)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30のもの)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30のもの)、置換アミノ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基で置換されたアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40を持つもの)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜40を持つもの)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40を持つもの)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40を持つもの)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40のもの)などである。
【0017】
一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)におけるG1としては−CO−基、−SO2−基が好ましく、−CO−基が最も好ましい。
A1、A2としては水素原子が好ましく、A3としては水素原子、-CH2-CH(A4)-(Time)t-PUGが好ましい。
【0018】
一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)においてTimeは二価の連結基を表わし、タイミング調節機能を有していてもよい。
Timeで表わされる二価の連結基は、酸化還元母核の酸化体から放出されるTime−PUGから一段階あるいはそれ以上の段階の反応を経てPUGを放出せしめる基を表わす。
Timeで表わされる二価の連結基としては、例えば米国特許第4,248,962号(特開昭54−145,135号)等に記載のp−ニトロフェノキシ誘導体の分子内閉環反応によってPUGを放出するもの;米国特許第4,310,612号(特開昭55−53,330号)および同4,358,525号等に記載の環開裂後の分子内閉環反応によってPUGを放出するもの;米国特許第4,330,617号、同4,446,216号、同4,483,919号、特開昭59−121,328号等に記載のコハク酸モノエステルまたはその類縁体のカルボキシル基の分子内閉環反応による酸無水物の生成を伴って、PUGを放出するもの;米国特許第4,409,323号、同4,421,845号、リサーチ・ディスクロージャー誌No. 21,228(1981年12月)、米国特許第4,416,977号(特開昭57−135,944号)、特開昭58−209,736号、同58−209,738号等に記載のアリールオキシ基またはヘテロ環オキシ基が共役した二重結合を介した電子移動によりキノモノメタン、またはその類縁体を生成してPUGを放出するもの;米国特許第4,420,554号(特開昭57−136,640号)、特開昭57−135,945号、同57−188,035号、同58−98,728号および同58−209,737号等に記載の含窒素ヘテロ環のエナミン構造を有する部分の電子移動によりエナミンのγ位よりPUGを放出するもの;特開昭57−56,837号に記載の含窒素ヘテロ環の窒素原子と共役したカルボニル基への電子移動により生成したオキシ基の分子内閉環反応によりPUGを放出するもの;米国特許第4,146,396号(特開昭52−90932号)、特開昭59−93,442号、特開昭59−75475号、特開昭60−249148号、特開昭60−249149号等に記載のアルデヒド類の生成を伴ってPUGを放出するもの;特開昭51−146,828号、同57−179,842号、同59−104,641号に記載のカルボキシル基の脱炭酸を伴ってPUGを放出するもの;−O-COOCRaRb-PUG(Ra,Rbは一価の基を表わす。)の構造を有し、脱炭酸と引き続くアルデヒド類の生成を伴ってPUGを放出するもの;特開昭60−7,429号に記載のイソシアナートの生成を伴ってPUGを放出するもの;米国特許第4,438,193号等に記載のカラー現像薬の酸化体とのカップリング反応によりPUGを放出するものなどを挙げることができる。
これら、Timeで表わされる二価の連結基の具体例については特開昭61−236,549号、特開平1−269,936号、同3−67,246号等にも詳細に記載されている。
【0019】
一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)においてPUGは現像抑制剤である。PUGはヘテロ原子を有し、ヘテロ原子を介して一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)で表わされる化合物の他の部分と結合している。
一般的に公知の現像抑制剤の例はたとえばテー・エッチ・ジェームズ(T.H.James)著「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、1977年、マクミラン(Macmillan)社刊、396頁〜399頁や特開平3−67,246号明細書56頁〜69頁などに記載されている。
これらの現像抑制剤は置換基を有してもよい。有用な置換基としては例えば、メルカプト基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、ウレタン基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ハロゲン原子、シアノ基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ホスホンアミド基などが挙げられ、これらの基はさらに置換されても良い。
【0020】
本発明に用いるPUGで表わされる現像抑制剤は造核伝染現像を抑制する化合物であることが好ましい。
造核伝染現像は、富士フイルム GRANDEXシステム(富士写真フイルム(株)やKodak Ultratecシステム(Eastman Kodak Co.,Ltd.) の画像形成法に用いられた新しい現像ケミストリーである。この現像ケミストリーは、「日本写真学会誌,52巻5号390〜394頁(1989)や「ジャーナル オブ フォトグラフィック サイエンス」35巻 162頁(1987)に解説されているように、露光されたハロゲン化銀粒子の通常の現像主薬による現像過程と、それによって生成した現像薬の酸化生成物と造核剤とのクロス酸化に基づいて造核活性種が生成し、この活性種による周辺の未露光〜弱く露光されたハロゲン化銀粒子の造核伝染現像過程の2つの過程から成っている。
従って、全体の現像過程は、通常の現像過程と、造核現像過程の総和からなっているので、現像抑制剤として従来知られている通常の現像抑制剤の他に、新しく造核伝染現像過程を抑制する化合物が抑制作用を発揮しうる。後者を、ここでは、造核現像抑制剤と称する。
本発明に用いるPUGで表わされる現像抑制剤は、造核現像抑制剤が好ましい。造核現像抑制剤として作用する化合物としては、従来知られている現像抑制剤も効果があるが、特に有効な化合物は、少なくとも1つ以上のニトロ基、またはニトロソ基を有する化合物、ピリジン、ピラジン、キノリン、キノキサリン、あるいはフェナジンなどの含窒素複素環骨格、特に6員の含窒素複素芳香環骨格を有する化合物、N−ハロゲン結合を有する化合物、キノン類、テトラゾリウム類、アミンオキシド類、アゾキシ化合物類、酸化能を有する配位化合物類などである。
その中でもニトロ基を有する化合物、およびピリジン骨格を有する化合物が特に有効である。
【0021】
これらの造核現像抑制剤は置換基を有しても良く、それら置換基の性質、例えば電子吸引性、電子供与性、疎水性、親水性、電荷、ハロゲン化銀への吸着性などの性質によって現像抑制の強さ、拡散のし易さをはじめとするさまざまな特性をコントロールすることができる。
有用な置換基の例としては前に一般的な現像抑制剤の置換基の例として列挙したものがあてはまる。
本発明に有用なこれらの造核現像抑制剤の具体例は特開平4−136839号、特許第2665693号などに詳細に記載されているほか、特開平4−136841号、特許第2631162号、特許第2725088号、特開平4−283743号、特許第2779712号にもInd として記載されている。
また、別の系列の造核現像抑制剤として、アニオン性荷電基、あるいは現像液中で解離してアニオン性荷電を生じうる解離性基を有するハロゲン化銀粒子への吸着性化合物も有効であり、これらは特許第2694373号にも詳細に記載されている。
【0022】
一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)において、R1または Timeは、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基や一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)で表わされる化合物がハロゲン化銀に吸着することを促進する基が組み込まれていてもよい。
バラスト基は一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)で表わされる化合物が実質的に他層または処理液中へ拡散できないようにするのに十分な分子量を与える有機基であり、6以上の炭素数を有する、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(またはアルキレン基)、アルコキシ基(またはアルキレンオキシ基)、アルキルアミノ基(またはアルキレンアミノ基)、アルキルチオ基、あるいはこれらを部分構造として、他にアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、−CO−、−CONH−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−SO2NH−、−NHSO2NH−等の基との組み合わせからなる基を表す。バラスト基として好ましくは炭素数6〜30のアルキル基が組み合わされた基が好ましく、特に炭素数7〜24のアルキル基が組み合わされた基が好ましい。
【0023】
ハロゲン化銀への吸着促進基としては、具体的には4−チアゾリン−2−チオン、4−イミダゾリン−2−チオン、2−チオヒダントイン、ローダニン、チオバルビツール酸、テトラゾリン−5−チオン、1,2,4−トリアゾリン−3−チオン、1,3,4−オキサゾリン−2−チオン、ベンズイミダゾリン−2−チオン、ベンズオキサゾリン−2−チオン、ベンゾチアゾリン−2−チオン、チオトリアジン、1,3−イミダゾリン−2−チオンのような環状チオアミド基、鎖状チオアミド基、脂肪族メルカプト基、芳香族メルカプト基、ヘテロ環メルカプト基(−SH基が結合した炭素原子の隣が窒素原子の場合はこれと互変異性体の関係にある環状チオアミド基と同義であり、この基の具体例は上に列挙したものと同じである。)、ジスルフィド結合を有する基、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアゾール、チアゾリン、ベンゾオキサゾール、オキサゾール、オキサゾリン、チアジアゾール、オキサチアゾール、トリアジン、アザインデンのような窒素、酸素、硫黄及び炭素の組合せからなる5員ないし6員の含窒素ヘテロ環基、及びベンズイミダゾリニウムのような複素環四級塩などが挙げられる。これらはさらに適当な置換基で置換されていてもよい。
置換基としては、例えばR1の置換基として述べたものが挙げられる。
【0024】
一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)においてR1または Timeは、その中に以下に述べる特定の基を含んでいてもよい。即ち、カチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、4級化されたリン原子を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、解離性基(アルカリ性の現像液で解離しうる酸性度の低いプロトンを有する基もしくは部分構造、あるいはまたその塩を意味し、具体的には、例えばカルボキシ基/−COOH、スルホ基/−SO3H、ホスホン酸基/−PO3H、リン酸基/−OPO3H、ヒドロキシ基/−OH基、メルカプト基/−SH、−SO2NH2基、N−置換のスルホンアミド基/−SO2NH−基、−CONHSO2−基、−SO2NHSO2―基、−CONHCO−基、活性メチレン基、含窒素ヘテロ環基に内在する−NH−基、またはこれらの塩)を含んでいてもよい。
一般式(R−1)で表される化合物はまた、そのヒドラジン基/−N(A1)−N(A2)−の部分構造に関しての多量体(例えば2〜6量体)を形成しうる様な構造をしていてもよい。
【0025】
以下に一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)で表される化合物の具体例を列記するが、このうち、化合物11、21〜23、25、26、28〜32、43、44、46〜48は、後述する本発明の一般式(1a)で表される化合物である。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
前記一般式(R−1)で表される化合物のうち、本発明の処理方法に用いられるものは、下記一般式(1a)で表される。以下に、この一般式(1a)で表される化合物を詳細に説明する。
【0035】
【化6】
【0036】
一般式(1a)においてPUGNは現像抑制剤を表し、かつ隣接するカルボニル基と窒素原子で結合する含窒素ヘテロ環残基を表す。但し該ヘテロ環基は、その置換基として少なくとも1つのニトロ基を直接もしくは間接的に有し、かつpKa値9〜11を与え得るヘテロ環基を表す。phはフェニル基を表し、少なくとも1つの下記から選択される解離性基を直接もしくは間接的に置換基として有する。Zはベンゼン環に置換可能な置換基を表し、pは0〜4の整数を表す。
解離性基
カルボキシ基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO 3 H)、リン酸基(−OPO 3 H)、少なくとも1個の電子吸引性基が置換したアリールスルホンアミド基、アルキルスルホンアミド基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基、スルホニルウレイド基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルホニルスルファモイル基、活性メチレン基、またはこれらの塩
【0037】
次に本発明の一般式(1a)で表される化合物について詳しく説明する。
一般式(1a)においてZは、ベンゼン環上に置換しうる任意の置換基を表す。
任意の置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、スルホ基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。
【0038】
これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。一般式(1a)においてphで表されるフェニル基は、少なくとも1つの解離性基を直接もしくは間接的に置換基として有する。ここに解離性基とは、アルカリ性の現像液中において解離しうる酸性度の低いプロトンを有する基もしくは部分構造、あるいはまたその塩のことで、本発明においてはカルボキシ基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO3H)、リン酸基(−OPO3H)、アリールスルホンアミド基、アルキルスルホンアミド基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基、スルホニルウレイド基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルホニルスルファモイル基、活性メチレン基、またはこれらの塩である。
但しスルホ基(−SO3H)、メルカプト基(−SH)、含窒素ヘテロ環基に内在する−NH−基、ヒドロキシ基(−OH基)は含まれない。またアリールスルホンアミド基は、少なくとも1つの電子吸引性基を置換基として有するベンゼンスルホンアミド基に限られる。ここで電子吸引性基とは、ベンゼンスルホンアミド基のベンゼン環のオルト位またはパラ位の置換基についてはハメットの置換基定数σp値が正の値を取る置換基を意味し、ベンゼン環のメタ位の置換基についてはσm値が正の値を取る置換基を意味する。ここでσpが正の値を取る置換基とは具体的に、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシル基、シアノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、ニトロ基、チオウレイド基、スルホンアミド基、イミド基、複数のハロゲン原子で置換されたアルキル基(−CF3基等)等が挙げられ、またσmが正の値を取る置換基とは、σpが正の値を取る置換基として挙げた例と同じものが挙げられる他に、アシルアミノ基、ウレイド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。これら電子吸引性基は該ベンゼン環に2つ以上置換していてもよく、また該ベンゼン環は電子吸引性基以外の任意の置換基を有していてもよい。
【0039】
解離性基が活性メチレン基を表す時、活性メチレン基とは2つまたは3つの電子吸引性基に挟まれたメチレン基もしくはメチン基を意味し、電子吸引性基とはハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる原子団で、具体的には上述の説明の通りである。2つまたは3つの電子吸引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。
なお本発明において、解離性基の塩とは具体的に、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、リチウムカチオン、マグネシウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン等の、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0040】
一般式(1a)においてph基が、間接的に少なくとも1つの解離性基を有する場合とは、解離性基が2価もしくはそれ以上の連結基を介して、ph基に置換されている場合を言う。ここに2価もしくはそれ以上の連結基とは、具体的に次の一般式で表される。
{(*)m−L1}n−L2−**
ここにL1はアルキレン基またはフェニレン基を表し、L2は、−O−,−NRN−,−S−,−C=O−,−SO2−,−SO−,−C=S−,−P=O−の単独、もしくはこれらの基の組み合わせからなる基を表し、RNは水素原子、一価のアルキル基または一価のアリール基を表す。*は解離性基との結合位置を示し、**は一般式(1a)のph基との結合位置を示す。mは1または2、nは1または2を表す。L1またはRNで表される基は、任意の置換基を有していてもよく、具体的には一般式(1a)のZで表される基について説明した置換基と同じものが挙げられる。
【0041】
一般式(1a)においてph基は、置換基として、解離性基もしくは解離性基を含む置換基以外に、同時に任意の置換基を有していてもよく、ここに任意の置換基とは、具体的には一般式(1a)のZで表される置換基について説明した置換基と同じものが挙げられる。
一般式(1a)においてPUGNで表される含窒素ヘテロ環基は、現像抑制剤を表すが、これは一般式(R−1)のPUGで表される現像抑制剤と同義の基である。一般式(1a)においてPUGNで表される含窒素ヘテロ環基は、窒素原子を有し、窒素原子を介して隣接するカルボニル基と結合する、pKa値9〜11を与える含窒素ヘテロ環基で、その置換基として少なくとも1つのニトロ基を直接もしくは間接的に有する含窒素ヘテロ環基である。
ここにpKa値とは、アセトニトリルおよび水の1:1混合溶液を溶媒として、酸−塩基規定によりpHメーターで求められるpKa値である。
一般式(1a)においてPUGNで表される含窒素ヘテロ環基とは、5員〜7員の、芳香族もしくは非芳香族の、単環もしくは縮環の、含窒素ヘテロ環基で、そのヘテロ環を具体的に挙げれば、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール類、インダゾール類、フタルイミド類、コハク酸イミド類、ヒダントイン類、ウラゾール類、o-スルホベンツイミド類、イサチン類等を挙げることが出来る。
一般式(1a)においてPUGNで表される含窒素ヘテロ環基が、その置換基として少なくとも1つのニトロ基を間接的に有する時、ニトロ基とPUGNで表される含窒素ヘテロ環基とを連結する置換基としては、少なくとも1つのアリーレン基を含む2価の連結基を表し、アルキレン基,−O−,−NRN'−,−S−,−C=O−,−SO2−,−SO−,−C=S−,−P=O−の単独、もしくはこれらの基の組み合わせからなる基を含んでいてもよい。ここにRN'は水素原子、一価のアルキル基または一価のアリール基を表す。
【0042】
次に本発明の一般式(1a)で表される化合物の、好ましい範囲について述べる。
一般式(1a)においてZの好ましい例としては、アルキル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、イミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
一般式(1a)においてpは、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
【0043】
一般式(1a)においてph基が有する解離性基として好ましくは、カルボキシ基(−COOH)、アリールスルホンアミド基、アルキルスルホンアミド基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基、スルホニルウレイド基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルホニルスルファモイル基、活性メチレン基、またはこれらの塩である。
特に好ましくは、カルボキシ基またはその塩、アリールスルホンアミド基、スルホニルウレイド基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基である。
ここでアリールスルホンアミド基は、少なくとも1つの電子吸引性基を置換基として有するベンゼンスルホンアミド基に限られるが、ここで電子吸引性基として好ましくは、ベンゼンスルホンアミド基のベンゼン環のオルト位またはパラ位の置換基については具体的に、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、ニトロ基、チオウレイド基、スルホンアミド基、イミド基、複数のハロゲン原子で置換されたアルキル基(−CF3基等)等が挙げられ、メタ位の置換基については、オルト位またはパラ位の置換基として挙げたものの他に、アシルアミノ基、ウレイド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルコキシ基、等が挙げられる。
【0044】
一般式(1a)においてph基が、2価もしくはそれ以上の連結基を介して、間接的に少なくとも1つの解離性基を有する場合に、その連結基として好ましい例を挙げると、*−アルキレン基−CONH−、*−アルキレン基−NHCONH−、*−アルキレン基−SO2NH−、*−アルキレン基−NHSO2NH−、*−アルキレン基−NHCO−、*−アルキレン基−OCO−、*−フェニレン基−CONH−、*−フェニレン基−NHCONH−、*−フェニレン基−SO2NH−、*−フェニレン基−NHCO−、*−フェニレン基−NHSO2NH−、*−フェニレン基−OCO−、等が挙げられる。ここに*は解離性基との結合位置を表す。
一般式(1a)においてPUGNで表されるヘテロ環基は、好ましくはpKa値9.5〜11.0の値を与えうるヘテロ環基で、さらに好ましくはpKa値9.8〜10.8の値を与えうるヘテロ環基である。
一般式(1a)においてPUGNで表されるヘテロ環基として好ましくは、ベンズイミダゾール類、インダゾール類、ベンゾトリアゾール類である。
一般式(1a)においてPUGNで表されるヘテロ環基に、ニトロ基が間接的に置換している場合には、少なくとも1つのニトロ基が置換したフェニル基が、単結合もしくは2価の連結基を介して、該ヘテロ環基に連結されていることが好ましい。その連結基としては、−NHCO−、−NHCONH−、−O−アルキレン−、−NHSO2−、−O−、−S−、−S−アルキレン−、等の連結基が好ましい。
一般式(1a)においてPUGNがベンゾトリアゾール類を表す時、ニトロ基は間接的に置換していることが好ましく、さらには少なくとも1つのニトロ基が置換したフェニル基が、Btr−NHCO−、Btr−NHCONH−、Btr−O−アルキレン−、Btr−NHSO2−、Btr−O−、Btr−S−、Btr−S−アルキレン−、等の連結基を介して連結されていることが好ましい。ここでBtrはベンゾトリアゾール類との置換位置を表す。
【0045】
一般式(1a)においてPUGNで表されるヘテロ環基としては、インダゾール類が特に好ましい。さらには1つのニトロ基と、ニトロ基以外の1つもしくは2つの電子吸引性の置換基が、同時に直接置換されたインダゾール類が特に好ましい。この場合、pKa9〜11を与えうる、ニトロ基以外の電子吸引性の置換基とは具体的に、ハロゲン原子(クロロ原子、ブロモ原子、フッソ原子、よう素原子)、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、シアノ基、カルバモイル基、トリフルオロメチル基、カルボキシ基、スルホ基またはその塩、アシル基、ホルミル基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、カルバモイル基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましく、アルコキシカルボニル基(特にメトキシカルボニル基)が最も好ましい。
【0046】
一般式(1a)で表される本発明の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。特にバラスト基が含まれているものは、本発明の好ましい例の一つである。バラスト基については、一般式(R−1)〜(R−3)についての説明の中で既に説明した。
バラスト基は、一般式(1a)で表される化合物の何処に置換されていても良いが、好ましくはphで表される基に直接もしくは間接的に置換されていることが好ましい。
またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0047】
一般式(1a)で表される化合物は、その中にカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、4級化されたリン原子を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基が含まれていてもよい。これらの基が含まれる例としては、例えば特開平7−234471号、特開平5−333466号、特開平6−19032号、特開平6−19031号、特開平5−45761号、米国特許4994365号、米国特許4988604号、特開平7−5610号、特開平7−244348号、独特許4006032号等に記載の化合物が挙げられる。
一般式(1a)で表される化合物に、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基が含まれているものは、本発明の好ましい例の一つである。一般式(1a)で表される化合物に、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基が含まれる時、一般式(1a)のphで表される基に、直接または間接的に置換されていることが好ましい。
【0048】
一般式(1a)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。かかる吸着基については、一般式(R−1)〜(R−3)についての説明の中で既に説明した。
【0049】
以下に本発明の一般式(1a)で表される化合物の具体例を列記するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
【表11】
【0053】
【表12】
【0054】
【表13】
【0055】
【表14】
【0056】
【表15】
【0057】
【表16】
【0058】
【表17】
【0059】
本発明に用いられるレドックス化合物としては上記のものの他に、例えば特開昭61−213,847号、同62−260,153号、特開平3−39,953号、同3−39,951号、同3−39,949号、同3−67,246号、同4−136839号、同4−136840号、同4−136841号、同4−283743号、同4−278939号、特開平4−330432号、特許第2779712号、特許第2676439号、特許第2709760号等に記載されたもののうち、本発明の一般式(1a)に包含される化合物を用いることができる。さらに特願平11−263833号、特願平11−263901号、特願平11−263997号、特願平11−2887号に記載されたもののうち、本発明の一般式(1a)に包含される化合物を用いることができる。
【0060】
本発明に用いられるレドックス化合物の合成法は上記の資料に記載されているほか、例えば米国特許第4,684,604号、特開平1−269,936号、米国特許第3,379,529号、同3,620,746号、同4,377,634号、同4,332,878号、特開昭49−129,536号、同56−153,336号、同56−153,342号などに記載されている。
【0061】
本発明のレドックス化合物は、ハロゲン化銀1モルあたり1×10-6〜5×10-2モル、より好ましくは1×10-5〜1×10-2モルの範囲内で用いられる。また、2種類以上のレドックス化合物を併用して使用することもできる。本発明のレドックス化合物は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既に良く知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作成して用いることもできる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、レドックス化合物の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散して用いることもできる。
【0062】
本発明のレドックス化合物は、ハロゲン化銀乳剤層、またはその他の親水性コロイド層に添加される。また、複数のハロゲン化銀乳剤層のうちの少なくとも一層に添加しても良い。
いくつかの構成例をあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
構成例 1) 支持体の上に、本発明のレドックス化合物を含むハロゲン化銀乳剤層と保護層を有する。これらの乳剤層、又は保護層に造核剤として本発明のヒドラジン誘導体を含んでも良い。
構成例 2) 支持体の上に、順に、第1のハロゲン化銀乳剤層と第2のハロゲン化銀乳剤層を有し、第1のハロゲン化銀乳剤層、もしくは隣接する親水性コロイド層に、該ヒドラジン誘導体を含み、第2のハロゲン化銀乳剤層、もしくは隣接する親水性コロイド層に該レドックス化合物を含む。
構成例 3) 構成例 2) で2つの乳剤層の順が逆の構成である。
構成例 2) と 3) においては、2つの感光性乳剤層の間に、ゼラチンや合成ポリマー(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)を含む中間層を設けても良い。
構成例 4) 支持体上に、該ヒドラジン誘導体を含むハロゲン化銀乳剤層を有し、該乳剤層の上、もしくは、支持体とハロゲン化銀乳剤層との間に、該レドックス化合物を含む親水性コロイド層を有する。
特に好ましい構成は、構成例2)または3)である。
【0063】
本発明の感光材料は、造核剤として、一般式(D)で表されるヒドラジン誘導体を少なくとも一種含有するのが好ましい。
【0064】
一般式(D)
【0065】
【化7】
【0066】
式中、R20は脂肪族基、芳香族基、またはヘテロ環基を表し、R10は水素原子またはブロック基を表し、G10は−CO−,−COCO−,−C(=S)−,−SO2-,−SO−,−PO(R30)−基(R30はR10に定義した基と同じ範囲内より選ばれ、R10と異なっていてもよい。),またはイミノメチレン基を表す。A10、A20はともに水素原子、あるいは一方が水素原子で他方が置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、または置換もしくは無置換のアシル基を表す。
【0067】
一般式(D)において、R20で表される脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。
一般式(D)において、R20で表される芳香族基は単環もしくは縮合環のアリール基で、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。R20で表されるヘテロ環基としては、単環または縮合環の、飽和もしくは不飽和の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンズイミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピペリジン環、トリアジン環等が挙げられる。
R20として好ましいものはアリール基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0068】
R20が示す基は置換されていてもよく、代表的な置換基としては例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。
これら置換基は、これらの置換基でさらに置換されていてもよい。
【0069】
R20が有していてもよい置換基として好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基(活性メチレン基を含む)、アラルキル基、ヘテロ環基、置換アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、イミド基、チオウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基(その塩を含む)、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、スルホ基(その塩を含む)、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0070】
一般式(D)において、R10は水素原子またはブロック基を表すが、ブロック基とは具体的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヒドラジノ基を表す。
【0071】
R10で表されるアルキル基として好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2−カルボキシテトラフルオロエチル基、ピリジニオメチル基、ジフルオロメトキシメチル基、ジフルオロカルボキシメチル基、3−ヒドロキシプロピル基、メタンスルホンアミドメチル基、ベンゼンスルホンアミドメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、フェニルスルホニルメチル基、o−ヒドロキシベンジル基などが挙げられる。アルケニル基として好ましくは炭素数1から10のアルケニル基であり、例えばビニル基、2,2−ジシアノビニル基、2−エトキシカルボニルビニル基、2−トリフルオロ−2−メトキシカルボニルビニル基等が挙げられる。アルキニル基として好ましくは炭素数1から10のアルキニル基であり、例えばエチニル基、2−メトキシカルボニルエチニル基等が挙げられる。アリール基としては単環もしくは縮合環のアリール基が好ましく、ベンゼン環を含むものが特に好ましい。例えばフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−メタンスルホンアミドフェニル基、2−カルバモイルフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ヒドロキシメチルフェニル基などが挙げられる。
ヘテロ環基として好ましくは、少なくとも1つの窒素、酸素、および硫黄原子を含む5〜6員の、飽和もしくは不飽和の、単環もしくは縮合環のヘテロ環基で、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基であってもよく、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基(N−置換)、ピペラジノ基、イミダゾリル基、インダゾリル基(4−ニトロインダゾリル基等)、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリジニオ基(N−メチル−3−ピリジニオ基等)、キノリニオ基、キノリル基などがある。モルホリノ基、ピペリジノ基、ピリジル基、ピリジニオ基等が特に好ましい。
【0072】
アルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としてはフェノキシ基が好ましく、アミノ基としては無置換アミノ基、及び炭素数1〜10のアルキルアミノ基、アリールアミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環アミノ基(4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む)が好ましい。アミノ基の例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルアミノ基、プロピルアミノ基、2−ヒドロキシエチルアミノ基、アニリノ基、o−ヒドロキシアニリノ基、5−ベンゾトリアゾリルアミノ基、N−ベンジル−3−ピリジニオアミノ基等が挙げられる。ヒドラジノ基としては置換もしくは無置換のヒドラジノ基、または置換もしくは無置換のフェニルヒドラジノ基(4−ベンゼンスルホンアミドフェニルヒドラジノ基など)が特に好ましい。
【0073】
R10で表される基は置換されていても良く、好ましい置換基としてはR20の置換基として例示したものがあてはまる。
一般式(D)に於いてR10はG10−R10の部分を残余分子から分裂させ、−G10−R10部分の原子を含む環式構造を生成させる環化反応を生起するようなものであってもよく、その例としては、例えば特開昭63−29751号などに記載のものが挙げられる。
一般式(D)で表されるヒドラジン誘導体は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。かかる吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201048号、同59−201049号、特開昭61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基があげられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2−285344号に記載された基が挙げられる。
【0074】
一般式(D)のR10またはR20はその中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。本発明においてバラスト基とは、6以上の炭素数を有する、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(またはアルキレン基)、アルコキシ基(またはアルキレンオキシ基)、アルキルアミノ基(またはアルキレンアミノ基)、アルキルチオ基、あるいはこれらを部分構造として有する基を表し、さらに好ましくは炭素数7以上で炭素数24以下の、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(またはアルキレン基)、アルコキシ基(またはアルキレンオキシ基)、アルキルアミノ基(またはアルキレンアミノ基)、アルキルチオ基、あるいはこれらを部分構造として有する基を表す。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0075】
一般式(D)のR10またはR20は、置換基としてヒドラジノ基を複数個含んでいてもよく、この時一般式(D)で表される化合物は、ヒドラジノ基に関しての多量体を表し、具体的には例えば特開昭64-86134号、特開平4-16938号、特開平5-197091号、WO95−32452号、WO95−32453号、特開平9-179229号、特開平9-235264号、特開平9-235265号、特開平9-235266号、特開平9-235267号等に記載された化合物が挙げられる。
【0076】
一般式(D)のR10またはR20は、その中に、カチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、4級化されたリン原子を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、あるいは解離性基(アルカリ性の現像液で解離しうる酸性度の低いプロトンを有する基もしくは部分構造、あるいはまたその塩を意味し、具体的には、例えばカルボキシ基/−COOH、スルホ基/−SO3H、ホスホン酸基/−PO3H、リン酸基/−OPO3H、ヒドロキシ基/−OH基、メルカプト基/−SH、−SO2NH2基、N−置換のスルホンアミド基/−SO2NH−基、−CONHSO2−基、−CONHSO2NH−基、−NHCONHSO2−基、−SO2NHSO2−基、−CONHCO−基、活性メチレン基、含窒素ヘテロ環基に内在する−NH−基、またはこれらの塩等)が含まれていてもよい。これらの基が含まれる例としては、例えば特開平7−234471号、特開平5−333466号、特開平6−19032号、特開平6−19031号、特開平5−45761号、米国特許4994365号、米国特許4988604号、特開平7−259240号、特開平7−5610号、特開平7−244348号、独特許4006032号、特開平11−7093号等に記載の化合物が挙げられる。
【0077】
一般式(D)に於いてA10、A20は水素原子、炭素数20以下のアルキルまたはアリールスルホニル基(好ましくはフェニルスルホニル基、又はハメットの置換基定数の和が−0.5以上となるように置換されたフェニルスルホニル基)、炭素数20以下のアシル基(好ましくはベンゾイル基、又はハメットの置換基定数の和が−0.5以上となるように置換されたベンゾイル基、あるいは直鎖、分岐、又は環状の置換もしくは無置換の脂肪族アシル基(ここに置換基としては、例えばハロゲン原子、エーテル基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる))である。A10、A20としては水素原子が最も好ましい。
【0078】
次に本発明において、特に好ましいヒドラジン誘導体について述べる。
R20は置換フェニル基が特に好ましく、置換基としてはスルホンアミド基、アシルアミノ基、ウレイド基、カルバモイル基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、スルファモイルアミノ基、N−アシルスルファモイルアミノ基等が特に好ましく、さらにスルホンアミド基、ウレイド基が好ましく、スルホンアミド基が最も好ましい。
一般式(D)で表されるヒドラジン誘導体は、R20またはR10に、置換基として、直接または間接的に、バラスト基、ハロゲン化銀への吸着基、4級のアンモニオ基を含む基、4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基、エチレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アルカリ性の現像処理液中で解離しうる解離性基、もしくは多量体を形成しうるヒドラジノ基(−NHNH−G10−R10で表される基)の少なくとも1つが置換されていることが特に好ましい。さらには、R20の置換基として、直接または間接的に、前述の何れか1つの基を有することが好ましく、最も好ましいのは、R20がベンゼンスルホンアミド基で置換されたフェニル基を表し、そのベンゼンスルホンアミド基のベンゼン環上の置換基として、直接または間接的に、前述の何れか1つの基を有する場合である。
【0079】
R10で表される基のうち好ましいものは、G10が−CO−基の場合には、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、置換アリール基(置換基としては電子吸引性基またはo−ヒドロキシメチル基が特に好ましい)であり、最も好ましくは水素原子またはアルキル基である。
G10が−COCO−基の場合にはアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基が好ましく、特に置換アミノ基、詳しくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環アミノ基が好ましい。
またG10が−SO2−基の場合には、R10はアルキル基、アリール基または置換アミノ基が好ましい。
【0080】
一般式(D)に於いてG10は好ましくは−CO−基または−COCO−基であり、特に好ましくは−CO−基である。
次に一般式(D)で示される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0081】
【表18】
【0082】
【表19】
【0083】
【表20】
【0084】
【表21】
【0085】
【表22】
【0086】
【表23】
【0087】
【表24】
【0088】
【表25】
【0089】
【表26】
【0090】
【表27】
【0091】
【化8】
【0092】
本発明に用いられるヒドラジン誘導体としては、上記のものの他に、下記のヒドラジン誘導体も好ましく用いられる。本発明に用いられるヒドラジン誘導体はまた、下記の特許公報に記載された種々の方法により、合成することができる。
【0093】
特公平6−77138号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁、4頁に記載の化合物。特公平6−93082号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜18頁に記載の1〜38の化合物。特開平6−230497号に記載の一般式(4)、一般式(5)および一般式(6)で表される化合物で、具体的には同公報25頁、26頁に記載の化合物4−1〜化合物4−10、28頁〜36頁に記載の化合物5−1〜5−42、および39頁、40頁に記載の化合物6−1〜化合物6−7。特開平6−289520号に記載の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜7頁に記載の化合物1−1)〜1−17)および2−1)。特開平6−313936号に記載の(化2)および(化3)で表される化合物で、具体的には同公報6頁〜19頁に記載の化合物。特開平6−313951号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁〜5頁に記載の化合物。特開平7−5610号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜10頁に記載の化合物I−1〜I−38。特開平7−77783号に記載の一般式(II)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II−1〜II−102。特開平7−104426号に記載の一般式(H)および一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜15頁に記載の化合物H−1〜H−44。特開平9−22082号に記載の、ヒドラジン基の近傍にアニオン性基またはヒドラジンの水素原子と分子内水素結合を形成するノニオン性基を有することを特徴とする化合物で、特に一般式(A)、一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物N−1〜N−30。特開平9−22082号に記載の一般式(1)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物D−1〜D−55。この他、WO95−32452号、WO95−32453号、特開平9−179229号、特開平9−235264号、特開平9−235265号、特開平9−235266号、特開平9−235267号、特開平9−319019号、特開平9−319020号、特開平10−130275号、特開平11−7093号、特開平6−332096号、特開平7−209789号、特開平8−6193号、特開平8−248549号、特開平8−248550号、特開平8−262609号、特開平8−314044号、特開平8−328184号、特開平9−80667号、特開平9−127632号、特開平9−146208号、特開平9−160156号、特開平10−161260号、特開平10−221800号、特開平10−213871号、特開平10−254082号、特開平10−254088号、特開平7−120864号、特開平7−244348号、特開平7−333773号、特開平8−36232号、特開平8−36233号、特開平8−36234号、特開平8−36235号、特開平8−272022号、特開平9−22083号、特開平9−22084号、特開平9−54381号、特開平10−175946号、記載のヒドラジン誘導体。
【0094】
本発明においてヒドラジン系造核剤は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
なお、本明細書において、各化合物の添加量のハロゲン化銀1モル当りとは塗布総銀量1モル当りという意味である。
【0095】
本発明においてヒドラジン系造核剤は、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層側の該ハロゲン化銀乳剤層、あるいは他の親水性コロイド層のどの層に添加してもよいが、該ハロゲン化銀乳剤層あるいはそれに隣接する親水性コロイド層に添加することが好ましい。また、2種類以上のヒドラジン系造核剤を併用して使用することもできる。
本発明において造核剤添加量はハロゲン化銀1モルに対し1×10-5〜1×10-2モルが好ましく、1×10-5〜5×10-3モルがより好ましく、2×10-5〜5×10-3モルが最も好ましい。
なお、本明細書において、各化合物の添加量のハロゲン化銀1モル当りとは塗布総銀量1モル当りという意味である。
【0096】
本発明においては、感光材料中に造核促進剤を内蔵する。本発明に用いられる造核促進剤としては、アミン誘導体、オニウム塩、ジスルフィド誘導体またはヒドロキシメチル誘導体などが挙げられる。以下にその例を列挙する。特開平7−77783号公報48頁2行〜37行に記載の化合物で、具体的には49頁〜58頁に記載の化合物A−1)〜A−73)。特開平7−84331号に記載の(化21)、(化22)および(化23)で表される化合物で、具体的には同公報6頁〜8頁に記載の化合物。特開平7−104426号に記載の一般式〔Na〕および一般式〔Nb〕で表される化合物で、具体的には同公報16頁〜20頁に記載のNa−1〜Na−22の化合物およびNb−1〜Nb−12の化合物。特開平8−272023号に記載の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)および一般式(7)で表される化合物で、具体的には同明細書に記載の1−1〜1−19の化合物、2−1〜2−22の化合物、3−1〜3−36の化合物、4−1〜4−5の化合物、5−1〜5−41の化合物、6−1〜6−58の化合物、および7−1〜7−38の化合物。特開平9−297377号のp55、カラム108の8行〜p69、カラム136の44行までに記載の造核促進剤。
【0097】
本発明に用いられる造核促進剤としては、一般式(a)〜一般式(f)で表される4級塩化合物が好ましく、特に一般式(b)で表される化合物が最も好ましい。
一般式(a)においてR100、R110、R120で表される脂肪族基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの直鎖又は分枝状のアルキル基;置換もしくは無置換のベンジル基などのアラルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;アリル基、ビニル基、5−ヘキセニル基などのアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基;フェニルエチニル基等のアルキニル基が挙げられる。芳香族基としてはフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基などのアリール基が、またヘテロ環基としては、ピリジル基、キノリル基、フリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリル基、ピリミジル基、ピロリジル基などが挙げられる。
【0098】
これらの基上に置換した置換基の例としては、R100、R110、R120で表される基の他に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、(アルキルもしくはアリール)アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル又はアリール)チオ基、カルボンアミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオウレイド基、スルホニルウレイド基、スルホンアミド基、スルファモイル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、カルボキシル基(カルボキシラートを含む)、スルホ基(スルホナートを含む)、シアノ基、オキシカルボニル基、アシル基、ヘテロ環基(4級化された窒素原子を含むヘテロ環基を含む)等が挙げられる。これら置換基はこれら置換基でさらに置換されていてもよい。
一般式(a)のR100、R110、R120で表される基は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0099】
一般式(a)のMで表される基の例としては、m10が1を表す時、R100、R110、R120と同義の基が挙げられる。m10が2以上の整数を表す時、MはMに含まれる炭素原子でQ1 +と結合するm10価の連結基を表し、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、さらにはこれらの基と−CO−基、−O−基、−N(RN)−基、−S−基、−SO−基、−SO2-、−P=O−基を組みあわせて形成されるm10価の連結基を表す(RNは水素原子またはR100、R110、R120と同義の基を表し、分子内に複数のRNが存在する時、これらは同じであっても異なっていても良く、さらには互いに結合していても良い)。Mは任意の置換基を有していてもよく、その置換基としては、R100、R110、R120で表される基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0100】
一般式(a)においてR100、R110、R120は、好ましくは炭素数20以下の基であり、Q1がリン原子を表す時、炭素数15以下のアリール基が特に好ましく、Q1が窒素原子を表す時、炭素数15以下のアルキル基、アラルキル基、アリール基が特に好ましい。m10は1または2が好ましく、m10が1を表す時、Mは好ましくは炭素数20以下の基であり、総炭素数15以下のアルキル基、アラルキル基、またはアリール基が特に好ましい。m10が2を表す時、Mで表される2価の有機基は、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、さらにはこれらの基と−CO−基、−O−基、−N(RN)−基、−S−基、−SO2−基を組みあわせて形成される2価の基である。m10が2を表す時、MはMに含まれる炭素原子でQ1 +と結合する総炭素数20以下の2価の基であることが好ましい。なおM、あるいはR100、R110、R120が、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を複数個含む場合、以上述べた総炭素数の好ましい範囲は、その限りではない。またm10が2以上の整数を表す時、分子内にR100、R110、R120はそれぞれ複数存在するが、その複数のR100、R110、R120はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。
【0101】
一般式(a)で表される4級塩化合物は、分子内にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有するが、これは1箇所に置換されていても、あるいは複数箇所にまたがって置換されていてもよい。m10が2以上の整数を表す時、Mで表される連結基に、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有していることがより好ましい。
【0102】
一般式(b)、一般式(c)または一般式(d)において、A1、A2、A3、A4、A5は4級化された窒素原子を含む、置換もしくは無置換の不飽和ヘテロ環を完成させるための有機残基を表し、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および水素原子を含んでもよく、更にベンゼン環が縮環してもかまわない。
A1、A2、A3、A4、A5が形成する不飽和ヘテロ環の例としては、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピリミジン環、ピラゾール環などを挙げることができる。特に好ましくは、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環である。
A1、A2、A3、A4、A5が4級化された窒素原子と共に形成する不飽和ヘテロ環は、置換基を有していてもよい。この場合の置換基の例としては、一般式(a)のR100、R110、R120で表される基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。置換基として好ましくは、ハロゲン原子(特にクロロ原子)、炭素数20以下のアリール基(特にフェニル基が好ましい)、アルキル基、アルキニル基、カルバモイル基、(アルキルもしくはアリール)アミノ基、(アルキルもしくはアリール)オキシカルボニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキルもしくはアリール)チオ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルホ基(スルホナートを含む)、カルボキシル基(カルボキシラートを含む)、シアノ基、等が挙げられる。特に好ましくは、フェニル基、アルキルアミノ基、カルボンアミド基、クロロ原子、アルキルチオ基等であり、最も好ましくはフェニル基である。
【0103】
L10、L20で表される2価の連結基は、アルキレン、アリーレン、アルケニレン、アルキニレン、2価のヘテロ環基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−N(RN’)−、−C(=O)−、−PO−を単独または組合せて構成されるものが好ましい。ただしRN’はアルキル基、アラルキル基、アリール基、水素原子を表す。L10、L20で表される2価の連結基は任意の置換基を有していてもよい。置換基の例としては、一般式(a)のR100、R110、R120で表される基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。L10、L20の特に好ましい例として、アルキレン、アリーレン、−C(=O)−、−O−、−S−、−SO2−、−N(RN’)−を単独または組合せて構成されるものを挙げることができる。
【0104】
R111、R222、R333は炭素数1〜20のアルキル基またはアラルキル基が好ましく、各々同じでも異なっていてもよい。R111、R222、R333は置換基を有していてもよく、置換基としては、一般式(a)のR100、R110、R120で表される基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。特に好ましくは、R111、R222、R333は各々炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基である。その好ましい置換基の例としては、カルバモイル基、オキシカルボニル基、アシル基、アリール基、スルホ基(スルホナートを含む)、カルボキシル基(カルボキシラートを含む)、ヒドロキシ基、(アルキルまたはアリール)アミノ基、アルコキシ基を挙げることができる。
但しR111、R222、R333にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を複数個含む場合、以上のR111、R222、R333について述べた炭素数の好ましい範囲は、その限りではない。
【0105】
一般式(b)または一般式(c)で表される4級塩化合物は、分子内にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有するが、これは1箇所に置換されていても、あるいは複数箇所に置換されていてもよく、A1、A2、A3、A4、R111、R222、L10、L20の何れに置換されていてもよいが、好ましくは、L10またはL20で表される連結基に、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有していることが好ましい。
一般式(d)で表される4級塩化合物は、分子内にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有するが、これは1箇所に置換されていても、あるいは複数箇所に置換されていてもよく、A5またはR333の何れに置換されていてもよいが、好ましくは、R333で表される基に、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有していることが好ましい。
【0106】
一般式(a)、一般式(b)、一般式(c)、および一般式(d)で表される4級塩化合物は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とを、同時に繰り返し含んでいてもよい。またエチレンオキシ基またはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を複数個含む場合に、繰り返し個数は、厳密に一つの値を取っていても、あるいは平均値として与えられてもよく、後者の場合、4級塩化合物としては、ある程度の分子量分布を持つ、混合物となる。
本発明においてはエチレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有する場合がより好ましく、さらに計20個〜計67個有する場合が好ましい。
【0107】
一般式(e)においてQ2、R200、R210、R220は、それぞれ一般式(a)におけるQ1、R100、R110、R120と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。
一般式(f)においてA6は、一般式(b)におけるA1またはA2と同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。但し、一般式(f)のA6が4級化された窒素原子と共に形成する含窒素不飽和ヘテロ環は、置換基を有していてもよいが、1級の水酸基を含む置換基を有することはない。
一般式(e)および一般式(f)においてL30はアルキレン基を表す。アルキレン基としては、直鎖、分岐、あるいは環状の、置換もしくは無置換のアルキレン基で、炭素数1〜20のものが好ましい。またエチレン基に代表される飽和のもののみならず、-CH2C6H4CH2−や-CH2CH=CHCH2−に代表される不飽和の基が含まれているものでも良い。またL30が置換基を有する時、その置換基としては一般式(a)のR100、R110、R120で表される基が有していてもよい置換基の例が挙げられる。
L30としては炭素数が1〜10の、直鎖または分岐の飽和の基が好ましい。さらに好ましくは、置換もしくは無置換の、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基で、特に好ましくは置換もしくは無置換の、メチレン基またはエチレン基で、最も好ましくは置換もしくは無置換のメチレン基である。
【0108】
一般式(e)および一般式(f)においてL40は、少なくとも一つの親水性基を有する2価の連結基を表す。ここに親水性基とは−SO2−、−SO−、−O−、−P(=O)=、−C(=O)−、−CONH−、−SO2NH−、−NHSO2NH−、−NHCONH−、アミノ基、グアジニノ基、アンモニオ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基の各基、あるいはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。これらの親水性基とアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、へテロ環基を適宜組み合わせてL40が構成される。
L40を構成するアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、へテロ環基等の基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、一般式(a)のR100、R110、R120で表される基が有していてもよい置換基の例と同じものが挙げられる。
L40において親水性基はL40を分断する形態で存在していても、L40上の置換基の一部として存在していても良いが、L40を分断する形態で存在していることがより好ましい。例えば-C(=O)-、-SO2-、-SO-、-O-、-P(=O)=、-CONH-、-SO2NH-、-NHSO2NH-、-NHCONH-、カチオン性基(具体的には窒素またはリンの4級塩構造、あるいは4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環)、アミノ基、グアジニノ基の各基、あるいはこれらの基の組み合わせからなる2価の基が、L40を分断する形態で存在している場合である。
【0109】
L40が有する親水性基として好ましい例の一つは、エーテル結合とアルキレン基を組み合わせた、エチレンオキシ基やプロピレンオキシ基の繰り返し単位を複数個有する基である。その重合度もしくは平均重合度は、2〜67個が好ましい。
L40が有する親水性基としてはまた、−SO2−、−SO−、−O−、−P(=O)=、−C(=O)−、−CONH−、−SO2NH−、−NHSO2NH−、−NHCONH−、アミノ基、グアジニノ基、アンモニオ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基等の基を組み合わせた結果として、あるいはまたはL40の有する置換基として、解離性基を含む場合も好ましい。ここで解離性基とは、アルカリ性の現像液で解離しうる酸性度の低いプロトンを有する基もしくは部分構造、あるいはまたその塩を意味し、具体的には、例えばカルボキシ基/−COOH、スルホ基/−SO3H、ホスホン酸基/−PO3H、リン酸基/−OPO3H、ヒドロキシ基/−OH基、メルカプト基/−SH、−SO2NH2基、N−置換のスルホンアミド基/−SO2NH−基、−CONHSO2−基、−SO2NHSO2−基、−CONHCO−基、活性メチレン基、含窒素ヘテロ環基に内在する−NH−基、またはこれらの塩のことである。
【0110】
L40は好ましくはアルキレン基またはアリーレン基と、-C(=O)-、-SO2−、-O-、-CONH-、-SO2NH-、-NHSO2NH-、-NHCONH-、およびアミノ基を適宜組み合わせたものが用いられる。より好ましくは炭素数2〜5のアルキレン基と-C(=O)-、-SO2−、-O-、-CONH-、-SO2NH-、-NHSO2NH-、-NHCONH-を適宜組み合わせたものが用いられる。
Yは-C(=O)-または-SO2−を表す。好ましくは-C(=O)-が用いられる。
【0111】
一般式(a)〜一般式(f)においてXn-で表される対アニオンの例としては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、アセテートイオン、オキサレートイオン、フマレートイオン、ベンゾエートイオンなどのカルボキシレートイオン、p−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、ブタンスルホネート、ベンゼンスルホネートなどのスルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。
Xn-で表される対アニオンとしては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオンが好ましく、nは1または2が好ましい。Xn-としては、クロロイオンまたはブロモイオンが特に好ましく、クロロイオンが最も好ましい。
但し、分子内に別にアニオン基を有し、Q1 +、Q2 +またはN+と分子内塩を形成する場合、Xn-は必要ない。
【0112】
本発明の4級塩化合物としては、一般式(b)、一般式(c)、一般式(f)で表される4級塩化合物がより好ましく、中でも一般式(b)および一般式(f)で表される4級塩化合物が特に好ましい。さらに一般式(b)においては、L10で表される連結基にエチレンオキシ基の繰り返し単位を20個以上有する場合が好ましく、さらに20個〜67個有する場合が特に好ましい。また一般式(f)においては、A6が形成する不飽和へテロ環化合物が4-フェニルピリジン、イソキノリン、キノリンを表す時が特に好ましい。
【0113】
次に一般式(a)〜一般式(f)で表される4級塩化合物の具体例を示す。(式中、Phはフェニル基を表す。)ただし本発明は以下の化合物例によって限定されるものではない。
【0114】
【表28】
【0115】
【表29】
【0116】
【表30】
【0117】
【表31】
【0118】
【表32】
【0119】
【表33】
【0120】
【表34】
【0121】
【表35】
【0122】
本発明の一般式(a)〜一般式(f)で表される4級塩化合物は、公知の方法により容易に合成することができるが、以下に、その合成例を示す。
【0123】
合成例1(例示化合物3の合成)
ポリエチレングリコール(平均分子量2000、800g)、塩化チオニル(584ml)とDMF(4ml)を室温で混合した後、90℃に加熱し5時間撹拌した。過剰の塩化チオニルを留去した後に、4−フェニルピリジン(372g)を加え150℃で7時間反応させた。反応混合物を酢酸エチル/2−プロパノール(10/1)の溶液にし、冷却して析出した固体を濾取した。これを乾燥して、目的とする例示化合物3を得た。(584g,収率62%)
【0124】
合成例2(例示化合物6の合成)
ポリエチレングリコール(平均分子量2000、10g)、塩化チオニル(7.3ml)とDMF(0.1ml)を室温で混合した後、90℃に加熱し5時間撹拌した。過剰の塩化チオニルを留去した後に、イソキノリン(4.0g)を加え150℃で7時間反応させた。反応混合物を酢酸エチル/2−プロパノール(10/1)の溶液にし、冷却して析出した固体を濾取した。これを乾燥し、目的とする例示化合物6を得た。(7.1g,収率60%)
【0125】
合成例3(例示化合物4の合成)
上記合成例1において、ポリエチレングリコール(平均分子量2000)を用いる代わりに、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)を用いた以外は、全く同様にして例示化合物4を得た。
合成例4(例示化合物65の合成)
1,10-ジアミノ-4,7-ジオキサデカン(17.6g、0.1モル)、炭酸カリウム(27.6g、0.2モル)、酢酸エチル(100ml)、水(50ml)を室温で激しく撹拌し、そこにクロロアセチルクロリド(34g、 0.3モル)を滴下した。この反応液を分液し、酢酸エチル層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮すると1,10-ビス(クロロアセチルアミノ)-4,7-ジオキサデカンが得られた(23g、収率70%)。この化合物3.3gとトリフェニルホスフィン(7.9g)を混合し、150℃で5時間加熱した。反応混合物を冷却後酢酸エチルで3回洗浄すると、褐色の粘稠な液体として例示化合物65が5.4g(収率63%)が得られた。
【0126】
合成例5(例示化合物62の合成)
合成例4におけるトリフェニルホスフィンの代わりに4-フェニルピリジンを用いた以外、全く同様の操作を行い、例示化合物62を得た。
【0127】
合成例6(例示化合物71の合成)
合成例4における1,10-ジアミノ-4,7-ジオキサデカンの代わりにO,O’-ビス(2−アミノプロピル)ポリエチレングリコール800を用い、トリフェニルホスフィンの代わりに4-フェニルピリジンを用いた以外全く同様の操作を行い、例示化合物71を得た。
【0128】
本発明の造核促進剤は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、造核促進剤の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0129】
本発明の造核促進剤は、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層側のハロゲン化銀乳剤を含まない親水性コロイド層からなる非感光性層に添加することが好ましく、特に該ハロゲン化銀乳剤層と支持体の間の親水性コロイド層からなる非感光性層に添加することが好ましい。
本発明の造核促進剤の添加量はハロゲン化銀1モルに対し1×10-6〜2×10-2モルが好ましく、1×10-5〜2×10-2モルがより好ましく、2×10-5〜1×10-2モルが最も好ましい。また、2種類以上の造核促進剤を併用して使用することもできる。
【0130】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いるハロゲン化銀乳剤はハロゲン化銀として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀を用いることができるが、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が好ましい。ハロゲン化銀粒子の形状は、立方体、十四面体、八面体、不定型、板状いずれでも良いが、立方体が好ましい。ハロゲン化銀の平均粒径は0.1μm〜0.7μmが好ましいが、より好ましくは0.1〜0.5μmであり、{(粒径の標準偏差)/(平均粒径)}×100で表される変動係数が15%以下、より好ましくは10%以下の粒径分布の狭いものが好ましい。
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていても良い。また粒子内部あるいは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していても良い。
本発明に用いられる写真乳剤は、P. Glafkides著 Chimie et Physique Photographique (Paul Montel社刊、1967年)、G. F. Dufin著 Photographic Emulsion Chemistry (The Forcal Press刊、1966年)、V. L. Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion (The Forcal Press刊、1964年) などに記載された方法を用いて調製することができる。
すなわち、酸性法、中性法等のいずれでもよく、又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせなどのいずれを用いても良い。粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。
【0131】
同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。またアンモニア、チオエーテル、四置換チオ尿素等のいわゆるハロゲン化銀溶剤を使用して粒子形成させることが好ましい。より好ましくは四置換チオ尿素化合物であり、特開昭53−82408号、同55−77737号に記載されている。好ましいチオ尿素化合物はテトラメチルチオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンである。ハロゲン化銀溶剤の添加量は用いる化合物の種類および目的とする粒子サイズ、ハロゲン組成により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり10-5〜10-2モルが好ましい。
【0132】
コントロールド・ダブルジェット法およびハロゲン化銀溶剤を使用した粒子形成方法では、結晶型が規則的で粒子サイズ分布の狭いハロゲン化銀乳剤を作るのが容易であり、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤を作るのに有用な手段である。
また、粒子サイズを均一にするためには、英国特許第1,535,016号、特公昭48−36890号、同52−16364号に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリの添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法や、英国特許第4,242,445号、特開昭55−158124号に記載されているように水溶液の濃度を変化させる方法を用いて、臨界飽和度を越えない範囲において早く成長させることが好ましい。
【0133】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラスト及び低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物などを含有することが好ましい。また、高感度化のためにはK4[Fe(CN)6]やK4[Ru(CN)6]、K3[Cr(CN)6]のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0134】
本発明に用いられるロジウム化合物として、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。たとえば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、またはロジウム錯塩で配位子としてハロゲン、アミン類、オキザラト、アコ等を持つもの、たとえば、ヘキサクロロロジウム(III) 錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III) 錯塩、ヘキサアミンロジウム(III) 錯塩、トリザラトロジウム(III) 錯塩等が挙げられる。これらのロジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(たとえば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(たとえばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0135】
本発明に用いられるレニウム、ルテニウム、オスミニウムは特開昭63−2042号、特開平1−285941号、同2−20852号、同2−20855号等に記載された水溶性錯塩の形で添加される。特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
〔ML6〕n-
ここでMはRu、Re、またはOsを表し、Lは配位子、nは0、1、2、3または4を表す。この場合、対イオンは重要性を持たず、アンモニウムもしくはアルカリ金属イオンが用いられる。また好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0136】
〔ReCl6〕3- 〔ReBr6〕3- 〔ReCl5(NO)〕2-
〔Re(NS)Br5〕2- 〔Re(NO)(CN)5〕2- 〔Re(O)2(CN)4〕3-
〔RuCl6〕3- 〔RuCl4(H2O)2〕1- 〔RuCl5(NO)〕2-
〔RuBr5(NS)〕2- 〔Ru(CO)3Cl3〕2-
〔Ru(CO)Cl5〕2- 〔Ru(CO)Br5〕2-
〔OsCl6〕3- 〔OsCl5(NO)〕2- 〔Os(NO)(CN)5〕2-
〔Os(NS)Br5〕2- 〔Os(CN)6〕4- 〔Os(O)2(CN)4〕4-
【0137】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り1×10-9モル〜1×10-5モルの範囲が好ましく、特に好ましくは1×10-8モル〜1×10-6モルである。
本発明に用いられるイリジウム化合物としては、ヘキサクロロイリジウム、ヘキサブロモイリジウム 、ヘキサアンミンイリジウム、ペンタクロロニトロシルイリジウム等が挙げられる。本発明に用いられる鉄化合物としては、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、チオシアン酸第一鉄が挙げられる。
【0138】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は化学増感されることが好ましい。化学増感の方法としては、硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、貴金属増感法などの知られている方法を用いることができ、単独または組み合わせて用いられる。組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法などが好ましい。
【0139】
本発明に用いられる硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、たとえばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で変化するが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルであり、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0140】
本発明に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、通常、不安定型および/または非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号、同43−13489号、特開平4−109240号、同4−324855号等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4−324855号中の一般式(VIII) および(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0141】
本発明に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成せしめる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5−313284号に記載の方法で試験することができる。
具体的には、米国特許第1,623,499号、同第3,320,069号、同第3,772,031号、英国特許第235,211号、同第1,121,496号、同第1,295,462号、同第1,396,696号、カナダ特許第800,958号、特開平4−204640号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)635(1980),ibid 1102(1979),ibid 645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.) 1,2191(1980)、S.パタイ(S.Patai) 編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Serenium and Tellunium Compounds),Vol 1(1986)、同 Vol 2(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4−324855号中の一般式(II)(III)(IV) で示される化合物が好ましい。
【0142】
本発明で用いられるセレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
本発明に用いられる貴金属増感剤としては、金、白金、パラジウム、イリジウム等が挙げられるが、特に金増感が好ましい。本発明に用いられる金増感剤としては具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金などが挙げられ、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル程度を用いることができる。
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感剤としては第一スズ塩、アミン類、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物などを用いることができる。
本発明のハロゲン化銀乳剤は、欧州公開特許(EP)−293,917に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
本発明に用いられる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの、感度の異なるもの)併用してもよい。中でも高コントラストを得るためには、特開平6−324426号に記載されているように、支持体に近いほど高感度な乳剤を塗布することが好ましい。
【0143】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤は、増感色素によって比較的長波長の青色光、緑色光、赤色光または赤外光に分光増感されてもよいが、吸収極大波長を450nm〜600nmに有する分光増感色素によって分光増感されていることが好ましい。さらに、特開昭55−45015号に記載の一般式〔I〕の化合物、および、特開平9−160185号に記載の一般式〔I〕の化合物が好ましく、特に、特開平9−160185号に記載の一般式〔I〕の化合物が好ましい。具体的には、特開昭55−45015号に記載の(1)から(19)の化合物、特開平9−160185号に記載のI−1からI−40の化合物およびI−56からI−85の化合物などを挙げることができる。
【0144】
その他の増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。
本発明に使用されるその他の有用な増感色素は例えばRESEARCH DISCLOSURE Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item18341X項(1979年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー、イメージセッターや製版カメラの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素も有利に選択することができる。
例えば、A)アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号に記載の(I)−1から(I)−8の化合物、特開平2−48653号に記載のI−1からI−28の化合物、特開平4−330434号に記載のI−1からI−13の化合物、米国特許2,161,331号に記載のExample1からExample14の化合物、西独特許936,071号記載の1から7の化合物、B)ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭54−18726号に記載のI−1からI−38の化合物、特開平6−75322号に記載のI−1からI−35の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34の化合物、C)LED光源に対しては特公昭55−39818号に記載の色素1から20、特開昭62−284343号に記載のI−1からI−37の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34の化合物、D)半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号に記載のI−1からI−12の化合物、特開昭60−80841号に記載のI−1からI−22の化合物、特開平4−335342号に記載のI−1からI−29の化合物および特開昭59−192242号に記載のI−1からI−18の化合物、E)製版カメラのタングステンおよびキセノン光源に対しては、上記記載の化合物の他に特開平9−160185号に記載のI−41からI−55の化合物およびI−86からI−97の化合物および特開平6−242547号に記載の4−Aから4−Sの化合物、5−Aから5−Qの化合物、6−Aから6−Tの化合物なども有利に選択することができる。
【0145】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質はリサーチ・ディスクロージャ(Research Disclosure)176巻17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは前述の特公昭49−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号等に記載されている。
【0146】
本発明に用いられる増感色素は2種以上を併用してもよい。増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
また、米国特許第3,469,987号明細書等に開示されているように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22091号等に開示されているように、色素を酸に溶解し、該溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液として乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号、同第4,006,025号明細書等に開示されているように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53−102733号、同58−105141号に開示されているように親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法、特開昭51−74624号に開示されているように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法を用いることもできる。また、溶液に超音波を用いることもできる。
【0147】
本発明に用いる増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば米国特許第2,735,766号、同第3,628,960号、同第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/および脱塩前の時期、脱銀工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後、塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならばいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許第4,225,666号、特開昭58−7629号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組み合わせの種類を変えて添加してもよい。
【0148】
本発明において増感色素の添加量は、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズ、ハロゲン組成、化学増感の方法と程度、カブリ防止剤の種類等により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり、4×10-6〜8×10-3モルで用いることができる。例えばハロゲン化銀粒子サイズが0.2〜1.3μmの場合には、ハロゲン化銀粒子の表面積1m2あたり、2×10-7〜3.5×10-6モルの添加量が好ましく、6.5×10-7〜2.0×10-6モルの添加量がより好ましい。
本発明の感光材料に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限はなく、例えば下記箇所に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0149】
特開平3−39948号公報第10頁右下11行目から同公報第12頁左下5行目に記載のポリヒドロキシベンゼン化合物。具体的には、同公報に記載の化合物(III)−1〜25の化合物。
特開平1−118832号公報に記載の一般式(I)で表される実質的には可視域に吸収極大を持たない化合物。具体的には、同公報に記載の化合物I−1〜I−26の化合物。
特開平2−103536号公報第17頁右下19行目から同公報18頁右上4行目に記載のかぶり防止剤。
特開平2−103536号公報第18頁左下12行目から同頁左下20行目に記載のポリマーラテックス。特開平9−179228号に記載の一般式(I)で表される活性メチレン基を有するポリマーラテックスで、具体的には同明細書に記載の化合物I−1〜I−16。特開平9−179228号に記載のコア/シェル構造を有するポリマーラテックスで、具体的には同明細書に記載の化合物P−1〜P−55。特開平7−104413号公報第14頁左1行目から同頁右30行目に記載の酸性ポリマーラテックスで、具体的には同公報15頁に記載の化合物II-1)〜II-9)。
【0150】
特開平2−103536号公報第19頁左上15行目から同公報19頁右上15行目に記載のマット剤、滑り剤、可塑剤。
特開平2−103536号公報第18頁右上5行目から同頁右上17行目に記載の硬膜剤。
特開平2−103536号公報第18頁右下6行目から同公報19頁左上1行目に記載の酸基を有する化合物。
特開平2−18542号公報第2頁左下13行目から同公報第3頁右上7行目に記載の導電性物質。具体的には、同公報第2頁右下2行目から同頁右下10行目に記載の金属酸化物、および同公報に記載の化合物P−1〜P−7の導電性高分子化合物。
特開平2−103536号公報第17頁右下1行目から同頁右上18行目に記載の水溶性染料。
【0151】
特開平9−179243号記載の一般式(FA)、一般式(FA1)、一般式(FA2)、一般式(FA3)で表される固体分散染料。具体的には同公報記載の化合物F1〜F34、特開平7−152112号記載の(II−2)〜(II−24)、特開平7−152112号記載の(III−5)〜(III−18)、特開平7−152112号記載の(IV−2)〜(IV−7)。特開平2−294638号公報及び特開平5−11382号に記載の固体分散染料。
特開平2−12236号公報第9頁右上7行目から同頁右下3行目に記載の界面活性剤。特開平2−103536号公報第18頁左下4行目から同頁左下7行目に記載のPEG系界面活性剤。特開平3−39948号公報第12頁左下6行目から同公報第13頁右下5行目に記載の含弗素界面活性剤。具体的には、同公報に記載の化合物VI−1〜VI−15の化合物。
特開平2−18542号公報第3頁右下1行目から20行目に記載のバインダー。
【0152】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層及び保護層を含めた親水性コロイド層の膨潤率は80〜150%の範囲が好ましく、より好ましくは90〜140%の範囲である。親水性コロイド層の膨潤率は、ハロゲン化銀写真感光材料における乳剤層及び保護層を含めた親水性コロイド層の厚み(d0)を測定し、該ハロゲン化銀写真感光材料を25℃の蒸留水に1分間浸漬し、膨潤した厚み(Δd)を測定し、膨潤率(%)=(Δd÷d0)×100の計算式によって求める。
【0153】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤層が塗布されている側の膜面pHは4.5〜7.5の範囲であり、好ましくは4.8〜7.0であり、特に好ましくは5.0〜6.0である。
本発明の実施に際して用いうる支持体としては、例えばバライタ紙、ポリエチレン被覆紙、ポリプロピレン合成紙、ガラス板、セルロースアセテート、セルロースナイトレート、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフイルムを挙げることができる。これらの支持体は、それぞれハロゲン化銀写真感光材料の使用目的に応じて適宜選択される。
また、特開平7−234478号、及びUS558979号に記載のシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなる支持体も好ましく用いられる。
以下に本発明における現像液、定着液などの処理剤および処理方法等について述べるが、言うまでもなく本発明は以下の記述および具体例に限定されるものではない。
【0154】
本発明の現像処理には、公知の方法のいずれを用いることもできるし、現像処理液には公知のものを用いることができる。
本発明に使用する現像液(以下、現像開始液および現像補充液の双方をまとめて現像液という。)に用いる現像主薬には特別な制限はないが、ジヒドロキシベンゼン類や、アスコルビン酸誘導体、ハイドロキノンモノスルホン酸塩を含むことが好ましく、単独使用でも併用でも良い。特に、ジヒドロキシベンゼン系現像主薬およびこれと超加成性を示す補助現像主薬を含有することが好ましく、ジヒドロキシベンゼン類やアスコルビン酸誘導体と1-フェニル-3-ピラゾリドン類の組み合わせ、またはジヒドロキシベンゼン類やアスコルビン酸誘導体とp-アミノフェノール類の組み合わせなどを挙げることができる。
本発明に用いる現像主薬としては、ジヒドロキシベンゼン現像主薬としてはハイドロキノン、クロロハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、メチルハイドロキノンなどがあるが、特にハイドロキノンが好ましい。またアスコルビン酸誘導体現像主薬としては、アスコルビン酸およびイソアスコルビン酸とそれらの塩があるが、特にエリソルビン酸ナトリウムが素材コストの点から好ましい。
【0155】
本発明に用いる1-フェニル-3-ピラゾリドンまたはその誘導体の現像主薬としては、1-フェニル-3-ピラゾリドン、1-フェニル-4,4-ジメチル-3-ピラゾリドン、1-フェニル-4-メチル-4-ヒドロキシメチル-3-ピラゾリドンなどがある。
本発明に用いるp−アミノフェノール系現像主薬としてN-メチル−p-アミノフェノール、p−アミノフェノール、N−(β-ヒドロキシフェニル)−p−アミノフェノール、N−(4-ヒドロキシフェニル)グリシン、o−メトキシ−p−(N,N−ジメチルアミノ)フェノール、o−メトキシ−p−(N−メチルアミノ)フェノールなどがあるが、なかでもN-メチル−p−アミノフェノール、または特開平9-297377号および特開平9-297378号に記載のアミノフェノール類が好ましい。
【0156】
ジヒドロキシベンゼン系現像主薬は通常0.05モル/リットル〜0.8モル/リットルの量で用いられるのが好ましい。またジヒドロキシベンゼン類と1-フェニル-3-ピラゾリドン類もしくはp-アミノフェノール類の組み合わせを用いる場合には前者を0.05モル/リットル〜0.6モル/リットル、好ましくは0.10モル/リットル〜0.5モル/リットル、後者を0.06モル/リットル以下、好ましくは0.03モル/リットル〜0.003モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
【0157】
アスコルビン酸誘導体現像主薬は、通常0.01モル/リットル〜0.5モル/リットルの量で用いられるのが好ましく、0.05モル/リットル〜0.3モル/リットルがより好ましい。またアスコルビン酸誘導体と1-フェニル-3-ピラゾリドン類もしくはp-アミノフェノール類の組み合わせを用いる場合にはアスコルビン酸誘導体を0.01モル/リットル〜0.5モル/リットル、1-フェニル-3-ピラゾリドン類もしくはp-アミノフェノール類を0.005モル/リットル〜0.2モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
【0158】
本発明で感光材料を処理する際の現像液には、通常用いられる添加剤(たとえば現像主薬、アルカリ剤、pH緩衝剤、保恒剤、キレート剤等)を含有する事ができる。以下にこれらの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明で感光材料を現像処理する際の現像液に用いられる緩衝剤としては、炭酸塩、特開昭62−186259号に記載のほう酸、特開昭60-93433号に記載の糖類(たとえばサッカロース)、オキシム類(たとえばアセトオキシム)、フェノール類(たとえば5-スルホサリチル酸)、第3リン酸塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩)などが用いられ、好ましくは炭酸塩、ほう酸が用いられる。緩衝剤、特に炭酸塩の使用量は、好ましくは0.1モル/リットル以上、特に0.2〜1.5モル/リットルである。
【0159】
本発明に用いられる保恒剤としては亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムなどがある。亜硫酸塩は好ましくは0.2モル/リットル以上、特に0.3モル/リットル以上用いられるが、あまりに多量添加すると現像液中の銀汚れの原因になるので、上限は1.2モル/リットルとするのが望ましい。特に好ましくは、0.35〜0.7モル/リットルである。
ジヒドロキシベンゼン系現像主薬の保恒剤として、亜硫酸塩と併用して前記のアスコルビン酸誘導体を少量使用しても良い。なかでも素材コストの点からエリソルビン酸ナトリウムを用いることが好ましい。添加量はジヒドロキシベンゼン系現像主薬に対して、モル比で0.03〜0.12の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.10の範囲である。保恒剤としてアスコルビン酸誘導体を使用する場合には現像液中にホウ素化合物を含まないことが好ましい。
【0160】
上記以外に用いられる添加剤としては、臭化ナトリウム、臭化カリウムのような現像抑制剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミドのような有機溶剤、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、イミダゾールまたはその誘導体等の現像促進剤、ヘテロ環メルカプト化合物(たとえば3-(5-メルカプトテトラゾール-1-イル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾールなど)、特開昭62−212651号に記載の化合物を物理現像ムラ防止剤として添加することもできる。
また、メルカプト系化合物、インダゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物をカブリ防止剤または黒ポツ(black pepper)防止剤として含んでも良い。具体的には、5-ニトロインダゾール、5-p-ニトロベンゾイルアミノインダゾール、1-メチル-5-ニトロインダゾール、6-ニトロインダゾール、3-メチル-5-ニトロインダゾール、5-ニトロベンゾイミダゾール、2−イソプロピル-5-ニトロベンゾイミダゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、4-((2−メルカプト-1,3,4-チアジアゾール-2−イル)チオ)ブタンスルホン酸ナトリウム、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2−チオール、メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、2−メルカプトベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。これらの添加剤の量は、通常現像液1リットルあたり0.01〜10ミリモルであり、より好ましくは0.1〜2ミリモルである。
【0161】
さらに本発明の現像液中には各種の有機、無機のキレート剤を単独または併用で用いることができる。
無機キレート剤としてはたとえば、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどを用いることができる。
一方、有機キレート剤としては、主に有機カルボン酸、アミノポリカルボン酸、有機ホスホン酸、アミノホスホン酸および有機ホスホノカルボン酸を用いることができる。
有機カルボン酸としてはたとえば、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グルコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、アシエライン酸、セバチン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などを挙げることができる。
【0162】
アミノポリカルボン酸としてはたとえば、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンモノヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテル四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2−プロパノール四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、その他特開昭52−25632号、同55-67747号、同57-102624号、および特公昭53-40900号に記載の化合物を挙げることができる。
【0163】
有機ホスホン酸としては、たとえば米国特許3214454、同3794591および西独特許公開2227369等に記載のヒドロキシアルキリデン−ジホスホン酸やリサーチ・ディスクロージャー第181巻,Item 18170(1979年5月号)等に記載の化合物が挙げられる。
アミノホスホン酸としては、たとえばアミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等が挙げられるが、その他上記リサーチ・ディスクロージャー18170、特開昭57-208554号、同54-61125号、同55-29883号、同56-97347号等に記載の化合物を挙げることができる。
【0164】
有機ホスホノカルボン酸としては、たとえば特開昭52−102726、同53-42730、同54-121127、同55-4024、同55-4025、同55-126241、同55-65955、同55-65956および前述のリサーチ・ディスクロージャー18170等に記載の化合物を挙げることができる。
【0165】
これらの有機および/または無機のキレート剤は、前述のものに限定されるものではない。また、アルカリ金属塩やアンモニウム塩の形で使用しても良い。これらのキレート剤の添加量としては、現像液1リットルあたり好ましくは、1×10-4〜1×10-1モル、より好ましくは1×10-3〜1×10-2モルである。
【0166】
さらに、現像液中に銀汚れ防止剤として、たとえば特開昭56-24347、特公昭56-46585、特公昭62−2849、特開平4-362942、特開平8-6215号に記載の化合物の他、メルカプト基を1つ以上有するトリアジン(たとえば特公平6-23830、特開平3-282457、特開平7-175178に記載の化合物)、同ピリミジン(たとえば2−メルカプトピリミジン、2,6-ジメルカプトピリミジン、2,4-ジメルカプトピリミジン、5,6-ジアミノ-2,4-ジメルカプトピリミジン、2,4,6-トリメルカプトピリミジン、特開平9-274289号記載の化合物など)、同ピリジン(たとえば2−メルカプトピリジン、2,6-ジメルカプトピリジン、3,5-ジメルカプトピリジン、2,4,6-トリメルカプトピリジン、特開平7-248587に記載の化合物など)、同ピラジン(たとえば2−メルカプトピラジン、2,6-ジメルカプトピラジン、2,3-ジメルカプトピラジン、2,3,5-トリメルカプトピラジンなど)、同ピリダジン(たとえば3-メルカプトピリダジン、3,4-ジメルカプトピリダジン、3,5-ジメルカプトピリダジン、3,4,6-トリメルカプトピリダジンなど)、特開平7-175177に記載の化合物、米国特許5457011に記載のポリオキシアルキルホスホン酸エステルなどを用いることができる。これらの銀汚れ防止剤は単独または複数の併用で用いることができ、添加量は現像液1Lあたり0.05〜10ミリモルが好ましく、0.1〜5ミリモルがより好ましい。
また、溶解助剤として特開昭61-267759記載の化合物を用いることができる。
さらに必要に応じて色調剤、界面活性剤、消泡剤、硬膜剤等を含んでも良い。
【0167】
現像液の好ましいpHは9.0〜12.0であり、特に好ましくは9.0〜11.0、さらに好ましくは9.5〜11.0の範囲である。pH調整に用いるアルカリ剤には通常の水溶性無機アルカリ金属塩(たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を用いることができる。
【0168】
現像液のカチオンとしては、ナトリウムイオンに比べてカリウムイオンの方が現像抑制をせず、またフリンジと呼ばれる黒化部のまわりのギザギザが少ない。さらに、濃縮液として保存する場合には一般にカリウム塩のほうが溶解度が高く好ましい。しかしながら、定着液においてはカリウムイオンは銀イオンと同程度に定着阻害をすることから、現像液のカリウムイオン濃度が高いと、感光材料により現像液が持ち込まれることにより定着液中のカリウムイオン濃度が高くなり、好ましくない。以上のことから現像液におけるカリウムイオンとナトリウムイオンのモル比率は20:80〜80:20の間であることが好ましい。カリウムイオンとナトリウムイオンの比率は、pH緩衝剤、pH調整剤、保恒剤、キレート剤などの対カチオンで、上記の範囲で任意に調整できる。
【0169】
現像液の補充量は、感光材料1m2につき390ミリリットル以下であり、325〜30ミリリットルが好ましく、250ミリリットル以下がより好ましく、250〜120ミリリットルが最も好ましい。現像補充液は、現像開始液と同一の組成および/または濃度を有していても良いし、開始液と異なる組成および/または濃度を有していても良い。
【0170】
本発明における定着処理剤の定着剤としては、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムアンモニウムが使用できる。定着剤の使用量は適宜かえることができるが、一般には約0.7〜約3.0モル/リットルである。
【0171】
本発明における定着液は、硬膜剤として作用する水溶性アルミニウム塩、水溶性クロム塩を含んでも良く、水溶性アルミニウム塩が好ましい。それにはたとえば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明礬、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウムなどがある。これらは使用液におけるアルミニウムイオン濃度として、0.01〜0.15モル/リットルで含まれることが好ましい。
なお、定着液を濃縮液または固形剤として保存する場合、硬膜剤などを別パートとした複数のパーツで構成しても良いし、すべての成分を含む一剤型の構成としても良い。
【0172】
定着処理剤には所望により保恒剤(たとえば亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩などを0.015モル/リットル以上、好ましくは0.02モル/リットル〜0.3モル/リットル)、pH緩衝剤(たとえば酢酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸、コハク酸、アジピン酸などを0.1モル/リットル〜1モル/リットル、好ましくは0.2モル/リットル〜0.7モル/リットル)、アルミニウム安定化能や硬水軟化能のある化合物(たとえばグルコン酸、イミノジ酢酸、5-スルホサリチル酸、グルコヘプタン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マレイン酸、グリコール酸、安息香酸、サリチル酸、タイロン、アスコルビン酸、グルタル酸、アスパラギン酸、グリシン、システイン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸やこれらの誘導体およびこれらの塩、糖類、ほう酸などを0.001モル/リットル〜0.5モル/リットル、好ましくは0.005モル/リットル〜0.3モル/リットル)を含むことができる。
【0173】
このほか、特開昭62−78551に記載の化合物、pH調整剤(たとえば水酸化ナトリウム、アンモニア、硫酸など)、界面活性剤、湿潤剤、定着促進剤等も含むことができる。界面活性剤としては、たとえば硫酸化物スルフォン酸化物などのアニオン界面活性剤、ポリエチレン系界面活性剤、特開昭57-6840記載の両性界面活性剤が挙げられ、公知の消泡剤を使用することもできる。湿潤剤としては、アルカノールアミン、アルキレングリコール等がある。定着促進剤としては、特開平6-308681に記載のアルキルおよびアリル置換されたチオスルホン酸およびその塩や、特公昭45-35754、同58-122535、同58-122536記載のチオ尿素誘導体、分子内に3重結合を有するアルコール、米国特許4126459記載のチオエーテル化合物、特開昭64-4739、特開平1-4739、同1-159645および同3-101728に記載のメルカプト化合物、同4-170539に記載のメソイオン化合物、チオシアン酸塩を含むことができる。
【0174】
本発明における定着液のpHは、4.0以上が好ましく、より好ましくは4.5〜6.0を有する。定着液は処理により現像液が混入してpHが上昇するが、この場合、硬膜定着液では6.0以下好ましくは5.7以下であり、無硬膜定着液においては7.0以下好ましくは6.7以下である。
定着液の補充量は、感光材料1m2につき500ミリリットル以下であり、390ミリリットル以下が好ましく、320〜80ミリリットルがより好ましい。補充液は、開始液と同一の組成および/または濃度を有していても良いし、開始液と異なる組成および/または濃度を有していても良い。
定着液は電解銀回収などの公知の定着液再生方法により再生使用することができる。再生装置としては、たとえばフジハント社製Reclaim R-60などがある。
また、活性炭などの吸着フィルターを使用して、色素などを除去することも好ましい。
【0175】
本発明における現像および定着処理剤が液剤の場合、たとえば特開昭61-73147に記載されたような、酸素透過性の低い包材で保管する事が好ましい。さらにこれらの液が濃縮液の場合、所定の濃度になるように、濃縮液1部に対して水0.2〜3部の割合で希釈して使用される。
本発明における現像処理剤及び定着処理剤は固形にしても液剤同様の結果が得られるが、以下に固形処理剤に関する記述を行う。
本発明における固形剤は、公知の形態(粉状、粒状、顆粒状、塊状、錠剤、コンパクター、ブリケット、板状、棒状、ペースト状など)が使用できる。これらの固形剤は、接触して互いに反応する成分を分離するために、水溶性のコーティング剤やフィルムで被覆しても良いし、複数の層構成にして互いに反応する成分を分離しても良く、これらを併用しても良い。
【0176】
被覆剤、造粒助剤には公知のものが使用できるが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸、ビニル系化合物が好ましい。この他、特開平5-45805 カラム2の48行〜カラム3の13行目が参考にできる。
【0177】
複数の層構成にする場合は、接触しても反応しない成分を互いに反応する成分の間にはさんだ構成にして錠剤やブリケット等に加工しても良いし、公知の形態の成分を同様の層構成にして包装しても良い。これらの方法は、たとえば特開昭61-259921、同4-16841、同4-78848、同5-93991等に示されている。
固形処理剤の嵩密度は、0.5〜6.0g/cm3が好ましく、特に錠剤は1.0〜5.0g/cm3が好ましく、顆粒は0.5〜1.5g/cm3が好ましい。
【0178】
本発明における固形処理剤の製法は、公知のいずれの方法を用いることができる。たとえば、特開昭61-259921、特開平4-15641、特開平4-16841、同4-32837、同4-78848、同5-93991、特開平4-85533、同4-85534、同4-85535、同5-134362、同5-197070、同5-204098、同5-224361、同6-138604、同6-138605、同8-286329等を参考にすることができる。
より具体的には転動造粒法、押し出し造粒法、圧縮造粒法、解砕造粒法、撹拌造粒法、スプレードライ法、溶解凝固法、ブリケッティング法、ローラーコンパクティング法等を用いることができる。
【0179】
本発明における固形剤は、表面状態(平滑、多孔質等)や部分的に厚みを変えたり、中空状のドーナツ型にしたりして溶解性を調節することもできる。さらに、複数の造粒物に異なった溶解性を与えたり、溶解性の異なる素材の溶解度を合わせるために、複数の形状をとることも可能である。また、表面と内部で組成の異なる多層の造粒物でも良い。
【0180】
固形剤の包材は、酸素および水分透過性の低い材質が好ましく、包材の形状は袋状、筒状、箱状などの公知のものが使用できる。また、特開平6-242585〜同6-242588、同6-247432、同6-247448、同6-301189、同7-5664、同7-5666〜同7-5669に開示されているような折り畳み可能な形状にすることも、廃包材の保管スペース削減のためには好ましい。これらの包材は、処理剤の取り出し口にスクリューキャップや、プルトップ、アルミシールをつけたり、包材をヒートシールしてもよいが、このほかの公知のものを使用しても良く、特に限定はしない。さらに環境保全上、廃包材をリサイクルまたはリユースすることが好ましい。
【0181】
本発明の固形処理剤の溶解および補充の方法としては特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。これらの方法としてはたとえば、撹拌機能を有する溶解装置で一定量を溶解し補充する方法、特開平9-80718に記載されているような溶解部分と完成液をストックする部分とを有する溶解装置で溶解し、ストック部から補充する方法、特開平5-119454、同6-19102、同7-261357に記載されているような自動現像機の循環系に処理剤を投入して溶解・補充する方法、溶解槽を内蔵する自動現像機で感光材料の処理に応じて処理剤を投入し溶解する方法などがあるが、このほかの公知のいずれの方法を用いることもできる。また処理剤の投入は、人手で行っても良いし、特開平9-138495に記載されているような開封機構を有する溶解装置や自動現像機で自動開封、自動投入してもよく、作業環境の点からは後者が好ましい。具体的には取り出し口を突き破る方法、はがす方法、切り取る方法、押し切る方法や、特開平6-19102、同6-95331に記載の方法などがある。
【0182】
現像、定着処理が済んだ感光材料は、ついで水洗または安定化処理される(以下特に断らない限り、安定化処理を含めて水洗といい、これらに使用する液を、水または水洗水という)。水洗に使用される水は、水道水でもイオン交換水でも蒸留水でも安定化液でもよい。これらの補充量は、一般的には感光材料1m2あたり約17リットル〜約8リットルであるが、それ以下の補充量で行うこともできる。特に3リットル以下の補充量(0も含む。すなわち、ため水水洗)では、節水処理が可能となるのみならず、自動現像機設置の配管を不要とすることもできる。水洗を低補充量で行う場合は、特開昭63-18350、同62−287252等に記載のスクイズローラー、クロスオーバーローラーの洗浄槽を設けることがより好ましい。また、少量水洗時に問題となる公害負荷低減や、水垢防止のために種々の酸化剤(たとえばオゾン、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、活性ハロゲン、二酸化塩素、炭酸ナトリウム過酸化水素塩など)添加やフィルター濾過を組み合わせても良い。
【0183】
水洗の補充量を少なくする方法として、古くより多段向流方式(たとえば2段、3段等)が知られており、水洗補充量は感光材料1m2あたり200〜50ミリリットルが好ましい。この効果は、独立多段方式(向流にせず、多段の水洗槽に個別に新液を補充する方法)でも同様に得られる。
【0184】
さらに、本発明の方法で水洗工程に水垢防止手段を施しても良い。水垢防止手段としては公知のものを使用することができ、特に限定はしないが、防ばい剤(いわゆる水垢防止剤)を添加する方法、通電する方法、紫外線または赤外線や遠赤外線を照射する方法、磁場をかける方法、超音波処理する方法、熱をかける方法、未使用時にタンクを空にする方法などがある。これらの水垢防止手段は、感光材料の処理に応じてなされても良いし、使用状況に関係なく一定間隔で行われても良いし、夜間など処理の行われない期間のみ施しても良い。またあらかじめ水洗水に施しておいて、これを補充しても良い。さらには、一定期間ごとに異なる水垢防止手段を行うことも、耐性菌の発生を抑える上では好ましい。
防ばい剤としては特に限定はなく公知のものが使用できる。前述の酸化剤の他たとえばグルタルアルデヒド、アミノポリカルボン酸等のキレート剤、カチオン性界面活性剤、メルカプトピリジンオキシド(たとえば2−メルカプトピリジン-N-オキシドなど)などがあり、単独使用でも複数の併用でも良い。
通電する方法としては、特開平3-224685、同3-224687、同4-16280、同4-18980などに記載の方法が使用できる。
【0185】
このほか、水泡ムラ防止や汚れ転写防止のために、公知の水溶性界面活性剤や消泡剤を添加しても良い。また、感光材料から溶出した染料による汚染防止に、特開昭63-163456に記載の色素吸着剤を水洗系に設置しても良い。
【0186】
水洗工程からのオーバーフロー液の一部または全部は、特開昭60-235133に記載されているように、定着能を有する処理液に混合利用することもできる。また微生物処理(たとえば硫黄酸化菌、活性汚泥処理や微生物を活性炭やセラミック等の多孔質担体に担持させたフィルターによる処理等)や、通電や酸化剤による酸化処理をして、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、沃素消費量等を低減してから排水したり、銀と親和性のあるポリマーを用いたフィルターやトリメルカプトトリアジン等の難溶性銀錯体を形成する化合物を添加して銀を沈降させてフィルター濾過するなどし、排水中の銀濃度を低下させることも、自然環境保全の観点から好ましい。
【0187】
また、水洗処理に続いて安定化処理する場合もあり、その例として特開平2−201357、同2−132435、同1-102553、特開昭46-44446に記載の化合物を含有した浴を感光材料の最終浴として使用しても良い。この安定浴にも必要に応じてアンモニウム化合物、Bi,Al等の金属化合物、蛍光増白剤、各種キレート剤、膜pH調節剤、硬膜剤、殺菌剤、防ばい剤、アルカノールアミンや界面活性剤を加えることもできる。
水洗、安定化浴に添加する防ばい剤等の添加剤および安定化剤は、前述の現像、定着処理剤同様に固形剤とすることもできる。
【0188】
本発明に使用する現像液、定着液、水洗水、安定化液の廃液は焼却処分することが好ましい。また、これらの廃液はたとえば特公平7-83867、US5439560等に記載されているような濃縮装置で濃縮液化または固化させてから処分することも可能である。
【0189】
処理剤の補充量を低減する場合には、処理槽の開口面積を小さくして液の蒸発、空気酸化を防止することが好ましい。ローラー搬送型の自動現像機については米国特許3025779、同3545971などに記載されており、本明細書においては単にローラー搬送型自動現像機として言及する。この自現機は現像、定着、水洗および乾燥の四工程からなっており、本発明の方法も、他の工程(たとえば停止工程)を除外しないが、この四工程を踏襲するのが最も好ましい。さらに、現像定着間および/または定着水洗間にリンス浴を設けても良い。
【0190】
本発明の現像処理では、処理開始から乾燥後まで(dry to dry)で25〜160秒が好ましく、現像および定着時間が40秒以下、好ましくは6〜35秒、各液の温度は25〜50℃が好ましく、30〜40℃が好ましい。水洗の温度および時間は0〜50℃で40秒以下が好ましい。本発明の方法によれば、現像、定着および水洗された感光材料は水洗水を絞りきる、すなわちスクイズローラーを経て乾燥しても良い。乾燥は約40〜約100℃で行われ、乾燥時間は周囲の状態によって適宜かえられる。乾燥方法は公知のいずれの方法も用いることができ特に限定はないが、温風乾燥や、特開平4-15534、同5-2256、同5-289294に開示されているようなヒートローラー乾燥、遠赤外線による乾燥などがあり、複数の方法を併用しても良い。
【0191】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0192】
実施例1
<ハロゲン化銀乳剤Aの調製>
硝酸銀150gを溶解した硝酸銀水溶液500mlと、粒子形成後の銀1モル当たり2×10-7モルに相当する(NH4)2RhCl5(H2O)及び1×10-7モルに相当するK3IrCl6を含む臭化カリウム44gと塩化ナトリウム34gを溶解したハロゲン塩水溶液500mlを、3gの塩化ナトリウムと0.02gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリチオンと0.5gのクエン酸と4mgのベンゼンチオスルホン酸ナトリウムおよび1mgのベンゼンスルフィン酸ナトリウムを1リットルに溶解した2%ゼラチン水溶液に攪拌しながら34℃で20分間ダブルジェット法により添加し、平均粒子サイズ0.18μm、塩化銀含量58モル%の塩臭化銀粒子を得ることにより核形成を行った。続いて、硝酸銀50gを溶解した硝酸銀水溶液200mlと、乳剤全体の銀1モル当たり1×10-5モルに相当するヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムを含む臭化カリウム12gと塩化ナトリウム13gを溶解したハロゲン塩水溶液200mlを、ダブルジェット法により10分間かけて添加した。
【0193】
その後、銀1モルあたり1×10-3モルのKI溶液を加えてコンバージョンを行い、常法に従ってフロキュレーション法により水洗した。具体的には、温度を40℃に下げ、下記に示すアニオン性沈降剤−1を3g加え、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた。(pH 2.9±0.2の範囲であった)次に上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返し(第三水洗)て水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤に、銀1モルあたりゼラチン40gを加えpH5.9、pAg7.5に調整した後、さらに銀1モルあたりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム16mgとベンゼンスルフィン酸ナトリウム4mg、チオ硫酸ナトリウム2mg、トリフェニルホスフィンセレニド2mgおよび塩化金酸8mgを加え、55℃で60分間加熱し化学増感を施した。その後、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン150mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)を100mgおよび1NのNaOH溶液を2mlを加えた。
得られた粒子は平均粒子サイズ0.20μm、変動係数10%、塩化銀含有率60モル%の沃塩臭化銀立方体粒子であった。(最終的に乳剤として、pH=6.1、pAg=7.2、電導度=37μS/m、密度=1.20×103kg/m3、粘度=20mPa・sとなった。)
【0194】
<乳剤Bの調製>
硝酸銀75gを溶解した硝酸銀水溶液250mlと、乳剤全体の銀1モル当たり4×10-7モルに相当する(NH4)2RhCl5(H2O)及び1×10-7モルに相当するK3IrCl6を含む臭化カリウム16gと塩化ナトリウム20gを溶解したハロゲン塩水溶液250mlを、4gの塩化ナトリウムと0.02gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリチオンと0.5gのクエン酸と4mgのベンゼンチオスルホン酸ナトリウムおよび1mgのベンゼンスルフィン酸ナトリウムを1リットルに溶解した2%ゼラチン水溶液に攪拌しながら45℃で12分間ダブルジェット法により添加し、平均粒子サイズ0.20μm、塩化銀含量70モル%の塩臭化銀粒子を得ることにより核形成を行った。続いて、硝酸銀125gを溶解した硝酸銀水溶液400mlと、臭化カリウム26gと塩化ナトリウム34gを溶解したハロゲン塩水溶液400mlを、ダブルジェット法により20分間かけて添加した。
その後、銀1モルあたり1×10-3モルのKI溶液を加えてコンバージョンを行い、常法に従ってフロキュレーション法により水洗した。具体的な方法は、乳剤Aと同様に行った。水洗・脱塩後の乳剤に、銀1モルあたりゼラチン40gを加え、pH6.0、pAg7.5に調整し、さらに銀1モルあたりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム7mgとベンゼンスルフィン酸ナトリウム2mg、塩化金酸8mgおよびチオ硫酸ナトリウム5mgを加え、60℃で60分間加熱し化学増感を施した。その後、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン250mgおよび防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)を100mgを加えた。得られた粒子は平均粒子サイズ0.28μm、変動係数10%、塩化銀含有率70モル%の沃塩臭化銀立方体粒子であった。(最終的に乳剤として、pH=6.1、pAg=7.5、電導度=46μS/m、密度=1.20×103kg/m3、粘度=62mPa・sとなった。)
【0195】
<塗布試料の作成>
下記に示す両面が塩化ビニリデンを含む防湿層下塗りからなるポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に、UL層/ヒドラジン含有EM層/中間層/レドックス化合物含有EM層/保護層の構成となるように塗布して試料を作成した。
以下に各層の調製方法、塗布量および塗布方法を示す。
(UL層)
UL層としてゼラチン(防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)を含有)0.3g/m2、本発明の造核促進剤No,3を7.5×10-6mol/m2添加し、ポリエチルアクリレート分散物0.25g/m2、および硬膜剤として1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを50mg/m2を塗布した。塗布液のpHは5.8に調製した。
(ヒドラジン含有EM層)
<ヒドラジン含有層乳剤塗布液の調製>
乳剤Aに増感色素として銀1モルあたり5×10-4モルの下記構造式(s−1)の化合物を加え、さらに1×10-3モルの臭化カリウム、9×10-4モルの構造式(a)で表されるメルカプト化合物、および構造式(b)で表されるメルカプト化合物、1×10-4モルの構造式(c)で表されるトリアジン化合物と、ヒドラジン造核剤−Aを2×10-5mol/m2、及びヒドラジン造核剤−Bを0.2×10-5mol/m2を添加した。さらに、コロイダルシリカ(日産化学製スノーテックスC)を500mg/m2、ポリエチルアクリレートの分散物を500mg/m2塗布されるように加え、ヒドラジン含有層塗布液を調製した。溶液のpHは5.8に調整した。
【0196】
【化9】
【0197】
できあがったハロゲン化銀乳剤塗布液を銀量3.4g/m2、ゼラチン量1.6g/m2となるように塗布した。
【0198】
(中間層)
<中間層塗布液の調製>
防腐剤としてプロキセルを含むゼラチン溶液に、エタンチオスルホン酸ナトリウムを5mg/m2、(e)で表される染料を50mg/m2、ハイドロキノンを100mg/m2、5−クロル−8−ヒドロキシキノリンを10mg/m2、ポリエチルアクリレートの分散物を100mg/m2塗布されるように添加し、中間層塗布液を調製した。溶液のpHは7.0に調整した。
中間層はゼラチン0.7g/ m2となるように塗布した。
【0199】
(レドックス化合物含有EM層)
<レドックス化合物含有層乳剤塗布液の調製>
乳剤Bに増感色素としてレドックス化合物含有層乳剤の銀1モルあたり1×10-4モルの先に示した構造式(s−1)の化合物を添加し、5×10-4モルの構造式(a)で表されるメルカプト化合物、1×10-4モルの構造式(c)で表されるトリアジン化合物を添加し、さらに下記構造式(f)で表される染料を5mg/m2、ポリエチルアクリレートの分散物を100mg/m2、硬膜剤として1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを50mg/m2塗布されるように添加した。さらに表36に示すレドックス化合物を2.1×10-4mol/m2添加して、レドックス化合物含有層乳剤塗布液を調製した。液のpHは5.4に調整した。添加したレドックス化合物のpKaは表36に示す。pKa値は、アセトニトリルおよび水の1:1混合溶液を溶媒として、酸−塩基規定によりpHメーターで求めたpKa値である。
【0200】
この時、レドックス化合物は以下のように調製した乳化物を、60℃で溶解して塗布液に添加した。
(レドックス乳化物の調製)
酢酸エチル30mlに前記のレドックス化合物を8g(S8含量は5ppm)、p-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.3g、下記構造式(P−1)、(P−2)で表されるオイルを各4g加え、60℃にて溶解し、A液とした。水170gにゼラチンを8.5g、プロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)を0.05g加え、60℃にて溶解し、B液とした。A液とB液を混合し、60℃にて高速ホモジナイザーで乳化分散を行った。乳化分散後、60℃減圧条件にて脱溶媒を行い、レドックス化合物の4質量%乳化分散物を得た。
できあがったレドックス化合物含有層乳剤塗布液は銀量0.4g/m2、ゼラチン量0.5g/m2となるように塗布した。
【0201】
(保護層)
ゼラチン0.2g/m2、平均粒子サイズ約3.5μmの不定形なSiO2マット剤50mg/m2、コロイダルシリカ(日産化学製スノーテックスC)60mg/m2、流動パラフィン50mg/m2、塗布助剤として下記構造式(g)で表されるフッ素界面活性剤1mg/m2とp−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩10mg/m2を塗布した。
尚、各層の塗布液は、下記構造式(Z)で表される増粘剤を加え、粘度調整した。
【0202】
【化10】
【0203】
またバック層は、以下に示す処方にて塗布した。
【0204】
【化11】
【0205】
<バック保護層>
ゼラチン 1.1g/m2
ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径2.5μm) 20mg/m2
p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩 15mg/m2
ジヘキシル−α−スルホサクシナートナトリウム塩 15mg/m2
酢酸ナトリウム 60mg/m2
防腐剤 (プロキセル) 1mg/m2
【0206】
<支持体>
二軸延伸したポリエチレンテレフタレート支持体(厚み100μm)の両面の下記組成の下塗層第1層及び第2層を塗布した。
【0207】
<下塗層1層>
コア−シェル型塩化ビニリデン共重合体▲1▼ 15g
2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 0.25g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μm) 0.05g
化合物(i) 0.20g
コロイダルシリカ(スノーテックスZL:粒径70〜
100μm日産化学(株)製) 0.12g
水を加えて 100g
さらに、10質量%のKOHを加え、pH=6に調整した塗布液を乾燥温度180℃2分間で、乾燥膜厚が0.9μmになる様に塗布した。
【0208】
<下塗層第2層>
ゼラチン 1g
メチルセルロース 0.05g
化合物(j) 0.02g
C12H25O(CH2CH2O)10H 0.03g
防腐剤 (プロキセル) 3.5×10-3g
酢酸 0.2g
水を加えて 100g
この塗布液を乾燥温度170℃2分間で、乾燥膜厚が0.1μmになる様に塗布した。
【0209】
【化12】
【0210】
<塗布方法>
上記下塗層を施した支持体上に、まず乳剤面側として支持体に近い側よりUL層、ヒドラジン含有EM層、中間層、レドックス化合物含有EM層、保護層の順に5層を、35℃に保ちながらスライドビードコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた後、乳剤面とは反対側に支持体に近い側よりバック層、バック保護層の順に、カーテンコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)した。各々のセットゾーンを通過した時点では、塗布液は充分なセット性を示した。引き続き乾燥ゾーンにて両面を同時に下記乾燥条件にて乾燥した。なお、バック面側を塗布した後、巻き取りまではローラー、その他には一切無接触の状態で搬送した。この時の塗布速度は120m/min であった。
【0211】
<乾燥条件>
セット後、水/ゼラチンの質量比が800%となるまで30℃の乾燥風で乾燥し、800〜200%を35℃30%RHの乾燥風で乾燥させ、そのまま風を当て、表面温度34℃となった時点(乾燥終了と見なす)より30秒後に、48℃2%の空気で1分間乾燥した。この時、乾燥時間は乾燥開始〜水/ゼラチン比800%までが50秒、800〜200%までが35秒、200%〜乾燥終了までが5秒である。
【0212】
この感光材料を25℃55%RHで巻き取り、次いで同環境下で裁断し、6時間調湿したバリアー袋に、25℃50%RHで8時間調湿した後、25℃50%RHで2時間調湿してある厚紙と共に密閉し、表36に示す試料を作成した。
【0213】
バリアー袋内の相対湿度を測定したところ53%であった。また、得られた試料の乳剤層側の膜面pHは5.5〜5.8であった。
【0214】
評価は以下の方法で行った。
得られた試料を、ステップウェッジを通して150線/インチのコンタクトスクリーングレイスキャナーネガNo.2(大日本スクリーン製造株式会社製)と乳剤面を密着させてタングステン光源で露光した。
そして下記処方の現像液(A)((A1)〜(A3))および定着液(B)を使用し、FG−710F自動現像機(富士写真フイルム株式会社製)にて35℃30秒の現像時間で処理した。
【0215】
使用にあたっては、母液は上記濃縮液2部に対して水1部の割合で希釈し母液のpHは10.65であり、補充液は上記濃縮液4部に対して水3部の割合で希釈し補充液のpHは10.62であった。
【0216】
定着液(B)処方 濃縮液1リットルあたりの処方を示す。
チオ硫酸アンモニウム 360g
エチレンジアミン・四酢酸・2Na・2水塩 0.09g
チオ硫酸ナトリウム・5水塩 33.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム 57.0g
水酸化ナトリウム 37.2g
酢酸(100%) 90.0g
酒石酸 8.7g
グルコン酸ナトリウム 5.1g
硫酸アルミニウム 25.2g
pH 4.85
使用にあたっては、上記濃縮液1部に対して水2部の割合で希釈する。使用液のpHは4.8である。
【0217】
<網階調>
得られた網点画像の網階調(95%の網点面積を与える露光量と5%の網点面積を与える露光量の比率を対数表示したもの)を測定した。数値が大きいほど露光のラチチュードが広く、画像の再現性が良好であることを示している。
<階調>
γは((1.5−0.3)/log(濃度1.5を与える露光量)−log(濃度0.3を与える露光量))で表される値で示した。
【0218】
<実技Dmax>
1)原稿の作成
富士写真フイルム株式会社製モノクロスキャナーSCANART30及び専用感光材料SP−100WPを使って、網パーセントを段階的に変えたステップウェッジを作成した。露光時のスクリーン線数は150線/インチで行った。
2)撮影、処理
大日本スクリーン(株)製製版カメラC−690(オートコンパニカ)に上記原稿および試料を所定の位置にセットし、反射原稿に光を照射し撮影した。この時、原稿上でステップウェッジの80%の部分がサンプル上で20%となるように調整して露光を行った。そして上記の現像液(A1)および定着液(B)を使用し、FG−460A自動現像機(富士写真フイルム株式会社製)にて35℃30秒の現像時間で処理し、黒化部の濃度を実技Dmaxとした。
また、現像液(A1)の他に下記疲労現像液(A2)、(A3)を作成し同様に露光処理し実技Dmaxを評価した。
上記現像液(A1)で、1日あたり80%黒化の富士写真フイルム株式会社製撮影フィルムYSを大全サイズ(50.8cm×61cm)あたり使用液50ml補充しながら大全サイズ20枚処理し、これを1週間に6日稼動でランニングを15週間連続して行うことにより、小量のフィルムを処理することによって亜硫酸濃度が3分の1に減少した現像液が得られた。(現像液A2)(pH=10.55)
また、上記現像液(A1)で、1日あたり80%黒化の富士写真フイルム株式会社製撮影フィルムYSを、大全サイズ(50.8cm×61cm)あたり使用液50ml補充しながら大全サイズ200枚処理し、これを4日間連続して行うことにより、大量のフィルムを処理することによってpHが10.5に低下し臭素イオン濃度が増加した現像液が得られた。(現像液A3)
【0219】
得られた結果を表36に示した。
実施例1で用いた現像液のpHとレドックス化合物のpKaとの関係が下記式を満足する試料(2〜6)は網階調が広く、実技Dmaxが高い。また、疲労現像液A2、A3の処理においても高い実技Dmaxを有している。
レドックス化合物pKa≦現像液pH値+1.0
試料1は用いたレドックス化合物のpKaが(現像液のpH+1)よりも高く、そのため実技Dmaxが低い。
【0220】
【表36】
【0221】
実施例2
実施例1と同様の実験を下記の固形現像液(C)および固形定着剤(D)を用いて行ったところ、実施例1と同様に本発明の構成の試料が良好な性能を示した。
【0222】
【0223】
ここで、原料形態で原末は一般的な工業製品のままで使用し、アルカリ金属塩のビーズは市販品を用いた。
原料形態がブリケットであるものは、ブリケッティングマシンを用いて加圧圧縮して板状にしたものを破砕して用いた。少量成分に関しては、各成分をブレンドしてからブリケットにした。
以上の処理剤は、10リットル分を高密度ポリエチレン製の折り畳み可能な容器に充填し、取り出し口をアルミシールで封印した。溶解および補充には特開平9−80718号、特開平9−138495号に開示されている自動開封機構を有する溶解補充装置を使用した。
【0224】
固形定着剤(D)処方
A剤(固形)
チオ硫酸アンモニウム(コンパクト) 125.0g
無水チオ硫酸ナトリウム(原末) 19.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム(原末) 18.0g
無水酢酸ナトリウム(原末) 42.0g
B剤(液体)
エチレンジアミン・四酢酸・2Na・2水塩 0.03g
酒石酸 2.9g
グルコン酸ナトリウム 1.7g
硫酸アルミニウム 8.4g
硫酸 2.1g
水に溶かして50ミリリットルとする。
A剤、B剤を水に溶かして1リットルに調液したものを定着液(D)とした。
pHは4.8であった。
【0225】
チオ硫酸アンモニウム(コンパクト)はスプレードライ法により作成したフレーク品をローラーコンパクターで加圧圧縮し、不定形の4〜6mm程度のチップに破砕したものを用い、無水チオ硫酸ナトリウムとブレンドした。その他の原末は一般的な工業製品を使用した。
A剤、B剤とも10リットル分を高密度ポリエチレン製の折り畳み可能な容器に充填し、A剤の取り出し口はアルミシールで封印した。B剤容器の口部は、スクリューキャップで封をした。溶解および補充には特開平9−80718号、特開平9−138495号に開示されている、自動開封機構を有する溶解補充装置を使用した。
【0226】
実施例3
実施例1の現像液(A)の代わりに、下記現像液(E)を用いて実施例1と同様の実験を行ったところ、実施例1と同様に本発明の構成の感光材料が良好な性能を示した。
【0227】
以下に現像液(E)の濃縮液1リットルあたりの組成を示す。
使用にあたっては、上記濃縮液1部に対して水2部の割合で希釈する。使用液のpHは10.5である
【0228】
実施例4
実施例1の現像液(A)で、1日あたり20%黒化の富士写真フイルム株式会社製スキャナフィルムHLを大全サイズ(50.8cm×61cm)あたり使用液50ml補充しながら大全サイズ20枚処理し、これを1週間に6日稼動でランニングを15週間連続して行うことにより、小量のフィルムを処理することによって亜硫酸濃度が3分の1に減少した現像液が得られた。(pH=10.55)
実施例1の現像液(A)で、1日あたり80%黒化の富士写真フイルム株式会社製スキャナフィルムHLを、大全サイズ(50.8cm×61cm)あたり使用液50ml補充しながら大全サイズ200枚処理し、これを4日間連続して行うことにより、大量のフィルムを処理することによってpHが10.5に低下し臭素イオン濃度が増加した現像液が得られた。
上記のような疲労現像液、あるいは疲労途中段階の現像液を用いて実施例1と同様の実験を行ったところ、実施例1と同様に本発明の構成の感光材料が良好な性能を示した。
【0229】
実施例5
実施例1の本発明の感光材料の画質を下記の方法で評価したところ、良好な性能が得られた。
【0230】
1.目伸し画質の評価
(1)原稿の作成
富士写真フイルム株式会社製モノクロスキャナーSCANART30及び専用感光材料SF−100を使って、網点よりなる人物の透過画像及び網パーセントを段階的に変えたステップウェッジを作成した。この時スクリーン線数は150線/インチで行った。
(2)撮影
大日本スクリーン(株)製製版カメラファインズームC−880(カメラ一体型自現機LD−281Q処理)に上記原稿を目伸ばし倍率が等倍にある様にセットした後Xeランプを照射することにより評価サンプルに露光を与えた。この時原稿のステップウェッジの90%の部分が10%となるようにして露光を行った。
(3)評価
(2)の様に露光量を調節して小点側(ハイライト部)の網点%を合わせたサンプルのシャドウ部の階調再現性(網点のつぶれ難さ)を目視評価した。
【0231】
2.コピードットの評価
(1)原稿の作成
富士写真フイルム株式会社製モノクロスキャナーSCANART30及び専用感光材料SP−100WPを使って、網パーセントを段階的に変えたステップウェッジを作成した。露光時のスクリーン線数は150線/インチで行った。
(2)撮影
大日本スクリーン(株)製製版カメラC−690(オートコンパニカ)に上記原稿および試料を所定の位置にセットし、反射原稿に光を照射し撮影した。この時、原稿上でステップウェッジの80%の部分がサンプル上で20%となるように調整して露光を行った。そして実施例1の現像液(A)および定着液(B)を使用し、FG−460A自動現像機(富士写真フイルム株式会社製)にて35℃30秒の現像時間で処理した。
(3)評価
(2)に記載の如く露光時間を調節して小点側の網点%を合わせたサンプルのシャドウ部の階調再現性(網点のつぶれ難さ)を目視評価した。
【0232】
【発明の効果】
本発明の処理方法により現像されたハロゲン化銀写真感光材料は超硬調で網点品質が良好であり、オリジナル再現性(網階調再現性)にすぐれる。また、実技Dmaxが高く、また現像液の補充量の低減下でも実技Dmaxを安定化できる。したがって本発明の処理方法によれば上記のような品質の優れた画像形成システムが形成される。
Claims (6)
- 支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有し、該乳剤層またはその他の親水性コロイド層の少なくとも一層中に少なくとも一種の酸化されることにより現像抑制剤を放出する下記一般式(1a)で表されるレドックス化合物、少なくとも一種のヒドラジン造核剤、及び造核促進剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料を現像処理するに当たり、該レドックス化合物のpKaに対して、処理に用いられる現像液のpHを下記式で表される関係にすることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
レドックス化合物pKa≦現像液pH値+1.0
[解離性基:カルボキシ基、ホスホン酸基、リン酸基、少なくとも1個の電子吸引性基が置換したアリールスルホンアミド基、アルキルスルホンアミド基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基、スルホニルウレイド基、スルホニルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルホニルスルファモイル基、活性メチレン基、またはこれらの塩] - 前記一般式(1a)における前記解離性基が、少なくとも1個の電子吸引性基が置換したアリールスルホンアミド基であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 前記一般式(1a)における前記PUGNをなすヘテロ環基のヘテロ環が、インダゾール環であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 前記の造核促進剤が下記一般式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
一般式(e)においてQ2は窒素原子またはリン原子を表す。R200、R210、R220は一般式(a)のR100、R110、R120と同義の基を表す。一般式(f)においてA6は一般式(b)におけるA1またはA2と同義の基を表す。但しA6が形成する含窒素不飽和ヘテロ環は置換基を有してもよいが、置換基上に1級の水酸基を有することはない。一般式(e)および一般式(f)においてL30はアルキレン基を表し、Yは-C(=O)-または-SO2-を表し、L40は少なくとも一つの親水性基を含有する2価の連結基を表す。一般式(a)〜一般式(f)においてXn-は、n価の対アニオンを表し、nは1から3の整数を表す。但し、分子内に別にアニオン基を有し、Q1 +、Q2 +またはN+と分子内塩を形成する場合、Xn-は必要ない。) - 前記現像液のpHが9.0〜11.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
- 前記現像液の補充量がハロゲン化銀写真感光材料1平方メートルあたり250ml以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の処理方法。
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