JP4050851B2 - ハロゲン化銀写真感光材料およびその処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料の画像形成方法に関し、特にグラフィックアーツ分野で用いられるハロゲン化銀感光材料と、それを用いた超硬調な写真画像を形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
グラフィックアーツ分野の写真製版工程では、連続調の写真画像原稿を網点画像に変換する工程が含まれ、画像の再現性を良好ならしめるために、超硬調な画像を形成する技術が用いられてきた。
【0003】
良好な保存安定性を有する処理液で現像し、超硬調な写真特性が得られる画像形成システムとして、例えば、米国特許第4166742号、同第4168977号、同第4221857号、同第4224401号、同第4243739号、同第4272606号、同第4311781号などが挙げられる。これらの方法は特定のアシルヒドラジン化合物を含有したハロゲン化銀写真感光材料を、亜硫酸塩保恒剤が0.15モル/リットル以上含むpH11.0〜12.3の現像液で処理して、超硬調画像を形成するシステムである。
ヒドラジン誘導体による硬調画像形成を充分発揮させるためには、pH11以上、通常11.5以上の値を有する現像液で処理することが必要であった。
【0004】
しかし、pH11以上の高いpH値を有する現像液は、保恒剤があっても空気酸化されやすく不安定なため、長期のランニング使用で性能を維持するためには、多くの補充量を必要としていた。この欠点を補うため、pH変動に伴う写真性の変化幅の小さいヒドラジン誘導体の開発、あるいは硬調化を促進するための造核現像促進剤の導入等により、pH11未満の現像液で処理した場合でも超硬調な画像を形成する方法が開示されている。
【0005】
例えば、特開昭62-222241号、同62-250439号、同62-280733号等には硬調化を促進するための造核促進剤が記載されており、確かにこれらの造核促進剤を特定のヒドラジン誘導体と組み合わせて感材に含有させることによって、あるレベルの硬調画像を形成できる。しかしこれらの方法を用いた感光材料では、本来未露光で非画像となるべき部分に微少な現像銀でできた砂状あるいはスポット状のいわゆる黒ポツが発生し、網点画像の品質を損なうという問題点を有していた。
黒ポツは、特に現像液の空気酸化によって、液のpH上昇や、亜硫酸イオン濃度の低下した場合に発生しやすいものである。
【0006】
特開平1-179939号および同1-179940号には、ハロゲン化銀乳剤粒子に対する吸着基を有する造核現像促進剤と、同じく吸着基を有する造核剤を含有する感光材料を用いて、pH11以下の現像液で現像する処理方法が記載されている。
米国特許第4975354号では、反復エチレンオキシドを含む2級あるいは3級アミン化合物とヒドラジン化合物を含有する感材を用いて、pH11.4の現像液で処理して硬調化促進効果があることを開示している。
特開平6-242534号では、ビス型ヘテロ環N-4級オニウム塩とヒドラジン化合物を含有する感材を用いて、pH11以下の現像液で処理してガンマ10以上の硬調画像を形成する方法を開示している。
【0007】
また、特開平10-90841号には、現像促進剤としてアルキレン基で連結されたビスピリジニウム塩が記載されているが、この化合物によっても、特に低pH現像液を用いた場合に、十分な硬調化性能を得ることが出来なかった。また特開平10-90841号や特開平10-39444号には、4個〜7個のエチレンオキシ基の繰り返し単位を有するビスピリジニウム塩およびビスイソキノリニウム塩が開示されているが、ここに開示されている化合物を用いた場合にはそこそこの硬調化性能は得られるものの、満足できるレベルには到達できなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第一の目的は、写真特性が改良されたハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。また本発明の第二の目的は、安定な現像液を用いてガンマが10を超える極めて硬調なネガ階調の写真性が得られ、かつ画質が優れたハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。本発明の第三の目的は、さらに、オリジナル再現性が良好なハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。本発明の第四の目的は、以上に加えて、経時疲労により保恒剤として導入されている亜硫酸濃度が減少したりpHが変化した現像液、または大量のフィルムを処理することによりpHが変化したり臭素イオン濃度が増加した現像液で処理しても、感度、γ、Dmaxの変動が少なく黒ポツの増加がないハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。さらに本発明の第五の目的は、従来より低いpHの現像液を用いて超硬調で写真特性の改良されたネガ画像が得られる、ハロゲン化銀写真感光材料の処理方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明の上記目的は以下の構成(1)〜(5)の手段によって達成することができた。
(1)支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該乳剤層またはその他の親水性コロイド層に、下記一般式( I )〜一般式( IV )のいずれかで表される、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を分子内に計20個以上持つ窒素またはリンの4級塩化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0010】
【化2】
【0011】
一般式(I)においてQは窒素原子またはリン原子を表し、R10、R11、R12はそれぞれ脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基を表わし、これらは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。Mは、Mに含まれる炭素原子でQ+と結合するm価の有機基を表わし、ここにmは1から4の整数を表す。一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)において、A1、A2、A3、A4、A5はそれぞれ、4級化された窒素原子を含む不飽和ヘテロ環を完成させるための有機残基を表わし、L1およびL2は二価の連結基を表し、R1、R2、R3はそれぞれ置換基を表す。一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)においてXn-は、それぞれn価の対アニオンを表わし、nは1から3の整数を表す。但し、分子内に別にアニオン基を有し、Q+または4級化された窒素原子と分子内塩を形成する場合、Xn-は必要ない。一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)で表される4級塩化合物は、それぞれ分子内にエチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を、計20個以上有しているが、これは複数箇所にまたがって置換されていてもよい。
(2)前記4級塩化合物が、前記の一般式(II)または一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする(1)項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(3)前記ハロゲン化銀乳剤層に、ヒドラジン誘導体を少なくとも1種含有することを特徴とする(1)または(2)項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(4)前記ヒドラジン誘導体を含有する前記ハロゲン化銀乳剤層とは別の、第2のハロゲン化銀乳剤層またはその他の親水性コロイド層中に、酸化されることによって現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物を含有することを特徴とする(3)項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料をpH11.0未満の現像液で処理することにより、超硬調ネガ画像を形成することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像処理方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる4級塩化合物について詳細に説明する。
【0013】
一般式(I)においてR10、R11、R12で表される脂肪族基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの直鎖又は分枝状のアルキル基;置換もしくは無置換のベンジル基などのアラルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;アリル基、ビニル基、5−ヘキセニル基などのアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基;フェニルエチニル基等のアルキニル基が挙げられる。芳香族基としてはフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基などのアリール基が、またヘテロ環基としては、ピリジル基、キノリル基、フリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリル基、ピリミジル基、ピロリジル基などが挙げられる。
【0014】
これらの基上に置換した置換基の例としては、R10、R11、R12で表わされる基の他に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、(アルキルもしくはアリール)アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル又はアリール)チオ基、カルボンアミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオウレイド基、スルホニルウレイド基、スルホンアミド基、スルファモイル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、カルボキシル基(カルボキシラートを含む)、スルホ基(スルホナートを含む)、シアノ基、オキシカルボニル基、アシル基、ヘテロ環基(4級化された窒素原子を含むヘテロ環基を含む)等が挙げられる。これら置換基はこれら置換基でさらに置換されていてもよい。これらは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0015】
Mで表わされる基の例としては、mが1を表す時、R10、R11、R12と同義の基が挙げられる。mが2以上の整数を表す時、MはMに含まれる炭素原子でQ+と結合するm価の連結基を表し、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、さらにはこれらの基と−CO−、−O−、−N(R N )−、−S−、−SO−、−SO2−、−P=O−を組みあわせて形成されるm価の連結基を表す(RNは水素原子またはR10、R11、R12と同義の基を表わし、分子内に複数のRNが存在する時、これらは同じであっても異なっていても良く、さらには互いに結合していても良い)。Mは任意の置換基を有していてもよく、その置換基としては、R10、R11、R12で表わされる基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0016】
一般式(I)において、R10、R11、R12は、好ましくは炭素数20以下の基であり、Qがリン原子を表す時、炭素数15以下のアリール基が特に好ましく、Qが窒素原子を表す時、炭素数15以下のアルキル基、アラルキル基、アリール基が特に好ましい。mは1または2が好ましく、mが1を表わす時、Mは好ましくは炭素数20以下の基であり、総炭素数15以下のアルキル基、アラルキル基、またはアリール基が特に好ましい。mが2を表わす時、Mで表わされる2価の有機基は、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、さらにはこれらの基と−CO−、−O−、−N(R N )−、−S−、−SO2−を組みあわせて形成される2価の基である。mが2を表わす時、MはMに含まれる炭素原子でQ+と結合する総炭素数20以下の2価の基であることが好ましい。なおM、あるいはR10、R11、R12が、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を複数個含む場合、以上述べた総炭素数の好ましい範囲は、その限りではない。またmが2以上の整数を表わす時、分子内にR10、R11、R12はそれぞれ複数存在するが、その複数のR10、R11、R12はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。
【0017】
一般式(I)で表される4級塩化合物は、分子内にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有するが、これは1箇所に置換されていても、あるいは複数箇所にまたがって置換されていてもよい。mが2以上の整数を表す時、Mで表される連結基に、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有していることがより好ましい。
【0018】
一般式(II)または一般式(III)において、A1、A2、A3、A4は4級化された窒素原子を含む、置換もしくは無置換の不飽和ヘテロ環を完成させるための有機残基を表わし、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および水素原子を含んでもよく、更にベンゼン環が縮環してもかまわない。
A1、A2、A3、A4が形成する不飽和ヘテロ環の例としては、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピリミジン環、ピラゾール環などを挙げることができる。特に好ましくは、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環である。
A1、A2、A3、A4が4級化された窒素原子と共に形成する不飽和ヘテロ環は、置換基を有していてもよい。この場合の置換基の例としては、一般式(I)のR10、R11、R12で表わされる基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。置換基として好ましくは、ハロゲン原子(特にクロロ原子)、炭素数20以下のアリール基(特にフェニル基が好ましい)、アルキル基、カルバモイル基、(アルキルもしくはアリール)アミノ基、オキシカルボニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキルもしくはアリール)チオ基、ヒドロキシ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルホ基(スルホナートを含む)、カルボキシル基(カルボキシラートを含む)等が挙げられる。特に好ましくは、フェニル基、アルキルアミノ基、カルボンアミド基、クロロ原子等であり、最も好ましくはフェニル基である。
【0019】
L1、L2で表わされる2価の連結基は、アルキレン、アリーレン、アルケニレン、アルキニレン、2価のヘテロ環基、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−N(RN’)−、−C=O−、−P=O−を単独または組合せて構成されるものが好ましい。ただしRN’はアルキル基、アラルキル基、アリール基、水素原子を表わす。L1、L2で表わされる2価の連結基は任意の置換基を有していてもよい。置換基の例としては、一般式(1)のR10、R11、R12で表わされる基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。L1、L2の特に好ましい例として、アルキレン、アリーレン、−C=O−、−O−、−S−、−SO2−、−N(RN’)−を単独または組合せて構成されるものを挙げることができる。
【0020】
R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基またはアラルキル基が好ましく、各々同じでも異なっていてもよい。R1、R2は置換基を有していてもよく、置換基としては、一般式(1)のR10、R11、R12で表わされる基が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。特に好ましくは、R1、R2は各々炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基である。その好ましい置換基の例としては、カルバモイル基、オキシカルボニル基、アシル基、アリール基、スルホ基(スルホナートを含む)、カルボキシル基(カルボキシラートを含む)、ヒドロキシ基、(アルキルまたはアリール)アミノ基、アルコキシ基を挙げることができる。
但しR1、R2にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を複数個含む場合、以上のR1、R2について述べた炭素数の好ましい範囲は、その限りではない。
【0021】
一般式(II)または一般式(III)で表される4級塩化合物は、分子内にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有するが、これは1箇所に置換されていても、あるいは複数箇所に置換されていてもよく、A1、A2、A3、A4、R1、R2、L1、L2の何れに置換されていてもよいが、好ましくは、L1またはL2で表される連結基に、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有していることが好ましい。
【0022】
一般式(IV)においてA5は、4級化された窒素原子と共に不飽和ヘテロ環を形成しうる有機残基を表し、R3は置換基を表す。
A5を含む含窒素不飽和ヘテロ環は、窒素原子の他に炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでもよく、さらにベンゼン環が縮環していてもよく、また置換基を有していてもよい。形成されるヘテロ環の例としては、一般式(II)および一般式(III)のA1、A2、A3、A4が形成する含窒素不飽和ヘテロ環の例と同じものが挙げられる。好ましい範囲もまた同じであり、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環が好ましい。
A5を含む含窒素不飽和ヘテロ環が置換基を有する時、その置換基の例は一般式(II)および一般式(III)のA1、A2、A3、A4が形成する含窒素不飽和ヘテロ環が有していてもよい置換基の例と同じものが挙げられ、好ましい範囲もまた同じである。
【0023】
R3は好ましくはアルキル基またはアラルキル基を表し、これらは置換もしくは無置換で、さらに直鎖もしくは分枝、或いは環状であってもよい。その置換基としては、一般式(III)のR1、R2で表される基が有していてもよい置換基の例と同じものが挙げられ、好ましい範囲もまた同じであるが、特に好ましくは、カルバモイル基、オキシカルボニル基、アシル基、アリール基、スルホ基(スルホナートを含む)、カルボキシ基(カルボキシラートを含む)、(アルキルまたはアリール)アミノ基、およびアルコキシ基である。
【0024】
一般式(IV)で表される4級塩化合物は、分子内にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有するが、これは1箇所に置換されていても、あるいは複数箇所に置換されていてもよく、A5またはR3の何れに置換されていてもよいが、好ましくは、R3で表される基に、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有していることが好ましい。
【0025】
一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)においてXn-で表わされる対アニオンの例としては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、アセテートイオン、オキサレートイオン、フマレートイオン、ベンゾエートイオンなどのカルボキシレートイオン、p−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、ブタンスルホネート、ベンゼンスルホネートなどのスルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。
Xn-で表わされる対アニオンとしては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオンが好ましく、nは1または2が好ましい。Xn-としては、クロロイオンまたはブロモイオンが特に好ましく、クロロイオンが最も好ましい。
【0026】
一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)で表される4級塩化合物は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とを、同時に繰り返し含んでいてもよい。またエチレンオキシ基またはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を複数個含む場合に、繰り返し個数は、厳密に一つの値を取っていても、あるいは平均値として与えられてもよく、後者の場合、4級塩化合物としては、ある程度の分子量分布を持つ、混合物となる。
本発明においてはエチレンオキシ基の繰り返し単位を計20個以上有する場合がより好ましく、さらに計20個〜計67個有する場合が好ましい。
【0027】
本発明で用いる4級塩化合物としては、一般式(II)または一般式(III)で表される4級塩化合物が好ましく、中でも一般式(II)で表される4級塩化合物がより好ましい。一般式(II)においては、L1で表される連結基に、エチレンオキシ基の繰り返し単位を20個以上有する場合がさらに好ましく、さらにL1で表される連結基にエチレンオキシ基の繰り返し単位を計30個〜計67個有する場合が最も好ましい。これを越えると合成が面倒になる。
【0028】
以下に本発明で用いられる化合物の具体例を示す。(式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を表す。)ただし本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
本発明で用いられる4級塩化合物は、一般によく知られた方法により容易に合成することができるが、以下に、その合成例を示す。
【0041】
合成例1(例示化合物I-33の合成)
ポリエチレングリコール(平均分子量2000、800g)、塩化チオニル(584ml)とDMF(4ml)を室温で混合した後、90℃に加熱し5時間撹拌した。過剰の塩化チオニルを留去した後に、4−フェニルピリジン(372g)を加え150℃で7時間反応させた。反応混合物を酢酸エチル/2-プロパノール(10/1)の溶液にし、冷却して析出した固体を濾取した。これを乾燥して、目的とする例示化合物I-33を得た。(584g、収率62%)
【0042】
合成例2(例示化合物I-58の合成)
ポリエチレングリコール(平均分子量2000、10g)、塩化チオニル(7.3ml)とDMF(0.1ml)を室温で混合した後、90℃に加熱し5時間撹拌した。過剰の塩化チオニルを留去した後に、イソキノリン(4.0g)を加え150℃で7時間反応させた。反応混合物を酢酸エチル/2-プロパノール(10/1)の溶液にし、冷却して析出した固体を濾取した。これを乾燥し、目的とする例示化合物I-58を得た。(7.1g、収率60%)
【0043】
合成例3(例示化合物I-34の合成)
上記合成例1において、ポリエチレングリコール(平均分子量2000)を用いる代わりに、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)を用いた以外は、全く同様にして例示化合物I-34を得た。
【0044】
本発明においては、本発明で規定する4級塩化合物と共に、従来より既知の造核促進剤を併用してもよい。この様な造核促進剤としては、アミン誘導体、オニウム塩、ジスルフィド誘導体またはヒドロキシメチル誘導体などが挙げられる。以下にその例を列挙する。特開平7−77783号公報48頁2行〜37行に記載の化合物で、具体的には49頁〜58頁に記載の化合物A−1)〜A−73)。特開平7−84331号に記載の(化21)、(化22)および(化23)で表される化合物で、具体的には同公報6頁〜8頁に記載の化合物。特開平7−104426号に記載の一般式〔Na〕および一般式〔Nb〕で表される化合物で、具体的には同公報16頁〜20頁に記載のNa−1〜Na−22の化合物およびNb−1〜Nb−12の化合物。特開平8−272023号に記載の一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)および一般式(7)で表される化合物で、具体的には同明細書に記載の1−1〜1−19の化合物、2−1〜2−22の化合物、3−1〜3−36の化合物、4−1〜4−5の化合物、5−1〜5−41の化合物、6−1〜6−58の化合物、および7−1〜7−38の化合物。特開平9−297377号のp55、カラム108の8行〜p69、カラム136の44行までに記載の造核促進剤。
【0045】
本発明において4級塩化合物および造核促進剤は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、造核促進剤の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0046】
本発明において4級塩化合物および造核促進剤は、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層側の該ハロゲン化銀乳剤層、あるいは他の親水性コロイド層のどの層に添加してもよいが、該ハロゲン化銀乳剤層あるいはそれに隣接する親水性コロイド層に添加することが好ましい。
本発明において4級塩化合物および造核促進剤の添加量はそれぞれハロゲン化銀1モルに対し1×10-6〜2×10-2モルが好ましく、1×10-5〜2×10-2モルがより好ましく、2×10-5〜1×10-2モルが最も好ましい。また、2種類以上の造核促進剤を併用して使用することもできる。
【0047】
本発明においては、造核剤として少なくとも1種のヒドラジン誘導体を含有することが好ましい。より好ましいヒドラジン誘導体としては、一般式(D)で表わされる化合物である。
一般式(D)
【0048】
【化14】
【0049】
式中、R20は脂肪族基、芳香族基、またはヘテロ環基を表し、R10は水素原子またはブロック基を表し、G10は−CO−、−COCO−、−C(=S)−、−SO2−、−SO−、−PO(R30)−(R30はR10に定義した基と同じ範囲内より選ばれ、R10と異なっていてもよい。)、またはイミノメチレン基を表す。A10、A20はともに水素原子、あるいは一方が水素原子で他方が置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、または置換もしくは無置換のアシル基を表す。
【0050】
一般式(D)において、R20で表わされる脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。
一般式(D)において、R20で表わされる芳香族基は単環もしくは縮合環のアリール基で、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。R20で表わされるヘテロ環基としては、単環または縮合環の、飽和もしくは不飽和の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンズイミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピペリジン環、トリアジン環等が挙げられる。R20として好ましいものはアリール基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0051】
R20が示す基は置換されていてもよく、代表的な置換基としては例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。
これら置換基は、これらの置換基でさらに置換されていてもよい。
【0052】
R20が有していてもよい置換基として好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基(活性メチレン基を含む)、アラルキル基、ヘテロ環基、置換アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、イミド基、チオウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基(その塩を含む)、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、スルホ基(その塩を含む)、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0053】
一般式(D)において、R10は水素原子またはブロック基を表すが、ブロック基とは具体的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヒドラジノ基を表す。
【0054】
R10で表わされるアルキル基として好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2−カルボキシテトラフルオロエチル基、ピリジニオメチル基、ジフルオロメトキシメチル基、ジフルオロカルボキシメチル基、3−ヒドロキシプロピル基、メタンスルホンアミドメチル基、ベンゼンスルホンアミドメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、フェニルスルホニルメチル基、o−ヒドロキシベンジル基などが挙げられる。アルケニル基として好ましくは炭素数1から10のアルケニル基であり、例えばビニル基、2,2−ジシアノビニル基、2−エトキシカルボニルビニル基、2−トリフルオロ−2−メトキシカルボニルビニル基等が挙げられる。アルキニル基として好ましくは炭素数1から10のアルキニル基であり、例えばエチニル基、2−メトキシカルボニルエチニル基等が挙げられる。アリール基としては単環もしくは縮合環のアリール基が好ましく、ベンゼン環を含むものが特に好ましい。例えばフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−メタンスルホンアミドフェニル基、2−カルバモイルフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ヒドロキシメチルフェニル基などが挙げられる。
ヘテロ環基として好ましくは、少なくとも1つの窒素、酸素、および硫黄原子を含む5〜6員の、飽和もしくは不飽和の、単環もしくは縮合環のヘテロ環基で、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基であってもよく、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基(N−置換)、ピペラジノ基、イミダゾリル基、インダゾリル基(4−ニトロインダゾリル基等)、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリジニオ基(N−メチル−3−ピリジニオ基等)、キノリニオ基、キノリル基などがある。モルホリノ基、ピペリジノ基、ピリジル基、ピリジニオ基等が特に好ましい。
【0055】
アルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としてはフェノキシ基が好ましく、アミノ基としては無置換アミノ基、及び炭素数1〜10のアルキルアミノ基、アリールアミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環アミノ基(4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む)が好ましい。アミノ基の例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イルアミノ基、プロピルアミノ基、2−ヒドロキシエチルアミノ基、アニリノ基、o−ヒドロキシアニリノ基、5−ベンゾトリアゾリルアミノ基、N−ベンジル−3−ピリジニオアミノ基等が挙げられる。ヒドラジノ基としては置換もしくは無置換のヒドラジノ基、または置換もしくは無置換のフェニルヒドラジノ基(4−ベンゼンスルホンアミドフェニルヒドラジノ基など)が特に好ましい。
【0056】
R10で表される基は置換されていても良く、好ましい置換基としてはR20の置換基として例示したものがあてはまる。
【0057】
一般式(D)に於いてR10はG10−R10の部分を残余分子から分裂させ、−G10−R10部分の原子を含む環式構造を生成させる環化反応を生起するようなものであってもよく、その例としては、例えば特開昭63−29751号などに記載のものが挙げられる。
【0058】
一般式(D)で表されるヒドラジン誘導体は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。かかる吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201048号、同59−201049号、特開昭61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基があげられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2−285344号に記載された基が挙げられる。
【0059】
一般式(D)のR10またはR20はその中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。本発明においてバラスト基とは、6以上の炭素数を有する、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(またはアルキレン基)、アルコキシ基(またはアルキレンオキシ基)、アルキルアミノ基(またはアルキレンアミノ基)、アルキルチオ基、あるいはこれらを部分構造として有する基を表し、さらに好ましくは炭素数7以上で炭素数24以下の、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(またはアルキレン基)、アルコキシ基(またはアルキレンオキシ基)、アルキルアミノ基(またはアルキレンアミノ基)、アルキルチオ基、あるいはこれらを部分構造として有する基を表す。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0060】
一般式(D)のR10またはR20は、置換基としてヒドラジノ基を複数個含んでいてもよく、この時一般式(D)で表される化合物は、ヒドラジノ基に関しての多量体を表し、具体的には例えば特開昭64-86134号、特開平4-16938号、特開平5-197091号、WO95−32452号、WO95−32453号、特開平9-179229号、特開平9-235264号、特開平9-235265号、特開平9-235266号、特開平9-235267号等に記載された化合物が挙げられる。
【0061】
一般式(D)のR10またはR20は、その中に、カチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、4級化されたリン原子を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、あるいは解離性基(アルカリ性の現像液で解離しうる酸性度の低いプロトンを有する基もしくは部分構造、あるいはまたその塩を意味し、具体的には、例えばカルボキシ基/−COOH、スルホ基/−SO3H、ホスホン酸基/−PO3H、リン酸基/−OPO3H、ヒドロキシ基/−OH、メルカプト基/−SH、−SO2NH2基、N−置換のスルホンアミド基/−SO2NH−、−CONHSO2−、−CONHSO2NH−、−NHCONHSO2−、−SO2NHSO2−、−CONHCO−、活性メチレン基、含窒素ヘテロ環基に内在する−NH−、またはこれらの塩等)が含まれていてもよい。これらの基が含まれる例としては、例えば特開平7−234471号、特開平5−333466号、特開平6−19032号、特開平6−19031号、特開平5−45761号、米国特許4994365号、米国特許4988604号、特開平7−259240号、特開平7−5610号、特開平7−244348号、独特許4006032号、特開平11−7093号等に記載の化合物が挙げられる。
【0062】
一般式(D)に於いてA10、A20は水素原子、炭素数20以下のアルキルまたはアリールスルホニル基(好ましくはフェニルスルホニル基、又はハメットの置換基定数の和が−0.5以上となるように置換されたフェニルスルホニル基)、炭素数20以下のアシル基(好ましくはベンゾイル基、又はハメットの置換基定数の和が−0.5以上となるように置換されたベンゾイル基、あるいは直鎖、分岐、又は環状の置換もしくは無置換の脂肪族アシル基(ここに置換基としては、例えばハロゲン原子、エーテル基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる))である。A10、A20としては水素原子が最も好ましい。
【0063】
次に本発明において、特に好ましいヒドラジン誘導体について述べる。
R20は置換フェニル基が特に好ましく、置換基としてはスルホンアミド基、アシルアミノ基、ウレイド基、カルバモイル基、チオウレイド基、イソチオウレイド基、スルファモイルアミノ基、N−アシルスルファモイルアミノ基等が特に好ましく、さらにスルホンアミド基、ウレイド基が好ましく、スルホンアミド基が最も好ましい。
一般式(D)で表されるヒドラジン誘導体は、R20またはR10に、置換基として、直接または間接的に、バラスト基、ハロゲン化銀への吸着基、4級のアンモニオ基を含む基、4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基、エチレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、アルカリ性の現像処理液中で解離しうる解離性基、もしくは多量体を形成しうるヒドラジノ基(−NHNH−G10−R10で表される基)の少なくとも1つが置換されていることが特に好ましい。さらには、R20の置換基として、直接または間接的に、前述の何れか1つの基を有することが好ましく、最も好ましいのは、R20がベンゼンスルホンアミド基で置換されたフェニル基を表し、そのベンゼンスルホンアミド基のベンゼン環上の置換基として、直接または間接的に、前述の何れか1つの基を有する場合である。
【0064】
R10で表わされる基のうち好ましいものは、G10が−CO−の場合には、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、置換アリール基(置換基としては電子吸引性基またはo−ヒドロキシメチル基が特に好ましい)であり、最も好ましくは水素原子またはアルキル基である。
G10が−COCO−の場合にはアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基が好ましく、特に置換アミノ基、詳しくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環アミノ基が好ましい。
またG10が−SO2−の場合には、R10はアルキル基、アリール基または置換アミノ基が好ましい。
【0065】
一般式(D)に於いてG10は好ましくは−CO−または−COCO−であり、特に好ましくは−CO−である。
【0066】
次に一般式(D)で示される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【化15】
【0078】
本発明に用いられるヒドラジン誘導体としては、上記のものの他に、下記のヒドラジン誘導体も好ましく用いられる。本発明に用いられるヒドラジン誘導体はまた、下記の特許に記載された種々の方法により、合成することができる。
【0079】
特公平6−77138号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁、4頁に記載の化合物。特公平6−93082号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜18頁に記載の1〜38の化合物。特開平6−230497号に記載の一般式(4)、一般式(5)および一般式(6)で表される化合物で、具体的には同公報25頁、26頁に記載の化合物4−1〜化合物4−10、28頁〜36頁に記載の化合物5−1〜5−42、および39頁、40頁に記載の化合物6−1〜化合物6−7。特開平6−289520号に記載の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜7頁に記載の化合物1−1)〜1−17)および2−1)。特開平6−313936号に記載の(化2)および(化3)で表される化合物で、具体的には同公報6頁〜19頁に記載の化合物。特開平6−313951号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁〜5頁に記載の化合物。特開平7−5610号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜10頁に記載の化合物I−1〜I−38。特開平7−77783号に記載の一般式(II)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II−1〜II−102。特開平7−104426号に記載の一般式(H)および一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜15頁に記載の化合物H−1〜H−44。特開平9−22082号に記載の、ヒドラジン基の近傍にアニオン性基またはヒドラジンの水素原子と分子内水素結合を形成するノニオン性基を有することを特徴とする化合物で、特に一般式(A)、一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物N−1〜N−30。特開平9−22082号に記載の一般式(1)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物D−1〜D−55。この他、WO95−32452号、WO95−32453号、特開平9−179229号、特開平9−235264号、特開平9−235265号、特開平9−235266号、特開平9−235267号、特開平9−319019号、特開平9−319020号、特開平10−130275号、特開平11−7093号、特開平6−332096号、特開平7−209789号、特開平8−6193号、特開平8−248549号、特開平8−248550号、特開平8−262609号、特開平8−314044号、特開平8−328184号、特開平9−80667号、特開平9−127632号、特開平9−146208号、特開平9−160156号、特開平10−161260号、特開平10−221800号、特開平10−213871号、特開平10−254082号、特開平10−254088号、特開平7−120864号、特開平7−244348号、特開平7−333773号、特開平8−36232号、特開平8−36233号、特開平8−36234号、特開平8−36235号、特開平8−272022号、特開平9−22083号、特開平9−22084号、特開平9−54381号、特開平10−175946号、記載のヒドラジン誘導体。
【0080】
本発明においてヒドラジン系造核剤は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0081】
本発明においてヒドラジン系造核剤は、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層側の該ハロゲン化銀乳剤層、あるいは他の親水性コロイド層のどの層に添加してもよいが、該ハロゲン化銀乳剤層あるいはそれに隣接する親水性コロイド層に添加することが好ましい。また、2種類以上のヒドラジン系造核剤を併用して使用することもできる。
本発明において造核剤添加量はハロゲン化銀1モルに対し1×10-5〜1×10-2モルが好ましく、1×10-5〜5×10-3モルがより好ましく、2×10-5〜5×10-3モルが最も好ましい。
【0082】
本発明においては、酸化されることにより現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物の少なくとも一種を含有していてもよい。
本発明の酸化されることにより現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物のレドックス基としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトハイドロキノン基、アミノフェノール類、ピラゾリドン類、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類、レダクトン類であることが好ましく、ヒドラジン類であることがさらに好ましい。
本発明の酸化されることにより現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物として用いられるヒドラジン類は、好ましくは一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)で表わされる。一般式(1)で表わされる化合物が特に好ましい。
【0083】
【化16】
【0084】
一般式(1)、一般式(2)、および一般式(3)においてPUGは現像抑制剤を表し、TIMEはタイミング基を表し、tは0または1を表す。
一般式(1)においてR1は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表し、Y1およびZ1はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、n1およびp1は、それぞれ0から4の整数を表す。
一般式(2)においてAr1はアリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。Ar1で表される基は、直接もしくは間接的に少なくとも1つの解離性基で置換されている。
一般式(3)においてAは連結基を表し、mは2〜6の整数を表す。
【0085】
次に本発明の一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表されるレドックス化合物について説明する。
【0086】
一般式(1)、一般式(2)、および一般式(3)においてPUGで表される現像抑制剤としては、ヘテロ原子を有し、ヘテロ原子を介して−C(=O)−(TIME)t−と結合している公知の現像抑制剤が挙げられる。具体的には、メルカプトテトラゾール類、メルカプトトリアゾール類、メルカプトイミダゾール類、メルカプトピリミジン類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズオキサゾール類、メルカプトチアジアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール類、インダゾール類、アデニン類、グアニン類、テトラゾール類、テトラアザインデン類、トリアザインデン類、メルカプトアリール類等を挙げることが出来る。またPUGで表される現像抑制剤は、造核伝染現像を抑制する化合物であることが好ましく、具体的には、少なくとも1つ以上のニトロ基またはニトロソ基を有する化合物、ピリジン、ピラジン、キノリン、キノキサリンあるいはフェナジンなどの含窒素ヘテロ環、アニオン性荷電基を有するハロゲン化銀粒子への吸着性化合物、などが挙げられる。特にニトロ基を有する化合物が好ましい。これらPUGで表される現像抑制剤は任意の置換基を有していてもよい。PUGのさらに詳細な説明および具体例としては、特許第2632056号のp11カラム22の38行目から、p14カラム27の15行目までの記載、特許第2676439号のp4カラム8の41行目からp5カラム10の10行目までの記載、あるいはまた特開平9−269553号のp25カラム48の47行目からp26カラム50の17行目迄の記載を挙げることができる。
PUGで表される現像抑制剤として好ましくは、ベンズイミダゾール類、インダゾール類、ベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズオキサゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトトリアゾール類、あるいはニトロ基を有するピラゾール類であり、中でもインダゾール類が特に好ましい。
【0087】
一般式(2)および一般式(3)においてTIMEで表されるタイミング基とは、2価の連結基を表し、現像処理時に一般式(2)、および一般式(3)で表される化合物が酸化された場合に、引き続いて現像液による加水分解反応によって(TIME)t−PUGで表される基を離脱可能な基であり、さらにまた(TIME)t−PUGで表される基から、一段階もしくはそれ以上の段階の反応を経てPUGを放出せしめる基を表す。
TIMEで表されるタイミング基の詳細な説明および具体例としては、特許第2632056号のp4カラム8の10行目から、p11カラム22の35行目までの記載、特許第2676439号のp4カラム7の39行目からp4カラム8の40行目までの記載、あるいはまた特開平9−269553号のp47カラム47の45行目からp47カラム48の46行目迄の記載を挙げることができる。
TIMEで表されるタイミング基として好ましくは、特許第2632056号の記載に基づけば、一般式(T−1)、一般式(T−2)、および一般式(T−3)で表されるタイミング基が好ましく、特に一般式(T−1)で表されるタイミング基が好ましい。
一般式(2)および一般式(3)において、tはより好ましくは0である。
【0088】
一般式(1)においてR1は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。脂肪族基として好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。芳香族基を含む基として好ましくは単環もしくは縮合環のアリール基で、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。ヘテロ環基とは、単環または縮合環の、飽和もしくは不飽和の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンズイミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピペリジン環、トリアジン環等を含む基が挙げられる。但しR1はエチレンオキシ基の繰り返し単位を4個以上有することはない。R1として好ましいものはアリール基またはヘテロ環基であり、さらに好ましくはアリール基である。
【0089】
一般式(1)においてR1は、任意の置換基を有していてもよい。
本発明において任意の置換基とは、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。
これら置換基は、これらの置換基でさらに置換されていてもよい。
【0090】
一般式(1)においてR1は特に好ましくは、少なくとも1つの電子吸引性基で置換されたフェニル基である。ここに電子吸引性基とは、フェニル基のo位またはp位の置換基についてはσpが正の値を取る置換基のことを表し、フェニル基のm位の置換基についてはσmが正の値を取る置換基のことを表す。σpが正の値を取る置換基とは、具体的にハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、シアノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、ニトロ基、チオウレイド基、スルホンアミド基、イミド基、複数のハロゲン原子で置換されたアルキル基(−CF3基等)等が挙げられ、またσmが正の値を取る置換基とは、σpが正の値を取る置換基として挙げた例と同じものが挙げられる他に、アシルアミノ基、ウレイド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
一般式(1)においてR1が少なくとも1つの電子吸引性基で置換されたフェニル基を表す時、電子吸引性基として好ましくは、ハロゲン原子(特にクロロ原子)、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホンアミド基、チオウレイド基、スルホニル基、m−アシルアミノ基、m−ウレイド基である。
【0091】
一般式(1)においてY1およびZ1はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、これらは、上記R1が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。Y1およびZ1として好ましくは、アルキル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、イミド基、チオウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等であり、さらにハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、カルバモイル基が挙げられる。
【0092】
一般式(1)においてn1およびp1は、それぞれ0から4の整数を表す。n1およびp1が複数を表す時、複数のY1およびZ1は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。n1は好ましくは0から2の整数で、さらに0または1が好ましい。p1は0が好ましい。
【0093】
一般式(1)で表されるレドックス化合物で、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基が含まれているものは、本発明において好ましく用いることのできるものの一つである。
本発明においてバラスト基とは、6以上の炭素数を有する、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(またはアルキレン基)、アルコキシ基(またはアルキレンオキシ基)、アルキルアミノ基(またはアルキレンアミノ基)、アルキルチオ基、あるいはこれらを部分構造として有する基を表し、さらに好ましくは炭素数7以上で炭素数24以下の、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(またはアルキレン基)、アルコキシ基(またはアルキレンオキシ基)、アルキルアミノ基(またはアルキレンアミノ基)、アルキルチオ基、あるいはこれらを部分構造として有する基を表す。バラスト基は、一般式(1)においては、R1、Y1、Z1、PUGの何れの基に置換されていても良いが、Y1またはR1で表される基に置換されていることが好ましく、さらにはR1で表される基に間接的に置換されていることがより好ましい。
【0094】
一般式(1)においてR1SO2NH−は、ベンゼン環の任意の置換位置で置換していてもよいが、スルホンアミド基のm位またはp位が好ましい。
【0095】
一般式(2)においてAr1がアリール基を表す時、アリール基とは、単環もしくは2環のアリール基で、具体的にはフェニル基、ナフチル基である。Ar1が芳香族ヘテロ環基を表す時、芳香族ヘテロ環基とは、単環もしくは2環の、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環基で、具体的はピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、チアゾール環、インドール環等が挙げられる。Ar1で表されるアリール基または芳香族ヘテロ環基は、任意の置換基を有していてもよい。一般式(2)においてAr1は、好ましくはアリール基であり、さらに好ましくはフェニル基である。
【0096】
一般式(2)においてAr1で表される基は、直接または間接的に、少なくとも1つの解離性基で置換されている。ここに解離性基とは、アルカリ性の現像液中において解離しうる酸性度の低いプロトンを有する基もしくは部分構造、あるいはまたその塩のことで、具体的には、例えば例えばカルボキシ基/−COOH、スルホ基/−SO3H、ホスホン酸基/−PO3H、リン酸基/−OPO3H、−SO2NH2、−CONHSO2−、−CONHSO2NH−、−NHCONHSO2−、−SO2NHSO2−、−CONHCO−、活性メチレン基、またはこれらの塩である。但しメルカプト基(−SH)、含窒素ヘテロ環基に内在する−NH−、−OH、N−置換のスルホンアミド基(−SO2NH−)は含まれない。ここに活性メチレン基とは2つまたは3つの電子吸引性基に挟まれたメチレン基もしくはメチン基を意味し、電子吸引性基とはハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる原子団で、具体的にはカルボニル基、スルホニル基、ホスホニル基、もしくはこれらの原子団を含む基(例えばオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、ホルミル基等)、あるいはイミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。これら2つの電子吸引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。
なお解離性基がスルホ基またはその塩を表す時、一般式(2)のAr1で表される基が、置換基としてピリジニオ基を有することはない。また解離性基が−COOHを表す時、tは0であるか、あるいはtが1の時は、スルホンアミド基(−SO2NH−)を介して−COOHがAr1基に連結されていなければならない。
本発明において解離性基の塩とは具体的に、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、リチウムカチオン、マグネシウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン等の、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0097】
一般式(2)で表される化合物のうち、さらに好ましいものは、次の一般式(2−a)で表される。
一般式(2−a)
【0098】
【化17】
【0099】
一般式(2−a)においてTIME、t、PUGはそれぞれ一般式(2)におけるそれらと同義の基を表し、その好ましい範囲もまた同じである。X2は解離性基もしくは少なくとも1つの解離性基を含む置換基を表し、Y2およびZ2はベンゼン環に置換可能な置換基を表す。m2は1から5の整数を表し、n2およびp2は0から4の整数を表す。但しm2とn2の和が5を越えることはない。m2、n2、またはp2が2以上の整数を表す時、複数のX2、Y2、またはZ2はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。なお解離性基がスルホ基(−SO3H)もしくはその塩を表す時、X2で表される基が、置換基としてピリジニオ基を有することはない。
【0100】
ここにY2およびZ2で表される置換基は、それぞれ一般式(1)のY1およびZ1と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。一般式(2−a)においてp2は好ましくは0であり、n2は好ましくは0または1であり、m2は好ましくは1または2である。
【0101】
X2は好ましくは、以下の解離性基(またはその塩)を含む基である。即ち、−O−L−COOH、−S−L−COOH、−CONH−L−COOH、−COO−L−COOH、−NHCO−L−COOH、−NHCONH−L−COOH、−NHCON(−L−COOH)2、−NHCONR10−L−COOH、−NHSO2−L−COOH、−NHP(=O)(O−L−COOH)2、−SO2NH−L−COOH、−L−COOH、−SO3H、−O−L−SO3H、−S−L−SO3H、−CONH−L−SO3H、−CONH−L−SO2NH2、−COO−L−SO3H、−COO−L−SO2NH2、−NHCO−L−SO3H、−NHCONH−L−SO3H、−NHCONH−L−SO2NH2、−NHCON(−L−SO3H)2、−NHCONR10−L−SO3H、−NHCONR10−L−SO2NH2、−NHSO2−L−SO3H、−NHP(=O)(O−L−SO3H)2、−SO2NH−L−SO3H、−L−SO3H、−CONHCO−R10、−CONHSO2−R10、−CONHSO2NH−R10、−NHCONHSO2−R10、−NHSO2NHSO2−R10、−SO2NHSO2−R10、またはこれらの塩を含む基である。ここにLは少なくとも1つのアルキレン基(好ましくは炭素数1〜20)もしくはフェニレン基を含む2価の連結基を表し、−O−,−NR11−,−S−,−C(=O)−,−SO2−,−C(=S)−,−SO−,−PO−の単独、もしくはこれらの基の組み合わせからなる基を含んでいてもよい。またLは任意の置換基を有していてもよく、これは解離性基であってもよい。R10は一価の脂肪族基(好ましくは炭素数1〜20)、芳香族基(好ましくは炭素数6〜20)またはヘテロ環基(好ましくは少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含む5〜7員環)を表し、好ましくは、一価の、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のヘテロ環基を表す。R11は水素原子、一価の脂肪族基(好ましくは炭素数1〜20)、一価の芳香族基(好ましくは炭素数6〜20)または一価のヘテロ環基(好ましくは少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含む5〜7員環)を表し、好ましくは水素原子を表す。
一般式(2−a)においてX2はさらに好ましくは、−O−L−COOH、−CONH−L−COOH、−COO−L−COOH、−NHCO−L−COOH、−NHCONH−L−COOH、−NHCONR10−L−COOH、−CONH−L−SO3H、−COO−L−SO3H、−NHCONH−L−SO3H、−NHCONR10−L−SO3H、−CONHCO−R10、−CONHSO2−R10、−CONHSO2NH−R10、−NHCONHSO2−R10、−NHSO2NHSO2−R10、−SO2NHSO2−R10、またはこれらの塩を含む基である。
【0102】
一般式(2)又は(2−a)で表されるレドックス化合物で、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基が含まれているものは、本発明で好ましく用いることができるものの一つである。
バラスト基は、一般式(2)においては、Ar1、TIME、PUGの何れの基に置換されていても良いが、好ましくはAr1で表される基に置換されていることが好ましく、さらにはAr1で表される基に間接的に置換されていることが好ましい。より好ましくは、、一般式(2−a)で表される化合物において、X2またはY2で表される基の少なくとも1つがバラスト基、もしくはバラスト基で置換された置換基を表す時である。
【0103】
一般式(2)又は(2−a)で表されるレドックス化合物で、その中に(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基が含まれているものは、本発明で好ましく用いることができるものの一つである。一般式(2)で表されるレドックス化合物に、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基が含まれる時、一般式(2)のAr1で表される基に、直接または間接的に置換されていることが好ましく、さらには一般式(2−a)のX2またはY2で表される基に、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基が置換されていることがより好ましい。
【0104】
一般式(3)のAで表される連結基とは、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20),アリーレン基(好ましくは炭素数6〜20),ヘテロ環基(好ましくは少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含む5〜7員環で、縮合していてもよい),単結合,−O−,−NR12−,−S−,−C(=O)−,−SO2−,−C(=S)−,−SO−,−PO−といった基の単独、もしくはこれらの基の組み合わせからなるm価の連結基を表す。ここにR12は水素原子、一価の脂肪族基(好ましくは炭素数1〜20)、一価の芳香族基(好ましくは炭素数6〜20)または一価のヘテロ環基(好ましくは少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含む5〜7員環)を表す。Aで表される連結基は、任意の置換基を有していてもよい。
一般式(3)のAで表される連結基は、好ましくは少なくとも2つのアリーレン基を含む連結基であり、さらに好ましくは、少なくとも2つのアリーレン基と少なくとも2つのスルホンアミド基を含む連結基であり、特に好ましくは、少なくとも3つのアリーレン基と少なくとも2つのスルホンアミド基を含む連結基である。
一般式(3)においてmは2〜6の整数を表すが、好ましくは2または3であり、特に好ましくは2である。
【0105】
一般式(3)で表される化合物のうち、さらに好ましいものは、次の一般式(3−a)又は一般式(3−b)で表される。
【0106】
【化18】
【0107】
一般式(3−a)および一般式(3−b)においてAr3およびAr4はそれぞれ芳香族基または芳香族ヘテロ環基を表し、Ar3はm価、Ar4は2価の基である。L4はm価の連結基を表し、TIME、t、PUG、mはそれぞれ一般式(3)におけると同義であり、その好ましい範囲もまた同じである。Z3はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、p3は0〜4の整数を表す。
【0108】
一般式(3−a)および一般式(3−b)においてZ3は、一般式(1)のZ1と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。p3は好ましくは1または0であり、より好ましくは0である。
【0109】
一般式(3−a)においてAr3で表される芳香族基または芳香族ヘテロ環基として好ましくは、フェニレン基、ナフチレン基、または6員もしくは5員の芳香族ヘテロ環基(具体的にはピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環等)が挙げられ、特に好ましくはフェニレン基、ナフチレン基である。一般式(3−b)においてAr4は、特に好ましくはフェニレン基である。
【0110】
一般式(3−b)においてL4で表されるm価の連結基とは、アルキレン基、アリーレン基、多価のヘテロ環基、単結合、−O−、−NR13−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−C(=S)−と言った基の単独、もしくはこれらの基の組み合わせからなる基であり、ここにR13は水素原子、一価の脂肪族基、または一価の芳香族基を表す。
L4がアリーレン基を含む時、アリーレン基として好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、またL4が多価のヘテロ環基を含む時、ヘテロ環基としては芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環基で、ピリジニオ基の様な4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基であってもよく、具体的には1,4−ジオキサン環、ピペラジン環、2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)ウンデカン環、ビフタルイミド環、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシジイミド環、トリアジン環、ピリジン環等があげられる。またL4がアルキレン基を含む時、これはシクロアルキレン基であってもよく、例えばシクロプロパン環、シクロヘキサン環、ビシクロヘキサン環、デカリン環、ノルボルネン環等を含むものが挙げられる。L4は、任意の置換基を有していてもよい。
一般式(3−b)においてL4は、特に好ましくは、少なくとも1つのアルキレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環基、もしくは単結合を含む連結基である。
【0111】
一般式(3)で表されるレドックス化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。一般式(3)においてバラスト基は、Aで表される基に直接または間接的に置換されていることが好ましく、さらに一般式(3−a)または(3−b)において、Ar3またはL4に直接または間接的に置換されていることがより好ましい。ポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0112】
一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表されるレドックス化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。かかる吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201048号、同59−201049号、特開昭61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基があげられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2−285344号に記載された基が挙げられる。
【0113】
一般式(1)、一般式(2)、または一般式(3)で表されるレドックス化合物は、その中にカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、4級化されたリン原子を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基が含まれていてもよい。これらの基が含まれる例としては、例えば特開平7−234471号、特開平5−333466号、特開平6−19032号、特開平6−19031号、特開平5−45761号、米国特許4994365号、米国特許4988604号、特開平7−259240号、特開平7−5610号、特開平7−244348号、独特許4006032号等に記載の化合物が挙げられる。
【0114】
以下に本発明に用いることのできるレドックス化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
【表11】
【0116】
【表12】
【0117】
【表13】
【0118】
【表14】
【0119】
【表15】
【0120】
【表16】
【0121】
【表17】
【0122】
本発明で用いるレドックス化合物は公知の方法によって容易に合成することが可能である。これらの合成法は、例えば、特登2632056号、特登2725088号等に記載されている方法を参考にして、合成することが出来る。
【0123】
本発明においてレドックス化合物は、感光材料中の全ての乳剤中のハロゲン化銀1モルあたり1×10-6〜5×10-2モル、より好ましくは1×10-5〜1×10-2モルの範囲内で用いられる。また、2種類以上のレドックス化合物を併用して使用することもできる。本発明のレドックス化合物は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既に良く知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作成して用いることもできる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、レドックス化合物の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散して用いることもできる。
【0124】
本発明においてレドックス化合物は、ハロゲン化銀乳剤層、またはその他の親水性コロイド層に添加される。また、複数のハロゲン化銀乳剤層のうちの少なくとも一層に添加しても良い。
いくつかの構成例をあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
構成例1)支持体の上に、前記のレドックス化合物を含むハロゲン化銀乳剤層と保護層を有する。これらの乳剤層、又は保護層に造核剤として上記のヒドラジン誘導体を含んでも良い。
構成例2)支持体の上に、順に、第1のハロゲン化銀乳剤層と第2のハロゲン化銀乳剤層を有し、第1のハロゲン化銀乳剤層、もしくは隣接する親水性コロイド層に、該ヒドラジン誘導体を含み、第2のハロゲン化銀乳剤層、もしくは隣接する親水性コロイド層に該レドックス化合物を含む。
構成例3)構成例2)で2つの乳剤層の順が逆の構成である。
構成例2)と3)においては、2つの感光性乳剤層の間に、ゼラチンや合成ポリマー(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなど)を含む中間層を設けても良い。構成例4)支持体上に、該ヒドラジン誘導体を含むハロゲン化銀乳剤層を有し、該乳剤層の上、もしくは、支持体とハロゲン化銀乳剤層との間に、該レドックス化合物を含む親水性コロイド層を有する。
特に好ましい構成は、構成例2)または3)である。
【0125】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いるハロゲン化銀乳剤はハロゲン化銀として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀を用いることができるが、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が好ましい。ハロゲン化銀粒子の形状は、立方体、十四面体、八面体、不定型、板状いずれでも良いが、立方体が好ましい。ハロゲン化銀の平均粒径は0.1μm〜0.7μmが好ましいが、より好ましくは0.1〜0.5μmであり、{(粒径の標準偏差)/(平均粒径)}×100で表される変動係数が15%以下、より好ましくは10%以下の粒径分布の狭いものが好ましい。
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていても良い。また粒子内部あるいは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していても良い。
本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著 Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Dufin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Forcal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Forcal Press刊、1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。
すなわち、酸性法、中性法等のいずれでもよく、又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせなどのいずれを用いても良い。粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。
【0126】
同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。またアンモニア、チオエーテル、四置換チオ尿素等のいわゆるハロゲン化銀溶剤を使用して粒子形成させることが好ましい。より好ましくは四置換チオ尿素化合物であり、特開昭53−82408号、同55−77737号に記載されている。好ましいチオ尿素化合物はテトラメチルチオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンである。ハロゲン化銀溶剤の添加量は用いる化合物の種類および目的とする粒子サイズ、ハロゲン組成により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり10-5〜10-2モルが好ましい。
【0127】
コントロールド・ダブルジェット法およびハロゲン化銀溶剤を使用した粒子形成方法では、結晶型が規則的で粒子サイズ分布の狭いハロゲン化銀乳剤を作るのが容易であり、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤を作るのに有用な手段である。
また、粒子サイズを均一にするためには、英国特許第1,535,016号、特公昭48−36890、同52−16364号に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリの添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法や、英国特許第4,242,445号、特開昭55−158124号に記載されているように水溶液の濃度を変化させる方法を用いて、臨界飽和度を越えない範囲において早く成長させることが好ましい。
【0128】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラスト及び低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物などを含有することが好ましい。また、高感度化のためにはK4[Fe(CN)6]やK4[Ru(CN)6]、K3[Cr(CN)6]のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0129】
本発明に用いられるロジウム化合物として、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。たとえば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、またはロジウム錯塩で配位子としてハロゲン、アミン類、オキザラト、アコ等を持つもの、たとえば、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩等が挙げられる。これらのロジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(たとえば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(たとえばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0130】
本発明に用いられるレニウム、ルテニウム、オスミニウムは特開昭63−2042号、特開平1−285941号、同2−20852号、同2−20855号等に記載された水溶性錯塩の形で添加される。特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
〔ML6〕n-
ここでMはRu、Re、またはOsを表し、Lは配位子、nは0、1、2、3または4を表す。この場合、対イオンは重要性を持たず、アンモニウムもしくはアルカリ金属イオンが用いられる。また好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0131】
〔ReCl6〕3- 〔ReBr6〕3- 〔ReCl5(NO)〕2-
〔Re(NS)Br5〕2- 〔Re(NO)(CN)5〕2- 〔Re(O)2(CN)4〕3-
〔RuCl6〕3- 〔RuCl4(H2O)2〕1- 〔RuCl5(NO)〕2-
〔RuBr5(NS)〕2- 〔Ru(CO)3Cl3〕2-
〔Ru(CO)Cl5〕2- 〔Ru(CO)Br5〕2-
〔OsCl6〕3- 〔OsCl5(NO)〕2- 〔Os(NO)(CN)5〕2-
〔Os(NS)Br5〕2- 〔Os(CN)6〕4- 〔Os(O)2(CN)4〕4-
【0132】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り1×10-9モル〜1×10-5モルの範囲が好ましく、特に好ましくは1×10-8モル〜1×10-6モルである。 本発明に用いられるイリジウム化合物としては、ヘキサクロロイリジウム、ヘキサブロモイリジウム、ヘキサアンミンイリジウム、ペンタクロロニトロシルイリジウム等が挙げられる。本発明に用いられる鉄化合物としては、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、チオシアン酸第一鉄が挙げられる。
【0133】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は化学増感されることが好ましい。化学増感の方法としては、硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、貴金属増感法などの知られている方法を用いることができ、単独または組み合わせて用いられる。組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法などが好ましい。
【0134】
本発明に用いられる硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、たとえばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で変化するが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルであり、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0135】
本発明に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、通常、不安定型および/または非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号、同43−13489号、特開平4−109240号、同4−324855号等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4−324855号中の一般式(VIII)および(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0136】
本発明に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成せしめる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5−313284号に記載の方法で試験することができる。
具体的には、米国特許第1,623,499号、同第3,320,069号、同第3,772,031号、英国特許第235,211号、同第1,121,496号、同第1,295,462号、同第1,396,696号、カナダ特許第800,958号、特開平4−204640号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)635(1980),ibid 1102(1979),ibid 645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.)1,2191(1980)、S.パタイ(S.Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Serenium and Tellunium Compounds),Vol 1(1986)、同Vol 2(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4−324855号中の一般式(II)(III)(IV)で示される化合物が好ましい。
【0137】
本発明で用いられるセレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
本発明に用いられる貴金属増感剤としては、金、白金、パラジウム、イリジウム等が挙げられるが、特に金増感が好ましい。本発明に用いられる金増感剤としては具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金などが挙げられ、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル程度を用いることができる。
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感剤としては第一スズ塩、アミン類、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物などを用いることができる。
本発明のハロゲン化銀乳剤は、欧州公開特許(EP)−293,917に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
本発明に用いられる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの、感度の異なるもの)併用してもよい。中でも高コントラストを得るためには、特開平6−324426に記載されているように、支持体に近いほど高感度な乳剤を塗布することが好ましい。
【0138】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤は、増感色素によって比較的長波長の青色光、緑色光、赤色光または赤外光に分光増感されてもよいが、吸収極大波長を450nm〜600nmに有する分光増感色素によって分光増感されていることが好ましい。さらに、特開昭55−45015号に記載の一般式〔I〕の化合物、および、特開平9−160185号に記載の一般式〔I〕の化合物が好ましく、特に、特開平9−160185号に記載の一般式〔I〕の化合物が好ましい。具体的には、特開昭55−45015号に記載の(1)から(19)の化合物、特開平9−160185号に記載のI−1からI−40の化合物およびI−56からI−85の化合物などを挙げることができる。
【0139】
その他の増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロホーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。
本発明に使用されるその他の有用な増感色素は例えばRESEARCH DISCLOSURE Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item18341X項(1979年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。
特に各種スキャナー、イメージセッターや製版カメラの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素も有利に選択することができる。
例えば、A)アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号に記載の(I)−1から(I)−8の化合物、特開平2−48653号に記載のI−1からI−28の化合物、特開平4−330434号に記載のI−1からI−13の化合物、米国特許2,161,331号に記載のExample1からExample14の化合物、西独特許936,071号記載の1から7の化合物、B)ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭54−18726号に記載のI−1からI−38の化合物、特開平6−75322号に記載のI−1からI−35の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34の化合物、C)LED光源に対しては特公昭55−39818号に記載の色素1から20、特開昭62−284343号に記載のI−1からI−37の化合物および特開平7−287338号に記載のI−1からI−34の化合物、D)半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号に記載のI−1からI−12の化合物、特開昭60−80841号に記載のI−1からI−22の化合物、特開平4−335342号に記載のI−1からI−29の化合物および特開昭59−192242号に記載のI−1からI−18の化合物、E)製版カメラのタングステンおよびキセノン光源に対しては、上記記載の化合物の他に特開平9−160185号に記載のI−41からI−55の化合物およびI−86からI−97の化合物および特開平6−242547号に記載の4−Aから4−Sの化合物、5−Aから5−Qの化合物、6−Aから6−Tの化合物なども有利に選択することができる。
【0140】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せ及び強色増感を示す物質はリサーチ・ディスクロージャ(Research Disclosure)176巻17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは前述の特公昭49−25500号、同43−4933号、特開昭59−19032号、同59−192242号等に記載されている。
【0141】
本発明に用いられる増感色素は2種以上を併用してもよい。増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加せしめるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
また、米国特許第3,469,987号明細書等に開示されているように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44−23389号、同44−27555号、同57−22091号等に開示されているように、色素を酸に溶解し、該溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液として乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号、同第4,006,025号明細書等に開示されているように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53−102733号、同58−105141号に開示されているように親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法、特開昭51−74624号に開示されているように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法を用いることもできる。また、溶液に超音波を用いることもできる。
【0142】
本発明に用いる増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば米国特許第2,735,766号、同第3,628,960号、同第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/および脱塩前の時期、脱銀工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58−113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後、塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならばいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許第4,225,666号、特開昭58−7629号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組み合わせの種類を変えて添加してもよい。
【0143】
本発明において増感色素の添加量は、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズ、ハロゲン組成、化学増感の方法と程度、カブリ防止剤の種類等により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり、4×10-6〜8×10-3モルで用いることができる。例えばハロゲン化銀粒子サイズが0.2〜1.3μmの場合には、ハロゲン化銀粒子の表面積1m2あたり、2×10-7〜3.5×10-6モルの添加量が好ましく、6.5×10-7〜2.0×10-6モルの添加量がより好ましい。
【0144】
本発明の感光材料に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限はなく、例えば下記箇所に記載されたものを好ましく用いることができる
【0145】
特開平3−39948号公報第10頁右下11行目から同公報第12頁左下5行目に記載のポリヒドロキシベンゼン化合物。具体的には、同公報に記載の化合物(III)−1〜25の化合物。
【0146】
特開平1−118832号公報に記載の一般式(I)で表される実質的には可視域に吸収極大を持たない化合物。具体的には、同公報に記載の化合物I−1〜I−26の化合物。
【0147】
特開平2−103536号公報第17頁右下19行目から同公報18頁右上4行目に記載のかぶり防止剤。
【0148】
特開平2−103536号公報第18頁左下12行目から同頁左下20行目に記載のポリマーラテックス。特開平9−179228号に記載の一般式(I)で表される活性メチレン基を有するポリマーラテックスで、具体的には同明細書に記載の化合物I−1〜I−16。特開平9−179228号に記載のコア/シェル構造を有するポリマーラテックスで、具体的には同明細書に記載の化合物P−1〜P−55。特開平7−104413号公報第14頁左1行目から同頁右30行目に記載の酸性ポリマーラテックスで、具体的には同公報15頁に記載の化合物II-1)〜II-9)。
【0149】
特開平2−103536号公報第19頁左上15行目から同公報19頁右上15行目に記載のマット剤、滑り剤、可塑剤。
【0150】
特開平2−103536号公報第18頁右上5行目から同頁右上17行目に記載の硬膜剤。
【0151】
特開平2−103536号公報第18頁右下6行目から同公報19頁左上1行目に記載の酸基を有する化合物。
【0152】
特開平2−18542号公報第2頁左下13行目から同公報第3頁右上7行目に記載の導電性物質。具体的には、同公報第2頁右下2行目から同頁右下10行目に記載の金属酸化物、および同公報に記載の化合物P−1〜P−7の導電性高分子化合物。
【0153】
特開平2−103536号公報第17頁右下1行目から同頁右上18行目に記載の水溶性染料。
【0154】
特開平9−179243号記載の一般式(FA)、一般式(FA1)、一般式(FA2)、一般式(FA3)で表される固体分散染料。具体的には同公報記載の化合物F1〜F34、特開平7−152112号記載の(II−2)〜(II−24)、特開平7−152112号記載の(III−5)〜(III−18)、特開平7−152112号記載の(IV−2)〜(IV−7)。特開平2−294638号公報及び特開平5−11382号に記載の固体分散染料。
【0155】
特開平2−12236号公報第9頁右上7行目から同頁右下3行目に記載の界面活性剤。特開平2−103536号公報第18頁左下4行目から同頁左下7行目に記載のPEG系界面活性剤。特開平3−39948号公報第12頁左下6行目から同公報第13頁右下5行目に記載の含弗素界面活性剤。具体的には、同公報に記載の化合物VI−1〜VI−15の化合物。
【0156】
特開平2−18542号公報第3頁右下1行目から20行目に記載のバインダー。
【0157】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層及び保護層を含めた親水性コロイド層の膨潤率は80〜150%の範囲が好ましく、より好ましくは90〜140%の範囲である。親水性コロイド層の膨潤率は、ハロゲン化銀写真感光材料における乳剤層及び保護層を含めた親水性コロイド層の厚み(d0)を測定し、該ハロゲン化銀写真感光材料を25℃の蒸留水に1分間浸漬し、膨潤した厚み(Δd)を測定し、膨潤率(%)=(Δd÷d0)×100の計算式によって求める。
【0158】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀乳剤層が塗布されている側の膜面pHは4.5〜7.5の範囲であり、好ましくは4.8〜7.0であり、特に好ましくは5.0〜6.0である。
【0159】
本発明の実施に際して用いうる支持体としては、例えばバライタ紙、ポリエチレン被覆紙、ポリプロピレン合成紙、ガラス板、セルロースアセテート、セルロースナイトレート、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフイルムを挙げることができる。これらの支持体は、それぞれハロゲン化銀写真感光材料の使用目的に応じて適宜選択される。
また、特開平7−234478号、及びUS558979号に記載のシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体からなる支持体も好ましく用いられる。
【0160】
以下に本発明における現像液、定着液などの処理剤および処理方法等について述べるが、言うまでもなく本発明は以下の記述および具体例に限定されるものではない。
【0161】
本発明の現像処理には、公知の方法のいずれを用いることもできるし、現像処理液には公知のものを用いることができる。
【0162】
本発明のハロゲン化銀感光材料を用いて、ガンマ10以上の超硬調で高感度の写真特性を得るためには、米国特許第2419975号などに記載されているpH13に近い高アルカリ現像液を用いる必要はなく、pH値の低い安定な現像液を用いることができる。
好ましくは亜硫酸イオンを0.15モル/リットル以上含有し、現像液のpHが11未満、より好ましくは9.5以上11.0未満の現像液を用いることが望ましい。
【0163】
本発明に使用する現像液(以下、現像開始液および現像補充液の双方をまとめて現像液という。)に用いる現像主薬には特別な制限はないが、ジヒドロキシベンゼン類や、アスコルビン酸誘導体、ハイドロキノンモノスルホン酸塩を含むことが好ましく、単独使用でも併用でも良い。特に、ジヒドロキシベンゼン系現像主薬およびこれと超加成性を示す補助現像主薬を含有することが好ましく、ジヒドロキシベンゼン類やアスコルビン酸誘導体と1-フェニル-3-ピラゾリドン類の組み合わせ、またはジヒドロキシベンゼン類やアスコルビン酸誘導体とp-アミノフェノール類の組み合わせなどを挙げることができる。
本発明に用いる現像主薬としては、ジヒドロキシベンゼン現像主薬としてはハイドロキノン、クロロハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、メチルハイドロキノンなどがあるが、特にハイドロキノンが好ましい。またアスコルビン酸誘導体現像主薬としては、アスコルビン酸およびイソアスコルビン酸とそれらの塩があるが、特にエリソルビン酸ナトリウムが素材コストの点から好ましい。
【0164】
本発明に用いる1-フェニル-3-ピラゾリドンまたはその誘導体の現像主薬としては、1-フェニル-3-ピラゾリドン、1-フェニル-4、4-ジメチル-3-ピラゾリドン、1-フェニル-4-メチル-4-ヒドロキシメチル-3-ピラゾリドンなどがある。
本発明に用いるp-アミノフェノール系現像主薬としてN-メチル−p-アミノフェノール、p-アミノフェノール、N-(β-ヒドロキシフェニル)-p-アミノフェノール、N-(4-ヒドロキシフェニル)グリシン、o−メトキシ−p−(N、N−ジメチルアミノ)フェノール、o−メトキシ−p−(N−メチルアミノ)フェノールなどがあるが、なかでもN-メチル-p-アミノフェノール、または特開平9-297377号および特開平9-297378号に記載のアミノフェノール類が好ましい。
【0165】
ジヒドロキシベンゼン系現像主薬は通常0.05モル/リットル〜0.8モル/リットルの量で用いられるのが好ましい。またジヒドロキシベンゼン類と1-フェニル-3-ピラゾリドン類もしくはp-アミノフェノール類の組み合わせを用いる場合には前者を0.05モル/リットル〜0.6モル/リットル、好ましくは0.10モル/リットル〜0.5モル/リットル、後者を0.06モル/リットル以下、好ましくは0.03モル/リットル〜0.003モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
【0166】
アスコルビン酸誘導体現像主薬は、通常0.01モル/リットル〜0.5モル/リットルの量で用いられるのが好ましく、0.05モル/リットル〜0.3モル/リットルがより好ましい。またアスコルビン酸誘導体と1-フェニル-3-ピラゾリドン類もしくはp-アミノフェノール類の組み合わせを用いる場合にはアスコルビン酸誘導体を0.01モル/リットル〜0.5モル/リットル、1-フェニル-3-ピラゾリドン類もしくはp-アミノフェノール類を0.005モル/リットル〜0.2モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
【0167】
本発明で感光材料を処理する際の現像液には、通常用いられる添加剤(たとえば現像主薬、アルカリ剤、pH緩衝剤、保恒剤、キレート剤等)を含有する事ができる。以下にこれらの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明で感光材料を現像処理する際の現像液に用いられる緩衝剤としては、炭酸塩、特開昭62-186259に記載のほう酸、特開昭60-93433に記載の糖類(たとえばサッカロース)、オキシム類(たとえばアセトオキシム)、フェノール類(たとえば5-スルホサリチル酸)、第3リン酸塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩)などが用いられ、好ましくは炭酸塩、ほう酸が用いられる。緩衝剤、特に炭酸塩の使用量は、好ましくは0.1モル/リットル以上、特に0.2〜1.5モル/リットルである。
【0168】
本発明に用いられる保恒剤としては亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムなどがある。亜硫酸塩は好ましくは0.2モル/リットル以上、特に0.3モル/リットル以上用いられるが、あまりに多量添加すると現像液中の銀汚れの原因になるので、上限は1.2モル/リットルとするのが望ましい。特に好ましくは、0.35〜0.7モル/リットルである。
ジヒドロキシベンゼン系現像主薬の保恒剤として、亜硫酸塩と併用して前記のアスコルビン酸誘導体を少量使用しても良い。なかでも素材コストの点からエリソルビン酸ナトリウムを用いることが好ましい。添加量はジヒドロキシベンゼン系現像主薬に対して、モル比で0.03〜0.12の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.10の範囲である。保恒剤としてアスコルビン酸誘導体を使用する場合には現像液中にホウ素化合物を含まないことが好ましい。
【0169】
上記以外に用いられる添加剤としては、臭化ナトリウム、臭化カリウムのような現像抑制剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミドのような有機溶剤、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、イミダゾールまたはその誘導体等の現像促進剤、ヘテロ環メルカプト化合物(たとえば3-(5-メルカプトテトラゾール-1-イル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾールなど)、特開昭62-212651号に記載の化合物を物理現像ムラ防止剤として添加することもできる。
また、メルカプト系化合物、インダゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物をカブリ防止剤または黒ポツ(black pepper)防止剤として含んでも良い。具体的には、5-ニトロインダゾール、5-p-ニトロベンゾイルアミノインダゾール、1-メチル-5-ニトロインダゾール、6-ニトロインダゾール、3-メチル-5-ニトロインダゾール、5-ニトロベンゾイミダゾール、2-イソプロピル-5-ニトロベンゾイミダゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、4-((2-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)チオ)ブタンスルホン酸ナトリウム、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。これらの添加剤の量は、通常現像液1リットルあたり0.01〜10ミリモルであり、より好ましくは0.1〜2ミリモルである。
【0170】
さらに本発明の現像液中には各種の有機、無機のキレート剤を単独または併用で用いることができる。
無機キレート剤としてはたとえば、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどを用いることができる。
一方、有機キレート剤としては、主に有機カルボン酸、アミノポリカルボン酸、有機ホスホン酸、アミノホスホン酸および有機ホスホノカルボン酸を用いることができる。
有機カルボン酸としてはたとえば、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グルコン酸、アジピン酸、ピメリン酸、アシエライン酸、セバチン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などを挙げることができる。
【0171】
アミノポリカルボン酸としてはたとえば、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンモノヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテル四酢酸、1,2-ジアミノプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、その他特開昭52-25632号、同55-67747号、同57-102624号、および特公昭53-40900号に記載の化合物を挙げることができる。
【0172】
有機ホスホン酸としては、たとえば米国特許3214454、同3794591および西独特許公開2227369等に記載のヒドロキシアルキリデン−ジホスホン酸やリサーチ・ディスクロージャー第181巻、Item 18170(1979年5月号)等に記載の化合物が挙げられる。
アミノホスホン酸としては、たとえばアミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等が挙げられるが、その他上記リサーチ・ディスクロージャー18170、特開昭57-208554号、同54-61125号、同55-29883号、同56-97347号等に記載の化合物を挙げることができる。
【0173】
有機ホスホノカルボン酸としては、たとえば特開昭52-102726号、同53-42730号、同54-121127号、同55-4024号、同55-4025号、同55-126241号、同55-65955号、同55-65956号および前述のリサーチ・ディスクロージャー18170等に記載の化合物を挙げることができる。
【0174】
これらの有機および/または無機のキレート剤は、前述のものに限定されるものではない。また、アルカリ金属塩やアンモニウム塩の形で使用しても良い。これらのキレート剤の添加量としては、現像液1リットルあたり好ましくは、1×10-4〜1×10-1モル、より好ましくは1×10-3〜1×10-2モルである。
【0175】
さらに、現像液中に銀汚れ防止剤として、たとえば特開昭56-24347号、特公昭56-46585号、特公昭62-2849号、特開平4-362942号、特開平8-6215号に記載の化合物の他、メルカプト基を1つ以上有するトリアジン(たとえば特公平6-23830号、特開平3-282457号、特開平7-175178号に記載の化合物)、同ピリミジン(たとえば2-メルカプトピリミジン、2,6-ジメルカプトピリミジン、2,4-ジメルカプトピリミジン、5,6-ジアミノ-2,4-ジメルカプトピリミジン、2,4,6-トリメルカプトピリミジン、特開平9-274289号記載の化合物など)、同ピリジン(たとえば2-メルカプトピリジン、2,6-ジメルカプトピリジン、3,5-ジメルカプトピリジン、2,4,6-トリメルカプトピリジン、特開平7-248587号に記載の化合物など)、同ピラジン(たとえば2-メルカプトピラジン、2,6-ジメルカプトピラジン、2,3-ジメルカプトピラジン、2,3,5-トリメルカプトピラジンなど)、同ピリダジン(たとえば3-メルカプトピリダジン、3,4-ジメルカプトピリダジン、3,5-ジメルカプトピリダジン、3,4,6-トリメルカプトピリダジンなど)、特開平7-175177号に記載の化合物、米国特許5457011に記載のポリオキシアルキルホスホン酸エステルなどを用いることができる。これらの銀汚れ防止剤は単独または複数の併用で用いることができ、添加量は現像液1Lあたり0.05〜10ミリモルが好ましく、0.1〜5ミリモルがより好ましい。
また、溶解助剤として特開昭61-267759記載の化合物を用いることができる。
さらに必要に応じて色調剤、界面活性剤、消泡剤、硬膜剤等を含んでも良い。
【0176】
現像液のカチオンとしては、ナトリウムイオンに比べてカリウムイオンの方が現像抑制をせず、またフリンジと呼ばれる黒化部のまわりのギザギザが少ない。さらに、濃縮液として保存する場合には一般にカリウム塩のほうが溶解度が高く好ましい。しかしながら、定着液においてはカリウムイオンは銀イオンと同程度に定着阻害をすることから、現像液のカリウムイオン濃度が高いと、感材により現像液が持ち込まれることにより定着液中のカリウムイオン濃度が高くなり、好ましくない。以上のことから現像液におけるカリウムイオンとナトリウムイオンのモル比率は20:80〜80:20の間であることが好ましい。カリウムイオンとナトリウムイオンの比率は、pH緩衝剤、pH調整剤、保恒剤、キレート剤などの対カチオンで、上記の範囲で任意に調整できる。
【0177】
現像液の補充量は、感光材料1m2につき390ミリリットル以下であり、325〜30ミリリットルが好ましく、250〜120ミリリットルが最も好ましい。
現像補充液は、現像開始液と同一の組成および/または濃度を有していても良いし、開始液と異なる組成および/または濃度を有していても良い。
【0178】
本発明における定着処理剤の定着剤としては、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムアンモニウムが使用できる。定着剤の使用量は適宜かえることができるが、一般には約0.7〜約3.0モル/リットルである。
【0179】
本発明における定着液は、硬膜剤として作用する水溶性アルミニウム塩、水溶性クロム塩を含んでも良く、水溶性アルミニウム塩が好ましい。それにはたとえば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明礬、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸アルミニウム、乳酸アルミニウムなどがある。これらは使用液におけるアルミニウムイオン濃度として、0.01〜0.15モル/リットルで含まれることが好ましい。
なお、定着液を濃縮液または固形剤として保存する場合、硬膜剤などを別パートとした複数のパーツで構成しても良いし、すべての成分を含む一剤型の構成としても良い。
【0180】
定着処理剤には所望により保恒剤(たとえば亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩などを0.015モル/リットル以上、好ましくは0.02モル/リットル〜0.3モル/リットル)、pH緩衝剤(たとえば酢酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸、コハク酸、アジピン酸などを0.1モル/リットル〜1モル/リットル、好ましくは0.2モル/リットル〜0.7モル/リットル)、アルミニウム安定化能や硬水軟化能のある化合物(たとえばグルコン酸、イミノジ酢酸、5-スルホサリチル酸、グルコヘプタン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マレイン酸、グリコール酸、安息香酸、サリチル酸、タイロン、アスコルビン酸、グルタル酸、アスパラギン酸、グリシン、システイン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸やこれらの誘導体およびこれらの塩、糖類、ほう酸などを0.001モル/リットル〜0.5モル/リットル、好ましくは0.005モル/リットル〜0.3モル/リットル)を含むことができる。
【0181】
このほか、特開昭62-78551号に記載の化合物、pH調整剤(たとえば水酸化ナトリウム、アンモニア、硫酸など)、界面活性剤、湿潤剤、定着促進剤等も含むことができる。界面活性剤としては、たとえば硫酸化物スルフォン酸化物などのアニオン界面活性剤、ポリエチレン系界面活性剤、特開昭57-6840号記載の両性界面活性剤が挙げられ、公知の消泡剤を使用することもできる。湿潤剤としては、アルカノールアミン、アルキレングリコール等がある。定着促進剤としては、特開平6-308681号に記載のアルキルおよびアリル置換されたチオスルホン酸およびその塩や、特公昭45-35754号、同58-122535号、同58-122536号記載のチオ尿素誘導体、分子内に3重結合を有するアルコール、米国特許4126459記載のチオエーテル化合物、特開昭64-4739号、特開平1-4739号、同1-159645号および同3-101728号に記載のメルカプト化合物、同4-170539号に記載のメソイオン化合物、チオシアン酸塩を含むことができる。
【0182】
本発明における定着液のpHは、4.0以上が好ましく、より好ましくは4.5〜6.0を有する。定着液は処理により現像液が混入してpHが上昇するが、この場合、硬膜定着液では6.0以下好ましくは5.7以下であり、無硬膜定着液においては7.0以下好ましくは6.7以下である。
【0183】
定着液の補充量は、感光材料1m2につき500ミリリットル以下であり、390ミリリットル以下が好ましく、320〜80ミリリットルがより好ましい。補充液は、開始液と同一の組成および/または濃度を有していても良いし、開始液と異なる組成および/または濃度を有していても良い。
【0184】
定着液は電解銀回収などの公知の定着液再生方法により再生使用することができる。再生装置としては、たとえばフジハント社製Reclaim R-60などがある。
また、活性炭などの吸着フィルターを使用して、色素などを除去することも好ましい。
【0185】
本発明における現像および定着処理剤が液剤の場合、たとえば特開昭61-73147に記載されたような、酸素透過性の低い包材で保管する事が好ましい。さらにこれらの液が濃縮液の場合、所定の濃度になるように、濃縮液1部に対して水0.2〜3部の割合で希釈して使用される。
【0186】
本発明における現像処理剤及び定着処理剤は固形にしても液剤同様の結果が得られるが、以下に固形処理剤に関する記述を行う。
本発明における固形剤は、公知の形態(粉状、粒状、顆粒状、塊状、錠剤、コンパクター、ブリケット、板状、棒状、ペースト状など)が使用できる。これらの固形剤は、接触して互いに反応する成分を分離するために、水溶性のコーティング剤やフィルムで被覆しても良いし、複数の層構成にして互いに反応する成分を分離しても良く、これらを併用しても良い。
【0187】
被覆剤、造粒助剤には公知のものが使用できるが、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸、ビニル系化合物が好ましい。この他、特開平5-45805号 カラム2の48行〜カラム3の13行目が参考にできる。
【0188】
複数の層構成にする場合は、接触しても反応しない成分を互いに反応する成分の間にはさんだ構成にして錠剤やブリケット等に加工しても良いし、公知の形態の成分を同様の層構成にして包装しても良い。これらの方法は、たとえば特開昭61-259921号、同4-16841号、同4-78848号、同5-93991号等に示されている。
【0189】
固形処理剤の嵩密度は、0.5〜6.0g/cm3が好ましく、特に錠剤は1.0〜5.0g/cm3が好ましく、顆粒は0.5〜1.5g/cm3が好ましい。
【0190】
本発明における固形処理剤の製法は、公知のいずれの方法を用いることができる。たとえば、特開昭61-259921号、特開平4-15641号、特開平4-16841号、同4-32837号、同4-78848号、同5-93991号、特開平4-85533号、同4-85534号、同4-85535号、同5-134362号、同5-197070号、同5-204098号、同5-224361号、同6-138604号、同6-138605号、同8-286329号等を参考にすることができる。
【0191】
より具体的には転動造粒法、押し出し造粒法、圧縮造粒法、解砕造粒法、撹拌造粒法、スプレードライ法、溶解凝固法、ブリケッティング法、ローラーコンパクティング法等を用いることができる。
【0192】
本発明における固形剤は、表面状態(平滑、多孔質等)や部分的に厚みを変えたり、中空状のドーナツ型にしたりして溶解性を調節することもできる。さらに、複数の造粒物に異なった溶解性を与えたり、溶解性の異なる素材の溶解度を合わせるために、複数の形状をとることも可能である。また、表面と内部で組成の異なる多層の造粒物でも良い。
【0193】
固形剤の包材は、酸素および水分透過性の低い材質が好ましく、包材の形状は袋状、筒状、箱状などの公知のものが使用できる。また、特開平6-242585号〜同6-242588号、同6-247432号、同6-247448号、同6-301189号、同7-5664号、同7-5666号〜同7-5669号に開示されているような折り畳み可能な形状にすることも、廃包材の保管スペース削減のためには好ましい。これらの包材は、処理剤の取り出し口にスクリューキャップや、プルトップ、アルミシールをつけたり、包材をヒートシールしてもよいが、このほかの公知のものを使用しても良く、特に限定はしない。さらに環境保全上、廃包材をリサイクルまたはリユースすることが好ましい。
【0194】
本発明の固形処理剤の溶解および補充の方法としては特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。これらの方法としてはたとえば、撹拌機能を有する溶解装置で一定量を溶解し補充する方法、特開平9-80718号に記載されているような溶解部分と完成液をストックする部分とを有する溶解装置で溶解し、ストック部から補充する方法、特開平5-119454号、同6-19102号、同7-261357号に記載されているような自動現像機の循環系に処理剤を投入して溶解・補充する方法、溶解槽を内蔵する自動現像機で感光材料の処理に応じて処理剤を投入し溶解する方法などがあるが、このほかの公知のいずれの方法を用いることもできる。また処理剤の投入は、人手で行っても良いし、特開平9-138495号に記載されているような開封機構を有する溶解装置や自動現像機で自動開封、自動投入してもよく、作業環境の点からは後者が好ましい。具体的には取り出し口を突き破る方法、はがす方法、切り取る方法、押し切る方法や、特開平6-19102号、同6-95331号に記載の方法などがある。
【0195】
現像、定着処理が済んだ感光材料は、ついで水洗または安定化処理される(以下特に断らない限り、安定化処理を含めて水洗といい、これらに使用する液を、水または水洗水という。)。水洗に使用される水は、水道水でもイオン交換水でも蒸留水でも安定化液でもよい。これらの補充量は、一般的には感光材料1m2あたり約17リットル〜約8リットルであるが、それ以下の補充量で行うこともできる。特に3リットル以下の補充量(0も含む。すなわち、ため水水洗)では、節水処理が可能となるのみならず、自動現像機設置の配管を不要とすることもできる。水洗を低補充量で行う場合は、特開昭63-18350号、同62-287252号等に記載のスクイズローラー、クロスオーバーローラーの洗浄槽を設けることがより好ましい。また、少量水洗時に問題となる公害負荷低減や、水垢防止のために種々の酸化剤(たとえばオゾン、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、活性ハロゲン、二酸化塩素、炭酸ナトリウム過酸化水素塩など)添加やフィルター濾過を組み合わせても良い。
【0196】
水洗の補充量を少なくする方法として、古くより多段向流方式(たとえば2段、3段等)が知られており、水洗補充量は感光材料1m2あたり200〜50ミリリットルが好ましい。この効果は、独立多段方式(向流にせず、多段の水洗槽に個別に新液を補充する方法)でも同様に得られる。
【0197】
さらに、本発明の方法で水洗工程に水垢防止手段を施しても良い。水垢防止手段としては公知のものを使用することができ、特に限定はしないが、防ばい剤(いわゆる水垢防止剤)を添加する方法、通電する方法、紫外線または赤外線や遠赤外線を照射する方法、磁場をかける方法、超音波処理する方法、熱をかける方法、未使用時にタンクを空にする方法などがある。これらの水垢防止手段は、感光材料の処理に応じてなされても良いし、使用状況に関係なく一定間隔で行われても良いし、夜間など処理の行われない期間のみ施しても良い。またあらかじめ水洗水に施しておいて、これを補充しても良い。さらには、一定期間ごとに異なる水垢防止手段を行うことも、耐性菌の発生を抑える上では好ましい。
防ばい剤としては特に限定はなく公知のものが使用できる。前述の酸化剤の他たとえばグルタルアルデヒド、アミノポリカルボン酸等のキレート剤、カチオン性界面活性剤、メルカプトピリジンオキシド(たとえば2-メルカプトピリジン-N-オキシドなど)などがあり、単独使用でも複数の併用でも良い。
通電する方法としては、特開平3-224685号、同3-224687号、同4-16280号、同4-18980号などに記載の方法が使用できる。
【0198】
このほか、水泡ムラ防止や汚れ転写防止のために、公知の水溶性界面活性剤や消泡剤を添加しても良い。また、感光材料から溶出した染料による汚染防止に、特開昭63-163456号に記載の色素吸着剤を水洗系に設置しても良い。
【0199】
水洗工程からのオーバーフロー液の一部または全部は、特開昭60-235133号に記載されているように、定着能を有する処理液に混合利用することもできる。また微生物処理(たとえば硫黄酸化菌、活性汚泥処理や微生物を活性炭やセラミック等の多孔質担体に担持させたフィルターによる処理等)や、通電や酸化剤による酸化処理をして、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、沃素消費量等を低減してから排水したり、銀と親和性のあるポリマーを用いたフィルターやトリメルカプトトリアジン等の難溶性銀錯体を形成する化合物を添加して銀を沈降させてフィルター濾過するなどし、排水中の銀濃度を低下させることも、自然環境保全の観点から好ましい。
【0200】
また、水洗処理に続いて安定化処理する場合もあり、その例として特開平2-201357号、同2-132435号、同1-102553号、特開昭46-44446号に記載の化合物を含有した浴を感光材料の最終浴として使用しても良い。この安定浴にも必要に応じてアンモニウム化合物、Bi,Al等の金属化合物、蛍光増白剤、各種キレート剤、膜pH調節剤、硬膜剤、殺菌剤、防ばい剤、アルカノールアミンや界面活性剤を加えることもできる。
【0201】
水洗、安定化浴に添加する防ばい剤等の添加剤および安定化剤は、前述の現像、定着処理剤同様に固形剤とすることもできる。
【0202】
本発明に使用する現像液、定着液、水洗水、安定化液の廃液は焼却処分することが好ましい。また、これらの廃液はたとえば特公平7-83867号、US5439560等に記載されているような濃縮装置で濃縮液化または固化させてから処分することも可能である。
【0203】
処理剤の補充量を低減する場合には、処理槽の開口面積を小さくして液の蒸発、空気酸化を防止することが好ましい。ローラー搬送型の自動現像機については米国特許3025779、同3545971などに記載されており、本明細書においては単にローラー搬送型自動現像機として言及する。この自現機は現像、定着、水洗および乾燥の四工程からなっており、本発明の方法も、他の工程(たとえば停止工程)を除外しないが、この四工程を踏襲するのが最も好ましい。さらに、現像定着間および/または定着水洗間にリンス浴を設けても良い。
【0204】
本発明の現像処理では、処理開始から乾燥後まで(dry to dry)で25〜160秒が好ましく、現像および定着時間が40秒以下、好ましくは6〜35秒、各液の温度は25〜50℃が好ましく、30〜40℃が好ましい。水洗の温度および時間は0〜50℃で40秒以下が好ましい。本発明の方法によれば、現像、定着および水洗された感光材料は水洗水を絞りきる、すなわちスクイズローラーを経て乾燥しても良い。乾燥は約40〜約100℃で行われ、乾燥時間は周囲の状態によって適宜かえられる。乾燥方法は公知のいずれの方法も用いることができ特に限定はないが、温風乾燥や、特開平4-15534、同5-2256、同5-289294に開示されているようなヒートローラー乾燥、遠赤外線による乾燥などがあり、複数の方法を併用しても良い。
【0205】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
下記(I)の液に(II)と(III)の水溶液を攪拌しながらダブルジェット法で添加して、平均粒子サイズ0.20μの塩臭化銀粒子(塩化銀含有率70モル%)を形成した。
(I)液: 塩化ナトリウムと1,3-ジメチル-2-イミダゾリジンチオンを含有するゼラチン水溶液
(II)液: 硝酸銀水溶液
(III)液: 臭化カリウムと塩化ナトリウムを含むハロゲン塩水溶液で、銀1モルあたり4×10-7モルに相当するK3IrCl6と2×10-7モルに相当するK2Rh(H2O)Cl5を含有する液
さらに(IV)硝酸銀水溶液と、(V)臭化カリウムと塩化ナトリウムを含むハロゲン塩水溶液をダブルジェット法で添加した。
引き続きKI溶液を銀1モルあたり1×10-3モル添加して、常法に従ってフロキュレーション法により水洗した。
【0206】
この乳剤に銀1モルあたりゼラチン40gを加え、pH6.0、pAg7.5に調整し、銀1モルあたりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム7mg、ベンゼンスルフィン酸2mg、塩化金酸8mg、チオ硫酸ナトリウム3mgを添加して、60℃50分間化学増感した。
その後安定剤として4-ヒドロキシ-6-メチル-1,3,3a,7-テトラザインデン150mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えて乳剤Aとした。
得られた乳剤は平均粒子サイズ0.25μmの単分散立方体塩沃臭化銀粒子(変動係数9.5%、塩化銀含有率69.9%、沃化銀含有率0.1%)からなる乳剤であった。
【0207】
(塗布試料の作成)
塩化ビニリデン防湿層を下塗りしたポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に支持体側から順次、UL層、EM層、PC層、OC層の構成となるように塗布し試料を作成した。
以下に各層の調製法および塗布量を示す。
(UL層)
UL層としてゼラチン0.3g/m2、ポリエチルアクリレート分散物を0.25g/m2を塗布した。
【0208】
(EM層)
前述したハロゲン化銀乳剤Aに増感色素として銀1モルあたり7×10-4モルの下記化合物(s)を添加した。
【0209】
さらに銀1モルあたり3×10-4モルのメルカプト化合物(a)、4×10-4モルのメルカプト化合物(b)、4×10-4モルのトリアジン化合物(c)、2×10-3モルの5-クロロ-8-ヒドロキノリン、および表18に示すヒドラジン誘導体(D)を添加した。
さらに、現像促進剤として、本発明で規定する4級オニウム塩化合物又は以下の比較化合物を表18に示す塗布量となるように添加した。
【0210】
【化19】
【0211】
【化20】
【0212】
さらに、N-オレイル-N-メチルタウリンナトリウム塩を30mg/m2、ポリエチルアクリレート分散物を0.8g/m2、平均粒径0.02μmのコロイダルシリカを200mg/m2、さらに硬膜剤として1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを100mg/m2添加した。溶液のpHは酢酸を用いて5.8に調整した。
できあがったハロゲン化銀乳剤溶液を塗布銀量3.5g/m2となるように塗布した。
【0213】
(PC層)
ゼラチン0.5g/m2、ポリエチルアクリレート分散物を0.2g/m2、エチルチオスルホン酸ナトリウムを5mg/m2、ハイドロキノン100mg/m2を塗布した。
【0214】
(OC層)
ゼラチン0.3g/m2、平均粒径3.5μmの不定形SiO2マット剤を50mg/m2、平均粒径0.02μmのコロイダルシリカを60mg/m2、流動パラフィンを30mg/m2、および塗布助剤としてp-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを100mg/m2と化合物(e)で示される含フッ素界面活性剤を5mg/m2となるように塗布した。
【0215】
【化21】
【0216】
これらの塗布試料は下記組成のバック層およびバック保護層を有する。
(バック層)
ゼラチン 2.6 g/m2
ポリエチルアクリレート分散物 2.0 g/m2
p-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 40mg/m2
1,2-ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン 100mg/m2
染料(f−1) 50mg/m2
染料(f−2) 20mg/m2
染料(f−3) 20mg/m2
染料(f−4) 30mg/m2
【0217】
【化22】
【0218】
(バック保護層)
ゼラチン 0.8 g/m2
ポリメチルメタクリレートマット剤(平均粒径4.5μm)20mg/m2
p-ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 15mg/m2
ジヘキシル-α-スルホサクシナートナトリウム塩 15mg/m2
酢酸ナトリウム 15mg/m2
【0219】
このようにして、表18に示す試料1〜28を作成した。
【0220】
【表18】
【0221】
作成した各試料はタングステン光源でセンシトメトリー用光学ウェッジを通して露光を与え、下記組成の現像液(1)を用いて34℃30秒の現像処理をした(条件−1)。
現像には富士写真フィルム株式会社製FG−710F自動現像機を使用した。定着は下記組成の定着液処方を用いた。
【0222】
現像液(1)
水酸化カリウム 40.0 g
ジエチレントリアミン・5酢酸 2.0 g
炭酸カリウム 60.0 g
メタ重亜硫酸カリウム 70.0 g
臭化カリウム 6.0 g
ハイドロキノン 40.0 g
5-メチルベンゾトリアゾール 0.35g
4-ヒドロキシメチル-4-メチル-1-
フェニル-3-ピラゾリドン 1.5 g
2-メルカプトベンツイミダゾール
-5-スルホン酸ナトリウム 0.3 g
エリソルビン酸ナトリウム 6.0 g
ジエチレングリコール 5.0 g
pH 10.6にあわせて 1リットルとする。
定着液組成
チオ硫酸アンモニウム 120 g
エチレンジアミン・4酢酸・2Na・2水塩 0.03 g
チオ硫酸ナトリウム・5水塩 11 g
メタ重亜硫酸ナトリウム 18 g
水酸化ナトリウム 12.5 g
酢酸(100%) 30 g
酒石酸 3 g
グルコン酸ナトリウム 2 g
硫酸アルミニウム 8.5 g
pH 4.8に合わせて 1リットルとする。
【0223】
また、各試料について、前記組成(1)の現像液を自現機に入れて1日あたり8時間35℃でスタンバイ状態で処理せずに稼動し、蒸発減量分のみを補充しつつ1週間経時させた液に対しても同様に処理して、写真性能と黒ポツを評価した(条件−2)。
結果を表19に示す。
【0224】
【表19】
【0225】
感度は濃度1.5を与える露光量の逆数で示し、条件−1での試料1の値を100としたときの相対値で示した。画像のコントラストを示す指標(γ)としては、特性曲線のfog+濃度0.3の点からfog+濃度3.0の点を直線で結び、この直線の傾きをγ値として表わした。
黒ポツは35℃30秒処理した時の素現部分をルーペで観察し5段階評価した。「5」は黒ポツの発生がなく最も良好なレベルを示し、「1」は黒ポツの発生が著しく最も悪いレベルを示す。「3」は黒ポツの発生が実用的に許容できる限度レベルである。
【0226】
表19の結果からわかるように現像液(1)で処理してγ値10以上の超硬調画像が形成でき、かつ黒ポツの発生が条件−2の処理においても良好なレベルであるのは、本発明の4級塩化合物を造核促進剤として使用した試料においてである。
【0227】
実施例2
(ハロゲン化銀乳剤Bの調製)
硝酸銀水溶液と、銀1モル当たり1×10-7モルに相当するK3IrCl6及び4×10-7モルに相当する(NH4)2Rh(H20)Cl5を含む臭化カリウムと塩化ナトリウムを溶解したハロゲン塩水溶液を、塩化ナトリウムと1,3−ジメチル−2−イミダゾリチオンを溶解したゼラチン水溶液に、攪拌しながらダブルジェット法により添加し、平均粒子サイズ0.20μm、塩化銀含量70モル%の塩臭化銀粒子を得ることにより核形成を行った。続いて、同様に硝酸銀水溶液と、臭化カリウムおよび塩化ナトリウムを溶解したハロゲン塩水溶液を、ダブルジェット法により添加した。
その後、銀1モルあたり1×10-3モルのKI溶液を加えてコンバージョンを行い、常法に従ってフロキュレーション法により水洗し、銀1モルあたりゼラチン40gを加え、pH6.0、pAg7.5に調整し、さらに銀1モルあたりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム7mgとベンゼンスルフィン酸ナトリウム2mg、塩化金酸8mgおよびチオ硫酸ナトリウム5mgを加え、60℃で60分間加熱し化学増感を施した。その後、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン200mgおよび防腐剤としてプロキセルを100mgを加えて乳剤Bとした。得られた粒子は平均粒子サイズ0.26μm、塩化銀含有率69.9モル%の沃塩臭化銀立方体粒子であった。(変動係数10%)
【0228】
(レドックス化合物含有層乳剤塗布液の調製)
乳剤Bに増感色素としてレドックス化合物含有層乳剤の銀1モルあたり4×10-4モルの前記増感色素(s)を添加し、5×10-4モルの前記化合物(a)および2×10-4モルの前記化合物(c)で表されるトリアジン化合物を添加し、さらにポリエチルアクリレートの分散物を100mg/m2、硬膜剤として1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを50mg/m2塗布されるように添加した。さらにレドックス化合物(1)を、乳化物として、感光材料中の全銀量に対し4.3×10-3モル/モルAgとなるように添加して、レドックス化合物含有層乳剤塗布液を調製した。
溶液のpHは5.6に調整した。
【0229】
(中間層塗布液の調製)
ゼラチン溶液に、エタンチオスルホン酸ナトリウムを5mg/m2、(g)で表される染料を50mg/m2、ハイドロキノンを100mg/m2、5−クロル−8−ヒドロキシキノリンを10mg/m2、ポリエチルアクリレートの分散物を100mg/m2塗布されるように添加し、中間層塗布液を調製した。溶液のpHは7.0に調整した。
【0230】
【化23】
【0231】
(試料の作成)
塩化ビニリデン防湿層を下塗りしたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、支持体側から順に、実施例1のUL層/実施例1の乳剤層でヒドラジン誘導体( D-66 )を8×10-5モル/m2と表20に示した塗布量で各4級オニウム塩化合物を含有させたEM層(Ag3.4g/m2)/前記中間層塗布液を塗布した中間層(ゼラチン1.0g/m2)/前記レドックス化合物含有層乳剤塗布液を塗布したレドックス化合物含有層(Ag0.3g/m2、ゼラチン0.3g/m2)/前記実施例1のOC層の5層からなるように塗布して試料を作成した。
【0232】
またバック層は、実施例1と同じものを使用した。
こうして、表20に示す試料を作成した。
【0233】
【表20】
【0234】
得られた試料は、ステップウェッジを通して150線/インチのコンタクトスクリーングレイスキャナーネガNo.2(大日本スクリーン製造株式会社製)と乳剤面を密着させて、タングステン光源で露光した。そして実施例1の現像液(1)と定着液を用いて、FG−710F自動現像機(富士写真フィルム株式会社製)にて35℃30秒の現像時間で処理した。
得られた網点画像の網階調(95%の網点面積を与える露光量と5%の網点面積を与える露光量の比率を対数表示したもの)を測定した。数値が大きいほど露光のラチチュードが広く、画像の再現性が良好であることを示している。
また、網点を100倍のルーペで観察し、形成された網点の品質を評価した。「5」は網点濃度が高く、エッジシャプネス(キレ)が良好であり、「1」はコントラストが低くキレの劣る網点であることを示す。「3」は写真製版の原稿として実用しうるレベルの網点品質である。
【0235】
表20からわかるように、本発明の試料は網階調が長く、網点品質も良好であった。
【発明の効果】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料によれば、超硬調のネガ階調画像を形成させることができ、画質に優れ、オリジナル再現性も高い。さらに、ランニング処理によりpH等が変化した処理液を用いても写真特性の変動が少なく、黒ポツの発生も抑制されている。また、本発明の処理方法によれば、従来より低いpHの現像液で処理して極めて硬調のネガ画像が形成でき、黒ポツの発生が低減され、かつ、上記のような優れた写真特性を維持することができる。
Claims (5)
- 支持体上に少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該乳剤層またはその他の親水性コロイド層に、下記一般式( I )〜一般式( IV )のいずれかで表される、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を分子内に計20個以上持つ窒素またはリンの4級塩化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
- 前記4級塩化合物が、前記の一般式(II)または一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 前記ハロゲン化銀乳剤層に、ヒドラジン誘導体を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 前記ヒドラジン誘導体を含有する前記ハロゲン化銀乳剤層とは別の、第2のハロゲン化銀乳剤層またはその他の親水性コロイド層中に、酸化されることによって現像抑制剤を放出しうるレドックス化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料をpH11.0未満の現像液で処理することにより、超硬調ネガ画像を形成することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像処理方法。
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