JP4191325B2 - 2色感熱記録媒体及びその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、それぞれ異なった色調に発色する発色層を有する2色感熱記録材料に関するものである。さらに詳しく述べるならば、色調の鮮明性に優れかつ可塑剤、油、水等の外部環境条件の影響を受けても発色した発色画像部が退色したり変色することのない極めて少ない保存性に優れた2色感熱記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、発色剤と該発色剤と接触して呈色する顕色剤との発色反応を利用し、熱により両発色物質を溶融することで接触させ、発色像を得るようにした感熱記材料は広く知られている。かかる感熱記録材料は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトでかつその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種計算機等の記録媒体をはじめとして、幅広い分野において使用されている。
【0003】
こうした感熱記録材料は、その用途の拡大に伴なって要求される品質も多様化しており、例えば高感度化、画像安定化、多色記録化等を挙げることができる。特に多色記録については応用範囲が広いため、現在までに多数の記録材料が研究提案されている。
【0004】
例えば、特開昭48−86543号公報、特開昭51−146239号公報などには、異なる色に発色できる2層の発色層を設け、異なる熱量を与えることで識別可能な2色を得る方法が記載されている。このような方法に於いては、高エネルギー発色時には、低エネルギー発色も同時に起こるため、両発色が起こって色が混じった時に狙いの発色(例えば量)が得られるように設計されているので問題とならないが、高エネルギー発色特性と低エネルギー発色特性が発色温度又は発色エネルギーに於いて十分に分離されていないため、濃度・温度特性グラフの裾がどうしても重なり合うため、低温発色時、高温発色もわずかに同時に起こるため、色が鮮明にならないといった問題があった。また混色を避けるためより低い温度で、低温発色層を発色させると発色性染料と顕色剤の溶融混合が不十分なため発色状態が不安定となり、発色後の保存性が悪くなるといった問題があった。
【0005】
こうした問題を解決する手段として特開昭55−81193号公報、特開平2−80287号公報にみられるように高温加熱時に低温発色層の発色系に対して消色作用を有する消色剤を用いることで、高温加熱時に高温発色層のみの発色色調を得る方法がある。しかしながら、消色剤の使用は保存性の悪化を招いたり、高温発色の2色めを発色させる時に、消色剤を溶融させるための熱量が余分に必要となるため、サーマルヘッドに負担がかかるなど必ずしも満足の得られるものではなかった。
【0006】
またジアゾ化合物が光で分解する性質を利用し、熱と光を組み合わせることで多色化する試みなども特開昭60−242093号公報、特開昭61−40192号公報などに記載されている。こうした方法は、優れた保存性を与えるが、サーマルヘッドの他に紫外線照射用の光源が必要となり、装置が大型化し感熱記録方式の利点であるコンパクトさが失われるといった欠点があった。
【0007】
一方、市場では食品POSラベルにおいてPOP文字の色を代えて印字することによる販売促進を図る試みがあり、2色感熱記録材料の要望が強まってきている。食品POSラベル分野のような可塑剤、水などの外的ストレスに耐えうる2色感熱記録材料として特開平8−207441号公報に記載されているが、これは赤黒のみの2色発色に限定されている。これまでは赤、黒の2色感熱記録材料の提供による販売促進が行なわれてきていたが、赤以外に発色する2色感熱記録材料へと市場ニーズは広がってきており、技術的な対応は必ずしも満足しうるものではなかった。
【0008】
赤黒以外の2色発色の使い方の例を挙げると、これまでの赤黒2色POSラベルはバーコード部は黒画像を発色させて表わし、POP文字部は赤画像で発色させて表わす。その時のPOP文字部のバックグランドは地肌の色の白のままかあるいは前工程で黄色やオレンジなどのベタ印刷を施している定形ラベルである。しかしこれからは食品POSには食品添加物表示の義務付けや市場情報の多様化、市場情報量の増大化などの市場ニーズにより前記のような特定な印刷サイズを持つ定型POSラベルでは対応が困難になってきている。この問題に対しこれまでの定型POSラベルから可変サイズ型POSラベルの要求へと市場ニーズが変わってきている。
そのために、従来の赤黒の2色POPからオレンジや黄染料を用いた2色POSラベルを提供することで前工程の印刷工程を削除して、実際にラベル使用するときに印刷部分を前記染料と顕色剤の反応を利用しオレンジ、黄に熱発色することで印刷工程の替わりになり、そのときの情報量によりPOSラベルサイズを可変化して対応することができるのである。
【0009】
重ねて言うと、従来代表的な2色POSラベルの使い方は赤・黒であり、例えば、バーコード部を黒発色で、値段等のポップ文字を赤で発色させ、表現していた。ポップ文字の背景は通常白であるが、青色等の場合もあり、その場合は前もって表面に黄色い印刷層が印刷されていた。従来、赤黒の2色以外(特に青色)に発色するサーマル材料系は世の中になかったし、開示されていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、第1色(代表的には黒色)に発色する高温発色層と青色に発色する低温発色層を設けた感熱記録材料において、青色発色の色調の鮮明さに優れ、かつ低温で発色させた青色発色の保存性に優れた青色・第1色(代表的には黒色)2色感熱記録材料を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は感熱記録媒体の印字情報を多変化するものである。すなわち、予め第3色=青色(背景)を印刷しておくことなく、背景の青色の発色を現場(売り場のプリンタ)で発色させることができ、その上、その青色のサイズを規定ものでなく、1枚毎に自由に設定することができる多色感熱記録材料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は本発明の(1)「支持体上に発色エネルギーの相対的な高低により異なる色調に発色する第1の塩基性ロイコ染料と第2の塩基性ロイコ染料との2つの塩基性ロイコ染料、及び顕色剤を含む層を設けた2色感熱記録媒体であって、低エネルギー側の塩基性ロイコ染料の極大光吸収波長が550〜600nmであり、保存安定剤としてナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする2色感熱記録媒体」、(2)「前記ロイコ染料と顕色剤とを含む層が、少なくとも第1の塩基性ロイコ染料と反応する顕色剤を含む、発色エネルギーが相対的に高い第1の感熱記録層上に、少なくとも極大光吸収波長が550〜600nmである第2の塩基性ロイコ染料と該染料と反応する顕色剤とを含む、発色エネルギーが相対的に低い第2の感熱記録層を積層したことを特徴とする前記第(1)項に記載の2色感熱記録媒体」、(3)「支持体上に、少なくとも相対的により高いエネルギーで発色を起こすマイクロカプセルに内包された第1の塩基性ロイコ染料、相対的に低いエネルギーで発色を起こし、極大光吸収波長が550〜600nmである第2の塩基性ロイコ染料、及び両染料に反応する1種以上の顕色剤とを含む感熱記録層を有することを特徴とする前記第(1)項に記載の2色感熱記録媒体」、(4)「前記第2の塩基性ロイコ染料が、3,3−ビス(4−ジメチアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドリル−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドリル−3−イル)−4−アザフタリドから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項の何れか1に記載の2色感熱記録媒体」、(5)「顕色剤としてビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンを用いることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項の何れか1に記載の2色感熱記録媒体」によって達成される。
【0013】
また、上記目的は()「POSラベル、カード、ポイントカードであることを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れか1に記載の2色感熱記録媒体」によって達成される。
【0014】
更にまた、上記目的は()「少なくとも、第1の塩基性ロイコ染料と反応する第1の顕色剤を含む塗布液を支持体上に塗布、乾燥させ、前記高エネルギーで発色する第1の感熱記録層を形成し、少なくとも第2の塩基性ロイコ染料と該染料と反応する第2の顕色剤とからなる塗布液を、塗布乾燥し前記低エネルギーで発色する第2の感熱記録層を形成することを特徴とする前記第(2)項に記載の2色感熱記録媒体の製造方法」、()「少なくとも、高エネルギーにより発色反応を起こすカプセル内に内包された第1の塩基性ロイコ染料、第2の塩基性ロイコ染料、1種以上の顕色剤を含む塗布液を支持体上に塗布・乾燥することを特徴とする前記第(3)項に記載の2色感熱記録媒体の製造方法」によって達成される。
【0015】
すなわち、本発明は、支持体上に異なる発色エネルギー差により異なる色調に発色する2つの塩基性ロイコ染料と顕色剤とからなる発色層からなり、低エネルギー側の塩基性ロイコ染料の極大光吸収波長を550〜600nmにもつ化合物を用いることを特徴とする2色感熱記録材料に係る。この他に第3の主要成分として結合剤を含有する。
【0016】
これまで世の中になかった青色発色の2色感熱紙が得られる。前記の従来例を引いて説明すると、バーコード部を黒の単色発生層からなるエリアとして青色の背景に赤字のポップ文字というものを、本発明で置き換えることができる。即ち、第1色を赤色とし、第2色を青色とすることができ、このエリアをこの層で形成すると、表面を低温で青色発色させ、ポップ文字を赤色発色させることにより同じものが現場で容易に得ることができる。更に、背景のサイズは自由に選択でき、しかも1枚毎にサイズを変えることができる。
また、赤黒発色と青・黒発色をエリア分けして形成しておくと、赤、青、黒、白の色を自由に使って4元情報を表示できることになる。例えば、白を背景に黒のバーコードで赤を背景に黒のポップ文字で、青色の背景に黒の注意書き文字を表示することができる。
【0017】
極大光吸収波長が600nmより大きくなると発色色調は緑色に変化していく。一方、極大光吸収波長が550nmより小さくなっていくと紫色に変化していく。本発明の狙いとする青色発色画像を出すためには極大光吸収波長を550〜600nmに持つロイコ染料を選択することで達成できる。本発明の極大光吸収波長を持つロイコ染料としては3,3−ビス(4−ジメチアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドリル−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドリル−3−イル)−4−アザフタリドなどがある。また顕色剤としてビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンを用いることでよりいっそう鮮明な青画像が期待できる。
【0018】
さらに該感熱層中に保存安定剤としてナトリウム2,2'メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−ビス(ヒドロキシ−3',5'−ジブロモフェニル)プロパンから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することで青色の発色が得られると共に耐可塑剤性、耐油性、耐水性の保存性向上効果が得られる。
【0019】
上記7種類の化合物の選択として1種類だけではなく2種類以上用いることでもっとよい効果を得ることができる。こうした材料を適当に組み合わせることで単独では得られない保存性向上効果が得られるがその理由は必ずしも明らかになっていない。不十分な染料と顕色剤の溶融混合状態に対する何らかの立体化学的なあるいは電子的な安定作用があると思われる。
【0020】
本発明の2色発色させるための基本構成としては大きく2つに分類できるがこれに限ったことではない。1つとして高エネルギー発色層、低エネルギー発色層を支持体上に順次設けた積層タイプが挙げられる。これには高エネルギー発色層と低エネルギー発色層の間に障壁的な中間層を設けたり、低エネルギー発色層の発色系に対してある温度で消色作用をもたらす消色層を設けてもよい。
【0021】
2つ目は高エネルギー側の塩基性ロイコ染料をマイクロカプセル化して2つの発色成分を同一層で構成させる発想である。マイクロカプセル化としては従来から知られた方法が適用され、コアセルベーション法、界面重合法、in−situ法などが代表的である。これら2つの基本構成とともに支持体と感熱発色層との間にアンダー層を設けてもよいし、最上層には保護層を設けてもよい。また支持体の反対面には必要に応じて保護層、磁気層を設けてもよい。また、いずれかの面、いずれかの層に印刷層を設けてもよい。
【0022】
本発明の媒体は各層の間に任意の層を有していてもよい。また、その層は有機or無機のフィラーを有していてもよい。有機フィラーのうち特に中空粒子を有していてもよい。前記層は特に、第一の感熱記録層と第二の感熱記録層の間の中間層、第一の感熱記録層と支持体との間のアンダー層、最表面の保護層が有効である。
【0023】
本発明の高エネルギー側の発色性化合物の例としては、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられている青色・緑色ないし黒色に発色するものの中から選ばれるが、食品POSに活用する目的からは、黒色に発色するものが最も好ましい。その具体例としては、例えばフルオラン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スピロ系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物等が挙げられる。
【0024】
このうちフルオラン系化合物としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソブチル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−フルオロアニリノ)フルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−エトキシエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−(p−トルイジノエチルアミノ)−6−メチル−7−フェネチルフルオラン等が挙げられる。
【0025】
また、トリールメタン系化合物としては、例えば3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトン又はCVL)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルアミノインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバソール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。
【0026】
更に、スピロ系化合物としては、例えば3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3’−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、1,3,3−トリメチル−6−ニトロ−8’−メトキシスピロ(インドリン−2,2’−ベンゾピラン)等が、ジフェニルメタン系化合物としては、例えばN−ハロフェニル−ロイコオーラミン、4,4−ビス−ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテル、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等が、チアジン系化合物としては、例えばベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等が、ラクタム系化合物としては、例えばローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム等が、フルオレン系化合物としては、例えば3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ピロリジノフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオレンスピロ(9,3’)−6’−ピロリジノフタリド等が挙げられる。これらの発色性化合物は単独もしくは混合して用いられる。
【0027】
本発明に使用する顕色性化合物も一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられているものであればよく、特に制限されない発色性、色の再現性、保存安定性の観点からビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンを用いることが好ましい。他の具体例としては、例えばα−ナフトール、β−ナフトール、p−オクチルフェノール、4−t−オクチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA又はBPA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−チオビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、2,2’−(2,5−ジブロム−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ブトキシジフェニルスルホン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、2,4−ジヒドロキシ−2’−メトキシベンズアニリド等のフェノール性化合物、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシフタル酸ジベンジル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、5−ヒドロキシイソフタル酸エチル、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸等の芳香族カルボン酸誘導体、芳香族カルボン酸又は金属塩等が挙げられる。
【0028】
本発明でのアンダー層に用いる中空粒子は、アクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのアクリル系樹脂や、スチレンなどのスチレン樹脂あるいはそれらの共重合樹脂などから作られるものを用いることができる。
【0029】
アンダー層、発色層、中間層、保護層には必要に応じ結合剤、充填剤が使用される。用いうる充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、クレー、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ポリスチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等がある。
【0030】
結合剤の例としては、例えばメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、デンプン及びその誘導体、カゼイン、ゼラチン、水溶性イソプレンゴム、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソ(又はジイソ)ブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性のものあるいはポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸系共重合体、コロイダルシリカとアクリル樹脂の複合体粒子等の疎水性高分子エマルジョン等が挙げられる。
【0031】
また、必要に応じ感度向上の目的から増感剤と呼ばれる熱可融性化合物が使用される。用いうる熱可融性化合物の例としては、例えば1−ベンジルオキシナフタレン、2−ベンジルオキシナフタレン、1−ヒドロキシナフトエ酸フェニルエステル等、1,2−ジフェノキシエタン、1,4−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メトキシフェノキシ)エタン等、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1−フェノキシ−2−(4−クロロフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)エタン等、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル、テレフタル酸ジベンジルエステル等、p−トルエンスルホン酸フェニルエステル、フェニルメシチレンスルホナート、4−メチルフェニルメシチレンスルホナート等、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジルエステル、シュウ酸ジ(4−メチルベンジル)エステル、シュウ酸ジ(4−クロロベンジル)エステル等、p−ベンジルビフェニル、p−アリルオキシビフェニル、p−アセチルビフェニル等、m−ターフェニル等が挙げられる。
【0032】
また発色層、中間層、保護層、カプセル壁剤には、上記熱可融性物質とは別に、発色性にはほとんど関与しないワックスと呼ばれる下記の熱可融性物質も添加できる。例えば動植物性ワックス、合成ワックスなどのワックス類や高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アニリド、芳香族アミンのアセチル化物などである。
【0033】
他のワックス類としては、例えば木ろう、カルナウバろう、シェラック、モンタンろう、酸化パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン等が、高級脂肪酸としては、例えばステアリン酸、ベヘン酸等が、高級脂肪酸アミドとしては、例えばステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N−メチルステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が、高級脂肪酸アニリドとしては、例えばステアリン酸アニリド、リノール酸アニリド等が、芳香族アミンのアセチル化物としては、例えばアセトトルイジド等が、各々例示される。
【0034】
発色層、中間層、保護層には、その他ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等の滑剤、各種の界面活性剤、消泡剤等が必要に応じて加えられる。
【0035】
【実施例】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。尚、実施例中「部」は重量部を示す。
参考例1)
〔第1感熱発色層の形成〕
下記組成の混合物をサンドグラインダーを用いて平均粒径が1μm以下になるように粉砕、分散化してそれぞれ[A]液、[B]液を調整した。
[A]液:3−(N−エチル−N−4−メチルフェニルアミノ)
−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(黒発色系ロイコ染料) 20部
10%PVA水溶液 20部
水 60部
[B]液:ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン 10部
シリカ(水沢化学製P−603) 10部
10%PVA水溶液 20部
水 60部
次いで各調製液を[A]液10部、[B]液50部の割合に混合して、第1感熱発色層塗布液を調製し、坪量50g/mの上質紙に乾燥時の黒発色系ロイコ染料重量が約0.6g/m2となるように塗布、乾燥して黒発色の第1感熱発色層を形成した。
【0036】
〔中間層の形成〕
前記第1感熱発色層上に50%スチレンブタジエンラテックスを乾燥時の総重量が約1.5g/m2となるように塗布、乾燥を行なった。
【0037】
〔第2感熱発色層の形成〕
下記組成の混合物をサンドグラインダーを用いて平均粒径が1μm以下になるように粉砕、分散化してそれぞれ[C]液、[D]液、[E]液を調製した。
Figure 0004191325
次いで各調製液を[C]液10部、[D]液10部、[E]液20部の割合に混合して、第2感熱発色層塗布液を調製し、前記の中間層上に乾燥時のオレンジ発色系ロイコ染料重量が約0.6g/m2となるように塗布、乾燥して青発色の第2感熱発色層を形成した。
【0038】
〔保護層の形成〕
下記組成の混合物をサンドグラインダーを用いて平均粒径が1μm以下になるように粉砕、分散化して[F]液を調製した。
Figure 0004191325
次いで上記[F]液を使って、下記組成の保護層液を調製し、第2感熱発色層上に乾燥時の重量が約3g/m2となるように塗布、乾燥を行なった。
Figure 0004191325
さらにキャレンダー処理をし、表面を王研式平滑度計で2000sにして、本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0039】
参考例2)
参考例1の第2感熱発色層の[C]液に用いた顕色剤4−ヒドロキシフェニル−4−イソプロポキシフェニルスルホンの代わりにビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンを用いた以外は同様にして本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0040】
(実施例
参考例1の第2感熱発色層の形成で別に下記組成の混合物をサンドグラインダーを用いて平均粒径が1μm以下になるように粉砕、分散化して[G]液を得た。
[G]液:ナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−
ブチルフェニル)フォスフェート(保存安定化剤) 20部
10%PVA水溶液 20部
水 60部
次いで各調製液を[C]液10部、[D]液10部、[E]液20部、[G]液10部の割合に混合して、第2感熱発色層塗布液を調製し、前記の中間層上に乾燥時の青発色系ロイコ染料重量が約0.6g/mとなるように塗布、乾燥して青発色の第2感熱発色層を形成した以外は実施例1と同様にして本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0041】
参考例3
実施例の第2感熱発色層の[G]液に用いたナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートの代わりに1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸を用いた以外は同様にして本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0043】
(実施例
実施例の第2感熱発色層の[G]液に用いたナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートの代わりに4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を用いた以外は同様にして本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0044】
(実施例
実施例の第2感熱発色層の[G]液に用いたナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートの代わりに2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を用いた以外は同様にして本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0045】
参考例4
実施例1の第2感熱発色層の[G]液に用いたナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートの代わりに2,2−ビス(ヒドロキシ−3',5'−ジブロモフェニル)プロパンを用いた以外は同様にして本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0046】
(実施例
実施例1の第2感熱発色層の[G]液に用いたナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートの代わりに4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を用いた以外は同様にして本発明の2色感熱記録材料を得た。
【0050】
(比較例1)
参考例1の第2感熱発色層の[D]液に用いた3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド(最大吸収波長590nm)の青色発色系ロイコ染料)の代わりに3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドリル−3−イル)フタリド(最大吸収波長610nm)を用いた以外は同様にして、2色感熱記録材料を得た。以上の様にして得た本発明および比較用の2色感熱記録材料の品質性能を表1に示した。
【0051】
【表1−1】
Figure 0004191325
【0052】
【表1−2】
Figure 0004191325
【0053】
1)発色性試験:大倉電気製感熱印字装置TH−PMDを用いて、ヘッド条件0.45W/dot、印字スピード4ms/line(1dotで作るライン巾)、プラテン圧20kgf/接触全面の条件にて印字テストを行ない、マクベス反射濃度計(RD−914型)を用いて測定した。ここで黒画像部は黒測定用のフィルター、青又は緑画像部はシアン測定用フィルターにて測定した。
2)色調:目視にて観察した。
3)耐可塑剤性試験:印字面に綿棒でDOA(ジ・オクチル・アジペート)を薄く塗り30℃、16時間放置後マクベス反射濃度計(RD−914型)を用いて測定した。
4)耐油性試験:印字面に綿棒で綿実油を薄く塗り40℃、16時間放置後マクベス反射濃度計(RD−914型)を用いて測定した。
5)耐水性試験:20℃の水に16時間浸漬後の濃度をマクベス反射濃度計(RD−914型)を用いて測定した。
【0054】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明の590nmの最大光吸収波長を持つ3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリドロイコ染料を用いることで市場の求める青色調に発色する2色感熱記録材料を提供できる。また顕色剤にビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンを併用することでいっそう鮮明な青発色色調となった。さらに本発明に挙げる保存安定剤を用いることで耐可塑剤性、耐油性、耐水性の向上も図ることが可能となった。また、本発明の550〜600nmの最大光吸収波長を持つ塩基性ロイコ染料用いることで市場の求める色調に発色する2色感熱記録媒体を初めて実現した(提供できる)。また、顕色剤にビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンを併用することでいっそう鮮明な発色色調となった。さらに本発明に挙げる保存安定剤を用いることで耐可塑剤性、耐油性、耐水性等の保存性の向上も図れるという極めて優れた効果を奏するものである。

Claims (8)

  1. 支持体上に発色エネルギーの相対的な高低により異なる色調に発色する第1の塩基性ロイコ染料と第2の塩基性ロイコ染料との2つの塩基性ロイコ染料、及び顕色剤を含む層を設けた2色感熱記録媒体であって、低エネルギー側の塩基性ロイコ染料の極大光吸収波長が550〜600nmであり、保存安定剤としてナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする2色感熱記録媒体。
  2. 前記ロイコ染料と顕色剤とを含む層が、少なくとも第1の塩基性ロイコ染料と反応する顕色剤を含む発色エネルギーが相対的に高い第1の感熱記録層上に、少なくとも極大光吸収波長が550〜600nmである第2の塩基性ロイコ染料と該染料と反応する顕色剤とを含、発色エネルギーが相対的に低い第2の感熱記録層を積層したことを特徴とする前記請求項1に記載の2色感熱記録媒体。
  3. 支持体上に、少なくとも相対的により高いエネルギーで発色を起こすマイクロカプセルに内包された第1の塩基性ロイコ染料、相対的に低いエネルギーで発色を起こし、極大光吸収波長が550〜600nmである第2の塩基性ロイコ染料、及び両染料に反応する1種以上の顕色剤とを含む感熱記録層を有することを特徴とする前記請求項1に記載の2色感熱記録媒体。
  4. 前記第2の塩基性ロイコ染料が、3,3−ビス(4−ジメチアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドリル−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドリル−3−イル)−4−アザフタリドから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前記請求項1乃至3の何れか1に記載の2色感熱記録媒体。
  5. 顕色剤としてビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンを用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載の2色感熱記録媒体。
  6. POSラベル、カード、ポイントカードであることを特徴とする請求項1乃至の何れか1に記載の2色感熱記録媒体。
  7. 少なくとも、第1の塩基性ロイコ染料と反応する第1の顕色剤を含む塗布液を支持体上に塗布、乾燥させ、前記高エネルギーで発色する第1の感熱記録層を形成し、少なくとも第2の塩基性ロイコ染料と該染料と反応する第2の顕色剤とからなる塗布液を、塗布乾燥し前記低エネルギーで発色する第2の感熱記録層を形成することを特徴とする請求項2に記載の2色感熱記録媒体の製造方法。
  8. 少なくとも、高エネルギーにより発色反応を起こすカプセル内に内包された第1の塩基性ロイコ染料、第2の塩基性ロイコ染料、1種以上の顕色剤を含む塗布液を支持体上に塗布・乾燥することを特徴とする請求項3に記載の2色感熱記録媒体の製造方法。
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