本発明の感熱記録材料においては、支持体と、その上に形成され、染料前駆体と、該染料前駆体と加熱下に反応してこれを発色させる顕色性化合物とを含有し、互いに異なる色調に発色する感熱発色層が2層存在する多色感熱記録材料において、前記支持体に近い側に形成される第1感熱発色層の静発色開始温度が、該第1感熱発色層に隣接し、染料前駆体と高分子化合物から形成される複合微粒子と、これを発色させる顕色性化合物とを含有する第2感熱発色層の静発色開始温度より20℃以上低いことを特徴とする。
なお、該第1感熱発色層の静発色開始温度の調整は、感熱記録体に用いられる公知のロイコ染料、顕色剤、増感剤の種類と量を適宜選択することにより調整することが可能である。また、該第2感熱発色層の静発色開始温度の調整は、複合微粒子を形成する高分子化合物の選択、複合微粒子の粒子径、複合微粒子の調製条件、ロイコ染料と高分子化合物の割合、高分子化合物に対する可塑剤の添加などの要因を変更することで、静発色開始温度の異なる複合微粒子を作製し、該複合微粒子を第2感熱発色層に配合することにより、調整することが可能である。
第1感熱発色層を発色させる場合は、第2感熱発色層の静発色開始温度より低く、第1感熱発色層の静発色開始温度より高い温度となるように、サーマルヘッドの印加エネルギー条件を設定する。サーマルヘッドを一定印加電圧で、短い印加パルス幅を、繰り返し印加することで、低温長時間印加を行い、第1感熱発色層を発色させることができる。
第2感熱発色層を発色させる場合は、第2感熱発色層の静発色開始温度以上の温度となるように、サーマルヘッドの印加エネルギー条件を設定する。サーマルヘッドを一定印加電圧で、1ライン周期あたりの繰り返しの印加を避け、長い印加パルス幅で印画することにより第2感熱発色層を発色させることができる。
第2感熱発色層に含有される複合微粒子は、多価イソシアネート化合物を溶媒とし、染料前駆体を溶質とする溶液を水中に乳化分散後、多価イソシアネート化合物の高分子化反応を促進させることにより得られる複合微粒子であることが好ましい。また、複合微粒子を用いることで、好ましい発色色調を得られるように複数の染料前駆体を併用しても、第2感熱発色層の静発色開始温度は、複合微粒子の高分子特性に依存するため、その制御が容易になる。
また、第2感熱発色層の厚みが、4〜10μmであることが好ましい。この範囲にあれば、第2感熱発色層のみを発色させる場合に、サーマルヘッドの熱が媒体表面からの深さ方向に伝達され、第1感熱発色層に到達する際には、第1感熱発色層の静発色開始温度以下となるよう制御し易く、安定した色分離がし易いため、好ましい。
本発明において、複合微粒子は、(1)多価イソシアネート化合物を溶媒とし、染料前駆体を溶質とする溶液を水中に乳化分散後、多価イソシアネート化合物の高分子化反応を促進させることにより得られる複合微粒子、或いは、(2)高分子化合物を壁材料とし、高沸点溶剤を溶媒とし、染料前駆体を溶質とする溶液を芯物質として内包するマイクロカプセルの形態のどちらでも使用可能である。
使用する多価イソシアネートの種類、架橋剤の種類により、第2感熱発色層の静発色開始温度を制御することが可能である。
このように、本発明の感熱記録材料を用いると、サーマルヘッドからの加熱印加条件の違いにより、互いに異なる発色色調をそれぞれ独立に階調発色させることができる。即ち、低温発色色調は、固体微粒子状態で第1感熱発色層に存在する染料前駆体の発色色調、高温発色色調は、第2感熱発色層の複合微粒子中に存在する染料前駆体の発色色調となる。
多色色分離性向上のため、第1感熱発色層と第2感熱発色層の間に中間層を設ける方法も提案されているが、本発明では、複合微粒子による第2感熱発色層の静発色開始温度の制御により、中間層を設けなくても色分離性は良好とすることが可能である。また、中間層を必要としないことで、少ない工程で色分離性の良好な多色感熱記録材料を得ることができる。
本発明の感熱記録材料において、使用できる顕色性化合物とは、温度の上昇によって液化、または溶解する性質を有し、染料前駆体と接触してこれを発色させる性質を有するものから選ばれ、代表的なものとしては、フェノール性化合物、芳香族カルボン酸、或いは、これらの化合物と多価金属との塩等の有機酸性物質等を挙げることができる。
顕色性化合物は通常、複合微粒子中やマイクロカプセル中及び固体微粒子状態で存在する染料前駆体100質量部に対し、30〜2000質量部の割合で用いられることが好ましく、より好ましくは50〜200質量部の割合で使用される。
代表的な顕色性化合物としては4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、及びビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のフェノール性化合物を挙げることができる。
更に本発明において、顕色性化合物として使用できる化合物としては4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール性化合物、または、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸等の芳香族カルボン酸、及びこれらフェノール性化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の多価金属との塩等の有機酸性物質等が挙げられる。
本発明で使用する複合微粒子は、ポリウレアまたは、ポリウレタン−ポリウレアより選ばれる少なくとも1種の高分子物質(樹脂)からなる母材と、その中に含有されている染料前駆体からなるものであって、染料前駆体と高分子物質が固溶体状態で存在していると考えられる。複合微粒子中には、油性溶媒等の液体を含有していないことが圧力カブリの点から望ましい。
この複合微粒子中に含有させた染料前駆体の発色体は、固体微粒子状態で発色させた発色体に比べて極めて良好な保存性、特に油や可塑剤に対する耐性の優れたものとなる。その理由については必ずしも明確ではないが、発色体と高分子物質(母材)が何らかの相互作用を有し、安定化しているものと思われる。
本発明で使用する複合微粒子の外観は、電子顕微鏡で観察するとほぼ球状をしているか、または多少なりともくぼんだ赤血球状である。電子顕微鏡による断面観察では、その形状は、内実体であるか、多孔質体、または中空体である。また平均粒子径は、適正な発色感度を得るために0.2〜1.5μmとすることが望ましい。油や可塑剤等に対する発色部の保存性は、平均粒子径が小さいと悪化することがあり、平均粒子径を0.2μmより小さくすることは望ましくない。
本発明で使用する染料前駆体を内包するマイクロカプセルとは、染料前駆体の溶液が液体部分として芯物質となっており、これがカプセル壁材によって保護されているものであり、コアとシェルとが明確に区分される。よって、染料前駆体が高分子物質と固溶体状態で存在していると考えられる染料前駆体を含有する複合微粒子とは、その存在状態、形状は大きく異なっている。
本発明で使用する第1感熱発色層、及び第2感熱発色層に含有することができる染料前駆体とは、下記に例示された染料前駆体が使用でき、トリアリール系、ジフェニルメタン系、チアジン系、スピロ系、ラクタム系、フルオラン系等のロイコ体が好ましく使用できる。こうした染料前駆体は、顕色性化合物との接触において、それぞれ固有の発色色調を与えるもので、その発色色調は、黒、赤、赤紫、オレンジ、青、緑、黄色と多岐にわたっており、第1感熱発色層、及び第2感熱発色層の組み合わせとしては、互いに異なる発色色調となる染料前駆体を選択すればよい。
複合微粒子に含有される染料前駆体は、単一化合物であることもできるが、2種或いは3種以上の異なる色調の染料前駆体を混合することで所望の発色色調を得ることもできる。
黒色発色を与える染料前駆体として、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−メチルアニリノ)フルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−〔N−(3−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,6−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2,4−ジメチル−6−(4−ジメチルアミノアニリノ)フルオラン、及び3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン等を挙げることができる。
前記黒色発色を与える染料前駆体の中でも、耐光性の比較的優れている3−ジ(n−アミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,6−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、及び2,4−ジメチル−6−(4−ジメチルアミノアニリノ)フルオランから選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
青色発色を与える染料前駆体としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−n−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、及び3−ジフェニルアミノ−6−ジフェニルアミノフルオラン等を挙げることができる。
緑色発色を与える染料前駆体としては、3−(N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ)−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)−7−(N−フェニル−N−メチルアミノ)フルオラン、3−〔p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、及び3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等を挙げることができる。
近赤外領域に吸収を有する染料前駆体としては、3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−〔p−(p−アニリノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ〕−6−メチル−7−クロロフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−p−トリルスルホニルメタン、3−〔p−(p−ジメチルアミノアニリノ)アニリノ〕−6−メチルフルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6,8,8−トリメチル−8,9−ジヒドロ−(3,2,e)ピリドフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6,8,8−トリメチル−8,9−ジヒドロ−(3,2,e)ピリドフルオラン、3−〔1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−n−ブチルアミノアニリノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、2―メシジノ−8−ジエチルアミノ−ベンズ〔C〕フルオラン等を挙げることができる。
本発明において使用できる赤色系に発色する染料前駆体としては、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−アニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(p−ニトロ)アニリノラクタム、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(o−クロロ)アニリノラクタム、3−ジメチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−tert−ブチルフルオラン、3−(N−エチル−N−トリルアミノ)−7−メチルフルオラン、3−(N−エチル−N−トリルアミノ)−7−エチルフルオラン、3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、及び3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン等を挙げることができる。
更に赤色系の発色を与える染料前駆体として、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−ブロモフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−トリルアミノ−7−メチルフルオラン、3−トリルアミノ−7−エチルフルオラン、2−(N−アセチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−プロピオニルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−ベンゾイルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−カルボブトキシアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−ホルミルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−ベンジルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、2−(N−アリルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、及び2−(N−メチルアニリノ)−3−メチル−6−ジ(n−ブチル)アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェノキシフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン等を挙げることができる。
更には、3,3’−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3’−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3’−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3’−フタリド〕、7−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−3−メチル−1−p−メチルフェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3’−フタリド〕、および7−(N−エチル−N−n−ヘキシルアミノ)−3−メチル−1−フェニルスピロ〔(1,4−ジヒドロクロメノ〔2,3−c〕ピラゾール)−4,3’−フタリド〕等を赤発色系染料前駆体として挙げることができる。
黄色系統の発色を与える染料前駆体としては、3,6−ジメトキシフルオラン、及び1−(4−n−ドデシルオキシ−3−メトキシフェニル)−2−(2−キノリル)エチレン等がある。
本発明の感熱記録材料において固体微粒子状態で存在する染料前駆体も、上記の染料前駆体と同様のものを用いることができる。
本発明で使用する複合微粒子の製造方法においては、特開平9−295457号公報に記載の方法が使用できる。
本発明で使用する複合微粒子は、染料前駆体の他に、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶性蛍光染料、離型剤の他、感熱記録材料で知られているような増感剤等が添加されていてもよい。このような添加物質は、常温で固体であることが好ましいが、液体であってもよい。特に、紫外線吸収剤やヒンダードフェノール系の酸化防止剤は、耐光性を改善することができ、好ましく使用することができる。特に2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、好ましく使用できる。
本発明で用いるマイクロカプセルは、特開昭59−214691号公報に記載された方法等、各種公知の方法で調製することができ、一般には前述の染料前駆体を必要に応じて有機溶剤に溶解して得た芯物質(油性液)を水性媒体中に乳化分散し、油性液滴の周りに高分子物質からなる壁膜を形成する方法によって調製される。マイクロカプセルの壁膜となる高分子物質の具体例としては、例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、スチレン−アクリレート樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらのうちでも、特にポリウレタン−ポリウレア樹脂、或いはアミノアルデヒド樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、耐熱性に優れるため、好ましく用いられる。
本発明において、染料前駆体を固体微粒子状態で使用する場合、水を分散媒体として、サンドグラインダー、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によって粉砕し、これをポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体等の水溶性高分子化合物の他、必要に応じて界面活性剤、消泡剤等と共に分散媒体中に分散させて分散液とし、この分散液を感熱発色層形成用塗液の調製に用いることができる。また染料前駆体を有機溶剤に溶解した後、この溶液を水中で上記水溶性高分子化合物を安定化剤として乳化分散後、この乳化液から有機溶剤を蒸発させ染料前駆体を固体微粒子化して使用することもできる。いずれの場合も固体微粒子状態で使用する染料前駆体の固体分散粒子の平均粒子径は、適切な発色感度を得るために0.2〜3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0μmである。もちろん同一の色調を有する染料前駆体を複合微粒子と共に固体微粒子状態で使用し、単色発色の感熱記録材料とすることもできる。
本発明においては、主に発色記録画像の保存性向上のために、画像安定化剤を用いてもよい。このような画像安定化剤としては、例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、及び4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール系の化合物、4−ベンジルオキシフェニル−4’−(2−メチル−2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、及び4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物、並びに1,3,5−トリス(2,6−ジメチルベンジル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。勿論、画像安定化剤はこれらに限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
本発明においては、感熱記録発色感度を向上させるために増感剤を使用することができる。増感剤としては、従来から感熱記録材料の増感剤として知られている化合物を使用することができ、例えばパラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、シュウ酸ジベンジル、アジピン酸ジ−o−クロルベンジル、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジル、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1,3−ビス(2−ナフトキシ)プロパン、メタターフェニル、ジフェニル、ベンゾフェノン等を挙げることができる。
本発明において使用する顕色性化合物、画像安定化剤及び増感剤等の添加剤は、染料前駆体を固体微粒子状態で使用する時と同じ方法で水中に分散させ、感熱発色層形成用塗液の調製の際にこれに混合すればよい。また、これらの添加剤を溶剤に溶解し、これらを水溶性高分子化合物を乳化剤として用いて水中に乳化して使用することもできる。また画像安定化剤及び増感剤は、染料前駆体を含有する複合微粒子中に含有させてもよい。
本発明においては、感熱発色層の白色度向上、及び画像の均一性向上のため、白色度が高く、平均粒子径が10μm以下の微粒子顔料を感熱発色層に含有させることができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、珪藻土、合成珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が使用できる。サーマルヘッドに対するカス付着、及びスティッキングの防止のためには、吸油量が50ml/100g以上の顔料を使用することが好ましい。顔料の配合量は、発色濃度を低下させない程度の量、即ち、感熱発色層の全固形分に対して50質量%以下であることが好ましい。
本発明において、感熱発色層を構成する他の成分材料としては接着剤を用い、更に必要により、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、有色染料、有色顔料、及び蛍光染料等を用いることができる。接着剤としては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン及びそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の水不溶性重合体のラテックス等を挙げることができる。
また、感熱発色層の耐水性を向上させるために、接着剤を三次元硬化させるための架橋剤を感熱発色層中に含有させることができる。例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物、または硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー等から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を感熱発色層の全固形分100質量部に対し1〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
感熱発色層に添加されるワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバロウワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、及びポリエチレンワックス等のワックス類、並びに例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体等を挙げることができる。特にメチロール化脂肪酸アミドを感熱発色層に添加すると、地肌カブリを悪化させずに増感効果を得ることができるので好ましく使用できる。
感熱発色層に添加される金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等を挙げることができる。本発明の感熱記録材料を2色感熱記録材料とする場合、低温発色色調に対して補色の関係にある色調を有する有色染料、及び/または有色顔料を感熱発色層中に含有させることは、印字前の感熱記録材料の色調を調節するために好ましく用いられる。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱発色層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等、各種添加剤を添加することができる。
感熱発色層は、乾燥後の塗工量が2〜20g/m2、より好ましくは4〜15g/m2となるように塗工される。
本発明においては、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルまたは紫外線吸収剤の固体微粒子を感熱発色層、或いは必要によりその上に設けられる保護層に含有することで、耐光性を大幅に向上させることもできる。
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
更には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’ ’,4’ ’,5’ ’,6’ ’−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−4’−(2”−エチルヘキシル)オキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール(分子量約300)とメチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとの縮合物等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系の紫外線吸収剤等を挙げることができる。勿論、これらに限られるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用することもできる。
これらの紫外線吸収剤の中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−4’−(2’ ’−エチルヘキシル)オキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール(分子量約300)とメチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとの縮合物は、とりわけ顕著な耐光性改良効果を発揮するためより好ましい。
紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセル、または紫外線吸収剤の固体微粒子の添加量については特に限定するものではないが、感熱発色層に含有する場合、及び感熱発色層上に設けた保護層に含有する場合、いずれの場合においても、各層の全固形分に対して、5〜70質量%程度が好ましい。特に好ましくは15〜50質量%の範囲に調節する。5質量%より少ないと耐光性に対する改善効果が乏しく、70質量%より多く含有しても耐光性改善効果が乏しいだけでなく、感熱発色層の記録感度が低下する場合がある。紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセル、または紫外線吸収剤の固体微粒子は感熱発色層中に含有するより保護層中に含有させたほうが、より有効に耐光性を改善することができる。
本発明で用いる紫外線吸収剤のマイクロカプセルは、各種公知の方法で調製することができ、一般には上記の常温で固体乃至液体の紫外線吸収剤を必要に応じて有機溶剤に溶解して得た芯物質(油性液)を水性媒体中に乳化分散し、油性液滴の周りに高分子物質からなる壁膜を形成する方法によって調製される。マイクロカプセルの壁膜となる高分子物質の具体例としては、例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体樹脂、スチレン−アクリレート樹脂、ゼラチン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらのうちでも、特にポリウレタン−ポリウレア樹脂、或いはアミノアルデヒド樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、耐熱性に優れるため、サーマルヘッドへのスティッキングを防止する目的で感熱発色層中、或いは保護層中に添加される無機顔料の機能をも果たすという優れた付随効果を発揮し、しかも、他の壁膜からなるマイクロカプセルや通常の顔料に比較して屈折率が低く、且つ形状が球形であるため、保護層中に多量に添加しても光の乱反射に起因する濃度低下を招く恐れがないので好ましく用いられる。
本発明で使用する紫外線吸収剤を内包するマイクロカプセルとは、紫外線吸収剤が液体部分として芯物質となっており、カプセル壁材によって保護されているものであり、染料前駆体が高分子物質と固溶体状態で存在していると考えられる染料前駆体を含有する複合微粒子とは、その存在状態、形状、望まれる機能は全く異なっている。
本発明においては、感熱発色層や保護層に蛍光増白剤を添加することも耐光性改善効果があり、好ましく使用できる。蛍光増白剤は紫外線領域の光を吸収し、より長波長の可視光領域の光を放出する作用があるため増白剤として広く用いられている。本発明で使用する複合微粒子中に含有させた染料前駆体は、エネルギーの高い紫外線領域の光で分解し黄変し易い性質を持つが、蛍光増白剤によって紫外線をより無害な長波長領域の光に変化させることで、黄変を防止できるだけでなく、白色度に対する効果も得ることができる。また印字部の光による消色も蛍光増白剤を含有させることで改善できる。
本発明で使用できる蛍光増白剤としては、例えば、ピレン、クマリン、オキサゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾール、ベンジジン、ジアミノカルバゾール、ナフタール酸、ジアミノスチルベンジスルホン酸の誘導体を挙げることができる。より具体的には、1,2−ビス(5−メチルオキサゾール−2−イル)エチレン、β,4−ビス(5−メチルオキサゾール−2−イル)−スチレン、3−エチルオキシカルボニル−7,8−ベンゾクマリン、N−メチル−4−メトキシナフタレン−1,8−ジカルボン酸イミド、4−〔3−(4−クロロフェニル)−5−フェニル−1−ピラゾリン−1−イル〕−ベンゼンスルホン酸ソーダ、1,2−ビス〔4−(フェニルアミノカルボニルアミノ)−2−ソジウムオキシスルホニルフェニル〕エチレン、1,2−ビス{4−〔2−(p−ソジウムオキシスルホニルアニリノ)−4−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−6−イル〕アミノ−2−ソジウムオキシスルホニルフェニル}エチレン等が挙げられる。これらの化合物のなかでも、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体である1,2−ビス{4−〔2−(p−ソジウムオキシスルホニルアニリノ)−4−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−6−イル〕アミノ−2−ソジウムオキシスルホニルフェニル}エチレンが塗液調製時の取り扱いの容易さの観点からも好ましい。
蛍光増白剤の添加量については特に限定するものではないが、感熱発色層の全固形分に対して0.5〜15質量%程度が好ましい。特に好ましくは、1〜10質量%の範囲となるように調節する。0.5質量%よりも少ない場合は充分な効果が得られず、10質量%より多くすると蛍光増白剤自身の色により地肌が着色し自然紙感の乏しい感熱記録材料となるため好ましくない。
本発明においては、支持体の感熱発色層が設けられていない面上、或いは支持体と感熱発色層の間に磁気記録層を設けることもできる。磁気記録層は、従来から磁気乗車券、プリペイドカード、磁気定期券などに使用されている磁気記録層を使用することができる。磁気記録層は、支持体と感熱発色層の間に設ける場合は当然として、支持体の感熱発色層が設けられていない面に設ける場合においても、感熱発色層を塗工する前に塗工することが感熱発色層の白色度を高く保つために望ましい。
本発明においては、従来より公知の感熱記録材料に使用されている下塗り層も利用することができる。特に紙を支持体とした場合は、下塗り層を設けることが望ましい。下塗り層に、シリカ、焼成カオリン等の空隙率の高い顔料を使用することにより、感熱発色層の発色感度を上げることができる。また下塗り層中にプラスチックピグメント、中空粒子、発泡体等を含有させることもその上に形成される感熱発色層の発色感度向上に効果がある。
本発明においては、感熱発色層の上に従来より公知の感熱記録材料に使用されているような水溶性高分子材料と顔料を含有する保護層を設けることが望ましい。水溶性高分子材料、及び顔料としては、感熱発色層で例示したような材料を使用することができる。このとき架橋剤を添加して、保護層に耐水性を付与することがより望ましい。
このような保護層は、乾燥後の塗工量が0.5〜10g/m2となるように感熱発色層上に塗工される。より好ましくは1〜5g/m2となるように塗工する。
本発明では、電子線や紫外線で硬化した樹脂層を感熱発色層上、或いは保護層上に設けることもできる。電子線で硬化した樹脂の例としては、特開昭58−177392号公報、特開昭58−177392号公報等に記載がある。このような樹脂中に、非電子線硬化樹脂、顔料、及び消泡剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤等の添加剤を適宜添加することもできる。特に、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の顔料や、ワックス類、シリコン等の滑剤を添加することは、サーマルヘッドに対するスティッキング防止に役立つため好ましい。
電子線や紫外線で硬化した樹脂層は、乾燥後の塗工量が0.5〜10g/m2となるように塗工される。より好ましくは1〜5g/m2となるように塗工する。
本発明においては、感熱記録材料をUVインキ、フレキソインキ等で印刷することもできる。この場合、印刷は、感熱発色層、保護層、電子線硬化樹脂層、或いは紫外線硬化樹脂層等、どの層の上に印刷してもかまわない。
本発明に用いられる支持体の種類、形状、寸法等には、格別の限定はなく、例えば上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等も適宜選択して使用することができる。磁気乗車券用途に本発明を使用する場合は、紙を使用することが望ましいが、プリペイドカード、或いは磁気定期券用途として本発明を使用する場合は、厚さ100μm以上のポリエチレンテレフタレートからなるプラスチック基材、特に発泡基材を使用することが感熱発色感度の点から望ましい。勿論、発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムと発泡していないポリエチレンテレフタレートフィルムとのラミネート基材等を使用することもできる。
本発明においては、感熱記録材料の付加価値を高めるために、これに更に加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録材料とすることができる。例えば、裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙とすることができる。特に、本発明の感熱記録材料に粘着加工を施したものはその保存性の良さから感熱ラベルとして有用である。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼログラフィー用紙としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。もちろん両面感熱記録材料とすることもできる。
支持体上に上記各層を形成する方法としては、エアーナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、記録材料裏面からの油や可塑剤の浸透を抑制したり、またはカールコントロールのためにバック層を設けることもできる。
感熱記録面をスーパーカレンダーやソフトカレンダー等の既知の平滑化方法を用いて平滑化処理することは、その発色感度を高める事に効果がある。感熱記録面を、カレンダーの金属ロール及び弾性ロールのいずれに当てて処理してもよい。
以下に実施例を挙げて本発明の感熱記録材料をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、複合粒子及び保護層に配合する顔料の体積平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000(島津製作所社製)を用いて測定し、呈色剤の体積平均粒子径は動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500(堀場製作所社製)で測定した。
実施例1
・A液(複合微粒子分散液)の調製
ロイコ染料として、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン9部、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン9部と、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン5部とを、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(商品名:デスモジュールW、住化バイエルウレタン社製)5部、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネート(登録商標)TMXDI、三井化学ポリウレタン社製)15部からなる混合溶媒に加熱溶解(150℃)し、この溶液をポリビニルアルコール(商品名:ポバール(登録商標)PVA−217EE、クラレ社製)8.5部と、界面活性剤としてアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(商品名:オルフィン(登録商標)E1010、日信化学社製)0.5部を含む水溶液100部に徐々に添加し、ホモジナイザーを用いて、回転数10000rpmの攪拌によって乳化分散した。この乳化分散液に、水30部、多価アミン化合物(商品名:jERキュア(登録商標)T、ジャパンエポキシレジン社製)3部を水22部に溶解した水溶液を加えて均一化した。この乳化分散液を75℃に昇温し、7時間の重合反応を行い、体積平均粒子径0.8μmのロイコ染料含有複合微粒子分散液を調製し、固形分濃度が25%となるように水で希釈した。
・B液(呈色剤混合分散液)の調製
4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール22部、4,4’−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン13部、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン5部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部からなる組成物を、ウルトラビスコミルを用いて体積平均粒子径が0.28μmとなるまで粉砕して呈色剤混合分散液B液を得た。
・C液(呈色剤分散液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部からなる組成物を、ウルトラビスコミルを用いて体積平均粒子径が0.80μmとなるまで粉砕して呈色剤分散液C液を得た。
・D液(赤発色系染料前駆体分散液)の調製
3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7フェノキシフルオラン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が0.7μmとなるように粉砕、分散し、赤発色系染料前駆体分散液D液を得た。
・E液(増感剤分散液)の調製
1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が1.0μmとなるように粉砕、分散し、増感剤分散液E液を得た。
・第1感熱発色層用塗液の調製
D液45部、SBRラテックス(商品名;L1571、旭化成製、固形分濃度48%)30部、15%ポリビニルアルコール水溶液(商品名:ポバール(登録商標)PVA−105、クラレ社製)30部、C液90部、E液23部、10%界面活性剤水溶液(商品名;SNウェットOT−70、サンノプコ製)5部、及び水79部からなる組成物を混合撹拌して第1感熱発色層用塗液を得た。
・第2感熱発色層用塗液の調製
A液100部、B液110部、ポリウレタン系アイオノマーとスチレン−ブタジエン系樹脂のハイブリッド樹脂(商品名:パテラコールH2090、大日本インキ化学工業社製、固形分濃度41%)60部、1.5%界面活性剤水溶液(商品名:メガファックF444、大日本インキ化学工業製)10部、及び水109部からなる組成物を混合攪拌して第2感熱発色層用塗液を得た。
・F液(カオリン分散液)の調製
カオリン(商品名:UW−90(登録商標)、エンゲルハード社製)80部、ポリアクリル酸ナトリウムの40%水溶液(商品名:アロンT−50、東亞合成社製)1部、及び水53部を混合し、サンドミルを用いて体積平均粒子径が1.6μmとなるまで粉砕してカオリン分散液F液を得た。
・G液(焼成カオリン分散液)の調製
焼成カオリン(商品名:アンシレックス(登録商標)93、エンゲルハード社製)100部、ポリ(アクリル酸−スチレン−マレイン酸)ナトリウムの40%水溶液(商品名:ポイズ520、花王社製)2.5部、及び水147.5部を強い撹拌により混合し、焼成カオリン分散液G液を得た。
・保護層用塗液の調製
アイオノマー型ウレタン系樹脂ラテックス(商品名:ハイドラン(登録商標)AP−30F、大日本インキ化学工業社製、固形分濃度20%)100部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマー(登録商標)Z−410、日本合成化学工業社製、重合度:約2300、鹸化度:約98モル%)の8%水溶液650部、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリンの25%水溶液5部、F液28部、G液3.75部、ステアリン酸アミド(商品名:ハイミクロンL−271、中京油脂社製、固形分濃度25%)18部、ステアリルリン酸エステルカリウム塩(商品名:ウーポール1800、松本油脂製薬社製、固形分濃度35%)3部、パーフルオロアルキルアミドのエチレンオキシド付加物(商品名:サーフロン(登録商標)S−145、セイミケミカル社製)の10%水溶液6部、及び水490部からなる組成物を混合、攪拌して保護層用塗液を得た。
・感熱記録材料1の作製
合成紙(商品名:FPG−80、王子油化合成紙(株)社製、厚さ80μm)の片面上に、前記第1感熱発色層用塗液をスロットダイコーターを用いて、乾燥後の塗布量が4g/m2となるように塗布乾燥して、第1感熱発色層を設け、その上に前記第2感熱発色層用塗液をスロットダイコーターを用いて、乾燥後の塗布量が8g/m2となるように塗布乾燥した。さらに、前記保護層用塗液をスロットダイコーターを用いて、乾燥後の塗布量が3g/m2となるように塗布乾燥して保護層を設け、感熱記録材料1を得た。
実施例2
・感熱記録材料2の作製
実施例1のA液(複合微粒子分散液)調製において、ロイコ染料として、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン9部、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン9部の代わりに、3−(4−ジエチルアミノー2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド15部、3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド5部を用いた以外は、実施例1と同様にして、感熱記録材料2を得た。
実施例3
・感熱記録材料3の作製
実施例1の感熱記録材料1の作製において、第2感熱発色層用塗液をスロットダイコーターを用いて、乾燥後の塗布量が3g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料3を得た。
実施例4
・感熱記録材料4の作製
実施例1の感熱記録材料1の作製において、第2感熱発色層用塗液をスロットダイコーターを用いて、乾燥後の塗布量が15g/m2となるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料4を得た。
比較例1
・H液(黒発色系染料前駆体分散液)の調製
3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部を混合し、縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が0.7μmとなるように粉砕、分散し、黒発色系染料前駆体分散液H液を得た。
・第2感熱発色層用塗液の調製
H液45部、SBRラテックス(商品名;L1571、旭化成製、固形分濃度48%)30部、15%ポリビニルアルコール水溶液(商品名:ポバール(登録商標)PVA−105、クラレ社製)30部、C液90部、10%界面活性剤水溶液(商品名;SNウェットOT−70、サンノプコ製)5部、及び水79部からなる組成物を混合、撹拌して第2感熱発色層用塗液を得た。
・感熱記録材料5の作製
実施例1の感熱記録材料1の作製において、第2感熱発色層用塗液の代わりに、上記の第2感熱発色層用塗液を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料5を得た。
このようにして得られた5種類の感熱記録材料をスーパーカレンダーにて、感熱発色層側表面のベック平滑度(JIS−P8119)が1200〜1500秒となるように平滑化処理を行った。
・2色発色感熱記録材料の評価
実施例1〜4、及び比較例1の5種の2色発色感熱記録材料について、以下の評価を行い、その結果を(表1)に示した。
<静発色開始温度>
実施例1〜4、及び比較例1の5種の2色発色感熱記録材料について、第1、および第2感熱発色層それぞれ単層を、実施例1〜4、及び比較例1に記載のそれぞれの所定塗布量となるように合成紙(商品名:FPG−80、王子油化合成紙(株)社製、厚さ80μm)の片面上に、塗布乾燥し、静発色開始温度測定用シートを作成した。
熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、押圧9.8×104Pa、接触時間5秒間の条件で、第1感熱発色層については50〜90℃の範囲で、第2感熱発色層については80〜120℃の範囲で、10℃毎に発色させ、マクベス濃度計RD918(GretagMacbeth社製)を用いて、赤発色はマゼンタ、青発色はシアン、黒発色はヴィジュアルの各フィルターでそれぞれの温度における発色濃度を測定し、発色濃度が0.4を挟む温度の間で、線形補間を行って、発色濃度0.4に相当する温度を求め、静発色開始温度とした。
<色分離性の評価>
感熱印字試験装置TH−PMD(大倉電機製)、記録密度8dot/mmのサーマルヘッド(BHP4312WS、抵抗値767Ω、TDK社製)を用いて、1ライン記録時間:4.93msec/line、副走査線密度:8ライン/mm、ライン周期中4回に分けて印加パルスをドット当たり印加エネルギー:0.1mJ/1回の条件下に256ラインのベタ印字を施し、第1感熱発色層の発色色調である赤発色記録を行った。また、別に、1ライン周期あたりの繰り返しの印加を避け、一度の長い印加パルスで印画する条件、すなわち1ライン記録時間:4.93msec、副走査線密度:8ライン/mm、ドット当たり印加エネルギー:0.24〜0.73mJの条件下に印字を施し、第2感熱発色層の発色色調である黒及び青発色の階調記録を行った。
このようにして得られた各感熱記録材料の発色画像について、目視により、下記の基準で色分離性を評価した。
(1)第1感熱発色層については、
○;鮮明な赤発色である。
△;高階調で赤色に黒色がわずかに混じり、暗い赤発色であるが、実用上の問題はない。
×;赤色に黒色が混じり、アズキ色〜黒色であり、実用上、問題である。
(2)第2感熱発色層については、
・実施例1、3、4、比較例1の発色レベル
○;白から黒の階調発色が得られる。
△;低階調で黒色に赤色がやや混じり、薄いアズキ色〜黒色であるが、実用上の問題はない。
×;低階調で黒色に赤色が混じり、アズキ色〜黒色であり、実用上、問題である。
・実施例2の発色レベル
○;白から青の階調発色が得られる。