JP4190802B2 - Sn−Ti複合体、その製造方法並びにそれを使用したNb3Sn超電導線の先駆体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部拡散法によるNb3Sn超電導線の先駆体に用いられるSn−Ti線状体及び複合体、これらの製造方法並びにこれらを使用したNb3Sn超電導線の先駆体に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導線材の製造方法として、Cuマトリックス中央部にSn基金属材を、その周囲にNb基金属フィラメントを配置した複合体を加工後、熱処理して線材内部にNb3Sn化合物を生成させる内部拡散法が知られている。
図11及び図12はそれぞれ、従来の内部拡散法によりNb3Sn超電導線の製造に用いられる先駆体の横断面及び複数本の先駆体を組み合わせたNb3Sn超電導線の先駆体を示す図である。
図11において、16は超電導線の先駆体であり、8はCuマトリックス、15はCuマトリックス8の中央部に埋設されたSn基金属材、7はNb基金属フィラメントである。
図12において、17は複数本の先駆体16を組み合わせたNb3Sn超電導線の先駆体、16は図11に示した超電導線の先駆体、10は複数本の先駆体16の外周に設けられたTaなどの障壁材、11は障壁材の外周に設けられたCuからなる安定化材である。
図12に示した超電導線の先駆体は、以下のように製造される。まず、Nb基金属フィラメントをCuマトリックス管に挿入し、ある径まで断面減少加工をして線状体を得る。この線状体を適当な長さに裁断し、Cuマトリックス容器中に複数本充填する。ただし、中央部にはCuマトリックス棒又は複数のCuマトリックス線などのCuマトリックス材を配置する。容器中の空気を排除し、蓋を溶接して密封し、押出加工した後、中心のCuマトリックス材を機械的に穿孔する。この孔にSn基金属材を挿入して、先駆体を得る。この先駆体を複数本組合せて、その周囲にTaなどの障壁材、さらにその周囲にCuなどの安定化材を被覆し、断面減少加工する。最終径にまで断面減少加工した後ツイスト加工して超電導線の先駆体を得る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように従来の内部拡散法における超電導線の先駆体は、Cuマトリックス中にNb基金属フィラメントとSn基金属材とが埋設された構造を有する。さらに、超電導特性の1つである臨界電流密度(Jc)を少しでも向上させるために、Sn基金属材にTiを添加したSn−Ti合金材を使用する方法(例えば、特開昭62−174354号公報)が提案されており、Sn基金属材のみを使用したNb3Sn超電導線に比べ超電導特性のより改善されたものが得られることが知られている。
しかし、ここで用いられるSn−Ti合金材を製造するに際し、Snの融点232℃とTiの融点1670℃との間に大きな差があること、また高温においてTiの酸化が著しいことのために、通常の溶融鋳造では未融解Ti及びTi酸化物が発生し、これらの合金中への混入により欠陥が生じるという問題があった。
【0004】
また、特公平6−76625号公報には、不活性ガス雰囲気下で、Snを600〜1750℃に加熱溶融し、これにSnの0.3〜6.5質量%のTiを添加して、500〜1750℃で、鋳鉄製又はステンレス製の鋳型に鋳造することにより、合金中の欠陥を減少させる方法が提案されている。
しかし、溶湯中にTiが不均一に分布するために、前記方法で得られたSn−Ti合金材では、0.6%ものTi含有量のばらつきがあり、合金中にSn−Ti化合物が不均一に存在する(図10参照)。その結果、Ti添加の効果が充分に発揮されず、超電導特性の1つである臨界電流密度の更なる向上が望めなかった。
【0005】
本発明は、製造が容易であり、併せて臨界電流密度を向上させることが可能な超電導線の先駆体を得るための、Sn−Ti線状体及び複合体並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、最大粒子径が10μm以下のTi粉末及びSnを配合してなる線状体をSn基材に設けられた縦孔に挿入してなるSn−Ti複合体を、超電導線の先駆体に用いることによって、超電導線の臨界電流密度を向上させることが可能であることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、最大粒子径が10μm以下であるTi粉末及びSnを配合してなるSn−Ti線状体を、Sn基材に設けられた縦孔に挿入してなるSn−Ti複合体である。
【0007】
更に、本発明は、前記Sn−Ti複合体と、Nb基金属フィラメントとを、Cuマトリックス中に、相互に接触しないように配置されたことを特徴とするNb3Sn超電導線材の先駆体である。
【0008】
更に、本発明は、Sn粉末及び最大粒子径10μm以下、Sn粉末に対して0.1〜5質量%のTi粉末を混合して、混合粉末にする工程、前記混合粉末を、所望の形状の金型に入れて成形し、焼結後、断面減少加工してSn−Ti線状体を得る工程、及び前記Sn−Ti線状体をSn基材に設けられた縦孔に挿入し、これを更に断面減少加工する工程を有するSn−Ti複合体の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のSn−Ti線状体及び複合体、これらの製造方法並びにこれらを使用したNb3Sn超電導線の先駆体について具体的に説明する。
なお、本発明で用いられる、例えば「A基金属」という表現は、A金属を主体とするものであって、純粋なものでも、また添加剤の加わったものであってもよいことを意味する。熱処理などの結果、該金属を基本金属として他の金属との間に合金又は金属間化合物を生成する場合があるので「A基金属」という表現が用いられる。
【0010】
実施の形態1.
(Sn−Ti線状体の調製)
Sn粉末と最大粒子径が10μm以下、Sn粉末に対して0.1〜5質量%のTi粉末を混合することにより、混合粉末を調製する。この際、混合手段としては、粉末を混合するための従来公知の方法を制限なく用いることができる。Sn粉末としては、Ti粉末との混合が良好に行えるものであればよく、好ましくは最大粒子径が10μm以下のSn粉末である。
以上のようにして得られるSn−Ti混合粉末を、例えば筒状の金型に入れて、100〜1000kg/cm2で加圧して成形することにより、Sn−Ti成形体が得られ、これを不活性ガス(例えば、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気中、約180〜200℃で焼結する。この焼結体を、断面減少加工することにより所望の外径に仕上げ、Sn−Ti線状体が得られる。
【0011】
実施の形態2.
(Sn−Ti線状体の調製)
1又は1以上の縦孔を有するSn基材(例えば、Snパイプ、Sn基材に複数の縦孔を穿孔したもの等)の縦孔に、最大粒子径10μm以下のTi粉末を100〜1000kg/cm2で圧入し、これを不活性ガス(例えば、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気中、約180〜200℃で焼結する。この焼結体を、断面減少加工することにより所望の外径に仕上げ、Sn−Ti線状体が得られる。
【0012】
実施の形態3.
(Sn−Ti線状体の調製)
Sn板上に設けられた1又は1以上の溝に、最大粒子径10μm以下のTi粉末を配置する。必要に応じて、配置したTi粉末上に加熱溶融したSnを滴下してもよい。次いで、この板の溝方向を軸としてロール巻き加工し、断面減少加工することにより所望の外径に仕上げた後、不活性ガス(例えば、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気中、約180〜200℃で焼結して、Sn−Ti線状体が得られる。
【0013】
実施の形態4.
(Sn−Ti線状体の調製)
溶解ルツボにSnを入れて、250〜300℃に加熱して、Sn溶湯を準備する。Sn溶湯に最大粒子径が10μm以下、Snに対して0.1〜5質量%のTi粉末を添加して攪拌後、すぐにこの溶湯を所望形状の鋳型に鋳込み、冷却、脱型する。これを断面減少加工することにより所望の外径に仕上げ、Sn−Ti線状体が得られる。
【0014】
実施の形態5.
(Sn−Ti線状複合体の調製)
Sn粉末と最大粒子径が10μm以下、Sn粉末に対して0.1〜5質量%のTi粉末を混合することにより、混合粉末を調製する。得られたSn−Ti混合粉末を、例えば筒状の金型に入れて、100〜1000kg/cm2で加圧して成形することにより、Sn−Ti成形体を得、これを不活性ガス(例えば、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気中、約180〜200℃で焼結する。得られた焼結体を必要に応じて断面減少加工し、1又は1以上の縦孔を有するSn基材(例えば、Snパイプ、Sn基材に複数の縦孔を穿孔したもの等)の縦孔に挿入し、更に断面減少加工することにより所望の外径に仕上げ、Sn−Ti線状複合体が得られる。
【0015】
実施の形態6.
(超電導線の先駆体の調製)
Cuマトリックス容器の中央部にCuマトリックス棒、それ以外の部分に複数本のNb基金属フィラメントを充填し、押し出し加工した後、前記のように得られるSn−Ti線状体及び複合体からなる群より選ばれた1種又は1種以上が挿入できるように、中心のCuマトリックス棒を機械的に穿孔し縦孔を設け、前記Sn−Ti線状体及び複合体を挿入して断面減少加工する。これを必要に応じて、複数本に切断して、組み合わせて用いてもよい。次いで、その周囲にTaなどの障壁材、更にその周囲にCuなどの安定化材を被覆し、断面減少加工して所望の外径に仕上げ、超電導線の先駆体が得られる。
【0016】
実施の形態7.
(超電導線の調製)
前記のようにして得られる超電導線の先駆体を、約600〜800℃で100〜200時間の熱処理をしてSnの拡散処理を行い、先駆体内のSnを拡散させてNbと反応させ、最終的にNb3Snを形成させて、Nb3Sn超電導線を得ることができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0018】
実施例1(参考例)
(Sn−Ti線状体の調製)
最大粒子径10μm以下のSn粉末49質量部及び最大粒子径10μm以下のTi粉末1質量部を混合した。その混合粉末を内径Φ58mmの金型に入れ、700kg/cm2で成形し、外径Φ58mm、長さ200mmのSn−Ti成形体を得た。これを窒素ガス雰囲気下、180℃で焼結した後、断面減少加工により外径Φ20mmに仕上げ、図1の如きSn−Ti線状体を得た。このSn−Ti線状体中のTi含有量をICP発光分析法により測定したところ、Ti含有量は1.8〜2.1質量%の範囲であり、0.3質量%と小さなばらつきであった。
(超電導線の先駆体の調製)
Cuマトリックス容器の中央部にCuマトリックス棒、それ以外の部分に200本のNb基金属フィラメントを充填し、押し出し加工した後、中心のCuマトリックス棒を機械的に穿孔し、孔径Φ20mmの縦孔を設けた。この孔に前記のようにして得たSn−Ti線状体を挿入して断面減少加工し、図8の如き超電導線の先駆体を得た。この先駆体を7本に切断し、これらを組み合わせて、その周囲にTa障壁材、さらにその周囲にCu安定化材を被覆し、断面減少加工して、外径Φ0.9mmに仕上げ、図9の如き7本の先駆体を組み合わせたNb3Sn超電導線の先駆体を得た。
(超電導線の調製とJc値測定)
得られた先駆体を、約670℃で200時間加熱してSnの拡散処理を行い、先駆体内のSnを拡散させてNbと反応させ、最終的にNb3Snを形成させて、Nb3Sn超電導線を得た。
この超電導線を液体ヘリウム(4.2K)、外部磁場12T中で、臨界電流密度Jcを測定した。その結果、本発明の先駆体を用いたNb3Sn超電導線は、臨界電流密度810A/mm2を示した。また、安定化Cuの割合は65%であった。
【0019】
実施例2(参考例)
最大粒子径10μm以下のTi粉末50質量部を、外径Φ58mm、内径Φ10mmのSnパイプに700kg/cm2で圧入し、続いて断面減少加工により外径Φ20mmに仕上げ、図2の如きSn−Ti線状体を得た。このSn−Ti線状体の単位断面積当たりのTi含有量を測定したところ、Ti含有量は1.8〜2.1質量%の範囲であり、0.3質量%と小さなばらつきであった。
得られたSn−Ti線状体を用いて、実施例1と同様にしてNb3Sn超電導線の先駆体を調製し、熱処理を施して超電導線を得た。得られたNb3Sn超電導線の臨界電流密度を測定したところ、803A/mm2であった。
【0020】
実施例3(参考例)
7本の縦孔(孔径Φ4mm)を設けたSn基材の縦孔に、最大粒子径10μm以下のTi粉末50質量部を700kg/cm2でそれぞれ圧入し、続いて断面減少加工により外径Φ20mmに仕上げ、図3の如きSn−Ti線状体を得た。このSn−Ti線状体の単位断面積当たりのTi含有量を測定したところ、Ti含有量は1.8〜2.0質量%の範囲であり、0.2質量%と小さなばらつきであった。
得られたSn−Ti線状体を用いて、実施例1と同様にしてNb3Sn超電導線の先駆体を調製し、熱処理を施して超電導線を得た。得られたNb3Sn超電導線の臨界電流密度を測定したところ、820A/mm2であった。
【0021】
実施例4(参考例)
厚さ4mm×縦150mm×横1000mmのSn板の、横方向に一端から他端まで連続した幅10mm、深さ1.0mmの溝を7本設けた。最大粒子径10μm以下のTi粉末を、全溝の全長に渡って深さ0.3mmまで充填した(図4参照)、続いて加熱溶融したSnを、それぞれの溝に滴下して残りの深さを埋めた。次いで、この板の溝方向を軸としてロール巻き加工し、断面減少加工により外径Φ20mmにした後、窒素ガス雰囲気下、約180℃で焼結して、Sn−Ti線状体を得た。このSn−Ti線状体の単位断面積当たりのTi含有量を測定したところ、Ti含有量は1.7〜2.0質量%の範囲であり、0.3質量%と小さなばらつきであった。
得られたSn−Ti線状体を用いて、実施例1と同様にしてNb3Sn超電導線の先駆体を調製し、熱処理を施して超電導線を得た。得られたNb3Sn超電導線の臨界電流密度を測定したところ、804A/mm2であった。
【0022】
実施例5(参考例)
溶解ルツボにSnを49質量部入れ、280℃に加熱して、Sn溶湯を準備した。Sn溶湯に最大粒子径10μm以下のTi粉末を1質量部添加し、チタン製の棒で攪拌後、すぐに内径Φ30mm×長さ200mmの鋳型に鋳込んだ。冷却後、脱型し、断面減少加工により外径Φ20mmに仕上げて、図5の如きSn−Ti線状体を得た。このSn−Ti線状体中のTi分析を行ったところ、Ti含有量は1.7〜2.0質量%の範囲であり、0.3質量%と小さなばらつきであった。
得られたSn−Ti線状体を用いて、実施例1と同様にしてNb3Sn超電導線の先駆体を調製し、熱処理を施して超電導線を得た。得られたNb3Sn超電導線の臨界電流密度を測定したところ、801A/mm2であった。
【0023】
実施例6
最大粒子径10μm以下のSn粉末47.3質量部及び最大粒子径10μm以下のTi粉末2.7質量部を混合した。その混合粉末を内径Φ58mmの金型に入れ、700kg/cm2で成形し、外径Φ58mm、長さ200mmのSn−Ti成形体を得た。これを窒素ガス雰囲気下、180℃で焼結した後、断面減少加工により外径Φ30mmにし、Snパイプに挿入した。更に断面減少加工により外径Φ20mmに仕上げ、図6の如きSn−Ti線状複合体を得た。このSn−Ti線状複合体の単位断面積当たりのTi含有量を測定したところ、Ti含有量は1.9〜2.1質量%の範囲であり、0.2質量%と小さなばらつきであった。
得られたSn−Ti線状複合体を用いて、実施例1と同様にしてNb3Sn超電導線の先駆体を調製し、熱処理を施して超電導線を得た。得られたNb3Sn超電導線の臨界電流密度を測定したところ、816A/mm2であった。
【0024】
実施例7
最大粒子径10μm以下のSn粉末47.3質量部及び最大粒子径10μm以下のTi粉末2.7質量部を混合した。その混合粉末50質量部を内径Φ58mmの金型に入れ、700kg/cm2で成形し、外径Φ58mm、長さ200mmのSn−Ti成形体を得た。前記操作を繰り返し行い合計7本の成形体を作製した。これらを窒素ガス雰囲気下、180℃で焼結した後、それぞれ断面減少加工して外径Φ10mmのSn−Ti線状体を得た。次いで、7本の縦孔(孔径Φ10mm)を設けたSn基材の縦孔に、前記のようにして得た線状体をそれぞれ挿入した。更に断面減少加工により外径Φ20mmに仕上げ、図7の如きSn−Ti線状複合体を得た。このSn−Ti線状複合体の単位断面積当たりのTi含有量を測定したところ、Ti含有量は2.0〜2.1質量%の範囲であり、0.1質量%と小さなばらつきであった。
得られたSn−Ti線状複合体を用いて、実施例1と同様にしてNb3Sn超電導線の先駆体を調製し、熱処理を施して超電導線を得た。得られたNb3Sn超電導線の臨界電流密度を測定したところ、835A/mm2であった。
【0025】
【発明の効果】
請求項1の発明は、最大粒子径が10μm以下であるTi粉末及びSnを配合してなるSn−Ti線状体を、Sn基材に設けられた1又は1以上の縦孔に挿入してなるSn−Ti複合体であるので、これをNb3Sn超電導線材の先駆体に用いることにより、超電導線の臨界電流密度を向上させることができる。
【0026】
請求項2の発明は、前記Sn−Ti線状体が、前記Ti粉末とSn粉末とを混合して調製されるものであるので、Ti含有量のばらつき範囲を更に小さくすることができ、これをNb3Sn超電導線材の先駆体に用いることにより、超電導線の臨界電流密度をより一層向上させることができる。
【0027】
請求項3の発明は、前記Sn−Ti線状体が、溶融Snに前記Ti粉末を攪拌下に混合して調製されるものであるので、これをNb3Sn超電導線材の先駆体に用いることにより、超電導線の臨界電流密度を向上させることができる。
【0029】
請求項4の発明は、前記Sn−Ti線状体が、Sn板上に設けられた溝に、前記Ti粉末を配置した後、該Sn板をロール巻き加工して調製されるものであるので、これをNb3Sn超電導線材の先駆体に用いることにより、超電導線の臨界電流密度を向上させることができる。
【0030】
請求項5の発明は、前記Sn−Ti線状体におけるTi含有量が、0.1〜5質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載のSn−Ti複合体であるので、これをNb3Sn超電導線材の先駆体に用いることにより、Ti添加の効果が充分に発揮され、超電導線の臨界電流密度を更に向上させることができる。
【0032】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のSn−Ti複合体と、Nb基金属フィラメントとを、Cuマトリックス中に、相互に接触しないように配置されたことを特徴とするNb3Sn超電導線材の先駆体であるので、内部拡散法によるNb3Sn超電導線材に使用した場合に、優れた超電導特性を示す。
【0033】
請求項7の発明は、請求項6に記載のNb3Sn超電導線材の先駆体をさらに障壁材と安定化材で囲むことを特徴とするNb3Sn超電導線材の先駆体であるので、内部拡散法によるNb3Sn超電導線材に使用した場合に、電気的、熱的な処理に対して優れた安定性を示す。
【0034】
請求項8の発明は、Sn粉末及び最大粒子径10μm以下、Sn粉末に対して0.1〜5質量%のTi粉末を混合して、混合粉末にする工程、前記混合粉末を、所望の形状の金型に入れて成形し、焼結後、断面減少加工してSn−Ti線状体を得る工程、及び前記Sn−Ti線状体をSn基材に設けられた縦孔に挿入し、これを更に断面減少加工する工程を有するSn−Ti複合体の製造方法であるので、Ti含有量のばらつきが小さく、製造の容易なNb3Sn超電導線材の先駆体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1によるSn−Ti線状体の横断面を示したものである。
【図2】 本発明の実施例2によるSnパイプにTi粉末を圧入したSn−Ti線状体の横断面図を示したものである。
【図3】 本発明の実施例3によるSn基材に設けた複数の縦孔にTi粉末を圧入したSn−Ti線状体の横断面図を示したものである。
【図4】 本発明の実施例4によるSn板に設けた複数の溝にTi粉末を配置したSn板の横断面図を示したものである。
【図5】 本発明の実施例5によるSn溶湯にTi粉末を添加して攪拌し、鋳型に鋳込み、冷却後、脱型して得られたSn−Ti線状体の横断面を示したものである。
【図6】 本発明の実施例6によるSn−Ti線状体をSnパイプに挿入したSn−Ti線状複合体の横断面図を示したものである。
【図7】 本発明の実施例7によるSn基材に設けた複数の縦孔にSn−Ti線状体を挿入したSn−Ti線状複合体の横断面図を示したものである。
【図8】 本発明のNb3Sn超電導線材の先駆体の横断面図を示したものである。
【図9】 本発明の複数本の先駆体を組み合わせたNb3Sn超電導線の先駆体の横断面図を示したものである。
【図10】 従来のSn−Ti溶湯を鋳造したSn−Ti合金材の断面図を示したものである。
【図11】 従来のNb3Sn超電導線材の先駆体の横断面図を示したものである。
【図12】 従来の複数本の先駆体を組み合わせたNb3Sn超電導線の先駆体の横断面図を示したものである。
【符号の説明】
1 Sn粉末、2 Ti粉末、3 Sn−Ti線状体、4 Sn基材、5 Sn板、6 Snマトリックス、7 Nb基金属フィラメント、8 Cuマトリックス、9 本発明のNb3Sn超電導線の先駆体、10 障壁材、11 安定化材、12 本発明の複数本の先駆体を組み合わせたNb3Sn超電導線の先駆体、13 Sn−Ti化合物、14 従来の溶融鋳造法により得られたSn−Ti合金材、15 Sn基金属材、16 従来のNb3Sn超電導線の先駆体、17従来の複数本の先駆体を組み合わせたNb3Sn超電導線の先駆体。
Claims (8)
- 最大粒子径が10μm以下であるTi粉末及びSnを配合してなるSn−Ti線状体をSn基材に設けられた縦孔に挿入してなるSn−Ti複合体。
- 前記Sn−Ti線状体は、前記Ti粉末とSn粉末とを混合して調製されることを特徴とする請求項1に記載のSn−Ti複合体。
- 前記Sn−Ti線状体は、溶融Snに前記Ti粉末を攪拌下に混合して調製されることを特徴とする請求項1に記載のSn−Ti複合体。
- 前記Sn−Ti線状体は、Sn板上に設けられた溝に、前記Ti粉末を配置した後、該Sn板をロール巻き加工して調製されることを特徴とする請求項1に記載のSn−Ti複合体。
- 前記Sn−Ti線状体におけるTi含有量が、0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のSn−Ti複合体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のSn−Ti複合体と、Nb基金属フィラメントとを、Cuマトリックス中に、相互に接触しないように配置したことを特徴とするNb3Sn超電導線材の先駆体。
- 請求項6に記載のNb3Sn超電導線材の先駆体をさらに障壁材と安定化材で囲むことを特徴とするNb3Sn超電導線材の先駆体。
- Sn粉末及び最大粒子径10μm以下、Sn粉末に対して0.1〜5質量%のTi粉末を混合して、混合粉末にする工程、前記混合粉末を、所望の形状の金型に入れて成形し、焼結後、断面減少加工してSn−Ti線状体を得る工程、及び前記Sn−Ti線状体をSn基材に設けられた縦孔に挿入し、これを更に断面減少加工する工程を有することを特徴とするSn−Ti複合体の製造方法。
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