JP2004192972A - Nb3Sn系超電導線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価に且つ品質の安定した超電導線を提供する。
【解決手段】本発明の超電導線の製造方法は、ブロンズ溶湯(1)から鋳造法によって所定のパイプ形状に成形されたブロンズパイプ(8a)を用いるもので、該ブロンズパイプの内径(d1)と外径(D1)との寸法比が0.6〜0.95であり、この中に、予め成形された多数のニオブ芯線(16)を配置して複合線素材(17)を形成し、該複合線素材に所定の減面加工を行った後に所定の拡散熱処理を施す事により、錫とニオブとを反応させてNb3Sn系超電導金属間化合物を生成させてNb3Sn系超電導線を製造するものである。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の超電導線の製造方法は、ブロンズ溶湯(1)から鋳造法によって所定のパイプ形状に成形されたブロンズパイプ(8a)を用いるもので、該ブロンズパイプの内径(d1)と外径(D1)との寸法比が0.6〜0.95であり、この中に、予め成形された多数のニオブ芯線(16)を配置して複合線素材(17)を形成し、該複合線素材に所定の減面加工を行った後に所定の拡散熱処理を施す事により、錫とニオブとを反応させてNb3Sn系超電導金属間化合物を生成させてNb3Sn系超電導線を製造するものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導マグネット装置等に使用されるNb3Sn系超電導線の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Nb3Sn系超電導線は代表的な超電導線であり、その製造法としては、高錫濃度のブロンズ材で形成したパイプ内にニオブ(Nb)芯材を配置し、これを所定の細線に減面加工する方法である。
【0003】
この製法に使用するブロンズパイプの製造方法としては、鋳造法が一般的である。即ち、真空中或いは酸化防止材を使って大気中で誘導加熱法等によって溶解された高錫ブロンズを、所定の鋳型に注入・冷却して円柱状のビレットを形成した後、このビレットを切削加工してパイプ状に形成するものである。係る鋳造法によるブロンズパイプの製法では、中実のビレットを切削加工してパイプ状に成形する関係上、当然ながら歩留りが非常に低下する問題がある。
【0004】
又、従来の鋳造品の本質的な欠点として、溶湯の冷却工程における冷却速度の不均一性は避けられず、このため、錫の偏析や残留ガスや引けによるボイド(空隙)等の鋳造欠陥の発生は不可避であった。この鋳造欠陥を有するままで伸線して超電導線を形成すると、伸線加工工程で断線が生じたり、超電導特性の低下をもたらす問題がある。
【0005】
そこで、係る鋳造欠陥を除去するために、鋳造されたブロンズビレットをHIP処理する方法(特許文献1参照)や、特殊な均質化熱処理を施して錫偏析を抑制する方法(特許文献2参照)が提案されている。更に、鋳造欠陥除去と加工歩留りの向上を狙った改善策として、連続してブロンズの溶解とニオブの挿入とを行う特殊な装置も提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−120257号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−77848号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平11−250747号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の方法では、基本的に錫の偏析や鋳造欠陥を有するブロンズを後処理によって品質改善を図るものであるから、そのための工数と費用とを要し、しかも完全な欠陥除去は困難である。加えて、HIP処理や特殊な熱処理を長時間に亘って行う等により、必然的に製造コストの大幅な上昇が不可避であった。
【0008】
一方、特許文献3の方法は、鋳造欠陥除去と加工歩留りの向上という面では改善されているが、設備が非常に大掛かりとなるのみならず、複雑な制御が必要となるため、実用面では問題があった。
【0009】
本発明は、係る従来鋳造法の持つ欠点を根本的に解消し、安価で且つ品質の安定したブロンズパイプを提供し、以て、安価に且つ品質の安定した超電導線を得る事のできる超電導線の製造方法を提供する事を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであって、その最大の特徴とするところは、鋳造法によってブロンズビレットを製造するのではなく直接所定のパイプ状に成形すると共に、従来の鋳造品の欠点である錫偏析や鋳造欠陥の問題を引き起こす冷却速度不均一性を解消するために、所定の内外径比のブロンズパイプに成形した鋳造ブロンズパイプを用いる点にある。即ち、高錫ブロンズ溶湯から所定の内外径寸法比のブロンズパイプに直接成形する事によって冷却速度を高めて鋳造欠陥の殆どない高品質の高錫ブロンズパイプを成形し、これを用いてNb3Sn系超電導線を製造するものである。
【0011】
具体的には、ブロンズ溶湯から鋳造法によって所定形状に成形され且つその内径と外径との寸法比が0.6〜0.95である第1ブロンズパイプ内に、予め成形された多数のニオブ芯線を配置して複合線素材を形成し、該複合線素材に所定の減面加工を行った後に所定の拡散熱処理を施して、該複合線素材中の錫とニオブとを反応させてNb3Sn系超電導金属間化合物を生成させるものである。
【0012】
尚、上記ニオブ芯線も、上述の要領で形成された第2ブロンズパイプ内にニオブ芯を挿入して所定の減面加工を施す事によりニオブ芯線素材を形成し、このニオブ芯線素材の複数本を、同様の要領で形成された第3ブロンズパイプ内に挿入して所定の減面加工を施して形成されたものであるのが好ましい。
【0013】
又、本発明で使用する鋳造法としては、高い冷却速度が得やすい連続鋳造法又は遠心鋳造法が好ましい。
【0014】
更に、高錫ブロンズの組成としては、錫含有量が10〜20重量%の高錫ブロンズが好ましく、又、これにチタン又はタンタルのいずれか一方又は双方を、合計で0.1〜10重量%含有するものも好ましい合金組成である。
【0015】
又、前記第1〜第3ブロンズパイプの内径部と外径部の錫の偏析が10%以内となる様に、冷却速度を高めに制御するのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を、図面の実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のNb3Sn系超電導線の製造方法に使用するブロンズパイプを連続鋳造法によって製造するための連続鋳造装置の概念図であり、同図において、所定の高錫ブロンズの溶湯1が溶湯鍋2の側部に形成されているノズル部3から連続的に排出される様になっており、該ノズル部3には、黒鉛製のダイス4が、前記溶湯鍋2を収容する枠体5の側壁を貫通して配置されており、該黒鉛ダイス4の外周面は水冷装置6により水冷されている。又、前記黒鉛ダイス4は、内径を規制する内側ダイス4aと、外径及び肉厚を規制する外側ダイス4bとからなっている。
【0017】
係る装置を用いて前記ブロンズパイプを製造するには、先ず、誘導炉等によって所定のブロンズ溶湯1を調整し、これを前記溶湯鍋2内に投入し、常法に従って、連続鋳造法により連続ブロンズパイプ8を製造する。即ち、溶湯1は、内側ダイス4aと外側ダイス4bとで規制された環状空間部4cを通過する間に冷却されて連続したパイプ状に成形され、複数対の引出しロール7によって連続的又は間欠的に所定の速度で引き出されて連続ブロンズパイプ8となる。この連続ブロンズパイプ8は、カッター9により所定寸法に切断されて、本発明で使用するブロンズパイプ8aとなる。
【0018】
ここで、本発明においては、製造されるブロンズパイプ8aの品質を従来の鋳造品とは異ならしめ、高品質のブロンズパイプとなす必要上、溶湯1は速やかに冷却される事が肝要である。そこで、前記黒鉛ダイス4の外周部に配置された水冷装置6により、該黒鉛ダイス4の冷却を通して前記環状空間部4c内の溶湯及び半凝固状態のブロンズの冷却速度を高める事は勿論、該ダイス4から引き出された後の連続ブロンズパイプ8の冷却も速やかに行わねばならない。このためには、本発明の連続ブロンズパイプ8の内径d1と外径D1との寸法比(d1/D1)の価を、0.6〜0.95の範囲に設定されている。この寸法比が、0.6未満では、該ブロンズパイプ8の肉厚が厚くなり過ぎて冷却特性が低下し、所期の品質が得られない可能性が高くなり、一方、前記寸法比が0.95より大きいと、ブロンズパイプ8aの肉厚が薄くなり過ぎて以後の減面成形に支障をきたす虞れがある。
【0019】
係る適正な内外径寸法比に設定されていると、前記引出しロール7によって引き出された連続ブロンズパイプ8は、速やかに且つ均一に冷却される結果、従来の鋳造法によって形成されたものに比して、引張強さ,耐力,伸びが高くなり、又、凝固様式も単純なため、鋳造組織特有のガスや引けによる鋳造欠陥が極めて少なくなり、高品質のブロンズパイプが得られる事になる。特に、鋳造法によって直接パイプ状に成形しているので、パイプの内外両面からの同時冷却が可能となり、錫の逆偏析も抑制される事になると共に、後工程でニオブ等を内部に挿入するための穴加工が不要となり、ブロンズパイプ成形時の歩留りが飛躍的に向上し、コスト低減に大きく寄与する事になる。加えて、図示の如き連続鋳造法を採用すれば、略連続して所定寸法のブロンズパイプ8aを大量に生産する事も可能となり、生産性の向上にも大きく寄与する事になる。
【0020】
次に、ブロンズ溶湯1の組成について説明すると、錫含有量(重量%,以下同じ)は10〜20%が好ましく、10%以下では、従来の鋳造法によっても偏析を防止する事が可能であって本発明の利点が相対的に小さくなる。一方、20%を越えると、冷却速度を如何に改善しても冶金学的に固溶限を越えており、錫の偏析を抑制する事が困難となるからである。又、好ましい添加元素としては、チタン及びタンタルがあり、これらの添加は、高磁場領域における超電導特性を改善する効果があるが、この効果は、チタン及びタンタルの一方又は双方を合計で0.1%以上の添加で現れるが、10%を越える添加は、ブロンズパイプの加工性を悪化させるので好ましくない。従って、これらの添加は、0.1〜10%の範囲に抑える必要がある。
【0021】
又、以上は図1に示した連続鋳造法によるブロンズパイプの製造法についての説明であるが、本発明で使用するブロンズパイプの製造は、係る連続鋳造法に限定されるものではなく、パイプの製造法として一般に使用されている遠心鋳造法によっても製造可能である。要は、ビレットを鋳造法によって製造し、これを切削加工してブロンズパイプを製造するのではなく、溶湯から直接ブロンズパイプを製造する事ができ且つその冷却を速やかに行う事が可能なものであれば、パイプの製造法には囚われないが、実用上は、前記連続鋳造法と遠心鋳造法が好ましく、連続生産性を考慮すると、連続鋳造法が最も好ましい製造方法である。
【0022】
次に、上記連続鋳造法による高錫ブロンズパイプ8aの製造実施例について、図1に示した連続鋳造装置を参照しつつ説明する。
【0023】
〔実施例1:ブロンズパイプの製造〕
純銅,純錫,純チタンを、誘導炉によって1280℃で溶解し、錫14%,チタン0.3%を含有する高錫ブロンズ母合金の溶湯1を調整した。この溶湯1を溶湯鍋2に注入して、連続鋳造法により連続ブロンズパイプ8を製造し、続いて回転式カッター9によって1000mm毎に切断してブロンズパイプ8aを製造した。尚、使用した黒鉛ダイス4は、外径(D1)150mmφ,内径(d1)100mmφで、内外径寸法比(d1/D1)が0.67のブロンズパイプ8を製造できるものである。連続鋳造は、引出しストローク15mm,引出しサイクル8cm/分の条件で行い、黒鉛ダイス4の出口付近の外周部は、水冷装置6によって水冷した。
【0024】
上述の方法によって製造されたブロンズパイプと、従来法の真空溶解法によって溶解されて鋳造されたビレットを切削加工して成形されたブロンズパイプと、大気溶解法に溶解された溶解されて鋳造されたビレットを切削加工して成形されたブロンズパイプとの品質を比較した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上記表1から明らかな様に、ブロンズ特有の錫の逆偏析は、従来品に比して、1/2から1/3に減少しており、又、鋳造欠陥は、1/5から1/8程度にまで減少している。この事実は、本発明で使用するブロンズパイプは、従来法で使用されるブロンズパイプに比して、機械的強度が大きく向上している事を意味している。又、加工歩留りも、切削除去する部分の小さな本発明法では98%と高い値であるのに対し、従来法では、中心部をくり抜いてパイプ状に成形する関係から55%に留まっており、約1.8倍もの加工歩留りの向上を達成している。この事は、ブロンズパイプのコスト低減に大きく寄与するのみならず、最終製品としての超電導線のコスト低減にも大きく寄与する事が理解されよう。
【0027】
次に、上記ブロンズパイプ8aを用いて超電導線を製造する工程について、図2,3に示した超電導線の製造工程概念図を用いて説明する。先ず、図2は、ニオブ芯線の製造工程を示す概念図であり、同図(a)に示した工程では、従来の鋳造法等の適宜の方法で製造した高錫ブロンズビレット10に、複数のニオブ芯挿入孔13aを形成してブロンズ胴13を形成する。次に、同図(b)に示した工程では、ニオブ棒11を適当な寸法に切断して形成したニオブ芯12を成形する。該ニオブ芯12を前記ブロンズ胴13の前記ニオブ芯挿入孔13a内に挿入し、該ブロンズ胴13の両端部を適宜閉鎖して押出ビレットを形成し、これを常法に従って所定の減面率で押し出し及び伸線加工して、同図(c)に示した如き六角形状のニオブ芯線16を製造する。
【0028】
次に、図3は、上記ニオブ芯線16を用いて超電導線を製造する工程を示す概念図であり、同図(a)の工程では、前述の連続鋳造法によって製造された連続ブロンズパイプ8を、所定の長さに切断し、端面加工を施して第1ブロンズパイプ8aを形成する。同図(b)の工程では、前記第1ブロンズパイプ8a内に、前記図2に示した工程で製造された多数のニオブ芯線16を挿入配置する。このニオブ芯線を多数挿入された第1ブロンズパイプ8aの両端を常法に従って閉塞して複合線素材17を製造する。この複合線素材17を常法に従って所定の減面率で押出加工及び伸線加工を施した後に、拡散熱処理を施してブロンズ中の錫を拡散させてニオブと反応させ、Nb3Snを生成させて超電導線を製造する。
【0029】
尚、上記の説明において、図2では、ニオブ芯線16の製造に当り、通常の鋳造法によって製造したブロンズビレット10に、複数のニオブ芯挿入孔13aを形成してブロンズ胴13を形成し、このニオブ芯挿入孔13a内にニオブ芯12を挿入して所定の減面加工を行う事により、前記ニオブ芯線16を製造する方法を示しているが、ニオブ芯線16の製造方法の代替方法を、図4,5の概略工程図に示している。この方法は、先ず図4の(a)の工程では、前述の鋳造法によって、内外径寸法比(d2/D2)が前述の0.6〜0.95の範囲にある様に成形された細径の連続ブロンズパイプ8を所定の長さに切断して第2ブロンズパイプ8bを製作する。次に、同図(b)の工程では、図2で説明したニオブ芯12を製作し、同図(c)の工程では、該ニオブ芯12を前記第2ブロンズパイプ8b内に挿入してニオブ芯材14を製作し、次に、同図(d)の工程では、これを所定の減面加工を施してニオブ芯線素材15を製作する。
【0030】
次に、図5に示す如く、同図の(a)工程では、前述の鋳造法によって、内外径寸法比(d3/D3)が前述の0.6〜0.95の範囲にある様に成形された中径の連続ブロンズパイプ8を所定の長さに切断して第3ブロンズパイプ8cを製作する。次に、同図(b)の工程では、前記図4で製作したニオブ芯線素材15を、該第3ブロンズパイプ8c内に複数本挿入し、続いて同図(c)の工程では、これに所定の減面加工を施して、ニオブ芯線16を製造する。このニオブ芯線16を前述の第1ブロンズパイプ8a内に所定数配置し、前述の図3に示した工程によってNb3Sn系超電導線を製造する。
【0031】
即ち、図2の方法では、従来の鋳造法によって製造したブロンズパイプを用いているが、図4,5の方法では、全てのブロンズパイプを前述の本発明で使用する鋳造法によって製造している。従って、最外層に使用する第1ブロンズパイプ8aのみならず、内層側に使用する第2,第3ブロンズパイプ8b,8cにも前述の鋳造法により製造されたブロンズパイプを用いているので、最終工程における減面加工時の断線率を極めて低く抑える事が可能となる。
【0032】
次に、前記ブロンズパイプを用いた本発明による超電導線の製造実施例について説明する。
〔実施例2:超電導線の製造〕
前記実施例1で製造したブロンズパイプ8aの内部に、図3に示した如く、前記図2で説明した要領で製造されたニオブとブロンズの複合体からなるニオブ芯線16を44000本挿入配置し、その両端部に蓋部材を配置し、これを電子ビーム溶接によって閉塞して複合線素材17を製造した。次に、内部の空間をなくしてニオブ芯線16の充填率を高めるためHIP処理を行い、更に、その外周面にニオブの拡散防止材を設けた上に安定化のための無酸素銅を取り付けて押出ビレットを製作した。この押出ビレットに静水圧押出と伸線加工を施して、最終寸法が1.30mm×2.10mmの平角線を製造した。この平角線の断面写真を図6に示す。
【0033】
続いて、該平角線に拡散熱処理を施し、ブロンズ中の錫をニオブ中に拡散させてNb3Snを生成させる事によってNb3Sn系超電導線を製造した。上記本発明の方法によって製造されたNb3Sn系超電導線と、実施例1において比較のために製造した従来の鋳造法によるブロンズパイプを用いて同様の方法によって製造したNb3Sn系超電導線との品質及び超電導特性を比較した。その結果を表2に示す。
【0034】
表2から明らかな様に、上述した方法によって製造された錫の偏析や鋳造欠陥のないブロンズパイプを用いた本発明方法によるNb3Sn系超電導線は、その伸線過程での断線率が低下している。又、超電導特性についても、同一錫含有量では、製法によらず超電導線で必要とされる臨界電流及びn値において、略同一特性が得られている。しかしながら、特筆すべき事は、従来製法では、錫の偏析のために製造出来なかった高錫濃度のブロンズについても製造が可能となり、超電導特性の一層の向上が期待される。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
以上詳述した如く、本発明によれば、ニオブ芯線16を内部に配置するためのブロンズパイプ8aを、その内外径寸法比を所定の値に設定する事により、内外両面から急速且つ均一に冷却させて、鋳造欠陥や錫偏析の殆どない高品質のブロンズパイプを安定して安価に製造する事が可能となる。特に、錫偏析の生じ易い高錫濃度のブロンズにおいても、その偏析を最小限に抑制する事ができるので、錫拡散の均一化による安定したNb3Sn系超電導線を得る事が可能となる。
【0037】
又、連続鋳造法等により、ブロンズ溶湯から直接パイプ状に成形する方法を採用しているので、従来の切削加工法によってブロンズ内に貫通孔を形成する方法に比して材料の歩留りが大幅に向上し、ブロンズパイプの製造コストの大幅な低減が可能となる。
【0038】
又、係るブロンズパイプを用いてNb3Sn系超電導線を製造する事により、その伸線過程における断線もなく、得られた超電導線の特性にも問題はなく、安定した超電導線の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で使用するブロンズパイプの連続鋳造法による製造装置の概念図である。
【図2】図2は、超電導線製造用のニオブ芯線の製造工程を示す概念図である。
【図3】図3は、超電導線の製造工程を示す概念図である。
【図4】図4は、本発明で使用するブロンズパイプを用いたニオブ芯線製造工程の前工程を示す概念図である。
【図5】図5は、本発明で使用するブロンズパイプを用いたニオブ芯線製造工程の後工程を示す概念図である。
【図6】図6は、本発明方法に係る超電導線素線の断面写真である。
【符号の説明】
1 ブロンズ溶湯
2 溶湯鍋
4 黒鉛ダイス
6 水冷装置
7 引出しロール
8 連続ブロンズパイプ
8a 第1ブロンズパイプ
8b 第2ブロンズパイプ
8c 第3ブロンズパイプ
9 カッター
10 高錫ブロンズビレット
11 ニオブ棒
12 ニオブ芯
13 ブロンズ胴
13a ニオブ挿入孔
14 ニオブ芯材
15 ニオブ芯線素材
16 ニオブ芯線
17 複合線素材
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導マグネット装置等に使用されるNb3Sn系超電導線の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Nb3Sn系超電導線は代表的な超電導線であり、その製造法としては、高錫濃度のブロンズ材で形成したパイプ内にニオブ(Nb)芯材を配置し、これを所定の細線に減面加工する方法である。
【0003】
この製法に使用するブロンズパイプの製造方法としては、鋳造法が一般的である。即ち、真空中或いは酸化防止材を使って大気中で誘導加熱法等によって溶解された高錫ブロンズを、所定の鋳型に注入・冷却して円柱状のビレットを形成した後、このビレットを切削加工してパイプ状に形成するものである。係る鋳造法によるブロンズパイプの製法では、中実のビレットを切削加工してパイプ状に成形する関係上、当然ながら歩留りが非常に低下する問題がある。
【0004】
又、従来の鋳造品の本質的な欠点として、溶湯の冷却工程における冷却速度の不均一性は避けられず、このため、錫の偏析や残留ガスや引けによるボイド(空隙)等の鋳造欠陥の発生は不可避であった。この鋳造欠陥を有するままで伸線して超電導線を形成すると、伸線加工工程で断線が生じたり、超電導特性の低下をもたらす問題がある。
【0005】
そこで、係る鋳造欠陥を除去するために、鋳造されたブロンズビレットをHIP処理する方法(特許文献1参照)や、特殊な均質化熱処理を施して錫偏析を抑制する方法(特許文献2参照)が提案されている。更に、鋳造欠陥除去と加工歩留りの向上を狙った改善策として、連続してブロンズの溶解とニオブの挿入とを行う特殊な装置も提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−120257号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−77848号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平11−250747号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の方法では、基本的に錫の偏析や鋳造欠陥を有するブロンズを後処理によって品質改善を図るものであるから、そのための工数と費用とを要し、しかも完全な欠陥除去は困難である。加えて、HIP処理や特殊な熱処理を長時間に亘って行う等により、必然的に製造コストの大幅な上昇が不可避であった。
【0008】
一方、特許文献3の方法は、鋳造欠陥除去と加工歩留りの向上という面では改善されているが、設備が非常に大掛かりとなるのみならず、複雑な制御が必要となるため、実用面では問題があった。
【0009】
本発明は、係る従来鋳造法の持つ欠点を根本的に解消し、安価で且つ品質の安定したブロンズパイプを提供し、以て、安価に且つ品質の安定した超電導線を得る事のできる超電導線の製造方法を提供する事を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであって、その最大の特徴とするところは、鋳造法によってブロンズビレットを製造するのではなく直接所定のパイプ状に成形すると共に、従来の鋳造品の欠点である錫偏析や鋳造欠陥の問題を引き起こす冷却速度不均一性を解消するために、所定の内外径比のブロンズパイプに成形した鋳造ブロンズパイプを用いる点にある。即ち、高錫ブロンズ溶湯から所定の内外径寸法比のブロンズパイプに直接成形する事によって冷却速度を高めて鋳造欠陥の殆どない高品質の高錫ブロンズパイプを成形し、これを用いてNb3Sn系超電導線を製造するものである。
【0011】
具体的には、ブロンズ溶湯から鋳造法によって所定形状に成形され且つその内径と外径との寸法比が0.6〜0.95である第1ブロンズパイプ内に、予め成形された多数のニオブ芯線を配置して複合線素材を形成し、該複合線素材に所定の減面加工を行った後に所定の拡散熱処理を施して、該複合線素材中の錫とニオブとを反応させてNb3Sn系超電導金属間化合物を生成させるものである。
【0012】
尚、上記ニオブ芯線も、上述の要領で形成された第2ブロンズパイプ内にニオブ芯を挿入して所定の減面加工を施す事によりニオブ芯線素材を形成し、このニオブ芯線素材の複数本を、同様の要領で形成された第3ブロンズパイプ内に挿入して所定の減面加工を施して形成されたものであるのが好ましい。
【0013】
又、本発明で使用する鋳造法としては、高い冷却速度が得やすい連続鋳造法又は遠心鋳造法が好ましい。
【0014】
更に、高錫ブロンズの組成としては、錫含有量が10〜20重量%の高錫ブロンズが好ましく、又、これにチタン又はタンタルのいずれか一方又は双方を、合計で0.1〜10重量%含有するものも好ましい合金組成である。
【0015】
又、前記第1〜第3ブロンズパイプの内径部と外径部の錫の偏析が10%以内となる様に、冷却速度を高めに制御するのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を、図面の実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のNb3Sn系超電導線の製造方法に使用するブロンズパイプを連続鋳造法によって製造するための連続鋳造装置の概念図であり、同図において、所定の高錫ブロンズの溶湯1が溶湯鍋2の側部に形成されているノズル部3から連続的に排出される様になっており、該ノズル部3には、黒鉛製のダイス4が、前記溶湯鍋2を収容する枠体5の側壁を貫通して配置されており、該黒鉛ダイス4の外周面は水冷装置6により水冷されている。又、前記黒鉛ダイス4は、内径を規制する内側ダイス4aと、外径及び肉厚を規制する外側ダイス4bとからなっている。
【0017】
係る装置を用いて前記ブロンズパイプを製造するには、先ず、誘導炉等によって所定のブロンズ溶湯1を調整し、これを前記溶湯鍋2内に投入し、常法に従って、連続鋳造法により連続ブロンズパイプ8を製造する。即ち、溶湯1は、内側ダイス4aと外側ダイス4bとで規制された環状空間部4cを通過する間に冷却されて連続したパイプ状に成形され、複数対の引出しロール7によって連続的又は間欠的に所定の速度で引き出されて連続ブロンズパイプ8となる。この連続ブロンズパイプ8は、カッター9により所定寸法に切断されて、本発明で使用するブロンズパイプ8aとなる。
【0018】
ここで、本発明においては、製造されるブロンズパイプ8aの品質を従来の鋳造品とは異ならしめ、高品質のブロンズパイプとなす必要上、溶湯1は速やかに冷却される事が肝要である。そこで、前記黒鉛ダイス4の外周部に配置された水冷装置6により、該黒鉛ダイス4の冷却を通して前記環状空間部4c内の溶湯及び半凝固状態のブロンズの冷却速度を高める事は勿論、該ダイス4から引き出された後の連続ブロンズパイプ8の冷却も速やかに行わねばならない。このためには、本発明の連続ブロンズパイプ8の内径d1と外径D1との寸法比(d1/D1)の価を、0.6〜0.95の範囲に設定されている。この寸法比が、0.6未満では、該ブロンズパイプ8の肉厚が厚くなり過ぎて冷却特性が低下し、所期の品質が得られない可能性が高くなり、一方、前記寸法比が0.95より大きいと、ブロンズパイプ8aの肉厚が薄くなり過ぎて以後の減面成形に支障をきたす虞れがある。
【0019】
係る適正な内外径寸法比に設定されていると、前記引出しロール7によって引き出された連続ブロンズパイプ8は、速やかに且つ均一に冷却される結果、従来の鋳造法によって形成されたものに比して、引張強さ,耐力,伸びが高くなり、又、凝固様式も単純なため、鋳造組織特有のガスや引けによる鋳造欠陥が極めて少なくなり、高品質のブロンズパイプが得られる事になる。特に、鋳造法によって直接パイプ状に成形しているので、パイプの内外両面からの同時冷却が可能となり、錫の逆偏析も抑制される事になると共に、後工程でニオブ等を内部に挿入するための穴加工が不要となり、ブロンズパイプ成形時の歩留りが飛躍的に向上し、コスト低減に大きく寄与する事になる。加えて、図示の如き連続鋳造法を採用すれば、略連続して所定寸法のブロンズパイプ8aを大量に生産する事も可能となり、生産性の向上にも大きく寄与する事になる。
【0020】
次に、ブロンズ溶湯1の組成について説明すると、錫含有量(重量%,以下同じ)は10〜20%が好ましく、10%以下では、従来の鋳造法によっても偏析を防止する事が可能であって本発明の利点が相対的に小さくなる。一方、20%を越えると、冷却速度を如何に改善しても冶金学的に固溶限を越えており、錫の偏析を抑制する事が困難となるからである。又、好ましい添加元素としては、チタン及びタンタルがあり、これらの添加は、高磁場領域における超電導特性を改善する効果があるが、この効果は、チタン及びタンタルの一方又は双方を合計で0.1%以上の添加で現れるが、10%を越える添加は、ブロンズパイプの加工性を悪化させるので好ましくない。従って、これらの添加は、0.1〜10%の範囲に抑える必要がある。
【0021】
又、以上は図1に示した連続鋳造法によるブロンズパイプの製造法についての説明であるが、本発明で使用するブロンズパイプの製造は、係る連続鋳造法に限定されるものではなく、パイプの製造法として一般に使用されている遠心鋳造法によっても製造可能である。要は、ビレットを鋳造法によって製造し、これを切削加工してブロンズパイプを製造するのではなく、溶湯から直接ブロンズパイプを製造する事ができ且つその冷却を速やかに行う事が可能なものであれば、パイプの製造法には囚われないが、実用上は、前記連続鋳造法と遠心鋳造法が好ましく、連続生産性を考慮すると、連続鋳造法が最も好ましい製造方法である。
【0022】
次に、上記連続鋳造法による高錫ブロンズパイプ8aの製造実施例について、図1に示した連続鋳造装置を参照しつつ説明する。
【0023】
〔実施例1:ブロンズパイプの製造〕
純銅,純錫,純チタンを、誘導炉によって1280℃で溶解し、錫14%,チタン0.3%を含有する高錫ブロンズ母合金の溶湯1を調整した。この溶湯1を溶湯鍋2に注入して、連続鋳造法により連続ブロンズパイプ8を製造し、続いて回転式カッター9によって1000mm毎に切断してブロンズパイプ8aを製造した。尚、使用した黒鉛ダイス4は、外径(D1)150mmφ,内径(d1)100mmφで、内外径寸法比(d1/D1)が0.67のブロンズパイプ8を製造できるものである。連続鋳造は、引出しストローク15mm,引出しサイクル8cm/分の条件で行い、黒鉛ダイス4の出口付近の外周部は、水冷装置6によって水冷した。
【0024】
上述の方法によって製造されたブロンズパイプと、従来法の真空溶解法によって溶解されて鋳造されたビレットを切削加工して成形されたブロンズパイプと、大気溶解法に溶解された溶解されて鋳造されたビレットを切削加工して成形されたブロンズパイプとの品質を比較した。その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
上記表1から明らかな様に、ブロンズ特有の錫の逆偏析は、従来品に比して、1/2から1/3に減少しており、又、鋳造欠陥は、1/5から1/8程度にまで減少している。この事実は、本発明で使用するブロンズパイプは、従来法で使用されるブロンズパイプに比して、機械的強度が大きく向上している事を意味している。又、加工歩留りも、切削除去する部分の小さな本発明法では98%と高い値であるのに対し、従来法では、中心部をくり抜いてパイプ状に成形する関係から55%に留まっており、約1.8倍もの加工歩留りの向上を達成している。この事は、ブロンズパイプのコスト低減に大きく寄与するのみならず、最終製品としての超電導線のコスト低減にも大きく寄与する事が理解されよう。
【0027】
次に、上記ブロンズパイプ8aを用いて超電導線を製造する工程について、図2,3に示した超電導線の製造工程概念図を用いて説明する。先ず、図2は、ニオブ芯線の製造工程を示す概念図であり、同図(a)に示した工程では、従来の鋳造法等の適宜の方法で製造した高錫ブロンズビレット10に、複数のニオブ芯挿入孔13aを形成してブロンズ胴13を形成する。次に、同図(b)に示した工程では、ニオブ棒11を適当な寸法に切断して形成したニオブ芯12を成形する。該ニオブ芯12を前記ブロンズ胴13の前記ニオブ芯挿入孔13a内に挿入し、該ブロンズ胴13の両端部を適宜閉鎖して押出ビレットを形成し、これを常法に従って所定の減面率で押し出し及び伸線加工して、同図(c)に示した如き六角形状のニオブ芯線16を製造する。
【0028】
次に、図3は、上記ニオブ芯線16を用いて超電導線を製造する工程を示す概念図であり、同図(a)の工程では、前述の連続鋳造法によって製造された連続ブロンズパイプ8を、所定の長さに切断し、端面加工を施して第1ブロンズパイプ8aを形成する。同図(b)の工程では、前記第1ブロンズパイプ8a内に、前記図2に示した工程で製造された多数のニオブ芯線16を挿入配置する。このニオブ芯線を多数挿入された第1ブロンズパイプ8aの両端を常法に従って閉塞して複合線素材17を製造する。この複合線素材17を常法に従って所定の減面率で押出加工及び伸線加工を施した後に、拡散熱処理を施してブロンズ中の錫を拡散させてニオブと反応させ、Nb3Snを生成させて超電導線を製造する。
【0029】
尚、上記の説明において、図2では、ニオブ芯線16の製造に当り、通常の鋳造法によって製造したブロンズビレット10に、複数のニオブ芯挿入孔13aを形成してブロンズ胴13を形成し、このニオブ芯挿入孔13a内にニオブ芯12を挿入して所定の減面加工を行う事により、前記ニオブ芯線16を製造する方法を示しているが、ニオブ芯線16の製造方法の代替方法を、図4,5の概略工程図に示している。この方法は、先ず図4の(a)の工程では、前述の鋳造法によって、内外径寸法比(d2/D2)が前述の0.6〜0.95の範囲にある様に成形された細径の連続ブロンズパイプ8を所定の長さに切断して第2ブロンズパイプ8bを製作する。次に、同図(b)の工程では、図2で説明したニオブ芯12を製作し、同図(c)の工程では、該ニオブ芯12を前記第2ブロンズパイプ8b内に挿入してニオブ芯材14を製作し、次に、同図(d)の工程では、これを所定の減面加工を施してニオブ芯線素材15を製作する。
【0030】
次に、図5に示す如く、同図の(a)工程では、前述の鋳造法によって、内外径寸法比(d3/D3)が前述の0.6〜0.95の範囲にある様に成形された中径の連続ブロンズパイプ8を所定の長さに切断して第3ブロンズパイプ8cを製作する。次に、同図(b)の工程では、前記図4で製作したニオブ芯線素材15を、該第3ブロンズパイプ8c内に複数本挿入し、続いて同図(c)の工程では、これに所定の減面加工を施して、ニオブ芯線16を製造する。このニオブ芯線16を前述の第1ブロンズパイプ8a内に所定数配置し、前述の図3に示した工程によってNb3Sn系超電導線を製造する。
【0031】
即ち、図2の方法では、従来の鋳造法によって製造したブロンズパイプを用いているが、図4,5の方法では、全てのブロンズパイプを前述の本発明で使用する鋳造法によって製造している。従って、最外層に使用する第1ブロンズパイプ8aのみならず、内層側に使用する第2,第3ブロンズパイプ8b,8cにも前述の鋳造法により製造されたブロンズパイプを用いているので、最終工程における減面加工時の断線率を極めて低く抑える事が可能となる。
【0032】
次に、前記ブロンズパイプを用いた本発明による超電導線の製造実施例について説明する。
〔実施例2:超電導線の製造〕
前記実施例1で製造したブロンズパイプ8aの内部に、図3に示した如く、前記図2で説明した要領で製造されたニオブとブロンズの複合体からなるニオブ芯線16を44000本挿入配置し、その両端部に蓋部材を配置し、これを電子ビーム溶接によって閉塞して複合線素材17を製造した。次に、内部の空間をなくしてニオブ芯線16の充填率を高めるためHIP処理を行い、更に、その外周面にニオブの拡散防止材を設けた上に安定化のための無酸素銅を取り付けて押出ビレットを製作した。この押出ビレットに静水圧押出と伸線加工を施して、最終寸法が1.30mm×2.10mmの平角線を製造した。この平角線の断面写真を図6に示す。
【0033】
続いて、該平角線に拡散熱処理を施し、ブロンズ中の錫をニオブ中に拡散させてNb3Snを生成させる事によってNb3Sn系超電導線を製造した。上記本発明の方法によって製造されたNb3Sn系超電導線と、実施例1において比較のために製造した従来の鋳造法によるブロンズパイプを用いて同様の方法によって製造したNb3Sn系超電導線との品質及び超電導特性を比較した。その結果を表2に示す。
【0034】
表2から明らかな様に、上述した方法によって製造された錫の偏析や鋳造欠陥のないブロンズパイプを用いた本発明方法によるNb3Sn系超電導線は、その伸線過程での断線率が低下している。又、超電導特性についても、同一錫含有量では、製法によらず超電導線で必要とされる臨界電流及びn値において、略同一特性が得られている。しかしながら、特筆すべき事は、従来製法では、錫の偏析のために製造出来なかった高錫濃度のブロンズについても製造が可能となり、超電導特性の一層の向上が期待される。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
以上詳述した如く、本発明によれば、ニオブ芯線16を内部に配置するためのブロンズパイプ8aを、その内外径寸法比を所定の値に設定する事により、内外両面から急速且つ均一に冷却させて、鋳造欠陥や錫偏析の殆どない高品質のブロンズパイプを安定して安価に製造する事が可能となる。特に、錫偏析の生じ易い高錫濃度のブロンズにおいても、その偏析を最小限に抑制する事ができるので、錫拡散の均一化による安定したNb3Sn系超電導線を得る事が可能となる。
【0037】
又、連続鋳造法等により、ブロンズ溶湯から直接パイプ状に成形する方法を採用しているので、従来の切削加工法によってブロンズ内に貫通孔を形成する方法に比して材料の歩留りが大幅に向上し、ブロンズパイプの製造コストの大幅な低減が可能となる。
【0038】
又、係るブロンズパイプを用いてNb3Sn系超電導線を製造する事により、その伸線過程における断線もなく、得られた超電導線の特性にも問題はなく、安定した超電導線の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で使用するブロンズパイプの連続鋳造法による製造装置の概念図である。
【図2】図2は、超電導線製造用のニオブ芯線の製造工程を示す概念図である。
【図3】図3は、超電導線の製造工程を示す概念図である。
【図4】図4は、本発明で使用するブロンズパイプを用いたニオブ芯線製造工程の前工程を示す概念図である。
【図5】図5は、本発明で使用するブロンズパイプを用いたニオブ芯線製造工程の後工程を示す概念図である。
【図6】図6は、本発明方法に係る超電導線素線の断面写真である。
【符号の説明】
1 ブロンズ溶湯
2 溶湯鍋
4 黒鉛ダイス
6 水冷装置
7 引出しロール
8 連続ブロンズパイプ
8a 第1ブロンズパイプ
8b 第2ブロンズパイプ
8c 第3ブロンズパイプ
9 カッター
10 高錫ブロンズビレット
11 ニオブ棒
12 ニオブ芯
13 ブロンズ胴
13a ニオブ挿入孔
14 ニオブ芯材
15 ニオブ芯線素材
16 ニオブ芯線
17 複合線素材
Claims (7)
- Nb3Sn系超電導線の製造方法において、
ブロンズ溶湯(1)から鋳造法によって所定形状に成形され、且つ、その内径(d1)と外径(D1)との寸法比が0.6〜0.95である第1ブロンズパイプ(8a)内に、
予め成形された多数のニオブ芯線(16)を配置して複合線素材(17)を形成し、
該複合線素材(17)に所定の減面加工を行った後に所定の拡散熱処理を施す事によって、該複合線素材(17)中の錫とニオブとを反応させてNb3Sn系超電導金属間化合物を生成させる
ことを特徴とするNb3Sn系超電導線の製造方法 - 前記第1ブロンズパイプ(8a)の内径部と外径部の錫の偏析が10%以内である請求項1に記載のNb3Sn系超電導線の製造方法
- 前記ニオブ芯線(16)が、
前記ブロンズ溶湯(1)から鋳造法によって所定形状に成形され且つその内径(d2)と外径(D2)との寸法比が0.6〜0.95である第2ブロンズパイプ(8b)内に、ニオブ芯(12)を挿入して所定の減面加工を施す事によってニオブ芯線素材(15)を形成し、
該ニオブ芯線素材(15)の複数本を、ブロンズ溶湯(1)から鋳造法によって所定形状に成形され且つその内径(d3)と外径(D3)との寸法比が0.6〜0.95である第3ブロンズパイプ(8c)内に挿入して所定の減面加工を施して形成されたものである請求項1又は2に記載のNb3Sn系超電導線の製造方法 - 前記第2及び第3ブロンズパイプ(8b,8c)の内径部と外径部の錫の偏析が10%以内である請求項2に記載のNb3Sn系超電導線の製造方法
- 前記鋳造法が、連続鋳造法又は遠心鋳造法である請求項1乃至4のいずれかに記載のNb3Sn系超電導線の製造方法
- 前記ブロンズ溶湯(1)の錫含有量が10〜20重量%である請求項1乃至5のいずれかに記載のNb3Sn系超電導線の製造方法
- 前記ブロンズ溶湯(1)が、チタン又はタンタルのいずれか一方又は双方を、合計で0.1〜10重量%含有するものである請求項6に記載のNb3Sn系超電導線の製造方法
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-
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- 2002-12-12 JP JP2002360172A patent/JP2004192972A/ja active Pending
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