JP4186554B2 - カルボニル化合物の製造方法とその触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボニル化合物の製造方法とその触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
鎖状ビシナルジオール類を酸化して得られるジケトン類をはじめとするカルボニル化合物は、各種化学製品およびその合成中間体として重要な化合物であり(例えばTetrahedron.Lett.,36,1523(1995)等)、その製造方法として、例えば酸化モリブデンのアセチルアセトナート錯体触媒の存在下に、鎖状ビシナルジオール類とtert−ブチルヒドロペルオキシドを反応させる方法(Chem.Lett.,1295(1988))が知られているが、tert−ブチルヒドロペルオキシドは、取扱いに注意を要するため、工業的には必ずしも十分満足し得る方法ではなかった。
【0003】
一方で、過酸化水素は、安価で、取り扱いが容易で、しかも反応後には無害な水となる、クリーンで優れた酸化剤として近年注目を集めており、鎖状ビシナルジオール類と過酸化水素を反応させて、カルボニル化合物を製造する方法も知られている。例えば(a)トリス(セチルピリジニウム)タングストリン酸触媒を用いる方法(J.Org.Chem.,53,3587(1988))、(b)トリス(セチルピリジニウム)タングストリン酸触媒と過酸化水素から調製される酸化剤と鎖状ビシナルジオールを1,2−ジクロロエタン中で反応させる方法(Tetrahedron.Lett.,36,1523(1995))等が知られているが、いずれの方法も、触媒の調製が煩雑であり、しかも(b)の方法では環境面や労働安全衛生面で問題のある1,2−ジクロロエタンを溶媒として反応を行わねばならないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況のもと、本発明者らは、鎖状ビシナルジオール類(ただし、鎖状1,2−ジオール類を除く。)と過酸化水素を反応させて、より容易に、カルボニル化合物を製造する方法について鋭意検討したところ、入手が容易なタングステン金属、ホウ化タングステン等のタングステン化合物、モリブデン金属、ホウ化モリブデン等のモリブデン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物が、良好な酸化触媒活性を示すことを見いだし、本発明に至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、タングステン金属、モリブデン金属、タングステンと第IIIb族、第IVb族または第 Vb 族元素とからなるタングステン化合物およびモリブデンと第IIIb族、第IVb族、第Vb族または酸素を除く第VIb族元素とからなるモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物触媒の存在下に、鎖状ビシナルジオール類(ただし、鎖状1,2−ジオール類を除く。)と過酸化水素とを反応させることを特徴とするカルボニル化合物の製造方法とその触媒を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
まず最初に、鎖状ビシナルジオール類(ただし、鎖状1,2−ジオール類を除く。)と過酸化水素とを反応させる際に用いる金属酸化物触媒について説明する。触媒としては、タングステン金属、モリブデン金属、タングステンと第IIIb族、第IVb族または第 Vb 族元素とからなるタングステン化合物およびモリブデンと第IIIb族、第IVb族、第Vb族または酸素を除く第VIb族元素とからなるモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、金属化合物と略記する。)と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物触媒が用いられる。
【0007】
タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えばホウ化タングステン等が、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えば炭化タングステン、ケイ化タングステン等が、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えばチッ化タングステン、リン化タングステン等が挙げられる。
【0008】
モリブデンと第IIIb族元素とからなるモリブデン化合物としては、例えばホウ化モリブデン等が、モリブデンと第IVb族元素とからなるモリブデン化合物としては、例えば炭化モリブデン、ケイ化モリブデン等が、モリブデンと第Vb族元素とからなるモリブデン化合物としては、例えばチッ化モリブデン、リン化モリブデン等が、モリブデンと酸素を除く第VIb族元素とからなるモリブデン化合物としては、例えば硫化モリブデン等が挙げられる。
【0009】
かかる金属化合物の中でも、タングステン金属、ホウ化タングステン、炭化タングステン、硫化タングステンが好ましい。かかる金属化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、粒径の小さい金属化合物を用いることが、触媒である金属酸化物の調製をより容易にするという点で好ましい。
【0010】
かかる金属化合物と反応せしめる過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いが容易であるという点で、過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
【0011】
金属化合物と反応せしめる過酸化水素の使用量は、金属化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0012】
金属化合物と過酸化水素との反応は、通常水溶液中で実施される。もちろん例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
【0013】
金属化合物と過酸化水素との反応は、通常その両者を混合、接触させることにより行われ、金属化合物と過酸化水素の接触効率を向上させるため、金属酸化物調製液中で金属化合物が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。また金属化合物と過酸化水素の接触効率を高め、金属酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状の金属化合物等粒径の小さな金属化合物を用いることが好ましい。
【0014】
金属酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃である。
【0015】
金属化合物と過酸化水素とを水中もしくは有機溶媒中で反応させることにより、金属化合物の全部もしくは一部が溶解し、金属酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができるが、該金属酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、触媒として用いてもよいし、該調製液をそのまま触媒として用いてもよい。
【0016】
次に、前記金属酸化物を触媒とする鎖状ビシナルジオール類(鎖状1,2−ジオール類を除く。以下、鎖状ビシナルジオール類と略記する。)と過酸化水素との反応について説明する。
【0017】
本発明に用いられる鎖状ビシナルジオール類は、鎖状1,2−ジオール類を除いた鎖状ジオール類であって、任意の隣接した二つの炭素原子にそれぞれ水酸基が結合し、該炭素原子のうちの少なくとも一方が二級炭素原子であれば特に制限されない。
【0018】
水酸基が結合した炭素原子以外の該鎖状ビシナルジオール類を構成する炭素原子は、例えばアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シリル基、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
【0019】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、前記アルキル基と前記アリール基とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、前記したアルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4の低級アルコキシ基が挙げられる。シリル基としては、例えばトリメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0020】
かかる鎖状ビシナルジオール類としては、例えば2,3−ブタンジオール、2,3−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、4,5−ノナンジオール、2−メチル−2,3−ヘプタンジオール等が挙げられる。
【0021】
本反応は、前記金属酸化物触媒の存在下に、鎖状ビシナルジオール類と過酸化水素を反応させるものであり、カルボニル化合物が生成する。鎖状ビシナルジオール類として、例えば2,3−ブタンジオール等の水酸基が結合している二つの炭素原子がいずれも二級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類を用いた場合には、二つのアルコール部位がそれぞれ酸化されたジケトン類と、アルコール部位が酸化され、さらに二つの水酸基が結合している二つの炭素原子間の炭素−炭素結合も切断された、カルボン酸類が得られる。また、鎖状ビシナルジオール類として、例えば2−メチル−2,3−ヘプタンジオール等の水酸基が結合している二つの炭素原子のうち、一方が二級炭素原子であり、他方が三級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類を用いた場合には、水酸基が結合した二級炭素原子部位が酸化されたケトール類と、ケトール類が酸化され、さらに二つの水酸基が結合している二つの炭素原子間の炭素−炭素結合も切断された、ケトン類とカルボン酸類が得られる。
【0022】
具体的な化合物を例にとり、さらに詳しく説明すると、2,3−ブタンジオールを用いた場合には、2,3−ブタンジオンと酢酸の混合物が得られ、2−メチル−2,3−ヘプタンジオールを用いた場合には、2−ヒドロキシ−2−メチルヘプタン−3−オンとアセトンとペンタン酸の混合物が得られる。
【0023】
金属酸化物触媒の使用量は、金属として、鎖状ビシナルジオール類に対して、通常0.001〜0.95モル倍、好ましくは0.005〜0.1モル倍である。
【0024】
過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
【0025】
鎖状ビシナルジオール類と過酸化水素を反応させることにより、カルボニル化合物が得られるが、前述したとおり、鎖状ビシナルジオール類の構造により、生成するカルボニル化合物が異なり、水酸基が結合している二つの炭素原子がいずれも二級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類の場合には、ジケトン類とカルボン酸類の混合物が得られ、水酸基が結合している二つの炭素原子のうち、一方が二級炭素原子であり、他方が三級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類の場合には、ケトール類とケトン類とカルボン酸類の混合物が得られる。
【0026】
得られる混合物中の各成分の生成比率は、過酸化水素の使用量により変化し、水酸基が結合している二つの炭素原子がいずれも二級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類の場合、過酸化水素の使用量が、鎖状ビシナルジオール類に対して、1.6モル倍以上、2.5モル倍未満の範囲のときには、ジケトン類が主生成物として得られやすく、過酸化水素の使用量が、鎖状ビシナルジオール類に対して、2.5モル倍以上のときには、カルボン酸類が主生成物として得られやすい。また、水酸基が結合している二つの炭素原子のうち、一方が二級炭素原子であり、他方が三級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類の場合、過酸化水素の使用量が、鎖状ビシナルジオール類に対して、0.8モル倍以上、1.5モル倍未満の範囲のときには、ケトール類が主生成物として得られやすく、また過酸化水素の使用量が、鎖状ビシナルジオール類に対して、1.5モル倍以上のときには、カルボン酸類およびケトン類が主生成物として得られやすい。そのため、原料である鎖状ビシナルジオール類の構造と目的とする化合物に応じて、過酸化水素の使用量を適宜選択すればよい。
【0027】
鎖状ビシナルジオール類と過酸化水素との反応は、通常水溶媒中で行われる。有機溶媒中もしくは水と有機溶媒との混合溶媒中で行ってもよいが、経済的な観点から、水溶媒中で反応を行うことが好ましい。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。
【0028】
本反応は、通常金属酸化物触媒、鎖状ビシナルジオール類および過酸化水素を接触、混合させることにより行われるが、例えば金属化合物、過酸化水素および鎖状ビシナルジオール類を接触、混合させて、金属酸化物触媒の調製操作と、鎖状ビシナルジオール類と過酸化水素との反応を、同時並行的に行ってもよい。
【0029】
反応温度は、通常50〜130℃であり、通常常圧条件下で実施されるが、減圧あるいは加圧条件下で実施してもよい。
【0030】
反応の進行と共に、カルボニル化合物が生成するが、かかる反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0031】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするカルボニル化合物を取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、カルボニル化合物を取り出すこともできる。取り出したカルボニル化合物は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ、再結晶等通常の精製方法によりさらに精製してもよい。
【0032】
カルボニル化合物を晶析処理により取り出した後の濾液や反応液を抽出処理し、有機層を取り出した後の水層は、本反応の金属酸化物触媒を含んでおり、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度本反応に再使用することができる。
【0033】
かくして得られるカルボニル化合物としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘプタン酸等のカルボン酸類、例えば2,3−ブタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、4,5−ノナンジオン等のジケトン類、例えば2−ヒドロキシ−2−メチルヘプタン−3−オン等のケトール類が挙げられる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、分析は、ガスクロマトグラフィにより行った。
【0035】
実施例1
還流冷却管を付した100mLシュレンク管を窒素置換した後、室温で、タングステン金属0.074gおよび30重量%過酸化水素水1.1gを仕込み、内温50℃で15分攪拌し、触媒液を調製した。該触媒液に、2,3−ブタンジオール1.8gおよび30重量%過酸化水素水4.7gを仕込み、内温90℃で4時間攪拌、保持した。得られた反応液を冷却し、ジメチルスルホキシド50mLを加え、十分に振とうし、2,3−ブタンジオンを含む溶液を得た。2,3−ブタンジオンの収率は、65%であった(2,3−ブタンジオール基準)。
【0036】
実施例2
還流冷却管を付した100mLシュレンク管を窒素置換した後、室温で、タングステン金属0.074gおよび30重量%過酸化水素水1.1gを仕込み、内温50℃で15分攪拌し、触媒液を調製した。該触媒液に、2,3−ブタンジオール1.8gおよび30重量%過酸化水素水7.4gを仕込み、内温90℃で4時間攪拌、保持した。得られた反応液を冷却し、ジメチルスルホキシド50mLを加え、十分に振とうし、酢酸を含む溶液を得た。酢酸の収率は、100%であった(2,3−ブタンジオール基準で、1モルの2,3−ブタンジオールから2モルの酢酸が生成した場合を、収率100%とした)。
【0037】
実施例3
実施例1において、タングステン金属に代えて、モリブデン金属(使用量はタングステン金属と等モル)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、2,3−ブタンジオンを、収率27%で得た(2,3−ブタンジオール基準)。
【0038】
実施例4
実施例1において、タングステン金属に代えて、ホウ化モリブデン(使用量はタングステン金属と等モル)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、2,3−ブタンジオンを、収率30%で得た(2,3−ブタンジオール基準)。
【0039】
実施例5
実施例2において、タングステン金属に代えて、ホウ化タングステン(使用量はタングステン金属と等モル)を用いた以外は実施例2と同様に実施して、酢酸を、収率89%で得た(2,3−ブタンジオール基準で、1モルの2,3−ブタンジオールから2モルの酢酸が生成した場合を、収率100%とした)。
【0040】
実施例6
実施例2において、タングステン金属に代えて、炭化タングステン(使用量はタングステン金属と等モル)を用いた以外は実施例2と同様に実施して、酢酸を、収率92%で得た(2,3−ブタンジオール基準で、1モルの2,3−ブタンジオールから2モルの酢酸が生成した場合を、収率100%とした)。
【0042】
実施例8
実施例2において、タングステン金属に代えて、モリブデン金属(使用量はタングステン金属と等モル)を用いた以外は実施例2と同様に実施して、酢酸を、収率64%で得た(2,3−ブタンジオール基準で、1モルの2,3−ブタンジオールから2モルの酢酸が生成した場合を、収率100%とした)。
【0043】
実施例9
実施例2において、タングステン金属に代えて、ホウ化モリブデン(使用量はタングステン金属と等モル)を用いた以外は実施例2と同様に実施して、酢酸を、収率56%で得た(2,3−ブタンジオール基準で、1モルの2,3−ブタンジオールから2モルの酢酸が生成した場合を、収率100%とした)。
【0044】
実施例10
還流冷却管を付した100mLシュレンク管を窒素置換した後、室温で、タングステン金属0.074gおよび30重量%過酸化水素水12gを仕込み、内温50℃で15分攪拌し、タングステン酸化物触媒水溶液を調製した。該水溶液に、2−メチル−2,3−ヘプタンジオール2.4gを仕込み、内温90℃で4時間攪拌、保持した。得られた反応液を冷却し、エタノール50mLを加え、十分に振とうし、ヘプタン酸を含む溶液を得た。ヘプタン酸の収率は、60%であった(2−メチル−2,3−ヘプタンジオール基準)。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、入手が容易タングステン金属、ホウ化タングステン等のタングステン化合物やモリブデン金属等のモリブデン化合物と過酸化水素とから、容易に調製できる金属酸化物触媒の存在下に、鎖状ビシナルジオール類(ただし、鎖状1,2−ジオール類を除く。)と過酸化水素とを反応させることにより、カルボニル化合物が得られ、しかも、過酸化水素の使用量を選択することにより、ジケトン類もしくはケトール類を主として得たり、カルボン酸類やケトン類を主として得ることができるため、工業的な観点からも有利である。
Claims (6)
- タングステン金属、モリブデン金属、タングステンとホウ素、炭素、窒素またはリンとからなるタングステン化合物およびモリブデンとホウ素、炭素、窒素、リンまたは硫黄とからなるモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物触媒の存在下に、鎖状ビシナルジオール類(ただし、鎖状1,2−ジオール類を除く。)と過酸化水素を反応させることを特徴とするカルボニル化合物の製造方法。
- 鎖状ビシナルジオール類が、水酸基が結合している二つの炭素原子がいずれも二級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類であり、過酸化水素の使用量が、該鎖状ビシナルジオール類に対して、1.6モル倍以上、2.5モル倍未満の範囲であり、カルボニル化合物が、ジケトン類である請求項1に記載のカルボニル化合物の製造方法。
- 鎖状ビシナルジオール類が、水酸基が結合している二つの炭素原子がいずれも二級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類であり、過酸化水素の使用量が、該鎖状ビシナルジオール類に対して、2.5モル倍以上の範囲であり、カルボニル化合物が、カルボン酸である請求項1に記載のカルボニル化合物の製造方法。
- 鎖状ビシナルジオール類が、水酸基が結合している二つの炭素原子のうち、一方が二級炭素原子で、他方が三級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類であり、過酸化水素の使用量が、該鎖状ビシナルジオール類に対して、0.8モル倍以上、1.5モル倍未満の範囲であり、カルボニル化合物が、ケトール類である請求項1に記載のカルボニル化合物の製造方法。
- 鎖状ビシナルジオール類が、水酸基が結合している二つの炭素原子のうち、一方が二級炭素原子で、他方が三級炭素原子である鎖状ビシナルジオール類であり、過酸化水素の使用量が、該鎖状ビシナルジオール類に対して、1.5モル倍以上の範囲であり、カルボニル化合物が、ケトン類およびカルボン酸類である請求項1に記載のカルボニル化合物の製造方法。
- タングステン金属、モリブデン金属、タングステンとホウ素、炭素、窒素またはリンとからなるタングステン化合物およびモリブデンとホウ素、炭素、窒素、リンまたは硫黄とからなるモリブデン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる、鎖状ビシナルジオール類(ただし、鎖状1,2−ジオール類を除く。)と過酸化水素を反応させてカルボニル化合物を製造するための触媒。
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