JP4185638B2 - めっき鋼板のレーザ溶接方法 - Google Patents
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- B23K2103/00—Materials to be soldered, welded or cut
- B23K2103/02—Iron or ferrous alloys
- B23K2103/04—Steel or steel alloys
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき鋼板のレーザ溶接方法に関し、一層詳細には、外観品質の優れた溶接部を得ることが可能なめっき鋼板のレーザ溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
亜鉛めっき鋼板に対してレーザ溶接を行う際に、ワーク間の亜鉛層がレーザビームの熱によって蒸発・飛散して、溶接部の外観品質の劣化が生じることがある。
【0003】
このような外観品質の劣化の発生を防ぐためには、ワーク間に適正な隙間を設けた状態で溶接を行う手法が考えられるが、大型のワークに対して溶接を行う場合には、適正な隙間を設けることが困難な部分が生じ得る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の不都合を解決するためになされたものであり、大型のワークに対しても適用することができ、外観品質に優れた溶接部を得ることが可能なめっき鋼板のレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、めっき鋼板を含む少なくとも2枚の互いに重ね合わされた板材にレーザビームを照射して溶接処理を施すための、めっき鋼板のレーザ溶接方法において、前記レーザビームの焦点位置を前記互いに重ね合わされた板材中またはこれら板材の近傍位置に合わせてこれら板材を溶接する第1の溶接工程と、レーザ溶接装置を構成するスキャンヘッドを前記板材に対して変位させることにより、前記レーザビームの焦点位置を前記互いに重ね合わされた板材から離れる方向に所定距離だけずらして前記第1の溶接工程時に比して広範囲にレーザビームを照射し、これら板材を再溶接するとともに前記第1の溶接工程時に形成された穴を埋め戻す第2の溶接工程とを含んでいる(請求項1記載の発明)。
【0006】
このため、第2の溶接工程においては、第1の溶接工程で得られた溶接部に存在していた穴、突起等が埋め戻され、従って、外観品質に優れた溶接部を得ることができる。
【0007】
この場合、前記第2の溶接工程における前記レーザビームの焦点位置を、前記第1の溶接工程における焦点位置から後退させるようにしてもよい(請求項2記載の発明)。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1A〜図1Dは、1組の板材としてのめっき鋼板10a、10bをレーザ溶接する作業の工程を示している。
【0010】
なお、この実施の形態が適用されるワークとしてのめっき鋼板10a、10bは、例えば、図2に示すように、自動車のドア部Dにおける前方側の、窓枠Wが取り付けられる部分の近傍部分(図2中、破線で囲まれた部分)、すなわち、溶接が施される部分が外部に露呈する部分を構成するものである。
【0011】
図1Aに示すように、めっき鋼板10a、10bは、それぞれ、基材としての鋼板12a、12bと、これら鋼板12a、12bの両面部にそれぞれ形成されためっき層14a、14bを備えている。この場合、めっき層14a、14bを形成する材料としては、亜鉛、ニッケル亜鉛合金、鉛、アルミニウム等の低沸点金属や合金等を採用することができる。また、この実施の形態においては、鋼板12a、12bに塗布された樹脂系塗料、樹脂系接着剤等についても、めっき層14a、14bと同様に考慮することができる。
【0012】
めっき鋼板10a、10bの、特に、溶接を施そうとする部分は、互いに重ね合わされている。この場合、めっき鋼板10a、10bの間には、隙間は設けられていない。
【0013】
図1Aに示すように、めっき鋼板10a、10bにレーザビームLを照射すると、このレーザビームLによって、めっき鋼板10a、10bが溶融される(第1の溶接工程)。この場合、レーザビームLの焦点位置f1は、重ね合わされためっき鋼板10a、10b中、または、めっき鋼板10a、10bの近傍位置に合わされている。
【0014】
また、レーザビームLの照射方向は、めっき鋼板10a、10bに対する垂直方向としてもよく、該垂直方向から所定の角度だけ傾斜した方向としてもよい。
【0015】
図1Bに示すように、レーザビームLの照射によって溶融した金属が凝固して1次溶接部20が形成されると、この1次溶接部20によってめっき鋼板10a、10bが繋がれた状態となる。すなわち、1次溶接部20によってめっき鋼板10a、10bが結合される。
【0016】
ところで、レーザビームLによってめっき鋼板10a、10bが溶融された際に、めっき層14a、14bを形成する亜鉛等の蒸発に伴って、溶融した金属が飛び散る現象が起こる場合がある。このため、図1Bに示すように、1次溶接部20には、溶融した金属が飛散した後の穴(ブローホール)22や、飛散した金属が付着して形成された突起24等が存在する場合がある。
【0017】
この場合、図3Aに示すように、溶接されためっき鋼板10a、10bにおいては、1次溶接部20の外観品質が劣るおそれがある。
【0018】
そこで、図1Cに示すように、レーザビームLの焦点位置f2を、レーザビームLの照射方向に沿って、図1Aの焦点位置f1から所定の後退距離Y{例えば、Y=5〜15mm:ただし、集光ミラーとして、焦点距離が7.5in(19.05cm)の放物面ミラーを用いた場合}だけ後退(デフォーカス)させて、レーザビームLを再照射する(第2の溶接工程)。このとき、めっき鋼板10a、10bにおいては、レーザビームLの焦点位置f2がめっき鋼板10a、10bから離れることとなるため、図1Bに示す1次溶接部20の幅よりも広い範囲(2点鎖線で示す)が再溶融される。
【0019】
なお、図1Aの焦点位置f1から前進する方向に焦点位置を変位させるようにしてもよい。
【0020】
このようなレーザビームLの焦点位置f1、f2の変位作業は、例えば、レーザ溶接装置を構成する図示しないスキャンヘッドの位置を、めっき鋼板10a、10bに対して変位させることによって行われる。
【0021】
なお、第1の溶接工程が行われてから第2の溶接工程を行うまでの時間間隔は、任意に設定することができる。
【0022】
再溶融された金属が凝固すると、図1Dに示すように、穴22(図1B参照)が埋め戻され、かつ、突起24(図1B参照)が均された2次溶接部30が形成される。すなわち、この2次溶接部30においては、該2次溶接部30の周縁部にエッジ等が存在しない(または、エッジが丸められた)、滑らかな表面形状が得られる。
【0023】
この場合、図3Bに示すように、溶接されためっき鋼板10a、10bにおいては、優れた外観品質の2次溶接部30が得られる。
【0024】
また、図4に示すように、2次溶接部30(図1D参照)における溶接強度P2は、1次溶接部20(図1B参照)における溶接強度P1に比べて、例えば、1kN程度上昇している。
【0025】
なお、図4中の文字「1 PASS」は、第1の溶接工程を表し、文字「2 PASS」は、第2の溶接工程を表している。また、記号「■」、「◆」、「▲」は、それぞれ、溶接強度P1、P2の最大値、平均値、最小値を表している。
【0026】
また、図4に示すデータを取得する際には、レーザ溶接装置として出力が約2.73kWのCO2レーザ溶接装置を採用し、加工条件は、センタシールド:Ar 20l/min、ビード長:30mm、速度(第1の溶接工程):1.6m/min、速度(第2の溶接工程):2.0m/min、後退距離Y:15mmに設定した。
【0027】
なお、この実施の形態では、溶接されるめっき鋼板10a、10bを2枚としているが、3枚以上のめっき鋼板を溶接する際にも、この実施の形態を適用することができる。
【0028】
このように、この実施の形態においては、第1の溶接工程において、めっき鋼板10a、10bにレーザビームLを照射して溶接を施した後に、第2の溶接工程において、レーザビームLの焦点位置をf1からf2に後退させて再溶接を施すようにしている。このため、第2の溶接工程で得られた2次溶接部30においては、第1の溶接工程で得られた1次溶接部20に存在していた穴22、突起24等が埋め戻される。従って、外観品質に優れた2次溶接部30を得ることができる。
【0029】
また、1次溶接部20に存在していた穴22、突起24等が埋め戻されるため、強度に優れた2次溶接部30を得ることができる。
【0030】
さらに、この実施の形態は、大型のワークに対しても適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明に係るめっき鋼板のレーザ溶接方法によれば、重ね合わされた板材の溶接は、第1の溶接工程および第2の溶接工程による2段階で行われ、第2の溶接工程においては、レーザビームの焦点位置を第1の溶接工程における位置から後退させるようにしている。このため、第2の溶接工程においては、第1の溶接工程で溶接部に生じていた穴等が埋め戻され、外観品質に優れた溶接部が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1A〜図1Dは、1組のめっき鋼板をレーザ溶接する作業を示す断面図である。
【図2】この実施の形態が適用されるワークとしての自動車のドア部を示す平面図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、溶接部の外観を示す平面図である。
【図4】溶接部における溶接強度を示すグラフである。
【符号の説明】
10a、10b…めっき鋼板 12a、12b…鋼板
14a、14b…めっき層 20…1次溶接部
22…穴 24…突起
30…2次溶接部 L…レーザビーム
f1、f2…焦点位置
Claims (2)
- めっき鋼板を含む少なくとも2枚の互いに重ね合わされた板材にレーザビームを照射して溶接処理を施すための、めっき鋼板のレーザ溶接方法において、
前記レーザビームの焦点位置を前記互いに重ね合わされた板材中またはこれら板材の近傍位置に合わせてこれら板材を溶接する第1の溶接工程と、
レーザ溶接装置を構成するスキャンヘッドを前記板材に対して変位させることにより、前記レーザビームの焦点位置を前記互いに重ね合わされた板材から離れる方向に所定距離だけずらして前記第1の溶接工程時に比して広範囲にレーザビームを照射し、これら板材を再溶接するとともに前記第1の溶接工程時に形成された穴を埋め戻す第2の溶接工程と、
を含むことを特徴とするめっき鋼板のレーザ溶接方法。 - 請求項1記載のめっき鋼板のレーザ溶接方法において、
前記第2の溶接工程における前記レーザビームの焦点位置は、前記第1の溶接工程における焦点位置から後退されていることを特徴とするめっき鋼板のレーザ溶接方法。
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