JP4185292B2 - 放射線硬化性シリコーンゴム組成物および接着性シリコーンエラストマーフィルム - Google Patents
放射線硬化性シリコーンゴム組成物および接着性シリコーンエラストマーフィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線硬化性シリコーンゴム組成物、該組成物をフィルム状に成形した、電子部品の接着性フィルムとして有用な接着性シリコーンエラストマーフィルム、それを用いたシリコーンエラストマーフィルム被覆体および構造体並びにダイボンディング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイスのダイボンディング用やTABテープの接着用途にエポキシ系の接着性フィルムが使用されている。しかし、これらの接着性フィルムは、耐熱性が不十分であり、また低弾性化が不可能であるという問題を有する(高弾性体では、例えば2つの異種の基板間に接着層として貼り合わせて使用した場合、熱的および機械的応力を緩和し難く、製品の信頼性を低下させる)。一方、シリコーン系の接着性フィルムは一般に高耐熱性で低弾性であるが、十分な接着性と作業性を有し、容易に製造できるものは知られていない。
【0003】
本出願人は、すでに改良された接着性シリコーンエラストマーフィルムを提案しているが(特開2000-234060号公報参照)、厳しい条件下、例えば、−55℃〜150℃のヒートサイクル試験においては、接着力が未だ不十分であり、場合によっては接着不良による剥離等が起こることがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、取扱いが簡単で、均一な形状の清浄なフィルムを短時間に製造することができる放射線硬化性シリコーンゴム組成物、また使用時の工程を合理化でき、しかも低弾性で十分な耐熱性や強固な接着性を有し、加工性に優れた接着性シリコーンエラストマーフィルム、該フィルムを用いたシリコーンエラストマーフィルム被覆体および構造体並びにダイボンディング方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第一に、
(a)一分子中にアクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる基1個以上とヒドロシリル基1個以上とを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 5〜100重量部、
(b)一分子中にアクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる基2個以上を有し、ヒドロシリル基を有しないオイル状オルガノポリシロキサン: 95〜0重量部、
(ただし、上記(a)成分と(b)成分の含有量の合計は、100重量部である。)
(c)アルコキシシラン、アルコキシシランの部分加水分解縮合物、オルガノシランで変性されたイソシアヌレート、およびオルガノシロキサンで変性されたイソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物: 0.1〜30重量部、および
(d)放射線増感剤: 有効量
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物を提供する。
【0006】
本発明は、第二に、上記組成物をフィルム状に成形し、得られたフィルムを放射線硬化させることによって得られる接着性シリコーンエラストマーフィルムを提供する。
【0007】
また、本発明は、第三に、上記接着性シリコーンエラストマーフィルムで基体の一部又は全部を覆い、ついで加熱して該フィルムを基体に接着させることにより得られるシリコーンエラストマーフィルム被覆体を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、第四に、上記接着性シリコーンエラストマーフィルムを二つの基体間に挟み、ついで加熱して該フィルムを接着させ両基体を相互に結合させることによって得られる構造体を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、第五に、上記接着性シリコーンエラストマーフィルムをダイと該ダイを装着すべき基体の所定箇所との間に挟んで配置し、該フィルムを該ダイと基体との間で加熱して接着させることを特徴とするダイボンディング方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0011】
<放射線硬化性シリコーンゴム組成物>
本発明に係る放射線硬化性シリコーンゴム組成物は、下記(a)〜(d)成分を含有してなるものである。
【0012】
[(a)成分]
(a)成分の一分子中にアクリロイル基およびメタアクリロイル基から選ばれる基(以下、「(メタ)アクリロイル基」という)1個以上とヒドロシリル基(即ち、SiH基)1個以上とを有するオルガノポリシロキサン(即ち、(メタ)アクリロイル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン)は、必須成分であって、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(メタ)アクリロイルオキシブチル基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基などの(メタ)アクリロイルオキシ基置換1価炭化水素基を、好ましくは分子鎖(両)末端のケイ素原子に結合した置換基として、少なくとも1個、好ましくは1〜10個、より好ましくは2〜4個含有し、分子鎖末端および/または分子鎖途中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiHで表されるヒドロシリル基)を少なくとも1個、好ましくは2〜200個程度含有する、好ましくは直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが望ましく、その重合度(または分子中のケイ素原子の数)としては、好ましくは2〜10,000、より好ましくは10〜1,000、特に好ましくは20〜200程度である。
【0013】
(a)成分としては、例えば下記式で表されるものを挙げることができる。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
(上記式中、Rは水素原子またはメチル基である。lは1〜8,000、好ましくは1〜1,000、より好ましくは1〜200の整数、mは0〜8,000、好ましくは0〜1,000、より好ましくは0〜200の整数、nは1〜8の整数である。lとmの合計あるいはlとmとnの合計は1〜10,000、好ましくは10〜8,000、特に好ましくは20〜200の整数である。)
【0018】
上記例では、Si原子に結合する置換基(1価炭化水素基)としてメチル基である場合を例示したが、メチル基に限らず、このほかにエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、あるいはフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等の芳香族炭化水素基(アリール基、アラルキル基)を有するものも使用できる。
【0019】
また、この(a)成分としては、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個以上有していればよいが、本組成物が後記(b)成分を含有しない場合は、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有しているものを用いるのが好ましい。
【0020】
本組成物中の(a)成分の含有量は、5〜100重量部、好ましくは20〜100重量部、より好ましくは20〜90重量部である。(なお、(a)成分と後記(b)成分との合計量は、100重量部とする。)
【0021】
本組成物は、この(a)成分のオルガノポリシロキサンを含有することにより、本組成物から成形される接着性シリコーンゴムエラストマーフィルムが、高温で各種基体に熱圧着する際に、(a)成分に由来するSi−H結合が切断し、通常の基体表面に多数存在する−OH基、−H基(活性水素基)等と化学結合(例えば、−OSi−、−Si−Si−等)を形成するので、基体とフィルムの接着を強固なものとすることができる。なお、この接着強度を発現させるためには、熱圧着時の温度としては150℃以上、好ましくは160℃以上とすることが必要である。
【0022】
[(b)成分]
(b)成分の一分子中に(メタ)アクリロイル基2個以上を有し、ヒドロシリル基を有しないオイル状オルガノポリシロキサンとしては、例えば下記一般式(I)で表されるものを挙げることができる。
【0023】
【化5】
〔式中、R1 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、Xは独立に下記一般式(II):
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、R2 は炭素原子数2〜4の2価炭化水素基または酸素原子であり、R3 は1〜3個の(メタ)アクリロイル基を有する炭素原子数4〜25の1価有機基であり、R4 は独立に非置換または置換の炭素原子数1〜9の1価炭化水素基であり、R5 は独立に炭素原子数1〜18の1価炭化水素基であり、またpは1〜3の整数であり、qは0〜2の整数であり、かつpとqの合計は1〜3である。)で表わされる基であり、また、Lは8〜10,000、好ましくは18〜1,000、より好ましくは48〜500の整数である。〕
【0026】
上記一般式(I)で表わされる一分子中の(メタ)アクリロイル基の数は3以上であることが好ましく、さらには4以上であることがより好ましい。
【0027】
上記一般式(I)において、R1 は好ましくは置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。この1価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;または、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部をハロゲン原子、シアノ基等の置換基で置換した、クロロメチル基、シアノエチル基、トリフルオロプロピル基などの基等が挙げられるが、R1 の50モル%以上がメチル基であり、かつ25モル%以下がフェニル基であるものが好ましく、より好ましくは80モル%以上、特に90モル%以上(80〜100モル%、特に90〜100モル%)がメチル基であり、10モル%以下(0〜10モル%)がフェニル基であるものが望ましい。
【0028】
上記一般式(II)におけるR2 は、耐水性の点からみて好ましくは2価炭化水素基である。この2価炭化水素基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基等の炭素原子数2〜4のアルキレン基が挙げられるが、好ましくはエチレン基である。
【0029】
また、上記一般式(II)におけるR3 は、好ましくは2〜3個、更に好ましくは3個の(メタ)アクリロイル基(特に、(メタ)アクリロイロキシ基として)を有する。該(メタ)アクリロイル基の具体例としては、CH2=CHCO−、CH2=C(CH3)CO−が挙げられる。R3 の具体例としては、CH2=CHCOOCH2CH2−、[CH2=C(CH3)COOCH2]3C−CH2−、(CH2=CHCOOCH2)3C−CH2−、(CH2=CHCOOCH2)2C(C2H5)CH2−等の、1〜3個のアクリロイロキシ基またはメタクリロイロキシ基で置換された炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数2〜6のアルキル基などが挙げられるが、好ましくは、CH2=CHCOOCH2CH2−、[CH2=C(CH3)COOCH2]3C−CH2−、(CH2=CHCOOCH2)3C−CH2−、(CH2=CHCOOCH2)2C(C2H5)CH2−、CH2=C(CH3)COOCH2CH2−、[CH2=C(CH3)COOCH2]2C(C2H5)−CH2−および(CH2=CHCOOCH2)[CH2=C(CH3)COOCH2]CH−、更に好ましくは、[CH2=C(CH3)COOCH2]3C−CH2−、(CH2=CHCOOCH2)3C−CH2−、(CH2=CHCOOCH2)2C(C2H5)CH2−、(CH2=CHCOOCH2)[CH2=C(CH3)COOCH2]CH−である。
【0030】
一般式(II)におけるR4 は、好ましくは置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である。R4 の具体例としては、一般式(I)におけるR1 として例示したものと同じものが挙げられるが、R1 の場合と同様に、R4 の50モル%以上がメチル基であり、かつ25モル%以下がフェニル基であるものが好ましく、より好ましくは80モル%以上、特に90モル%以上(80〜100モル%、特に90〜100モル%)がメチル基であり、10モル%以下(0〜10モル%)がフェニル基であるものが望ましい。
【0031】
一般式(II)におけるR5 は、好ましくは置換または非置換の炭素原子数1〜8の1価炭化水素基である。R5 の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基等が挙げられるが、好ましくはアルケニル基等の脂肪族不飽和基である場合を除く。
また、一般式(I)において、Lは、好ましくは48〜1,000の整数である。
【0032】
一般式(I)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、具体的には下記のものを挙げることができる。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
【化16】
【0043】
【化17】
【0044】
【化18】
【0045】
【化19】
【0046】
【化20】
【0047】
【化21】
【0048】
【化22】
【0049】
【化23】
【0050】
【化24】
【0051】
【化25】
【0052】
【化26】
【0053】
【化27】
【0054】
【化28】
および
【0055】
【化29】
〔上記式中、R’はメチル基、フェニル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基を表す。Lは、式(1−1)〜(1−11)については8〜10,000であり、式(1−12)〜(1−23)については10〜10,002である。〕
【0056】
上記一般式(I)で表される(b)成分のオルガノポリシロキサンは感放射線性基として−OR3 基を有している(即ち、一分子中に2〜18個、好ましくは3〜12個、より好ましくは4〜12個の(メタ)アクリロイル基を有している)ので、紫外線等の放射線照射により容易に硬化するという特徴を持っている。このオルガノポリシロキサンは1種単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
上記一般式(I)のオルガノポリシロキサンは、例えば、対応するクロロシロキサンと活性水酸基を有する(メタ)アクリロイル官能性化合物との脱塩化水素反応等により製造することができる。ここでクロロシロキサンとしては下記式で表されるものが例示される。
【0058】
【化30】
【0059】
活性水酸基を有する(メタ)アクリロイル官能性化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパン等が例示されるが、目的とするオルガノポリシロキサンが各末端のケイ素原子に結合した2〜9個の(メタ)アクリロイル基を含有する基を有することが好ましいことから、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシ-1-アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパンが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0060】
本組成物中の(b)成分の含有量は、95〜0重量部、好ましくは80〜0重量部、より好ましくは80〜10重量部である。(なお、上記(a)成分と(b)成分との合計量は、100重量部とする。)
【0061】
[(c)成分]
(c)成分としてのアルコキシシランまたはアルコキシシランの部分加水分解縮合物(即ち、分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上の残存アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン(オリゴマー))としては、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0062】
即ち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン、テトラブトキシシラン、テトラ(イソブトキシ)シラン、テトラ(tert-ブトキシ)シラン等のテトラアルコキシシシラン等のテトラアルコキシシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリ(イソプロポキシ)シラン、トリブトキシシラン、トリ(イソブトキシ)シラン、トリ(tert-ブトキシ)シラン等のトリアルコキシハイドロジェンシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等の1価炭化水素基として、低級アルキル基、アリール基等を有するオルガノトリアルコキシシラン、並びにこれらのアルコキシシラン部分加水分解縮合物(即ち、分子中に1個、好ましくは2個以上の残存アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン(オリゴマー))等が挙げられる他、下記のオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0063】
【化31】
【0064】
【化32】
【0065】
【化33】
【0066】
【化34】
(上記式中、nは0〜100、好ましくは0〜50の整数である。)
【0067】
また、同じく(c)成分であるオルガノシランまたはオルガノシロキサンで変性されたイソシアヌレートは、ビニル基、アリル基等のアルケニル基を有するイソシアヌレートと、SiH基を有するオルガノシランまたはオルガノシロキサンとを白金触媒の存在下で付加反応させることにより合成することができる(特公昭45-2354号公報参照)。この成分としては、例えば、下式で表されるものを挙げることができる。
【0068】
【化35】
【0069】
【化36】
【0070】
【化37】
(式中、Rは独立に水素、アルキル基、アラルキル基、低級アルケニル基、アリール基である。)
【0071】
本組成物に上記(c)成分を含有させることによって、低温下における接着力が向上するので有効である。
この(c)成分の含有量は、上記(a)及び(b)成分の合計量100重量部当り0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。
【0072】
[(d)成分]
(d)成分の放射線増感剤としては、特に限定されないが、好ましくはベンゾフェノンなどのベンゾイル化合物(またはフェニルケトン化合物)、特に、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンなどのカルボニル基のα−位の炭素原子上にヒドロキシ基を有するベンゾイル化合物(またはフェニルケトン化合物);2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビスアシルモノオルガノフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4,-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のオルガノホスフィンオキサイド化合物;更にイソブチルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル化合物;アセトフェノンジエチルケタール等のケタール化合物;チオキサントン系化合物;アセトフェノン系化合物等が例示される。これらは1種単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
(d)成分の含有量は、有効量でよいが、例えば上記(a)と(b)成分の合計量100重量部当り、通常0.5〜10重量部、好ましくは1.0〜5.0重量部である。
【0073】
<接着性シリコーンエラストマーフィルム>
本発明の接着性シリコーンエラストマーフィルムは、上記放射線硬化性シリコーンゴム組成物をフィルム状に成形した後、放射線を照射して硬化させることにより得ることができる。
本組成物はペースト状であり、市販のコーターにて連続的に成形できる。また、その紫外線架橋型の硬化工程は、市販の紫外線照射装置(水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライド灯、キセノン水銀灯等)を用いて連続的に実施することができる。照射するエネルギーは、 200 〜 10,000 mJ / cm 2 が好ましく、照度は 40 〜 1,000 mW / cm 2 が好ましい。また、照射装置内部は、発熱の影響を避けるために、ファン等により冷却することが好ましい。
なお、本発明の接着性シリコーンエラストマーフィルムは、シートである場合を含むものである。
【0074】
<被覆体の製造>
上記のようにして得られるシリコーンエラストマーフィルムで基体の一部または全部を覆い、ついで加熱して該フィルムを基体に接着させることにより、被覆体を得ることができる。この際、加熱温度は、80〜250℃が好ましく、さらに100〜200℃が好ましい。基体としては、Si、Al、Cu、Ni、Cr、Au、Agおよびその他の各種金属、エポキシ樹脂、ベークライト、ポリイミド、ポリエステル、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0075】
<構造体の製造>
前述のシリコーンエラストマーフィルムを二つの基体間に挟み、ついで加熱して該フィルムを両基体に接着させて、両基体を相互に結合させることにより、構造体を得ることができる。この際、加熱温度は、 80 〜 250 ℃が好ましく、さらに 100 〜 200 ℃が好ましい。基体としては、Si、Al、Cu、Ni、Cr、Au、Agおよびその他の各種金属、エポキシ樹脂、ベークライト、ポリイミド、ポリエステル、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0076】
<ダイボンディング方法>
通常市販のダイボンディングマウンターを用いて行うことができる。また、熱プレス等によっても同様な効果が得られる。
例えば、基体(基板)上に、接着性シリコーンエラストマーフィルムを載置し、これに対して半導体チップをマウントした加圧ツールを圧着すると同時にヒーター加熱して、半導体チップを接着性シリコーンエラストマーフィルムを介して基体(基板)と一体とした接合体を得ることができる。
【0077】
【実施例】
以下に、本発明を実施例(および比較例)によって説明する。なお、例中、部は重量部、式中のMeはメチル基、Phはフェニル基、Etはエチル基を表す。アクリロイル官能性オルガンポリシロキサンは、特開2000-234060号公報に準じて合成した。
【0078】
[実施例1]
(b)(メタ)アクリロイル基含有オルガノポリシロキサンとして下記構造の化合物を100部、
【0079】
【化38】
【0080】
(d)2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを2部、
(c)下式構造のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を3部、および
【0081】
【化39】
(但し、mが1〜7の整数である混合物)
【0082】
(a)下記構造のアクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサンを20部
【0083】
【化40】
(式中、l=20、m=80)
混合し、放射線硬化性シリコーンゴム組成物を得た。(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=2.5/100)
【0084】
この組成物をNiメッキ金型(縦100mm×横100mm、深さ1mm)に流し込み、メタルハライド水銀灯2灯を備えたコンベア炉(照度:400mW/cm2 )内で2秒間、紫外線を照射し(照射量:800mJ/cm2 )、放射線硬化させた。得られた接着性シリコーンエラストマーフィルムの硬さをJIS K6301に従って測定した。なお、硬さはスプリング式A型試験機で測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
次に、上記シリコーンエラストマーフィルムを縦25mm×横10mmに切り、基体(基板)としてアルミニウム、シリコンウエハ、ポリイミドフィルム、ガラスまたはポリカーボネートの各2枚のテストピース間に挟み、これを9.81 kPa(100gf/cm2)で圧着し、150℃で60分間加熱硬化させて構造体を製造し、せん断接着力を測定した。その結果を表2に示す。
【0086】
[実施例2]
上記(c)成分のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物3部に代えて、下記構造のエポキシ基含有ポリアルコキシシロキサンを3部用いる以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0087】
【化41】
(式中、n=6)
【0088】
[実施例3]
上記(c)成分のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物3部に代えて、下記構造のトリイソシアヌレートシリコーン変性化合物を1部用いる以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=0.8/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0089】
【化42】
【0090】
[実施例4]
上記(a)成分のアクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサン20部に代えて、下記構造のアクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサンを20部用いる以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0091】
【化43】
(式中、m=20,n=20)
【0092】
[実施例5]
上記(a)成分のアクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサンの添加量20部を5.0部に変更する以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=2.9/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0093】
[実施例6]
上記(a)成分のアクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサンの添加量20部を100部に変更する以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=1.5/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0094】
[実施例7]
上記(b)成分の(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン(100部)を含有させず、かつ、(a)成分の上記アクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサンの添加量20部を100部に変更する以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=3/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0095】
[比較例1]
上記(a)成分のアクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサン(20部)を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=3/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0096】
[比較例2]
上記テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物の添加量3部を0.05部に変更する以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=0.04/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0097】
[比較例3]
上記テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物の添加量3部を50部に変更する以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=42/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0098】
[比較例4]
上記(a)成分のアクリロイル基含有メチルハイドロジェンポリシロキサンの添加量20部を1部に変更する以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し(なお、重量基準で、(c)/[(a)+(b)]=3.0/100)、この組成物を用いて接着性シリコーンエラストマーフィルム及び構造体を製造し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表1,2に示す。
【0099】
【表1】
<800mJ/cm2 照射後の硬さ>
注) JIS K6301に規定されるスプリング式A型試験機で測定
【0100】
【表2】
注)単位=MPa
【0101】
【発明の効果】
本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物は、成形後の短時間の放射線照射により均一な形状で清浄な接着性シリコーンエラストマーフィルムを与える。
この接着性シリコーンエラストマーフィルムは、下記のような利点を有する。
(1)接着性が強固であり、加工性が良いので、カットにより定型の接着層を形成することができる。
(2)低弾性であるため、2つの異なる基板の貼り合わせにおける熱的及び機械的応力を緩和し、接着した製品の安定性および信頼性を向上できる。
(3)硬化物であるため、取扱いが簡単である。
(4)フィルム状成形品として供給されるため、使用時の工程(接着した製品を製造する工程)が合理化できる。
Claims (6)
- (a)一分子中にアクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる基1個以上とヒドロシリル基1個以上とを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 4.8〜90重量部、
(b)一般式(I):
で表される、一分子中にアクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる基を3〜18個有し、ヒドロシリル基を有しないオイル状オルガノポリシロキサン: 95.2〜10重量部、
(ただし、上記(a)成分と(b)成分の含有量の合計は、100重量部である。)
(c)アルコキシシラン、アルコキシシランの部分加水分解縮合物、オルガノシランで変性されたイソシアヌレート、およびオルガノシロキサンで変性されたイソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物: 0.1〜30重量部、および
(d)放射線増感剤: 有効量
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物。 - (b)成分において、一分子中のアクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる基が4〜18個である、請求項1記載の組成物。
- (a)一分子中にアクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる基1個以上とヒドロシリル基1個以上とを有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 4.8〜100重量部、
(b)一分子中にアクリロイル基およびメタクリロイル基から選ばれる基2個以上を有し、ヒドロシリル基を有しないオイル状オルガノポリシロキサン: 95.2〜0重量部、
(ただし、上記(a)成分と(b)成分の含有量の合計は、100重量部である。)
(c)アルコキシシラン、アルコキシシランの部分加水分解縮合物、オルガノシランで変性されたイソシアヌレート、およびオルガノシロキサンで変性されたイソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物: 0.1〜30重量部、および
(d)放射線増感剤: 有効量
を含有する放射線硬化性シリコーンゴム組成物をフィルム状に成形し、得られたフィルムを放射線硬化させることによって得られる接着性シリコーンエラストマーフィルム。 - 請求項3に記載の接着性シリコーンエラストマーフィルムで基体の一部又は全部を覆い、ついで加熱して該フィルムを基体に接着させることにより得られるシリコーンエラストマーフィルム被覆体。
- 請求項3に記載の接着性シリコーンエラストマーフィルムを二つの基体間に挟み、ついで加熱して該フィルムを接着させ両基体を相互に結合させることによって得られる構造体。
- 請求項3に記載の接着性シリコーンエラストマーフィルムをダイと該ダイを装着すべき基体の所定箇所との間に挟んで配置し、該フィルムを該ダイと基体との間で加熱して接着させることを特徴とするダイボンディング方法。
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