JP4182386B2 - 回路遮断器の遮断機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器の遮断機構に関し、特に可動接触子閉成状態においてトグルリンクを鎖錠するラッチと、このラッチを係止するラッチ受けとの係合面の形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記回路遮断器の遮断機構は一般に、回動自在に支持されたラッチと、回動自在に支持され常時は前記ラッチを係止してその回動を阻止するラッチ受けとを備え、前記ラッチは可動接触子の閉成状態においてトグルリンクを鎖錠して遮断スプリングを蓄勢状態に維持するとともに、異常時に引外し装置が動作して前記ラッチ受けが回転駆動されると前記係止を外されて回動し、前記トグルリンクの鎖錠を解いて前記遮断スプリングの蓄勢力により前記可動接触子を開離させるように構成されている。
【0003】
図3はこの種の遮断機構の一例を示す側面図、図4はIV−IVに沿う断面図である。図4において、回路遮断器の各相電路には前後一対の固定接触子1及び2と、その間を橋絡する可動接触子3とからなる電流遮断部を備えている。可動接触子3は絶縁物からなる各極一体の可動接触子ホルダ4に保持され、図示しないケースとの間に挿入された圧縮コイルばねからなる接触スプリング5により固定接触子1,2に押圧されている。可動接触子3は、捩りばねからなる遮断スプリング6の蓄勢力を受けて図4の時計方向に回転駆動される遮断レバー7で、2点鎖線で示すように押し下げられることにより固定接触子1,2から開離して電流遮断するが、図示閉成状態では遮断レバー7は図示実線位置に拘束され、遮断スプリング6は蓄勢状態に維持されている。
【0004】
図3及び図4において、図示遮断機構は、左右にサイドプレート8a(図4)を有するフレーム8に機構部品が支持されてユニット化されている(図3では手前側のサイドプレート8aは除かれている。)。フレーム8には、蝶形の操作ハンドル9がハンドル軸10を介して回動可能に支持され、またこのハンドル軸10にはラッチ11が回動自在に連結支持されている。ラッチ11は先端のL曲げ部11aを除いて左右に側板を有する二股状で、操作ハンドル9を両側から挟んでいる。一方、操作ハンドル9には上リンク12の上端が連結軸13を介して連結され、上リンク12の下端には下リンク14の上端がコ字形ピン15の一端を介して連結されている。上リンク12及び下リンク14はいずれも左右に側板を有し、上リンク12は操作ハンドルを両側から挟み、下リンク14は上リンク12を両側から挟んでいる。コ字形ピン15は他端がラッチ11に架けられ、上リンク12及び下リンク14をラッチ11に対して拘束している。上リンク12と下リンク14とは、トグルリンクを構成している。
【0005】
下リンク14の下端には伝動ピン16が装着され、この伝動ピン16の両端はフレーム側板8aにあけられた長穴17に滑動自在に挿入・案内されている。そして、この伝動ピン16とクロスするように、遮断レバー7にもう一方の伝動ピン18が装着されている。すなわち、遮断レバー7は一対あり、それらは両端が図示しないケースに回動自在に支持された開閉軸19に間隔を介して結合され、この遮断レバー7,7間に渡るように伝動ピン18が装着されている。開閉軸19には両端から一対の遮断スプリング6,6がそれぞれ嵌め込まれ、その一端は伝動ピン18に係合され、他端はフレーム8に係合されている。しかして、遮断スプリング6は捩られて蓄勢状態にあり、遮断レバー6を図4の時計方向に回動させようとして、伝動ピン18から伝動ピン16に対して、図3に示すように押上げ力Pを作用させている。
【0006】
上記力Pにより下リンク14の伝動ピン16は長穴17に沿って上方に移動しようとし、その結果として下リンク14は伝動ピン16を支点に図3の反時計方向に回動しようとするが、上端がコ字形ピン15で拘束されているため動けず、図示姿勢を保っている。同時に、ラッチ11には下リンク14から、コ字形ピン15を介して引張力Qが作用する。そのため、ラッチ11はハンドル軸10を支点に図3の時計方向に回動しようとするが、ラッチ受け20に係止されて図示姿勢に保持されている。ラッチ受け20は、上下に延びる板体の略中間に左右一対の腕20aが折り曲げ形成され、かつこの腕20aの近傍で板体部分に方形の窓穴があけられた形状で、腕20aを貫通する支持軸21を介してフレーム8に回動自在に支持され、窓穴の下縁の係合面20bがラッチ11の係合面11bと係合し、ラッチ11が回動しないように係止している。このラッチ受け20は、ラッチ11から力を受け、図3の時計方向に回動しようとするが、左右に突出する舌片20cがフレーム側板8aの切欠端縁に当接して回動を阻止され、図示直立姿勢に保持されている。なお、ラッチ受け20の下端部とフレーム8との間には、圧縮コイルばねからなる復帰スプリング22が挿入され、ラッチ受け20は図3の時計方向に付勢されている。
【0007】
上記遮断機構において、回路遮断器を流れる電流が過電流状態になると、ラッチ受け20は図示しない過電流引外し装置から、図3に示すように引外し操作力Rを受け、破線位置まで反時計方向に回動する。これにより、ラッチ11は係止が解かれ、時計方向に回動可能になる。その結果として、トグルリンク12,14はく字状に崩れ、遮断レバー7は遮断スプリング6の蓄勢力により図4の時計方向に回転駆動される。この遮断レバー7は可動接触子ホルダ4を介して可動接触子3を押し下げ、これを固定接触子1,2から開離させて電流を遮断する。
【0008】
図5は、このような遮断機構におけるラッチ11とラッチ受け20の従来の係合部を拡大して示す縦断面図である。図5において、ラッチ11はその係合面11bがラッチ受け20の係合面20bに係合しているが、係合面11b及び20bはいずれも平坦面で、それらは例えばS点で接触しているとすると、S点ではラッチ11に作用する力Q(図3)に基づいて、ラッチ11からラッチ受け20に対して係合力Tが作用する。
【0009】
さて、上述した過電流発生時において、ラッチ受け20を反時計方向に回転駆動するための引外し動作荷重は、係合面11bを係合面20bから滑り落とす際の摺動摩擦負荷、ラッチ受け20と支持軸21との間に作用する摩擦負荷、復帰スプリング22の抗力及び係合面20bに作用する係合力Tにより時計方向に生じる回転モーメントM(図5)の4種類に分けられる。回転モーメントMは、支持軸21の軸心から係合力Tの作用線までの腕の長さをrとすると、M=rTとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の遮断機構において、機構部品の部品精度や組立精度によりラッチ11とラッチ受け20との係合点が、図5において例えばSからS'に変化し、それに伴ない腕の長さもΔrだけ変化すると、回転負荷Mは(r+Δr)Tに変化する。つまり、係合点Sの位置変化が、そのまま回転負荷Mに影響する。そのため、従来はラッチ受け20の動作荷重が遮断機構の部品精度や組立精度の影響を受けやすく、従って引外し動作特性にバラツキが生じやすいという問題があった。なお、係合点Sの位置が変化すると、厳密には係合力Tも変化するが、ラッチ11を支持するハンドル軸10から係合力Tの作用線までの腕の長さm(図3)は係合点Sの位置変化に比べて十分に大きいので、係合力T自体の変化は無視できる。
この発明は上記した問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ラッチとラッチ受けとの係合点の変化によるラッチ受けの動作荷重への影響を抑えることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、回動自在に支持されたラッチと、回動自在に支持され常時は前記ラッチを係止してその回動を阻止するラッチ受けとを備え、前記ラッチは可動接触子の閉成状態においてトグルリンクを鎖錠して遮断スプリングを蓄勢状態に維持するとともに、異常時に引外し装置が動作して前記ラッチ受けが回転駆動されると前記係止を外されて回動し、前記トグルリンクの鎖錠を解いて前記遮断スプリングの蓄勢力により前記可動接触子を開離させる回路遮断器の遮断機構において、前記ラッチの前記ラッチ受けとの係合面を凸円弧面に形成し、この凸円弧面と係合する前記ラッチ受けの係合面を前記凸円弧面よりも曲率半径の大きい凹円弧面に形成するものである(請求項1)。このような手段によれば、ラッチからラッチ受けに作用する力Tの作用線は、係合点Sの位置に関わらず常に凹円弧面の曲率中心を通るため、係合点Sの位置の変化による腕の長さrの変化は最小限に抑えられる。
【0012】
請求項1において、前記凹円弧面の曲率中心を前記ラッチ受けの回動支持軸の軸心と一致させれば、力Tの作用線は前記回動支持軸の軸心を通ることになり、腕の長さrは0になることから、係合点Sの位置の変化による腕の長さrの変化も0になる(請求項2)。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の実施の形態を示すもので、ラッチとラッチ受けとの係合部の縦断面図である。図1において、従来構成と相違するのは、ラッチ11のラッチ受け20との係合面11bが凸円弧面に形成され、この凸円弧面11bと係合するラッチ受け20の係合面20bは凸円弧面11bより曲率半径の大きい凹円弧面に形成されている点である。しかも、図1では、凹円弧面20bの曲率中心Xはラッチ受け20の回動支持軸21の軸心Yと一致している(Y=X)。そこで、図1においては、図示の通り係合力Tの作用線は支持軸の軸心Yを通り(r=0)、係合力Tに基づくラッチ受け20に対する回転負荷Mが生じない。従って、係止点SがS'に変化しても回転負荷Mは常に0である。
【0014】
一方、図1においては、係合力Tの作用線が支持軸21側に傾いているため、図3に示すように、図5の場合に比べてハンドル軸10から係合力Tの作用線までの腕の長さnが小さくなり(n<m)、係合力T自体が大きくなる。そのため、係合面11b,20b間の摩擦負荷も大きくなるが、これを抑えたいときには、図2の実施の形態に示すように、係合面20bの曲率中心Xを支持軸21の軸心から反ラッチ側にずらせるとよい。すなわち、図2においては、曲率中心Xは例えば支持軸21の外周面上に設定されている。これにより、係合力Tの作用線の傾きが小さくなり、図3に示した腕の長さn'が大きくなって(n'>n)、係合力Tが抑えられる。また、図2において、係止点SがS'に変化すると、支持軸21の軸心から係合力Tの作用線までの腕の長さはrからr'に変化するが、その変化は僅かであり(r≒r')、係合力Tによるラッチ受け20への回転負荷Mもほとんど変化しない。
【0015】
【発明の効果】
以上の通り、この発明によれば、部品精度や組立精度によりラッチとラッチ受けとの係合点の位置がばらついても、ラッチからラッチ受けに作用する係合力に基づく回転負荷の大きさにほとんど影響がなく、安定した引外し特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す遮断機構の要部縦断面図である。
【図2】この発明の異なる実施の形態を示す遮断機構の要部縦断面図である。
【図3】従来の遮断機構を示す側面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図3の要部縦断面図である。
【符号の説明】
11 ラッチ
11b 係合面
20 ラッチ受け
20b 係合面
21 支持軸
Claims (2)
- 回動自在に支持されたラッチと、回動自在に支持され常時は前記ラッチを係止してその回動を阻止するラッチ受けとを備え、前記ラッチは可動接触子の閉成状態においてトグルリンクを鎖錠して遮断スプリングを蓄勢状態に維持するとともに、異常時に引外し装置が動作して前記ラッチ受けが回転駆動されると前記係止を外されて回動し、前記トグルリンクの鎖錠を解いて前記遮断スプリングの蓄勢力により前記可動接触子を開離させる回路遮断器の遮断機構において、
前記ラッチの前記ラッチ受けとの係合面を凸円弧面に形成し、この凸円弧面と係合する前記ラッチ受けの係合面を前記凸円弧面よりも曲率半径の大きい凹円弧面に形成したことを特徴とする回路遮断器の遮断機構。 - 前記凹円弧面の曲率中心を前記ラッチ受けの回動支持軸の軸心と一致させたことを特徴とする請求項1記載の回路遮断器の遮断機構。
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