JP4182234B2 - 導電ペースト用銅粉およびその製造方法 - Google Patents

導電ペースト用銅粉およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,耐酸化性および焼結性に優れた導電ペースト用銅粉に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
各種基板の表面や内部或いは外部に電気回路や電極を形成する手段として導電ペーストが多く使用されている。導電ペーストに含まれる導電フィラー(金属粉) としては,銅粉と銀粉の使用が一般化している。最近では,銅粉を導電フィラーとした導電ペースト(銅系ペースト)は,銀粉を導電フィラーとした導電ペースト(銀系ペースト) に比べて,マイグレーションが起きにくい,耐ハンダ性に優る,低コスト化が可能である等の理由により,一層汎用化されつつある。
【0004】
積層セラミックコンデンサー(MLCC)等のチップ部品に銅系ペーストを塗布し,これを加熱して該ペースト中の銅粉を焼結することによって,該チップ部品に電極を形成するさいには,ペースト中の銅粉が酸化されやすいので,当該加熱処理を不活性ガス(通常は窒素ガス)中で行うのが通常である。ただし,ペースト中の炭素質成分が焼結時に残存していると焼結に悪影響を及ぼすので,ペースト中の樹脂や溶剤の気化を促進させるために若干の酸素を混入して加熱する(脱バインダー処理と呼ばれている)ことがあり,この場合には,銅粉の表面も酸化されることがある。
【0005】
銅粉が酸化されて粒子表面が酸化銅で覆われると,焼結性,耐食性あるいは導電性に悪影響を与えるので,好ましくない。この銅粉の酸化を抑えるため,銅粒子表面をPt,Pd,Ag,Au等の貴金属でコートしたもの,SiO2系の酸化物でコートしたもの,あるいは,比較的多量のNiでコートして耐酸化性を高めたものなどが知られている。例えば特許文献1にはニッケルの厚みを0.1ないし1.0μm程度としたNiコート銅粉が記載されている。この銅粉では,このようにニッケルの膜厚を厚くしないと良好な耐酸化性が得られず,さらにはニッケル量が多いためにコストが高くなってしまう。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−342908号公報
【発明が解決しようとする課題】
銅粒子表面をPt,Pd,Ag,Au等の貴金属でコートすれば,十分な耐酸化性を確保できるが,これらは稀少金属元素で高価なためコストアップに繋がってしまう。比較的低価格であるAgについてもマイグレーションが発生しやすいといった問題がある。SiO2系の酸化物で表面をコートした場合も,耐酸化性を確保できるが,焼結性が悪くなることがある。Niコートにおいても耐酸化性を確保することができる。しかしながら,Niコートで耐酸化性を確保するためには通常は多量のNiが必要であり,このために銅粉自身の融点が高くなって焼結性が悪化したり,電気抵抗が高くなる等の弊害が生じていた。
【0007】
本発明の主たる課題は,コート銅粉の耐酸化性を維持しつつ,焼結性を向上させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決すべく種々の試験研究を続けたが,ニッケルが銅粒子の表面に均一にメッキされていれば,20nm以下といった極薄い膜厚であっても銅粉の耐酸化性を著しく向上できることがわかった。すなわち,本発明によれば,表面に膜厚0.5nm以上20nm以下好ましくは10nm以下の均一なニッケルメッキが施された銅粒子からなる導電ペースト用銅粉を提供する。さらに本発明によれば,表面に膜厚0.5nm以上20nm以下,好ましくは10nm以下の均一なニッケル合金メッキまたはコバルトメッキが施された銅粒子からなる導電ペースト用銅粉を提供する。ニッケル合金メッキの合金元素としてはCo,ZnまたはBの少なくとも1種を含むことができる。これらのメッキ銅粉は,酸化開始温度が250℃以上,好ましくは270℃以上である。酸化開始温度とは金属粉試料を大気中5℃/分の昇温速度で連続的に昇温したときに,酸化による重量増加率が0.5%になるときの温度を言う。この銅粉は平均粒径が0.1〜10μmのほぼ球状の粒子からなるものが好ましく,場合によっては,フレーク状,六角板状,円盤状,楕円体状あるいは不定形の粒子からなることができる。
【0009】
このような導電ペースト用銅粉は,純水あるいは純水と水溶性有機溶媒との混合溶媒中において,メッキ原料となる金属塩,その金属と錯体を形成する錯化剤,pH調整剤,消泡剤,還元剤および銅粉を攪拌しながら反応させることからなる無電解メッキ法によって製造することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
導電ペーストは,一般的に樹脂系バインダーと溶媒からなるビヒクル中に,導電フィラーを分散させた流動性のある流体である。前述のように,チップ部品の表面に塗布されたり細孔等に装填された導電ペースト(銅系ペースト)が導電体としての導体に焼成される場合,その焼成温度に至る前の200〜400℃の温度域で雰囲気中に少量の酸素を混入し,導電ペースト中の樹脂系バインダー成分を熱分解させる脱バインダー処理が実施されると,銅粉の表面が酸化して良好な導体焼成品にならないことがある。この意味から,導電フィラーとしての銅粉は耐酸化性に優れることが必要である。銅粉の耐酸化性は前記に定義した「酸化開始温度」で評価することができる。
【0011】
通常の銅粉の酸化開始温度は180〜190℃付近にあり,前記の脱バインダー処理時に表面が酸化される。脱バインダー処理時に銅粉の酸化が抑制されるには,酸化開始温度が250℃以上,好ましくは270℃以上,さらに好ましくは300℃以上である。本発明に従う銅粉はメッキ層が極めて薄いが酸化開始温度が250℃以上,好ましくは270℃以上を示す。
【0012】
本発明によれば,銅粉の耐酸化性を向上する手段として,銅の粒子表面にNiメッキ,Ni合金メッキまたはCoメッキを施す。これらのメッキ層はできるだけ膜厚が均一なことが望ましいが,適正な無電解メッキによると,均一なメッキ層が形成でき,膜厚が薄くても良好な耐酸化性を示すようになることがわかった。
【0013】
これらのメッキ層の膜厚は耐酸化性を確保するためには,後記の実施例に見られるように(図1参照),薄すぎると十分な耐酸化性が確保できず,厚すぎると焼結性の低下を引き起こしてしまう。
【0014】
具体的には,0.5nm以上,好ましくは2nm以上,粒径・形状によっては4nm以上のメッキ層の膜厚が必要である。膜厚がこれ未満であると,急激に酸化開始温度が低下し,十分な耐酸化性が確保できなくなってしまう。しかしメッキの膜厚が20nmを超えると,耐酸化性は十分に確保することはできるが,Cuよりも融点の高いNi(融点1726℃)やCo(融点1765℃)が粒子表面近傍に多くなりすぎて銅粉の融点が上昇し,焼結性が悪化してしまうので,メッキ層の膜厚は20nm以下,好ましくは10nm以下であるのがよい。また,CoについてはNiに比べて原料費が高く,またZnについては酸化物として析出する可能性もあることからも,膜厚は薄い方がよい。
【0015】
銅粉の粒子表面に形成されるNiメッキ,Ni合金メッキ,Coメッキの平均的な膜厚d[nm]の算出方法としては,メッキ膜が均一に形成していると仮定し,無電解Niメッキにより析出した金属量X[wt%] ,Niメッキ前の元粉の比表面積S[m2/g] および金属の密度ρ[ g/cm3]を用いて,次式により算出することができる。なお,メッキ前の元粉の比表面積Sが不明な場合は,メッキ後の銅粉の比表面積で代用しても実質上差し支えない。
d=X/(ρ×S)×10
また,Ni−Coメッキ,Ni−Znメッキ,Ni−BメッキのようなNi合金メッキの場合には,無電解メッキにより析出した一方の金属量X[wt%] ,他方の金属量Y[wt%] ,メッキ前の元粉の比表面積S[m2/g] およびそれぞれの金属の密度ρx[g/cm3],ρy[g/cm3]を用いて,次式により算出することができる。
d=〔X/(ρx ×S)×10〕+〔Y/(ρy ×S)×10〕
【0016】
メッキ量は,膜厚と銅粉の粒径や粒子形状ひいては比表面積に準ずることになるが,少なすぎると耐酸化性が確保できず,多すぎると焼結性が悪化してしまう。膜厚が0.5nm以上20nm以下において,メッキ量は一般には0.2wt%以上10wt%以下であればよい。
【0017】
メッキ金属の膜厚すなわち被覆量は,無電解ニッケルメッキ時における元粉の銅粉の比表面積,反応温度および時間,還元剤の種類と量,メッキ液の金属濃度,錯化剤の種類と濃度および反応液のpHにより制御することができる。
【0018】
これらのメッキを施す銅粉については,電解法,アトマイズ法,粉砕法,還元法等のいずれで製造されたものでもよく,脂肪酸等で表面処理された銅粉についても洗浄することなくメッキが可能である。銅粉の形状としては,球状, 球状以外の異形状いずれでもよい。球状粉は特にペースト焼成時の焼結密度を向上させるのに必要であり,異形状粉はペーストのレオロジーを制御するための重要な構成要素となりうる。球状銅粉の場合には平均粒径が0.1μm以上10μm以下のものが好ましい。0.1μm未満のものでは銅粉が凝集して均一な分散が得られず,10μmを超えると通常の電子部品や配線導体に要求される精密な電極や焼成パターンを形成することが困難になってしまうことおよび焼結性が悪化してしまう。粒子の形状がフレーク状(リン片状),六角板状,円盤状,楕円体状あるいは不定形状といったものでも本発明に従うメッキにより酸化開始温度を高めることができ,これら異形状の粒子をペースト中に導電フィラーの全部または一部として添加することにより,耐酸化性を低下させることなくペーストのレオロジーを制御することができる。
【0019】
以下に本発明に従う無電解メッキについてNiメッキを行なう場合を中心として説明するが,Ni合金メッキおよびCoメッキの場合も実質的に同様に適用できる。
【0020】
銅粉にNiを被覆する方法としては,物理蒸着法,メカニカルアロイング法,電解メッキ法,無電解メッキ法(化学メッキ法) ,置換メッキ法等があるが,銅粉に少量のNiで均一な被膜を形成するには無電解メッキ法が適することがわかった。ニッケルの無電解メッキ法として,酸性溶液中で次亜リン酸あるいはその塩を還元剤として使用する方法と,塩基性溶液中で次亜リン酸あるいはその塩,水素化ホウ素アルカリ金属塩,ジメチルアミンボランまたはヒドラジンを還元剤として使用する方法がある。少量のNiコートで酸化開始温度を250℃以上にするためには,塩基性溶液中での無電解ニッケルメッキが好ましい。
【0021】
微粒子に対する金属被覆で最も重要なポイントは,通常の成型物への金属被覆とは桁違いの表面積を有する点である。表面積が大きいので,このような微粒子粉末を,一般の成型物のメッキに使用されているメッキ液に侵せきしたならば,反応が急激に起こり,メッキ液が容器からオーバーフローするような事態となったり,急激な反応によりメッキ液の分解や粗雑で密着性の悪い被膜が析出するという問題があった。しかし,本発明に従う無電解メッキ法では,メッキ液のオーバーフロー,メッキ液の自己分解,粗雑で密着性の悪い被膜といった問題は解決され,効率良く均一且つ薄い被膜を作成することができ,これまで工業的な生産が困難とされていた微粒子への無電解メッキを行なうことができる。
【0022】
まず,無電解メッキ液中のNi原料としては,硫酸ニッケル,塩化ニッケルあるいはその水和物を使用するのがよい。Co原料,Zn原料,B原料についても同様であり,それらの硫酸塩や塩化物あるいはその水和物を使用すればよい。これら原料の溶媒としては,純水あるいは水溶性の有機溶媒を単独あるいは混合して使用することができる。水溶性の有機溶媒としては,エタノール,2−プロパノール,エチレングリコール等のアルコール,アセトン等のケトン,酢酸エチル等のエステル類などがある。水溶性有機溶媒を添加することにより,脂肪酸等で表面処理された銅粉についても,メッキ前処理として一般的な脱脂処理を行うことなくメッキ処理することが可能となり,コスト・生産性という面で優れている。銅粉表面に付着している非水溶性のステアリン酸等の高級脂肪酸およびその塩類も,無電解メッキの錯化剤として機能するようになると考えられる。
【0023】
水溶性の有機溶媒を添加すると,その添加量によってはニッケル水酸化物やニッケル錯体がコロイド成分あるいは固形成分としてメッキ液中に発生し,メッキ液が不均一になる場合もあるが,メッキ反応が進むにつれ,コロイド成分あるいは固形成分は溶解して,金属ニッケルに還元される。コロイド成分あるいは固形成分の溶媒への溶解度・溶解速度を変えることにより,メッキ速度を制御することができると考えられる。また有機溶媒の添加により,その添加量によってはメッキ液が均一液体からエマルジョンとなる場合もあるが,この場合も液―液平衡反応を経てメッキが進行するため,メッキ速度を制御することができると考えられる。
【0024】
無電解メッキにおける金属イオンの還元剤としては,水素化ホウ素アルカリ金属塩溶液,ジメチルアミンボラン溶液あるいはヒドラジン溶液が好ましい。水素化ホウ素アルカリ金属塩溶液としては,価格の面から水素化ホウ素ナトリウムの水溶液がより好ましく,メッキ反応速度を制御しやすいように,苛性ソーダ等を添加して強アルカリ性に調液したものを使用する。ヒドラジン水溶液を使用した場合は,還元力は水素化ホウ素ナトリウム等に比べて弱くなるが,ホウ素を被膜中に含有しないため純度の良いメッキ被膜を得ることができる。また,廃液中にホウ酸が残留しないため,廃液の処理費を低下させたり,メッキ液を再利用することが可能となるといったメリットがある。ヒドラジンを還元剤とした無電解メッキ浴は幾つか提案されているが,浴組成が複雑で,建浴に長時間を要し,建浴途中や昇温中に浴分解するなど浴安定性に問題があるため工業的には実用化されていないのが現状である。しかし,本発明の無電解メッキ浴は非常に安定であり,得られるNiコート銅粉,Ni合金コート銅粉,Coコート銅粉の品質はほぼ一定となる。
【0025】
メッキ反応については,銅粉をメッキ液に加えた後に攪拌しながら還元剤を添加し,還元剤の添加とともにメッキ反応を開始させる方法でもよいし,還元剤を含む液体に銅粉を混合し,これを攪拌しながらメッキ液を添加し,メッキ液の添加とともにメッキ反応を開始させる方法でもよい。いずれの方法でも,還元剤の自己分解反応を抑制でき,効率良く均一なメッキ層を銅粒子表面に形成できる。なお,ここでいうメッキ液は,金属塩,錯化剤,pH調整剤および/または消泡剤を主成分とした溶液であり,還元剤を含まないものを言う。
【0026】
メッキ液に添加する錯化剤としては,酒石酸,蓚酸,クエン酸,リンゴ酸,コハク酸,乳酸,サリチル酸, マロン酸, プロピオン酸, グルコン酸, アンモニア,脂肪酸あるいはそれらの塩を単独あるいは混合して使用することができる。錯化剤の種類により錯体の安定度定数が異なるため,錯化剤の種類および錯化剤の添加量により,反応速度を制御するこができ,耐酸化性のある均一なNiメッキ層,Ni合金メッキ(Ni−Coメッキ,Ni−Znメッキ,Ni−Bメッキなど)層,Coメッキ層を銅粉表面に形成することができる。錯化剤としては,とくに,酒石酸,蓚酸またはクエン酸のアルカリ金属塩あるいはアンモニアを使用することが好ましい。
【0027】
無電解メッキにおける反応液のpHは10以上であること,より望ましくは12以上が望ましい。pHが11未満であると,メッキ速度が速くなりすぎ制御不能となったり,メッキが不均一になったり,還元力が弱くなりすぎて反応に長時間を要してしまう。なお,特に限定しないが,pH調整には,アンモニア,水酸化ナトリウム,水酸化リチウムあるいは水酸化カリウムの水溶液あるいはアルコール溶液を使用することができる。
【0028】
メッキ液の成分としては,金属塩,錯化剤,pH調整剤の他に消泡剤がある。先にも述べたが,微粒子の金属被覆で問題となるのは,従来の成型物とは桁違いの表面積であり,一般の成型物のメッキに使用されているメッキ液に銅粉を浸漬したならば,反応が急激に起こり,メッキ液が容器からオーバーフローしてしまう。また,10μmの銅粉と0.1μmの銅粉とでは表面積が大きく異なり,0.1μmのものは10μmのものに比べて反応が激しい。そこで,急激な反応によるオーバーフローを防止するため本発明のメッキ浴では消泡剤を添加している。ポリグリコール系,シリコン系など様々な種類の消泡剤があるが,特に限定なく使用することができる。
【0029】
無電解メッキ中に,水の還元や還元剤の分解等により水素が発生することがある。発生した水素は,空気中の酸素と混ざることにより爆発限界に達して爆発する危険性があるため,無電解メッキ反応は窒素あるいは希ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0030】
メッキ反応は,雰囲気制御および温調が可能で攪拌機能を持った反応槽にて行うのがよい。メッキ反応を行う場合の好ましい一態様を説明すると,まず溶媒となる純水,水溶性有機溶媒あるいはそれらの混合液に,メッキ液原料となるNi塩,錯化剤およびpH調整剤を添加し攪拌してこれをA液とする。pH調整剤が無くても十分にpHを確保できる場合,あるいは後からpH調整剤を添加してpHを調整する場合は,Ni塩溶解の段階でpH調整剤を添加しなくてもよい。有機溶媒の種類によっては,メッキ液の原料すべてが溶解せずエマルジョンやコロイド溶液等を形成するものもある。その場合は,純水にNi塩および錯化剤を完全に溶解させた後,有機溶媒を添加することによりエマルジョンやコロイド溶液を調液して反応に用いる。
【0031】
次いで, A液に被メッキ体となる銅粉を投入しリパルプする。リパルプ後は必要に応じてpH調整剤を添加してpHを調整し,メッキを行う温度に温調する。このときの設定温度は還元剤の種類および溶媒により最適範囲が異なるが,90℃以下で溶媒が凝固しない温度であれば,いずれの温度でも実施でき,反応温度を変えることによりメッキ速度を制御することができる。銅粉の投入方法は,粉末状のものをそのまま添加しても,純水あるいは水溶性有機溶媒に分散したスラリー状の液体を添加しても良い。銅粉をメッキ液(A液)に投入するのではなく,還元液中に銅粉を分散させ,還元剤と共にして添加しても良い。
【0032】
A液の調液と並行して,純水あるいは水溶性の有機溶媒に還元剤およびpH調整剤を添加して攪拌,温調を行い還元液となるB液を作成する。還元剤としてヒドラジンを使用する場合は,pH調整剤を添加しなくてもよい。また,A液に被メッキ体となる銅粉を投入しなかった場合,B液中に銅粉を添加して還元液としてもよい。
【0033】
A液およびB液の調液後,A液中にB液を添加,あるいはB液中にA液を添加することにより無電解メッキ反応を開始する。反応を開始すると,水の還元あるいは還元剤の分解により水素が発生し始めるため,添加前に予め窒素ガスをフローしておく。窒素ガスは希ガス等の不活性ガスで代用してもよい。
【0034】
反応の終了については,所定のメッキ量になるまでの時間を予め調べておき,その時間で反応を終えるようにすることができる。また還元剤量,金属原料濃度,pHあるいは錯化剤量を調整することにより,所定のNiメッキ量に制御できる。反応終了後は,ろ過により固液分離し,ろ別分を純水または水溶性の有機溶媒で洗浄する。固液分離はろ過に限らず,遠心分離等の他の手段を用いても良い。
【0035】
ろ過により得られたケーキを不活性ガスまたは還元雰囲気中で50〜300℃の温度で数〜数十時間かけて乾燥することにより,耐酸化性および焼結性に優れた導電ペースト用銅粉を得ることができる。不活性ガスとしては窒素もしくは希ガスを使用し,水素あるいは一酸化炭素等の還元性ガスを混合して使用しても良い。
【0036】
【実施例】
〔実施例1〕
容量1L(Lはリットルを表す)のビーカーに,硫酸ニッケル六水和物67.3g,クエン酸三ナトリウム二水和物43.3gを秤量し,純水を500g加えてマグネティックスターラーで攪拌した。これに,下記の測定法による平均粒径2.8μm,比表面積0.46m2/g の銅粉(酸化開始温度=194℃)75gを加えた後,ビーカー上部に時計皿を置き,ビーカーと時計皿の間から窒素ガスをフローしながら,10分間リパルプした。銅粉が液中に十分に分散し,ビーカー底部に沈殿してないことを確認して,49wt%の水酸化ナトリウム水溶液47gと純水75gを添加し,温調を開始して,温度40℃, pH12.9のA液を作成した。
【0037】
他方,ヒドラジン一水和物の80wt%水溶液をB液として準備した。このB液17.4gを秤量し,これを,A液に添加することにより,メッキ反応を開始する。
【0038】
液温を40℃に維持しながらメッキ反応を進行させたが,B液添加後数分で反応液の色が変化し始め,60分間で反応を終了させた。反応終了後,反応液を吸引ろ過にて固液分離し,ろ別分を1Lの純水で洗浄した。洗浄後のケーキを雰囲気制御可能な乾燥器に入れ,窒素雰囲気中120℃で11時間かけて乾燥し,目的とする銅粉を得た。
【0039】
この銅粉を下記の測定に供したところ,Ni量3.2wt%,比表面積0.54m2/g であり,このことからNiコート膜厚は8nmと算出された。また,酸化開始温度は321℃であった。
【0040】
〔測定法〕
平均粒径:空気透過法( サブシーブサイザー) による。
比表面積:吸着媒に窒素を使用したBET一点法による。
Ni量:Niコート銅粉を塩酸と硝酸の混酸に加熱溶解し,過塩素酸処理した後,定容としてICP測定により算出した。
酸化開始温度:示差熱・重量分析計(TG−DTA)を使用し,参照サンプルとしてのα―アルミナ30mgと,サンプル銅粉約30mgをそれぞれアルミナパンに精秤後,大気中10℃/分の昇温速度で昇温を行い,サンプル銅粉の重量が初期値から0.5%増加したときの温度を酸化開始温度とした。
【0041】
本例で得られたNiコート銅粉4.09gに,旭ガラス株式会社製のガラスフリット(商品名ASF−1891)0.109g添加し,三菱レーヨン株式会社製のアクリル樹脂ビヒクル(商品名LR−981) 1.20gと混合した後,三本ロールで混練して導電性ペーストを作成した。
【0042】
得られた導電性ペーストを積層セラミックコンデンサチップに塗布し,840℃の窒素雰囲気中で30分間焼成した。焼結後の表面を電子顕微鏡で観察したところボイドはほとんどなく,焼結性が良好であることが確認できた。
【0043】
〔実施例2〕
反応溶媒として用いた純水500gに代えて,純水500gとイソプロピルアルコール250gの混合液を反応溶媒とした以外は,実施例1を繰り返してNiコート銅粉を得た。なお,B液添加前のA液のpHは13.4であった。
【0044】
得られたNiコート銅粉は,Ni量3.0wt%,比表面積0.45m2/g であった。Niコート膜厚は7.5nmと算出された。酸化開始温度307℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0045】
本例のNiコート銅粉を用いて実施例1と同じ条件でペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0046】
〔実施例3〕
錯化剤のクエン酸三ナトリウム二水和物43.3gに代えて,酒石酸ナトリウム二水和物9gとクエン酸三ナトリウム二水和物43.3gを使用してA液を作成し,且つ還元剤のヒドラジン一水和物に代えて水素化ホウ素ナトリウム3.5gを使用してB液を作成した以外は,実施例1を繰り返した。A液の反応前のpHは12.9であった。
【0047】
得られたNiコート銅粉は,Ni量0.7wt%,比表面積0.54m2/g であった。Niコート膜厚は2nmと算出された。酸化開始温度310℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0048】
本例のNiコート銅粉を用いて実施例1と同じ条件でペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0049】
〔実施例4〕
硫酸ニッケル六水和物量を67.3gから8.8gに変更し,被メッキ物の銅粉を平均粒径1.1μmの球状銅粉(比表面積1.2m2/g ,酸化開始温度167℃)に変えた以外は,実施例1を繰り返した。A液の反応前のpHは13.4であった。
【0050】
得られた銅粉は,Ni量2.4wt%,比表面積1.1m2/g であった。Niコート膜厚は2nmと算出された。酸化開始温度は270℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0051】
本例のNiコート銅粉を用いて実施例1と同じ条件でペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0052】
〔実施例5〕
被メッキ物として,ステアリン酸で表面処理したフレーク状銅粉(SEM観察による長辺側の平均粒径18μm,比表面積0.83m2/g ,酸化開始温度145℃)を使用した以外は,実施例2を繰り返した。A液の調整のさい,水酸化ナトリウム水溶液の添加とともに反応液はエマルジョンとなり,pHは13.5になった。
【0053】
得られた銅粉は,Ni量7.2wt%,比表面積1.4m2/g であった。Niコート膜厚は10nmと算出された。酸化開始温度は310℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0054】
実施例1のNiコート銅粉に,本例で得られたフレーク状のNiコート銅粉20%配合し,この混合銅粉をフイラーとした以外は,実施例1と同じ条件でペーストを作成したところ,チキソトロピー性が向上し,塗布時のペーストの垂れを抑制できた。このペーストを実施例1と同じ条件で焼成したことろ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0055】
〔実施例6〕
A液で使用した49wt%水酸化ナトリウム水溶液(pH調整剤)を47gから24.3gに変更し,A液とB液の反応時間を120分間とした以外は,実施例1を繰り返した。反応前のA液のpHは10.0であった。
【0056】
得られた銅粉は,Ni量0.50wt%,比表面積0.41m2/g であった。Niコート膜厚は1nmと算出された。酸化開始温度は281℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0057】
本例のNiコート銅粉を用いて実施例1と同じ条件でペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0058】
〔実施例7〕
メッキ反応温度を80℃とした以外は,実施例3を繰り返した。反応前のA液のpHは13.1であった。
【0059】
得られた銅粉は,Ni量3.6wt%,比表面積0.80m2/g であった。Niコート膜厚は9nmと算出された。酸化開始温度は312℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0060】
本例のNiコート銅粉を用いて実施例1と同じ条件でペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0061】
〔実施例8〕
被メッキ物の銅粉量を225g とした以外は,実施例1を繰り返した。反応前のA液のpHはpH13.4であった。
【0062】
得られた銅粉は,Ni量1.7wt%,比表面積0.45m2/g であった。Niコート膜厚は4nmと算出された。酸化開始温度は310℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0063】
本例のNiコート銅粉を用いて実施例1と同じ条件でペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0064】
〔実施例9〕
容量1Lのビーカーに,硫酸ニッケル六水和物10.09g,クエン酸三ナトリウム二水和物43.25g,酒石酸ナトリウム二水和物9gを秤量し,純水675gを加え,ケミスターラーで撹拌した。これに,平均粒径2.8μm,比表面積0.46m2/g の銅粉(酸化開始温度=194℃)225gを加えた後,反応槽上部より窒素ガスをフローしながら,10分間リパルプした。銅粉が液中に十分に分散し,ビーカー底部に沈殿していないことを確認して,49wt%の水酸化ナトリウム水溶液47gと純水75gを添加し,温調を開始して,温度40℃,pH12.4のA液を作成した。
【0065】
他方,実施例1と同様に,ヒドラジン一水和物の80wt%水溶液をB液として準備した。このB液17.4gを秤量し,これを,A液に添加することにより,メッキ反応を開始する。
【0066】
その後,実施例1と同様に,液温を40℃に維持しながらメッキ反応を進行させ,B液添加後数十分で反応液の色が変化し始め,120分間で反応を終了させた。その後は,実施例1を繰り返してNiコート銅粉を得た。
【0067】
得られたNiコート銅粉は,Ni量1.0wt%,比表面積0.42m2/g であった。Niコート膜厚は2.5nmと算出された。酸化開始温度は302℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0068】
本例で得られたNiコート銅粉4.2gに,実施例1と同様のガラスフリット0.16g,アクリル樹脂ビヒクル0.82g,希釈剤0.27gを添加し,混合した後,三本ロールで混練して導電ペーストを作成した。これを実施例1と同じ条件で焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0069】
また,得られたNiコート銅粉数gについて,光電子分光(ESCA)測定を行った。測定には日本電子製JPS-90MSを用い,X線源にはMgKα線を使用した。ワイドスキャンにて定性分析を行ったところ,Cu,Ni,O,Cに帰属されるピークが検出された。つぎに,Cuの2p3/2 ,Niの2p3/2 ,Oの1sおよびCの1sのピークについて,Arエッチング行いながら,深さ方向分析を行ったところ,図2の結果を得た。各ピークのピーク面積をエッチング深さに対してプロットすることにより得られたデプスプロファイルを図3に示した。なお,エッチング深さについては,純度99.9%のCu板を同条件にてArエッチングすることにより求めたエッチングレートから換算した。
【0070】
図2〜3の結果は,粉(粒子の集合体)として評価しているためはっきりとはしていないが,最外表面からの深さ1nmまで,Cuはほとんど検出されていないため,表面はほぼNiコートされ,Cuが剥き出しとなっている部位はないと推測することができる。
【0071】
また,Ni元素比とCu元素比が逆転するのは,深さ約3nmであり,この膜厚は,均一なコートと仮定して比表面積(BET値)値およびNi量から算出される膜厚値とほぼ一致する。つまり,銅粉の粒子に形成されたNiコートで均一な薄い被膜が粒子表面全体を覆っており,このことが,この銅粉の優れた耐酸化性と焼結性を具備する要因となっていることがわかる。
【0072】
〔実施例10〕
金属塩として,硫酸ニッケル六水和物10.09gに代えて,▲1▼硫酸ニッケル六水和物7.57g+硫酸コバルト七水和物2.71g,▲2▼硫酸コバルト七水和物5.41g+硫酸ニッケル六水和物5.04gを使用し,また銅粉として,平均粒径3.2μmで比表面積0.36m2/g の銅粉225gを使用した以外は実施例9と同様にしてA液を作成し,ヒドラジン一水和物のB液を52.1g使用した以外は,実施例9を繰り返してNi−Co合金メッキを該銅粉に施した。なお,B液と反応させる前のA液のpHは,▲1▼では13.8 ▲2▼では13.6であった。得られたNi−Co合金メッキ銅粉の特性を表1に示した。
【0073】
【表1】
Figure 0004182234
【0074】
表1の結果に見られるように,これらのNi−Co合金コート銅粉は耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。また,このNi−Co合金コート銅粉を用いて,実施例9と同じ条件でペースト作成し,焼成したところ,両者ともボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0075】
〔実施例11〕
金属塩として,硫酸ニッケル六水和物10.09g+硫酸亜鉛七水和物9.98gを使用した以外は,実施例10と同様にしてA液を作成し,このA液とB液52.1gを用いて実施例10を繰り返してNi−Zn合金メッキを銅粉に施した。なお,B液添加前のA液のpHは13.7であった。
【0076】
得られたNi−Zn合金コート銅粉は,Ni量1.0wt%,Zn量0.1wt%,比表面積(BET値)0.73m2/g であり,このNi−Zn合金コートの膜厚は3nmと算出された。酸化開始温度311℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。また,本例のNi−Zn合金メッキ銅粉を用いて実施例10と同じ条件でペースト作成し焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0077】
〔実施例12〕
金属塩として硫酸ニッケル六水和物30.26gを,銅粉として平均粒径0.7μmで比表面積1.83m2/g の銅粉225gを使用し,ヒドラジン一水和物水溶液のB液43.4g使用し,且つ第一工業製薬株式会社製の消泡剤(商品名:アンチフロストF−244 )を0.5g加えた以外は,実施例10と同様に反応を行なわせて,Niコート銅粉を得た。なお,B液添加前のA液のpHは13.5であった。
【0078】
本例で用いた銅粉は,他の例のものに比べると比表面積が約4倍程度大きい。このため消泡剤を使用しない場合には,液面が上昇して容器より反応物がオーバーフローしてしまう可能性があるが,消泡剤を使用することにより,本例では液面上昇を抑えることができた。
【0079】
得られたNiコート銅粉は,Ni量2.9wt%,比表面積1.51m2/g であった。Niコートの膜厚は2nmと算出された。酸化開始温度は260℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0080】
本例のNiコート銅粉を用いて実施例9と同じ条件でペースト作成し焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0081】
〔実施例13〕
容量1Lのビーカーに,金属塩として硫酸ニッケル六水和物50.44gを,第一錯化剤として▲1▼クエン酸三ナトリウム二水和物,▲2▼グルコン酸ナトリウム,▲3▼コハク酸,▲4▼プロピオン酸,▲5▼マロン酸,▲6▼乳酸 ▲7▼サリチル酸ナトリウムのうち1種43.25gを,第二錯化剤として酒石酸ナトリウム二水和物9gを秤量し,純水675gを加え,ケミスターラーで撹拌した。これに,消泡剤0.5gと,平均粒径3.25μmで比表面積0.404m2/g の銅粉(酸化開始温度=185℃)225gを加えた後,反応槽上部より窒素ガスをフローしながら10分間リパルプした。銅粉が液中に十分に分散し,ビーカー底部に沈殿していないことを確認して,49wt%の水酸化ナトリウム水溶液47gと純水75gを添加し,温調を開始して,温度60℃のA液を作成した。
【0082】
他方,ヒドラジン一水和物の80wt%水溶液をB液として準備した。このB液65.1gを秤量し,A液に添加することによりメッキ反応を開始した。その後,実施例1と同じ様に,液温を60℃に維持しながらメッキ反応を進行させ,B液添加後数十分で反応液の色が変化し始め,120分間で反応を終了させた。その後は,実施例1を繰り返してNiコート銅粉を得た。
【0083】
得られたNiコート銅粉の特性を表2 に示したが,▲1▼〜▲7▼のいずれも耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0084】
【表2】
Figure 0004182234
【0085】
本例の▲1▼で得られたNiコート銅粉を用いて実施例9と同じ条件でペースト作成し焼成したところ,ボイドはほとんどなく焼結性が良好であることが確認できた。
【0086】
〔比較例1〕
本例は,市販の無電解ニッケルメッキ液として,日鉱メタルブレーデイング株式会社製の商品名「ニコム601K」を使用した例である。この無電解ニッケルメッキ液は次亜リン酸を還元剤として使用したものである。
【0087】
この「ニコム601K」(pH6.0)を2Lのトールビーカーに400mLとり,平均粒径2.8μm,比表面積0.46m2/g の銅粉(酸化開始温度194℃)40gを加え,マグネティックスターラーで攪拌しながらリパルプした。銅粉が十分に分散し,ビーカー底部に沈殿してないことを確認して,昇温速度およそ2℃/分で90℃まで昇温した。
【0088】
90℃を超えたあたりから,水素と考えられる気泡が発生し始めてから一気に突沸が起こり,液面がビーカーの口のあたりまで上昇した。攪拌しながら反応を継続し,90℃に到達してから60分後に冷却を開始した。液温が40℃以下になったのを確認してから,吸引ろ過にて固液分離し,ろ別分を1Lの純水で洗浄した。洗浄後のケーキを雰囲気制御可能な乾燥器に入れ,窒素雰囲気中120℃で11時間かけて乾燥し,Niコート銅粉を得た。
【0089】
この銅粉は,Ni量12wt%,比表面積0.41m2/g であった。Niコート膜厚は29nmと算出された。酸化開始温度358℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。
【0090】
しかし,本例のNiコート銅粉を用いて実施例1と同じ条件でペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,電子顕微鏡観察によれば,表面にボイドが多くみられ,前記のどの実施例よりも焼結性は良くなかった。
【0091】
〔参考例1〕
銅粉量を200gにした以外は,比較例1を繰り返したところ,90℃を超えたあたりから,急激な突沸が起こり,反応液が多量に吹きこぼれてしまった。残った反応液で反応を継続してNiコート銅粉を得た。
【0092】
この銅粉は,Ni量2.3wt%,比表面積0.53m2/g であった。Niコート膜厚は6nmと算出された。酸化開始温度296℃であり,耐酸化性に優れた銅粉であることが確認できた。また,焼結性は比較例1のものよりは良好であったが,前述のように反応が突発的であるために危険を伴い,実施例のものに比較して反応の制御性が良くない。
【0093】
〔比較例2〕
「ニコム601K」200mLに純水を200g添加した以外は,比較例1を繰り返した。90℃に昇温し,60分間攪拌を継続しても,気泡の発生は見られなかった。
【0094】
得られた銅粉は,Ni量0.02wt%,比表面積0.55m2/g であった。Niはほとんどコートされておらず,酸化開始温度189℃であり,元の銅粉に対して耐酸化性は全く向上していなかった。
【0095】
〔参考例2〕
反応時間を60分に短縮した以外は,実施例6を繰り返した。得られた銅粉は,Ni量0.24wt%,比表面積0.42m2/g であった。Niコート膜厚は0.5nmと算出された。酸化開始温度241℃であり,実施例のものに比べると耐酸化性が劣る。得られた銅粉を用いて実施例1と同様にしてペーストを作成し,実施例1と同様にして焼成したところ,ボイドは見られなかった。本例の銅粉は焼結性は良好であったが,耐酸化性が不十分であった。
【0096】
〔参考例3〕
容量1Lのビーカーに,硫酸ニッケル六水和物26.5g,酢酸ナトリウム5gおよび次亜リン酸ナトリウム一水和物7.15gを秤量し,純水を500g加え,マグネティックスターラーで攪拌した。これに実施例1と同じ銅粉75gを加えた後,ビーカー上部に時計皿を置き,ビーカーと時計皿の間から窒素ガスをフローしながら,10分間リパルプする(このときのpH6.9)。銅粉が十分に分散し,ビーカー底部に沈殿してないことを確認して,昇温速度2℃/分で,90℃まで昇温し(pHは4.2まで低下),30分間反応を行った。60分後冷却を開始し,40℃以下になったことを確認して,吸引ろ過にて固液分離し,ろ別分を1Lの純水で洗浄した。洗浄後のケーキを雰囲気制御可能な乾燥器に入れ,窒素雰囲気中120℃で11時間かけて乾燥し,Niコート銅粉を得た。
【0097】
得られたNiコート銅粉は,Ni量3.3wt%,比表面積14m2/g であり,Niコート膜厚は8nmと算出された。酸化開始温度268℃であり,耐酸化性の向上は見られたが,実施例1と同様にしてペーストを作成し,実施例1と同じ条件で焼成したところ,焼成品の表面にボイドが多くみられ,どの実施例のものよりも焼結性が劣っていた。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によると,耐酸化性と焼結性に共に優れた導電ペースト用銅粉が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う導電ペースト用銅粉のNiコート厚と酸化開始温度との関係を比較例のものと対比して示した図である。
【図2】本発明に従う導電ペースト用銅粉をESCAで分析したさいに,Cuの2p3/2 ,Niの2p3/2 ,Oの1sおよびCの1sのピークについて,Arエッチング行いながら,深さ方向分析を行った図である。
【図3】図2の各ピークのピーク面積をエッチング深さに対してプロットすることにより得られたデプスプロファイルである。

Claims (14)

  1. 表面に膜厚0.5nm以上20nm以下のニッケルメッキが施された銅粒子からなり、該銅粒子が平均粒径0 . 1〜10μmの球状、フレーク状、六角板状、円盤状および楕円体状からなる群より選ばれた少なくとも1種の形状を有する導電ペースト用銅粉。
  2. 表面に膜厚0.5nm以上20nm以下のニッケル合金メッキまたはコバルトメッキが施された銅粒子からなり、該銅粒子が平均粒径0 . 1〜10μmの球状、フレーク状、六角板状、円盤状および楕円体状からなる群より選ばれた少なくとも1種の形状を有する導電ペースト用銅粉。
  3. ニッケル合金メッキは、合金元素としてCo、ZnまたはBの少なくとも1種を含む請求項2に記載の導電ペースト用銅粉。
  4. 下記に定義する酸化開始温度が250℃以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉。
    酸化開始温度(℃):金属粉試料を大気中5℃/分の昇温速度で連続的に昇温したときに、酸化による重量増加率が0.5%になるときの温度(℃)。
  5. メッキの膜厚が10nm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉。
  6. メッキは、無電解メッキによって施される請求項1ないし5のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉。
  7. 銅粉に無電解メッキを施して請求項1または2に記載の導電ペースト用銅粉を製造するにあたり、該無電解メッキの還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属塩溶液、ジメチルアミンボラン溶液またはヒドラジン溶液を使用し、該無電解メッキの錯化剤として酒石酸、蓚酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、サリチル酸、マロン酸、プロピオン酸、グルコン酸、アンモニア、脂肪酸あるいはそれらの塩を単独あるいは混合して使用することを特徴とする導電ペースト用銅粉の製造方法。
  8. 銅粉をメッキ液に混合した後に還元剤を添加してメッキ反応を開始させる請求項7に記載の導電ペースト用銅粉の製造方法。
  9. 還元剤を含む液体に銅粉を配合した混合液とメッキ液を混合してメッキ反応を開始させる請求項7に記載の導電ペースト用銅粉の製造方法。
  10. 反応液のpHが10以上である請求項7ないし9のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉の製造方法。
  11. 反応液に消泡剤を添加する請求項7ないし10のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉の製造方法。
  12. メッキ反応を窒素ガスまたはその他の不活性ガス雰囲気中で行う請求項7ないし11のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉の製造方法。
  13. 無電解メッキの溶媒として純水または水溶性の有機溶媒を単独あるいは混合して使用する請求項7ないし12のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉の製造方法。
  14. 請求項1ないし6のいずれかに記載の導電ペースト用銅粉を用いた導電ペースト。
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