JP4179742B2 - 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原材料コストを大幅に低減でき、優れた画質の印刷が可能な平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法に関する。また、過酷インキ汚れおよびブランケット汚れに対する印刷性能の優れた平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、「支持体」という場合がある。)は、アルミニウム板の片面あるいは両面に粗面化処理等を施して製造される。また、平版印刷版原版は、該支持体上に感光層等を設けて製造される。通常、印刷時における平版印刷版の耐磨耗性を向上させるため、上記支持体には、粗面化処理の後、アルミニウム板の表面に陽極酸化処理を施したものが多い。また、製版時の真空密着時間を短縮するため、感光層表面にマット層という微小な凹凸を設けることもある。このようにして製造された平版印刷版原版は、画像露光、現像、水洗等の製版処理を経て平版印刷版とされる。該画像露光の方法としては、画像を焼き付けたリスフィルムを支持体表面に密着させて光を当てることで画像部と非画像部との違いをつける方法、レーザを用いる方法若しくは画像を投影する方法によって直接画像部または非画像部を書き込み画像部と非画像部との違いをつける方法等が用いられている。
また、画像露光後に施す現像処理によって、感光層の未溶解部分は、インク受容体として画像部を形成し、感光層が溶解除去された部分では、層下にあるアルミニウム表面若しくは陽極酸化被膜表面が露出し、水受容体として非画像部を形成する。現像後必要に応じて親水化処理、ガム引き、さらには、バーニング処理等が施されることもある。
【0003】
このような平版印刷版は、印刷機の円筒状の版胴に取り付けられ、インキと湿し水とを版胴に供給することで、親油性の画像部にはインキが付着し、親水性の非画像部には水が付着する。平版印刷版は、この画像部のインキをブランケット胴に転写したうえで、ブランケット胴から紙に画像を印刷する。
しかしながら、時として非画像部に点状あるいは円環状にインキが付着する場合があり、結果的に紙面に点状あるいは円環状の汚れを発生させるといった不具合(過酷インキ汚れ)を生じる問題があった。
【0004】
このような過酷インキ汚れの発生等を抑制するためには、支持体に使用するアルミニウム板に、新地金や所定の添加元素成分を含むアルミニウム合金材料を用いる方法が考えられるが、これらの材料はそれ自体のコストが高いというデメリットがある。
また、アルミニウム製造工場内で発生した、合金成分のわかっているアルミニウム屑を使用する方法も考えられるが、原材料の得率が向上する点でメリットはあるものの、原材料としては決して低コストなものではない。
【0005】
このような原材料コストが高いという問題に対し、特開平7−81260号公報には、アルミニウムの含有率が99.7%以上のアルミニウム塊のみを使用し、所定の元素を含む母合金や金属塊の添加を不要とする方法が提案されている。また、特開平7−205534号公報においては、使用済みの平版用印刷版や製造途中で不良となった平版印刷版をアルミニウム板の原材料として再利用する方法が提案されている。
【0006】
しかし、これらの方法であっても、純度99.7%以上のアルミニウム塊自体がそれほど安価なわけではなく、使用済みの平版印刷版を安定した原材料として確保することが難しいため、大きな効果は得られなかった。
【0007】
このような問題を解決するためには、原材料として合金成分を制御していない材料、即ち、各種の不純物を含むスクラップ材、または新地金に比較して市場価格が安く、多くの不純物元素を含む2次地金(再生地金)と呼ばれる地金を使用することが考えられる。しかし、これらの材料は合金成分の制御が殆どおこなわれていないため、高品質の表面処理外観や印刷性能が要求される平版印刷版の原材料にはまったく使用することができなかった。特に、これらの材料内には、不純物によって種々の金属間化合物や析出物が生じているため、陽極酸化被膜の欠陥が生じやすく耐過酷インキ汚れ性が大幅に劣ることに加えて、粗面化した表面のいたる所に金属間化合物や析出物が存在することによる、ブランケット汚れ等印刷性能を低下させる原因が発生しやすいという不具合があった。
【0008】
さらに、使用済アルミニウムのリサイクルのエネルギー消費量を抑える上で、純度の低いアルミニウム板を平版印刷版用アルミニウム支持体として使いこなしていくことが将来のエネルギー消費量削減に向けての必須の課題である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は上述の問題を解決するため、原材料として合金成分を制御していない材料、即ち、各種の不純物を含むスクラップ材、または新地金に比較して市場価格が安く、多くの不純物元素を含む2次地金(再生地金)と呼ばれる地金を使用して、原材料コストを大幅に減少させ、かつ、過酷インキ汚れ、ブランケット汚れの発生をおさえた高品質の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、本発明に想到するに至った。即ち、本発明は、
【0011】
<1>塩酸と塩化アルミニウムとを主体とする酸性水溶液中で交流電流を用いてアルミニウム板を電気化学的に粗面化する粗面化処理工程を含む平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法であって、下記(A)〜(F)に示す工程を含み、前記粗面化処理工程が、下記(B)の第1の粗面化処理工程および下記(D)の第2の粗面化処理工程でおこなわれることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法である。
(A)前記アルミニウム板をアルカリ水溶液中で1〜15g/m 2 溶解する化学的なエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理を施す第1の処理工程
(B)前記第1の処理工程によって処理を施されたアルミニウム板を電気化学的に粗面化する第1の粗面化処理工程
(C)前記第1の粗面化処理工程によって電気化学的に粗面化された前記アルミニウム板をアルカリ水溶液中で化学的にエッチングするエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理を施す中間処理工程
(D)前記中間処理工程によって処理を施されたアルミニウム板を電気化学的に粗面化する第2の粗面化処理工程
(E)前記第2の粗面化処理工程によって電気化学的に粗面化された前記アルミニウム板に、下記(1)または(2)に示す処理を施す第2の処理工程
(1)前記アルミニウム板を、60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間化学的にエッチングするエッチング処理
(2)前記アルミニウム板を、アルカリ水溶液中で0.01〜5g/m 2 溶解する化学的なエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理、または、60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間化学的にエッチングするエッチング処理
(F)前記第2の処理工程によって処理を施された前記アルミニウム板に、陽極酸化処理を施す陽極酸化処理工程
前記アルミニウム板が、アルミニウム(Al)の含有率が95〜99.4質量%であり、かつ、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、およびチタン(Ti)、のうち少なくとも5種以上を以下に示す範囲内で含み、
Fe:0.3〜1.0質量%
Si:0.15〜1.0質量%
Cu:0.1〜1.0質量%
Mg:0.1〜1.5質量%
Mn:0.1〜1.5質量%
Zn:0.1〜0.5質量%
Cr:0.01〜0.1質量%
Ti:0.03〜0.5質量%
前記酸性水溶液が、アルミニウムイオンが1〜10g/lとなるように、5〜15g/lの塩酸水溶液中に塩化アルミニウムを添加して得られたものであり、
前記酸性水溶液温度が、30〜50℃であり、
前記粗面化処理工程における、前記交流電流のdutyが0.3〜0.4、および前記交流電流の周波数が30〜200Hzであり、電流密度が10〜200A/dm2、電気量の総和が、50〜800C/dm2であり、前記アルミニウム板の陽極時電気量(QA)と陰極時電気量(QC)との比(QC/QA)が、1.5〜2.0である。
【0014】
<2> さらに、前記陽極酸化処理工程によって陽極酸化処理を施された前記アルミニウム板を、珪酸ナトリウムまたはポリビニルホスホン酸水溶液中で親水化する親水化処理工程を含むことを特徴とする<1>の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法である。
【0015】
<3> さらに、前記陽極酸化処理工程によって陽極酸化処理を施された前記アルミニウム板に、封孔処理を施す封孔処理工程を含むことを特徴とする<1>の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法である。
【0016】
<4> さらに、前記封孔処理工程によって封孔処理を施されたアルミニウム板を、珪酸ナトリウムまたはポリビニルホスホン酸水溶液中で親水化する親水化処理工程を含むことを特徴とする<3>の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0022】
《平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法》
一般に、平版印刷版用アルミニウム支持体は、アルミニウム板に付着している圧延油を除く脱脂工程、アルミニウム板の表面のスマットを溶解するデスマット処理工程、アルミニウム板の表面を粗面化する粗面化処理工程、アルミニウム板の表面を酸化被膜で覆う陽極酸化処理工程等を経て製造される。
本発明の支持体の製造方法は、塩酸と塩化アルミニウムとを主体とする酸性水溶液中で交流電流を用いてアルミニウム板を電気化学的に粗面化する粗面化処理工程を含むものであり、下記(A)〜(F)に示す工程を含み、前記粗面化処理工程が、下記(B)の第1の粗面化処理工程および下記(D)の第2の粗面化処理工程でおこなわれることを特徴とする。
(A)前記アルミニウム板をアルカリ水溶液中で1〜15g/m 2 溶解する化学的なエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理を施す第1の処理工程
(B)前記第1の処理工程によって処理を施されたアルミニウム板を電気化学的に粗面化する第1の粗面化処理工程
(C)前記第1の粗面化処理工程によって電気化学的に粗面化された前記アルミニウム板をアルカリ水溶液中で化学的にエッチングするエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理を施す中間処理工程
(D)前記中間処理工程によって処理を施されたアルミニウム板を電気化学的に粗面化する第2の粗面化処理工程
(E)前記第2の粗面化処理工程によって電気化学的に粗面化された前記アルミニウム板に、下記(1)または(2)に示す処理を施す第2の処理工程
(1)前記アルミニウム板を、60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間化学的にエッチングするエッチング処理
(2)前記アルミニウム板を、アルカリ水溶液中で0.01〜5g/m 2 溶解する化学的なエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理、または、60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間化学的にエッチングするエッチング処理
(F)前記第2の処理工程によって処理を施された前記アルミニウム板に、陽極酸化処理を施す陽極酸化処理工程
前記アルミニウム板が、アルミニウム(Al)の含有率が95〜99.4質量%であり、かつ、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、およびチタン(Ti)、のうち少なくとも5種以上を以下に示す範囲内で含み、
Fe:0.3〜1.0質量%
Si:0.15〜1.0質量%
Cu:0.1〜1.0質量%
Mg:0.1〜1.5質量%
Mn:0.1〜1.5質量%
Zn:0.1〜0.5質量%
Cr:0.01〜0.1質量%
Ti:0.03〜0.5質量%
前記酸性水溶液が、アルミニウムイオンが1〜10g/lとなるように、5〜15g/lの塩酸水溶液中に塩化アルミニウムを添加して得られたものであり、
前記酸性水溶液温度が、30〜50℃であり、前記粗面化処理工程における、前記交流電流のdutyが0.3〜0.4、および前記交流電流の周波数が30〜200Hzであり、電流密度が10〜200A/dm2、電気量の総和が、50〜800C/dm2であり、前記アルミニウム板の陽極時電気量(QA)と陰極時電気量(QC)との比(QC/QA)が、1.5〜2.0である。
さらに、本発明の粗面化処理工程をはじめとする製造方法は、連続法でも断続法でもよいが、工業的には連続法を用いるのが好ましい。
本発明の製造方法によって製造された支持体は、必要に応じて、さらに封孔処理工程、親水化処理工程を経た後、下塗層、ポジまたはネガ型の感光層等が形成されて平版印刷版原版となる。また、感光層表面には必要に応じてマット層を形成してもよい。
【0023】
<粗面化処理工程>
まず、本発明における粗面化処理工程について説明する。
上記粗面化処理工程は、酸性水溶液中で、アルミニウム板を電極として交流電流を通じ、該アルミニウム板表面を電気化学的に粗面化する工程であり、2回以上おこなわれる。
【0024】
本発明は、粗面化処理工程において、交流電流のdutyを0.3〜0.4の範囲内とする。これにより、アルミニウム板表面を均一に粗面化することができる。上記交流電流のdutyが、0.25未満だとアルミニウム板表面を均一に粗面化することができず、0.5を越えてもアルミニウム板表面を均一に粗面化することができない。本発明でいうdutyとは、交流電流の周期Tにおいて、アルミニウム板の陽極反応が持続している時間(アノード反応時間)をtaとしたときのta/Tをいう。特に、カソード反応時のアルミニウム板表面には、水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の生成に加え、酸化被膜の溶解や破壊が発生し、次のアルミニウム板のアノード反応時におけるピッティング反応の開始点となるため、交流電流のdutyの選択は均一な粗面化に与える効果が大きい。
また、本発明は、上記粗面化処理において交流電流の周波数を、30〜200Hzとする。これにより大電流を流す装置の製作が容易となる。上記周波数が、30Hz未満であると、主極であるカーボンの溶解が著しく、200Hzを越えると、電極装置の製作が困難である。また、上記交流電流の周波数は40〜120Hzであることがより好ましい。
【0025】
さらに本発明は、上記粗面化処理工程において、上記アルミニウム板が陽極となる時における電気量、即ち陽極時電気量QAと、陰極となる時における電気量、即ち陰極時電気量QCとの比QC/QAを1.5〜2.0の範囲内とする。これにより、該アルミニウム板表面に均一なハニカムピットを生成することができる。上記QC/QAが、0.95未満では、不均一な表面形状となりやすく、2,5を越えても、不均一な表面形状となりやすい。
【0026】
上記粗面化処理工程に用いる交流電流の波形は、サイン波、矩形波、三角波、台形波等が挙げられ、この中でも矩形波または台形波が好ましい。
本発明で好ましく用いられる台形波の一例を図1に示す。図1において、縦軸は電流値、横軸は時間を示し、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpおよびtp’は電流値が0からピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、および、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流を示す。交流電流の波形として台形波を用いる場合、電流が0からピークに達するまでの時間tpおよびtp’は0.1〜2msecが好ましく、0.3〜1.5msecがより好ましい。上記時間tpおよびtp’が0.1msec未満であると、電源回路のインピーダンスが影響し、電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる。また、上記時間tpおよびtp’が2msecを越えると、酸性水溶液中の微量成分の影響が大きくなり、均一な粗面化処理がおこなわれにくくなる。
【0027】
上記交流電流の電流密度は、台形波または矩形波のピーク値で、交流電流のアノードサイクル側Iapおよびカソードサイクル側Icpともに10〜200A/dm2 である。上記粗面化処理工程において、電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は、50〜800C/dm2 である。
【0028】
本発明に用いる酸性水溶液としては、塩酸と塩化アルミニウムを主体とする酸性水溶液(以下「塩酸を主体とする酸性水溶液」という場合がある。)を用いる。本発明でいう「塩酸と塩化アルミニウムを主体とする酸性水溶液」とは、酸性溶液中の成分全体に対して、塩酸およびアルミニウムイオンの総量が30質量%以上含まれていることをいい、50質量%以上含まれていることが好ましい。
上記塩酸を主体とする酸性水溶液としては、通常の直流電流または交流電流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、例えば、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩化物のうち1つ以上を、1g/lから飽和に達するまで、5〜15g/lの塩酸に添加して使用する。上記塩酸を主体とする酸性水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム合金中に含まれる金属等が溶解されていてもよい。
上記塩酸を主体とする酸性水溶液としては、アルミニウムイオンが1〜10g/lとなるように、5〜15g/lの塩酸に塩化アルミニウムを添加して得られたものを用いる。なお、上記アルミニウムイオンは、電気化学的な粗面化処理をおこなっている間に自然発生的に増加していくものである。また、この際の液温は30〜50℃である。
【0029】
また、本発明の製造方法は、上記粗面化処理工程を2回以上おこなうことを特徴とする。上記粗面化処理工程を2回以上おこなうことによって、平版印刷版用アルミニウム支持体として好適な表面形状とすることができる。それぞれの粗面化処理工程では、duty、周波数、電気量比、電気量、液組成、液温、電流密度のうち一つ以上が異なっていることが好ましい。また、本発明の製造方法で、例えば2回、上記粗面化処理工程をおこなう場合は、各粗面化処理工程の間に後述するアルカリエッチング処理およびデスマット処理を施す工程(中間処理工程)をおこなうのが好ましい。これにより、さらに均一な表面形状とすることができる。
具体的には、本発明の製造方法は、塩酸と塩化アルミニウムとを主体とする酸性水溶液中で交流電流を用いてアルミニウム板を電気化学的に粗面化する第1の粗面化処理工程と、該第1の粗面化処理工程によって電気化学的に粗面化された前記アルミニウム板をアルカリ水溶液中で化学的にエッチングするエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理を施す中間処理工程と、該中間処理工程によって処理を施されたアルミニウム板を、塩酸と塩化アルミニウムとを主体とする酸性水溶液中で交流電流を用いて電気化学的に粗面化する第2の粗面化処理工程とを含むのが好ましい。
【0030】
本発明に用いるアルミニウム板としては、アルミニウムハンドブック第4版(1990、軽金属協会)に記載の、公知の素材のもの、例えばJIS1050材、JIS1100材、JIS3003材、JIS3103材、JIS3005材などを用いることができるが、本発明は特に、アルミニウム(Al)の含有率が99.4〜95質量%であって、かつ、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、およびチタン(Ti)、のうち少なくとも5種以上を後述する範囲内で含む、アルミニウム合金、スクラップアルミ材または2次地金を使用したアルミニウム板を使用する。
【0031】
本発明では、Alの含有率が95〜99.4質量%のアルミニウム板を使用する。上記含有率が99.4質量%を越えると不純物の許容量が少なくなるため、コスト削減効果が減少してしまう場合がある。また、上記含有率が95質量%未満であると不純物を多く含むこととなり圧延中に割れ等の不具合が発生してしまう場合がある。より好ましいAlの含有率は95〜99質量%であり、特に好ましくは95〜97質量%である。
【0032】
Feの含有率は0.3〜1.0質量%である。Feは新地金においても0.1〜0.2質量%前後含有される元素で、Al中に固溶する量は少なく、殆どが金属間化合物として残存する。Feの含有率が1.0質量%を越えると圧延途中に割れが発生しやすくなり、0.3質量%未満だとコスト削減効果が減少するため好ましくない。より好ましいFeの含有率は0.5〜1.0質量%である。
【0033】
Siの含有率は0.15〜1.0質量%である。SiはJIS2000系、4000系、6000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。また、新地金においても0.03〜0.1質量%前後含有される元素であり、Al中に固溶した状態、または、金属間化合物として存在する。上記支持体の製造過程で加熱されると、固溶していたSiが単体Siとして析出することがある。単体SiとFeSi系の金属間化合物は耐過酷インキ汚れ性に悪影響を与えることが知られている。Siの含有率が1.0質量%を越えると、例えば後述する硫酸による処理(デスマット処理工程)でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.15質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいSiの含有率は0.3〜1.0質量%である。
【0034】
Cuの含有率は0.1〜1.0質量%である。CuはJIS2000系、4000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。比較的Alに中に固溶しやすい。Cuの含有率が1.0質量%を越えると、例えば後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいCuの含有率は0.3〜1.0質量%である。
【0035】
Mgの含有率は0.1〜1.5質量%である。MgはJIS2000系、3000系、5000系、7000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。特にcan end材に多く含まれるため、スクラップ材に含まれる主要な不純物金属の1つである。Mgも比較的Al中に固溶しやすく、Siと金属間化合物を形成する。Mgの含有率が1.5質量%を越えると、例えば後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいMgの含有率は0.5〜1.5質量%で、さらに好ましくは1.0〜1.5質量%である。
【0036】
Mnの含有率は0.1〜1.5質量%である。MnはJIS3000系材料のスクラップに多く含まれる元素である。特にcan body材に多く含まれるため、スクラップ材に含まれる主要な不純物金属の1つである。Mnも比較的Al中に固溶しやすく、AlFeSiと金属間化合物を形成する。Mnの含有率が1.5質量%を越えると、例えば後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいMnの含有率は0.5〜1.5質量%、さらに好ましくは1.0〜1.5質量%である。
【0037】
Znの含有率は0.1〜0.5質量%である。Znは特にJIS7000系のスクラップに多く含まれる元素である。比較的Al中に固溶しやすい。Znの含有率が0.5質量%を越えると、例えば後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.1質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいZnの含有率は0.3〜0.5質量%である。
【0038】
Crの含有率は0.01〜0.1質量%である。CrはJIS5000系、6000系、7000系のスクラップに少量含まれる不純物金属である。Crの含有率が0.1質量%を越えると、例えば後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.01質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいCrの含有率は0.05〜0.1質量%である。
【0039】
Tiの含有率は0.03〜0.5質量%である。Tiは通常結晶微細化材として0.01〜0.04質量%添加される元素である。JIS5000系、6000系、7000系のスクラップには不純物金属として比較的多めに含まれる。Tiの含有率が0.5質量%を越えると、例えば後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.03質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましいTiの含有率は0.05〜0.5質量%である。
【0040】
本発明で用いるアルミニウム板は、上述の含有率(純度)でアルミニウムを含有し、かつ上記8つの不純物元素群から5種以上を含んだ材料を原材料とする。上記アルミニウム板は、上記原材料を用いて常法で鋳造したものに、適宜圧延処理や熱処理を施し、厚さを0.1〜0.7mmとし、必要に応じて平面性矯正処理を施して製造される。
なお、上記アルミニウム板の製造方法としては、DC鋳造法、DC鋳造法から均熱処理、および/または、焼鈍処理を省略した方法、および連続鋳造法を用いることができる。
【0041】
上記粗面化処理工程で用いる電解装置としては、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の電解装置を用いることができ、特開平5−195300号公報に記載のようなラジアル型電解装置が特に好ましい。図2は、本発明で用いるラジアル型電解装置の概略図である。図2において、ラジアル型電解装置は、アルミニウム板Wが主電解槽10中に配置されたラジアルドラムローラ12に巻装され、搬送過程で交流電源11に接続された主極13a、13bによって電解処理される。酸性水溶液15は、溶液供給口14からスリット16を通じてラジアルドラムローラ12と主極13a、13bとの間にある溶液通路17に供給される。ついで、主電解槽10で処理されたアルミニウム板Wは、補助陽極槽20で電解処理される。この補助陽極槽20には補助陽極21がアルミニウム板Wと対向配置されており、酸性水溶液15は、補助陽極21とアルミニウム板Wとの間を流れるように供給される。補助陽極21はフェライト、酸化イリジウム、白金、または白金をチタン、ニオブ、ジルコニウム等のバルブ金属にクラッド若しくはメッキしたもの等公知の酸素発生用電極から選定することができる。主極13a、13bは、カーボン、白金、チタン、ニオブ、ジルコニウム、およびステンレスや燃料電池用陰極に用いる電極から選定することができるが、カーボンが特に好ましい。該カーボンとしては、一般に市販されている化学装置用不浸透性黒鉛や、樹脂含芯黒鉛等を用いることができる。
【0042】
上記主電解槽10および補助陽極槽20内を通過する酸性水溶液の供給方向はアルミニウム板Wの進行とパラレルでもカウンターでもよい。アルミニウム板に対する酸性水溶液の相対流速は、10〜1000cm/secが好ましい。
一つの電解装置には1個以上の交流電源を接続することができる。また、2個以上の電解装置を使用してもよく、各装置における電解条件は同一でもよいし異なっていてもよい。
また、電解処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラによって液切りとスプレーによる水洗とをおこなうことが好ましい。
【0043】
さらに、上記粗面化処理においては、電解装置中の酸性水溶液の通電量に比例して、塩酸と水とを、例えば(i)酸性水溶液の導電率と(ii)超音波の伝搬速度と(iii)温度とから求めた硝酸およびアルミニウムイオン濃度をもとに、塩酸と水との添加量を調節しながら添加し、塩酸と水との添加容積と同量の酸性水溶液を逐次電解装置からオーバーフローさせて排出することで、上記酸性水溶液の濃度を一定に保つのが好ましい。
【0044】
つぎに、酸またはアルカリ水溶液中での化学的エッチング処理、デスマット処理等を適宜含む表面処理工程について順を追って説明する。上記表面処理工程は、上記粗面化処理工程を施す前段階(第1の処理工程)、上記複数回の粗面化処理工程の後、後述する陽極酸化処理工程の前の段階(第2の処理工程)、または、複数回、例えば第1の粗面化処理工程と第2の粗面化処理工程と間の段階(中間処理工程)において施される。ただし、以下の各処理工程は例示であり、本発明は、以下の各工程の内容に限定されるものではない。また上記表面処理工程をはじめとする以下の各処理は任意で施される。
【0045】
(アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理(アルカリエッチング処理))本発明でいうアルカリエッチング処理とは、アルカリ水溶液中でアルミニウム板表面を化学的にエッチングする処理をいい、上記第1の処理工程、第2の処理工程および上記中間処理工程それぞれにおいて施すのが好ましい。該アルカリ水溶液の濃度は、1〜30質量%が好ましく、該アルカリ水溶液は、アルミニウムはもちろんアルミニウム板中に含有される合金成分を0.5〜10質量%を含有していてよい。
上記アルカリ水溶液としては、特に水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を主体とする水溶液が好ましい。本発明でいう「主体とする」とは、水溶液中の主体となる成分が、全成分に対して30質量%以上、好ましくは50質量%以上含まれていることをいう。
【0046】
上記アルカリエッチング処理は、アルカリ水溶液の液温を常温〜95℃とし、1〜120秒間処理することが好ましい。中間処理工程においてアルミニウム板の溶解量は、アルミニウム板表面に形成されるピットの大きさに影響する。したがって、中間処理工程において上記溶解量を制御することで中間処理工程で生成するピットの大きさをコントロールすることができる。
最初にアルカリ水溶液中で化学的なエッチング液をミキシングするときには、液体水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)とアルミン酸ナトリウム(アルミン酸ソーダ)とを用いて処理液を調製するのが好ましい。
また、上記アルカリエッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗をおこなうことが好ましい。
【0047】
(酸水溶液中でのエッチング処理(酸性エッチング処理))
本発明でいう酸性エッチング処理とは、酸性水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチングする処理をいい、上記第2の処理工程において施すのが好ましく、上記アルカリエッチング処理の後に施すのも好ましい。アルミニウム板に上記アルカリエッチング処理を施した後に、上記酸性エッチング処理を施すと、該アルミニウム板表面のシリカを含む金属間化合物、または単体Siを除去することができ、その後の陽極酸化処理工程において生成する陽極酸化被膜の欠陥をなくすことができる。
【0048】
上記酸性エッチング処理に用いることのできる酸は、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸を用いることができ、特に硫酸水溶液が好ましい。上記酸性水溶液の濃度は、300〜500g/lが好ましく、該酸性水溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分を含有していてよい。
【0049】
上記酸性エッチング処理は、液温を60〜90℃とし、好ましくは70〜80℃とし、1〜10秒間処理することが好ましい。このときのアルミニウム板の溶解量は0.001〜 0.2g/m2が好ましい。また、酸濃度、例えば硫酸濃度と、アルミニウム濃度と、は常温で晶出しない範囲から選択することが好ましい。特に好ましいアルミニウムイオン濃度は0.1〜15g/lである。
上記酸性エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗をおこなうことが好ましい。
【0050】
(酸性溶液中でのデスマット処理)
化学的なエッチング処理をアルカリの水溶液を用いておこなった場合は、一般にアルミニウム板の表面にスマットが生成するので、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸からなる混酸を含む酸性溶液中で上記スマットを溶解するいわゆるデスマット処理を施すのが好ましい。該デスマット処理は、上記第1の処理工程、第2の処理工程および上記中間工程において適宜施すのが好ましく、上記アルカリエッチング処理等の後に施すのも好ましい。
上記酸性水溶液の濃度は、1〜300g/lが好ましい。さらに酸性水溶液中にはアルミニウムはもちろんアルミニウム板中に含有される合金成分が0.1〜15g/l溶解していてもよい。
【0051】
上記デスマット処理において酸性溶液の液温は、20℃〜95℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。また、処理時間は1〜120秒が好ましく、2〜60秒がより好ましい。
上記デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗をおこなうことが好ましい。また、デスマット処理液(酸性溶液)としては、上記粗面化処理工程で用いた酸性水溶液の廃液を用いることが、廃液量削減の上で好ましい。
【0052】
上述の本発明における粗面化処理工程の前段階に施す第1の処理工程としては、アルミニウム板に上記アルミニウム板の溶解量が0.01〜5g/m2となるようにアルカリエッチング処理を施した後、上記酸性溶液中でのデスマット処理を施すのが好ましい。
また、上記複数回の粗面化処理工程の後、後述する陽極酸化処理工程の前段階に施す第2の処理工程としては、アルミニウム板に60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間酸性エッチング処理を施すか、あるいは、アルカリ水溶液中でアルミニウム板を0.01〜5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を施し、その後、上記酸性溶液中でのデスマット処理または60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間酸性エッチング処理を施すのが好ましい。なお、アルミニウム板にアルカリエッチング処理を施した場合、アルミニウム板表面のシリカを含む金属間化合物、または単体Siを除去するために、液温60〜90℃および1〜10秒間の条件で上記酸性エッチング処理を施すのが好ましい。酸性エッチング処理を施すと上述の通り、その後の陽極酸化処理工程において生成する陽極酸化被膜の欠陥をなくすことができ、その結果、印刷時にチリ状汚れと称される非画像部に点状のインクが付着するトラブルを改善することができる。
さらに、第1の粗面化処理工程と第2の粗面化処理工程との間におこなう中間処理工程としては、アルカリエッチング処理およびデスマット処理を施すのが好ましい。中間処理工程のアルカリエッチング処理によるアルミニウム板の溶解量としては、0.01〜10g/m2が好ましく、0.1〜5g/m2がより好ましい。
【0053】
<陽極酸化処理工程>
本発明の支持体の製造方法においては、上記粗面化処理工程または上記第2の処理工程の後、アルミニウム板表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理を施すのが好ましい(陽極酸化処理工程)。本発明でいう陽極酸化処理とは、アルミニウム板を陽極として電解液中に浸漬し、電流を通じてアルミニウム板の表面に陽極酸化被膜を生成する処理をいう。
【0054】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解液としては多孔質酸化被膜を生成するものならば、いかなるものでも使用することができる。一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはそれらの混合液が用いられる。これらの電解液の濃度は電解液の種類によって適宣決められる。
上記陽極酸化処理の条件は用いる電解液によって変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解液の濃度が1〜80質量%、電解液の液温が5〜70℃、電流密度が1〜60A/dm2、電圧が1〜100V、電解時間が10秒〜300秒の範囲にあれば適当である。
【0055】
電解液に硫酸水溶液を用いる硫酸法は、通常直流電流を用いておこなわれるが、交流電流を用いてもよい。また、陽極酸化被膜の生成量としては、1〜10g/m2、特に1.1〜5g/m2の範囲が適当である。上記生成量が1g/m2未満であると耐刷性が不十分となって、平版印刷版の非画像部にキズが付きやすくなり、該キズの部分にインキが付着する、いわゆるキズ汚れが生じやすくなる。また、上記陽極酸化被膜の生成量が多すぎると、アルミニウムエッジ部分に陽極酸化被膜が集中しやすくなる。したがって、アルミニウム板のエッジ部分と中心部分との陽極酸化被膜量の差は、1g/m2以下であることが好ましい。
【0056】
上記陽極酸化処理としては、電解液として硫酸を用いるのが好ましく、特開昭54−128453号公報および特開昭48−45303号各公報に詳しく記載されている。上記硫酸水溶液は、硫酸濃度を10〜300g/l、アルミニウムイオン濃度を1〜25g/lの範囲内とするのが好ましく、50〜200g/lの硫酸水溶液中に硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を2〜10g/lとするのがより好ましい。液温は30〜60℃が好ましい。
また、直流電流を用いる直流法を用いる場合、電流密度は1〜60A/dm2が好ましく、5〜40A/dm2がより好ましい。
【0057】
連続的にアルミニウム板(アルミニウムシート)に陽極酸化処理を施す場合には、アルミニウム板の焼けと呼ばれる電流集中を防ぐため、最初は5〜10A/dm2の低電流密度で陽極酸化処理を施し、後半に行くに従って徐々に電流密度を上げて30〜50A/dm2になるまで、または、それ以上となるように電流密度を設定することが好ましい。この際、電流密度は5〜15ステップで徐々に上げることが好ましい。また、各ステップごとには独立した電源装置を設け、この電源装置の電流値で上記電流密度をコントロールするのが好ましい。給電方法としてはコンダクタローラを用いない液給電方式が好ましい。なお、一般に、陽極には酸化イリジウムや鉛が用いることができ、陰極にはアルミが用いられる。上記陽極酸化処理に用いられる装置の一例としては、特願平11−178624号明細書等に記載のものが挙げられる。
【0058】
上記硫酸水溶液中にはアルミニウム板に含まれる微量成分元素が溶解していてもよい。また、陽極酸化処理中の硫酸水溶液にはアルミが溶出するため、その工程の管理のためには硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度を管理する必要がある。アルミニウムイオン濃度を低く設定すると陽極酸化をおこなう硫酸水溶液の更新を頻繁におこなわなければならず、廃液量が増えて経済的でないばかりでなく環境面でも問題がある。これに対し、アルミニウムイオン濃度を高く設定すると電解電圧が高くなり電カコストがかさみ経済的でない。
好ましい陽極酸化の硫酸濃度、アルミニウムイオン濃度、および液温の組合せとしては、(i)硫酸濃度が100〜200g/l、より好ましくは、130〜180g/l、アルミニウムイオン濃度が2〜10g/l、より好ましくは3〜7g/l、液温が30〜40℃、より好ましくは33〜38℃、(ii)硫酸濃度が50〜125g/l、より好ましくは80〜120g/l、アルミニウムイオン濃度が2〜10g/l、より好ましくは3〜7g/l、液温が40〜70℃、より好ましくは50〜60℃である。
【0059】
<親水化処理工程>
アルミニウム板は、陽極酸化処理工程によって陽極酸化処理を施した後に、必要に応じて親水化処理工程において該アルミニウム板表面に親水化処理を施すのが好ましい。該親水化処理としては、米国特許第2714066号明細書、同第3181461号明細書、同第3280734号明細書および同第3902734号明細書に開示されているアルカリ金属シリケート(例えば珪酸ナトリウム水溶液)法を用いるのが好ましい。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液に浸漬されるか、または該水溶液中で電解処理される。他の好ましい方法としては特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム、および、米国特許第3276868号明細書、同第4153461号明細書および同第4689272号明細書に開示されているポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。これらの中でも、珪酸ナトリウムおよびポリビニルホスホン酸水溶液を用いて親水化処理を施すのが好ましい。
【0060】
<封孔処理工程>
本発明において、上記陽極酸化処理工程によって陽極酸化処理を施した後に、陽極酸化被膜に生成するマイクロポアと称される穴を塞ぐために封孔処理を施すのが好ましい。かかる封孔処理は、熱水および無機塩または有機塩を含む熱水溶液への浸漬並びに水蒸気浴等によっておこなわれる。また、封孔処理工程の後に上述の親水化処理を施すのが好ましい。上記無機塩としては、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、硝酸塩等が挙げられ、上記有機塩としては、カルボン酸塩等が挙げられる。
【0061】
<本発明の製造方法に供し得る製造装置>
以下、本発明の平板印刷版用アルミニウム支持体の製造方法に供し得る製造装置について説明する。
本発明の支持体の製造過程としては、(1)圧延され、コイル状に巻き取られアルミニウム板を、多軸ターレットからなる送り出し装置から送り出し、(2)上記各処理(アルカリエッチング処理、酸性エッチング処理、デスマット処理、電気化学的な粗面化処理、陽極酸化処理、封孔処理、および親水化処理)の後、アルミニウム板を乾燥処理し、(3)アルミニウム板を上記多軸ターレットからなる巻き取り装置にてコイル状に巻き取ること、または、アルミニウム板の平面性を矯正し、その後に所定の長さにカットして集積することが好ましい。また、必要に応じ、上記過程において(下塗り層・感光層・マット層)を形成して乾燥処理する工程を設け、平版印刷版用原版としてから上記巻取り装置にてコイル状に巻き取ってもよい。
【0062】
また、本発明の製造方法は、アルミニウム板の表面の欠陥を検査する装置を用いて、該欠陥を連続的に検査し、発見した欠陥部のエッジ部分に目印のラベルを貼る工程を、1工程以上有することすることが好ましい。さらに、本発明の製造方法は、アルミニウム板の送り出し工程、および巻き取り工程において、アルミコイルの交換の際に、該アルミニウム板の走行を停止しても、上記各工程におけるアルミニウム板の走行速度を一定に保つようなリザーバー装置を設けることが好ましく、上記アルミコイルの送り出し工程の後には、アルミニウム板を超音波またはアーク溶接にて接合する工程を設けることが好ましい。
【0063】
本発明の製造方法で用いる製造装置には、アルミニウム板の走行位置を検出し、走行位置を矯正する装置を1個以上有することが好ましい。また、上記製造装置には、アルミニウム板の張力カットおよび走行速度制御を目的とした駆動装置と、張力制御を目的としたダンサロール装置とを1個以上有することが好ましい。
また、トラッキング装置にて各工程の状態が所望の条件か否かを記録し、アルミニウムコイルが巻き取られる前に、アルミニウムウェブのエッジ部にラベルを貼り、そのラベルよりも後が所望の条件か否かをのちに判別できるようにすることも好ましい。
【0064】
上記アルミニウム板は、合紙とともに帯電させて互いに吸着させ、その後所定の長さにカット、および/または、スリットすることが好ましい。また、アルミニウム板のエッジ部分に貼られたラベルの情報をもとに、所定の長さに裁断した後または、裁断する前に、そのラベルを目印として良品部分と欠陥部分とを分別し、良品部分のみを集積することが好ましい。
【0065】
上記送り出し工程等を含む各工程では、アルミニウム板のサイズ(厚さ、巾)、アルミニウム材質、またはアルミニウムウェブの走行速度によって、それぞれの条件で最適な張力を設定することが重要である。そこで、張力カットと走行速度制御を目的とした駆動装置と、張力制御を目的としたダンサ−ロールとを利用し、張力感知装置からの信号をフィードバック制御する張力制御装置を複数設けることが好ましい。駆動装置は、直流モーターと主駆動ローラを組み合わせた制御方法を用いるのが一般的である。主駆動ローラは一般的なゴムを材質とするが、アルミニウムウェブがwetな状態にある工程では不織布を積層して作製されたローラを用いることができる。また、各パスローラはゴムまたは金属が一般的に用いられるが、アルミニウムウェブとスリップを起こしやすい箇所ではこのスリップを防止するために、各パスローラにモーターや減速機を接続し、主駆動装置からの信号によって一定速度で回転制御する等補助的な駆動装置を設けることもできる。
【0066】
平版印刷版用アルミニウム支持体は、特開平10−114046号公報に記載されているように、算術平均表面粗さ(Ra)としての圧延方向の平均表面粗さ(R1)と圧延方向と垂直な方向の平均表面粗さ(R2)との差(R1−R2)が、上記圧延方向の平均表面粗さの30%以内で、さらに圧延方向の平均曲率が1.5×10-3mm-1以内であり、かつ幅方向の曲率分布が1.5×10-3mm-1以内、圧延方向と垂直な方向の曲率が1.0×10-3mm-1以内であることが好ましい。
また、上記粗面化処理等を施して製造された平版印刷版用アルミニウム支持体は、ロール直径20mm〜80mm、ゴム硬度50〜95度の矯正ロールを用いて矯正することが好ましい。、これにより、平版感光印刷機の自動搬送工程においても、平版印刷版原版の露光ズレが起きないフラットネスのアルミニウムコイル状素板を供給することが出来る。特開平9−194093号公報には、ウェブのカール測定方法および装置、カール修正方法および装置、並びにウエブ切断装置が記載されている。
【0067】
また、連続的に平版印刷版用アルミニウム支持体を製造するにあたり、各工程が適切な条件で稼働しているかを電気的に監視し、トラッキング装置にて各工程の状態が所望の条件か否かを記録し、アルミニウムコイルが巻き取られる前に、アルミニウムウェブのエッジ部にラベルを貼り、そのラベルよりも後が所望の条件か否かを、後から判別できるようにすることで、裁断時、集積時にその部分の良否を判定することができる。
【0068】
上述の粗面化処理工程で用いるアルミニウム板の処理装置には、液の温度、比重、電導度、超音波の伝搬速度のうち、ひとつ以上を測定し、液の組成を求め、フィードバック制御、および/または、フィードフォワード制御して液濃度を一定にコントロールすることが好ましい。
上記処理装置中の酸性水溶液にはアルミニウムイオンを初めとするアルミニウム板中に含まれる成分がアルミニウム板の表面処理の進行に伴って溶解する。そこで、アルミニウムイオン濃度と酸またはアルカリの濃度を一定にするために、水と酸、または、水とアルカリを間欠的に添加して液組成を一定に保つのが好ましい。ここで添加する酸またはアルカリの濃度は10〜98質量%が好ましい。
【0069】
上記酸またはアルカリの濃度を制御するには、例えば以下の方法が好ましい。まず、予め使用が予定されている濃度範囲の成分液毎の導電率、比重または超音波の伝搬速度を各温度毎に測定してデータテーブルを作成する。そして、被測定液の導電率、比重または超音波の伝搬速度と温度データを予め作成した非測定液のデータテーブルを参照して濃度を測定する。上記超音波の伝搬時間を高精度・高安定に測定する方法は特開平6−235721号公報に開示されている。また、上記超音波の伝搬速度を利用した濃度測定システムについては特開昭58−77656号公報に開示されている。また、複数の物理量データを液成分毎に相関を示すデータテーブルを作成しておき、そのデータテーブルを参照して多成分液の濃度を測定する方法は特開平4−19559号公報に開示されている。
【0070】
上記超音波の伝搬速度を用いた濃度測定方法を被測定液の導電率と温度の値と組み合わせて、平版印刷版用アルミニウム支持体の粗面化工程に応用すると、プロセスの管理がリアルタイムで正確におこなえるため、一定品質の製品が製造できるようになり、得率の向上につながる。また、温度と超音波の伝搬速度と導電率との組み合わせだけでなく、温度と比重、温度と導電率、温度と導電率と比重と等、それぞれの物理量で濃度および温度毎にデータテーブルを作成しておき、そのデータテーブルを参照して多成分液の濃度測定する方法を平版印刷版用アルミニウム支持体の粗面化処理工程に応用すると、前記と同様な効果が得られる。また、比重と温度とを測定し、予め作成しておいたデータテーブルを参照して被測定物のスラリー濃度を求めることによって、スラリー濃度の測定も迅速かつ正確におこなえるようになる。
【0071】
上記超音波の伝搬速度測定は液中の気泡の影響を受けやすいため、垂直に配置され、かつ下方から上方に向かう流速のある配管中でおこなわれることがより好ましい。上記超音波の伝搬速度測定は、配管内の圧力が1〜10kg/cm2の圧力範囲内でおこなうことが好ましく、超音波の周波数は、0.5〜3MHzが好ましい。
また、上記比重、導電率、超音波の伝搬速度の測定は温度の影響を受けやすいため、保温状態にあり、かつ温度変動が±0.3℃以内に制御された配管内で測定することが好ましい。さらに、導電率および比重、または導電率と超音波の伝搬速度とは同一温度で測定することが好ましいので、同一の配管内または同一の配管フロー内で測定することが特に好ましい。測定の際の圧力変動は温度の変動につながるので可能な限り低い方が好ましい。また測定する配管内の流速分布もできるだけ少ない方が好ましい。さらに、上記測定はスラリー、ゴミ、および気泡の影響を受けやすいので、フィルターや脱気装置等を通した液を測定することが好ましい。
【0072】
《平版印刷版用アルミニウム支持体》
<下塗層>
本発明の製造法によって製造された平版印刷版用アルミニウム支持体は、その表面に感光層を塗設する前に、必要に応じて有機下塗層を設けてもよい。
該有機下塗層に用いられる有機化合物としては例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類や、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸や、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸等の有機リン酸や、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸や、グリシンやβ−アラニン等のアミノ酸類や、トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、これらを二種以上混合して用いてもよい。
【0073】
上記有機下塗層は、例えば以下の方法で設けることが出来る。
(a)水、またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤、あるいはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液を、本発明の支持体上に塗布、乾燥して設ける方法や、(b)水、またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤、あるいはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、本発明の支持体を浸漬して上記有機化合物を吸着させ、その後、水等によって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法を用いて上記有機下塗層を設けることができる。
【0074】
上記(a)の方法では、0.005〜10質量%の上記有機化合物溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。
また、上記(b)の方法では、上記有機溶媒溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によってpHを調整し、pH1〜12の範囲内で使用することもできる。また、感光性平版印刷版の調子再現性を改良するために黄色染料を添加することもできる。
また、上記有機下塗層の乾燥後の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記被覆量が2mg/m2未満だと十分な耐刷性能が得られない場合がある。また、200mg/m2を越えても同様である場合がある。
【0075】
<バックコート層>
本発明の製造方法によって得られた支持体を用いた平版印刷版原版の裏面(感光層が設けられていない側)には、該平版印刷版原版を重ねた場合に感光層が傷付かないように、有機高分子化合物からなる被覆層(以下、「バックコート層」という場合がある。)を必要に応じて設けていてもよい。
上記バックコート層の主成分としては、ガラス転移点が20℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共重合樹脂の群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を用いるのが好ましい。
【0076】
上記飽和共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸ユニットとジオールユニットからなる。本発明に用いられるポリエステルのジカルボン酸ユニットとしてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、蓚酸、スベリン酸、セバチン酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0077】
上記バックコート層には、さらに着色のための染料や顔料、本発明の支持体との密着性を向上させるためにシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸およびカチオン性ポリマー等、さらには滑り剤として通常用いられるワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンからなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜加えてもよい。
上記バックコート層の厚さは基本的には合紙がなくても、後述する感光層を傷付けにくい厚みがあればよく、0.01〜8μmの範囲が好ましい。該厚さが0.01μm未満では平版印刷版を重ねて取り扱った場合の感光層の擦れ傷を防ぐことが困難である。また、上記厚さが8μmを越えると印刷中、平版印刷版原版周辺で用いられる薬品によってバックコート層が膨潤して厚みが変動し、印圧が変化して印刷特性を劣化させることがある。
【0078】
上記バックコート層を本発明の支持体の裏面に被覆する方法としては種々の方法が適用できる。例えば、上記バックコート層用成分を適当な溶媒に溶解し溶液にして塗布し、または、乳化分散液して塗布し、乾燥する方法や、予めフィルム状に成形したものを接着剤や熱で本発明の支持体に貼り合わせる方法や、溶融押し出し機で溶融被膜を形成し、本発明の支持体に貼り合わせる方法等が挙げられるが、上記の塗布量を確保する上で最も好ましいのは、上記バックコート成分を適当な溶媒に溶解し溶液にして塗布、乾燥する方法である。ここで使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤を単独あるいは混合して用いることができる。
また、平版印刷版原版の製造に当たっては裏面のバックコート層と表面の感光性組成物層のどちらが先に支持体上に塗布されてもよく、また両者が同時に塗布されてもよい。
【0079】
《平版印刷版原版》
本発明の製造方法により得られた支持体には、以下に例示する感光層を設けて平版印刷版原版とすることができる。この平版印刷版原版に、露光および現像等を施し、画像が形成され印刷に供し得る状態とされたものが平版印刷版となる。
【0080】
<〔I〕o−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルおよびフェノール・クレゾール混合のノボラック樹脂を含有する感光層を設ける場合>
本発明の支持体には、o−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルおよびフェノール・クレゾール混合のノボラック樹脂を含有する感光層を設けることができる。
上記o−キノンジアジド化合物はo−ナフトキノンジアジド化合物であり、例えば、米国特許第2,766,118号明細書、同第2,767,092号明細書、同第2,772,972号明細書、同第2,859,112号明細書、同第3,102,809号明細書、同第3,106,465号明細書、同第3,635,709号明細書、同第3,647,443号明細書をはじめ、多数の刊行物に記されており、これらは、好適に使用することができる。
また、これらの中でも、特に芳香族ヒドロキシ化合物のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルまたはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸エステル、および芳香族アミノ化合物のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミドまたはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸アミドが好ましく、特に米国特許第3,635、709号明細書に記されているピロガロールとアセトンとの縮合物にo−ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル反応させたものや、米国特許第4,028,111号明細書に記されている末端にヒドロキシ基を有するポリエステルにo−ナフトキノンジアジドスルホン酸、またはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸をエステル反応させたものや、英国特許第1,494,043号明細書に記されているようなp−ヒドロキシスチレンのホモポリマーまたはこれと他の共重合し得るモノマーとの共重合体にo−ナフトキノンジアジドスルホン酸、またはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸をエステル反応させたものや、米国特許第3,759,711号明細書に記されているようなp−アミノスチレンと他の共重合し得るモノマーとの共重合体にo−ナフトキノンジアジドスルホン酸、またはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸をアミド反応させたもの、は非常に優れている。
【0081】
上記o−キノンジアジド化合物は、単独で使用することができるが、アルカリ可溶性樹脂と混合して用いた方が好ましい。好適なアルカリ可溶性樹脂には、ノボラック型フェノール樹脂が含まれ、具体的には、フェノールホルムアルデヒド樹脂、o−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂等が含まれる。さらに米国特許第4,028,111号明細書に記されているように、上記フェノール樹脂と共に、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような炭素数3〜8のアルキル基で置換されたフェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用すると、より好ましい。
また、露光によって可視像を形成するため、例えば、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロライド、p−ジアゾジフェニルアミンの無機アニオン塩、トリハロメチルオキサジアゾール化合物、またはベンゾフラン環を有するトリハロメチルオキサジアゾール化合物等の化合物等が添加される。
【0082】
一方、上記感光層には画像の着色剤を用いてもよい。該画像の着色剤としては、ビクトリアブル−BOH、クリスタルバイオレット、オイルブルー、等のトリフェニルメタン染料が用いられる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。さらに、感脂化剤として特公昭57−23253号公報に記載されているような炭素数3〜15のアルキル基で置換されたフェノール、例えばt−ブチルフェノール、n−オクチルフェノール、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとを縮合させたノボラック樹脂、または、このようなノボラック樹脂のo−ナフトキノンジアジド−4−若しくは−5−スルホン酸エステル(例えば、特開昭61−242446号公報に記載されている)を含有させることができる。
また、現像性を良化させるためにさらに特開昭62−251740号公報に記載されているような非イオン界面活性剤を含有させることができる。以上の組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶かして本発明の支持体上に塗布することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、水、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフルフリルアルコール、アセトン、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、これらの溶媒を単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
本発明の支持体上には、これらの成分からなる感光性組成物は、固形分として0.5〜3.0g/m2として設けるのがよい。
【0083】
<〔II〕ジアゾ樹脂と水不溶性かつ親油性高分子化合物を含有する感光層を設ける場合>
本発明の製造方法により得られた支持体には、ジアゾ樹脂と水不溶性かつ親油性高分子化合物を含有する感光層を設けることもできる。
上記ジアゾ樹脂としては、例えばp−ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドと、またはアセトアルデヒドの縮合物と、ヘキサフルオロリン酸塩と、テトラフルオロホウ酸塩との有機溶媒可溶の反応生成物であるジアゾ樹脂無機塩、また、米国特許第3,300,309号明細書に記載されているような、上記縮合物とスルホン酸類例えばP−トルエンスルホン酸またはその塩、ホスフィン酸類例えばベンゼンホスフィン酸またはその塩、ヒドロキシル基含有化合物例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸またはその塩等との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂有機酸塩等が挙げられる。本発明において、好適に用いることができる他のジアゾ樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リンの酸素酸基およびヒドロキシル基のうち少なくとも一つの有機基を有する芳香族化合物と、ジアゾニウム化合物、好ましくは芳香族ジアゾニウム化合物とを構造単位として含む共縮合体である。そして上記の芳香族環としては、好ましくはフェニル基、ナフチル基をあげることができる。上述のカルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リンの酸素酸基、およびヒドロキシル基のうち少なくとも一つを有する芳香族化合物としては種々のものが挙げられるが、好ましいのは、4−メトキシ安息香酸、3−クロロ安息香酸、2,4−ジメトキシ安息香酸、p−フェノキシ安息香酸、4−アニリノ安息香酸、フェノキシ酢酸、フェニル酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、1−ナフタレンスルホン酸、フェニルリン酸、フェニルホスホン酸である。
【0084】
上述の共縮合ジアゾ樹脂の構成単位をなす芳香族ジアゾニウム化合物には、例えば特公昭49−48001号公報に挙げられているようなジアゾニウム塩を用いることができるが、特に、ジフェニルアミン−4−ジアゾニウム塩類が好ましい。ジフェニルアミン−4−ジアゾニウム塩類は、4−アミノ−ジフェニルアミン類から誘導されるが、このような4−アミン−ジフェニルアミン類としては、4−アミノジフェニルアミン、4−アミノ−3−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−2−メトキシジフェニルアミン、4’−アミノ−2−メトキシジフェニルアミン、4’−アミノ−4−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ−3−メチルジフェニルアミン、4−アミノ−3−エトキシジフェニルアミン、4−アミノ−3−β−ヒドロキシエトキシジフェニルアミン、4−アミノ−ジフェニルアミン−2−スルホン酸、4−アミノ−ジフェニルアミン−2−カルボン酸、4−アミノ−ジフェニルアミン−2’−カルボン酸等が挙げられ、特に好ましくは、3−メトキシ−4−アミノ−4−ジフェニルアミン、4−アミノジフェニルアミンである。
【0085】
また、酸基を有する芳香族化合物との共縮合ジアゾ樹脂以外のジアゾ樹脂としては、特開平4−18559号公報、特開平3−163551号公報、および特開平3−253857号公報に記載された酸基を有するアルデヒドまたはそのアセタール化合物で縮合したジアゾ樹脂も好ましく用いることができる。ジアゾ樹脂の対アニオンとしては、ジアゾ樹脂と安定に塩を形成し、かつ該樹脂を有機溶媒に可溶となすアニオンを含む。
【0086】
これらは、デカン酸および安息香酸等の有機カルボン酸、フェニルリン酸等の有機リン酸およびスルホン酸を含み、典型的な例としては、メタンスルホン酸、トルフルオロメタンスルホン酸等のフルオロアルカンスルホン酸、ラウリルスルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、ジシクロヘキシルスルホコハク酸、カンファースルホン酸、トリルオキシ−3−プロパンスルホン酸、ノニルフェノキシ−3−プロパンスルホン酸、ノニルフェノキシ−4−ブタンスルホン酸、ジブチルフェノキシ−3−プロパンスルホン酸、ジアミルフェノキシ−3−プロパンスルホン酸、ジノニルフェノキシ−3−プロパンスルホン酸、ジブチルフェノキシ−4−ブタンスルホン酸、ジノニルフェノキシ−4−ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、スルホサルチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、p−アセチルベンゼンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−クロロ−5−ニトロベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ブトキシベンゼンスルホン酸、ドデシルオキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、イソプロピルナフヘタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ブトキシナフタレンスルホン酸、ドデシルオキシナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、ナフタリン−1−スルホン酸、ナフタリン−2−スルホン酸、1,8−ジニトロ−ナフタレン−3,6−ジスルホン酸、ジメチル−5−スルホイソフタレート等の脂肪族並びに芳香族スルホン酸、2,2’,4,4’−テトラヒドキシベンゾフェノン、1,2,3−トリヒドロシキシベンゾフェノン、2,2’4−トリヒドロキシベンゾフェノン等の水酸基含有芳香族化合物、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸等のハロゲン化ルイス酸、HClO4,HIO4等の過ハロゲン酸等が挙げられるが、これに限られるものではない。これらの中で、特に好ましいものは、ブチルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ヘキサフルオロリン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0087】
本発明に使用するジアゾ樹脂としては、各単量体のモル比および縮合条件を種々変えることによって、その分子量は任意の値として得ることができるが、本発明の目的とする使途に有効に供するためには分子量が約400〜100,000のもの、好ましくは、約800〜8,000のものが適当である。
水不溶性かつ親油性高分子化合物としては、下記(1)〜(15)に示すモノマーをその構造単位とする通常1〜20万の分子量をもつ共重合体が挙げられる。
【0088】
(1)芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類およびヒドロキシスチレン類、例えばN−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドまたはN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−,m−,p−ヒドロキシスチレン、o−,m−,p−ヒドロキシフェニル−アクリレートまたはメタクリレートである。
【0089】
(2)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0090】
(3)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸である。
【0091】
(4)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等の(置換)アルキルアクリレートである。
【0092】
(5)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の(置換)アルキルメタクリレートである。
【0093】
(6)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド類である。
【0094】
(7)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類である。
【0095】
(8)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類である。
【0096】
(9)スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類である。
【0097】
(10)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類である。
【0098】
(11)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類である。
【0099】
(12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。
【0100】
(13)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセケチルメタクルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミドである。
【0101】
(14)N(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノ)スルホニルフェニルメタクリルアミド、N−(1−(3−アミノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミド等のメタクリル酸アミド類、および上記と同様の置換基を有するアクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルフメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、1−(3−アミノスルホニルナフチル)メタクリレート等のメタクリル酸エステル類、および上記と同様の置換基を有するアクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミドである。
【0102】
(15)N−(2−(メタクリロイルオキシ)−エチル)−2,3−ジメチルマレイミド、ビニルシンナメート、などの、側鎖に、架橋性基を有する不飽和モノマーである。さらに、上記モノマーと共重合し得るモノマーを共重合させてもよい。
【0103】
(16)米国特許第3,751,257号明細書に記載されているフェノール樹脂および例えばポリビニルフォルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂である。
【0104】
(17)ポリウレタンをアルカリ可溶化した特公昭54−19773号、特開昭57−904747号、同60−182437号、同62−58242号、同62−123452号、同62−123453号、同63−113450号、特開平2−146042号に記載された高分子化合物である。
【0105】
また上記共重合体には必要に応じて、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、天然樹脂等を添加してもよい。
【0106】
本発明における感光層に用いる感光性組成物には、露光による可視画像と現像後の可視画像を得ることを目的としてさらに色素を用いることができる。該色素としては、例えば、ビクトリアピュアブル−BOH〔保土ヶ谷化学社製〕、オイルブルー#603〔オリエント化学工業社製〕,パテントピュアブルー〔住友三国化学社製〕、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルバイオレット、メチルグリーン、エリスロシンB、ベイシックフクシン、マラカイトグリーン、オイルレッド、m−クレゾールパープル、ローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミナフトキノン、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルアセトアニリド等に代表されるトリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、オキサジン系、キサンテン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系またはアントラキノン系の色素が有色から無色あるいは異なる有色の色調へ変化する変色剤の例として挙げられる。
【0107】
一方、無色から有色に変化する変色剤としては、ロイコ色素および、例えばトリフェニルアミン、ジフェニルアミン、o−クロロアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、p,p’−ビス−ジメチルアミノジフェニルアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p’,p”−トリス−ジメチルアミノトリフェニルメタン、p,p’−ビス−ジメチルアミノジフェニルメチルイミン、p,p’,p”−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p’−ビス−ジメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p’,p”−トリアミノトリフェニルメタンに代表される第1級または第2級アリールアミン系色素が挙げられる。特に好ましくは、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系色素が有効に用いられ、さらに好ましくはトリフェニルメタン系色素であり、特にビクトリアピュアブルーBOHである。
【0108】
本発明における感光層に用いる感光性組成物には、さらに種々の添加物を加えることができる。例えば、塗布性を改良するためのアルキルエーテル類(例えばエチルセルロース、メチルセルロース)、フッ素系界面活性剤類や、ノニオン系界面活性剤(特にフッ素系界面活性剤が好ましい)、塗膜の柔軟性、耐摩耗性を付与するための可塑剤(例えばブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタン酸ジブチル、フタン酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー、この中で特にリン酸トリクレジルが好ましい)、画像部の感脂性を向上させるための感脂化剤(例えば特開昭55−527号公報に記載のスチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコールによるハーフエステル化物、p−t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂などのノボラック樹脂、p−ヒドロキシスチレンの50%脂肪酸エステル等)、安定剤{例えば、リン酸、亜リン酸、有機酸(クエン酸、シュウ酸、ジピコリン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、酒石酸等)}、現像促進剤(例えば高級アルコール、酸無水物等)等が好ましく用いられる。
【0109】
上述の感光性組成物を含む感光層を本発明の支持体上に設けるには、感光性ジアゾ樹脂、親油性高分子化合物、および必要に応じて種々の添加剤の所定量を適当な溶媒(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルセロソルブアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレンジクロライド、ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合物等)中に溶解させ感光性組成物の塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥すればよい。用いられる溶媒は単独でもよいが、メチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、乳酸メチル等の高沸点溶媒と、メタノール、メチルエチルケトン等の低沸点溶媒との混合物とするとさらに好ましい。
【0110】
本発明の支持体に感光性組成物を塗布する際の該感光性組成物の固形分濃度は1〜50質量%の範囲内とすることが好ましい。この場合、感光性組成物の塗布量は、おおむね、0.2〜10g/m2(乾燥質量)程度とすればよく、さらに好ましくは、0.5〜3g/m2とするとよい。
【0111】
<ネガ型赤外線レーザー記録材料>
本発明の製造方法により得られた支持体を用いて、赤外線レーザーに露光可能なネガ型の平版印刷版原版を作製する場合には、有用な赤外線レーザー用ネガ型感光材料によって感光層を設けるのがよい。該赤外線レーザー用ネガ型感光材料としては、(A)光または熱によって分解して酸を発生する化合物、(B)酸によって架橋する架橋剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)赤外線吸収剤、(E)一般式(R1―X)n―Ar―(OH)mで表される化合物{R1:炭素数6〜32のアルキル基またはアルケニル基、X:単結合、O,S,COO,またはCONH、Ar:芳香族炭化水素基,脂肪式炭化水素基,または複素環基、n=1〜3、m=1〜3}からなる組成物が有用である。
【0112】
上記ネガ型の平版印刷版原版は、現像後に指紋が付きやすく、画像部の強度が弱いという欠点があるが、かかる欠点は上記構成成分によって感光層を形成することで解消される。以下に、このネガ型の平版印刷版原版の構成成分について詳述する。
【0113】
上記(A)光または熱によって分解して酸を発生する化合物としては、特願平3−140109号明細書に記載されているイミノスルフォネート等に代表される、光分解してスルホン酸を発生する化合物が挙げられ、200〜500nmの波長の照射、または100℃以上の加熱によって酸を発生する化合物が挙げられる。好適な酸発生剤としては、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合の開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤等を用いることができる。これらの酸発生剤は、画像記録材料全固形分に対して0.01〜50質量%添加されるのが好ましい。
【0114】
上記(B)酸によって架橋する架橋剤としては、(i)アルコキシメチル基若しくはヒドロキシル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、(iii)エポキシ化合物が好ましい。
【0115】
上記(C)アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
【0116】
上記(D)赤外線吸収剤からなる組成物としては、760〜1200nmの赤外線を有効に吸収するアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料等の市販染料またはカラーインデックスに記載されている黒色顔料、赤色顔料、金属粉顔料、フタロシアニン系顔料が挙げられる。また、画像の見やすさを向上させるためにオイルイエロー、オイルブルー#603等の画像着色剤を添加することが好ましい。また、塗膜の柔軟性改善のため、ポリエチレングリコールやフタル酸エステルのような可塑剤を添加することができる。
【0117】
〔ポジ型赤外線レーザー記録材料〕
本発明の製造方法により得られた支持体を用いて、赤外線レーザーに露光可能なポジ型平版印刷版原版を作製する場合には、有用な赤外線レーザー用ポジ型感光材料によって感光層を設けるのがよい。該赤外線レーザー用ポジ型感光材料としては、(A)アルカリ可溶性高分子と(B)該アルカリ可溶性高分子と相溶してアルカリ溶解性を低下させる化合物、(C)赤外レーザーを吸収する化合物からなる赤外線レーザー用ポジ型感光材料が有用である。
上記赤外線レーザー用ポジ型感光材料使用することで、非画像部のアルカリ現像液に対する溶解性不足を解消でき、また、傷つき難くくかつ、画像部の耐アルカリ現像適性に優れ、現像安定性のよい平版印刷版とすることができる。
【0118】
上記(A)アルカリ可溶性高分子としては、(i)フェノール樹脂、クレゾール樹脂、ノボラック樹脂やピロガロール樹脂なので代表されるフェノール性水酸基を有する高分子化合物、(ii)スルホンアミド基を有する重合モノマーを単独または他の重合性モノマーと共重合させて得られた化合物、(iii)N―(p―トルエンスルホニル)メタクリルアミドやN―(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等に代表される活性イミド基を分子内に有する化合物等が好ましい。上記(B)成分としては、スルホン化合物、アンモニウム塩、スルホニウム塩、アミド化合物等の上記(A)成分と相互作用する化合物が挙げられる。例えば上記(A)成分がノボラック樹脂の場合には、(B)成分としてシアニン色素が好適である。
【0119】
上記(C)成分としては、750〜1200nmの赤外域に吸収域があり、光/熱変換能を有する材料が好ましい。このような機能を有するものとしては、スクワリリウム色素、ピリリウム塩色素、カーボンブラック、不溶性アゾ染料、アントラキノン系染料などが挙げられる。これら顔料は0.01μm〜10μmの範囲の大きさが好ましく、染料を添加し、メタノール、メチルエチルケトン等を有機溶媒としてそれらを溶解し、アルミニウム板上に乾燥後の質量が1〜3g/m2となるように塗布、乾燥して設けられる。
【0120】
〔光重合系ホトポリマー型レーザー記録材料〕
赤外線レーザーに露光可能なネガ型平版印刷版原版を製造する場合には、さらに有用なレーザー露光可能な感光層用材料として、光重合系ホトポリマー感光材料が挙げられる。
上記光重合系ホトポリマー感光材料を使用する場合、上記感光層を塗布する前に、本発明の支持体と感光層との密着力を向上させることを目的に、該支持体上に特開平3−56177号公報、特開平8−320551号公報に記載の応性官能基を有するシリコーン化合物を含む接着層を設けることが好ましい。即ち、メタノール、エタノール等の溶媒中にエチレンテトラメトキシシランやエチレンテトラエトキシシラン等のシラン化合物を1〜20質量%の割合で溶解し、塩酸、硝酸、燐酸、スルホン酸等の酸触媒のもとで加水分解させる。そして、−Si−O−Si−結合を形成させてゾル化させ、これを本発明の支持体上に接着層として設けることができる。
その際、上記シラン化合物をメタノール等の適当な溶媒に溶解することで、粘度を0.2mPa・s(0.2センチポイズ)〜2000mPa・s(20ポイズ)の範囲内に調整し、乾燥後の塗布質量を1〜100mg/m2とするのがよい。
上記接着層表面に光重合系ホトポリマー感光材料である付加重合性不飽和結合を有する重合可能な化合物(末端エチレン性光重合性基を有する化合物)を有する感光層を設けることができる。該感光層には、光重合開始剤、有機高分子結合剤、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等を含まれてもよい。
【0121】
上記末端エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル(アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、マレイン酸エステル等)、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド(メチレンビスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド等)等が挙げられる。
上記光重合開始剤にはチタノセン化合物、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイミダゾール系の増感剤を使用できる。また、シアニン色素、メロシアニン色素、キサンテン色素、クマリン色素などの増感剤を使用してもよい。
このような組成の感光性組成物を本発明の支持体表面に乾燥後の塗設量が1〜3g/m2の感光層を設けることで、赤外線レーザー露光可能なネガ型の平版印刷版原版を作製できる。
【0122】
〔光架橋系ホトポリマー型レーザー記録材料〕
また、上記感光層用材料には光架橋系ホトポリマーを用いてもよい。
上記光架橋系ホトポリマーとしては、例えば、特開昭52−96696号公報に開示されているポリエステル化合物、英国特許1,112,277号明細書等に記載のポリビニルシンナメート系樹脂が好ましく、マレイミド基を側鎖に有する特開昭62−78544号公報に記載のものがさらに好ましい。
【0123】
〔スルホネート型赤外線レーザー記録材料〕
さらに,上記感光層用材料として、スルホネート型赤外線レーザー記録材料を用いてもよい。
上記スルホネート型赤外線レーザー記録材料としては、例えば、特登録270480号公報、特登録2704872号公報等に開示されているスルホネート化合物を用いることができる。また、赤外線レーザー照射によって発生した熱によってスルホン酸を発生し、水に可溶化する感光材料や、スチレンスルホン酸エステルをゾルゲルで固め、その後赤外線レーザーを照射することで表面極性が変化する感光材料や、特願平9−89816号明細書、特願平10−22406号明細書、特願平10−027655号明細書に記載されているレーザー露光によって疎水性表面が親水性に変化する感光材料等を用いることができる。
また、以上の熱によってスルホン酸基を発生し得る高分子化合物からなる感光層の特性をさらに改善するためには、つぎに挙げる方法を併用するのが好ましい。かかる方法としては、(1)特願平10−7062号明細書に記載された酸もしくは塩基発生剤との併用による方法、(2)特願平9−340358号明細書に記載された特定の中間層を設ける方法、(3)特願平9−248994号明細書に記載された特定の架橋剤を併用する方法、(4)特願平10−43921号明細書に記載された特定の層構造を形成する方法、(5)特願平10−115354号明細書に記載された固体粒子表面修飾の様態で使用する方法等を挙げることができる。
【0124】
レーザー露光によって発生する熱を利用して感光層の親/疎水性を変化させる組成物の他の例としては例えば、US2764085号明細書に記載のWerner錯体からなる熱によって疎水性に変化する組成物や、特公昭46−27219号公報に記載の特定の糖類や、メラミンホルムアルデヒド樹脂等の露光によって親水性に変化する組成物や、特開昭51−63704号公報に記載のヒートモード露光によって疎水性に変化する組成物や、US4081572号明細書に記載のフタリルヒドラジドポリマーのように熱によって脱水/疎水化するポリマーからなる組成物や、特公平3−58100号公報に記載のテトラゾリウム塩構造を有し熱によって親水化する組成物や、特開昭60−132760号公報に記載のスルホン酸変性ポリマーからなる露光によって疎水化する組成物や、特開昭64−3543号公報に記載のイミド前駆体ポリマーからなる露光によって疎水化する組成物や、特開昭51−74706号公報に記載のフッ化炭素ポリマーからなる露光によって親水化する組成物を挙げることができる。
【0125】
さらに、特開平3−197190号公報に記載の疎水性結晶性ポリマーからなる露光によって親水性に変化する組成物や、特開平7−186562号公報に記載の熱によって不溶化された側基が親水性に変化するポリマーと光熱変換剤からなる組成物や、特開平7−1849号公報に記載のマイクロカプセルを含有する三次元架橋された親水性バインダーからなり露光によって疎水化する組成物や、特開平8−3463号公報に記載の原子価異性化またはプロトン移動異性化する組成物や、特開平8−141819号公報に記載の熱によって層内の相構造変化(相溶化)を生じ、親/疎水性を変化させる組成物や、特公昭60−228号公報に記載の熱によって表面の形態、表面の親/疎水性が変化する組成物をあげる事ができる。
【0126】
好ましい上記感光層用材料の他の例として、高パワーおよび高密度のレーザ光によって発生した熱を利用する、いわゆるヒートモード露光によって、感光層/支持体間の接着性を変化させる組成物をあげることができる。具体的には、特公昭44−22957号公報に記載の熱融着性または熱反応性物質からなる組成物を用いることができる。
【0127】
〔電子写真感光性樹脂系レーザー記録材料〕
また、本発明の平版印刷版原版の感光層として、例えば、米国特許第3,001,872号明細書に開示さているZnO感光層を設けてもよく、特開昭56−161550号公報、特開昭60−186847号公報、特開昭61−238063号公報等の各公報に記載されている電子写真感光性樹脂を用いた感光層を設けてもよい。本発明の支持体上に設けられる感光層の塗布量としては、塗布後の乾燥質量で、約0.1〜約7g/m2、好ましくは0.5〜4g/m2が好ましい。
【0128】
電子写真法は、特公昭37−17162号公報にその基本特許が開示されており、それ以外に特開昭56−107246号公報、特公昭59−36259号公報等の各公報に開示されている方法を用いることができる。上記電子写真感光性樹脂は、主として、光導電性化合物とバインダーとからなるが、感度向上、所望の感光波長を得る目的のため、公知の顔料、染料、化学増感剤、その他必要の添加剤を使用することができる。
【0129】
本発明の製造方法により得られた支持体を用いて、平版印刷版原版を作製するには、本発明の支持体と感光層との密着性を高めるためや、現像後に感光層の残存しないようにするため、またはハレーションを防止する等の目的で、必要に応じて中間層を設けてもよい。上記密着性を向上させるためには、一般に中間層には、ジアゾ樹脂や、例えばアルミに吸着するリン酸化合物、アミノ化合物、カルボン酸化合物等を用いるのが好ましい。また、現像後に感光層が残存しないようにするには、溶解性の高い物質を用いて中間層を設けるのが好ましく、溶解性の良好なポリマーや、水溶性ポリマーを用いるのが好ましい。さらにハレーションを防止するためには、上記中間層に染料やUV吸収剤を含めるのが好ましい。
上記中間層の厚さは任意であり、露光した時に、上層の感光層と均一な結合形成反応をする厚みでなければならない。通常、乾燥固体で約1〜100mg/m2の塗布割合が好ましく、5〜40mg/m2がさらに好ましい。
【0130】
また、塗布された感光層上には相互に独立して設けられた突起物によって構成されるマット層を設けてもよい。該マット層を設ける目的は、密着露光におけるネガ画像フィルムと感光性平版印刷版との真空密着性を改良することで、真空引き時間を短縮し、さらに密着不良による露光時の微小網点のつぶれを防止することである。
上記マット層の塗布方法としては、特開昭55−12974号公報に記載されているパウダリングされた固体粉末を熱融着する方法や、特開昭58−182636号公報に記載されているポリマー含有水をスプレーし乾燥させる方法等があり適宜選択できるが、マット層自体が実質的に有機溶剤を含まない水性アルカリ現像液に溶解するか、あるいはこれによって除去可能なものが好ましい。
【0131】
《平版印刷版》
上述の本発明の支持体上に感光層が設けられた平版印刷版原版は、赤外線レーザー等によって露光され、アルカリ現像液等で現像処理されて平版印刷版となる。露光に用いる光源は、700〜1200nmの赤外線レーザーをもちいることができる。近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷用版材の自動現像機が広く用いられており、本発明法もその自動現像機を用いることが好ましい。
露光された本発明の平版印刷版原版の現像には、特開昭54−62004号公報に記載されているケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリを主成分とする現像液や、遊離アルデヒド基やケトン基を持たず還元性を示さないサッカロース、トレハロース等の非還元糖を主成分とする特開平8−305039号公報に記載の現像液が使用できる。
さらに、これに水酸化カリウム等のアルカリ剤や、特開平6−282079号公報に開示されている糖アルコールのポリエチレングリコール付加物など現像安定化剤や、ハイドロキノン等の還元剤や、エチレンジアミン等の硬水軟化剤や、ノニオン性、アニオン性、または両性界面活性剤、あるいは特公平3−54339号公報に開示されているポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の界面活性剤等を添加することができる。
ケイ酸アルカリの場合は、SiO2/M2Oのモル比(Mはアルカリ金属を表す)が、0.3〜3.0の範囲内にあることが好ましい。この現像処理によって、表面にSiを付着させることが出来る。また、表面に存在するSi元素量をESCAで測定することも可能である。さらに、C、Al、O、S、Si、Ca量を測定し、その元素比率(atm.%)として算出する。
上記Si量は、1〜25atom.%、特に5〜20atom.%であることが好ましい。この範囲にSi量があれば、赤外線レーザー光照射時のハレーション防止に有効である。
【0132】
一方、上記非還元糖を主成分とする現像液の場合は、予めアルミニウム支持体の表面をシリケート処理などで親水化処理しておく必要がある。この場合でも、現像後に表面に付着しているSi量は1〜25atom.%が好ましい。上記において、現像は自動現像機を用いておこなうことが好ましく、現像液よりも高いアルカリ強度の補充液を現像液に加えることによって長時間安定に現像処理することができる。この補充液には、現像カスの分散および印刷画像部の親インキ性を高めるためにアニオン系などの界面活性剤を添加できる。さらに、必要に応じて消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0133】
現像処理された平版印刷版原版の表面は、界面活性剤を有するリンス液やアラビヤガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理するのが好ましい。アラビヤガムや澱粉誘導体を固形分濃度で5〜15質量%含有する水溶液を使用する場合には、ウェット塗布量が1〜10ml/m2となるように現像後の表面を保護する。また、乾燥後の塗布量としては、1〜5g/m2が好ましい。
さらに、一層の高耐刷力が要求される場合には、特公昭61−2518号公報に記載されているバーニング処理を施すのが好ましい。また、塗布方法としては、特公昭55−28062号公報に開示されている整面液をスポンジや脱脂綿で塗布するか、自動コーターで塗布する等が挙げられる。整面液を用いる場合は、一般に0.3〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。
【0134】
以上のように、本発明の製造方法により得られた支持体を用いて作製された平版印刷版原版は、画像露光された後、常法によって現像を含む処理を施され、樹脂画像が形成されて平版印刷版となる。例えば、上記〔I〕の感光層を有する感光性平版印刷版原版の場合は、画像露光後、米国特許第4,259,434号明細書に記載されているようなアルカリ水溶液で現像することにより露光部分が除去されて、平版印刷版が得られ、上記〔II〕の感光層を有する平版印刷版原版の場合には、画像露光後、米国特許第4,186,006号明細書に記載されているような現像液で、未露光部の感光層が現像によって除去されて平版印刷版が得られる。また、特開昭59−84241号公報、特開昭57−192952号公報、および特開昭62−24263号公報の各公報に記載されているようなポジ型平版印刷版原版を現像する際に用いられる水性アルカリ現像液組成物を使用することもできる。
【0135】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
[実施例2]
中間焼鈍と均熱処理とを省略して製造したJIS1050−H18アルミニウム圧延板を用いて、下記の各処理を施し、実施例2の平版印刷版用アルミニウム支持体を製造した。各処理の終了後には水洗し、ニップローラで液切りをおこなった。また、上記水洗は、スプレー管から水を吹き付けておこなった。
【0137】
(1)アルカリ水溶液中でのエッチング処理:
NaOHを27質量%およびアルミニウムイオンを6.5質量%含有する、液温70℃の水溶液をスプレー管によってアルミニウム板に吹きつけて、該アルミニウム板のアルカリエッチング処理をおこなった。アルミニウム板の、後に電気化学的に粗面化処理をおこなう側面の溶解量は6g/m2であり、その裏面の溶解量は2g/m2であった。
上記アルカリエッチング処理に用いたエッチング液の濃度は、予めNaOH濃度と、アルミニウムイオン濃度と、温度と、比重と、液の導電率と、の関係から作成したテーブルを参照し、温度、比重、および導電率からエッチング液濃度を求め、フィードバック制御によって水と48質量NaOH%水溶液とを添加して一定に保った。その後、水洗処理をおこなった。
【0138】
(2)デスマット処理:
つぎに液温35℃の塩酸を主体とする酸性水溶液をスプレーを用いてアルミニウム板に吹き付けて、10秒間デスマット処理をおこなった。このデスマットに用いる酸性水溶液は、次の工程で用いる電気化学的な粗面化処理で用いる電解装置からのオーバーフロー廃液を使用した。ついで、デスマット処理液を吹き付けるスプレー管を数カ所設置して、次の工程までアルミニウム板の表面が乾かないようにした。
【0139】
(3)塩酸を主体とする酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理(第1の粗面化処理):
図1に示した台形波の交流電流と図2に示した電解装置を2槽用いて連続的に電気化学的な粗面化処理をおこなった。酸性水溶液としては、HCL7.5g/lの塩酸に塩化アルミニウムを添加して、アルミニウムイオンを4.5g/lとしたもを使用し、液温は35℃であった。また、交流電流は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpおよびtp’が1msecであり、カーボン電極を対極とした。交流電流のピーク時の電流密度は、アルミニウム板がアノード反応時が50A/dm2、カソード反応時が47.5A/dm2であった。さらに、交流電流の陽極時電気量(QA)と陰極時電気量(QC)との比(QC/QA)、duty、周波数、およびアノード反応時の電気量の総和は表1に示すとおりであった。その後、スプレーによって水洗処理をおこなった。
塩酸を主体とする酸性水溶液の濃度コントロールは、35質量%の塩酸原液と水とを、通電量に比例して添加し、塩酸と水との添加容積と同量の酸性水溶液(塩酸を主体とする酸性水溶液)を逐次電解層からオーバーフローさせて電解層系外に排出しておこなった。また、これとともに、予め塩酸濃度とアルミニウムイオン濃度と温度と液の導電率と液の超音波伝搬速度との関係から作成したテーブルを参照し、酸性水溶液の温度、導電率、超音波伝搬速度から該酸性水溶液の濃度を求め、塩酸原液と水との添加量を逐次調整する制御をおこなって濃度を一定に保った。
【0140】
【表1】
【0141】
(4)電気化学的な粗面化処理の中間におこなうアルカリ水溶液中でのエッチング処理:
NaOHを27質量%、アルミニウムイオンを6.05質量%含有する液温45℃の水溶液を、アルミニウム板にスプレーを用いて吹き付けてアルカリエッチング処理をおこなった。各アルミニウム板の、第2の粗面化処理において粗面化する側面の溶解量を表2に示す。上記エッチング液の濃度は予めNaOH濃度とアルミニウムイオン濃度と温度と比重と液の導電率との関係から作成したテーブルを参照し、温度、比重および導電率からエッチング液濃度を求め、フィードバック制御によって水と48質量%NaOH水溶液とを添加して一定に保った。その後、水洗処理をおこなった。
【0142】
【表2】
【0143】
(5)電気化学的な粗面化処理の中間におこなうデスマット処理:
つぎに液温35℃の塩酸を主体とする酸性水溶液をスプレーを用いてアルミニウム板に吹き付けて、3秒間デスマット処理をおこなった。このデスマットに用いる酸性水溶液は、電気化学的な粗面化処理で用いる電解装置からのオーバーフロー廃液を使用した。ついで、デスマット処理液を吹き付けるスプレー管を数カ所設置して、次の工程までアルミニウム板の表面が乾かないようにした。
【0144】
(6)塩酸を主体とする酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理(第2の粗面化処理):
図1に示した台形波の交流電流と図2に示した電解装置を2槽用いて連続的に電気化学的な粗面化処理をおこなった。酸性水溶液としては、HCl7.5g/lの塩酸に塩化アルミニウムを添加して、アルミニウムイオンを4.5g/lとしたものを使用し、液温は35℃であった。また、交流電流は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpおよびtp’が1msecであり、カーボン電極を対極とした。交流電流のピーク時の電流密度は、アルミニウム板がアノード反応時が50A/dm2、カソード反応時が47.5A/dm2であった。さらに、交流電流の陽極時電気量(QA)と陰極時電気量(QC)との比(QC/QA)、duty、周波数、およびアノード反応時の電気量の総和は表3に示すとおりであった。その後、スプレーによって水洗処理をおこなった。
塩酸を主体とする酸性水溶液の濃度コントロールは、35質量%の塩酸原液と水とを、通電量に比例して添加し、塩酸と水との添加容積と同量の酸性水溶液(塩酸を主体とする酸性水溶液)を逐次電解層からオーバーフローさせて電解層系外に排出しておこなった。また、これとともに、予め塩酸濃度とアルミニウムイオン濃度と温度と液の導電率と液の超音波伝搬速度との関係から作成したテーブルを参照し、酸性水溶液の温度、導電率、超音波伝搬速度から該酸性水溶液の濃度を求め、塩酸原液と水との添加量を逐次調整する制御をおこなって濃度を一定に保った。
【0145】
【表3】
【0146】
(7)アルカリ水溶液中でのエッチング処理:
NaOHを5質量%、アルミニウムイオンを0.5質量%含有する液温45℃の水溶液を、アルミニウム板にスプレーを用いて吹き付けてアルカリエッチング処理をおこなった。アルミニウム板の溶解量0.1g/m2上記エッチング液の濃度は予めNaOH濃度とアルミニウムイオン濃度と温度と比重と液の導電率との関係から作成したテーブルを参照し、温度、比重および導電率からエッチング液濃度を求め、フィードバック制御によって水と48質量%NaOH水溶液とを添加して一定に保った。その後、水洗処理をおこなった。
【0147】
(8)酸性水溶液中でのエッチング処理:
つぎに表4に示す条件で、硫酸を酸性エッチング液とし、これをスプレー管からアルミニウム板に吹き付けて、酸性エッチング処理をおこなった。酸性エッチング液の濃度は、予め硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度と温度と比重と液の導電率との関係から作成したテーブルを参照して、温度、比重および導電率から酸性エッチング液濃度を求め、フィードバック制御によって水と50質量%硫酸とを添加して一定に保った。その後、水洗処理をおこなった。
【0148】
【表4】
【0149】
(9)陽極酸化処理:
液温35℃の硫酸濃度15質量%の水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を陽極酸化処理液として用いて、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2で、陽極酸化被膜量が2.4g/m2になるように陽極酸化処理をおこなった。陽極酸化処理液の濃度は、予め硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度と温度と比重と液の導電率との関係から作成したテーブルを参照して、温度、比重および導電率から液濃度を求め、フィードバック制御によって水と50質量%硫酸とを添加して一定に保った。その後、スプレーによって水洗をおこない、実施例2の平版印刷版用アルミニウム支持体を作製した。
【0150】
(10)平版印刷版の作製:
上述の処理を施した、平版印刷版用アルミニウム支持体を乾燥し、粗面化された表面に下塗り層および乾燥膜厚1.5g/m2の感光層を塗布、乾燥して、実施例2の赤外線レーザー露光可能なポジ型平版印刷版原版を作製した。この平版印刷版原版を、露光、現像等の処理をおこなって平版印刷版とした。実施例2における平版印刷版は、後述する評価の際に、印刷機上の湿し水の見え方が良好であった。倍率が750倍のSEM写真で観察したところ、ハニカム状のピットが均一に生成した表面形状をしており、該ハニカム状のピットの中にはピッチ0.1〜0.5μmの微細な凹凸が重なって生成しているのがわかった。また、実施例2における平版印刷版は感光層との密着に優れた良好な印刷版であった。さらに、アルミニウム結晶粒の結晶方位差に起因して生じるストリークと呼ばれる処理ムラも認められなかった。
また、陽極酸化処理後のアルミニウム板の平均表面粗さ(Ra)を表6に示す。
【0151】
《評価》
上記実施例2で作製した平版印刷版を用いて、印刷をおこなった。印刷後の各平版印刷版の表面の汚れ具合を目視によって観察し、以下の基準にしたがって耐汚れ性を評価した。結果を表6に示す。
〔基準〕
A:非画像部に付着したインキは非常に少なかった。
C:非画像部が付着したインキによって著しく汚れていた。
【0153】
[実施例6]
実施例2において、陽極酸化処理の後に得られた平版印刷版用アルミニウム支持体に、さらに親水化処理をおこなう目的で、珪酸ナトリウム2.5質量%、70℃の水溶液に5秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥して実施例6の平版印刷版用アルミニウム支持体を作製した。該平版印刷版用アルミニウム支持体に下塗り層とネガ型感光層とを塗布し、その後乾燥して実施例6のネガ型平版印刷版原版を作製した。この平版印刷版原版に露光、現像等の処理をおこなってネガ型平版印刷版とした。これを用いて実施例2と同一の条件で評価したところ、良好な印刷版であった。結果を表6に示す。
【0155】
[実施例8]
表5に示す組成A〜組成Eの合金成分を含有する5種類のアルミニウム合金溶湯から実施例8に使用するアルミニウム板を作製した。該アルミニウム板は以下のようにして製造した。まず、アルミニウム合金溶湯に、脱ガスおよび濾過からなる溶湯処理を施し、DC鋳造法で厚さ500mmの鋳塊を作製した。該鋳塊表面を10mmに面削した後、鋳塊を加熱し、均熱化処理をおこなわずに400℃で熱間圧延を開始し、板厚4mmになるまで圧延した。つぎに冷間圧延で厚み1.5mmにし、中間焼鈍をおこなった後、再度冷間圧延で0.24mmに仕上げ、平面性を矯正した後、実施例8−1〜8−5に使用する各アルミニウム板を作製した。
組成A〜Dは、Al純度と全ての不純物元素が所定範囲内である。また、組成EはAl純度とFe,Si,Mn,Mg,Znの5種の不純物元素が所定範囲内の組成であり、本発明の範囲内である。
【0156】
【表5】
【0157】
表5に示す組成のアルミニウム板に、それぞれ実施例2と同様の処理をおこなって実施例8の平版印刷版用アルミニウム支持体を5種類作製した。
上記得られた平版印刷版用アルミニウム支持体を乾燥させて、粗面化された表面に下塗層および感光層を塗布し、その後乾燥して乾燥膜厚が1.5g/m2のポジ型平版印刷版原版を作製した。該平版印刷版原版に露光、現像等の処理をおこなって平版印刷版とした。これを用いて実施例2と同一の条件で評価したところ、良好な印刷版であった。結果を表6に示す。
また、実施例8における5種類の平版印刷版は、倍率750倍のSEM写真で観察したところ、均一な表面形状をしていた。ハニカム状のピットの中には、ピッチ0.1〜0.5μmの微細な凹凸が重なって発生していた。さらに、上述の評価の際非画像部が点状に汚れることのない良好な印刷版であった。また、アルミニウム結晶粒の結晶方位差が起因するストリークと呼ばれる処理ムラも認められなかった。
【0160】
【表6】
【0161】
上記表6から、実施例2、6および8−1〜8−5の平版印刷版は、5000枚印刷した後でも、汚れが発生しにくく、良好な印刷版であった。
【発明の効果】
本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法によると、純度の低いアルミニウム板を用いて均一な粗面化をおこなうことが可能となり、また、陽極酸化被膜の欠陥に起因する印刷時の汚れ易さを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で好ましく用いられる交流電流の台形波の説明図である。
【図2】 本発明で用いるラジアル型電解装置の該略図である。
【符号の説明】
10 主電解槽
11 交流電源
12 ラジアルドラムローラ
13a,13b 主極
14 溶液供給口
15 酸性水溶液
20 補助陽極槽
21 補助陽極
W アルミニウム板
Claims (4)
- 塩酸と塩化アルミニウムとを主体とする酸性水溶液中で交流電流を用いてアルミニウム板を電気化学的に粗面化する粗面化処理工程を含む平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法であって、下記(A)〜(F)に示す工程を含み、前記粗面化処理工程が、下記(B)の第1の粗面化処理工程および下記(D)の第2の粗面化処理工程でおこなわれることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
(A)前記アルミニウム板をアルカリ水溶液中で1〜15g/m 2 溶解する化学的なエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理を施す第1の処理工程
(B)前記第1の処理工程によって処理を施されたアルミニウム板を電気化学的に粗面化する第1の粗面化処理工程
(C)前記第1の粗面化処理工程によって電気化学的に粗面化された前記アルミニウム板をアルカリ水溶液中で化学的にエッチングするエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理を施す中間処理工程
(D)前記中間処理工程によって処理を施されたアルミニウム板を電気化学的に粗面化する第2の粗面化処理工程
(E)前記第2の粗面化処理工程によって電気化学的に粗面化された前記アルミニウム板に、下記(1)または(2)に示す処理を施す第2の処理工程
(1)前記アルミニウム板を、60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間化学的にエッチングするエッチング処理
(2)前記アルミニウム板を、アルカリ水溶液中で0.01〜5g/m 2 溶解する化学的なエッチング処理を施し、その後、酸性溶液中でデスマット処理、または、60〜90℃の硫酸水溶液中で1〜10秒間化学的にエッチングするエッチング処理
(F)前記第2の処理工程によって処理を施された前記アルミニウム板に、陽極酸化処理を施す陽極酸化処理工程
前記アルミニウム板が、アルミニウム(Al)の含有率が95〜99.4質量%であり、かつ、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、およびチタン(Ti)、のうち少なくとも5種以上を以下に示す範囲内で含み、
Fe:0.3〜1.0質量%
Si:0.15〜1.0質量%
Cu:0.1〜1.0質量%
Mg:0.1〜1.5質量%
Mn:0.1〜1.5質量%
Zn:0.1〜0.5質量%
Cr:0.01〜0.1質量%
Ti:0.03〜0.5質量%
前記酸性水溶液が、アルミニウムイオンが1〜10g/lとなるように、5〜15g/lの塩酸水溶液中に塩化アルミニウムを添加して得られたものであり、
前記酸性水溶液温度が、30〜50℃であり、
前記粗面化処理工程における、前記交流電流のdutyが0.3〜0.4、および前記交流電流の周波数が30〜200Hzであり、電流密度が10〜200A/dm2、電気量の総和が、50〜800C/dm2であり、前記アルミニウム板の陽極時電気量(QA)と陰極時電気量(QC)との比(QC/QA)が、1.5〜2.0である。 - さらに、前記陽極酸化処理工程によって陽極酸化処理を施された前記アルミニウム板を、珪酸ナトリウムまたはポリビニルホスホン酸水溶液中で親水化する親水化処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
- さらに、前記陽極酸化処理工程によって陽極酸化処理を施された前記アルミニウム板に、封孔処理を施す封孔処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
- さらに、前記封孔処理工程によって封孔処理を施されたアルミニウム板を、珪酸ナトリウムまたはポリビニルホスホン酸水溶液中で親水化する親水化処理工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
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