JP2013078794A - 平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法、ならびに該製造方法により得られる平版印刷版用アルミニウム合金板および平版印刷版用支持体 - Google Patents

平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法、ならびに該製造方法により得られる平版印刷版用アルミニウム合金板および平版印刷版用支持体 Download PDF

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Abstract

【課題】表面組成が均一な平版印刷版用アルミニウム合金板を得ることができ、面状故障のない平版印刷版用支持体を作製することができる平版印刷板用アルミニウム合金板の製造方法の提供。
【解決手段】アルミニウム合金溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、前記一対の冷却ローラによって前記アルミニウム合金溶湯を凝固させつつ圧延を行う、連続鋳造法による平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法であって、前記溶湯供給ノズル7に前記アルミニウム合金溶湯100を供給する容器6において、該容器の内部に存在する前記アルミニウム合金溶湯の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とし、前記容器の内部に存在する前記アルミニウム合金溶湯の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とする手段として、上部開口部の面積が50×50(cm2)以上の前記容器を用いることを特徴とした平版印刷版用アルミニウム合金板200の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法に関する。また、本発明は、該平版印刷版用支持体の製造方法により得られる平版印刷版用アルミニウム合金板、平版印刷版用支持体および平版印刷版用支持体原版に関する。
連続鋳造法による平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法、すなわち、アルミニウム原材料を溶解し、得られたアルミニウム溶湯に濾過処理を施した後、該アルミニウム溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、該一対の冷却ローラによってアルミニウム溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成する鋳造工程、冷間圧延工程、中間焼鈍工程、仕上げ冷間圧延工程、および平面性矯正工程を経て板厚0.1〜0.5mmのアルミニウム合金板とする、平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法は、その工程がシンプルであることから、いわゆる、DC鋳造工程、面削工程、均熱工程、加熱工程、熱間圧延工程からなる従来の平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法に比べて、ロスが少なく得率が優れる、工程の変動を受けにくい、初期設備コスト、ランニングコストが安い等のメリットがある。
平版印刷版用印刷版用支持体に用いられるアルミニウム合金板は、画像形成層との密着性や水とインキの保持力のバランスをコントロールする目的で、表面に粗面化処理を施した上で使用するのが一般的である。この粗面化処理の際に、アルミニウム合金板表面の性質が極めて重要な役割をもつ。粗面化処理の性質を決定付ける要因としては、粗面化処理の条件はもちろんのこと、アルミニウム合金板表面の組成およびその均一性が重要となる。これが不均一な場合には、処理性が不均一となり、面状ムラのような面状故障が発生してしまう。この問題を解決するためには、表面が均一な組成をもつアルミニウム合金板を得る方法を開発する必要がある。
表面の均一性の改善方法としては、例えば、熱伝導率の高いノズルを使用することで横断面幅方向の凝固の均一性を高める方法(特許文献1参照)や、ロール中心からの垂線とロール手前のメニスカスのなす角度を一定の範囲内とすることにより冷却速度の周期的な変化を抑制する方法(特許文献2参照)などが知られる。
別の観点では、鋳造の安定化のために、溶湯液面の高さの制御が知られる。液面のレベルを安定化させる上では、電磁誘導方式を用いた非接触式もしくは接触式の液面センサーを用いることで液面のレベルを継続的に検出し、溶湯の流(入)量を制御する機構(例えば、溶湯の流れを妨げる可動弁のようなもの)にフィードバックをかける方法(特許文献3参照)などが知られる。また、昇降可能なダミーボリュームを挿入して溶湯金属量の変動に応じてダミーボリュームを上下させて湯面高さを安定させる方法(特許文献4参照)などが知られている。これらの方法を用いることで、数秒間もしくは数十秒間以上の時間で捉えられる液面高さの安定を得ることができる。
しかしながら、これらの方法はいずれも、面状故障に対する改善効果が不十分であった。
さらに別の観点として、特許文献5では、“アルミ表面のFe濃度が1%以上である箇所が全面積の0.01〜10%”である旨が記載されている。この発明の効果は、電解粗面化処理において表面に形成されるピットの形状の不均一性を改善できるところにある。該特許に記載のFeの分布は解析対象とするエリアがミクロンオーダーであり極めて狭い範囲であることから、電解粗面化処理における電解エッチング性の均一性についての改善効果は期待できるが、肉眼で確認できる数mmから数十cmの広い範囲を対象とした偏析および面状故障についての改善効果が得られるものではなく、やはり面状故障に対する改善効果は不十分であった。
特開2006−15361号公報 特開2006−130545号公報 特許第3781211号明細書 特開平8−238541号公報 特開平7−132689号公報
本願発明者らは、アルミニウム合金溶湯の冷却時の凝固過程を詳細に解析した結果、溶湯供給ノズルから一対の冷却ローラの間にアルミニウム合金溶湯を供給する際に、ノズルからの溶湯の流出量が変化することによって、アルミニウム合金板の表面組成が不均一になることが面状故障の原因となることが見出した。
特許文献1,2に記載の方法には、このようなノズルからの溶湯の流出量の変化による面状故障を改善する効果はない。
さらに、本願発明者らは、ノズルに溶湯を供給する容器の内部に存在する溶湯の液面が振動を起こしていないときは、表面が均一な組成をもつアルミニウム合金板が得られ、粗面化処理後に面状故障のない表面が得られることを見出した。すなわち、面状故障の原因となるノズルからの溶湯の流出量の変化の原因が、ノズルに溶湯を供給する容器の内部に存在する溶湯の液面の変動、とくに振動として捉えられる毎秒数回から数十回以上の振幅で起きる小刻みな液面の変動であることを見出した。
特許文献3、4に記載の方法のような、溶湯液面の高さを制御する方法は、数秒間もしくは数十秒間以上の時間で捉えられる液面高さの安定を得ることができるが、上述したような毎秒数回から数十回以上の振幅で起きる小刻みな液面の振動を制御することはできないので、ノズルに溶湯を供給する容器内部に存在する溶湯の液面の振動によって生じる、ノズルからの溶湯の流出量の変化による面状故障を改善する効果はない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、表面組成が均一な平版印刷版用アルミニウム合金板を得ることができ、面状故障のない平版印刷版用支持体を作製することができる平版印刷板用アルミニウム合金板の製造方法、ならびに、該製造方法により得られる平版印刷板用アルミニウム合金板、平版印刷板用支持体および平版印刷板原版を提供することを目的とする。
本願発明者らは、上述した知見に基づいてさらに鋭意検討した結果、流入口から容器へ流入してきたアルミニウム合金溶湯の一部が、直接的に溶湯の液面に向かって流れることで液面の振動が起こること、また、溶湯の流れが容器内で渦状の定常的な流れを形成することで液面の振動が起こることを見出した。
本願発明者らは、これらの現象を抑制するための検討を重ねた結果、容器の形状に特定の特徴をもたせることでノズルに溶湯を供給する容器の内部に存在する溶湯の液面の振動を抑制することができることを見出した。
本発明は、上述した本願発明者らによる知見に基づくものであり、アルミニウム合金溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、前記一対の冷却ローラによって前記アルミニウム合金溶湯を凝固させつつ圧延を行う、連続鋳造法による平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法であって、
前記溶湯供給ノズルに前記アルミニウム合金溶湯を供給する容器において、該容器の内部に存在する前記アルミニウム合金溶湯の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とすることを特徴とした平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法を提供する。
また、本発明の平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法において、前記容器の内部に存在する前記アルミニウム合金溶湯の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とする手段として、上部開口部の面積が50×50(cm2)以上の前記容器を用いる。
また、本発明は、上記した本発明の平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法により得られる平版印刷版用アルミニウム合金板を提供する。
また、本発明は、上記した本発明の平版印刷版用アルミニウム合金板に粗面化処理を施して得られる平版印刷版用支持体を提供する。
また、本発明は、上記した本発明の平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けてなる平版印刷版用原版を提供する。
本発明によれば、表面組成が均一である平版印刷版用アルミニウム合金板を連続鋳造法により得ることができる。得られたアルミニウム合金板に粗面化処理を施して平版印刷版用支持体を作製する際に、該アルミニウム合金板表面の粗面化処理性が均一になり、面状故障のない平版印刷版用支持体を得ることができる。
図1は、本発明の連続鋳造圧延装置の1実施形態を示した模式図であり、立面図として示している。 図2は、図1に示す連続鋳造圧延装置の平面図である。 図3は、溶湯供給ノズルの形状およびその冷却ローラとの位置関係の好適例を示す模式図である。 図4(a)、(b)は先端が可動構造である溶湯供給ノズルの別の例を示す模式図であり、図4(a)は平面図であり、図4(b)は側面図である。 図5(a)、(b)は、容器6(6a)の一構成例を示した図であり、図5(a)は立面図であり、図5(b)は平面図である。 図6(a)、(b)は、容器6(6b)の別の一構成例を示した図であり、図6(a)は立面図であり、図6(b)は平面図である。 図7(a)、(b)は、容器6(6c)の別の一構成例を示した図であり、図7(a)は立面図であり、図7(b)は平面図である。 図8(a)、(b)は、本発明における容器8(6d)の構成例を示した図であり、図8(a)は立面図であり、図8(b)は平面図である。 図9(a)、(b)は、一般的な容器6の一構成例を示した図であり、図9(a)は立面図であり、図9(b)は平面図である。 図10は、冷間圧延に用いられる冷間圧延機の例を示す模式図である。 図11は、矯正装置の例を示す模式図である。
以下、添付図面に従って本発明に係る平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法の好ましい実施形態について説明する。図1(a)、(b)は本発明の平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法に用いる連続鋳造圧延装置の1実施形態を示した図であり、図1(a)は立面図であり、図1(b)は平面図である。図1(a)では、図面手前側の壁面は省略されている。なお、この点については、本願における全ての立面図にも同様である。
図1に示す連続鋳造圧延装置1において、溶解保持炉2には、Al地金を溶解させ、Fe、Si等が添加され、所望の組成に調整されたアルミニウム合金溶湯(以下、「Al溶湯」という。)100が溜められている。Fe、Si等の添加方法としては、例えば、Al−Fe(25wt%)の母合金、Al−Si(25wt%)の母合金等を添加する方法が挙げられる。
本発明におけるAl溶湯の好適組成を以下に示す。
Siは、原材料であるAl地金に不可避不純物として0.03〜0.1wt%前後含有される元素であり、原材料差によるばらつきを防ぐため、意図的に微量添加されることが多い。また、Siは、アルミニウム中に固溶した状態で、または、金属間化合物もしくは単独の析出物として存在する。
本発明においては、Al溶湯中のSi量は、0.04〜0.15wt%であるのが好ましい。なお、0.10wt%以上の値は、Al地金中のSiに加えて、別途母合金を添加することで実施される。
Feは、アルミニウム中に固溶する量は少なく、ほとんどが金属間化合物として残存する。また、Feは、アルミニウム合金の機械的強度を高める作用があり、支持体の強度に大きな影響を与える。
Fe含有量が少なすぎると、機械的強度が低すぎて、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、版切れを起こしやすくなる。また、高速で大部数の印刷を行う際にも、同様に版切れを起こしやすくなる。
一方、Fe含有量が多すぎると、必要以上に高強度となり、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、フィットネス性に劣り、印刷中に版切れを起こしやすくなる。また、Feの含有量が、例えば、1.0wt%より多くなると圧延途中に割れが生じやすくなる。
本発明においては、Al溶湯中のFe量は、0.10〜0.50wt%であるのが好ましい。
Cuは、電解粗面化処理を制御するうえで重要な元素である。また、Cuは、非常に固溶しやすい元素であり、ごく一部は金属間化合物として存在する。
本発明においては、Al溶湯中のCu量は、電解粗面化の均一性の観点から、0.001wt%以上であるのが好ましく、硝酸液中での電解粗面化処理により生成するピットの径、ピット径の均一性、ひいては耐汚れ性の観点から、0.050wt%以下であるのが好ましい。
Al溶湯は、鋳造時の割れ発生防止のために、結晶粒を微細化する元素(例えば、Ti、B)を含有することができる。鋳造時に十分に結晶微細化すると、仕上げ冷間圧延後においても、結晶粒の幅が小さくなるので好ましい。
例えば、Tiを0.003〜0.05wt%の範囲で含有することができる。また、Bを0.001〜0.02wt%の範囲で含有することができる。
また、Al溶湯の残部は、Alおよび不可避不純物からなる。不可避不純物としては、例えば、Mg、Mn、Zn、Cr、Zr、V、Zn、Be等が挙げられる。これらはそれぞれ0.05wt%以下の範囲で含有することができる。
不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7wt%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structurand properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
溶解保持炉2内のAl溶湯100は、第1の流路3を通過して濾過手段4へと送られる。
濾過手段4内にはAl溶湯100を濾過するフィルタ41が設けられている。濾過手段4内に設けられたフィルタ41により、Al溶湯100中に混入した不純物、溶解炉、溶湯流路中に残っていたコンタミ等が除去される。
濾過手段については、特許第3549080号公報に記載されているものが好ましい。
第1の流路3において、結晶粒微細化材として、TiB2を含む母合金をAl溶湯100中に添加するのが好ましい。これは、結晶粒微細化材の添加により、連続鋳造時の結晶粒が微細になりやすく、平版印刷版用支持体にする際の表面処理工程において、粗大な結晶粒に起因する表面処理ムラの発生を抑制することができるためである。
TiB2を含む母合金としては、具体的には、例えば、Ti(5%)、B(1%)、残部がAlと不可避不純物からなるワイヤ状の母合金を使用することができる。
なお、結晶粒微細化材を添加する場合、TiB2凝集粒子の流出を抑制するため、濾過手段4よりも上流側で添加することが望ましい。
また、Al溶湯100は、所望の組成に調製された後、清浄化処理を施してもよい。清浄化処理としては、例えば、Al溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理が挙げられる。清浄化処理は、常法に従って行うことができる。
清浄化処理は、必須ではないが、Al溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、Al溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。
溶湯のフィルタリングは、通常、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のフィルタに溶湯を通過させることで行われる。フィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。
また、Al溶湯の脱ガス処理は、通常、回転式のロータ等で、Al溶湯中にAr等の不活性ガスを吹き込み、溶湯中にとけ込んでいる水素ガスをAr気泡内に取り込んで浮上させること、あるいはフラックス処理によって行われる。脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、Al溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
図示しないが、第1の溶湯流路3の途中に脱ガス装置を設け、濾過処理を行う前にAl溶湯100中の脱ガス処理(脱水素ガス処理)が行うことが好ましい。脱ガス装置としては、SNIFF式、GBF等の市販されている方式の回転式脱ガス装置を使用できる。
濾過手段4を通過したAl溶湯100は、第2の流路5を通過して、溶湯供給ノズル7に溶湯100を供給するための容器6へと流れ込む。容器6には、Al溶湯100の流入量を調整するための構造として液面制御機構が設けられている。図1において、容器6内のAl溶湯100の液面に浮かべられたフロート65と、容器6の流入口に設けられたバルブ61と、がリンクされており、容器6内のAl溶湯100の液面の高さの変化に対応してバルブ61が開閉することによって、または、バルブの開放量が変化することによって、容器6内に流れ込むAl溶湯100の量が調整される。これによって、容器6内の溶湯100の液面の高さが略一定に保たれる。
容器6から溶湯供給ノズル7に供給されたAl溶湯100は、一定間隔の距離(例えば、数mmから10mm程度)を保って位置決めされた一対の冷却ロール8,8の間に供給される。
溶湯供給ノズル7から吐出されたAl溶湯100は、冷却ロール8,8表面に接し、凝固を開始する。ここで、溶湯供給ノズル7の先端から冷却ロール8,8表面にAl溶湯が移動する際に溶湯メニスカスが形成される。この溶湯メニスカスが振動すると、冷却ロール8,8への着地点が振動することになり、その結果、凝固履歴が異なる部分が表面に生じ、結晶組織の不均一、微量元素の偏析が起こりやすくなる。このような故障はリップルマークとも呼ばれ、冷間圧延、中間焼鈍、仕上げ冷間圧延を受けた後、平版印刷版用支持体として表面処理を行う際、表面処理ムラの原因になりやすい。
そのため、リップルマークを軽減する観点から、Al溶湯の離脱ポイントを一箇所に安定させるため、溶湯供給ノズル7の先端部を、少なくとも先端部下側の外側面の角度がAl溶湯の吐出方向に対して鋭角になるように傾斜させるのが好ましい。例えば、特開平10−58094号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。
図3は、溶湯供給ノズルの形状および冷却ローラとの位置関係の好適例を示す模式図である。なお、図3においては、ノズルの上端側のノズル板と冷却ローラのみが図示されているが、ノズルの下端側のノズル板と冷却ローラについても同様の位置関係である。
図3においては、溶湯供給ノズル7の口部外縁が冷却ローラ8に接触し、溶湯供給ノズル7の口部外周に冷却ローラ8との接触を避ける逃げ部(面取り部)71が凹設されている。即ち、溶湯供給ノズル7は先端部Tのみで冷却ローラ8と接触している。逃げ部(面取り部)は、溶湯供給ノズル7の全幅にわたって設けられているのが好ましい。
このような構造にすることで、溶湯メニスカス部が変動するスペースとなる隙間が与えられないので、外観故障が発生しないアルミニウム合金板を得ることができ、外観故障がより抑制された平版印刷版用支持体を得ることができる。
また、メニスカスが振動した際の振幅を小さくするため、ノズル7の先端部と冷却ローラ8表面との距離を小さくするのが好ましい。そのため、理想的には、上述した下側(好ましくは下側および上側)の外側面の角度がAl溶湯の吐出方向に対して鋭角になっているノズル7の先端部と冷却ローラ8表面とが常に接触している状態が好ましい。
具体的には、例えば、溶湯供給ノズル7を構成する部材のうち、Al溶湯に上面から接触する上板部材と、Al溶湯に下面から接触する下板部材とが、それぞれ上下方向に可動であり、該上板部材および該下板部材が、それぞれ、Al溶湯の圧力によって加圧され、隣接する冷却ローラ8の表面に押しつけられる態様が好適に挙げられる。例えば、特開2000−117402号公報に記載されている態様を好適に使用することができる。
これにより、溶湯供給ノズル7の先端部と冷却ローラ8とが常に接し、その結果、溶湯メニスカス部の形状が一定状態で維持されるため、外観故障がより抑制された平版印刷版用支持体を得ることができる。
このように溶湯メニスカスを安定化させたとしても、溶湯ノズル内での溶湯の流れが不均一で有れば、連続鋳造されたアルミ合金板も不均一になりやすい。そのため、溶湯供給ノズル内での溶湯の流れを均一にする必要があるが、一対の冷却ローラ同士の隙間が数mmから10mm程度と極めて小さいため、そこに溶湯を供給するノズルも極めて薄い構造になり、ノズル内部のAl溶湯が通過するスペースも狭くなる。したがって、ノズル内部でのAl溶湯の滞りは直ちにAl溶湯の流れの不均一につながる。
ノズル内部でのAl溶湯の滞り防止のためには、ノズル内面がAl溶湯との濡れ性が低いのが好ましい。そのためには、ノズル内面が、Al溶湯に対する濡れ性が低い材料からなり、かつ、適度な凹凸を有するのが好ましい。特開平10−225750号公報では、ノズル内面の粗度を規定する方法を記載している。
具体的には、溶湯供給ノズルが、そのAl溶湯に接する内面に、あらかじめ、メジアン径が5〜20μmであり、モード径が4〜12μmである粒度分布の骨材粒子を含む離型剤を塗布されているのが好ましい。Al溶湯の滞りを起こしにくい離型剤としては、例えば、酸化亜鉛、窒化ボロン(BN)等を骨材に用いる離型剤が挙げられる。中でも、窒化ボロンを骨材に用いる離型剤が好ましい。例えば、特開平11−192537号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。例えば、特開平11−192537号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。
図4は、先端が可動構造である溶湯供給ノズルの別の例を示す模式図である。図4(a)は平面図であり、図4(b)は側面図である。
図4に示される溶湯供給ノズル7Bは、上板部材72および下板部材73を棒部材74で固定することにより、上板部材72および下板部材73の先端が、棒部材74を支点として、Al溶湯の圧力に応じて軽度に動くことができるようになっている。したがって、Al溶湯の圧力により、上板部材72および下板部材73の先端をそれぞれ冷却ローラに接触させることができる。
冷却ローラは、特に限定されず、例えば、鉄製のコア・シェル構造の冷却ローラ等の従来公知のものを使用することができる。コア・シェル構造の冷却ローラを用いる場合、コア・シェル間に設けた流路中に冷却水を通水することで、冷却ローラ表面の冷却能を高めることができる。また、凝固させたアルミニウムに更に圧下を加えることでアルミニウム合金板の厚さを所望の厚さに精度よく揃えることができる。
冷却ローラ表面で凝固したアルミニウムはそのままでは、冷却ローラに固着しやすく、連続的に安定して鋳造することが容易でない場合がある。そこで、本発明においては、冷却ローラが、その表面に、離型剤を塗布されるのが好ましい。離型剤としては、耐熱性に優れるものが好ましく、例えば、カーボングラファイトを含有するものが好適に挙げられる。塗布の方法は、特に限定されないが、例えば、カーボングラファイト粒子の懸濁液(好ましくは水懸濁液)をスプレー塗布する方法が好適に挙げられる。スプレー塗布は、冷却ローラに非接触で離型剤を供給することが可能な点で好ましい。
ここで、塗布された離型剤の厚さが冷却ローラの幅方向および/または周方向で異なると、冷却ローラへの熱移動の速度に影響が出て、結晶粒の不均一や、FeおよびSiの存在の不均一につながるため、本発明においては、塗布された離型剤の厚さを均一化するのが好ましい。
具体的には、例えば、耐火材や耐熱性の布で作られたワイパを冷却ローラ表面に一定圧力で接触させる方法が好適に挙げられる。また、溶湯と直接接する危険性がない場合には木綿等の布を使用して、均一化することができる。
また、離型剤は、ワイパ等の均一化手段に捕捉されたり、連続鋳造されたアルミニウム合金板の表面に移動したりするため、定期的に冷却ローラ表面に供給するのが好ましい。
また、溶湯供給ノズルが冷却ローラに対して幅方向において不均一に接触すると、冷却ローラ表面の離型剤を部分的に掻き取ることになり、結果としてロール表面の離型剤の厚さが不均一になりやすく、ひいては結晶粒の不均一になりやすい。
したがって、本発明においては、溶湯供給ノズルの口部外縁が、冷却ローラに接触しないのが好ましく、上述したリップルマークの軽減の観点から、その先端でのみ接触するのがより好ましい。
本発明においては、駆動鋳型を用いる連続鋳造法により鋳造を行う。
連続鋳造法は、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固し、一般的に、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。
連続鋳造法として、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を使用すると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。
鋳造圧延により得られる連続鋳造板(アルミニウム合金板)200の厚さは、後で実施される冷間圧延の効率の点で薄い方が好ましく、通常、1〜10mmとする。連続鋳造板(アルミニウム合金板)200は、巻き取り装置9によってコイル状に巻き取られる。また、適宜、切断機(図示せず)により切断される。
本発明の平版印刷版支持体用アルミニウム合金板の製造方法では、容器6の内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制する、具体的には、該Al溶湯100の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とすることにより、溶湯供給ノズル7からのAl溶湯100の流出量の変化を抑制する。これにより表面組成が均一な連続鋳造板(アルミニウム合金板)200が得られる。
図9(a)、(b)は、一般的な容器6の一構成例を示した図であり、図9(a)は立面図であり、図9(b)は平面図である。
流入口に設けられたバルブ61を通過して容器6内に流入してきたAl溶湯100の一部は、矢印で示すように直接的にAl溶湯100の液面に向かって流れることで液面の振動が起こる。また、Al溶湯100の流れが容器6内で渦状の定常的な流れを形成することで液面の振動が起こる。これらの原因によって液面に振動が発生している状態のAl溶湯100が流出口62から溶湯供給ノズル7に供給されることによって、溶湯供給ノズル7からのAl溶湯100の流出量が変化し、鋳造圧延により得られる連続鋳造板(アルミニウム合金板)200の表面組成が不均一になる。
本発明では、容器6の形状に以下に述べる特定の特徴をもたせることで、容器6の内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制し、Al溶湯100の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とする。
図5(a)、(b)は、容器6(6a)の一構成例を示した図であり、図5(a)は立面図であり、図5(b)は平面図である。
図5(a)、(b)に示す容器6aでは、該容器6aの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制する手段として、該容器6a内部に堰63、63が設けられている。
図5(a)、(b)に示す容器6aでは、堰63、63を設けることでAl溶湯100の液面を伝播する振動を抑制することができる。これによって該容器6aの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動が抑制され、Al溶湯100の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とすることができる。
なお、図5(a)では、堰63、63の高さがAl溶湯100の液面の高さよりも高くなっているが、堰63、63を設けることで、容器6aの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制することができる限りこれに限定されず、堰63、63の高さはAl溶湯100の液面の高さよりも低くてもよい。
また、図5(b)では、容器6aの縦方向、すなわち、流入口と流出口62とを通過する軸(縦軸)に対して、直交するように堰63、63が設けられているが、堰63、63を設けることで、容器6aの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制することができる限りこれに限定されず、堰63、63は容器6aの縦軸に対して斜め方向になるように設けてもよく、容器6aの縦軸に対して平行するように設けてもよい。
また、図5(a)、(b)では、容器6a内部に2つの堰63、63が設けられているが、堰63を設けることで、容器6aの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制することができる限りこれに限定されず、堰63の数は1つでもよく、3つ以上でもよい。
図6(a)、(b)は、容器6(6b)の別の一構成例を示した図であり、図6(a)は立面図であり、図6(b)は平面図である。
図6(a)、(b)に示す容器6bでは、該容器6bの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制する手段として、該容器6bの内壁に凹凸構造64が設けられている。
図6(a)、(b)に示す容器6bでは、該容器6bの内壁に凹凸構造64を設けることによって、該容器6b内部で発生するAl溶湯100の渦状の定常的な流れを抑制することができる。これによって、該容器6bの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動が抑制され、Al溶湯100の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とすることができる。
なお、図6(b)では、該容器6bの全ての内壁、すなわち、上流側の内壁、下流側の内壁、および、側面側の内壁の全てに凹凸構造64が設けられているが、該容器6bの内壁に凹凸構造64を設けることで、該容器6bの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制することができる限りこれに限定されず、例えば、上流側の内壁および下流側の内壁のみに凹凸構造64を設けてもよく、側面側の内壁のみに凹凸構造64を設けてもよく、上流側の内壁、下流側の内壁、および、側面側の内壁のうち、いずれか1つの内壁にのみ凹凸構造64を設けてもよい。
また、図6(a)では、内壁の高さ方向全体にわたって凹凸構造64が設けられており、図6(b)では内壁の幅方向全体にわたって凹凸構造64が設けられているが、該容器6bの内壁に凹凸構造64を設けることで、該容器6bの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制することができる限りこれに限定されず、内壁の高さ方向の一部にのみ凹凸構造64を設けてもよく、内壁の幅方向の一部にのみ凹凸構造64を設けてもよい。
また、図6(a)、(b)では、凸部の側面形状が三角形状(凸部の形状は四角錘形状)をしているが、該容器6bの内壁に凹凸構造64を設けることで、該容器6bの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制することができる限りこれに限定されず、凸部の側面形状が円形状、楕円形状、矩形形状、五角形またはそれ以上の多角形形状であってもよい。
また、該容器6bの内壁に設ける凹凸構造64の高さおよびピッチは、該容器6bの内壁に凹凸構造64を設けることで、該容器6bの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制することができる限り特に限定されない。例えば、凹凸構造64は数cmオーダーの高さおよびピッチとすることができる。
図7(a)、(b)は、容器6(6c)の別の一構成例を示した図であり、図7(a)は立面図であり、図7(b)は平面図である。図7(a)、(b)に示す容器6cは、バルブ61´を設ける位置、および、バルブ61´の形状が、図9(a)、(b)に示すバルブ61とは異なっている。図7(a)、(b)に示す容器6cにおいて、該バルブ61が該容器6の内部に存在する溶湯100の液面の振動を抑制する手段である。
容器6の流入口に設けるバルブ61としては、図9(a)、(b)に示すように、円錐の上部を切り取ったような形状のバルブを容器6の内壁側に設けること、すなわち、バルブ61の開放時、該バルブ61が容器6の内部に位置するように設けることが一般的である。しかしながら、図9(a)、(b)に示すようなバルブ61を使用した場合、流入口が容器6の内側に向かって拡径した形状となり、かつ、その後方にバルブ61が位置するため、流入口から流れ込んできたAl溶湯100が、矢印で示すように容器6内を全方位へ拡散することとなる。この結果、容器6内のAl溶湯100の流れは、Al溶湯100の液面を直接的に振動させるようなベクトルをもつこととなる。
これに対し、図7(a)、(b)の容器6cでは、円錐の上部を切り取ったような形状のバルブ61´を容器6cの外壁側に設けている。すなわち、バルブ61´の開放時、該バルブ61´が容器6cの外側に位置するように設けている。図7(a)、(b)に示すバルブ61´を使用した場合、流入口が容器6cの内側に向かって縮径した形状となり、かつ、その手前側にバルブ61´が位置するため、流入口から流れ込んできたAl溶湯100が、矢印で示すように容器6cの中心に集まるため、容器6c内の溶湯100の流れが、Al溶湯100の液面を揺らすベクトルをほとんど持たない。この結果、溶湯100の液面の振動が抑制され、Al溶湯100の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とすることができる。
図8(a)、(b)は、本発明における容器6(6d)の一構成例を示した図であり、図8(a)は立面図であり、図8(b)は平面図である。
図8(a)、(b)に示す容器6dは、図9(a)、(b)に示す容器6に比べて容器の開口面積が大きくなっている。図8(a)、(b)に示す容器6dでは、容器6dの開口面積を大きくすることによって、Al溶湯100の液面を振動させる種々の原因に対する耐性を上げることができる。これによりAl溶湯100の液面の振動が抑制され、Al溶湯100の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とすることができる。
以上の点から明らかなように、図8(a)、(b)に示す容器6dでは、容器6dの開口面積を大きくすることが該容器6dの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制する手段である。
該容器6dの内部に存在するAl溶湯100の液面の振動を抑制するためには、容器6dの開口面積を50×50(cm2)以上にすることが好ましく、60×60(cm2)以上とすることがより好ましく、70×70(cm2)以上とすることがさらに好ましい。なお、図9に示す従来の一般的な容器6の開口面積は30×30(cm2)程度である。
なお、図8(b)に示す容器6dでは、図9(b)に示す容器6に比べて、容器の寸法を縦横方向いずれにも大きくすることによって開口面積を大きくしているが、容器6dの開口面積が50×50(cm2)以上となる限りこれに限定されず、容器を縦方向または横方向のいずれか一方に大きくすることによって開口面積が50×50(cm2)以上とすることでも同様の効果を得ることができる。
本発明では、容器の内部に存在する溶湯の液面の振動を抑制するための上述した手段のうち、いずれか1つを用いてもよいし、2以上の手段を併用してもよい。容器の内部に存在する溶湯の液面の振動を抑制する効果という点では、2以上の手段を併用することが好ましい。
本発明の平版印刷版支持体用アルミニウム合金板の製造方法では、上記した手順で鋳造工程を実施し、連続鋳造板(アルミニウム合金板)200を作成した後、通常の手順で冷間圧延、中間焼鈍、仕上げ冷間圧延および平面性矯正を実施する。これらの手順について以下に説明する。
<冷間圧延>
図1に示す連続鋳造圧延装置1において、切断機(図示せず)により適宜切断され、巻き取り装置9によってコイル状に巻き取られた連続鋳造板(アルミニウム合金板)200に対して冷間圧延を行う。冷間圧延は、図1に示す連続鋳造圧延装置1で製造された連続鋳造板(アルミニウム合金板)200の厚さを減じさせる手順である。これにより、連続鋳造板(アルミニウム合金板)200を所望の厚さにする。なお、冷間圧延は、従来公知の方法により行うことができる。図10は、冷間圧延に用いられる冷間圧延機の例を示す模式図である。図10に示される冷間圧延機11は、送り出しコイル12および巻き取りコイル13の間で搬送される連続鋳造板(アルミニウム合金板)200に、それぞれ支持ローラ15により回転される一対の圧延ローラ14により圧力を加えて、冷間圧延を行う。
<中間焼鈍>
冷間圧延を実施した後、中間焼鈍を行う。中間焼鈍は、冷間圧延実施後の連続鋳造板(アルミニウム合金板)に熱処理を行う手順である。
本来、連続鋳造方法は、従来の固定鋳型を用いる方法と異なり、溶湯を極めて急速に冷却凝固させることができる。その結果、連続鋳造を経て得られた連続鋳造板(アルミニウム合金板)中の結晶粒は、従来の固定鋳型を用いる方法に比べて格段に微細化されうる。ただし、そのままでは結晶粒の大きさがまだ大きく、仕上げ冷間圧延後、更に、粗面化処理を経て平版印刷版用支持体としたときに、結晶粒の大きさに起因する外観故障(表面処理ムラ)が発生しやすい。
そこで、上述した冷間圧延工程で加工歪みを蓄えたうえで、中間焼鈍工程を行うことで、冷間圧延工程で蓄積された転位が解放されて、再結晶が起こり、結晶粒を更に微細化することができるようになる。具体的には、冷間圧延工程の加工率および中間焼鈍工程の熱処理条件(中でも、温度、時間および昇温速度)の条件によって、結晶粒を制御することができる。例えば、連続式の焼鈍を行う場合、通常は、300〜600℃で10分間以下加熱するが、400〜600℃で6分間以下加熱するのが好ましく、450〜550℃で2分間以下加熱するのがより好ましい。また、通常は、昇温速度を0.5〜500℃/分程度とするが、昇温速度を10〜200℃/秒以上とし、かつ、昇温後の保持時間を短時間(10分以内、好ましくは2分以内)とすることにより、結晶粒の微細化を促進することができる。
バッチ式の焼鈍を用いた場合、通常は、300〜550℃で5時間以上加熱するが、300〜500℃で10時間以上加熱するのが好ましく、350〜490℃で10時間以上加熱するのがより好ましい。各温度について焼鈍時間の上限は40時間以下とするのが望ましい。
中間焼鈍は、従来公知の方法により行うことができ、具体的には、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている方法を使用することができる。
<仕上げ冷間圧延>
中間焼鈍の実施後、仕上げ冷間圧延を行う。仕上げ冷間圧延は、中間焼鈍後の連続鋳造板(アルミニウム合金板)の厚さを減じさせる手順である。仕上げ冷間圧延実施後の厚さは、0.1〜0.5mmであるのが好ましい。
冷間圧延は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、上述した中間焼鈍の前に行われる冷間圧延と同様の方法により行うことができる。
<平面性矯正>
平面性矯正は、連続鋳造板(アルミニウム合金板)の平面性を矯正する工程である。
平面性矯正は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置を用いて行うことができる。
また、この平面性矯正は、アルミニウム合金板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させる観点から、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。
図11は、矯正装置の例を示す模式図である。図11に示される矯正装置20は、送り出しコイル22および巻き取りコイル23の間で搬送される連続鋳造板(アルミニウム合金板)200に、ワークロール24を含むレベラ部21にて、張力を加えながら平面性を改善する。その後、スリッタ25により板幅が所定の幅に調整される。
また、板幅を所定の幅に加工するため、スリッタラインを通すスリット工程を行うこともできる。スリット工程は、従来公知の方法で行うことができる。
また、アルミニウム合金板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム合金板の表面に薄い油膜を設る油膜形成工程を行うこともできる。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
上記手順で作製した連続鋳造板(アルミニウム合金板)から平版印刷版用支持体を製造する際、該連続鋳造板(アルミニウム合金板)に対して以下に述べる表面処理が施される。これらの表面処理を全て施すことは必ずしも要求されないが、粗面化処理および陽極酸化処理は必須である。また、これらの表面処理の回数は特に限定されず、2回以上の複数回施してもよい。
<粗面化処理>
粗面化処理としては、一般に、機械的粗面化処理、化学的粗面化処理および電気化学的粗面化処理(以下、「電解粗面化処理」ともいう。)のうちの1種または2種以上の組み合わせが用いられる。
以下に述べる粗面化処理の好適態様では、電解粗面化処理と、それに引き続いた液膜処理と、その後のアルカリエッチング処理の三つの処理が必須であるが、その他の処理を含んでいてもよい。なお、本発明においては、液膜処理は、電解粗面化処理に引き続いて施されるものであり、電解粗面化処理と液膜処理との間に、例えば、水洗処理等を施す態様は含まれない。
粗面化処理としては、例えば、第一のアルカリエッチング処理(第1アルカリエッチング処理)、第一のデスマット処理(第1デスマット処理)、硝酸を含有する電解液中での電解粗面化処理、液膜処理、第二のアルカリエッチング処理(第2アルカリエッチング処理)および第二のデスマット処理(第2デスマット処理)をこの順に施す処理(第1の態様);第1の態様において第1アルカリエッチングの前に機械的粗面化処理を施す処理(第2の態様);
第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、硝酸を含有する電解液中での第一の電解粗面化処理、第一の液膜処理(第1液膜処理)、第2アルカリエッチング処理、第2デスマット処理、塩酸を含有する電解液中での第二の電解粗面化処理、第二の液膜処理(第2液膜処理)、第三のアルカリエッチング処理(第3アルカリエッチング処理)および第三のデスマット処理(第3デスマット処理)をこの順に施す処理(第3の態様);第3の態様において第1アルカリエッチングの前に機械的粗面化処理を施す処理(第4の態様);
第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、塩酸を含有する電解液中での電解粗面化処理、液膜処理、第2アルカリエッチング処理および第2デスマット処理をこの順に施す処理(第5態様);等が好適に挙げられる。
以下、粗面化処理が含むことができる各種の処理について説明する。
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、アルミニウム合金板の表面を、通常、平均表面粗さ0.35〜1.0μmとする目的で行われる。
機械的粗面化処理としては、例えば、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されている方法を用いることができる。機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理(電気化学的粗面化処理を複数回行う場合は1回目の電気化学的粗面化処理)の前に行うことが好ましい。
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、アルミニウム合金板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm2、より好ましくは15,000〜35,000kg/cm2であり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
本発明においては、ナイロンブラシは複数本用いるのが好ましく、具体的には、3本以上がより好ましく、4本以上が特に好ましい。ブラシの本数を調整することにより、アルミニウム合金板の表面に形成される凹部の波長成分を調整できる。
また、ブラシを回転させる駆動モータの負荷は、ブラシローラをアルミニウム合金板に押さえつける前の負荷に対して1kWプラス以上が好ましく、2kWプラス以上がより好ましく、8kWプラス以上が特に好ましい。このような負荷を調整することにより、アルミニウム合金板の表面に形成される凹部の深さを調整することができる。ブラシの回転数は、100回転以上が好ましく、200回転以上が特に好ましい。
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン(パミスストーン)、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる。また、水酸化アルミニウムは過度の荷重がかかると粒子が破損するため、局所的に深い凹部を生成させたくない場合に好適である。
研磨剤のメジアン径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、2〜100μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがより好ましい。研磨剤のメジアン径を調整することにより、アルミニウム合金板の表面に形成される凹部の深さを調整することができる。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
このようなブラシと研磨剤とを用いて機械的粗面化処理を行う装置として、特開2002−211159号公報に記載されている装置を用いることができる。
本発明においては、ブラシグレイン法による機械的粗面化処理に代えてまたは共に、表面に所定の凹凸パターンを有する転写ロールを用いて、アルミニウム合金板の表面に凹凸を転写する方法を使用することができる。
なお、本発明においては、このような機械的粗面化処理(特に、転写ロールを用いた粗面化処理)は、上述した仕上げ冷間圧延工程の最後に転写によって表面に凹凸を形成する処理を行ってもよい。
<第1アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
電解粗面化処理(第一の電解粗面化処理および第二の電解粗面化処理を施す場合は、特に断りのない限り「第一の電解粗面化処理」のことをいう。以下、同様。)の前に行われる第1アルカリエッチング処理は、機械的粗面化を行った場合は、その凹凸形状をなめらかにすること、電解粗面化処理で均一な凹部を形成させること、および、機械的粗面化を行わない場合には、アルミニウム合金板の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として行われる。
第1アルカリエッチング処理においては、エッチング量は、0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以上であるのがより好ましく、1g/m2以上であるのが更に好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましく、8g/m2以下であるのがより好ましく、5g/m2以下であるのが更に好ましい。エッチング量の下限が上記範囲にあると、電解粗面化処理において均一なピットを生成でき、更に処理ムラの発生を防止できる。エッチング量の上限が上記範囲にあると、アルカリ水溶液の使用量が少なくなり、経済的に有利となる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第一リン酸ソーダ、第一リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
第1アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、30g/L以上であるのが好ましく、300g/L以上であるのがより好ましく、また、500g/L以下であるのが好ましく、450g/L以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48wt%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第1アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、30℃以上であるのが好ましく、50℃以上であるのがより好ましく、また、80℃以下であるのが好ましく、75℃以下であるのがより好ましい。
第1アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム合金板を連続的にエッチング処理していくと、アルカリ溶液中のアルミニウムイオン濃度が上昇していき、アルミニウム合金板のエッチング量が変動する。そこで、エッチング液の組成管理を、以下のようにして行うのが好ましい。
即ち、カセイソーダ濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度とのマトリクス、または、電導度と超音波伝搬速度と温度とのマトリクスをあらかじめ作成しておき、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるようにカセイソーダと水とを添加する。そして、カセイソーダと水とを添加することによって増加したエッチング液を、循環タンクからオーバーフローさせることにより、その液量を一定に保つ。添加するカセイソーダとしては、工業用の40〜60wt%のものを用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム合金板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸漬させる方法、アルカリ溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
中でも、アルカリ溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
アルカリエッチング処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
また、水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム合金板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は0.5〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
<第1デスマット処理>
第1アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第1デスマット処理)を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム合金板を酸性溶液に接触させることにより行う。
用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
なお、第1アルカリエッチング処理の後に行われる第1デスマット処理においては、第一電解処理として引き続き硝酸電解が行われる場合には、硝酸電解に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いるのが好ましい。
デスマット処理液の組成管理においては、酸性溶液濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と温度で管理する方法、電導度と比重と温度とで管理する方法、および、電導度と超音波の伝搬速度と温度とで管理する方法のいずれかを選択して用いることができる。
第1デスマット処理においては、1〜400g/Lの酸および0.1〜5g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
酸性溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、70℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
第1デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、4秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、40秒以下であるのがより好ましい。
アルミニウム合金板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム合金板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム合金板を酸性溶液を入れた槽の中に浸漬させる方法、酸性溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
中でも、酸性溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
デスマット処理が終了した後は、ニップローラで液切りし、更に、1〜10秒間水洗処理を行った後、ニップローラで液切りするのが好ましい。
水洗処理は、アルカリエッチング処理の後の水洗処理と同様である。ただし、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。
なお、第一デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる硝酸電解に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を行わず、アルミニウム合金板の表面が乾かないように、必要に応じて適宜デスマット処理液をスプレーしながら、硝酸電解工程までアルミニウム合金板をハンドリングするのが好ましい。
<電解粗面化処理>
電解粗面化処理は、硝酸または塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理である。
本発明においては、電解粗面化処理は、硝酸を含有する水溶液中での電解粗面化処理(以下、「硝酸電解」ともいう。)および塩酸を含有する水溶液中での電解粗面化処理(以下、「塩酸電解」ともいう。)のいずれか一方の処理のみであってもよい。
また、本発明においては、第一の電解粗面化処理として硝酸電解を行い、その後に後述する第二の電解粗面化処理として塩酸電解を行うことが、均一性の高い凹凸構造を重畳した砂目形状をアルミニウム合金板の表面に形成させることができ、耐汚れ性および耐刷性を優れたものにすることができる理由から好ましい。
なお、電解粗面化処理後のアルミニウム合金板の平均表面粗さRaは、0.2〜1.0μmであるのが好ましい。
(硝酸電解)
硝酸電解により、好適な凹凸構造をアルミニウム合金板の表面に形成させることができる。本発明において、アルミニウム合金板がCuを比較的多量に含有している場合には、硝酸電解において、比較的大きく、かつ、均一な凹部が形成される。その結果、本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版は、耐刷性が優れたものになる。
硝酸を含有する水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、濃度1〜100g/Lの硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、硝酸を含有する水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
具体的には、硝酸濃度5〜15g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を3〜7g/Lとなるように調整した液が好ましい。
硝酸を含有する水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、また、55℃以下であるのが好ましい。
硝酸電解により、平均開口径1〜10μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、10μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム合金板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、150C/dm2以上であるのが好ましく、170C/dm2以上であるのがより好ましく、また、600C/dm2以下であるのが好ましく、500C/dm2以下であるのがより好ましい。この際の電流密度は、交流を用いる場合には電流のピーク値で20〜100A/dm2であるのが好ましく、直流を用いる場合には20〜100A/dm2であるのが好ましい。
(塩酸電解)
塩酸を含有する水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜30g/L、好ましくは2〜10g/Lの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、上記した銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。塩酸を含有する水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
塩酸水溶液は、さらに好ましくは塩酸を2〜10g/L含有する水溶液に、アルミニウム塩(塩化アルミニウム、AlCl3・6H2O)を添加してアルミニウムイオン濃度を3〜7g/L、好ましくは4〜6g/Lにした水溶液であることが特に好ましい。このような塩酸水溶液を用いて電気化学的粗面化処理を行うと、該粗面化処理による表面形状が均一になり、低純度のアルミニウム圧延板でも高純度のアルミニウム圧延板を使用しても、該粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに優れた耐刷性および耐汚れ性を両立できる。
塩酸を含有する水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、55℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましい。
塩酸を含有する水溶液中への添加物、装置、電源、電流密度、流速、温度としては公知の電気化学的な粗面化に使用するものが用いることができる。電気化学的な粗面化に用いる電源は交流または直流が用いられるが、交流が特に好ましい。
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電流を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.4μmであり、アルミニウム合金板の表面の全面に均一に生成する。更に、電気量を増やしていく(電気量の総和(アノード反応)が150〜2000C/dm2)と平均開口径0.01〜0.4μmのピットを表面に有する平均開口径1〜30μmのピットが生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム合金板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、10C/dm2以上であるのが好ましく、50C/dm2以上であるのがより好ましく、さらには100C/dm2以上であるのが好ましい。また、2000C/dm2以下であるのが好ましく、600C/dm2以下であるのがより好ましい。
電流密度は、電流のピーク値で20〜100A/dm2であるのが好ましい。
上記大電気量でアルミニウム合金板を塩酸電解すると、大きなうねりと微細な凹凸を同時に形成させることができ、後述する第二アルカリエッチング処理により該大きなうねりをより均一にすることで、耐汚れ性を向上させることができる。
硝酸または塩酸を含有する水溶液を用いる電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094号の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4,203,637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
液組成の測定に用いるために電解液から採取されたサンプルは、電解液とは別の熱交換機を用いて、一定温度(例えば、40±0.5℃)に制御した後に、測定に用いるのが、測定の精度が高くなる点で好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波(sin波、正弦波)、矩形波、台形波、三角波等が用いられる。
交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。
交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
また、直流を用いた電気化学的粗面化処理には、通常の直流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。具体的には、上記交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液と同様のものを用いることができる。
電気化学的粗面化処理に用いられる直流電源波は、極性の変化しない電流であれば特に限定されず、くし形波、連続直流、商用交流をサイリスタで全波整流したもの等が用いられるが、平滑化された連続直流が好ましい。
直流を用いた電気化学的粗面化処理は、回分法、半連続法および連続法のいずれでも行うことができるが、連続法で行うのが好ましい。
直流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる装置は、交互に配置された陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、アルミニウム合金板を該陽極および該陰極と、間隔を保って通過させることができるものであれば、特に限定されない。
電極は、特に限定されず、電気化学的粗面化処理に用いられる従来公知の電極を用いることができる。
陽極としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ等のバルブ金属に白金族系の金属をめっきし、またはクラッドしたもの;バルブ金属に白金族系の金属の酸化物を塗布し、または焼結させたもの;アルミニウム;ステンレスが挙げられる。中でも、バルブ金属に白金をクラッドしたものが好ましい。電極の内部に水を通して水冷化するなどの方法により、陽極の寿命を更に長くすることができる。
陰極としては、例えば、ブールベイダイヤグラムから、電極電位を負としたときに溶解しない金属等を選択して用いることができる。中でも、カーボンが好ましい。
電極の配列は、波状構造に応じて、適宜選択することができる。また、陽極と陰極とのアルミニウム合金板の進行方向の長さを変えたり、アルミニウム合金板の通過速度を変えたり、電解液の流速、液温、液組成、電流密度等を変えることにより、波状構造を調整することができる。また、陽極の槽と陰極の槽とを別個の電解槽とした装置を用いる場合には、各処理槽の電解条件を変えることもできる。
このような電解粗面化処理を施されたアルミニウム合金板は、必要に応じてニップローラで液切りされ、その後、上述したように水洗処理は行わずに、次工程の液膜処理(第1液膜処理および第2液膜処理を施す場合は、特に断りのない限り「第1液膜処理」のことをいう。以下、同様。)に搬送される。
<液膜処理>
液膜処理は、上述した電解粗面化処理に引き続き、該電解粗面化処理を施した表面(粗面化表面)にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理である。
酸性溶液としては、硝酸または硫酸を含有する水溶液が好適に用いられる。
また、この酸性溶液の液膜を粗面化表面に設ける方法としては、粗面化表面にスプレー管を用いて酸性溶液を供給(塗布)する方法、粗面化表面を酸性溶液中に浸漬させる方法等が好適に例示される。
このような酸性溶液の液膜が粗面化表面に設けられることにより、表面処理ムラに起因する外観故障の発生を抑止することができる。特に、電解粗面化処理として塩酸電解を施した場合には、液膜処理により、塩酸電解後に粗面化表面に存在していた塩酸水溶液は、pH5未満の硝酸または硫酸を含有する酸性溶液に置換され、粗面化表面の化学的な腐食も防ぐこともできる。
外観故障の発生の原因は、平版印刷版用支持体の製造に連続鋳造法を用いて作製したアルミニウム合金板を使用すると、アルミニウム合金板に存する結晶組織の不均一や微量元素の偏析等、即ち、上述したリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に対応する部分に、電解粗面化処理の際に生成するスマットが形成されやすくなり、その結果、表面処理ムラが生じやすくなるためであると考えられている。そのため、液膜処理を施すことにより外観故障の発生が抑止されるのは、電解粗面化処理の際に生成する水酸化アルミニウムを主体とするスマットが中性の環境にさらされることによってアルミニウム合金板表面に強固に固着し、その結果外観故障をより目立たせてしまうという不具合の発生を防ぎ、上述したリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に起因する表面処理ムラ、特に結晶方位に由来の表面処理ムラの視認性を低下させることができるためと考えられる。
<第2アルカリエッチング処理>
液膜処理の後に行われる第2アルカリエッチング処理は、電解粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
これにより、電解粗面化処理によって形成された大きなピットのエッジ部分が溶解して表面が滑らかになり、インキを該エッジ部分にひっかかりにくくするため、耐汚れ性に優れる平版印刷版原版を得ることができる。
第2アルカリエッチング処理は、基本的に第1アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第2アルカリエッチング処理においては、エッチング量は、0.05g/m2以上であるのが好ましく、0.1g/m2以上であるのがより好ましく、また、4g/m2以下であるのが好ましく、3.5g/m2以下であるのがより好ましい。エッチング量が0.05g/m2以上であると、平版印刷版の非画像部において、第一電解処理で生成したピットのエッジ部分が滑らかとなり、インキがひっかかりにくくなるため、耐汚れ性が優れる。一方、エッチング量が4g/m2以下であると、第一電解処理で生成した凹凸が大きくなるため、耐刷性が優れる。
第2アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、30g/L以上であるのが好ましく、300g/L以上であるのがより好ましく、また、500g/L以下であるのが好ましく、450g/L以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48wt%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
<第2デスマット処理>
第2アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第2デスマット処理)を行うのが好ましい。
第2デスマット処理は、第1デスマット処理と同様の方法で行うことができる。
第2デスマット処理においては、硝酸または硫酸を用いるのが好ましい。
第2デスマット処理においては、1〜400g/Lの酸および0.1〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
硫酸を用いる場合は、具体的には、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を0.1〜5g/Lとなるように調整した液を用いることができる。また、後述する陽極酸化処理に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いこともできる。
第2デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、4秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
第2デスマット処理においては、酸水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、70℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
<第二の電解粗面化処理>
第二の電解粗面化処理は、塩酸を含有する水溶液中での交流または直流を用いた電解粗面化処理(第2塩酸電解)である。
本発明においては、上述した電解粗面化処理(第一の電解粗面化処理)だけでもよいが、この第2塩酸電解を組み合わせることにより、さらに複雑な凹凸構造をアルミニウム合金板の表面に形成させることができ、ひいては、耐刷性を優れたものにすることができる。
第2塩酸電解は、上述した電解粗面化処理の中で説明した塩酸電解と基本的に同様である。
第2塩酸電解における塩酸を含有する水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム合金板が陽極反応にあずかる電気量の総和は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜200C/dm2の範囲から選択でき、第2電解処理で形成した粗面を大きくくずさないためには、10〜100C/dm2が好ましく、50〜80C/dm2が特に好ましい。
ここで、耐刷性および耐汚れ性の観点から好適に行われる粗面化処理、即ち、第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、硝酸を含有する電解液中での第一の電解粗面化処理(第1硝酸電解)、第1液膜処理、第2アルカリエッチング処理、第2デスマット処理、第2塩酸電解、第2液膜処理、第3アルカリエッチング処理および第3デスマット処理を施す場合は、第1硝酸電解は、硝酸を含有する電解液中でアノード反応における総電気量65〜500C/dm2で行うのが好ましく、第2塩酸電解は、塩酸を含有する電解液中でアノード反応における総電気量25〜100C/dm2で行うことが好ましい。
このような第2塩酸電解を施されたアルミニウム合金板は、必要に応じてニップローラで液切りされ、その後、上述したように水洗処理は行わずに、次工程の液膜処理である第2液膜処理に搬送される。
<第2液膜処理>
第2液膜処理は、上述した第2塩酸電解に引き続き、該第2塩酸電解を施した表面(粗面化表面)にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理であり、基本的に上述した液膜処理(第1液膜処理)と同様である。
<第3アルカリエッチング処理>
第2液膜処理の後に行われる第3アルカリエッチング処理は、第2塩酸電解で生成したスマットを溶解させること、および、第2塩酸電解により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
第3アルカリエッチング処理は、基本的に第1アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第3アルカリエッチング処理においては、エッチング量は、0.05g/m2以上であるのが好ましく、0.1g/m2以上であるのがより好ましく、また、0.3g/m2以下であるのが好ましく、0.25g/m2以下であるのがより好ましい。エッチング量が0.05g/m2以上であると、平版印刷版の非画像部において、第2塩酸電解で生成したピットのエッジ部分が滑らかとなり、インキがひっかかりにくくなるため、耐汚れ性が優れる。一方、エッチング量が0.3g/m2以下であると、第2塩酸電解で生成した凹凸が大きくなるため、耐刷性が優れる。
第3アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の濃度は、30g/L以上であるのが好ましく、また、前段の塩酸交流電解によって生じた凹凸を小さくしすぎないようにするため、100g/L以下であるのが好ましく、70g/L以下であるのがより好ましい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、3g/L以上であるのがより好ましく、また、50g/L以下であるのが好ましく、8g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48wt%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第3アルカリエッチング処理においては、アルカリ溶液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましい。
第3アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
<第3デスマット処理>
第3アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第3デスマット処理)を行うのが好ましい。
第3デスマット処理は、第1デスマット処理と同様の方法で行うことができるが、アルミニウム合金板のリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に対応する部分に形成した、電解粗面化処理の際に生成するスマットをより高いレベルで除去する観点から、10〜400g/Lの硫酸および0.5〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する硫酸溶液を用いるのが好ましく、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を1〜5g/Lとなるように調整した液を用いるのがより好ましい。
第3デスマット処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、4秒以上であるのがより好ましく、また、60秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
第3デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液と同じ種類の液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を省略することができる。
<陽極酸化処理>
本発明においては、粗面化処理を施されたアルミニウム合金板は、更に、陽極酸化処理が施される。
陽極酸化処理は、この分野で従来行われている方法で行うことができる。例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5wt%以下の溶液中で、アルミニウム合金板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、アルミニウム合金板に酸化皮膜を形成させることができるものであれば特に限定されず、例えば、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第二、第三の成分が添加されていても構わない。ここでいう第二、第三の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80wt%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。
電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30wt%)であるのが好ましく、50〜200g/L(5〜20wt%)であるのがより好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5wt%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1wt%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
電解液の組成管理は、上述した硝酸電解等の場合と同様の方法を用いて、硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度により管理するのが好ましい。
電解液の液温は、25〜55℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム合金板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム合金板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム合金板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」(皮膜が周囲より厚くなる部分)が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2であるのが好ましい。1g/m2未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2であるのがより好ましい。また、アルミニウム合金板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m2以下になるように行うのが好ましい。
本発明においては、外観がより向上する観点から、陽極酸化皮膜の量が2g/m2以上であるのが好ましく、2.5g/m2以上であるのがより好ましい。これは、陽極酸化処理が、アルミニウム合金板を溶解させつつ酸化皮膜を形成させるため、アルミニウム合金板のリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に対応する部分に形成した、電解粗面化処理の際に生成するスマットを、より高いレベルで除去することができるためと考えられる。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号、特開2001−11698号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
<封孔処理>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬させる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
<乾燥>
上述した表面処理を施して平版印刷版用支持体を得た後、画像記録層を設ける前に、平版印刷版用支持体の表面を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップローラで液切りしてから行うのが好ましい。
乾燥温度は、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、また、110℃以下であるのが好ましく、100℃以下であるのがより好ましい。
乾燥時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また20秒以下であるのが好ましく、15秒であるのがより好ましい。
<液組成の管理>
本発明においては、上述した表面処理に用いられる各種の処理液の組成を、特開2001−121837号公報に記載されている方法で管理するのが好ましい。あらかじめ、種々の濃度の多数の処理液サンプルを調製し、それぞれ二つの液温における超音波の伝搬速度を測定し、マトリクス状のデータテーブルを作成しておき、処理中に、液温および超音波の伝搬速度をリアルタイム測定し、それに基づいて濃度の制御を行うのが好ましい。特に、デスマット処理において、硫酸濃度250g/L以上の電解液を用いる場合においては、上述する方法により、濃度の制御を行うのが好ましい。
なお、電解粗面化処理および陽極酸化処理に用いられる各電解液は、Cu濃度が100ppm以下であるのが好ましい。Cu濃度が高すぎると、ラインを停止するとアルミニウム合金板上にCuが析出し、ラインを再度稼動した際に析出したCuがパスロールに転写されて、処理ムラの原因となる場合がある。
<平版印刷版支持体の表面形状>
本発明の製造方法で得られる平版印刷版支持体の表面形状は、以下の物性値になるのが該平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版の印刷特性、特に、耐刷性および耐汚れ性が良好となるため好ましい。
以下の物性値は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)による表面形状の測定により求められる3次元データから算出される。
原子間力顕微鏡による測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。
即ち、平版印刷版用支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは、共振周波数120〜400kHz、バネ定数12〜90N/mのもの(セイコーインスツルメンツ社製のSI−DF20、NANOSENSORS社製のNCH−10、または、オリンパス社製のAC−160TS)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
本発明において、計測は、表面の50μm□を512×512点測定する。XY方向の分解能は0.1μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
上記3次元データを補正して得られたデータ(f(x,y))を用い、下記式から求められるRa 50が0.35μm以上。
式中、LおよびLは、それぞれ測定領域(長方形)のx方向およびy方向の辺の長さを表し、L=L=50μmである。また、Sは幾何学的測定面積であり、S=L×Lで求められる。
上記三次元データから近似三点法により求められる実面積Sx 50と上記幾何学的測定面積S0とから、下記式により求められる表面積比ΔS50が30〜60%。
ΔS50=(Sx 50−S0)/S0×100(%)
上記三次元データから波長0.2〜2μmの成分を抽出して得られるデータにおける傾斜度45°以上の部分の面積率である急峻度a4550(0.2-2)が10〜30%。
表面粗さ計で得られる、平均表面粗さRaが0.25〜0.60μm、最大粗さRmaxが2.5〜6.0μm、山間隔RSmが40〜60μm、平均傾斜△aが8〜12度。
白色度計で得られる、白色度が0.30〜0.40。
[平版印刷版原版]
本発明の製造方法により得られる平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられる。
中でも、レーザ直描型の画像記録層であるサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、フォトポリマータイプ、無処理タイプが好ましく、サーマルポジタイプ、フォトポリマータイプがより好ましい。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<サーマルポジタイプ>
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、分子中に酸性基を含有する樹脂およびその2種以上の混合物が挙げられる。特に、フェノール性ヒドロキシ基、スルホンアミド基(−SO2NH−R(式中、Rは炭化水素基を表す。))、活性イミノ基(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R(各式中、Rは上記と同様の意味である。))等の酸性基を有する樹脂がアルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
光熱変換物質としては、記録感度の点で、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好適に挙げられる。染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、とりわけ特開2001−305722号公報に記載されている一般式(I)で表されるシアニン染料が好ましい。
サーマルポジタイプの感光性組成物中には、溶解阻止剤を含有させることができる。溶解阻止剤としては、例えば、特開2001−305722号公報の[0053]〜[0055]に記載されているような溶解阻止剤が好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
また、サーマルポジタイプの画像記録層は、単層に限らず、2層構造であってもよい。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
<中間層>
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
また、特開2001−108538号公報に記載されている酸基を有するモノマーとオニウム基を有するモノマーとを有する重合体を含有する中間層も好適に用いられる。この中間層は、サーマルポジタイプ以外の画像記録層にも好適に用いられる。
<その他>
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<サーマルネガタイプ>
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
光熱変換物質としては、例えば、上述したサーマルポジタイプに用いられる光熱変換物質が挙げられる。特に好ましいシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の[0017]〜[0019]に記載されているものが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物中には、特開2001−133969号公報の[0061]〜[0068]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤)を含有させるのが好ましい。
重合層の製造方法および製版方法については、特開2001−133969号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<酸架橋層>
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
光熱変換物質としては、重合層に用いられるのと同様のものが挙げられる。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
<フォトポリマータイプ>
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
光重合開始剤としては、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を、使用する光源の波長により適宜選択して用いることができる。例えば、特開2001−22079号公報の[0021]〜[0023]に記載されている開始系が好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物中には、特開2001−22079号公報の[0079]〜[0088]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤)を含有させるのが好ましい。
また、フォトポリマータイプの画像記録層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、その共重合体が挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−281425号公報の[0014]〜[0015]に記載されている焼出し剤、染料、塗膜の柔軟性および耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光層の下には、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けるのが好ましい。
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−92660号公報の[0024]〜[0027]に記載されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や、特開平7−92660号公報の[0031]に記載されているような塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルポジタイプの感光層の下には、上述したコンベンショナルネガタイプに好適に用いられる中間層と同様の中間層を設けるのが好ましい。
<無処理タイプ>
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
熱可塑性微粒子ポリマー型の感光性組成物は、疎水性かつ熱溶融性の微粒子ポリマーが親水性高分子マトリックス中に分散されたものである。熱可塑性微粒子ポリマー型の画像記録層においては、露光により発生する熱により疎水性の微粒子ポリマーが溶融し、互いに融着して疎水性領域、即ち、画像部を形成する。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
マイクロカプセル型の感光性組成物としては、特開2000−118160号公報に記載されているもの、特開2001−277740号公報に記載されているような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル型が好適に挙げられる。
スルホン酸発生ポリマー含有型の感光性組成物に用いられるスルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマーが挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物に、親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感光層自体の皮膜強度も向上する。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するもの、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
無処理タイプの画像記録層は、特別な現像工程を必要とせず、印刷機上で現像することができる。無処理タイプの画像記録層の製造方法および製版印刷方法については、特開2002−178655号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<バックコート>
このようにして、本発明により得られる平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
[製版方法(平版印刷版の製造方法)]
本発明の製造方法により得られた平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、コンベンショナルネガタイプ、コンベンショナルポジタイプおよびフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
[連続鋳造板(アルミニウム合金板)の製造]
以下に述べる実施例、参考例および比較例では、図1に示す連続鋳造圧延装置1を用いて連続鋳造板(アルミニウム合金板)を作成した。
溶解保持炉2で、Si=0.1、Fe=0.4、Cu=0.015(wt%)、他は不可避不純物とAlに溶湯100を調整した。この際、使用するアルミニウムの組成はこの組成に限らず、使用用途などによって適宜選択することができる。例えば印刷版用支持体向けの材料として使用する場合には、一般的に1050材組成が広く使われている。その他の1000系、3000系などの材料もよく知られており、本発明の原理から、これらのいずれの材料を用いた場合においても同様の効果が期待できる。
上記手順で溶湯100を調整した後、第1の流路3でTi5%、B1% 残部がAlと不可避不純物からなる結晶粒微細化材ワイヤ(直径=10mm)を添加し、Al中のTi量が0.015%になるようにした。この段階における溶湯100の組成を下記表に示す。
次に、濾過手段4、第2の溶湯流路5、液面制御装置を具備した容器6および溶湯供給ノズル7を経て、冷却ローラ8,8で板幅約1100mm、板厚約5mmの連続鋳造板(アルミニウム合金板)200を作製した。冷却ロールの速度は、約1.5m/分とした。
溶湯のメニスカスを安定にするためには、溶湯供給ノズル7と冷却ロール8,8の間隔をできる限り小さくすること(正常な鋳造が継続できる条件であれば、特に接触状態とすること)が望ましいため、接触状態において鋳造を行った。ここでは、溶湯供給ノズル7を構成する部材のうち、溶湯100に上面から接触する上板部材と、溶湯に下面から接触する下板部材とが、それぞれ上下方向に可動自在に構成され、該上板部材、及び下板部材が溶湯圧力によって加圧され、それぞれ隣接する冷却ローラ表面に押しつけられる装置を用いた。
鋳造板厚(5mm)の連続鋳造板(アルミニウム合金板)200を作製した後、冷間圧延により1.5mmまで圧延し、550℃で10時間の中間焼鈍を行った後、仕上げ冷間圧延により0.3mmまで圧延し、平面性矯正および脱脂を行って連続鋳造板(アルミニウム合金板)を得た。
[平版印刷版支持体の製造]
次に、作製した連続鋳造板(アルミニウム合金板)の表面に、以下に示す表面処理を施し、平版印刷版支持体を得た。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(h)の各処理をこの順で連続的に行った。
(a)機械的粗面化処理
研磨剤(パミストン、メジアン径40μm)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム合金板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行い、表面平均粗さRaを0.50μmとした。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は35mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した(ブラシの毛密度は450本/cm2であった。)。回転ブラシは3本使用した。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム合金板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム合金板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度20wt%、アルミニウムイオン濃度7wt%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム合金板を4.5g/cm2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度35℃の硫酸濃度1wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(d)硝酸電解
60.0Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む。)、液温35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム合金板が陽極時の電気量の総和で180C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
(e)液膜処理
上記硝酸電解の後、水洗処理を行わず、上記硝酸電解が施された面に、pH4の硝酸を含有する酸性溶液をスプレー缶を用いて供給し、液膜を設けた。
(f)エッチング処理
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度20wt%、アルミニウムイオン濃度7wt%、温度50℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム合金板を0.6g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(g)デスマット処理
温度50℃の硫酸濃度17wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)陽極酸化処理工程
上記(a)〜(g)による粗面化処理の後、陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。
電解液としては、硫酸濃度17wt%(アルミニウムイオンを0.5wt%含む。)、温度35℃の水溶液を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2であった。
(参考例1)
本参考例では、上記手順で連続鋳造板(アルミニウム合金板)を作製する際に、容器6として、図5(a)、(b)に示す容器6a、すなわち、溶湯100の液面の振動を抑制する手段として、堰63、63が設けられた容器6aを用いた。容器6aでは堰63を通過する毎に液面の振動が弱くなることが確認され、溶湯供給ノズル7へ導かれる直前位置では振動は失われていた。なお、容器6a内の溶湯100の液面の振動は以下の手順で測定した。
<溶湯の液面の振動の測定>
溶湯表面の振動を測定する方法としては、容器内の溶湯の流出口が設置されているところに最も近い液面を対象として、1秒間の観察でみられる液面高さの変動幅(最大高さと最低高さの差)を1分おきに10回測定し、平均値を算出した。変動幅の測定は、1mm毎に目盛りを形成されたセラミック製の棒を用意し、これを溶湯に浸漬することで行った。溶湯の流れに対して与える影響を極力小さくするために、棒の太さをできる限り細くすることが望ましく、太さを3mmとした。
また、上記手順で得られた連続鋳造板(アルミニウム合金板)の表面組成の均一性、および、上記手順で得られた平版印刷版用支持体の面状ムラの有無を以下の手順で評価した。
<表面組成の均一性の評価>
脱脂後の連続鋳造板(アルミニウム合金板)の表面組成の均一性評価は、EPMA(型式:JXA−8800M)を用いて、以下の測定条件において行った。
測定エリア(9mm×9mm)、測定対象元素(Fe、Si)、加速電圧20kV、プローブ径30um、Dwellタイム50ms、Point数(300点×300点)、Interval(30um)、測定箇所(ランダムに5箇所)
均一か否かの評価はEPMAの解析対称面全体(9mm×9mm)における平均検出強度を基準として、0.5mm×0.5mmで切り取られた領域内の平均強度が、全体の平均強度に対して2割以上大きな領域が存在する、もしくは2割以上小さな領域が存在する場合を”不均一”、そのような領域が存在しない場合を”均一”として判定した。
<面状ムラの評価>
目視で面状ムラが確認できる場合を“悪”、面状ムラが確認できない場合には“良”として判定した。
結果を下記表に示す。
(参考例2)
本参考例では、上記手順で連続鋳造板(アルミニウム合金板)を作製する際に、容器6として、図6(a)、(b)に示す容器6b、すなわち、溶湯100の液面の振動を抑制する手段として、内壁に凹凸構造64が設けられた容器6bを用いた。
(参考例3)
本参考例では、上記手順で連続鋳造板(アルミニウム合金板)を作製する際に、容器6として、図7(a)、(b)に示す容器6c、すなわち、外壁側にバルブ61´が設けられた容器6cを用いた。
(実施例4)
本実施例では、上記手順で連続鋳造板(アルミニウム合金板)を作製する際に、容器6として、図8(a)、(b)に示す容器6d、すなわち、開口面積が50×50(cm2)の容器6dを用いた。
(比較例1)
本比較例では、上記手順で連続鋳造板(アルミニウム合金板)を作製する際に、容器6として、図9(a)、(b)に示す容器6、すなわち、溶湯100の液面の振動を抑制する手段が設けられていない容器6を用いた。
本発明により得られる表面組成が均一である連続鋳造板(アルミニウム合金板)は、平版印刷版用のアルミニウム支持体用材料として利用可能である。
1:連続鋳造圧延装置
2:溶解保持炉
3:第1の流路
4:濾過手段
41:フィルタ(セラミックフォームフィルタ)
5:第2の流路
6,6a,6b,6c,6d:容器
61,61´:バルブ
62:流出口
63:堰
64:凹凸構造
65:フロート
7:溶湯供給ノズル
71:逃げ部(面取り部)
72:上板部材
73:下板部材
74:棒部材
8:冷却ローラ
9:巻き取り装置
11:冷間圧延機
12:送り出しコイル
13:巻き取りコイル
14:圧延ローラ
15:支持ローラ
20:矯正装置
21:レベラ部
22:送り出しコイル
23:巻き取りコイル
24:ワークロール
25:スリッタ
100:アルミニウム溶湯
200:連続鋳造板(アルミニウム合金板)
T:溶湯供給ノズルの先端部

Claims (4)

  1. アルミニウム合金溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、前記一対の冷却ローラによって前記アルミニウム合金溶湯を凝固させつつ圧延を行う、連続鋳造法による平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法であって、
    前記溶湯供給ノズルに前記アルミニウム合金溶湯を供給する容器において、該容器の内部に存在する前記アルミニウム合金溶湯の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とし、
    前記容器の内部に存在する前記アルミニウム合金溶湯の液面の垂直方向の振幅を10mm以下とする手段として、上部開口部の面積が50×50(cm2)以上の前記容器を用いることを特徴とした平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の平版印刷版用アルミニウム合金板の製造方法により得られる平版印刷版用アルミニウム合金板。
  3. 請求項2に記載の平版印刷版用アルミニウム合金板に粗面化処理を施して得られる平版印刷版用支持体。
  4. 請求項3に記載の平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けてなる平版印刷版用原版。
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