JP2007062216A - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金溶湯22を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板36を形成する連続鋳造工程と、アルミニウム合金板の厚さを減じさせる冷間圧延工程と、アルミニウム合金板に熱処理を行う中間焼鈍工程と、中間焼鈍後の前記アルミニウム合金板の厚さを減じさせる仕上げ冷間圧延工程とを経て得られるアルミニウム合金板の表面に、少なくとも、電気化学的粗面化処理を施し、表面にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理およびアルカリエッチング処理を含む粗面化処理ならびに陽極酸化処理をこの順に施す表面処理工程を具備する、平版印刷版用支持体の製造方法。
【選択図】図1
Description
このようなアルミニウム合金板の製造方法としては、アルミニウム合金溶湯を半連続鋳造法により鋳造したスラブを、均質化熱処理後、熱間圧延、冷間圧延および必要に応じて焼鈍を施してアルミニウム合金板を得る方法が一般に採用されている。
これに対し、アルミニウム合金板を連続的に、より簡易な工程で製造することを目的として、駆動式の鋳型を用いてアルミニウム合金溶湯を直接板状に鋳造する連続鋳造法が種々提案されている。
そのような駆動鋳型を用いる連続鋳造法としては、例えば、ハズレー法に代表される一対のベルト状駆動鋳型を用いる方法や、ハンター法および3C法に代表される一対のロール状駆動鋳型を用いる方法が知られている。ハンター法は、一対の冷却ローラを鉛直方向から15°程度傾けて配置し、アルミニウム合金板を斜め上方に向かって鋳造する方法である。3C法は、一対の冷却ローラを鉛直に配置し、アルミニウム合金板を水平方向に向かって鋳造する方法である。
これらの駆動鋳型を用いる方法は、設備をコンパクトにすることができるという利点を有する。中でも、ロール状駆動鋳型を用いる方法がその点で優れている。
この問題に対し、本出願人は、特許文献7において、「アルミニウム合金溶湯を溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、前記一対の冷却ローラによって前記アルミニウム合金溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成させる鋳造工程と、
得られたアルミニウム合金板の表面に、少なくとも、アルカリエッチング処理とその後の電気化学的粗面化処理とを含む粗面化処理を施して、平版印刷版用支持体を得る、粗面化処理工程と
を有する平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記アルカリエッチング処理における前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される側の前記表面の面積1m2あたりのアルミニウム溶解量:X(g/m2)と、前記電気化学的粗面化処理における前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される側の前記表面の面積1dm2あたりのアノード反応時の総電気量:Y(C/dm2)とが、下記式(1)を満足する関係にある、平版印刷版用支持体の製造方法。
1000>Y≧10X (1)」を提案している。
そこで、本発明は、外観故障の発生を十分に抑止することができ、耐刷性および耐汚れ性に優れた平版印刷版を得ることができる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
少なくとも、電気化学的粗面化処理、前記電気化学的粗面化処理に引き続き前記電気化学的粗面化処理を施した表面にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理およびアルカリエッチング処理を含む粗面化処理ならびに陽極酸化処理をこの順に施す表面処理工程を具備する、平版印刷版用支持体の製造方法。
(3)前記第一のアルカリエッチング処理の前に、更に、機械的粗面化処理を施す、前記(2)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
(5)前記第一のアルカリエッチング処理の前に、更に、機械的粗面化処理を施す、前記(4)に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
また、本発明によれば、連続鋳造装置の特性差や連続鋳造時のバラツキ(例えば、鋳造ロールと溶湯供給ノズルの位置設定作業のバラツキ、離型剤塗布のバラツキ、溶湯温度のバラツキ等)があっても、均一な電解粗面化面を有し、耐刷性および耐汚れ性が良好な平版印刷版を得ることができる平版印刷版用支持体を提供することができるため非常に有用である。
<アルミニウム合金板>
本発明に用いられるアルミニウム合金板は、少なくともFeおよびSiを含有し、不純物としてCuを含有してもよいアルミニウム合金溶湯(以下「Al溶湯」ともいう。)から調製される。
本発明においては、Al溶湯中のSi量は、0.04〜0.15質量%であるのが好ましい。なお、0.10質量%以上の値は、地金中のSiに加えて、別途母合金を添加することで実施される。
Fe含有量が少なすぎると、機械的強度が低すぎて、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、版切れを起こしやすくなる。また、高速で大部数の印刷を行う際にも、同様に版切れを起こしやすくなる。
一方、Fe含有量が多すぎると、必要以上に高強度となり、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、フィットネス性に劣り、印刷中に版切れを起こしやすくなる。また、Feの含有量が、例えば、1.0質量%より多くなると圧延途中に割れが生じやすくなる。
本発明においては、Al溶湯中のFe量は、0.10〜0.40質量%であるのが好ましい。
本発明においては、Al溶湯中のCu量は、電解粗面化の均一性の観点から、0.001質量%以上であるのが好ましく、硝酸液中での電解粗面化処理により生成するピットの径、ピット径の均一性、ひいては耐汚れ性の観点から、0.050質量%以下であるのが好ましい。
例えば、Tiを0.003〜0.05質量%の範囲で含有することができる。また、Bを0.001〜0.02質量%の範囲で含有することができる。
不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7質量%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structurand properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
アルミニウム合金板の製造においては、まず、連続鋳造工程が行われる。
連続鋳造工程は、上述したAl溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成させる工程である。
具体的には、上述したAl溶湯を、溶湯供給ノズルを介して一対の冷却ローラの間に供給し、該一対の冷却ローラによって該Al溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成させる工程が好適に例示される。
Al溶湯の調製の際には、まず、好ましくは95質量%以上のAl地金を溶解炉で溶解し、好ましくは0.03〜0.50質量%のFeと、好ましくは0.03〜0.20質量%のSiと、好ましくは1〜400ppmのCuと、その他所望の元素を含むように溶解炉に添加し、調整する。
Al溶湯は、所望の組成に調製された後、清浄化処理を施すことができる。清浄化処理としては、例えば、Al溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理が挙げられる。清浄化処理は、常法に従って行うことができる。
清浄化処理は、必須ではないが、Al溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、Al溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。
溶湯のフィルタリングは、通常、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のフィルタに溶湯を通過させることで行われる。フィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。
また、溶湯の脱ガス処理は、通常、回転式のロータ等で、溶湯中にAr等の不活性ガスを吹き込み、溶湯中にとけ込んでいる水素ガスをAr気泡内に取り込んで浮上させること、あるいはフラックス処理によって行われる。脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
Al溶湯は、上述したように、結晶粒を微細化する元素を含有していてもよく、具体的には、結晶微細化材としてTiB2を含む母合金をAl溶湯中に添加するのが好ましい。これは、結晶微細化材の添加により、連続鋳造時の結晶粒が微細になりやすく、平版印刷版用支持体にする際の表面処理工程において、粗大な結晶粒に起因する表面処理ムラの発生を抑制することができるためである。
TiB2を含む母合金としては、具体的には、例えば、Ti(5%)、B(1%)、残部がAlと不可避不純物からなるワイヤ状の母合金を使用することができる。ただし、TiB2は、単独では、通常、1〜2μmの極めて小さい粒子であるが、凝集して100μm以上の粗大粒子になる場合があり、その場合には、その粗大粒子が表面処理ムラの原因になるので、流路において、かくはん手段を設けるのが好ましい。
Al溶湯は、溶湯中に混入した不純物、溶解炉、溶湯流路中に残っていたコンタミ等を除去するためにフィルタでろ過するのが好ましい。また、所望により添加することができるTiB2凝集粒子の流出を抑制する上でも必要であり、結晶微細化材であるTiB2の添加位置より下流にフィルタ槽を配置することが望ましい。
ろ過工程およびそれに用いられるフィルタ槽については、特許第3549080号公報に記載されているものが好ましい。
本発明においては、上記ろ過工程後のAl溶湯を、上記フィルタ槽から流路を経由して溶湯供給ノズルに供給するのが好ましい。
ここで、上記流路の底面に形成された凹部に設けられたかくはん手段が、Al溶湯をかくはんするのが好ましい。これは、TiB2の粗大粒子が、ろ過工程を通過した後、溶湯のよどみ部で再度凝集するのが防止されためである。
溶解炉12において、Al地金を溶解させ、Fe、Si等が添加され、所望の組成のAl溶湯を得る。Fe、Si等の添加方法としては、例えば、Al−Fe(25質量%)の母合金、Al−Si(25質量%)の母合金等を添加する方法が挙げられる。
溶解炉12に保持されたAl溶湯22は、流路14を経由して、鋳造装置10の溶湯供給ノズル16に供給される。流路14の途中の底面には、凹部30が形成されており、凹部30にはかくはん手段としてガス放出部43が設けられている。
鋳造を長時間続けると、凹部30の底に比重の大きい不純物等が沈降するとともに、凹部30の上部にできるよどみにAl溶湯中のTiB2粒子が捕捉され一次滞留しやすくなる。また、長時間鋳造を続ければ続けるほど、滞留するTiB2が多くなるため、TiB2の凝集が起こりやすくなる。そこで、図2に示されるように、凹部30にセラミック等の多孔質材料からなるガス放出部43から、アルゴンガス等のAl溶湯22と反応しないガスが細かい気泡46にして放出され、凹部30内のAl溶湯22がかくはんされる。これにより、よどみの発生が防止される。
これらについては、特開2000−24762号公報に詳細に記載されている。
長時間鋳造時の滞留は、よどみが起こりやすい凹部のすべてに発生の可能性があるため、このかくはん手段は、溶湯供給ノズルの直前に存在する凹部で行うことが好ましい。
溶湯供給ノズルから吐出されたAl溶湯は、冷却ロール表面に接し、凝固を開始する。ここで、溶湯供給ノズルの先端から冷却ロール表面にAl溶湯が移動する際に溶湯メニスカスが形成される。この溶湯メニスカスが振動すると、冷却ロールへの着地点が振動することになり、その結果、凝固履歴が異なる部分が表面に生じ、結晶組織の不均一、微量元素の偏析が起こりやすくなる。このような故障はリップルマークとも呼ばれ、冷間圧延、中間焼鈍、仕上げ冷間圧延を受けた後、平版印刷版用支持体として表面処理を行う際、表面処理ムラの原因になりやすい。
そのため、リップルマークを軽減する観点から、Al溶湯の離脱ポイントを一箇所に安定させるため、溶湯供給ノズルの先端部を、少なくとも先端部下側の外側面の角度がAl溶湯の吐出方向に対して鋭角になるように傾斜させるのが好ましい。例えば、特開平10−58094号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。
図4においては、溶湯供給ノズル16の口部外縁が冷却ローラ18に接触し、溶湯供給ノズル16の口部外周に冷却ローラ18との接触を避ける逃げ部(面取り部)8が凹設されている。即ち、溶湯供給ノズル16は先端部Tのみで冷却ローラ18と接触している。逃げ部(面取り部)は、溶湯供給ノズル16の全幅にわたって設けられているのが好ましい。
このような構造にすることで、溶湯メニスカス部が変動するスペースとなる隙間が与えられないので、外観故障が発生しないアルミニウム合金板を得ることができ、外観故障がより抑制された平版印刷版用支持体を得ることができる。
具体的には、例えば、溶湯供給ノズルを構成する部材のうち、Al溶湯に上面から接触する上板部材と、Al溶湯に下面から接触する下板部材とが、それぞれ上下方向に可動であり、該上板部材および該下板部材が、それぞれ、Al溶湯の圧力によって加圧され、隣接する冷却ローラの表面に押しつけられる態様が好適に挙げられる。例えば、特開2000−117402号公報に記載されている態様を好適に使用することができる。
これにより、溶湯供給ノズルの先端部と冷却ローラとが常に接し、その結果、溶湯メニスカス部の形状が一定状態で維持されるため、外観故障がより抑制された平版印刷版用支持体を得ることができる。
ノズル内部でのAl溶湯の滞り防止のためには、ノズル内面がAl溶湯との濡れ性が低いのが好ましい。そのためには、ノズル内面が、Al溶湯に対する濡れ性が低い材料からなり、かつ、適度な凹凸を有するのが好ましい。特開平10−225750号公報では、ノズル内面の粗度を規定する方法を記載している。
具体的には、溶湯供給ノズルが、そのAl溶湯に接する内面に、あらかじめ、メジアン径が5〜20μmであり、モード径が4〜12μmである粒度分布の骨材粒子を含む離型剤を塗布されているのが好ましい。Al溶湯の滞りを起こしにくい離型剤としては、例えば、酸化亜鉛、窒化ボロン(BN)等を骨材に用いる離型剤が挙げられる。中でも、窒化ボロンを骨材に用いる離型剤が好ましい。例えば、特開平11−192537号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。例えば、特開平11−192537号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。
図5に示される溶湯供給ノズル16Bは、上板部材40および下板部材42を棒部材92で固定することにより、上板部材40および下板部材42の先端が、棒部材92を支点として、Al溶湯の圧力に応じて軽度に動くことができるようになっている。したがって、Al溶湯の圧力により、上板部材40および下板部材42の先端をそれぞれ冷却ローラに接触させることができる。
冷却ローラは、特に限定されず、例えば、鉄製のコア・シェル構造の冷却ローラ等の従来公知のものを使用することができる。コア・シェル構造の冷却ローラを用いる場合、コア・シェル間に設けた流路中に冷却水を通水することで、冷却ローラ表面の冷却能を高めることができる。また、凝固させたアルミニウムに更に圧下を加えることでアルミニウム合金板の厚さを所望の厚さに精度よく揃えることができる。
冷却ローラ表面で凝固したアルミニウムはそのままでは、冷却ローラに固着しやすく、連続的に安定して鋳造することが容易でない場合がある。そこで、本発明においては、冷却ローラが、その表面に、離型剤を塗布されるのが好ましい。離型剤としては、耐熱性に優れるものが好ましく、例えば、カーボングラファイトを含有するものが好適に挙げられる。塗布の方法は、特に限定されないが、例えば、カーボングラファイト粒子の懸濁液(好ましくは水懸濁液)をスプレー塗布する方法が好適に挙げられる。スプレー塗布は、冷却ローラに非接触で離型剤を供給することが可能な点で好ましい。
具体的には、例えば、耐火材や耐熱性の布で作られたワイパを冷却ローラ表面に一定圧力で接触させる方法が好適に挙げられる。また、溶湯と直接接する危険性がない場合には木綿等の布を使用して、均一化することができる。
したがって、本発明においては、溶湯供給ノズルの口部外縁が、冷却ローラに接触しないのが好ましく、上述したリップルマークの軽減の観点から、その先端でのみ接触するのがより好ましい。
鋳造は、本発明においては、駆動鋳型を用いる連続鋳造法により行う。
連続鋳造法は、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固し、一般的に、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。
連続鋳造工程後、冷間圧延工程を行う。冷間圧延工程は、連続鋳造工程で得られたアルミニウム合金板の厚さを減じさせる工程である。これにより、アルミニウム合金板を所望の厚さにする。
冷間圧延工程は、従来公知の方法により行うことができ、具体的には、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている方法を使用することができる。
図6は、冷間圧延に用いられる冷間圧延機の例を示す模式図である。図6に示される冷間圧延機50は、送り出しコイル52および巻き取りコイル54の間で搬送されるアルミニウム合金板36に、それぞれ支持ローラ58により回転される一対の圧延ローラ56により圧力を加えて、冷間圧延を行う。
冷間圧延工程後、中間焼鈍工程を行う。中間焼鈍工程は、冷間圧延工程のアルミニウム合金板に熱処理を行う工程である。
本来、連続鋳造工程は、従来の固定鋳型を用いる方法と異なり、アルミニウムを極めて急速に冷却凝固させることができる。その結果、連続鋳造を経て得られたアルミニウム合金板中の結晶粒は、従来の固定鋳型を用いる方法に比べて格段に微細化されうる。ただし、そのままでは結晶粒の大きさがまだ大きく、仕上げ冷間圧延後、更に、粗面化処理を経て平版印刷版用支持体としたときに、結晶粒の大きさに起因する外観故障(表面処理ムラ)が発生しやすい。
そこで、上述した冷間圧延工程で加工歪みを蓄えたうえで、中間焼鈍工程を行うことで、冷間圧延工程で蓄積された転位が解放されて、再結晶が起こり、結晶粒を更に微細化することができるようになる。具体的には、冷間圧延工程の加工率および中間焼鈍工程の熱処理条件(中でも、温度、時間および昇温速度)の条件によって、結晶粒を制御することができる。例えば、連続式の焼鈍を行う場合、通常は、300〜600℃で10分間以下加熱するが、400〜600℃で6分間以下加熱するのが好ましく、450〜550℃で2分間以下加熱するのがより好ましい。また、通常は、昇温速度を0.5〜500℃/分程度とするが、昇温速度を10〜200℃/秒以上とし、かつ、昇温後の保持時間を短時間(10分以内、好ましくは2分以内)とすることにより、結晶粒の微細化を促進することができる。
バッチ式の焼鈍を用いた場合、通常は、300〜550℃で5時間以上加熱するが、300〜500℃で10時間以上加熱するのが好ましく、350〜490℃で10時間以上加熱するのがより好ましい。各温度について焼鈍時間の上限は40時間以下とするのが望ましい。
中間焼鈍工程は、従来公知の方法により行うことができ、具体的には、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている方法を使用することができる。
中間焼鈍工程後、仕上げ冷間圧延工程を行う。仕上げ冷間圧延工程は、中間焼鈍後のアルミニウム合金板の厚さを減じさせる工程である。仕上げ冷間圧延工程後の厚さは、0.1〜0.5mmであるのが好ましい。
冷間圧延工程は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、上述した中間焼鈍工程前に行われる冷間圧延工程と同様の方法により行うことができる。
本発明においては、仕上げ冷間圧延工程後、粗面化処理工程前に、平面性矯正工程を行うのが好ましい。平面性矯正工程は、アルミニウム合金板の平面性を矯正する工程である。
平面性矯正工程は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置を用いて行うことができる。
また、この平面性矯正工程は、アルミニウム合金板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させる観点から、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。
また、板幅を所定の幅に加工するため、スリッタラインを通すスリット工程を行うこともできる。スリット工程は、従来公知の方法で行うことができる。
また、アルミニウム合金板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム合金板の表面に薄い油膜を設る油膜形成工程を行うこもできる。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
本発明においては、上述した連続鋳造工程、冷間圧延工程、中間焼鈍工程および仕上げ冷間圧延工程ならびに所望により行われる各種工程(例えば、平面性矯正工程等)を経て得られるアルミニウム合金板の表面に、少なくとも、電気化学的粗面化処理、該電気化学的粗面化処理に引き続き該電気化学的粗面化処理を施した表面にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理(以下、単に「液膜処理」ともいう。)およびアルカリエッチング処理を含む粗面化処理ならびに陽極酸化処理をこの順に施す。
粗面化処理としては、一般に、機械的粗面化処理、化学的粗面化処理および電気化学的粗面化処理(以下、「電解粗面化処理」ともいう。)のうちの1種または2種以上の組み合わせが用いられる。
本発明においては、粗面化処理として、電解粗面化処理と、それに引き続いた液膜処理と、その後のアルカリエッチング処理の三つの処理が必須であるが、その他の処理を含んでいたもよい。なお、本発明においては、液膜処理は、電解粗面化処理に引き続いて施されるものであり、電解粗面化処理と液膜処理との間に、例えば、水洗処理等を施す態様は含まれない。
第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、硝酸を含有する電解液中での第一の電解粗面化処理、第一の液膜処理(第1液膜処理)、第2アルカリエッチング処理、第2デスマット処理、塩酸を含有する電解液中での第二の電解粗面化処理、第二の液膜処理(第2液膜処理)、第三のアルカリエッチング処理(第3アルカリエッチング処理)および第三のデスマット処理(第3デスマット処理)をこの順に施す処理(第3の態様);第3の態様において第1アルカリエッチングの前に機械的粗面化処理を施す処理(第4の態様);
第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、塩酸を含有する電解液中での電解粗面化処理、液膜処理、第2アルカリエッチング処理および第2デスマット処理をこの順に施す堀(第5態様);等が好適に挙げられる。
以下、粗面化処理が含むことができる各種の処理について説明する。
機械的粗面化処理は、アルミニウム合金板の表面を、通常、平均表面粗さ0.35〜1.0μmとする目的で行われる。
機械的粗面化処理としては、例えば、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されている方法を用いることができる。機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理(電気化学的粗面化処理を複数回行う場合は1回目の電気化学的粗面化処理)の前に行うことが好ましい。
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
本発明においては、ナイロンブラシは複数本用いるのが好ましく、具体的には、3本以上がより好ましく、4本以上が特に好ましい。ブラシの本数を調整することにより、アルミニウム合金板の表面に形成される凹部の波長成分を調整できる。
研磨剤のメジアン径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、2〜100μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがより好ましい。研磨剤のメジアン径を調整することにより、アルミニウム合金板の表面に形成される凹部の深さを調整することができる。
なお、本発明においては、このような機械的粗面化処理(特に、転写ロールを用いた粗面化処理)は、上述した仕上げ冷間圧延工程の最後に転写によって表面に凹凸を形成する処理を行ってもよい。
アルカリエッチング処理は、アルミニウム合金板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
第1アルカリエッチング処理においては、エッチング量は、0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以上であるのがより好ましく、1g/m2以上であるのが更に好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましく、8g/m2以下であるのがより好ましく、5g/m2以下であるのが更に好ましい。エッチング量の下限が上記範囲にあると、電解粗面化処理において均一なピットを生成でき、更に処理ムラの発生を防止できる。エッチング量の上限が上記範囲にあると、アルカリ水溶液の使用量が少なくなり、経済的に有利となる。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第1アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
即ち、カセイソーダ濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度とのマトリクス、または、電導度と超音波伝搬速度と温度とのマトリクスをあらかじめ作成しておき、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるようにカセイソーダと水とを添加する。そして、カセイソーダと水とを添加することによって増加したエッチング液を、循環タンクからオーバーフローさせることにより、その液量を一定に保つ。添加するカセイソーダとしては、工業用の40〜60質量%のものを用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
第1アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第1デスマット処理)を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム合金板を酸性溶液に接触させることにより行う。
なお、第1アルカリエッチング処理の後に行われる第1デスマット処理においては、第一電解処理として引き続き硝酸電解が行われる場合には、硝酸電解に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いるのが好ましい。
中でも、酸性溶液をアルミニウム合金板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
水洗処理は、アルカリエッチング処理の後の水洗処理と同様である。ただし、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。
なお、第一デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる硝酸電解に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を行わず、アルミニウム合金板の表面が乾かないように、必要に応じて適宜デスマット処理液をスプレーしながら、硝酸電解工程までアルミニウム合金板をハンドリングするのが好ましい。
電解粗面化処理は、硝酸または塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理である。
本発明においては、電解粗面化処理は、硝酸を含有する水溶液中での電解粗面化処理(以下、「硝酸電解」ともいう。)および塩酸を含有する水溶液中での電解粗面化処理(以下、「塩酸電解」ともいう。)のいずれか一方の処理のみであってもよい。
また、本発明においては、第一の電解粗面化処理として硝酸電解を行い、その後に後述する第二の電解粗面化処理として塩酸電解を行うことが、均一性の高い凹凸構造を重畳した砂目形状をアルミニウム合金板の表面に形成させることができ、耐汚れ性および耐刷性を優れたものにすることができる理由から好ましい。
なお、電解粗面化処理後のアルミニウム合金板の平均表面粗さRaは、0.2〜1.0μmであるのが好ましい。
硝酸電解により、好適な凹凸構造をアルミニウム合金板の表面に形成させることができる。本発明において、アルミニウム合金板がCuを比較的多量に含有している場合には、硝酸電解において、比較的大きく、かつ、均一な凹部が形成される。その結果、本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版は、耐刷性が優れたものになる。
具体的には、硝酸濃度5〜15g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を3〜7g/Lとなるように調整した液が好ましい。
塩酸を含有する水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜30g/L、好ましくは2〜10g/Lの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、
塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、上記した銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。塩酸を含有する水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
更に、電気量を増やしていく(電気量の総和(アノード反応)が150〜2000C/dm2)と平均開口径0.01〜0.4μmのピットを表面に有する平均開口径1〜30μmのピットが生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム合金板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、10C/dm2以上であるのが好ましく、50C/dm2以上であるのがより好ましく、さらには100C/dm2以上であるのが好ましい。また、2000C/dm2以下であるのが好ましく、600C/dm2以下であるのがより好ましい。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
液組成の測定に用いるために電解液から採取されたサンプルは、電解液とは別の熱交換機を用いて、一定温度(例えば、40±0.5℃)に制御した後に、測定に用いるのが、測定の精度が高くなる点で好ましい。
交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
直流を用いた電気化学的粗面化処理は、回分法、半連続法および連続法のいずれでも行うことができるが、連続法で行うのが好ましい。
陽極としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ等のバルブ金属に白金族系の金属を
めっきし、またはクラッドしたもの;バルブ金属に白金族系の金属の酸化物を塗布し、または焼結させたもの;アルミニウム;ステンレスが挙げられる。中でも、バルブ金属に白金をクラッドしたものが好ましい。電極の内部に水を通して水冷化するなどの方法により、陽極の寿命を更に長くすることができる。
陰極としては、例えば、ブールベイダイヤグラムから、電極電位を負としたときに溶解しない金属等を選択して用いることができる。中でも、カーボンが好ましい。
液膜処理は、上述した電解粗面化処理に引き続き、該電解粗面化処理を施した表面(粗面化表面)にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理である。
酸性溶液としては、硝酸または硫酸を含有する水溶液が好適に用いられる。
また、この酸性溶液の液膜を粗面化表面に設ける方法としては、粗面化表面にスプレー管を用いて酸性溶液を供給(塗布)する方法、粗面化表面を酸性溶液中に浸漬させる方法等が好適に例示される。
外観故障の発生の原因は、平版印刷版用支持体の製造に連続鋳造法を用いて作製したアルミニウム合金板を使用すると、アルミニウム合金板に存する結晶組織の不均一や微量元素の偏析等、即ち、上述したリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に対応する部分に、電解粗面化処理の際に生成するスマットが形成されやすくなり、その結果、表面処理ムラが生じやすくなるためであると考えられている。そのため、液膜処理を施すことにより外観故障の発生が抑止されるのは、電解粗面化処理の際に生成する水酸化アルミニウムを主体とするスマットが中性の環境にさらされることによってアルミニウム合金板表面に強固に固着し、その結果外観故障をより目立たせてしまうという不具合の発生を防ぎ、上述したリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に起因する表面処理ムラ、特に結晶方位に由来の表面処理ムラの視認性を低下させることができるためと考えられる。
液膜処理の後に行われる第2アルカリエッチング処理は、電解粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
これにより、電解粗面化処理によって形成された大きなピットのエッジ部分が溶解して表面が滑らかになり、インキを該エッジ部分にひっかかりにくくするため、耐汚れ性に優れる平版印刷版原版を得ることができる。
第2アルカリエッチング処理は、基本的に第1アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第2アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第2デスマット処理)を行うのが好ましい。
第2デスマット処理は、第1デスマット処理と同様の方法で行うことができる。
第2デスマット処理においては、1〜400g/Lの酸および0.1〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
硫酸を用いる場合は、具体的には、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を0.1〜5g/Lとなるように調整した液を用いることができる。また、後述する陽極酸化処理に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いこともできる。
第2デスマット処理においては、酸水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、70℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
第二の電解粗面化処理は、塩酸を含有する水溶液中での交流または直流を用いた電解粗面化処理(第2塩酸電解)である。
本発明においては、上述した電解粗面化処理(第一の電解粗面化処理)だけでもよいが、この第2塩酸電解を組み合わせることにより、さらに複雑な凹凸構造をアルミニウム合金板の表面に形成させることができ、ひいては、耐刷性を優れたものにすることができる。
第2塩酸電解における塩酸を含有する水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム合金板が陽極反応にあずかる電気量の総和は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜200C/dm2の範囲から選択でき、第2電解処理で形成した粗面を大きくくずさないためには、10〜100C/dm2が好ましく、50〜80C/dm2が特に好ましい。
第2液膜処理は、上述した第2塩酸電解に引き続き、該第2塩酸電解を施した表面(粗面化表面)にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理であり、基本的に上述した液膜処理(第1液膜処理)と同様である。
第2液膜処理の後に行われる第三アルカリエッチング処理は、第2塩酸電解で生成したスマットを溶解させること、および、第2塩酸電解により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
第3アルカリエッチング処理は、基本的に第1アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、3g/L以上であるのがより好ましく、また、50g/L以下であるのが好ましく、8g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第3アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
第3アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第3デスマット処理)を行うのが好ましい。
第3デスマット処理は、第1デスマット処理と同様の方法で行うことができるが、アルミニウム合金板のリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に対応する部分に形成した、電解粗面化処理の際に生成するスマットをより高いレベルで除去する観点から、10〜400g/Lの硫酸および0.5〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する硫酸溶液を用いるのが好ましく、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を1〜5g/Lとなるように調整した液を用いるのがより好ましい。
第3デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液と同じ種類の液を用いる場合には、デスマット処理後にニップローラによる液切りおよび水洗処理を省略することができる。
本発明においては、粗面化処理を施されたアルミニウム合金板は、更に、陽極酸化処理が施される。
陽極酸化処理は、この分野で従来行われている方法で行うことができる。例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム合金板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、アルミニウム合金板に酸化皮膜を形成させることができるものであれば特に限定されず、例えば、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、50〜200g/L(5〜20質量%)であるのがより好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
アルミニウム合金板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム合金板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」(皮膜が周囲より厚くなる部分)が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
本発明においては、外観がより向上する観点から、陽極酸化皮膜の量が2g/m2以上であるのが好ましく、2.5g/m2以上であるのがより好ましい。これは、陽極酸化処理が、アルミニウム合金板を溶解させつつ酸化皮膜を形成させるため、アルミニウム合金板のリップルマーク等の連続鋳造材特有の故障に対応する部分に形成した、電解粗面化処理の際に生成するスマットを、より高いレベルで除去するすることができるためと考えられる。
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
上述した表面処理を施して平版印刷版用支持体を得た後、画像記録層を設ける前に、平版印刷版用支持体の表面を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップローラで液切りしてから行うのが好ましい。
乾燥温度は、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、また、110℃以下であるのが好ましく、100℃以下であるのがより好ましい。
乾燥時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また20秒以下であるのが好ましく、15秒であるのがより好ましい。
本発明においては、上述した表面処理に用いられる各種の処理液の組成を、特開2001−121837号公報に記載されている方法で管理するのが好ましい。あらかじめ、種々の濃度の多数の処理液サンプルを調製し、それぞれ二つの液温における超音波の伝搬速度を測定し、マトリクス状のデータテーブルを作成しておき、処理中に、液温および超音波の伝搬速度をリアルタイム測定し、それに基づいて濃度の制御を行うのが好ましい。特に、デスマット処理において、硫酸濃度250g/L以上の電解液を用いる場合においては、上述する方法により、濃度の制御を行うのが好ましい。
なお、電解粗面化処理および陽極酸化処理に用いられる各電解液は、Cu濃度が100ppm以下であるのが好ましい。Cu濃度が高すぎると、ラインを停止するとアルミニウム合金板上にCuが析出し、ラインを再度稼動した際に析出したCuがパスロールに転写されて、処理ムラの原因となる場合がある。
本発明の製造方法で得られる平版印刷版支持体の表面形状は、以下の物性値になるのが該平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版の印刷特性、特に、耐刷性および耐汚れ性が良好となるため好ましい。
原子間力顕微鏡による測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。
即ち、平版印刷版用支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは、共振周波数120〜400kHz、バネ定数12〜90N/mのもの(セイコーインスツルメンツ社製のSI−DF20、NANOSENSORS社製のNCH−10、または、オリンパス社製のAC−160TS)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
本発明において、計測は、表面の50μm□を512×512点測定する。XY方向の分解能は0.1μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
ΔS50=(Sx 50−S0)/S0×100(%)
本発明の製造方法により得られる平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられる。
中でも、レーザ直描型の画像記録層であるサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、フォトポリマータイプ、無処理タイプが好ましく、サーマルポジタイプ、フォトポリマータイプがより好ましい。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
また、特開2001−108538号公報に記載されている酸基を有するモノマーとオニウム基を有するモノマーとを有する重合体を含有する中間層も好適に用いられる。この中間層は、サーマルポジタイプ以外の画像記録層にも好適に用いられる。
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
このようにして、本発明により得られる平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
本発明の製造方法により得られた平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
1.Al溶湯の調製
Fe=0.30質量%、Si=0.07質量%、Cu=0.001質量%、Ti=0.01質量%で示される量の各成分を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなるAl溶湯1を調製した。
(実施例1〜11および比較例1〜5)
ハンター法の連続鋳造機で、下記第1表で表される鋳造板厚(3〜10mm)の鋳造板を作製した後、冷間圧延により1.5mmまで圧延し、350℃で10時間の中間焼鈍を行った後、仕上げ冷間圧延により0.3mmまで圧延し、平面性矯正および脱脂を行って平版印刷版用のアルミニウム合金板に作製した。
作製したアルミニウム合金板の表面に、以下に示す表面処理1〜7を施し、平版印刷版支持体を製造した。
表面処理1は、以下の(a)〜(h)の各処理をこの順で連続的に行うことにより行った。
研磨剤(パミストン、メジアン径40μm)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム合金板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行い、表面平均粗さRaを0.50μmとした。
ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は35mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した(ブラシの毛密度は450本/cm2であった。)。回転ブラシは3本使用した。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム合金板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム合金板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度20質量%、アルミニウムイオン濃度7質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム合金板を4.5g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
温度35℃の硫酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
60.0Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム合金板が陽極時の電気量の総和で180C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
上記硝酸電解の後、水洗処理を行わず、上記硝酸電解が施された面に、pH4の硝酸を含有する酸性溶液をスプレー缶を用いて供給し、液膜を設けた。
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度20質量%、アルミニウムイオン濃度7質量%、温度50℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム合金板を0.6g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
温度50℃の硫酸濃度17質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
上記(a)〜(g)による粗面化処理の後、陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。
電解液としては、硫酸濃度17質量%(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度35℃の水溶液を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2であった。
表面処理2は、上記(a)〜(f)、以下の(i)〜(m)および上記(h)の各処理をこの順で連続的に行うことにより行った。
温度50℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
60.0Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム合金板が陽極時の電気量の総和で60C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
上記塩酸電解の後、水洗処理を行わず、上記硝酸電解が施された面に、pH4の硝酸を含有する酸性溶液をスプレー缶を用いて塗布し、液膜を設けた。
アルミニウム合金板をカセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度7質量%、温度35℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム合金板を0.6g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を4秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
表面処理3は、上記(b)および(c)、以下の(n)、上記(e)、(l)、(m)および(h)の各処理をこの順で連続的に行うことにより行った。
60.0Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸0.7質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム合金板が陽極時の電気量の総和で180C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
表面処理4は、上記(b)、(c)、(n)、(e)、(l)、(m)、(j)、(k)、(l)、(m)および(h)の各処理をこの順で連続的に行うことにより行った。
表面処理5は、上記(b)および(m)、以下の(o)、上記(k)、(l)、(m)および(h)の各処理をこの順で連続的に行うことにより行った。
60.0Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸1.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、液温35℃であった。正弦波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム合金板が陽極時の電気量の総和で500C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
表面処理6は、上記(a)〜(c)および(h)の各処理をこの順で連続的に行うことにより行った。
表面処理7は、上記(a)〜(d)、以下の(p)および上記(f)〜(h)の各処理をこの順で連続的に行うことにより行った。
硝酸電解(d)の後、ニップロールで粗面化表面の液を切り、pH7の井水で水洗処理を行った。
得られた各平版印刷版用支持体について、以下のようにして、各性状を測定した。
得られた各平版印刷版用支持体について、以下に示す内容(分類)を、目視により官能評価した。
リップル:不定期な間隔で見える波状のムラ(ムラとムラの間隔は一定ではなく、連続鋳造時に生じたリップルマークが冷間圧延されて引き伸ばされ、間隔が不均一なムラになったもの。)
ロングストリーク:不定期に発生するスジ状のムラ(長さは10mmから100mm。)。
面質ムラ:細く、ごく短かいスジが集合して見えるザラツキ状のムラ。
バンドスジ:巾1mm以上のバンド状のスジ(Al圧延方向に長く続く。)
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、以下の測定条件で、Ra 50、表面積比ΔS50および急峻度a4550(0.2-2)を測定した。3回測定した平均値を下記第1表に示す。
<測定条件>
AFM(日本電子社製)による測定は、カンチレバー(日本電子データム製)を用いて、測定エリア(ここでは50μm四方)を縦横1025等分し、各点の座標を三次元データとして記録することで行った。
測定は、タッピングモード(カンチレバーを振動させ、測定面表面に断続的に接触させ各点の高さ方向の座標を求める方法)で行った。
表面粗さ計(200R、東京精密製サーフコム社製)を用い、以下の測定条件で、平均表面粗さRa、最大粗さRmax、山間隔RSmおよび平均傾斜△aを測定した。5回測定した平均値を下記第1表に示す。
<測定条件>
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
白色度計(グレタグマクベス社製)を用いて、以下の測定条件で、白色度を求めた。
<測定条件>
100mm×100mmに切り出したサンプルより、ランダムに5箇所測定し、最大値、最小値を除いた3箇所分の値を平均して求めた。
実施例1〜5ならびに比較例1および2で得られた各平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプ、フォトポリマータイプ、コンベンショナルポジタイプおよびコンベンショナルネガタイプの画像記録層のいずれかを設けて平版印刷版原版を製造した。
<親水化処理>
平版印刷版用支持体に、親水化処理を施した。具体的には、平版印刷版用支持体を3号ケイ酸ソーダ1質量%水溶液(温度30℃)に10秒間浸漬させ、アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム合金板表面のSi量は、3.6mg/m2であった。
ついで、下塗層を設けた。具体的には、アルカリ金属ケイ酸塩処理後の平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
・下記式Iで表される高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
更に、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、下記組成の感熱層用塗布液1をワイヤーバーを用いて塗布し、140℃で50秒間乾燥させて、画像記録層の下層を形成させた。下層の乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)は0.85g/m2であった。ついで、下記組成の感熱層用塗布液2をワイヤーバーを用いて塗布し、140℃で1分間乾燥させて、画像記録層の上層を形成させた。下層および上層の乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)の合計は1.1g/m2であった。
このようにして、感熱層(重層型のサーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(モル比36/34/30、重量平均分子量50,000) 1.920g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量4000) 0.213g
・下記式Aで表されるシアニン染料A 0.032g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.078g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業社製) 0.02g
・γ−ブチロラクトン 13.18g
・メチルエチルケトン 25.41g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.97g
・フェノール/m,p−クレゾールノボラック(フェノール/m/p比=5/3/2、重量平均分子量4,000) 0.274g
・上記式Aで表されるシアニン染料A 0.029g
・下記式Bで表されるポリマーの30質量%メチルエチルケトン溶液 0.14g
・下記式Cで表される第四級アンモニウム塩 0.004g
・下記式Dで表されるスルホニウム塩 0.065g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業社製) 0.004g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−782、大日本インキ化学工業社製) 0.020g
・メチルエチルケトン 10.39g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.98g
<下塗層の形成>
平版印刷版用支持体上に下記組成の下塗液を、バーコーターを用いて乾燥後塗布量が2mg/m2となるように塗布し、80℃で20秒間乾燥させた。
・下記式で表されるポリマー(P1) 0.3g
・純水 60.0g
・メタノール 939.7g
ついで、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、下記組成の感光層用塗布液1をバーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥させて、感光層(フォトポリマータイプの画像記録層)を形成させた。乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)は1.1g/m2であった。
・下記式A−1で表されるエチレン性不飽和結合含有化合物 0.46質量部
・下記式B−1で表されるバインダーポリマー 0.51質量部
・下記式D−1で表される増感色素 0.03質量部
・ビスイミダゾール(黒金化成社製) 0.12質量部
・下記式F−1で表されるε−フタロシアニンの水分散物 0.47質量部
・下記式S−1で表されるメルカプト化合物 0.09質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤(メガファックF−780F、大日本インキ化学工業社製) 0.009質量部
・クペロン(和光純薬工業社製) 0.003質量部
・メチルエチルケトン 7.4質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 7.4質量部
更に、画像記録層上に下記組成の保護層用塗布液を乾燥後塗布量が2.4g/m2となるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥させて保護層を形成させ、平版印刷版原版を得た。
・ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ社製、ケン化度88モル%、重合度500) 5.0質量部
・ノニオン界面活性剤(EMALEX710、日本乳化剤社製) 0.09質量部
・純水 94.91質量部
<下塗層の形成>
平版印刷版用支持体上に下記組成の下塗液を、バーコーターを用いて乾燥後塗布量が3mg/m2となるように塗布し、80℃で30秒間乾燥させた。
・アミノエチルホスホン酸 0.10g
・フェニルホスホン酸 0.15g
・β−アラニン 0.10g
・メタノール 40g
・純水 60g
ついで、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、下記組成の感光層用塗布液1をバーコーターを用いて塗布し、110℃で1分間乾燥させて、感光層(コンベンショナルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版用支持体を得た。なお、乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)は1.1g/m2であった。
・1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホニルクロリドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル化物(米国特許第3,635,709号明細書の実施例1に記載されているもの) 0.45g
・クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂(メタ/パラ比=6/4、重量平均分子量3,000、数平均分子量1,100、未反応のクレゾールを0.7%含有) 1.1g
・m−クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂(重量平均分子量1,700、数平均分子量600、未反応のクレゾールを1%含有) 0.3g
・ポリ〔N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド−コ−ノルマルブチルアクリレート−コ−ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート〕(各モノマーのモル比は順に40:40:20、重量平均分子量40,000、数平均分子量20,000) 0.2g
・ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸クロライド 0.01g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.1g
・安息香酸 0.02g
・4−〔p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン 0.01g
・4−〔p−N−(p−ヒドロキシベンゾイル)アミノフェニル〕−2,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン 0.02g
・2−トリクロロメチル−5−(4−ヒドロキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール 0.01g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを1−ナフタレンスルホン酸にした染料 0.02g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF177、大日本インキ化学工業社製、20質量%のメチルイソブチルケトン溶液) 0.02g
・メチルエチルケトン 15g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10g
<下塗層の形成>
平版印刷版用支持体上に下記組成の下塗液を、バーコーターを用いて乾燥後塗布量が10.0mg/m2となるように塗布し、100℃で10秒間乾燥させた。
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
ついで、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、下記組成の感光層用塗布液1をバーコーターを用いて塗布し、140℃で1分間乾燥させて、感光層(コンベンショナルネガタイプの画像記録層)を形成させた。乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)は2.0g/m2であった。
更に、露光の際の真空密着時間を短縮させるため、特公昭61−28986号記載の方法でマット層を形成させ、平版印刷版原版を得た。
・後述するジアゾ樹脂−1 1.2g
・後述する結合剤−1 5.0g
・油溶性染料(ビクトリアピュアブルーBOH) 0.15g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.02g
・リン酸トリクレジル 0.2g
・亜リン酸 0.03g
・リンゴ酸 0.03g
・スチレン/無水マレイン酸共重合体のn−ヘキシルアルコールによるハーフエステル 0.05g
・2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル 20.00g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.00g
・乳酸メチル 7.00g
・メタノール 25.00g
・メチルエチルケトン 25.00g
・水 3.00g
平版印刷版の耐刷性および耐汚れ性を下記の方法で評価した。
(1)耐刷性
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間15秒で現像し、平版印刷版を得た。なお、いずれの平版印刷版原版も感度は良好であった。
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量1,000) 0.5質量%
・水 96.15質量%
上記で得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で7段階の評価した。その結果を下記第2表に示す。
なお、第2表中の記号の意味は以下のとおりであり、A〜Dが許容範囲である。
A:ブランケットが汚れていないもの
B:ブランケットがほとんど汚れていないもの
C:ブランケットが少し汚れていたもの
D:ブランケットが汚れているものの許容できる範囲にあるもの
E:ブランケットが汚れており印刷物が明らかに汚れているもの
F:ブランケットの汚れがかなりとなるもの
G:ブランケットの汚れが激しいもの
これに対し、比較例1で得られた平版印刷版用支持体を用いて製造した平版印刷版は、いずれのタイプにおいても耐刷性および耐汚れ性が劣ることが分かった。これは、上述したように、比較例1で製造した平版印刷版用支持体の表面積比ΔS50および白色度が好適範囲を超えていることから耐刷性に劣り、急峻度a4550(0.2-2)、最大粗さRmaxおよび平均傾斜△aが好適範囲を超えていることから耐汚れ性にも劣ると考えられる。
また、比較例2で得られた平版印刷版用支持体を用いて製造した平版印刷版は、耐刷性が劣ることが分かった。これは、比較例2で製造した平版印刷版用支持体の表面積比ΔS50および山間隔RSmが好適範囲を超えているためと考えられる。
10 鋳造装置
12 溶解炉
14 流路
16、16B 溶湯供給ノズル
18 冷却ローラ
22 Al溶湯
30 凹部
36 アルミニウム合金板
40 上板部材
42 下板部材
43 ガス放出部
45 ローター
46 気泡
50 冷間圧延機
52、82 送り出しコイル
54、84 巻き取りコイル
56 圧延ローラ
58 支持ローラ
70 矯正装置
80 レベラ部
86 ワークロール
88 スリッタ
92 棒部材
T 溶湯供給ノズルの先端部
Claims (6)
- アルミニウム合金溶湯を凝固させつつ圧延を行ってアルミニウム合金板を形成する連続鋳造工程と、前記連続鋳造工程で得られた前記アルミニウム合金板の厚さを減じさせる冷間圧延工程と、前記冷間圧延工程の前記アルミニウム合金板に熱処理を行う中間焼鈍工程と、前記中間焼鈍後の前記アルミニウム合金板の厚さを減じさせる仕上げ冷間圧延工程とを経て得られるアルミニウム合金板の表面に、
少なくとも、電気化学的粗面化処理、前記電気化学的粗面化処理に引き続き前記電気化学的粗面化処理を施した表面にpH5未満の酸性溶液によって液膜を設ける処理およびアルカリエッチング処理を含む粗面化処理ならびに陽極酸化処理をこの順に施す表面処理工程を具備する、平版印刷版用支持体の製造方法。 - 前記粗面化処理が、第一のアルカリエッチング処理、第一のデスマット処理、硝酸を含有する電解液中での電気化学的粗面化処理、前記電気化学的粗面化処理に引き続き前記電気化学的粗面化処理を施した表面にpH5未満の硝酸または硫酸を含有する水溶液によって液膜を設ける処理、第二のアルカリエッチング処理および第二のデスマット処理からなる、請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記第一のアルカリエッチング処理の前に、更に、機械的粗面化処理を施す、請求項2に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記粗面化処理が、第一のアルカリエッチング処理、第一のデスマット処理、硝酸を含有する電解液中での第一の電気化学的粗面化処理、前記第一の電気化学的粗面化処理に引き続き前記第一の電気化学的粗面化処理を施した表面にpH5未満の硝酸または硫酸を含有する水溶液によって液膜を設ける処理、第二のアルカリエッチング処理、第二のデスマット処理、塩酸を含有する電解液中での第二の電気化学的粗面化処理、前記第二の電気化学的粗面化処理に引き続き前記第二の電気化学的粗面化処理を施した表面にpH5未満の硝酸または硫酸を含有する水溶液によって液膜を設ける処理、第三のアルカリエッチング処理および第三のデスマット処理からなる、請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記第一のアルカリエッチング処理の前に、更に、機械的粗面化処理を施す、請求項4に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
- 前記粗面化処理が、第一のアルカリエッチング処理、第一のデスマット処理、塩酸を含有する電解液中での電気化学的粗面化処理、前記電気化学的粗面化処理に引き続き前記電気化学的粗面化処理を施した表面にpH5未満の硝酸または硫酸を含有する水溶液によって液膜を設ける処理、第二のアルカリエッチング処理および第二のデスマット処理からなる、請求項1に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
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