JP4616128B2 - 平版印刷版用支持体 - Google Patents
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Description
アルミニウム合金板に用いられるアルミニウム材料としては、JIS1000系材料や、JIS3000系材料が用いられることが多い。アルミニウム材料の組成に関しては、アルミニウム純度が99.7質量%以上の材料を用いて電気化学的粗面化処理(電解粗面化処理)の均一性を確保するための提案が、本発明者によってなされている(特許文献1参照。)。また、アルミニウム材料の組成に加えて、電解粗面化処理の均一性を、アルミニウム合金板の製造工程における焼鈍条件を規定して向上させる方法についても、本発明者によって提案されている(例えば、特許文献2〜4参照。)。
そのような駆動鋳型を用いる連続鋳造法としては、例えば、ハズレー法に代表される一対のベルト状駆動鋳型を用いる方法や、ハンター法および3C法に代表される一対のロール状駆動鋳型を用いる方法が知られている。ハンター法は、一対の冷却ロールを鉛直方向から15°程度傾けて配置し、アルミニウム合金板を斜め上方に向かって鋳造する方法である。3C法は、一対の冷却ロールを鉛直に配置し、アルミニウム合金板を水平方向に向かって鋳造する方法である。
これらの駆動鋳型を用いる連続鋳造法は、設備をコンパクトにすることができ、投資コストが少ないという利点を有する。中でも、ロール状駆動鋳型を用いる方法がその点で優れている。
この中間焼鈍は、連続的に、短時間かつ高温で行うことが結晶粒微細化に有効であるが、中間焼鈍を連続的に行う装置(連続焼鈍炉)は、概して巨大で設備コストが高い。そのため、中間焼鈍装置を連続鋳造設備と組み合わせる場合は、その設備がコンパクトであり、投資コストが少ないという利点を活かすために、装置設備コストが低く、かつ、コンパクトなバッチ式の中間焼鈍装置(バッチ式焼鈍炉)を用いることが多い。
これに対し、本発明者は、中間焼鈍温度を高温にすることにより、電解粗面化処理の均一性を向上させる方法を提案しているが(特開平8−92709号公報参照。)、高温にするためには、多くの動熱費および高温に耐えるバッチ式の中間焼鈍装置が必要であり、必ずしもコストに関し最適ではない。
電解粗面化処理を含む粗面化処理を行う場合、支持体の表面に微小な凹凸(ピット)が生成する。従来、その径を均一でかつ大きくし、また、その深さを深くすることによって、画像部においては画像記録層と支持体との密着性が強固になり、数多くの枚数を印刷しても画像記録層がはく離したりせず、また、非画像部においては多くの湿し水を表面に保持することが可能となり、汚れが発生しにくく、印刷性に優れる平版印刷版原版が得られると考えられている。例えば、そのような観点から電解粗面化ピットの形状や均一性を改善することが有効である。
また、平版印刷版原版の露光現像されて非画像部となる部分は、粗面化処理および陽極酸化処理を施された支持体表面がそのまま露出するため、支持体表面の外観上の均一性も極めて重要となる。
具体的には、まず、平版印刷版原版の上にある合紙を、合紙吸着式の除去装置で吸着除去し、ついで、その下の平版印刷版原版を吸盤式の搬送装置で露光装置内に搬送するが、その際、平版印刷版原版の下にある次の合紙が一緒に搬送される不具合が起こりうるのである。これは、搬送時に平版印刷版原版の裏面と次の合紙との間に空気が入り込みにくい場合に、合紙が平版印刷版原版の裏面にくっついて搬送されるためである。
(1)Fe:0.10〜0.40質量%、Si:0.03〜0.12質量%、Cu:0.003質量%以下、Ti:0.001〜0.02質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなり、連続鋳造法で鋳造され、冷間圧延と、温度280〜490℃の中間焼鈍と、仕上げ冷間圧延とをこの順に行って得られるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理を施して得られる平版印刷版用支持体であって、
前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される面の反対側の面において、圧延方向に垂直な方向に、ほぼ等間隔の複数の凸条が形成されており、前記複数の凸条の間隔が3〜10mmの範囲であり、
前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される面の反対側の面が、アルミニウム溶解量1〜10g/m2のアルカリエッチング処理を施されており、かつ、圧延方向の平均表面粗さRaが0.15〜0.35であり、圧延方向に垂直な方向の平均表面粗さRaが0.20〜0.40である、平版印刷版用支持体。
(2)前記ほぼ等間隔の複数の凸条が、前記仕上げ冷間圧延において、潤滑油を標準量より少ない量にする方法または圧下率を80%以上にする方法により形成される、上記(1)に記載の平版印刷版用支持体。
<アルミニウム合金板>
本発明の平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム合金板(以下、単に「アルミニウム板」ともいう。)は、Fe:0.10〜0.40質量%、Si:0.03〜0.12質量%、Cu:0.003質量%以下、Ti:0.001〜0.02質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなり、連続鋳造法で鋳造され、冷間圧延と、温度280〜490℃の中間焼鈍と、冷間圧延とをこの順に行って得られるアルミニウム合金板である。
Siは、原材料であるAl地金に不可避不純物として0.03〜0.1質量%前後含有される元素であり、原材料差によるばらつきを防ぐため、意図的に微量添加されることが多い。Siは、アルミニウム中に固溶した状態で、または、金属間化合物もしくは単独の析出物として存在する。
本発明においては、Si量は、0.03〜0.12質量%である。
Fe含有量が少なすぎると、機械的強度が低すぎて、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、版切れを起こしやすくなる。また、高速で大部数の印刷を行う際にも、同様に版切れを起こしやすくなる。一方、Fe含有量が多すぎると、必要以上に高強度となり、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、フィットネス性に劣り、印刷中に版切れを起こしやすくなる。また、Feの含有量が、多すぎると圧延途中に割れが生じやすくなる。
Feは、アルミニウム中に固溶する量は少なく、ほとんどが金属間化合物として存在する。
本発明においては、Fe量は、0.10〜0.40質量%である。
Fe量およびSi量の組み合わせが上記二つの組み合わせのいずれかにあると、電解粗面化処理が均一に行われる。特に、FeとSiの質量比(Fe/Si)が3〜4の範囲にあるのが好ましい。その理由は明らかではないが、FeとSiとは互いに金属間化合物になることがあり、特に連続鋳造法で製造した場合、FeとSiの化合物(例えば、α−AlFeSi、β−AlFeSi)が生成しやすいため、相対的に固溶するFeおよびSiの量が増減することが原因と考えられる。特に、FeとSiの化合物が増えることで、固溶Si量が減少し、その結果、特に硝酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理の際に、ピット生成電位が低下し、表面のピット形成開始点が過剰に増え、隣接するピット同士が一体化し、独立した略半球状のピット形成が困難になると考えられる。Feについても同様に、添加量に応じて一部が前述のSiとの化合物を形成し、残りはAl中に固溶して、または金属間化合物として存在する。Feの固溶量が少ないと、Siと同様に電解粗面化処理の均一性が低下する。Feの量が0.10〜0.20質量%の領域および0.24〜0.36質量%の二つの領域において好ましい理由も明確ではないが、総添加量に応じて増減するFe固溶量がこれら二つの領域において、前述のSiの固溶量と相俟って、電解粗面化処理の均一性を向上させる効果を奏するものと考えられる。電解粗面化処理の均一性を向上させることで、面質も良好なものとすることができる。
本発明においては、電解粗面化処理時に小さく均一なピットを生成するのが好ましいので、Cuを0.003質量%以下とする。
Cu量の下限は、特に限定されないが、高純度のAl地金は高価であるので、Al地金のコストの点からは、0.0001質量%以上であるのが好ましい。
また、Bは結晶粒微細化材としてTiとの化合物として添加するのが好ましいので、アルミニウム合金板はBを0.0002〜0.005質量%の範囲で含有することができる。Bは電解粗面化性に影響を与えない。
不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7質量%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structurand properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
本発明に用いられる上述した成分を含有するアルミニウム合金板は、上述した成分を含有するAl溶湯から、連続鋳造法で鋳造される。
連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミニウムマトリックスに対する合金成分の固溶度を高くすることができる。
連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。本発明においては、これらの方法を用いることができる。
連続鋳造工程の前には、上述した成分を含有するように調製されたAl溶湯に、清浄化処理を施すことができる。清浄化処理としては、例えば、Al溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理が挙げられる。清浄化処理は、常法に従って行うことができる。
清浄化処理は、必須ではないが、Al溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、Al溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。
Tiおよび/またはBは、溶解炉で溶解させることもできるが、TiB2を含む母合金を溶解炉より下流の流路で添加するのが好ましい。
連続鋳造工程の前には、前記Al溶湯をフィルタ槽を用いてろ過するろ過工程を行うのが好ましい。これにより、Al溶湯中に混入した不純物や、溶解炉、溶湯流路等の中に残っていたコンタミ等を除去することができる。また、上述したTiB2の粗大粒子の流出を抑制することもできる。そのためには、TiB2をAl溶湯に添加する位置より、下流にフィルタ槽を配置するのが好ましい。
ろ過工程およびそれに用いられるフィルタ槽については、特許第3549080号公報に記載されているものが好ましい。
本発明においては、ろ過工程後の前記アルミニウム合金溶湯を、前記フィルタ槽から流路を経由して前記溶湯供給ノズルに供給する供給工程を行い、供給工程において、前記流路の底面に形成された凹部に設けられたかくはん手段が、前記アルミニウム合金溶湯をかくはんするのが好ましい。これにより、TiB2の粗大粒子が、ろ過工程を通過した後、溶湯のよどみ部で再度凝集するのが防止される。
溶湯供給ノズルから吐出されたAl溶湯は冷却ロール表面に接し、凝固を開始する。ここで、Al溶湯が溶湯供給ノズルの先端部から冷却ロール表面まで移動する際に、Al溶湯のメニスカスが形成される。このメニスカスが振動すると、冷却ロールへの接触点が振動することになり、その結果、凝固履歴が異なる部分が表面に生じ、結晶組織の不均一および微量元素の偏析が起こりやすくなる。この故障をリップルマークと呼び、冷間圧延、中間焼鈍および仕上げ冷間圧延を受けた後、平版印刷版用支持体として表面処理を行う際、表面処理ムラの原因になりやすい。
これに対し、ノズルの先端部を、少なくとも前記先端部下側の外側面の角度が前記溶湯の吐出方向に対して鋭角になっていると、Al溶湯がノズルの先端部から離脱する位置が1箇所に安定しやすく、リップルマークを軽減することができるので好ましい。例えば、特開平10−58094号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。
具体的には、例えば、前記溶湯供給ノズルを構成する部材のうち、前記Al溶湯に上面から接触する上板部材と、前記Al溶湯に下面から接触する下板部材とが、それぞれ上下方向に可動であり、前記上板部材および前記下板部材が、それぞれ、前記Al溶湯の圧力によって加圧され、隣接する前記冷却ロールの表面に押しつけられる態様が好適に挙げられる。例えば、特開2000−117402号公報に記載されている態様を好適に使用することができる。
これにより、溶湯供給ノズルの先端部と冷却ロールとが常に接し、その結果、溶湯メニスカス部の形状が一定状態で維持されるため、リップルマーク等の外観故障がより抑制された平版印刷版用支持体を得ることができる。
ノズル内部でのAl溶湯の滞り防止のためには、前溶湯供給ノズルが、そのAl溶湯に接する内面に、あらかじめ、メジアン径が5〜20μmであり、モード径が4〜12μmである粒度分布の骨材粒子を含む離型剤を塗布されているのが好ましい。Al溶湯の滞りを起こしにくい離型剤としては、例えば、酸化亜鉛、窒化ボロン(BN)等を骨材に用いる離型剤が挙げられる。中でも、窒化ボロンを骨材に用いる離型剤が好ましい。例えば、特開平11−192537号公報に記載されている方法を好適に使用することができる。
冷却ロールは、特に限定されず、例えば、鉄製のコア・シェル構造の冷却ロール等の従来公知のものを使用することができる。コア・シェル構造の冷却ロールを用いる場合、コア・シェル間に設けた流路中に冷却水を通水することで、冷却ロール表面の冷却能を高めることができる。また、凝固させたアルミニウムに更に圧下を加えることでアルミニウム合金板の厚さを所望の厚さに精度よく揃えることができる。
冷却ロール表面で凝固したアルミニウムはそのままでは、冷却ロールに固着しやすく、連続的に安定して鋳造することが容易でない場合がある。そこで、本発明においては、前記一対の冷却ロールが、その表面に、離型剤を塗布されるのが好ましい。離型剤としては、耐熱性に優れるものが好ましく、例えば、カーボングラファイトを含有するものが好適に挙げられる。塗布の方法は、特に限定されないが、例えば、カーボングラファイト粒子の懸濁液(好ましくは水懸濁液)をスプレー塗布する方法が好適に挙げられる。スプレー塗布は、冷却ロールに非接触で離型剤を供給することが可能な点で好ましい。
具体的には、例えば、耐火材や耐熱性の布で作られたワイパを冷却ロール表面に一定圧力で接触させる方法が好適に挙げられる。また、溶湯と直接接する危険性がない場合には木綿等の布を使用して、均一化することができる。
したがって、本発明においては、前記溶湯供給ノズルの口部外縁が前記冷却ロールに接触せず、またはその先端でのみ接触するのが好ましい。
連続鋳造工程後、冷間圧延工程を行う。冷間圧延工程は、連続鋳造工程で得られたアルミニウム合金板の厚さを減じさせる工程である。これにより、アルミニウム合金板を所望の厚さにする。
冷間圧延工程は、従来公知の方法により行うことができる。
冷間圧延工程後、中間焼鈍工程を行う。中間焼鈍工程は、冷間圧延工程のアルミニウム合金板に熱処理を行う工程である。
本来、連続鋳造工程は、従来の固定鋳型を用いる方法と異なり、アルミニウムを極めて急速に冷却凝固させることができる。その結果、連続鋳造を経て得られたアルミニウム合金板中の結晶粒は、従来の固定鋳型を用いる方法に比べて格段に微細化されうる。ただし、そのままでは結晶粒の大きさがまだ大きく、仕上げ冷間圧延後、更に、粗面化処理を経て平版印刷版用支持体としたときに、結晶粒の大きさに起因する外観故障(表面処理ムラ)が発生しやすい。
そこで、上述した冷間圧延工程で加工歪みを蓄えたうえで、中間焼鈍工程を行うことで、冷間圧延工程で蓄積された転位が解放されて、再結晶が起こり、結晶粒を更に微細化することができるようになる。具体的には、冷間圧延工程の加工率および中間焼鈍工程の熱処理条件(中でも、温度、時間および昇温速度)の条件によって、結晶粒を制御することができる。
中間焼鈍の時間は、5〜40時間であるのが好ましい。
中間焼鈍の昇温速度は、1〜60℃/分であるのが好ましい。
本発明においては、バッチ式焼鈍炉を用いることもでき、連続焼鈍炉を用いることもできる。装置設備コストが低く、かつ、コンパクトである点で、バッチ式焼鈍炉が好ましい。
中間焼鈍工程後、仕上げ冷間圧延工程を行う。仕上げ冷間圧延工程は、中間焼鈍後のアルミニウム合金板の厚さを減じさせる工程である。仕上げ冷間圧延工程後の厚さは、0.1〜0.5mmであるのが好ましい。
冷間圧延工程は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、上述した中間焼鈍工程前に行われる冷間圧延工程と同様の方法により行うことができる。
平版印刷版用支持体の製造時に、アルカリエッチング処理を施すことにより、粗面化処理を施され画像記録層を設けられる面の反対側の面に、この凸条を顕在化させて、搬送性および合紙分離性に優れる平版印刷版原版を得ることができる。
本発明においては、仕上げ冷間圧延工程後、粗面化処理工程前に、平面性矯正工程を行うのが好ましい。平面性矯正工程は、アルミニウム合金板の平面性を矯正する工程である。
平面性矯正工程は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置を用いて行うことができる。
平面性矯正工程は、アルミニウム合金板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うのが好ましい。
また、板幅を所定の幅に加工するため、スリッタラインを通すスリット工程を行うこともできる。スリット工程は、従来公知の方法で行うことができる。
また、アルミニウム合金板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム合金板の表面に薄い油膜を設けることができる。油膜に用いられる油は、揮発性であってもよく、不揮発性であってもよく、適宜選択して用いることができる。
本発明に用いられるアルミニウム合金板は、JISに規定されるH18の調質が行われているのが好ましい。
本発明に用いられるアルミニウム合金板は、結晶粒の幅の平均値が50〜150μm、長さの平均値が300〜900μmであるのが好ましい。
上記範囲であると、結晶粒が大きくなりやすいバッチ式焼鈍炉を用いても面質ムラが発生しにくい。
上記範囲であると、通常、200℃以上、特に240〜270℃前後で行われることが多いバーニング処理を行った後も、平版印刷版原版の曲げに対する剛性が適度であるため、版胴に取り付けるための折り曲げを問題なく行うことができる。したがって、印刷中に版切れが生じにくくなる。
本発明において「0.2%耐力」とは、引張試験において、永久伸びが0.2%となるときの荷重をいう。例えば、JIS Z2241−1993の規定に準じて求めることができる。
加熱は、全面を均一に加熱することができる装置を用いて行う。そのような加熱装置としては、例えば、輻射式加熱装置が挙げられる。具体的には、輻射式加熱装置として、富士写真フイルム社製のPLANO PSバーニングプロセッサ 1300が挙げられる。
本発明の平版印刷版用支持体は、上述したアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理を施して得られる。
本発明の平版印刷版用支持体の製造においては、上記以外の各種の工程を含んでいてもよい。例えば、硝酸または塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理、アルカリ水溶液中でのエッチング処理、酸性水溶液中でのデスマット処理等を1回または複数回含んでいてもよい。
また、例えば、第1アルカリエッチング処理、第1デスマット処理、第1電気化学的粗面化処理、第2アルカリエッチング処理、第2デスマット処理、塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理(以下「第2電気化学的粗面化処理」ともいう。)、アルカリ水溶液中でのエッチング処理(以下「第3アルカリエッチング処理」ともいう。)、酸性水溶液中でのデスマット処理(以下「第3デスマット処理」ともいう。)および陽極酸化処理をこの順に施す方法が好適に挙げられる。
また、上記陽極酸化処理の後に、更に、封孔処理、親水化処理、または、封孔処理およびその後の親水化処理を施す方法も好ましい。
また、第1アルカリエッチング処理の前に、機械的粗面化処理を行うこともできる。これにより、第1電気化学的粗面化処理に用いられる電気量を低減させることができる。
機械的粗面化処理としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法(転写ロール法)を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特開平6−24168号公報に記載されている方法も適用可能である。
中でも、転写ロール法が、平版印刷版用支持体の製造工程の高速化に対応しやすいので、好ましい。転写ロール法は、上述したように、最終板厚に調整する冷間圧延、または、最終板厚調整後の表面形状を仕上げる仕上げ冷間圧延において、転写を行うのが好ましい。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより粗面化処理を行う方法である。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
本発明においては、ブラシは複数本用いるのが好ましく、具体的には、3本以上が好ましく、4本以上がより好ましい。ブラシの本数を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の波長成分を調整することができる。
研磨剤のメジアン径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、2〜100μmであるのが好ましく、20〜60μmであるのがより好ましい。研磨剤のメジアン径を調整することにより、アルミニウム板表面に形成される凹部の深さを調整することができる。
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
アルカリエッチング処理は、上述したアルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
第1アルカリエッチング処理においては、後に電気化学的粗面化処理を施される面のエッチング量は、0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以上であるのがより好ましく、1g/m2以上であるのが更に好ましく、また、10g/m2以下であるのが好ましく、8g/m2以下であるのがより好ましく、5g/m2以下であるのが更に好ましい。エッチング量が0.5g/m2以上であると、第1電気化学的粗面化処理において均一なピットを生成させることができ、更に処理ムラの発生を防止することができる。エッチング量が10g/m2以下であると、アルカリ水溶液の使用量が少なくなり、経済的に有利となる。
後述する第2アルカリエッチング処理および第3アルカリエッチング処理においても、同様である。
なお、本発明の平版印刷版用支持体において、アルカリエッチング処理を複数回行う場合、エッチング量の合計が上記範囲であればよい。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第1アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、15秒以下であるのがより好ましい。
即ち、カセイソーダ濃度とアルミニウムイオン濃度とのマトリクスに対応する、電導度と比重と温度とのマトリクス、または、電導度と超音波伝搬速度と温度とのマトリクスをあらかじめ作成しておき、電導度と比重と温度、または、電導度と超音波伝搬速度と温度によって液組成を測定し、液組成の制御目標値になるようにカセイソーダと水とを添加する。そして、カセイソーダと水とを添加することによって増加したエッチング液を、循環タンクからオーバーフローさせることにより、その液量を一定に保つ。添加するカセイソーダとしては、工業用の40〜60質量%のものを用いることができる。
電導度計および比重計としては、それぞれ温度補償されているものを用いるのが好ましい。比重計としては、差圧式のものを用いるのが好ましい。
水洗処理は、自由落下カーテン状の液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、更に、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。
第1アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第1デスマット処理)を行うのが好ましい。デスマット処理は、アルミニウム板を酸性溶液に接触させることにより行う。
中でも、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が好ましい。具体的には、φ2〜5mmの孔を10〜50mmピッチで有するスプレー管から、スプレー管1本あたり、10〜100L/minの量でエッチング液を吹き付ける方法が好ましい。スプレー管は複数本設けるのが好ましい。
水洗処理は、アルカリエッチング処理の後の水洗処理と同様である。ただし、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。
第1電気化学的粗面化処理は、硝酸または塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理である。本発明の第1の態様においては、硝酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理を行う。
第1電気化学的粗面化処理および後述する第2電気化学的粗面化処理をこの順序で行うことにより、均一性の高い凹凸構造を重畳した砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させることができ、ひいては耐汚れ性および耐刷性を優れたものにすることができる。なお、第1電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板表面の平均粗さRaは0.2〜1.0μmであるのが好ましい。
第1電気化学的粗面化処理として、硝酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理(硝酸電解)を行う場合、好適な凹凸構造をアルミニウム板の表面に形成させることができる。
また、硝酸を含有する水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム合金板中に含まれる元素が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素が1〜100g/L含有されていてもよい。
具体的には、硝酸濃度5〜15g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を3〜7g/Lとなるように調整した液が好ましい。
第1電気化学的粗面化処理として、塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理(塩酸電解)を行う場合、
また、塩酸を含有する水溶液は、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で含有することもできる。
更に、塩酸を含有する水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム合金板中に含まれる元素が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素が1〜100g/L含有されていてもよい。
このような塩酸水溶液を用いて電気化学的粗面化処理を行うと、粗面化処理による表面形状が均一になり、低純度のアルミニウム合金板でも高純度のアルミニウム合金板を使用しても、粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときの優れた耐刷性および耐汚れ性を両立することができる。
電源としては、交流または直流が用いられるが、交流が好ましい。
更に、電気量を増やしていく(電気量の総和(アノード反応)が150〜2000C/dm2)と平均開口径0.01〜0.4μmのピットを表面に有する平均開口径1〜30μmのピットが生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、10C/dm2以上であるのが好ましく、50C/dm2以上であるのがより好ましく、100C/dm2以上であるのが更に好ましい。また、2000C/dm2以下であるのが好ましく、600C/dm2以下であるのがより好ましい。
電流密度は、電流のピーク値で20〜100A/dm2であるのが好ましい。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているものも用いることができる。
液組成の測定に用いるために電解液から採取されたサンプルは、電解液とは別の熱交換機を用いて、一定温度(例えば、40±0.5℃)に制御した後に、測定に用いるのが、測定の精度が高くなる点で好ましい。
交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
直流を用いた電気化学的粗面化処理は、回分法、半連続法および連続法のいずれでも行うことができるが、連続法で行うのが好ましい。
陽極としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ等のバルブ金属に白金族系の金属を
めっきし、またはクラッドしたもの;バルブ金属に白金族系の金属の酸化物を塗布し、または焼結させたもの;アルミニウム;ステンレスが挙げられる。中でも、バルブ金属に白金をクラッドしたものが好ましい。電極の内部に水を通して水冷化するなどの方法により、陽極の寿命を更に長くすることができる。
陰極としては、例えば、ブールベイダイヤグラムから、電極電位を負としたときに溶解しない金属等を選択して用いることができる。中でも、カーボンが好ましい。
水洗処理は、スプレー管を用いて水洗するのが好ましい。水洗処理に用いられるスプレー管としては、例えば、扇状に噴射水が広がるスプレーチップをアルミニウム板の幅方向に複数個有するスプレー管を用いることができる。スプレーチップの間隔は20〜100mmであるのが好ましく、また、スプレーチップ1本あたりの液量は1〜20L/minであるのが好ましい。スプレー管は複数本用いるのが好ましい。
第1電気化学的粗面化処理と第2電気化学的粗面化処理との間に行われる第2アルカリエッチング処理は、第1電気化学的粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、第1電気化学的粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。これにより、第1電気化学的粗面化処理によって形成された大きなピットのエッジ部分が溶解して表面が滑らかになり、インキがエッジ部分にひっかかりにくくなるため、耐汚れ性に優れる平版印刷版原版を得ることができる。
第2アルカリエッチング処理は、基本的に第1アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、50g/L以上であるのがより好ましく、また、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第2アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第2デスマット処理)を行うのが好ましい。第2デスマット処理は、第1デスマット処理と同様の方法で行うことができる。
第2デスマット処理においては、1〜400g/Lの酸および0.1〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。
硫酸を用いる場合は、具体的には、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を0.1〜5g/Lとなるように調整した液を用いることができる。また、後述する陽極酸化処理に用いられる電解液のオーバーフロー廃液を用いこともできる。
第2デスマット処理においては、酸水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、70℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
第2電気化学的粗面化処理は、塩酸を含有する水溶液中での交流または直流を用いた電気化学的粗面化処理である。本発明においては、上述した第1電気化学的粗面化処理のみを行ってもよいが、この第2電気化学的粗面化処理を組み合わせることにより、更に複雑な凹凸構造をアルミニウム板の表面に形成させることができ、ひいては、耐刷性を優れたものにすることができる。
第2電気化学的粗面化処理におけるアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量の総和は、電気化学的粗面化処理が終了した時点で、10〜200C/dm2であるのが好ましい。中でも、第1電気化学的粗面化処理で形成した粗面を大きくくずさないためには、10〜100C/dm2であるのが好ましく、50〜80C/dm2がより好ましい。
第2電気化学的粗面化処理の後に行われる第3アルカリエッチング処理は、第2電気化学的粗面化処理で生成したスマットを溶解させること、および、第2電気化学的粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。第3アルカリエッチング処理は、基本的に第1アルカリエッチング処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
また、アルカリ溶液は、アルミニウムイオンを含有しているのが好ましい。アルミニウムイオン濃度は、1g/L以上であるのが好ましく、3g/L以上であるのがより好ましく、また、50g/L以下であるのが好ましく、8g/L以下であるのがより好ましい。このようなアルカリ溶液は、例えば、水と48質量%カセイソーダ水溶液とアルミン酸ソーダとを用いて調製することができる。
第3アルカリエッチング処理においては、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また、30秒以下であるのが好ましく、10秒以下であるのがより好ましい。
第3アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(第3デスマット処理)を行うのが好ましい。第3デスマット処理は、基本的に第1デスマット処理と同様であるので、異なる点のみ以下に説明する。
第3デスマット処理においては、5〜400g/Lの酸および0.5〜8g/Lのアルミニウムイオンを含有する酸性溶液を用いるのが好ましい。硫酸を用いる場合は、具体的には、硫酸濃度100〜350g/Lの硫酸水溶液に、硫酸アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を1〜5g/Lとなるように調整した液が好ましい。
第3デスマット処理において、デスマット処理液として、引き続き行われる陽極酸化処理に用いられる電解液と同じ種類の液を用いる場合には、デスマット処理後にニップロールによる液切りおよび水洗処理を省略することができる。
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理を施すことができる。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dm2であるのが好ましく、5〜40A/dm2であるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」(皮膜が周囲より厚くなる部分)が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/m2の低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dm2またはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm2程度である。
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特開平5−202496号公報、特開平5−179482号公報等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
上述したようにして平版印刷版用支持体を得た後、画像記録層を設ける前に、平版印刷版用支持体の表面を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、表面処理の最後の処理の後、水洗処理およびニップロールで液切りしてから行うのが好ましい。
乾燥温度は、70℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましく、また、110℃以下であるのが好ましく、100℃以下であるのがより好ましい。
乾燥時間は、1秒以上であるのが好ましく、2秒以上であるのがより好ましく、また20秒以下であるのが好ましく、15秒であるのがより好ましい。
本発明においては、上述した表面処理に用いられる各種の処理液の組成を、特開2001−121837号公報に記載されている方法で管理するのが好ましい。あらかじめ、種々の濃度の多数の処理液サンプルを調製し、それぞれ二つの液温における超音波の伝搬速度を測定し、マトリクス状のデータテーブルを作成しておき、処理中に、液温および超音波の伝搬速度をリアルタイム測定し、それに基づいて濃度の制御を行うのが好ましい。特に、デスマット処理において、硫酸濃度250g/L以上の電解液を用いる場合においては、上述する方法により、濃度の制御を行うのが好ましい。
なお、電解粗面化処理および陽極酸化処理に用いられる各電解液は、Cu濃度が100ppm以下であるのが好ましい。Cu濃度が高すぎると、ラインを停止するとアルミニウム板上にCuが析出し、ラインを再度稼動した際に析出したCuがパスロールに転写されて、処理ムラの原因となる場合がある。
本発明の平版印刷版用支持体においては、圧延方向の平均表面粗さRaが0.15〜0.35であり、幅方向の平均表面粗さRaが0.20〜0.40である。これにより、平版印刷版原版および平版印刷版の搬送性および合紙分離性が優れたものになる。その結果、印刷の生産性低下を防ぐことができる。
本発明の平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられる。
中でも、レーザ直描型の画像記録層であるサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、フォトポリマータイプ、無処理タイプが好ましく、サーマルポジタイプ、フォトポリマータイプがより好ましい。以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
また、特開2001−108538号公報に記載されている酸基を有するモノマーとオニウム基を有するモノマーとを有する重合体を含有する中間層も好適に用いられる。この中間層は、サーマルポジタイプ以外の画像記録層にも好適に用いられる。
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
このようにして、本発明の平版印刷版用支持体上に各種の画像記録層を設けて得られる平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層を設けることができる。
本発明の平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
1−1.アルミニウム合金板の作製(その1)
第1表に示される量の各成分を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなるAl溶湯を用いて、双ロール式連続鋳造装置(ハンターエンジニアリング社製)により連続鋳造を行い、ついで、冷間圧延を行い、更に、第1表に示される条件で中間焼鈍を行った後、仕上げ冷間圧延で厚さを0.3mmにし、更に、平面性矯正を行って、アルミニウム合金板(Al板)1〜8を得た。なお、アルミニウム合金板6においては、中間焼鈍を行わなかった。また、アルミニウム合金板(Al板)1〜4については、仕上げ冷間圧延の最終パスにおいて、圧延油の供給量を20%削減した。
(実施例1〜4および比較例1〜4)
上記で得られたアルミニウム合金板1〜8の表面に、濃度20質量%、温度70℃の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、第1アルカリエッチング処理を行い、後に電気化学的粗面化処理を施す面の表面を約3μm溶解させ、かつ、反対側の面を4g/m2溶解させた。その後、濃度1質量%、温度35℃の硝酸水溶液を用いて、第1デスマット処理を行った。
ついで、濃度7g/L、温度35℃の硝酸水溶液を用いて、周波数60.0Hzの交流で、アルミニウム合金板がアノード反応時の通電量が160C/dm2となるように、電気化学的粗面化処理を行った。
その後、濃度25質量%、温度60℃の硫酸水溶液を用いて、第2デスマット処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた平版印刷版用支持体について、以下のようにして裏面の等ピッチパターンおよび裏面の平均表面粗さの評価を行った。
(1)裏面の等ピッチパターン
平版印刷版用支持体の裏面に、等ピッチパターン(幅方向に平行な3〜10mmピッチのほぼ等間隔の凸条)が存在するか否かを目視で観察した。
結果を第2表に示す。
平版印刷版用支持体の裏面について、幅方向および圧延方向の平均表面粗さ(Ra)を測定した。平均表面粗さの測定は、触針式粗さ計(Surfcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さRaを5回測定し、その平均値を平均表面粗さとした。
結果を第2表に示す。
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプの画像記録層を設けて平版印刷版原版を製造した。
平版印刷版用支持体に、親水化処理を施した。具体的には、平版印刷版用支持体を3号ケイ酸ソーダ1質量%水溶液(温度30℃)に10秒間浸せきさせ、アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム合金板表面のSi量は、3.6mg/m2であった。
ついで、下塗層を設けた。具体的には、アルカリ金属ケイ酸塩処理後の平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
・下記式Iで表される高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
更に、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、下記組成の感熱層用塗布液1をワイヤーバーを用いて塗布し、140℃で50秒間乾燥させて、画像記録層の下層を形成させた。下層の乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)は0.85g/m2であった。ついで、下記組成の感熱層用塗布液2をワイヤーバーを用いて塗布し、140℃で1分間乾燥させて、画像記録層の上層を形成させた。下層および上層の乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)の合計は1.1g/m2であった。
このようにして、感熱層(重層型のサーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(モル比36/34/30、重量平均分子量50,000) 1.920g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量4000) 0.213g
・下記式Aで表されるシアニン染料A 0.032g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19g
・ビス−p−ヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.078g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業社製) 0.02g
・γ−ブチロラクトン 13.18g
・メチルエチルケトン 25.41g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.97g
・フェノール/m,p−クレゾールノボラック(フェノール/m/p比=5/3/2、重量平均分子量4,000) 0.274g
・上記式Aで表されるシアニン染料A 0.029g
・下記式Bで表されるポリマーの30質量%メチルエチルケトン溶液 0.14g
・下記式Cで表される第四級アンモニウム塩 0.004g
・下記式Dで表されるスルホニウム塩 0.065g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、大日本インキ化学工業社製) 0.004g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−782、大日本インキ化学工業社製) 0.020g
・メチルエチルケトン 10.39g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.98g
上記で得られた平版印刷版原版について、以下のようにして合紙分離性、搬送ベルト搬送性およびニップロール搬送性の評価を行った。
(1)合紙分離性
40枚の平版印刷版原版が合紙と呼ばれる紙を差し挟んで積層された状態から、Creo社製TrendSetterを用い、まず、平版印刷版原版の上にある合紙を、合紙吸着式の除去装置で吸着除去し、ついで、その下の平版印刷版原版を吸盤式の搬送装置で露光装置内に搬送させた。この操作を10枚の平版印刷版原版について連続的に行い、平版印刷版原版の下にある次の合紙が一緒に搬送される不具合の発生の有無を調べた。
結果を第2表に示す。平版印刷版原版の下にある次の合紙が一緒に搬送される不具合が生じたものがなかったものを○、不具合が生じたものがあったものを×で示した。
幅50mmのベルト(クラリーノ社製)を200mm間隔で配したベルト搬送性試験機を用いて、ベルトでの搬送性を調べた。具体的には、平版印刷版原版が3m移動する間の進行方向のずれの有無を、10枚の平版印刷版原版について評価した。
結果を第2表に示す。平版印刷版原版の先端位置が搬送方向に垂直な方向に2mm以上ずれたものがなかったものを○、2mm以上ずれたものがあったものを×で示した。
結果を第2表に示す。
直径30mmの一対のゴム製ニップロールテスト機で、ニップ時の搬送性を調べた。具体的には、平版印刷版原版がニップロールに挟まれ始めてから出るまでの間の進行方向のずれの有無を、10枚の平版印刷版原版について評価した。
結果を第2表に示す。平版印刷版原版の先端位置が搬送方向に垂直な方向に1mm以上ずれたものがなかったものを○、1mm以上ずれたものがあったものを×で示した。
結果を第2表に示す。
これに対し、裏面の平均表面粗さ(Ra)が小さすぎる場合(比較例1〜4)は、合紙分離性、搬送ベルト搬送性およびニップロール搬送性に劣っていた。
Claims (2)
- Fe:0.10〜0.40質量%、Si:0.03〜0.12質量%、Cu:0.003質量%以下、Ti:0.001〜0.02質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物とからなり、連続鋳造法で鋳造され、冷間圧延と、温度280〜490℃の中間焼鈍と、仕上げ冷間圧延とをこの順に行って得られるアルミニウム合金板に、少なくとも、粗面化処理を施して得られる平版印刷版用支持体であって、
前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される面の反対側の面において、圧延方向に垂直な方向に、ほぼ等間隔の複数の凸条が形成されており、前記複数の凸条の間隔が3〜10mmの範囲であり、
前記アルミニウム合金板の前記粗面化処理を施される面の反対側の面が、アルミニウム溶解量1〜10g/m 2 のアルカリエッチング処理を施されており、かつ、圧延方向の平均表面粗さR a が0.15〜0.35であり、圧延方向に垂直な方向の平均表面粗さR a が0.20〜0.40である、平版印刷版用支持体。 - 前記ほぼ等間隔の複数の凸条が、前記仕上げ冷間圧延において、潤滑油を標準量より少ない量にする方法または圧下率を80%以上にする方法により形成される、請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
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