JP2002103833A - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents

平版印刷版用支持体の製造方法

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JP2002103833A
JP2002103833A JP2000292495A JP2000292495A JP2002103833A JP 2002103833 A JP2002103833 A JP 2002103833A JP 2000292495 A JP2000292495 A JP 2000292495A JP 2000292495 A JP2000292495 A JP 2000292495A JP 2002103833 A JP2002103833 A JP 2002103833A
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aluminum alloy
treatment
acid
alloy plate
lithographic printing
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Atsuo Nishino
温夫 西野
Yoshitaka Masuda
義孝 増田
Hirokazu Sawada
宏和 澤田
Akio Uesugi
彰男 上杉
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Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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    • C25F3/00Electrolytic etching or polishing
    • C25F3/02Etching
    • C25F3/04Etching of light metals
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41NPRINTING PLATES OR FOILS; MATERIALS FOR SURFACES USED IN PRINTING MACHINES FOR PRINTING, INKING, DAMPING, OR THE LIKE; PREPARING SUCH SURFACES FOR USE AND CONSERVING THEM
    • B41N1/00Printing plates or foils; Materials therefor
    • B41N1/04Printing plates or foils; Materials therefor metallic
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    • B41N1/083Printing plates or foils; Materials therefor metallic for lithographic printing made of aluminium or aluminium alloys or having such surface layers
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 微量成分が偏析し、アルミニウム結晶粒が露
出している原材料を使用しても、過酷インキ汚れ等の発
生を抑え、低コストで製造することができる平版印刷版
用支持体の製造方法を提供。 【解決手段】 アルミニウム合金板Wから平版印刷版用
支持体を製造する製造方法であって、アルミニウム合金
板Wの表面に露出しているアルミニウムが一定の大きさ
を有し、アルミニウム合金板Wに電気化学的粗面化処理
を行うと、アルミニウム合金板表面に露出するCuの存
在率が5(mm2/m2)以上となり、このアルミニウム
合金板Wに、少なくとも、下記(1)および(2)の工
程からなる各処理を順次施すことを特徴とする平版印刷
版用支持体の製造方法である。 (1)塩酸溶液中で交流電流を用いて1〜300C/d
2の電気量で、電気化学的粗面化処理を行う塩酸電解
処理工程。 (2)硝酸溶液中で交流電流を用いて電気化学的粗面化
処理を行う硝酸電解処理工程。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原材料コストを大
幅に低減でき、面質が優れ、耐過酷インキ汚れ性および
耐ブランケット汚れ性に優れた平版印刷版用支持体の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、平版印刷版用支持体は、アルミニ
ウム合金板の片面あるいは両面に、粗面化処理を施した
後、耐磨耗性を向上させるため、陽極酸化処理を施して
製造される。この平版印刷版用支持体に感光層を設けて
平版印刷版原版が製造される。また、製版時の真空密着
時間を短くするために、感光層の表面にマット層という
微小な凹凸が設けられることもある。平版印刷版原版
は、画像露光、現像、水洗等の製版処理が施されて、平
版印刷版とされる。
【0003】画像露光の方法としては、画像を焼き付け
たリスフィルムを密着させて光を当てることで画像部と
非画像部との違いをつける方法や、レーザを用いる方法
や画像を投影する方法で直接画像部もしくは非画像部を
書き込むことによって画像部と非画像部との違いをつけ
る方法、等が挙げられる。画像露光後の現像処理の際、
未溶解の感光層は、インク受容体として画像部を形成
し、感光層が溶解除去された部分は、その下のアルミニ
ウム合金もしくは陽極酸化被膜が露出し、水受容体とし
ての非画像部を形成する。現像後必要に応じて親水化処
理、ガム引き、さらにバーニング処理等が施されること
もある。
【0004】この平版印刷版は印刷機の円筒状の版胴に
取り付けられて、インキと湿し水とを版胴に供給するこ
とで親油性の画像部にはインキが付着し、親水性の非画
像部には水が付着し、画像部のインキをブランケット胴
に転写した上で、ブランケット胴から紙に画像を印刷す
る。しかし、時として非画像部に点状あるいは円環状に
インキが付着し、結果的に紙面に点状あるいは円環状の
汚れが発生する不具合(過酷インキ汚れ)が起こる場合
がある。
【0005】このような問題を解決するため、多くの提
案が開示されている。具体的には使用するアルミニウム
合金板に含まれる合金成分を限定する方法が挙げられ
る。合金成分を限定する方法としては、例えば、Mg、
Mn、Si、Ga、Ti、Cu等の合金成分を限定する
方法(特開平5−309964号公報、特開平3−17
7528号公報等);FeとSiとの比を限定する方法
(特開平4−254545号公報、特開平7−1971
62号公報等);Feの固溶量を限定する方法(特開平
4−165041号公報等);単体Si量を限定する方
法(特許第2544215号、特許第2031725号
等);金属間化合物の量、大きさ、分布を限定する方法
(特開平4−165041号公報、特開平3−2345
94号公報、特許第2544215号、特開平4−25
4545号公報等);種々の組成を有するアルミニウム
合金表面に形成された陽極酸化被膜の特徴を限定する方
法(特開平7−197393号公報、特開平7−263
93号公報等);等が提案されている。しかし、これら
は何れも使用される材料の組成に制約を加えるものであ
るため、材料選択の自由度を低下させてしまうという新
たな問題が生じてしまう。
【0006】それに対し、本発明者らは、アルカリ処理
と酸処理とによってアルミニウム合金表面から不要な金
属間化合物を除去することで、耐過酷インキ汚れ性の優
れた平版印刷版用支持体を製造する方法を先に提案した
(特願2000−084856号)。
【0007】一方、平版印刷版用支持体として使用され
るアルミニウム合金としては、JIS1050材、JI
S1100材、JIS1070材、Al−Mg系合金、
Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Z
r系合金、Al−Mg−Si系合金等が挙げられる。し
かし、何れの場合も、平版印刷版用支持体として必要な
性能を確保するためには、合金成分を厳密に制御する必
要があり、これまでに多くの提案がなされている。
【0008】JIS1050材に関しては、本発明者ら
によって、特開昭59−153861号公報、特開昭6
1−51395号公報、特開昭62−146694号公
報、特開昭60−215725号公報、特開昭60−2
15726号公報、特開昭60−215727号公報、
特開昭60−215728号公報、特開昭61−272
357号公報、特開昭58−11759号公報、特開昭
58−42493号公報、特開昭58−221254号
公報、特開昭62−148295号公報、特開平4−2
54545号公報、特開平4−165041号公報、特
公平3−68939号公報、特開平3−234594号
公報、特公平1−47545号公報、特開昭62−14
0894号公報、特公平1−35910号公報、特公昭
55−28874号公報等に記載されている技術が開示
されている。
【0009】またJIS1070材に関しては、本発明
者らによって、特開平7−81264号公報、特開平7
−305133号公報、特開平8−49034号公報、
特開平8−73974号公報、特開平8−108659
号公報および特開平8−92679号公報に記載されて
いる技術が開示されている。
【0010】Al−Mg系合金に関しては、本発明者ら
によって、特公昭62−5080号公報、特公昭63−
60823号公報、特公平3−61753号公報、特開
昭60−203496号公報、特開昭60−20349
7号公報、特公平3−11635号公報、特開昭61−
274993号公報、特開昭62−23794号公報、
特開昭63−47347号公報、特開昭63−4734
8号公報、特開昭63−47349号公報、特開昭64
−61293号公報、特開昭63−135294号公
報、特開昭63−87288号公報、特公平4−733
92号公報、特公平7−100844号公報、特開昭6
2−149856号公報、特公平4−73394号公
報、特開昭62−181191号公報、特公平5−76
530号公報、特開昭63−30294号公報、特公平
6−37116号公報に記載されている技術が開示され
ている。また、特開平2−215599号公報、特開昭
61−201747号公報等に記載の技術も知られてい
る。
【0011】Al−Mn系合金に関しては、本発明者ら
によって、特開昭60−230951号公報、特開平1
−306288号公報、特開平2−293189号公報
に記載されている技術が開示されている。また、特公昭
54−42284号公報、特公平4−19290号公
報、特公平4−19291号公報、特公平4−1929
2号公報、特開昭61−35995号公報、特開昭64
−51992号公報、US5009722、US502
8276、特開平4−226394号公報等に記載され
た技術も知られている。
【0012】Al−Mn−Mg系合金に関しては、本発
明者らによって、特開昭62−86143号公報、特開
平3−222796号公報に記載されている技術が開示
されている。また、特公昭63−60824号公報、特
開昭60−63346号公報、特開昭60−63347
号公報、EP223737、特開平1−283350号
公報、US4818300、BR1222777等に記
載された技術も知られている。
【0013】Al−Zr系合金に関しては、本発明者ら
によって、特公昭63−15978号公報、特開昭61
−51395号公報に記載されている技術が開示されて
いる。また、特開昭63−143234号公報、特開昭
63−143235号公報等に記載された技術も知られ
ている。Al−Mg−Si系合金に関しては、BR14
21710等に記載された技術も知られている。
【0014】上述した各種合金は、通常、アルミニウム
を主とする原材料を溶解し、それに所定の金属を加えて
所定の合金成分を有するアルミニウム合金溶湯とし、引
き続きそのアルミニウム合金溶湯に清浄化処理を施し鋳
造して製造される。清浄化処理には、溶湯中の水素等の
不要なガスを除去するために、フラックス処理;アルゴ
ンガスや塩素ガス等を使った脱ガス処理;セラミックチ
ューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわ
ゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、
アルミナボール等を濾材とするフィルタや、グラスクロ
スフィルター等を使ったフィルタリング;脱ガス処理と
フィルタリングとを組み合わせた処理;等が行われる。
このような清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物や酸化
物等の異物による欠陥、溶湯に溶け込んだガスによる欠
陥を防ぐために実施されることが多い。
【0015】鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表さ
れる固定鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される
駆動鋳型を用いる方法とがある。DC鋳造法による場
合、冷却速度は1〜300℃/秒の範囲に設定される。
この過程で、先述の合金成分元素の一部はアルミニウム
中に固溶するが、アルミニウム中に固溶しきれない成分
が種々の金属間化合物を生成し、鋳塊中に存在すること
になる。DC鋳造法では、板厚300〜800mmの鋳
塊を製造することができる。その鋳塊は、常法に従い面
削が施され、表層から1〜30mm、好ましくは、1〜
10mm切削される。その後、必要に応じて、均熱化処
理が行われる。均熱化処理を行うことで、生成した金属
間化合物のうち、不安定化合物を安定な化合物に変化さ
せたり、またその一部をアルミニウム中に固溶させるこ
とができる。
【0016】しかし、残留した金属間化合物は、その後
の熱間圧延、冷間圧延を行う過程で、その径が細かくな
ったり分散したりはするが、種類や量は殆ど変化しな
い。つまり、そのままの状態で平版印刷版用支持体中に
残ることになる。また、冷間圧延処理の前後、または、
その途中において焼鈍と呼ばれる熱処理を施すこともあ
る。この場合、焼鈍の熱処理温度によってはアルミニウ
ム中に固溶していた一部の元素が金属間化合物、また
は、元素単体の析出物として析出することがある。この
場合もその析出物は平版印刷版用支持体中に残ることに
なる。冷間圧延によって所定の厚さ(0.1〜0.5m
m)に仕上げられたアルミニウム合金板は、平面性を改
善するために、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯
正装置によって、平面性が改善される。
【0017】ここで原材料として使用されるアルミニウ
ム原料には、所定の合金成分とするため、通常、新地金
と呼ばれる純度99.7%以上のアルミニウム塊が使用
されたり、アルミニウム製造工場内で発生した合金成分
のわかっているアルミニウム屑が使用されたりする。ま
た必要に応じて、所定の金属を含む母合金と呼ばれるア
ルミニウム合金を添加したり、所定の元素からなる金属
塊を添加して、所望の合金成分を有するアルミニウム合
金材料が製造される。
【0018】しかし、新地金や所定の金属を含むアルミ
ニウム合金材料は、それ自体のコストが高いというデメ
リットを抱えている。またアルミニウム製造工場内で発
生した合金成分のわかっているアルミニウム屑を使用す
る場合は、原材料の得率が向上する点でメリットはある
が、原材料としては決して低コストなものではない。
【0019】このような原材料コストが高いという問題
に対し、本発明者らは、特開平7−81260号公報に
て、99.7%以上のアルミニウム塊のみを使用し、所
定の元素を含む母合金や金属塊の添加を不要とする方法
を提案した。また、本発明者らは、特開平7−2055
34号公報において、使用済みの平版印刷版や製造途中
で不良となった平版印刷版をアルミニウム原材料として
再利用する方法を提案した。
【0020】しかしこれらの方法でも、純度99.7%
以上のアルミニウム塊自体がそれほど安価なわけではな
く、使用済みの平版印刷版を安定した原材料として確保
することが難しいため、大きな効果は得られなかった。
【0021】このような問題を解決するためには、原材
料として、合金成分を制御していない材料、即ち、各種
の不純物を含むスクラップ材、あるいは、新地金に比較
して市場価格が安く、多くの不純物を含む二次地金ある
いは再生地金と呼ばれる地金を使用することが考えられ
るが、合金成分の制御がほとんど行われていないので、
平版印刷版のように、高品質の表面処理外観、印刷性能
が要求される原材料にはまったく使用することができな
かった。特に、不純物によって、種々の金属間化合物等
の析出物が生成するため、陽極酸化被膜に欠陥が生じや
すく、耐過酷インキ汚れ性が大幅に劣ってしまう。ま
た、粗面化処理した表面の至る所に金属間化合物等の析
出物が突出して生成することにより、ブランケット汚れ
等の印刷性能不良が発生しやすい。
【0022】また、使用済みアルミニウムのリサイクル
を少エネルギーで実現するには、純度の低いアルミニウ
ム合金板や、表面に微量成分の偏析があるアルミニウム
合金板を、平版印刷版用支持体の原材料として使用でき
るようにすることが必要といえる。
【0023】さらに、アルミニウム合金板の製造工程で
は、中間焼鈍処理および均熱処理などを省略したときに
発生しやすいストリークとよばれるスジ状の処理ムラの
発生を抑制する方法が望まれている。このストリークと
よばれるスジ状の処理ムラは、アルミニウムの結晶粒が
比較的大きい場合のアルミニウム合金板に発生しやす
い。ストリークは、アルミニウム結晶粒の方位差に起因
して発生するといわれている。結晶粒に方位差がある
と、硝酸水溶液中での電気化学的粗面化処理におけるピ
ッティング反応が、不均一になりやすく、これによりス
トリークといわれる処理ムラが発生する。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】以上から、本発明の目
的は、アルミニウム合金板表面に微量成分の偏析があっ
たり、アルミニウム結晶粒が多く露出しているような原
材料を使用しても、面質故障が無く、過酷インキ汚れや
ブラン汚れの発生を抑え、低コストで製造することがで
きる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することであ
る。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために、アルミニウム合金板の表面処理方
法等について鋭意検討した結果、本発明に想到した。す
なわち、本発明は、 <1>アルミニウム合金板から平版印刷版用支持体を製
造する製造方法であって、前記アルミニウム合金板の表
面に露出しているアルミニウムの結晶粒の長さが500
μm以上、幅が50μm以上であり、前記アルミニウム
合金板に硝酸を主体とする溶液中で、交流電流を用い
て、電気化学的粗面化処理を行うと、前記アルミニウム
合金板表面に露出しているCuの存在率が5(mm2
2)以上となり、このようなアルミニウム合金板に対
し、少なくとも、下記(1)および(2)の工程からな
る各処理を順次施すことを特徴とする平版印刷版用支持
体の製造方法である。 (1)塩酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
1〜300C/dm2の電気量で、電気化学的粗面化処
理を行う塩酸電解処理工程。 (2)硝酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
電気化学的粗面化処理を行う硝酸電解処理工程。
【0026】<2> アルミニウム合金板から平版印刷
版用支持体を製造する製造方法であって、前記アルミニ
ウム合金板の表面に露出しているアルミニウムの結晶粒
の長さが500μm以上、幅が50μm以上であり、前
記アルミニウム合金板に硝酸を主体とする溶液中で、交
流電流を用いて、電気化学的粗面化処理を行うと、前記
アルミニウム合金板表面に露出しているCuの存在率が
5(mm2/m2)以上となり、このようなアルミニウム
合金板に対し、少なくとも、下記(1)〜(6)の工程
からなる各処理を順次施すことを特徴とする平版印刷版
用支持体の製造方法である。 (1)アルカリ溶液によりアルミニウム合金板を1〜1
5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を行った
後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデスマッ
ト処理を行う、第一のエッチング処理工程。 (2)塩酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
1〜300C/dm2の電気量で、電気化学的粗面化処
理を行う塩酸電解処理工程。 (3)アルカリ溶液によりアルミニウム合金板を0.0
1〜1.5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を
行った後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデ
スマット処理を行う、第二のエッチング処理工程。 (4)硝酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
電気化学的粗面化処理を行う硝酸電解処理工程。 (5)アルカリ溶液中でアルミニウム合金板を0.01
〜5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を行った
後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデスマッ
ト処理を行うかまたは前記アルミニウム合金板を0.0
01〜0.2g/m2溶解する酸性エッチング処理を行
う、第三のエッチング処理工程。 (6)陽極酸化処理工程。
【0027】<3> 前記陽極酸化処理工程後のアルミ
ニウム合金板に、さらに封孔処理および/または親水化
処理を行うことを特徴とする<2>に記載の平版印刷版
用支持体の製造方法である。
【0028】<4> 前記第一のエッチング処理工程の
前工程として、機械的粗面化処理工程を設けることを特
徴とする<2>または<3>に記載の平版印刷版用支持
体の製造方法である。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明の平版印刷版用支持体の製
造方法は、アルミニウム合金板の表面に露出しているア
ルミニウムの結晶粒の長さが500μm以上、幅が50
μm以上であり、前記アルミニウム合金板に硝酸を主体
とする溶液中で、交流電流を用いて、電気化学的粗面化
処理を行うと、前記アルミニウム合金板表面に露出して
いるCuの存在率が5(mm2/m2)以上となるアルミ
ニウム合金板に対し、少なくとも、以下に示す(1)〜
(6)からなる工程を順次施すもので、特に(2)およ
び(4)に示す工程は必須であり、(1)、(3)およ
び(5)に示す工程は必要に応じて設けられるものであ
る。
【0030】(1)アルカリ溶液により前記アルミニウ
ム合金板を1〜15g/m2溶解するアルカリエッチン
グ処理を行った後、酸性溶液により前記アルミニウム合
金板にデスマット処理を行う、第一のエッチング処理工
程。 (2)塩酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
1〜300C/dm2の電気量で、電気化学的粗面化処
理を行う塩酸電解処理工程。 (3)アルカリ溶液によりアルミニウム合金板を0.0
1〜1.5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を
行った後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデ
スマット処理を行う、第二のエッチング処理工程。 (4)硝酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
電気化学的粗面化処理を行う硝酸電解処理工程。 (5)アルカリ溶液中でアルミニウム合金板を0.01
〜5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を行った
後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデスマッ
ト処理を行うかまたは前記アルミニウム合金板を0.0
01〜0.2g/m2溶解する酸性エッチング処理を行
う、第三のエッチング処理工程。 (6)陽極酸化処理工程。
【0031】また、前記第一のエッチング処理工程の前
工程として、機械的粗面化処理工程を設けるのが好まし
く、前記陽極酸化処理工程後のアルミニウム合金板に、
さらに封孔処理および/または親水化処理を行うのが好
ましい。以下、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法
を、まず、平版印刷版用支持体の支持体基板であるアル
ミニウム合金板の材料について説明し、各処理工程別に
詳細に説明する。
【0032】≪アルミニウム合金板≫本発明の平版印刷
版用支持体の製造方法に使用するアルミニウム合金板と
しては、該アルミニウム合金板の表面に露出しているア
ルミニウムの結晶粒の長さが500μm以上、幅が50
μm以上であり、前記アルミニウム合金板に、後述する
硝酸処理工程に施される硝酸水溶液を使用した電気化学
的粗面化処理を行うと、アルミニウム合金板表面に露出
しているCuの存在率が5(mm2/m2)以上となるも
のである。
【0033】長さが500μm以上、幅が50μm以上
であるアルミニウム結晶粒がアルミニウム合金板表面に
露出していると、ストリークといわれる処理ムラを発生
させる原因となる。本発明の平版印刷版用支持体の製造
方法の原材料としては、このようなアルミニウム合金板
であって、具体的には、30mm2の範囲で観察して少
なくとも一個の前記アルミニウム結晶粒が存在するよう
なアルミニウム合金板を対象とすることができる。
【0034】なお、アルミニウムの結晶粒の長さ(長軸
の長さ)と幅(短軸の長さ)は、アルミニウム合金板表
面をバフ研磨処理して鏡面処理した後、室温のHF10
%液で45秒間エッチング処理し、光学式顕微鏡で偏向
フィルタを用いて、倍率を15倍または50倍として撮
影して求めることができる。
【0035】また、上述のアルミニウム合金板は、電気
化学的粗面化処理を施すとCuの偏析が発生しやすいも
のでもある。このようなアルミニウム合金板を使用し
て、電気化学的粗面化処理を行っても、アルミニウム合
金板表面に露出しているCuの存在率が5(mm2
2)以上と多いため、Cuの偏析部分に均一な処理を
行うことができず、外観不良や偏析部分において印刷性
能が低下する不具合を生じることがある。従って、この
ような材料は、従来の製造方法ではほとんど使用される
ことがなかった。しかし、本発明の平版印刷版用支持体
の製造方法によれば、上述のようなアルミニウム合金板
であっても、均一な電気化学的粗面化処理を行うことが
でき、従来の平版印刷版用支持体と同等の品質のものを
製造することができる。
【0036】ここで、「Cuの存在率」とは、アルミニ
ウム合金板の粗面化処理を施す面の1m2あたりに存在
するCu結晶の露出面積(Cu結晶の露出面積:表面に
露出しているCu結晶の偏在部を走査型電子顕微鏡で観
察し、その圧延方向に平行な線分(長軸)の長さXと圧
延方向に垂直な線分(短軸)の長さYとを測定し、両者
の積を2で割った値、すなわち、X×Y÷2)の合計を
いう。
【0037】このようなアルミニウム合金板の具体例と
しては、通常はアルミニウムハンドブック第4版(19
90、軽金属協会)に記載の従来公知の素材が挙げられ
る。例えば、JIS1050材、JIS1100材、J
IS3003材、JIS3103材、JIS3005材
などを挙げることができる。
【0038】また、アルミニウム純度が95〜99.4
wt%で、Fe:0.3〜1.0wt%、Si:0.1
5〜1.0wt%、Cu:0.1〜1.0wt%、M
g:0.1〜1.5wt%、Mn:0.1〜1.5wt
%、Zn:0.1〜0.5wt%、Cr:0.01〜
0.1wt%、Ti:0.03〜0.5wt%の元素群
の内、5種以上を含むスクラップアルミニウム合金板あ
るいは2次地金を使用したアルミニウム合金板等を使用
するのが好ましい。このようなアルミニウム合金板は、
DC鋳造法、均熱処理工程および/または焼鈍処理工程
を省略したDC鋳造法、連続鋳造法等により製造するこ
とができる。
【0039】≪平版印刷版用支持体の製造方法≫ (1.機械的粗面化処理工程)上述のようなアルミニウ
ム合金板には、まず、機械的粗面化処理を施すのが好ま
しい。機械的粗面化処理は、スラリー状の研磨材をアル
ミニウム合金板に供給し、毛径が0.07〜0.57m
mの回転式ナイロンブラシロールにより行うのが好まし
い。研磨材としては、公知のものを使用できるが、珪
砂、石英、水酸化アルミニウムまたはこれらの混合物が
好ましい。これらについては特開平6−135175号
公報、特公昭50−40047号公報に詳しく記載され
ている。スラリー状の研磨材の比重は1.05〜1.3
が好ましい。上記回転式ナイロンブラシロールによる機
械的粗面化処理の他に、研磨材を含有するスラリー液を
吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いた方式、凹凸を
付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム合金板に転
写する方式等により機械的粗面化処理を行ってもよい。
また、その他の方式として、特開昭55−074898
号公報、特開昭61−162351号公報、特開昭63
−104889号公報等に記載されているような方法を
使用してもよい。
【0040】特表平9−509108号公報に記載され
ているように、アルミニウム合金板表面をアルミナ粒子
および石英粒子の混合物(重量比で、アルミナ粒子:石
英粒子=95:5〜5:95)を含有する水性スラリー
中でブラシ研磨する方法を用いることもできる。このと
き、アルミナ粒子および石英粒子のそれぞれの平均粒子
径は1〜40μmが好ましく、1〜20μmがより好ま
しい。
【0041】回転式ナイロンブラシロールに使用するナ
イロンブラシは、吸水率の低いものが好ましく、例え
ば、東レ ナイロンブリッスル200T(ナイロン6・
10)を用いるのが好ましい。東レ ナイロンブリッス
ル200Tの軟化点は180℃、融点は212〜214
℃、比重は1.08〜1.09、水分率は20℃,65
%RH(相対湿度)において1.4〜1.8、20℃,
100%RHにおいて2.2〜2.8である。また、乾
引っ張り強度は4.5〜6g/d、乾引っ張り伸度は2
0〜35%、沸騰水収縮率は1〜4%、乾引っ張り抵抗
度は39〜45g/d、ヤング率(乾)は380〜44
0kg/mm2である。
【0042】(2.エッチング処理工程)本発明の平版
印刷版用支持体の製造方法では、上述のように少なくと
も3回のエッチング処理(第一〜第三のエッチング処理
工程)を行うことが好ましい。エッチング処理は、主
に、アルカリ溶液によるアルカリエッチング処理と酸性
溶液によるデスマット処理と、からなる。
【0043】アルカリエッチング処理:アルカリ溶液
におけるアルカリ剤の濃度は1〜30wt%が好まし
く、アルミニウム合金板中のアルミニウムだけでなく、
その他の合金成分を金属イオンの合計として、0.5〜
10wt%含有していてよい。アルカリ剤としては、苛
性ソーダ等を使用することができる。アルカリ溶液の液
温は、常温〜95℃が好ましく、40〜80℃がより好
ましい。アルカリエッチング処理時間は、1〜120秒
間とするのが好ましい。
【0044】アルカリ処理によるアルミニウム合金板の
表面処理量(溶解量)は、第一のエッチング処理工程で
は、1〜15g/m2とし、好ましくは、4〜10g/
2とする。第二のエッチング処理工程では、0.01
〜1.5g/m2とし、好ましくは、0.1〜0.8g
/m2とする。第三のエッチング処理工程では、0.0
1〜5g/m2とし、好ましくは、0.1〜2g/m2
する。
【0045】アルカリ溶液によるアルカリ処理には、浸
漬方式、スプレー方式、あるいは、アルカリ溶液をアル
ミニウム合金板へ塗布する方法等が採用できる。
【0046】一度使用したアルカリ溶液を使用前のアル
カリ溶液とミキシングして使用する場合は、苛性ソーダ
溶液とアルミン酸ソーダとを用いてアルカリ剤濃度等を
調整するのが好ましい。アルカリ処理が終了した後に
は、アルカリ溶液を次工程に持ち出さないために、アル
ミニウム合金板に対しニップローラーによる液切りとス
プレーによる水洗を行うことが好ましい。
【0047】デスマット処理:アルカリ処理を行う
と、一般に、アルミニウム合金板の表面にはスマットが
生成する。このスマットを除去するため、燐酸、硝酸、
硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含
む混酸で酸処理(デスマット処理)を施すのが好まし
い。酸性溶液の濃度は1〜300g/リットルが好まし
い。さらに酸性溶液中には、アルミニウムだけでなく、
アルミニウム合金板中に存在する合金成分が金属イオン
の合計として0.1〜15g/リットルが溶解していて
もよい。酸性溶液の温度は20〜95℃が好ましく、3
0〜70℃がより好ましい。処理時間は1〜120秒が
好ましく、2〜60秒がより好ましい。
【0048】酸性溶液によるデスマット処理には、一般
的には、浸漬方式、スプレー方式、溶液をアルミニウム
合金板へ塗布する方法等が採用できる。
【0049】デスマット処理が終了した後には、酸性溶
液を次工程に持ち出さないために、処理後のアルミニウ
ム合金板に対し、ニップローラーによる液切りとスプレ
ーによる水洗を行うことが好ましい。また、酸性溶液と
しては、後述する電解粗面化処理工程に用いた酸性溶液
を用いると、廃液量を削減できるのでより好ましい。
【0050】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に
おける第三のエッチング処理工程において、アルカリエ
ッチング処理後のデスマット処理の代わりに、アルミニ
ウム合金板を0.001〜0.2g/m2溶解する酸性
エッチング処理を施してもよい。
【0051】前記酸性エッチング処理は酸性溶液により
行うのが好ましく、酸性溶液に使用する酸としては、燐
酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸等のいずれか、または
これら2種以上の酸を含む混酸等を挙げることができ
が、なかでも、硫酸が好ましい。酸性溶液の濃度は30
0〜500g/リットルが好ましく、アルミニウムはも
ちろんアルミニウム合金中に含有する合金成分を含有し
ていてもよい。酸性溶液の温度は60〜90℃で、エッ
チング処理時間は1〜10秒とすることが好ましい。酸
性溶液として硫酸を使用する場合であって、該硫酸中に
アルミニウムイオンが含有されている場合は、硫酸濃度
とアルミニウムイオン濃度とは、常温で結晶が晶出しな
い範囲から選択することが好ましい。このときの好まし
いアルミニウムイオン濃度は、0.1〜15g/リット
ルで、特に好ましくは、5〜15g/リットルである。
エッチング処理が終了した後には、酸性溶液を次工程に
持ち出さないため、エッチング処理後のアルミニウム合
金板に対し、ニップローラーによる液切りとスプレーに
よる水洗を行うことが好ましい。
【0052】後述する硝酸電解処理後に、60〜90℃
の硫酸を使用し1〜10秒間、酸性エッチング処理をす
ることによって、アルミニウム合金板表面のSiを含む
金属間化合物、または単体Siを除去することができる
ので、その後の陽極酸化処理工程で設けられる陽極酸化
被膜の欠陥をなくすことができ、その結果、過酷インキ
汚れの発生を抑制できる。
【0053】(3.塩酸電解処理工程)第一のエッチン
グ処理工程を経た後、アルミニウム合金板に、塩酸を主
体とする溶液(電解液)中で、交流電流を用いて、1〜
300C/dm2の電気量で、電気化学的粗面化処理を
施す。
【0054】塩酸電解処理でアルミニウム合金板が陽極
反応にあずかる前記電気量は、1〜300C/dm2
範囲から選択するが、5〜150C/dm2が好まし
く、10〜100C/dm2がより好ましい。
【0055】電気化学的に粗面化処理することで、均一
なピットを生成させるため、用いる交流電流としては、
アルミニウム合金板が陽極である場合の電気量QAと陰
極である場合の電気量QCとの比(QC/QA)が0.
95〜2.5、好ましくは1.5〜2.0となるように
する。
【0056】ここで、本明細書において、「主体とす
る」とは、酸またはアルカリ溶液において、酸性または
アルカリ成分全体に対して、30重量%以上、好ましく
は50重量%以上含まれていることをいう。
【0057】塩酸濃度を一定に保つために30〜35w
t%の塩酸と水とを一定の割合で、通電量に比例して供
給し、この供給量と同容積の電解液を逐次循環タンクか
らオーバーフローさせて、循環タンク系外に排出するの
が好ましい。また、電解液の導電率と超音波の伝搬速度
と温度とから求めた塩酸およびアルミニウムイオン濃度
をもとに、前記塩酸と水との供給量を調整することが好
ましい。
【0058】塩酸を主体とする溶液は、通常の直流電流
または交流電流を用いた電気化学的な粗面化処理に用い
るものを使用でき、5〜15g/リットルの塩酸に、塩
化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等
の塩化物の一種以上を、好ましくは1g/リットルから
飽和状態になるまで、より好ましくは1〜100g/リ
ットル添加して使用することができる。塩酸を主体とす
る溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、
マグネシウム、珪素等のアルミニウム合金中に含まれる
金属等が溶解していてもよい。また、塩酸5〜15g/
リットルの水溶液中にアルミニウムイオンが1〜10g
/リットルとなるように、塩化アルミニウムを添加した
液を用いることが好ましい。なお、アルミニウムイオン
は塩酸電解処理を行っている間にその濃度が増加してい
くものである。電解温度は10〜95℃が好ましく、3
0〜50℃がより好ましい。
【0059】塩酸電解処理により粗面化されたアルミニ
ウム合金板表面には、微細な凹凸が形成されているが、
同時にスマットや酸化被膜も形成される。該スマットや
酸化被膜は、後の硝酸電解工程において、均一な粗面化
を妨げる原因となる。しかし、本発明に好ましい平版印
刷版用支持体の製造方法では、前述の第二のエッチング
処理工程を硝酸電解工程の前に設けているので、均一な
粗面化が妨げられるといった問題が生じることはない。
【0060】塩酸電解処理後のアルミニウム合金板の粗
面化面には、未エッチング部分がなく、全面に均一にピ
ットが形成されていることが好ましいが、未エッチング
部分が存在していても、該未エッチング部分が均一に分
散していることが好ましい。前記粗面化面に形成される
ピットの径は約0.1〜0.5μmが好ましい。塩酸電
解処理によれば、Cu等の微量成分の偏析等があっても
均一に微細な凹凸を形成することができるので、この微
細な凹凸が後の硝酸電解工程のピッティング反応のイニ
シエーションとなり、アルミニウム合金板表面に微量成
分の偏析が存在しても硝酸水溶液中で均一なハニカムピ
ットを形成させることができる。
【0061】(4.硝酸電解処理工程)第二のエッチン
グ処理工程を経た後、アルミニウム合金板を、硝酸を主
体とする溶液(電解液)中で、交流電流を用いて、電気
化学的粗面化を施す。電気化学的に粗面化処理すること
で、均一なピットを生成させるため、用いる交流電流と
しては、アルミニウム合金板が陽極である場合の電気量
QAと陰極である場合の電気量QCとの比(QC/Q
A)が0.95〜2.5、好ましくは1.5〜2.0と
なるようにする。
【0062】硝酸濃度を一定に保つために、30〜68
wt%の硝酸と水とを一定の割合で、通電量に比例して
供給し、この供給量と同容積の電解液を逐次循環タンク
からオーバーフローさせて循環タンク系外に排出するの
が好ましい。また、電解液の導電率と超音波の伝搬速度
と温度とから求めた硝酸およびアルミニウムイオン濃度
をもとに、前記硝酸と水の供給量を調整することが好ま
しい。
【0063】硝酸を主体とする溶液は、通常の直流また
は交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを
使用でき、5〜15g/リットルの硝酸に、硝酸アルミ
ニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸化
合物の一種以上を、1g/リットルから飽和状態になる
まで、より好ましくは1〜150g/リットル添加して
使用することができる。硝酸を主体とする溶液中には、
鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、
珪素等のアルミニウム合金中に含まれる金属等が溶解し
ていてもよい。また、硝酸5〜15g/リットルの水溶
液中にアルミニウムイオンが1〜10g/リットル、ア
ンモニウムイオンが10〜300ppmとなるように、
硝酸アルミニウムおよび硝酸アンモニウムを添加した液
を用いることが好ましい。なお、アルミニウムイオンと
アンモニウムイオンは電気化学的な粗面化処理を行なっ
ている間にその濃度が増加していくものである。電解温
度は10〜95℃が好ましく、40〜80℃がより好ま
しい。硝酸電解処理で、電気化学的な粗面化が終了した
時点でのアルミニウム合金板が陽極反応にあずかる電気
量の総和は、50〜800C/dm2が好ましい。
【0064】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法の
塩酸処理工程および硝酸処理工程(以下、「電解粗面化
処理工程」ということがある)に用いる交流電源波形と
しては、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が挙げら
れるが、なかでも矩形波または台形波が好ましい。周波
数は30〜200Hzが好ましく、40〜120Hzが
より好ましい。本発明で好ましく用いられる台形波の一
例を図1に示す。台形波において、電流が0からピーク
に達するまでの時間tpおよびtp’は0.1〜2ms
ecが好ましく、0.3〜1.5msecがより好まし
い。電源回路のインピーダンスの影響のため、tpおよ
びtp’が0.1未満であると電流波形の立ち上がり時
に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高
くなってしまう場合がある。また、2msecより大き
くなると、電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり
均一な粗面化が行われにくくなる場合がある。
【0065】また、交流のdutyは0.25〜0.5
が好ましく、0.3〜0.4がより好ましい。ここで、
「duty」とは、交流の周期Tにおいて、アルミニウ
ム合金板が陽極反応する時間をtaとしたときのta/
Tをいう。とくにカソード(陰極)反応時のアルミニウ
ム合金表面には、水酸化アルミニウムを主体とするスマ
ット成分の生成に加え、酸化被膜の溶解や破壊が起こ
り、次のアルミニウム合金板のアノード(陽極)反応時
のピッティング反応の開始点となるために、このdut
yの選択は、均一な粗面化処理を実現するのに非常に意
義がある。
【0066】電流密度は、台形波または矩形波のピーク
値で電流のアノードサイクル側Ia、カソードサイクル
側Icともに、10〜200A/dm2が好ましい。電
解粗面化処理工程に用いる電解槽は、縦型、フラット
型、ラジアル型など公知の表面処理用の電解槽を使用す
ることができる。該電解槽内の電解液は循環しており、
電解槽内を通過する電解液は、アルミニウム合金板の進
行方向とパラレルでもカウンターでもよい。一つの電解
槽には一つ以上の交流電源が接続されているのが好まし
い。また、一つの処理工程で、二つ以上の電解槽を用い
ることもできる。
【0067】図2は、本発明の平版印刷版用支持体の製
造方法で用いるラジアル型電解槽の概略図である。図2
において、ラジアル型電解槽は、アルミニウム合金板W
が主電解槽10中に配置されたラジアルドラムローラ1
2に巻装され、搬送過程で交流電源11に接続された主
極13a、13bによって電解粗面化処理される。電解
液15は、電解液供給口14からスリット16を通じて
ラジアルドラムローラ12と主極13a、13bとの間
にある電解液通路17に供給される。ついで、主電解槽
10で処理されたアルミニウム合金板Wは、補助陽極槽
20で電解処理される。この補助陽極槽20には補助陽
極21がアルミニウム合金板Wと対向配置されており、
電解液15は、補助陽極21とアルミニウム合金板Wと
の間を流れるように供給される。補助陽極21はフェラ
イト、酸化イリジウム、白金、または白金をチタン、ニ
オブ、ジルコニウム等のバルブ金属にクラッド若しくは
メッキしたもの等公知の酸素発生用電極から選定するこ
とができる。陰極は、カーボン、白金、チタン、ニオ
ブ、ジルコニウム、およびステンレスや燃料電池用陰極
に用いる電極から選定することができる。
【0068】上記主電解槽10および補助陽極槽20内
を通過する電解液15の供給方向は、既述のように、ア
ルミニウム合金板Wの進行とパラレルでもカウンターで
もよい。アルミニウム合金板に対する電解液15の相対
流速は、10〜1000cm/secが好ましい。一つ
の電解槽には一個以上の交流電源を接続することができ
る。また、二個以上の電解槽を使用してもよく、各槽に
おける電解条件は同一でもよいし異なっていてもよい。
また、電解処理が終了した後には、処理液を次工程に持
ち出さないためにニップローラによって液切りとスプレ
ーによる水洗とを行うことが好ましい。
【0069】(5.陽極酸化処理工程)アルミニウム合
金板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が施
されることが好ましい。陽極酸化処理に用いられる電解
質としては、多孔質酸化被膜を形成するものならば、い
かなるものでも使用することができる。一般には硫酸、
リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはこれらの混合液が
用いられる。これらの電解質の濃度は、その種類によっ
て適宣決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質
によって変わるので一概に特定し得ないが、一般的には
電解質の濃度が1〜80wt%、液温5〜70℃、電流
密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間
10秒〜300秒の範囲にあるのが好ましい。電解液と
して硫酸を使用する場合、通常、直流電流で処理が行わ
れるが、交流を用いることも可能である。形成させる陽
極酸化被膜の量は1〜10g/m2が好ましく、1.1
〜5g/m2がより好ましい。
【0070】陽極酸化被膜の量が1g/m2よりも少な
いと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部
にキズが付きやすくなって、そのキズにインキが付着す
る、いわゆるキズ汚れが生じやすくなる場合がある。陽
極酸化被膜量が10g/m2より多いと、形成される陽
極酸化被膜の量にムラが生じてしまう場合がある。アル
ミニウムエッジ部分は、陽極酸化被膜の形成が集中しや
すくなるので、アルミニウム合金板のエッジの部分と中
心部分の酸化被膜量の差は、1g/m2以下とするのが
好ましい。
【0071】硫酸水溶液中での陽極酸化処理について
は、特開昭54−128453号公報、特開昭48−4
5303号公報のそれぞれに詳しく記載されている。硫
酸濃度は10〜300g/リットルするのが好ましく、
アルミニウムイオン濃度は1〜25g/リットルとする
ことが好ましい。特に、50〜200g/リットルの硫
酸水溶液中に硫酸アルミニウムを添加してアルミニウム
イオン濃度を2〜10g/リットルとするのが好まし
い。電解液の温度は30〜60℃が好ましい。直流電流
を用いるときは、電流密度を1〜60A/dm2とする
のが好ましく、5〜40A/dm2とするのがより好ま
しい。連続的にアルミニウム合金板を陽極酸化処理する
場合は、アルミニウム合金板の焼けと呼ばれる電流集中
を防ぐために、最初5〜10A/dm2の低電流密度で
陽極酸化処理を行い、時間とともに、徐々に電流密度を
上げて30〜50A/dm2になるまで、あるいは50
A/dm2以上に電流密度に設定するのが好ましい。電
流密度は5〜15ステップで徐々に上げることが好まし
い。各ステップごとには独立した電源装置を持ち、この
電源装置の電流値で電流密度をコントロールする。給電
方法はコンダクタローラを用いない液給電方式が好まし
い。陽極には酸化イリジウムや鉛を用いるのが好まし
く、陰極にはアルミニウムを用いるのが好ましい。本発
明に用いられる陽極酸化処理を行う装置としては、特願
平11−178624号に記載のものを使用するのが好
ましい。
【0072】電解液として硫酸を使用する場合の該硫酸
中には、アルミニウム合金板に含まれる微量元素が少量
溶解していてもよい。陽極酸化処理中の硫酸水溶液には
アルミニウムが溶出するため、工程の管理のためには硫
酸濃度とアルミニウムイオン濃度を管理する必要があ
る。アルミニウムイオン濃度を低く設定すると陽極酸化
処理を行う硫酸水溶液の更新を頻繁に行わなければなら
ず、廃液量が増えて経済的でないばかりでなく、環境面
でも問題となる。また、アルミニウムイオン濃度を高く
設定すると電解電圧が高くなり電力コストがかさんで非
経済的となってしまう。
【0073】好ましい陽極酸化処理の硫酸濃度、アルミ
ニウムイオン濃度および液温としては、以下に示すよう
な組み合わせがある。 (1)硫酸濃度:100〜200g/リットル(より好
ましい範囲として、130〜180g/リットル)、ア
ルミニウムイオン濃度:2〜10g/リットル(より好
ましい範囲として、3〜7g/リットル)、液温:30
〜40℃(より好ましい範囲として、33〜38℃)
【0074】(2)硫酸濃度:50〜125g/リット
ル(より好ましい範囲として、80〜120g/リット
ル)、アルミニウムイオン濃度:2〜10g/リットル
(より好ましい範囲として、3〜7g/リットル)、液
温40〜70℃(より好ましい範囲として、50〜60
℃)
【0075】(6.封孔処理および/または親水化処
理)陽極酸化処理工程によって陽極酸化処理が施された
アルミニウム合金板は、必要に応じて、封孔処理および
/または親水化処理を施すのが好ましい。
【0076】親水化処理:親水化処理としては、米国
特許第2714066号明細書、同第3181461号
明細書、同第3280734号明細書および同第390
2734号明細書に開示されているアルカリ金属シリケ
ート(例えば珪酸ナトリウム水溶液)法を用いるのが好
ましい。この方法においては、アルミニウム合金板が珪
酸ナトリウム水溶液に浸漬されるか、または該水溶液中
で電解処理される。他の好ましい方法としては特公昭3
6−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン
酸カリウム、または米国特許第3276868号明細
書、同第4153461号明細書および同第46892
72号明細書に開示されているポリビニルホスホン酸で
処理する方法などが用いられる。これらの中でも、珪酸
ナトリウムおよびポリビニルホスホン酸水溶液を用いて
親水化処理を施すのが好ましい。
【0077】封孔処理:陽極酸化処理工程によって陽
極酸化処理を施した後に、陽極酸化被膜に生成するマイ
クロポアと称される穴を塞ぐために封孔処理を施すのが
好ましい。かかる封孔処理は、熱水および無機塩または
有機塩を含む熱水溶液への浸漬並びに水蒸気浴等によっ
て行われる。また、封孔処理工程の後に上述の親水化処
理を施すのが好ましい。無機塩としては、ケイ酸塩、ホ
ウ酸塩、リン酸塩、硝酸塩等が挙げられ、有機塩として
は、カルボン酸塩等が挙げられる。
【0078】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法
は、連続法または断続法とすることもできるが、工業的
には連続法とするのが好ましい。
【0079】<本発明の製造方法に供し得る製造設備等
>以下、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に供し
得る製造設備等について説明する。
【0080】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に
おける製造過程を説明すると、まず、(1)コイル状に
巻き取られたアルミニウム合金板を、多軸ターレットか
らなる送り出し装置から送り出し、(2)粗面化処理工
程(機械的粗面化処理工程、エッチング処理工程、電解
粗面化処理工程、)陽極酸化処理工程を経て、封孔化お
よび/または親水化処理、乾燥処理し、(3)アルミニ
ウム合金板を多軸ターレットからなる巻き取り装置にて
コイル状に巻き取るか、または、アルミニウム合金板の
平面性を矯正し、その後に所定の長さにカットし、その
後集積する。必要に応じ、上記過程において(下塗層・
感光層・マット層)を形成して乾燥処理する工程を設
け、平版印刷版用原版としてから上記巻取り装置にてコ
イル状に巻き取ってもよい。
【0081】また、上記製造過程において、アルミニウ
ム合金板の表面の欠陥を検査する装置にて欠陥を連続的
に検査し、発見した欠陥部のエッジ部分に目印のラベル
を貼る工程を一工程以上有することすることが好まし
い。
【0082】送り出し工程または巻き取り工程のアルミ
コイル交換時に、アルミニウム合金板の走行を停止して
も、粗面化処理または塗布(下塗り層・感光層・マット
層)・乾燥する工程のアルミニウム合金板の走行速度を
一定に保つようなリザーバー装置を設けることが好まし
い。
【0083】アルミコイルの送り出し工程の後に、アル
ミニウム合金板を超音波またはアーク溶接にて接合する
工程を設けることが好ましい。
【0084】アルミニウム合金板の走行位置を検出し、
走行位置を矯正する装置を一以上有することが好まし
く、アルミニウム合金板の張力カットと走行速度制御を
目的とした駆動装置と、張力制御を目的としたダンサロ
ール装置と、をそれぞれ一以上有することが好ましい。
【0085】トラッキング装置にて各工程の状態が所望
の条件か否かを記録し、アルミニウムコイル(アルミニ
ウム合金板)が巻き取られる前に、アルミニウム合金板
のエッジ部にラベルを貼り、そのラベルよりも後が所望
の条件か否かを後から判別できるようにすることが好ま
しい。
【0086】電解液等の温度、比重、電導度、超音波の
伝搬速度のうち、いずれか一以上を測定し、電解液の組
成を求め、フィードバック制御および/またはフィード
フォワード制御して電解液濃度を一定にコントロールす
ることが好ましい。電解液中にはアルミニウムイオンを
始めとするアルミニウム合金板中に含まれる成分がアル
ミニウムの表面処理の進行に伴って溶解する。そこで、
アルミニウムイオン濃度と酸またはアルカリ成分とを一
定にするために、水と酸またはアルカリを間欠的に添加
して電解液組成を一定に保つのが好ましい。添加する酸
またはアルカリの濃度は10〜98wt%が好ましい。
【0087】電解液等の濃度を制御するにあたり、使用
が予定されている濃度範囲の成分液毎の導電率、比重ま
たは超音波の伝搬速度を各温度毎に測定してデータテー
ブルを作成するのが好ましい。そして、被測定液の導電
率、比重または超音波の伝搬速度と温度データとを予め
作成したデータテーブルを参照して、濃度を測定するの
が好ましい。
【0088】超音波を利用して濃度を測定する場合、特
開平6−235721号公報に開示されている超音波の
伝搬時間を高精度・高安定に測定する方法等を利用する
ことができる。超音波の伝搬速度を利用した濃度測定シ
ステムについては特開昭58−77656号公報に開示
されている。複数の物理量データを液成分毎に相関を示
すデータテーブルを作成しておき、そのデータテーブル
を参照して多成分液の濃度測定する方法は特開平4−1
9559号公報に開示されている。
【0089】しかしながら、超音波の伝搬速度を用いた
濃度測定方法を被測定液の導電率と温度の値と組み合わ
せて、平版印刷版用支持体の粗面化処理工程に応用する
と、プロセス管理がリアルタイムで正確に行え、一定品
質を維持することができるようになり、得率アップにつ
ながる。また、温度と超音波の伝搬速度と導電率の組み
合わせだけでなく、温度と比重、温度と導電率、温度と
導電率と比重など、それぞれの物理量で濃度と温度毎に
データテーブルを作成しておき、そのデータテーブルを
参照して多成分液の濃度を測定する方法を平版印刷版用
支持体の粗面化処理工程に応用すると、前記と同様な効
果がある。
【0090】また、比重と温度を測定し、予め作成して
おいたデータテーブルを参照して被測定物のスラリー濃
度を求めることによって、スラリー濃度の測定も迅速か
つ正確に行えるようになり、これを平版印刷版用支持体
の粗面化処理工程に応用すると著しい効果が得られた。
【0091】また、超音波の伝搬速度測定は、液中の気
泡の影響を考慮して、下から上へ垂直方向に流れるよう
な配管中で行われることが好ましい。超音波の伝搬速度
測定は、配管内の圧力が1〜10kg/cm2の圧力範
囲で行うことが好ましい。
【0092】超音波の周波数は0.5〜3MHzが好ま
しい。比重、導電率、超音波の伝搬速度の測定に際し、
温度の影響を受けやすいので、所定の温度に保温され、
かつ、所定の温度±0.3℃の範囲に温度コントロール
された配管内で測定することが好ましい。導電率と比
重、導電率と超音波の伝搬速度は同一温度で測定するこ
とが好ましいので、同一の配管内または同一の配管フロ
ー内で測定することが好ましい。圧力変動は温度の変動
につながるので可能な限り低い方が好ましい。また測定
する配管内の流速分布もできるだけ少ない方が好まし
い。スラリーやゴミや気泡の影響を受けやすいので、フ
ィルターや脱気装置などを通した液を測定することが好
ましい。
【0093】巻き取り装置にて巻き取られたアルミニウ
ム合金板の平面性を矯正し、所定の長さにカットおよび
/または幅方向にスリットし、集積することが好まし
い。アルミニウム合金板と合紙を帯電して互いに吸着さ
せ、その後所定の長さにカットおよび/またはスリット
してもよい。
【0094】アルミニウム合金板のエッジ部分に貼られ
たラベルの情報をもとに、所定の長さに裁断する前後
で、そのラベルを目印として良品部分と欠陥部分を分別
し、良品部分のみを集積することが好ましい。
【0095】アルミニウム合金板の送り出し工程、粗面
化処理工程、陽極酸化処理工程、塗布工程、乾燥工程、
巻き取り工程、平面性矯正工程、裁断工程、巻き取り工
程、接合工程などの平版印刷版用支持体または平版印刷
版原版の製造工程、及び裁断、集積などの加工工程で
は、アルミニウム合金板のサイズ(厚さ、幅)、アルミ
ニウム合金板の材質、ウェブ状アルミニウム合金板の走
行速度によって、それぞれの条件で最適な張力を設定す
る必要がある。そこで、張力カットと走行速度制御を目
的とした駆動装置と、張力制御を目的としたダンサ−ロ
ールを利用し、張力感知装置からの信号をフィードバッ
ク制御する張力制御装置を複数設けることが好ましい。
駆動装置は、直流モーターと主駆動ローラとを組み合わ
せた制御方法を用いるのが一般的である。主駆動ローラ
の一般的材質としてはゴムを使用することができるが、
ウェブ状アルミニウム合金板が塗れている工程では不織
布を積層して作製したローラを使用するのが好ましい。
また、各パスローラはゴムまたは金属が一般的に用いら
れるが、アルミニウム合金板とスリップを起こしやすい
箇所ではスリップを防止するために、各パスローラにモ
ーターや減速機を接続し、主駆動装置からの信号によっ
て一定速度で回転制御するなどした補助的な駆動装置を
設けることもできる。
【0096】平版印刷版用支持体は、特開平10−11
4046号公報に記載があるように、圧延方向の平均表
面粗さ(R1)と圧延方向と垂直な方向の平均表面粗さ
(R2)との差(R1−R2)が、前記圧延方向の平均表
面粗さ(R1)の30%以内で、更に圧延方向の平均曲
率が1.5×10-3mm-1以内かつ幅方向の曲率分布が
1.5×10-3mm-1以内、圧延方向と垂直な方向の曲
率が1.0×10-3mm -1以内であることが好ましい。
粗面化処理、陽極酸化被膜処理を施し、塗布により感光
層が設けられたアルミニウム合金板をロール直径20m
m〜80mm、ゴム硬度50〜95度の矯正ロールを用
いて矯正することが好ましい。これにより平版感光印刷
機の自動搬送工程においても、平版印刷版の露光ズレが
起きないフラットなアルミニウムコイル状素板を供給す
ることができる。なお、本明細書において、「平均表面
粗さ」は、「算術平均粗さ」をいう。
【0097】特開平9−194093号公報には、ウエ
ブのカール測定方法および装置、カール修正方法および
装置、並びにウエブ切断装置が記載されている。
【0098】連続的に平版印刷版用支持体を製造するに
あたり、各工程が適切な条件で稼働しているかを電気的
に監視し、トラッキング装置にて各工程の状態が所望の
条件か否かを記録し、アルミニウム合金板からなるアル
ミニウムコイルが巻き取られる前に、アルミニウム合金
板のエッジ部にラベルを貼り、そのラベルよりも後が所
望の条件か否かを後から判別できるようにすることで、
裁断時、集積時にその部分の良否を判定することができ
る。
【0099】≪平版印刷版用支持体≫ <下塗層>本発明の製造法によって製造された平版印刷
版用支持体は、その表面に感光層を塗設する前に、必要
に応じて有機下塗層を設けてもよい。該有機下塗層に用
いられる有機化合物としては例えば、カルボキシメチル
セルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノ
エチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類
や、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチ
ルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン
酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸
等の有機ホスホン酸や、置換基を有してもよいフェニル
リン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセ
ロリン酸等の有機リン酸や、置換基を有してもよいフェ
ニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホ
スフィン酸およびグリセロホスフィン酸等の有機ホスフ
ィン酸や、グリシンやβ−アラニン等のアミノ酸類や、
トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシル基を有
するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、これらを二種以
上混合して用いてもよい。
【0100】上記有機下塗層は、例えば以下の方法で設
けることができる。 (a)水、またはメタノール、エタノール、メチルエチ
ルケトン等の有機溶剤、あるいはそれらの混合溶剤に上
記の有機化合物を溶解させた溶液を、本発明の平版印刷
版用支持体表面に塗布、乾燥して設ける方法や、(b)
水、またはメタノール、エタノール、メチルエチルケト
ンなどの有機溶剤、あるいはそれらの混合溶剤に上記の
有機化合物を溶解させた溶液に、平版印刷版用支持体を
浸漬して上記有機化合物を吸着させ、その後、水等によ
って洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法を用いて上
記有機下塗層を設けることができる。
【0101】上記(a)の方法では、0.005〜10
重量%の上記有機化合物溶液を種々の方法で塗布でき
る。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗
布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。
【0102】また、上記(b)の方法では、上記有機溶
媒溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.
05〜5重量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ま
しくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20
分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液
は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等
の塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によって
pHを調整し、pH1〜12の範囲内で使用することも
できる。また、感光性平版印刷版の調子再現性を改良す
るために黄色染料を添加することもできる。
【0103】また、上記有機下塗層の乾燥後の被覆量
は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5
〜100mg/m2である。上記被覆量が2mg/m2
満だと十分な耐刷性能が得られない場合がある。また、
200mg/m2を越えても同様である場合がある。
【0104】<バックコート層>本発明の製造方法によ
って得られた平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原
版の裏面(感光層が設けられていない側)には、該平版
印刷版原版を重ねた場合に感光層が傷付かないように、
有機高分子化合物からなる被覆層(以下、「バックコー
ト層」という場合がある。)を必要に応じて設けていて
もよい。
【0105】上記バックコート層の主成分としては、ガ
ラス転移点が20℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹
脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および
塩化ビニリデン共重合樹脂の群から選ばれる少なくとも
一種の樹脂を用いるのが好ましい。
【0106】上記飽和共重合ポリエステル樹脂は、ジカ
ルボン酸ユニットとジオールユニットとからなる。用い
られるポリエステルのジカルボン酸ユニットとしてはフ
タル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラブロムフ
タル酸、テトラクロルフタル酸などの芳香族ジカルボン
酸;アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、蓚酸、スベ
リン酸、セバチン酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサ
ンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙
げられる。
【0107】上記バックコート層には、さらに着色のた
めの染料や顔料、平版印刷版用支持体との密着性を向上
させるためにシランカップリング剤、ジアゾニウム塩か
らなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸および
カチオン性ポリマー等、さらには滑り剤として通常用い
られるワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメ
チルシロキサンからなるシリコーン化合物、変性ジメチ
ルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜加えてもよ
い。
【0108】上記バックコート層の厚さは基本的には合
紙がなくても、後述する感光層を傷付けにくい厚みがあ
ればよく、0.01〜8μmの範囲が好ましい。該厚さ
が0.01μm未満では平版印刷版を重ねて取り扱った
場合の感光層の擦れ傷を防ぐことが困難である。また、
上記厚さが8μmを越えると印刷中、平版印刷版原版周
辺で用いられる薬品によってバックコート層が膨潤して
厚みが変動し、印圧が変化して印刷特性を劣化させるこ
とがある。
【0109】上記バックコート層を平版印刷版用支持体
の裏面に被覆する方法としては、種々の方法が適用でき
る。例えば、上記バックコート層用成分を適当な溶媒に
溶解し溶液にして塗布し、または、乳化分散液して塗布
し、乾燥する方法や、予めフィルム状に成形したものを
接着剤や熱で平版印刷版用支持体に貼り合わせる方法
や、溶融押し出し機で溶融被膜を形成し、平版印刷版用
支持体に貼り合わせる方法等が挙げられるが、上記の塗
布量を確保する上で最も好ましいのは、上記バックコー
ト成分を適当な溶媒に溶解し溶液にして塗布、乾燥する
方法である。ここで使用される溶媒としては、特開昭6
2−251739号公報に記載されているような有機溶
剤を単独あるいは混合して用いることができる。
【0110】また、平版印刷版原版の製造に当たっては
裏面のバックコート層と表面の感光性組成物層のどちら
が先に平版印刷版用支持体表面に塗布されてもよく、ま
た両者が同時に塗布されてもよい。
【0111】≪平版印刷版原版≫本発明製造方法により
製造される平版印刷版用支持体には、以下に例示する感
光層を設けて平版印刷版原版とすることができる。この
平版印刷版原版に、露光および現像等を施し、画像が形
成され印刷に供し得る状態とされたものが平版印刷版と
なる。
【0112】<〔I〕o−ナフトキノンジアジドスルホ
ン酸エステルおよびフェノール・クレゾール混合のノボ
ラック樹脂を含有する感光層を設ける場合>平版印刷版
用支持体には、o−ナフトキノンジアジドスルホン酸エ
ステルおよびフェノール・クレゾール混合のノボラック
樹脂を含有する感光層を設けることができる。
【0113】上記o−キノンジアジド化合物はo−ナフ
トキノンジアジド化合物であり、例えば、米国特許第
2,766,118号明細書、同第2,767,092
号明細書、同第2,772,972号明細書、同第2,
859,112号明細書、同第3,102,809号明
細書、同第3,106,465号明細書、同第3,63
5,709号明細書、同第3,647,443号明細書
をはじめ、多数の刊行物に記載されており、これらは、
好適に使用することができる。
【0114】また、これらの中でも、特に芳香族ヒドロ
キシ化合物のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エス
テルまたはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸エステ
ル、および芳香族アミノ化合物のo−ナフトキノンジア
ジドスルホン酸アミドまたはo−ナフトキノンジアジド
カルボン酸アミドが好ましく、特に米国特許第3,63
5,709号明細書に記されているピロガロールとアセ
トンとの縮合物にo−ナフトキノンジアジドスルホン酸
をエステル反応させたものや、米国特許第4,028,
111号明細書に記されている末端にヒドロキシ基を有
するポリエステルにo−ナフトキノンジアジドスルホン
酸、またはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸をエス
テル反応させたものや、英国特許第1,494,043
号明細書に記されているようなp−ヒドロキシスチレン
のホモポリマーまたはこれと他の共重合し得るモノマー
との共重合体にo−ナフトキノンジアジドスルホン酸、
またはo−ナフトキノンジアジドカルボン酸をエステル
反応させたものや、米国特許第3,759,711号明
細書に記されているようなp−アミノスチレンと他の共
重合し得るモノマーとの共重合体にo−ナフトキノンジ
アジドスルホン酸、またはo−ナフトキノンジアジドカ
ルボン酸をアミド反応させたもの、は非常に優れてい
る。
【0115】上記o−キノンジアジド化合物は、単独で
使用することができるが、アルカリ可溶性樹脂と混合し
て用いた方が好ましい。好適なアルカリ可溶性樹脂に
は、ノボラック型フェノール樹脂が含まれ、具体的に
は、フェノールホルムアルデヒド樹脂、o−クレゾール
ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒ
ド樹脂等が含まれる。さらに米国特許第4,028,1
11号明細書に記されているように、上記フェノール樹
脂と共に、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂
のような炭素数3〜8のアルキル基で置換されたフェノ
ールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとの縮合物を
併用すると、より好ましい。
【0116】また、露光によって可視像を形成するた
め、例えば、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホニ
ルクロライド、p−ジアゾジフェニルアミンの無機アニ
オン塩、トリハロメチルオキサジアゾール化合物、また
はベンゾフラン環を有するトリハロメチルオキサジアゾ
ール化合物等の化合物等が添加される。
【0117】一方、上記感光層には画像の着色剤を用い
てもよい。該画像の着色剤としては、ビクトリアブル−
BOH、クリスタルバイオレット、オイルブルー、等の
トリフェニルメタン染料が用いられる。また、特開昭6
2−293247号公報に記載されている染料は特に好
ましい。さらに、感脂化剤として特公昭57−2325
3号公報に記載されているような炭素数3〜15のアル
キル基で置換されたフェノール、例えばt−ブチルフェ
ノール、n−オクチルフェノール、t−ブチルフェノー
ルとホルムアルデヒドとを縮合させたノボラック樹脂、
または、このようなノボラック樹脂のo−ナフトキノン
ジアジド−4−若しくは−5−スルホン酸エステル(例
えば、特開昭61−242446号公報に記載されてい
る)を含有させることができる。
【0118】また、現像性を良化させるためにさらに特
開昭62−251740号公報に記載されているような
非イオン界面活性剤を含有させることができる。以上の
組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶かして平版印
刷版用支持体上に塗布することができる。ここで使用す
る溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサ
ノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメ
チルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテ
ル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2
−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテー
ト、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、
ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、水、N
−メチルピロリドン、テトラヒドロフルフリルアルコー
ル、アセトン、ジアセトンアルコール、メタノール、エ
タノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールジ
メチルエーテル等が挙げられ、これらの溶媒を単独ある
いは混合して使用するのが好ましい。平版印刷版用支持
体上には、これらの成分からなる感光性組成物は、固形
分として0.5〜3.0g/m2として設けるのがよ
い。
【0119】<〔II〕ジアゾ樹脂と水不溶性かつ親油
性高分子化合物を含有する感光層を設ける場合>平版印
刷版用支持体には、ジアゾ樹脂と水不溶性かつ親油性高
分子化合物を含有する感光層を設けることもできる。
【0120】上記ジアゾ樹脂としては、例えばp−ジア
ゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドと、またはアセ
トアルデヒドの縮合物と、ヘキサフルオロリン酸塩と、
テトラフルオロホウ酸塩との有機溶媒可溶の反応生成物
であるジアゾ樹脂無機塩、また、米国特許第3,30
0,309号明細書に記載されているような、上記縮合
物とスルホン酸類例えばP−トルエンスルホン酸または
その塩、ホスフィン酸類例えばベンゼンホスフィン酸ま
たはその塩、ヒドロキシル基含有化合物例えば、2,4
−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−
メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸またはその塩
等との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂有機
酸塩等が挙げられる。好適に用いることができる他のジ
アゾ樹脂は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィ
ン酸基、リンの酸素酸基およびヒドロキシル基のうち少
なくとも一つの有機基を有する芳香族化合物と、ジアゾ
ニウム化合物、好ましくは芳香族ジアゾニウム化合物と
を構造単位として含む共縮合体である。そして上記の芳
香族環としては、好ましくはフェニル基、ナフチル基を
あげることができる。上述のカルボキシル基、スルホン
酸基、スルフィン酸基、リンの酸素酸基、およびヒドロ
キシル基のうち少なくとも一つを有する芳香族化合物と
しては種々のものが挙げられるが、好ましいのは、4−
メトキシ安息香酸、3−クロロ安息香酸、2,4−ジメ
トキシ安息香酸、p−フェノキシ安息香酸、4−アニリ
ノ安息香酸、フェノキシ酢酸、フェニル酢酸、p−ヒド
ロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ベン
ゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、1−ナフ
タレンスルホン酸、フェニルリン酸、フェニルホスホン
酸である。
【0121】上述の共縮合ジアゾ樹脂の構成単位をなす
芳香族ジアゾニウム化合物には、例えば特公昭49−4
8001号公報に挙げられているようなジアゾニウム塩
を用いることができるが、特に、ジフェニルアミン−4
−ジアゾニウム塩類が好ましい。ジフェニルアミン−4
−ジアゾニウム塩類は、4−アミノ−ジフェニルアミン
類から誘導されるが、このような4−アミン−ジフェニ
ルアミン類としては、4−アミノジフェニルアミン、4
−アミノ−3−メトキシジフェニルアミン、4−アミノ
−2−メトキシジフェニルアミン、4’−アミノ−2−
メトキシジフェニルアミン、4’−アミノ−4−メトキ
シジフェニルアミン、4−アミノ−3−メチルジフェニ
ルアミン、4−アミノ−3−エトキシジフェニルアミ
ン、4−アミノ−3−β−ヒドロキシエトキシジフェニ
ルアミン、4−アミノ−ジフェニルアミン−2−スルホ
ン酸、4−アミノ−ジフェニルアミン−2−カルボン
酸、4−アミノ−ジフェニルアミン−2’−カルボン酸
等が挙げられ、特に好ましくは、3−メトキシ−4−ア
ミノ−4−ジフェニルアミン、4−アミノジフェニルア
ミンである。
【0122】また、酸基を有する芳香族化合物との共縮
合ジアゾ樹脂以外のジアゾ樹脂としては、特開平4−1
8559号公報、特開平3−163551号公報、およ
び特開平3−253857号公報に記載された酸基を有
するアルデヒドまたはそのアセタール化合物で縮合した
ジアゾ樹脂も好ましく用いることができる。ジアゾ樹脂
の対アニオンとしては、ジアゾ樹脂と安定に塩を形成
し、かつ該樹脂を有機溶媒に可溶となすアニオンを含
む。
【0123】これらは、デカン酸および安息香酸等の有
機カルボン酸、フェニルリン酸等の有機リン酸およびス
ルホン酸を含み、典型的な例としては、メタンスルホン
酸、トルフルオロメタンスルホン酸等のフルオロアルカ
ンスルホン酸、ラウリルスルホン酸、ジオクチルスルホ
コハク酸、ジシクロヘキシルスルホコハク酸、カンファ
ースルホン酸、トリルオキシ−3−プロパンスルホン
酸、ノニルフェノキシ−3−プロパンスルホン酸、ノニ
ルフェノキシ−4−ブタンスルホン酸、ジブチルフェノ
キシ−3−プロパンスルホン酸、ジアミルフェノキシ−
3−プロパンスルホン酸、ジノニルフェノキシ−3−プ
ロパンスルホン酸、ジブチルフェノキシ−4−ブタンス
ルホン酸、ジノニルフェノキシ−4−ブタンスルホン
酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メシチ
レンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、2,
5−ジクロロベンゼンスルホン酸、スルホサルチル酸、
2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、p−アセチルベ
ンゼンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン
酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼ
ンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−ク
ロロ−5−ニトロベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼン
スルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、
【0124】デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベン
ゼンスルホン酸、ブトキシベンゼンスルホン酸、ドデシ
ルオキシベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メ
トキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、イソプロピル
ナフヘタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン
酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレ
ンスルホン酸、ブトキシナフタレンスルホン酸、ドデシ
ルオキシナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンス
ルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、トリイソ
プロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレン
スルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、ナフタ
リン−1−スルホン酸、ナフタリン−2−スルホン酸、
1,8−ジニトロ−ナフタレン−3,6−ジスルホン
酸、ジメチル−5−スルホイソフタレート等の脂肪族並
びに芳香族スルホン酸、2,2’,4,4’−テトラヒ
ドキシベンゾフェノン、1,2,3−トリヒドロシキシ
ベンゾフェノン、2,2’4−トリヒドロキシベンゾフ
ェノン等の水酸基含有芳香族化合物、ヘキサフルオロリ
ン酸、テトラフルオロホウ酸等のハロゲン化ルイス酸、
HClO4,HIO4等の過ハロゲン酸等が挙げられる
が、これに限られるものではない。これらの中で、特に
好ましいものは、ブチルナフタレンスルホン酸、ジブチ
ルナフタレンスルホン酸、ヘキサフルオロリン酸、2−
ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホ
ン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0125】ジアゾ樹脂としては、各単量体のモル比お
よび縮合条件を種々変えることによって、その分子量は
任意の値として得ることができるが、本発明の目的とす
る使途に有効に供するためには分子量が約400〜10
0,000のもの、好ましくは、約800〜8,000
のものが適当である。水不溶性かつ親油性高分子化合物
としては、下記(1)〜(15)に示すモノマーをその
構造単位とする通常1〜20万の分子量をもつ共重合体
が挙げられる。
【0126】(1)芳香族水酸基を有するアクリルアミ
ド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メ
タクリル酸エステル類およびヒドロキシスチレン類、例
えばN−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドま
たはN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミ
ド、o−,m−,p−ヒドロキシスチレン、o−,m
−,p−ヒドロキシフェニル−アクリレートまたはメタ
クリレートである。
【0127】(2)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エ
ステル類、およびメタクリル酸エステル類、例えば2−
ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエ
チルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレ
ートである。
【0128】(3)アクリル酸、メタクリル酸、無水マ
レイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸である。
【0129】(4)アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル
酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキ
シル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アク
リル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、
N−ジメチルアミノエチルアクリレート等の(置換)ア
ルキルアクリレートである。
【0130】(5)メチルメタクリレート、エチルメタ
クリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリ
レート、アミルメタクリレート、シクロヘキシルメタク
リレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタク
リレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等
の(置換)アルキルメタクリレートである。
【0131】(6)アクリルアミド、メタクリルアミ
ド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメ
タクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキ
シルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルア
ミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェ
ニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミ
ド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアク
リルアミドもしくはメタクリルアミド類である。
【0132】(7)エチルビニルエーテル、2−クロロ
エチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテ
ル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、
オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等の
ビニルエーテル類である。
【0133】(8)ビニルアセテート、ビニルクロロア
セテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニ
ルエステル類である。
【0134】(9)スチレン、α−メチルスチレン、ク
ロロメチルスチレン等のスチレン類である。
【0135】(10)メチルビニルケトン、エチルビニ
ルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケト
ン等のビニルケトン類である。
【0136】(11)エチレン、プロピレン、イソブチ
レン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類であ
る。
【0137】(12)N−ビニルピロリドン、N−ビニ
ルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリル等である。
【0138】(13)マレイミド、N−アクリロイルア
クリルアミド、N−アセケチルメタクルアミド、N−プ
ロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾ
イル)メタクリルアミド等の不飽和イミドである。
【0139】(14)N(o−アミノスルホニルフェニ
ル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフ
ェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノ)スルホ
ニルフェニルメタクリルアミド、N−(1−(3−アミ
ノスルホニル)ナフチル)メタクリルアミド、N−(2
−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミド等のメタ
クリル酸アミド類、および上記と同様の置換基を有する
アクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニ
ルフメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメ
タクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリ
レート、1−(3−アミノスルホニルナフチル)メタク
リレート等のメタクリル酸エステル類、および上記と同
様の置換基を有するアクリル酸エステル類などの不飽和
スルホンアミドである。
【0140】(15)N−(2−(メタクリロイルオキ
シ)−エチル)−2,3−ジメチルマレイミド、ビニル
シンナメート、などの、側鎖に、架橋性基を有する不飽
和モノマーである。さらに、上記モノマーと共重合し得
るモノマーを共重合させてもよい。
【0141】(16)米国特許第3,751,257号
明細書に記載されているフェノール樹脂および例えばポ
リビニルフォルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂
等のポリビニルアセタール樹脂である。
【0142】(17)ポリウレタンをアルカリ可溶化し
た特公昭54−19773号、特開昭57−90474
7号公報、特開昭60−182437号公報、特開昭6
2−58242号公報、特開昭62−123452号公
報、特開昭62−123453号公報、特開昭63−1
13450号公報、特開平2−146042号公報に記
載された高分子化合物である。
【0143】また上記共重合体には必要に応じて、ポリ
ビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド
樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、天然樹脂等を添
加してもよい。
【0144】感光層に用いる感光性組成物には、露光に
よる可視画像と現像後の可視画像を得ることを目的とし
てさらに色素を用いることができる。該色素としては、
例えば、ビクトリアピュアブル−BOH〔保土ヶ谷化学
社製〕、オイルブルー#603〔オリエント化学工業社
製〕、パテントピュアブルー〔住友三国化学社製〕、ク
リスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、エチル
バイオレット、メチルバイオレット、メチルグリーン、
エリスロシンB、ベイシックフクシン、マラカイトグリ
ーン、オイルレッド、m−クレゾールパープル、ローダ
ミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニル
イミナフトキノン、シアノ−p−ジエチルアミノフェニ
ルアセトアニリド等に代表されるトリフェニルメタン
系、ジフェニルメタン系、オキサジン系、キサンテン
系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系またはアント
ラキノン系の色素が有色から無色あるいは異なる有色の
色調へ変化する変色剤の例として挙げられる。
【0145】一方、無色から有色に変化する変色剤とし
ては、ロイコ色素および、例えばトリフェニルアミン、
ジフェニルアミン、o−クロロアニリン、1,2,3−
トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジ
フェニルメタン、p,p’−ビス−ジメチルアミノジフ
ェニルアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,
p’,p”−トリス−ジメチルアミノトリフェニルメタ
ン、p,p’−ビス−ジメチルアミノジフェニルメチル
イミン、p,p’,p’’−トリアミノ−o−メチルト
リフェニルメタン、p,p’−ビス−ジメチルアミノジ
フェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p’,
p’’−トリアミノトリフェニルメタンに代表される第
1級または第2級アリールアミン系色素が挙げられる。
特に好ましくは、トリフェニルメタン系、ジフェニルメ
タン系色素が有効に用いられ、さらに好ましくはトリフ
ェニルメタン系色素であり、特にビクトリアピュアブル
ーBOHである。
【0146】感光層に用いる感光性組成物には、さらに
種々の添加物を加えることができる。例えば、塗布性を
改良するためのアルキルエーテル類(例えばエチルセル
ロース、メチルセルロース)、フッ素系界面活性剤類
や、ノニオン系界面活性剤(特にフッ素系界面活性剤が
好ましい)、塗膜の柔軟性、耐摩耗性を付与するための
可塑剤(例えばブチルフタリル、ポリエチレングリコー
ル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタン酸
ジブチル、フタン酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、
リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオ
クチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル
酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー、こ
の中で特にリン酸トリクレジルが好ましい)、画像部の
感脂性を向上させるための感脂化剤(例えば特開昭55
−527号公報に記載のスチレン−無水マレイン酸共重
合体のアルコールによるハーフエステル化物、p−t−
ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂などのノボラ
ック樹脂、p−ヒドロキシスチレンの50%脂肪酸エス
テル等)、安定剤{例えば、リン酸、亜リン酸、有機酸
(クエン酸、シュウ酸、ジピコリン酸、ベンゼンスルホ
ン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸、4−
メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン−5−スルホ
ン酸、酒石酸等)}、現像促進剤(例えば高級アルコー
ル、酸無水物等)等が好ましく用いられる。
【0147】上述の感光性組成物を含む感光層を平版印
刷版用支持体上に設けるには、感光性ジアゾ樹脂、親油
性高分子化合物、および必要に応じて種々の添加剤の所
定量を適当な溶媒(例えば、メチルセロソルブ、エチル
セロソルブ、ジメトキシエタン、ジエチレングリコール
モノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエ
ーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルセロ
ソルブアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メ
タノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラ
ン、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレンジクロライド、
ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合物等)中
に溶解させ感光性組成物の塗布液を調製し、これを支持
体上に塗布、乾燥すればよい。用いられる溶媒は単独で
もよいが、メチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロ
パノール、乳酸メチル等の高沸点溶媒と、メタノール、
メチルエチルケトン等の低沸点溶媒との混合物とすると
さらに好ましい。
【0148】平版印刷版用支持体に感光性組成物を塗布
する際の該感光性組成物の固形分濃度は1〜50重量%
の範囲内とすることが好ましい。この場合、感光性組成
物の塗布量は、おおむね、0.2〜10g/m2(乾燥
質量)程度とすればよく、さらに好ましくは、0.5〜
3g/m2とするとよい。
【0149】<ネガ型赤外線レーザー記録材料>本発明
の製造方法により得られる平版印刷版用支持体から赤外
線レーザーに露光可能なネガ型の平版印刷版原版とする
場合には、有用な赤外線レーザー用ネガ型感光材料によ
って感光層を設けるのがよい。該赤外線レーザー用ネガ
型感光材料としては、(A)光または熱によって分解し
て酸を発生する化合物、(B)酸によって架橋する架橋
剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)赤外線吸収剤、
(E)一般式(R1−X)n−Ar−(OH)mで表され
る化合物{R1:炭素数6〜32のアルキル基またはア
ルケニル基、X:単結合、O,S,COO,またはCO
NH、Ar:芳香族炭化水素基,脂肪式炭化水素基,ま
たは複素環基、n=1〜3、m=1〜3}からなる組成
物が有用である。
【0150】上記ネガ型の平版印刷版原版は、現像後に
指紋が付きやすく、画像部の強度が弱いという欠点があ
るが、かかる欠点は上記構成成分によって感光層を形成
することで解消される。以下に、このネガ型の平版印刷
版版の構成成分について詳述する。
【0151】上記(A)光または熱によって分解して酸
を発生する化合物としては、特願平3−140109号
明細書に記載されているイミノスルフォネート等に代表
される、光分解してスルホン酸を発生する化合物が挙げ
られ、200〜500nmの波長の照射、または100
℃以上の加熱によって酸を発生する化合物が挙げられ
る。好適な酸発生剤としては、光カチオン重合開始剤、
光ラジカル重合の開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤
等を用いることができる。これらの酸発生剤は、画像記
録材料全固形分に対して0.01〜50重量%添加され
るのが好ましい。
【0152】上記(B)酸によって架橋する架橋剤とし
ては、(i)アルコキシメチル基若しくはヒドロキシル
基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシ
メチル基、N−アルコキシメチル基、若しくはN−アシ
ルオキシメチル基を有する化合物、(iii)エポキシ
化合物が好ましい。
【0153】上記(C)アルカリ可溶性樹脂としては、
ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有する
ポリマーが挙げられる。
【0154】上記(D)赤外線吸収剤からなる組成物と
しては、760〜1200nmの赤外線を有効に吸収す
るアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料
等の市販染料またはカラーインデックスに記載されてい
る黒色顔料、赤色顔料、金属粉顔料、フタロシアニン系
顔料が挙げられる。また、画像の見やすさを向上させる
ためにオイルイエロー、オイルブルー#603等の画像
着色剤を添加することが好ましい。また、塗膜の柔軟性
改善のため、ポリエチレングリコールやフタル酸エステ
ルのような可塑剤を添加することができる。
【0155】〔ポジ型赤外線レーザー記録材料〕平版印
刷版原版を赤外線レーザーに露光可能なポジ型平版印刷
版原版とする場合には、有用な赤外線レーザー用ポジ型
感光材料によって感光層を設けるのがよい。該赤外線レ
ーザー用ポジ型感光材料としては、(A)アルカリ可溶
性高分子と(B)該アルカリ可溶性高分子と相溶してア
ルカリ溶解性を低下させる化合物、(C)赤外レーザー
を吸収する化合物からなる赤外線レーザー用ポジ型感光
材料が有用である。上記赤外線レーザー用ポジ型感光材
料使用することで、非画像部のアルカリ現像液に対する
溶解性不足を解消でき、また、傷つき難くくかつ、画像
部の耐アルカリ現像適性に優れ、現像安定性のよい平版
印刷版とすることができる。
【0156】上記(A)アルカリ可溶性高分子として
は、(i)フェノール樹脂、クレゾール樹脂、ノボラッ
ク樹脂やピロガロール樹脂なので代表されるフェノール
性水酸基を有する高分子化合物、(ii)スルホンアミ
ド基を有する重合モノマーを単独または他の重合性モノ
マーと共重合させて得られた化合物、(iii)N―
(p―トルエンスルホニル)メタクリルアミドやN―
(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等に代表さ
れる活性イミド基を分子内に有する化合物等が好まし
い。
【0157】上記(B)成分としては、スルホン化合
物、アンモニウム塩、スルホニウム塩、アミド化合物等
の上記(A)成分と相互作用する化合物が挙げられる。
例えば上記(A)成分がノボラック樹脂の場合には、
(B)成分としてシアニン色素が好適である。
【0158】上記(C)成分としては、750〜120
0nmの赤外域に吸収域があり、光/熱変換能を有する
材料が好ましい。このような機能を有するものとして
は、スクワリリウム色素、ピリリウム塩色素、カーボン
ブラック、不溶性アゾ染料、アントラキノン系染料など
が挙げられる。これら顔料は0.01μm〜10μmの
範囲の大きさが好ましく、染料を添加し、メタノール、
メチルエチルケトン等を有機溶媒としてそれらを溶解
し、アルミニウム合金板上に乾燥後の質量が1〜3g/
2となるように塗布、乾燥して設けられる。
【0159】〔光重合系ホトポリマー型レーザー記録材
料〕赤外線レーザーに露光可能なネガ型平版印刷版を製
造する場合には、さらに有用なレーザー露光可能な感光
層用材料として、光重合系ホトポリマー感光材料が挙げ
られる。
【0160】上記光重合系ホトポリマー感光材料を使用
する場合、上記感光層を塗布する前に、平版印刷版用支
持体と感光層との密着力を向上させることを目的に、平
版印刷版用支持体上に特開平3−56177号公報、特
開平8−320551号公報に記載の応性官能基を有す
るシリコーン化合物を含む接着層を設けることが好まし
い。即ち、メタノール、エタノール等の溶媒中にエチレ
ンテトラメトキシシランやエチレンテトラエトキシシラ
ン等のシラン化合物を1〜20重量%の割合で溶解し、
塩酸、硝酸、燐酸、スルホン酸等の酸触媒のもとで加水
分解させる。そして、−Si−O−Si−結合を形成さ
せてゾル化させ、これを平版印刷版用支持体上に接着層
として設けることができる。
【0161】その際、上記シラン化合物をメタノール等
の適当な溶媒に溶解することで、粘度を0.2mPa・
s(0.2センチポイズ)〜2000mPa・s(20
ポイズ)の範囲内に調整し、乾燥後の塗布質量を1〜1
00mg/m2とするのがよい。
【0162】上記接着層表面に光重合系ホトポリマー感
光材料である付加重合性不飽和結合を有する重合可能な
化合物(末端エチレン性光重合性基を有する化合物)を
有する感光層を設けることができる。該感光層には、光
重合開始剤、有機高分子結合剤、着色剤、可塑剤、熱重
合禁止剤等を含まれてもよい。
【0163】上記末端エチレン性不飽和結合を有する化
合物としては、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコー
ル化合物とのエステル(アクリル酸エステル、メタクリ
ル酸エステル、イタコン酸エステル、マレイン酸エステ
ル等)、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物と
のアミド(メチレンビスアクリルアミド、キシリレンビ
スアクリルアミド等)等が挙げられる。
【0164】上記光重合開始剤にはチタノセン化合物、
トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイミダゾール
系の増感剤を使用できる。また、シアニン色素、メロシ
アニン色素、キサンテン色素、クマリン色素などの増感
剤を使用してもよい。このような組成の感光性組成物を
平版印刷版用支持体表面に乾燥後の塗設量が1〜3g/
2の感光層を設けることで、赤外線レーザー露光可能
なネガ型の平版印刷版を作製できる。
【0165】〔光架橋系ホトポリマー型レーザー記録材
料〕また、上記感光層用材料には光架橋系ホトポリマー
を用いてもよい。上記光架橋系ホトポリマーとしては、
例えば、特開昭52−96696号公報に開示されてい
るポリエステル化合物、英国特許1,112,277号
明細書等に記載のポリビニルシンナメート系樹脂が好ま
しく、マレイミド基を側鎖に有する特開昭62−785
44号公報に記載のものがさらに好ましい。
【0166】〔スルホネート型赤外線レーザー記録材
料〕さらに,上記感光層用材料として、スルホネート型
赤外線レーザー記録材料を用いてもよい。
【0167】上記スルホネート型赤外線レーザー記録材
料としては、例えば、特登録270480号公報、特登
録2704872号公報等に開示されているスルホネー
ト化合物を用いることができる。また、赤外線レーザー
照射によって発生した熱によってスルホン酸を発生し、
水に可溶化する感光材料や、スチレンスルホン酸エステ
ルをゾルゲルで固め、その後赤外線レーザーを照射する
ことで表面極性が変化する感光材料や、特願平9−89
816号明細書、特願平10−22406号明細書、特
願平10−027655号明細書に記載されているレー
ザー露光によって疎水性表面が親水性に変化する感光材
料等を用いることができる。また、以上の熱によってス
ルホン酸基を発生し得る高分子化合物からなる感光層の
特性をさらに改善するためには、つぎに挙げる方法を併
用するのが好ましい。かかる方法としては、(1)特願
平10−7062号明細書に記載された酸もしくは塩基
発生剤との併用による方法、(2)特願平9−3403
58号明細書に記載された特定の中間層を設ける方法、
(3)特願平9−248994号明細書に記載された特
定の架橋剤を併用する方法、(4)特願平10−439
21号明細書に記載された特定の層構造を形成する方
法、(5)特願平10−115354号明細書に記載さ
れた固体粒子表面修飾の様態で使用する方法等を挙げる
ことができる。
【0168】レーザー露光によって発生する熱を利用し
て感光層の親/疎水性を変化させる組成物の他の例とし
ては例えば、US2764085号明細書に記載のWe
rner錯体からなる熱によって疎水性に変化する組成
物や、特公昭46−27219号公報に記載の特定の糖
類や、メラミンホルムアルデヒド樹脂等の露光によって
親水性に変化する組成物や、特開昭51−63704号
公報に記載のヒートモード露光によって疎水性に変化す
る組成物や、US4081572号明細書に記載のフタ
リルヒドラジドポリマーのように熱によって脱水/疎水
化するポリマーからなる組成物や、特公平3−5810
0号公報に記載のテトラゾリウム塩構造を有し熱によっ
て親水化する組成物や、特開昭60−132760号公
報に記載のスルホン酸変性ポリマーからなる露光によっ
て疎水化する組成物や、特開昭64−3543号公報に
記載のイミド前駆体ポリマーからなる露光によって疎水
化する組成物や、特開昭51−74706号公報に記載
のフッ化炭素ポリマーからなる露光によって親水化する
組成物を挙げることができる。
【0169】さらに、特開平3−197190号公報に
記載の疎水性結晶性ポリマーからなる露光によって親水
性に変化する組成物や、特開平7−186562号公報
に記載の熱によって不溶化された側基が親水性に変化す
るポリマーと光熱変換剤からなる組成物や、特開平7−
1849号公報に記載のマイクロカプセルを含有する三
次元架橋された親水性バインダーからなり露光によって
疎水化する組成物や、特開平8−3463号公報に記載
の原子価異性化またはプロトン移動異性化する組成物
や、特開平8−141819号公報に記載の熱によって
層内の相構造変化(相溶化)を生じ、親/疎水性を変化
させる組成物や、特公昭60−228号公報に記載の熱
によって表面の形態、表面の親/疎水性が変化する組成
物をあげる事ができる。
【0170】好ましい上記感光層用材料の他の例とし
て、高パワーおよび高密度のレーザ光によって発生した
熱を利用する、いわゆるヒートモード露光によって、感
光層/支持体間の接着性を変化させる組成物をあげるこ
とができる。具体的には、特公昭44−22957号公
報に記載の熱融着性または熱反応性物質からなる組成物
を用いることができる。
【0171】〔電子写真感光性樹脂系レーザー記録材
料〕また、本発明の平版印刷版原版の感光層として、例
えば、米国特許第3,001,872号明細書に開示さ
ているZnO感光層を設けてもよく、特開昭56−16
1550号公報、特開昭60−186847号公報、特
開昭61−238063号公報等の各公報に記載されて
いる電子写真感光性樹脂を用いた感光層を設けてもよ
い。平版印刷版用支持体上に設けられる感光層の塗布量
としては、塗布後の乾燥質量で、約0.1〜約7g/m
2、好ましくは0.5〜4g/m2が好ましい。
【0172】電子写真法は、特公昭37−17162号
公報にその基本特許が開示されており、それ以外に特開
昭56−107246号公報、特公昭59−36259
号公報等の各公報に開示されている方法を用いることが
できる。上記電子写真感光性樹脂は、主として、光導電
性化合物とバインダーとからなるが、感度向上、所望の
感光波長を得る目的のため、公知の顔料、染料、化学増
感剤、その他必要の添加剤を使用することができる。
【0173】本発明における平版印刷版原版には、平版
印刷版用支持体と感光層との密着性を高めるためや、現
像後に感光層の残存しないようにするため、またはハレ
ーションを防止する等の目的で、必要に応じて中間層を
設けてもよい。上記密着性を向上させるためには、一般
に中間層には、ジアゾ樹脂や、例えばアルミニウムに吸
着するリン酸化合物、アミノ化合物、カルボン酸化合物
等を用いるのが好ましい。また、現像後に感光層が残存
しないようにするには、溶解性の高い物質を用いて中間
層を設けるのが好ましく、溶解性の良好なポリマーや、
水溶性ポリマーを用いるのが好ましい。さらにハレーシ
ョンを防止するためには、上記中間層に染料やUV吸収
剤を含めるのが好ましい。
【0174】上記中間層の厚さは任意であり、露光した
時に、上層の感光層と均一な結合形成反応をする厚みで
なければならない。通常、乾燥固体で約1〜100mg
/m 2の塗布割合が好ましく、5〜40mg/m2がさら
に好ましい。
【0175】また、塗布された感光層上には相互に独立
して設けられた突起物によって構成されるマット層を設
けてもよい。該マット層を設ける目的は、密着露光にお
けるネガ画像フィルムと感光性平版印刷版との真空密着
性を改良することで、真空引き時間を短縮し、さらに密
着不良による露光時の微小網点のつぶれを防止すること
である。
【0176】上記マット層の塗布方法としては、特開昭
55−12974号公報に記載されているパウダリング
された固体粉末を熱融着する方法や、特開昭58−18
2636号公報に記載されているポリマー含有水をスプ
レーし乾燥させる方法等があり適宜選択できるが、マッ
ト層自体が実質的に有機溶剤を含まない水性アルカリ現
像液に溶解するか、あるいはこれによって除去可能なも
のが好ましい。
【0177】以上のように、本発明の平版印刷版原版
は、画像露光された後、常法によって現像を含む処理を
施され、樹脂画像が形成されて平版印刷版となる。例え
ば、上記〔I〕の感光層を有する感光性平版印刷版原版
の場合は、画像露光後、米国特許第4,259,434
号明細書に記載されているようなアルカリ水溶液で現像
することにより露光部分が除去されて、平版印刷版が得
られ、上記〔II〕の感光層を有する平版印刷版原版の
場合には、画像露光後、米国特許第4,186,006
号明細書に記載されているような現像液で、未露光部の
感光層が現像によって除去されて平版印刷版が得られ
る。また、特開昭59−84241号公報、特開昭57
−192952号公報、および特開昭62−24263
号公報の各公報に記載されているようなポジ型平版印刷
版原版を現像する際に用いられる水性アルカリ現像液組
成物を使用することもできる。
【0178】
【実施例】本発明を以下の実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0179】(実施例1)JIS1050−H18アル
ミニウム合金板の表面をバフ研磨処理して鏡面処理した
後、室温のHF10%液で45秒間エッチング処理し、
光学式顕微鏡で偏向フィルタを用いて、倍率を15倍と
して撮影したところ、長さ500μm以上、幅50μm
以上のアルミニウム結晶粒を30mm2の面積に10個
以上確認することができた。
【0180】また、JIS1050−H18アルミニウ
ム合金板に、(1)NaOH溶液中でアルミニウム合金
板を2g/m2溶解した後水洗し、(2)35℃の硝酸
溶液(硝酸電解処理工程から出された廃液を用いた)
で、5秒間デスマット処理し、(3)50℃の硝酸溶液
(硝酸10g/リットル水溶液に硝酸アルミニウムを添
加してアルミニウムイオンを5g/リットルとし、硝酸
アンモニウムを添加してアンモニウムイオンを80pp
mとした)中で、電流密度50A/dm2、周波数60
Hzの台形波でアルミニウム合金板の陽極時の電気量の
総和が130C/dm2となるようにして電気化学的粗
面化処理を行った。アルミニウム合金板表面に露出して
いるCu偏在部を走査型電子顕微鏡で観察し、Cuの存
在率を求めたところ、20mm2/m2であった。
【0181】前記特性を持つアルミニウム合金板に、以
下の各処理を施して、平版印刷版用支持体を製造した。 (1.第一のエッチング処理工程) アルカリエッチング処理:前記アルミニウム合金板
に、苛性ソーダ(NaOH)を27wt%、アルミニウ
ムイオンを6.5wt%含有する70℃のアルカリ溶液
を、スプレー方式により吹き付けてアルカリ処理を行っ
た。後工程の電気化学的粗面化処理される面のアルミニ
ウム合金板の溶解量は8g/m2であり、その裏面のア
ルミニウム合金板の溶解量は2g/m2であった。アル
カリ溶液の濃度は予めNaOH濃度とアルミニウムイオ
ン濃度と温度と比重と液の導電率との関係より作成した
データテーブルを参照し、温度と比重と導電率とにより
アルカリ溶液濃度を求め、フィードバック制御により水
と48wt%NaOH水溶液を添加して、アルカリ溶液
の濃度を一定に保った。
【0182】デスマット処理:水洗処理後、35℃の
塩酸溶液をスプレー方式によりアルミニウム合金板に吹
き付けて、10秒間、デスマット処理を行った。用いた
酸性溶液は、次工程の塩酸電解処理工程における循環タ
ンクからのオーバーフロー廃液を用いた。そして、次の
工程までアルミニウム合金表面が乾かない数だけ数カ所
(4ヶ所)にデスマット処理液をスプレーするスプレー
管を設置した。
【0183】(2.塩酸電解処理工程)図1の交流電圧
と、図2に示す装置を一槽用いて、塩酸を主体とする溶
液中で連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このと
きの電解液は、塩酸1wt%水溶液(アルミニウムイオ
ン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%
含む)、液温50℃であった。交流電源波形は電流値が
ゼロからピークに達するまでの時間tpおよびtp’が
1msec、台形の交流を用いて、カーボン電極を対極
として電気化学的な粗面化処理を行った。交流のピーク
時の電流密度はアルミニウム合金板が陽極時、陰極時と
もに50A/dm2であった。交流のdutyは0.
5、周波数は60Hzであった。
【0184】アルミニウム合金板の陽極時の電気量の総
和を50C/dm2としたものを実施例1−1、100
C/dm2をしたものを実施例1−2、200C/dm2
としたものを実施例1−3とし、その後、それぞれにつ
いて、スプレーによる水洗を行った。上記3種のアルミ
ニウム合金板について、以下に示す処理を行った。
【0185】なお、塩酸水溶液の濃度コントロールは、
35wt%の塩酸原液と水とを、通電量に比例して添加
し、塩酸と水の添加容積と同量の酸性電解液を逐次循環
タンクからオーバーフローさせて循環タンク系外に排出
するとともに、予め塩酸濃度とアルミニウムイオン濃度
と温度と液の導電率と液の超音波伝搬速度との関係より
作成したデータテーブルを参照し、温度と導電率と超音
波伝搬速度により、塩酸水溶液の濃度を求め、塩酸原液
と水の添加量を逐次調整する制御を行って濃度を一定に
保った。循環タンクからはオーバーフローにより液を系
外に排出した。
【0186】(3.第二のエッチング処理工程) アルカリエッチング処理:アルミニウム合金板に、N
aOHを27wt%、アルミニウムイオンを6.5wt
%含有する45℃のアルカリ溶液をスプレー方式にて吹
き付けてアルカリ処理を行った。アルミニウム合金板の
溶解量は0.5g/m2であった。アルカリ溶液の濃度
は、第一のエッチング処理工程におけるアルカリ処理と
同様にして、一定に保った。
【0187】デスマット処理:水洗処理後、35℃の
硝酸溶液をスプレー方式によりアルミニウム合金板に吹
き付けて、10秒間、デスマット処理を行った。用いた
酸性溶液は、次工程の硝酸電解処理工程における循環タ
ンクからのオーバーフロー廃液を用いた。そして、次の
工程までアルミニウム表面が乾かない数だけ数カ所にデ
スマット処理液をスプレーするスプレー管を設置した。
【0188】(4.硝酸電解処理工程)図1の交流電圧
と、図2に示す装置を二槽用いて、連続的に硝酸を主体
とする溶液中で電気化学的な粗面化処理を行った。この
ときの電解液は、硝酸1wt%水溶液(アルミニウムイ
オン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt
%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は電流値
がゼロからピークに達するまでの時間tpおよびtp’
が1msec、台形の交流を用いて、カーボン電極を対
極として電気化学的な粗面化処理を行った。交流のピー
ク時の電流密度はアルミニウム合金板が陽極時、陰極時
ともに50A/dm2であった。交流のduty0.
5、周波数は60Hz、アルミニウム合金板の陽極時の
電気量の総和は210C/dm2であった。その後、ス
プレーによる水洗を行った。
【0189】なお、硝酸水溶液の濃度コントロールは、
67wt%の硝酸原液と水とを、通電量に比例して添加
し、硝酸と水の添加容積と同量の酸性電解液を逐次循環
タンクからオーバーフローさせて循環タンク系外に排出
するとともに、予め硝酸濃度とアルミニウムイオン濃度
と温度と液の導電率と液の超音波伝搬速度との関係より
作成したデータテーブルを参照し、温度と導電率と超音
波伝搬速度により硝酸水溶液の濃度を求め、硝酸原液と
水の添加量を逐次調整する制御を行って濃度を一定に保
った。循環タンクからはオーバーフローにより液を系外
に排出した。
【0190】(5.第三のエッチング処理工程) アルカリエッチング処理:アルミニウム合金板に、N
aOHを26wt%、アルミニウムイオンを6.5wt
%含有する45℃のアルカリ溶液をスプレー方式にて吹
き付けてアルカリ処理を行った。アルミニウム合金板の
溶解量は0.5g/m2であった。アルカリ溶液の濃度
は、第一のエッチング処理工程におけるアルカリ処理と
同様にして、一定に保った。
【0191】酸性エッチング処理:水洗処理後、アル
ミニウムイオンを5g/リットル含有する、80℃、4
00g/リットルの硫酸(酸性エッチング液)をスプレ
ー方式によりアルミニウム合金板に吹き付けて、酸性エ
ッチング処理を行った。硫酸濃度とアルミニウムイオン
濃度と温度と比重と液の導電率の関係より作成したデー
タテーブルを参照し、温度と比重と導電率により酸性エ
ッチング液濃度を求め、フィードバック制御により水と
硫酸50wt%液を添加して酸性エッチング液濃度を一
定に保った。
【0192】(6.陽極酸化処理)酸性エッチング処理
後のアルミニウム合金板を水洗し、液温35℃で15w
t%の硫酸(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)
を電解液とし、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2
で、陽極酸化被膜量が2.4g/m2になるように陽極
酸化処理を行った。電解液の濃度は予め硫酸濃度とアル
ミニウムイオン濃度と温度と比重と液の導電率の関係よ
り作成したデータテーブルを参照し、温度と比重と導電
率により液濃度を求め、フィードバック制御により水と
硫酸50wt%液を添加して、電解液濃度を一定に保っ
た。その後、スプレーによる水洗を行って、平版印刷版
用支持体(実施例1−1、1−2、1−3)を得た。
【0193】これらの平版印刷版用支持体の表面を観察
すると、Cuの偏析による外観故障はなかった。また、
アルミ結晶粒の大きさに起因するストリークとよぶスジ
状の処理ムラの発生もなかった。
【0194】これらの平版印刷版用支持体を乾燥し、粗
面化された表面に下塗層および乾燥膜厚2.0g/m2
の感光層を塗布、乾燥して、ポジ型平版印刷版原版を作
製した。これらの平版印刷版原版に露光、現像等の処理
を行って平版印刷版とした。
【0195】この平版印刷版の非画像部の表面をSEM
(走査型電子顕微鏡)で観察したところ、実施例1−
1、1−2、1−3はいずれも均一な表面形状をしてお
り、良好な印刷版であった。
【0196】(実施例2)実施例1の第一のエッチング
処理工程におけるアルカリ処理を行う前に、下記の機械
的粗面化処理を行った以外は実施例1と全く同様に平版
印刷版用支持体を製造した。なお、塩酸電解処理工程に
おけるアルミニウム合金板の電気量の総和は、50C/
dm2とした。
【0197】機械的粗面化処理工程:比重1.12の珪
砂(平均粒径25μm)と水の懸濁液を研磨スラリー液
として、スプレー管にてアルミニウム合金板の表面に供
給しながら、回転式ローラー状ナイロンブラシにより機
械的粗面化処理を行った。ナイロンブラシの材質は6・
10ナイロンで、毛長は50mm、毛の直径は0.48
mmであった。ナイロンブラシは、φ300mmのステ
ンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛されたも
のである。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2
本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmで
あった。
【0198】ブラシローラはブラシを回転させる駆動モ
ータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム合金板に押
さえつける前の負荷に対して管理し、粗面化後のアルミ
ニウム合金板の平均表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が
0.45μmになるように押さえつけた。ブラシの回転
方向はアルミニウム合金板の移動方向と同じであった。
その後、水洗した。研磨材の濃度は、予め研磨材濃度と
温度と比重の関係より作成したデータテーブルを参照
し、温度と比重により研磨材濃度を求め、フィードバッ
ク制御により水と研磨材を添加して研磨材濃度を一定に
保った。研磨材は粉砕して粒度が小さくなり、粗面化さ
れたアルミニウム合金板の表面形状が変化するので、サ
イクロンにより粒度の小さな研磨材は系外に逐次排出し
た。研磨材の粒径は1〜35μmの範囲にあった。
【0199】得られた平版印刷版用支持体に、実施例1
と同様の下塗層および感光層を設けて平版印刷版原版を
作製し、この平版印刷版原版に露光、現像等の処理を行
って平版印刷版とした。これを用いて、実施例1と同一
の条件で評価したところ、良好な印刷版であった。
【0200】(実施例3)実施例1(塩酸電解処理工程
におけるアルミニウム合金板の電気量の総和を50C/
dm2としたもの(実施例1−1))において、陽極酸
化処理の後に得られた平版印刷版用支持体に、さらに沸
騰した蒸留水に浸漬して封孔処理を行った。その後、親
水化処理する目的で、珪酸ナトリウムを2.5質量%、
液温70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレー
で水洗し、乾燥し、平版印刷版用支持体を作製した。上
記親水化処理で用いた液の濃度は、予め珪酸ナトリウム
濃度と温度と液の導電率との関係から作成したデータテ
ーブルを参照して、温度および導電率によって液濃度を
求め、フィードバック制御によって水と3号珪酸ナトリ
ウム原液を添加して一定に保った。
【0201】上記のようにして作製された平版印刷版用
支持体に、下塗層とネガ型感光層とを塗布、乾燥して、
ポジ型平版印刷版原版を作製した。この平版印刷版原版
に露光、現像等の処理を行って平版印刷版とした。これ
を用いて実施例1と同一の条件で評価したところ、良好
な印刷版であった。
【0202】(実施例4)実施例1(塩酸電解処理工程
におけるアルミニウム合金板の電気量の総和を50C/
dm2としたもの(実施例1−1))において、陽極酸
化処理の後に得られた平版印刷版用支持体に、さらに親
水化処理を行う目的で、珪酸ナトリウム2.5wt%、
70℃の水溶液に5秒間浸漬し、その後スプレーで水洗
し、乾燥し、その後露光、現像して、平版印刷版用支持
体を作製した。上記平版印刷版用支持体に下塗層とネガ
型感光層とを塗布、乾燥してネガ型平版印刷版を作製し
た。この平版印刷版原版に露光、現像等の処理を行って
ネガ型平版印刷版とした。これを用いて実施例1と同一
の条件で評価したところ、良好な印刷版であった。
【0203】(実施例5)実施例1(塩酸電解処理工程
におけるアルミニウム合金板の電気量の総和を50C/
dm2としたもの(実施例1−1))において、陽極酸
化処理の後に得られた平版印刷版用支持体に、さらに親
水化処理を行う目的で、ポリビニルホスホン酸1.5w
t%、液温70℃の水溶液に5秒間浸漬し、その後スプ
レーで水洗し、乾燥して平版印刷版用支持体を作製し
た。上記親水化処理で用いる液の濃度は、予めポリビニ
ルホスホン酸の濃度と温度と液の導電率との関係から作
成したデータテーブルを参照して、温度および導電率か
ら液濃度を求め、フィードバック制御によって水とポリ
ビニルホスホン酸原液を添加して一定に保った。
【0204】上記平版印刷版用支持体に下塗層とネガ型
感光層とを塗布、乾燥して、ネガ型平版印刷版原版を作
製した。この平版印刷版原版に露光、現像等の処理を行
なって平版印刷版とした。これを用いて実施例1と同一
の条件で評価したところ、良好な印刷版であった。
【0205】(比較例1)実施例1のエッチング処理工
程におけるデスマット処理と、塩酸電解処理工程、エッ
チング処理工程におけるアルカリ処理を省略した以外
は、実施例1と同様に平版印刷版を作製した。これを用
いて実施例1と同一の条件で評価したところ、平版印刷
版の表面には、Cuの偏析による外観故障が発生してお
り、また、アルミ結晶粒の大きさに起因するストリーク
とよぶスジ状の処理ムラも発生していた。
【0206】
【発明の効果】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法
によれば、Cuの偏析やアルミ結晶粒の大きさに起因す
る処理ムラが発生しやすいアルミニウム合金板を原材料
としても、均一な粗面化を行うことが可能となり、ま
た、陽極酸化被膜の欠陥が起因する印刷時の汚れ易さを
改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法で好
ましく用いられる交流電流の台形波の説明図である。
【図2】 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法で用
いられるラジアル型電解槽の例を示す該略図である。
【符号の説明】
10・・・主電解槽 11・・・交流電源 12・・・ラジアルドラムローラ 13a,13b・・・主極 14・・・溶液供給口 15・・・酸性水溶液 20・・・補助陽極槽 21・・・補助陽極 W・・・アルミニウム合金板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C25D 11/16 301 C25D 11/16 301 G03F 7/00 503 G03F 7/00 503 7/09 501 7/09 501 // C22C 21/00 C22C 21/00 N (72)発明者 澤田 宏和 静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写 真フイルム株式会社内 (72)発明者 上杉 彰男 静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写 真フイルム株式会社内 Fターム(参考) 2H025 AB03 DA18 EA01 2H096 AA07 CA03 2H114 AA04 AA14 AA23 BA01 DA04 DA09 DA73 DA78 EA02 EA06 FA16 GA03 GA05 GA06 GA08 GA09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金板から平版印刷版用支
    持体を製造する製造方法であって、 前記アルミニウム合金板の表面に露出しているアルミニ
    ウムの結晶粒の長さが500μm以上、幅が50μm以
    上であり、前記アルミニウム合金板に硝酸を主体とする
    溶液中で、交流電流を用いて、電気化学的粗面化処理を
    行うと、前記アルミニウム合金板表面に露出しているC
    uの存在率が5(mm2/m2)以上となり、 このようなアルミニウム合金板に対し、少なくとも、下
    記(1)および(2)の工程からなる各処理を順次施す
    ことを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。 (1)塩酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
    1〜300C/dm2の電気量で、電気化学的粗面化処
    理を行う塩酸電解処理工程。 (2)硝酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
    電気化学的粗面化処理を行う硝酸電解処理工程。
  2. 【請求項2】 アルミニウム合金板から平版印刷版用支
    持体を製造する製造方法であって、 前記アルミニウム合金板の表面に露出しているアルミニ
    ウムの結晶粒の長さが500μm以上、幅が50μm以
    上であり、前記アルミニウム合金板に硝酸を主体とする
    溶液中で、交流電流を用いて、電気化学的粗面化処理を
    行うと、前記アルミニウム合金板表面に露出しているC
    uの存在率が5(mm2/m2)以上となり、 このようなアルミニウム合金板に対し、少なくとも、下
    記(1)〜(6)の工程からなる各処理を順次施すこと
    を特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。 (1)アルカリ溶液によりアルミニウム合金板を1〜1
    5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を行った
    後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデスマッ
    ト処理を行う、第一のエッチング処理工程。 (2)塩酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
    1〜300C/dm2の電気量で、電気化学的粗面化処
    理を行う塩酸電解処理工程。 (3)アルカリ溶液によりアルミニウム合金板を0.0
    1〜1.5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を
    行った後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデ
    スマット処理を行う、第二のエッチング処理工程。 (4)硝酸を主体とする溶液中で、交流電流を用いて、
    電気化学的粗面化処理を行う硝酸電解処理工程。 (5)アルカリ溶液中でアルミニウム合金板を0.01
    〜5g/m2溶解するアルカリエッチング処理を行った
    後、酸性溶液により前記アルミニウム合金板にデスマッ
    ト処理を行うかまたは前記アルミニウム合金板を0.0
    01〜0.2g/m2溶解する酸性エッチング処理を行
    う、第三のエッチング処理工程。 (6)陽極酸化処理工程。
  3. 【請求項3】 前記陽極酸化処理工程後のアルミニウム
    合金板に、さらに封孔処理および/または親水化処理を
    行うことを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版用支
    持体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第一のエッチング処理工程の前工程
    として、機械的粗面化処理工程を設けることを特徴とす
    る請求項2または3に記載の平版印刷版用支持体の製造
    方法。
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