JP2005265501A - 水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法 - Google Patents

水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度をリアルタイムで測定することができる、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法の提供。
【解決手段】水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法であって、前記水溶液の電気伝導度と、前記水溶液のフッ素イオン電極法により求められるフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHとを測定する工程と、測定されたフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHと、あらかじめ作成されたデータテーブルとから、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を算出する工程とを具備する、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法に関する。
フッ素化合物およびリン酸化合物とを含有する水溶液中で金属基板に皮膜を形成させる技術は、自動車、製缶等の分野において広く用いられている。従来、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度は、フッ素イオン電極法によりフッ素イオン濃度を測定し、これによりフッ素化合物の濃度管理をする一方で、吸光光度法(モリブデン青吸光光度法)によりリン酸濃度を測定してリン酸化合物の濃度管理をするのが一般的であった。
本発明者は、アルミニウム板を用いた平版印刷版用支持体の製造の際に、陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔する封孔処理に、フッ素化合物およびリン酸化合物を含有する水溶液を用いることを検討した。
しかしながら、その封孔処理における処理液の濃度管理に、上述した吸光光度法によりリン酸濃度を測定してリン酸化合物の濃度管理をするという従来の方法を用いると、測定に約20分ほどかかるためにリアルタイムの濃度管理を行うことができず、連続的に均質な平版印刷版用支持体を製造することは困難であった。即ち、従来の用途では顕在化していなかった問題が、平版印刷版用支持体の製造という用途において初めて顕在化したのである。
したがって、本発明は、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度をリアルタイムで測定することができる、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法、ならびに、これを用いた平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、水溶液の電気伝導度と、水溶液のフッ素イオン電極法により求められるフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHとを測定し、あらかじめ作成されたデータテーブルを用いて、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を算出すると、リアルタイムの測定が可能となり、その結果、一定品質の平版印刷版用支持体が得られ、歩留まりが向上することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)を提供する。
(1)陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔するための水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法であって、
前記水溶液の電気伝導度と、前記水溶液のフッ素イオン電極法により求められるフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHとを測定する工程と、
測定されたフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHと、あらかじめ作成されたデータテーブルとから、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を算出する工程と
を具備する、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法。
(2)前記フッ素化合物がフッ化ジルコン酸ナトリウムであり、前記リン酸化合物がリン酸二水素ナトリウムである、上記(1)に記載の水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法。
(3)アルミニウム板に、少なくとも、陽極酸化処理と、前記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔するためのフッ素化合物およびリン酸化合物を含有する水溶液を用いた封孔処理とを含む平版印刷版用支持体の製造方法であって、
前記封孔処理において、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を、上記(1)または(2)に記載の水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法により算出し、算出された値に基づいて、フッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を管理する平版印刷版用支持体の製造方法。
本発明によれば、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度をリアルタイムで測定することが可能である。したがって、本発明を用いて平版印刷版用支持体を製造すると、一定品質の平版印刷版用支持体が得られ、歩留まりが優れたものとなる。
以下、本発明の水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法(以下「本発明の測定方法」という。)および本発明の平版印刷版用支持体の製造方法について詳細に説明する。
初めに、本発明の測定方法について説明する。本発明の測定方法は、陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔するための水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法であって、前記水溶液の電気伝導度と、前記水溶液のフッ素イオン電極法により求められるフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHとを測定する工程と、測定されたフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHと、あらかじめ作成されたデータテーブルとから、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を算出する工程とを具備する、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法である。
本発明の測定方法の測定対象となる水溶液は、陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔するための水溶液(封孔処理液)である。封孔処理液である。封孔処理液については、後に詳述する。
本発明の測定方法においては、初めに、上述した水溶液の電気伝導度と、上述した水溶液のフッ素イオン電極法により求められるフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHとを測定する工程を行う。
水溶液の電気伝導度は、従来公知の電気伝導度計を用いて測定することができる。
水溶液のフッ素イオン濃度は、水溶液中に存在するフッ素イオン(F-、フッ化物イオン)の濃度であり、フッ素イオン電極法により測定される。フッ素イオン電極法は、従来公知の方法を用いることができる。
水溶液の超音波伝搬速度は、従来公知の方法、例えば、特開平6−235721号公報および特開昭58−77656号公報に記載されている方法により、測定することができる。
超音波伝搬速度の測定は、水溶液中の気泡の影響を受けやすいため、鉛直方向に配置され、下から上に向かって流速のある配管中で行うのが好ましい。超音波伝搬速度の測定は、配管内の圧力が1〜10kgf/cm2の圧力範囲で行うことが好ましい。伝搬速度の測定を行う超音波の周波数は、0.5〜3MHzであるのが好ましい。
水溶液のpHは、従来公知のpH計を用いて測定することができる。
これらの測定は、データが温度の影響を受けやすいので、保温され、かつ、プラスマイナス0.3℃以内に温度制御された配管内で測定するのが好ましい。
また、電気伝導度と、フッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHとは、同一温度で測定するのが好ましいので、同一の配管内または同一の配管フロー内で測定するのが好ましい。
また、圧力変動や、測定する配管内の流速分布は、温度の変動の原因となるので、小さいのが好ましい。
更に、これらの測定は、ゴミ、気泡等の影響を受けやすいので、フィルター、脱気装置等で処理した液を測定するのが好ましい。
本発明の測定対象である封孔処理液には、封孔処理液中のフッ素またはリン酸と基板等とが反応して、フッ化アルミン酸ソーダ、リン酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、リン酸アルミニウム、水酸化カルシウム等が析出しやすく、粒径0.05〜2.0μm程度の微細粒子となって存在することが多い。よって、封孔処理液は、フィルターによりろ過されるのが好ましいが、更に、電気伝導度を測定するための装置およびフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHを測定するための装置(以下、両者を併せて「濃度測定装置」という。)の再現性および安全性を向上させるために、濃度測定装置に入る前の封孔処理液をろ過するのが特に好ましい。このような微細粒子が大量に濃度測定装置の内部に入り込むと、濃度に対する超音波伝搬速度が変動したり、電気伝導度、フッ素イオン電極によるフッ素イオン濃度またはpHの指示値の再現性が悪くなったりしやすいためである。
また、フッ素イオン電極によりフッ素イオン濃度を測定する際には、フッ素イオン濃度を正確に測定するために、測定直前に、封孔処理液にイオン強度調整剤を添加するのが好ましい。イオン強度調整剤としては、クエン酸、クエン酸三ナトリウムが好適に例示される。
更に、好ましくはイオン強度調整剤を添加する前に、封孔処理液に、イオン交換樹脂および/またはキレート繊維による金属イオン除去処理や、キレート剤添加による金属イオンの濃度測定装置に対する無害化処理を施すのが好ましい。
ついで、測定されたフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHと、あらかじめ作成されたデータテーブルとから、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を算出する工程を行う。
データテーブルは、種々の濃度のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムを含有する水溶液を調製し、例えば、25〜50℃の5℃ごとの各液温において、上記方法により電気伝導度を測定し、また、フッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHを測定して作成する。
このデータテーブルを用いて、測定された電気伝導度およびフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHから、フッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムの濃度を算出する。
この際、測定された値がデータテーブルの複数のデータの中間に位置する場合は、前記複数のデータから、回帰式等を用いた計算により算出すればよい。また、水溶液の温度が各データテーブルの中間の温度である場合は、各データテーブルのデータから、回帰式等を用いた計算により算出すればよい。
本発明においては、上述した電気伝導度とフッ素イオン濃度とを用いる方法、電気伝導度と超音波伝搬速度とを用いる方法および電気伝導度とpHとを用いる方法のうち、精度が高い点で、電気伝導度とフッ素イオン濃度とを用いる方法が好ましく、また、測定装置が簡易で故障が少ない点で、電気伝導度と超音波伝搬速度とを用いる方法が好ましい。
本発明の測定方法は、上述したように、電気伝導度およびフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHを測定項目としており、これらはリアルタイムで測定することができるため、従来の吸光光度法では実現することができなかった、フッ素化合物およびリン酸化合物の濃度のリアルタイムでの管理が可能となるという利点を有する。
したがって、本発明の測定方法は、後述する平版印刷版用支持体の製造に好適に用いられる。
つぎに、本発明の平版印刷版用支持体の製造方法について説明する。本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、アルミニウム板に、少なくとも、陽極酸化処理と、前記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔するためのフッ素化合物およびリン酸化合物を含有する水溶液を用いた封孔処理とを含む平版印刷版用支持体の製造方法であって、前記封孔処理において、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を、本発明の測定方法により算出し、算出された値に基づいて、フッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を管理する平版印刷版用支持体の製造方法である。
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金がラミネートされまたは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙を用いることもできる。更に、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートを用いることもできる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、特に限定されないが、純アルミニウム板を用いるのが好適である。完全に純粋なアルミニウムは精練技術上、製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものを用いてもよい。例えば、アルミニウムハンドブック第4版(軽金属協会(1990))に記載の公知の素材のもの、具体的には、JIS1050材、JIS1100材、JIS3003材、JIS3005材、国際登録合金3103A等を用いることができる。また、アルミニウム(Al)の含有率が99.4〜95質量%であって、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、およびチタン(Ti)のうち少なくとも5種以上を後述する範囲内で含む、アルミニウム合金、スクラップアルミ材または二次地金を使用したアルミニウム板を使用することもできる。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法には、アルミニウム合金が用いられるのが好ましい。アルミニウム合金においては、Al、Fe、SiおよびCuを含有するのが好ましく、更にTiを含有するのがより好ましい。
Feは、通常、原材料として使用されるアルミニウム合金(Al地金)に0.04〜0.2質量%程度含有されている。Feは、アルミニウム中に固溶する量は少なく、ほとんどが金属間化合物として残存する。Feは、アルミニウム合金の機械的強度を高める作用があり、支持体の強度に大きな影響を与える。Fe含有量が少なすぎると、機械的強度が低すぎて、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、版切れを起こしやすくなる。また、高速で大部数の印刷を行う際にも、同様に版切れを起こしやすくなる。一方、Fe含有量が多すぎると、必要以上に高強度となり、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、フィットネス性に劣り、印刷中に版切れを起こしやすくなる。また、Feの含有量が、例えば、1.0質量%より多くなると圧延途中に割れが生じやすくなる。
本発明者は、後述するFeを含む金属間化合物が、アルミニウム板中に含まれる金属間化合物の大部分を占めること、および、それらが粗面化処理中に取り除かれ(脱落し)やすく、取り除かれた(脱落した)後に形成される局所的な凹部に画像記録層が入り込んでしまうことにより露光不良、ひいては現像不良を起こす原因になることを知見した。
本発明においては、上記知見に基づいて、Fe含有量の上限を好ましくは0.29質量%とすることにより、優れた機械的強度が得られる。また、Feを含む金属間化合物量が少なくなり金属間化合物の取り除かれた(脱落した)後に形成される局所的な凹部が少なくなるため露光不良、ひいては現像不良が起こりにくく、感度も優れたものになる。
Fe含有量の下限は、地金中の含有量を考慮し、好ましくは0.05%以上とするのが妥当であるが、機械的強度を維持する上で、0.20質量%以上とすることがより好ましい。
Feを含む金属間化合物としては、例えば、Al3Fe、Al6Fe、AlFeSi系化合物、AlFeSiMn系化合物が挙げられる。
Siは、原材料であるAl地金に不可避不純物として0.03〜0.1質量%前後含有される元素であり、原材料差によるばらつきを防ぐため、意図的に微量添加されることが多い。また、Siは、スクラップアルミニウムにも多く含まれる元素である。Siは、アルミニウム中に固溶した状態で、または、金属間化合物もしくは単独の析出物として存在する。また、平版印刷版用支持体の製造過程で加熱されると、固溶していたSiが単体Siとして析出することがある。本発明者らの知見によれば、単体Siが過剰の場合、耐苛酷インキ汚れ性が低下する場合がある。ここで、「苛酷インキ汚れ」とは、印刷を何度も中断しつつ行った場合に、平版印刷版の非画像部表面部分にインキが付着しやすくなった結果、印刷された紙等に表れる点状または円環状の汚れをいう。また、Siは、電解粗面化処理に影響を与える。
更に、Siの含有量が多すぎると、粗面化処理後に陽極酸化処理を施したときに、陽極酸化皮膜の欠陥となり、欠陥部分の保水性が劣り、印刷時に紙が汚れやすくなる。
本発明においては、Si含有量は、好ましくは0.03質量%以上であり、また、好ましくは0.15質量%以下である。電解粗面化処理の安定性に優れる点で、より好ましくは、0.04質量%以上であり、また、0.1質量%以下である。
Cuは、電解粗面化処理を制御するうえで非常に重要な元素である。Cu含有量を好ましくは0.020質量%以上とすることにより、硝酸液中での電解粗面化処理により生成するピットの径を大きくできるため、露光現像後印刷する際に、非画像部における湿し水の保水量を大幅に確保でき、耐汚れ性が向上する。一方、Cu含有量が0.050質量%を超えると、硝酸液中での電解粗面化処理により生成するピットの径が大きくなりすぎるとともに径の均一性が低下するため、特に耐汚れ性に劣る場合がある。
また、本発明者は、Cu含有量をこの範囲にすることで、塩酸液中で電解粗面化処理により生成する直径0.5μm以下のピットを均一にでき、かつ、支持体表面の表面積の増加割合を最大にできることを見出した。表面積の増加割合を大きくすることにより画像記録層との接触面積を大きくできるため、これらの密着力が向上し、耐刷性および耐クリーナ耐刷性に優れたものとなる。また平版印刷版としたときの耐汚れ性が優れたものとなる。
本発明においては、上記観点から、Cuの含有量は、好ましくは0.020〜0.050質量%であり、より好ましくは0.020〜0.030質量%である。
Tiは、以前より、鋳造時の結晶組織を微細にするために、結晶微細化材として、通常、0.05質量%以下の含有量で含有されている。Ti含有量が多すぎると、電解粗面化処理、特に硝酸水溶液での電解粗面化処理において表面酸化皮膜の抵抗が過小となるため、均一なピットが形成されない場合がある。本発明においては、Tiの含有量は、0.05質量%以下であるのが好ましく、0.03質量%以下であるのがより好ましい。
また、Tiはアルミニウム板に含有されていてもいなくてもよく、またその含有量は少なくてもよいが、結晶微細化効果を高めるためには、Tiの含有量は、0.005質量%以上であるのが好ましく、0.01質量%以上であるのがより好ましい。
Tiは、主として、Alとの金属間化合物またはTiB2として添加されるが、結晶微細化効果を高めるためには、Al−Ti合金またはAl−B−Ti合金として添加されるのが好ましい。なお、Al−B−Ti合金として添加した場合、アルミニウム合金中にBが微量含有されることになるが、本発明の効果は損なわれない。
上記異元素を上記の範囲で含有するアルミニウム板を用いると、後述する電解粗面化処理において均一かつ大きなピットが形成されるため、平版印刷版としたときの感度、耐クリーナ耐刷性(耐薬品性)、耐刷性および耐汚れ性のいずれにも優れたものになる。
アルミニウム板の残部は、Alと不可避不純物からなるのが好ましい。不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7質量%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
アルミニウム合金に含有される不可避不純物としては、例えば、Mg、Mn、Zn、Cr等が挙げられ、これらはそれぞれ0.05質量%以下含まれていてもよい。これら以外の元素については、従来公知の含有量で含まれていてもよい。
本発明に用いられるアルミニウム板は、上記原材料を用いて常法で鋳造したものに、適宜圧延処理や熱処理を施し、厚さを例えば、0.1〜0.7mmとし、必要に応じて平面性矯正処理を施して製造される。この厚さは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により、適宜変更することができる。
なお、上記アルミニウム板の製造方法としては、例えば、DC鋳造法、DC鋳造法から均熱処理および/または焼鈍処理を省略した方法、ならびに、連続鋳造法を用いることができる。
本発明においては、上述したようなアルミニウム板に、その最終圧延工程等において、転写ロールを用いた転写により凹凸を形成させることができる。
中でも、最終板厚に調整する冷間圧延、または、最終板厚調整後の表面形状を仕上げる仕上げ冷間圧延とともに、圧延ロールの凹凸面をアルミニウム板に圧接させて凹凸形状を転写し、アルミニウム板の表面に凹凸パターンを形成させる方法が好ましい。具体的には、特開平6−262203号公報に記載されている方法を好適に用いることができる。
表面に凹凸パターンを有するアルミニウム板を用いることにより、後の電気化学的粗面化処理等で消費されるエネルギーを少なくしつつ、印刷機上における湿し水の量の調整を容易にすることができる。
転写は、通常のアルミニウム板の最終冷間圧延工程で行うのが特に好ましい。転写のための圧延は1〜3パスで行うのが好ましく、それぞれの圧下率は3〜8%であるのが好ましい。
本発明においては、凹凸の転写に用いられる、表面に凹凸を有する転写ロールを得る方法として、所定のアルミナ粒子を吹き付ける方法を用いるが、中でも、エアーブラスト法が好ましい。
本発明に用いられる平版印刷版用支持体は、上記アルミニウム板に少なくとも陽極酸化皮膜を形成させ、更に、封孔処理を施して得られるが、その製造工程には、それ以外の各種の工程が含まれていてもよい。
上記アルミニウム板は、付着している圧延油を除く脱脂工程、アルミニウム板の表面のスマットを溶解するデスマット処理工程、アルミニウム板の表面を粗面化する粗面化処理工程、アルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成させる陽極酸化処理工程および陽極酸化皮膜のマイクロポアを封孔する封孔処理を経て平版印刷版用支持体とされるのが好ましい。
本発明に用いられる平版印刷版用支持体の製造工程は、酸性水溶液中で交流電流を用いてアルミニウム板を電気化学的に粗面化する粗面化処理(電気化学的粗面化処理)を含むのが好ましい。
また、本発明に用いられる平版印刷版用支持体の製造工程は、上記電気化学的粗面化処理の他に、機械的粗面化処理、酸またはアルカリ水溶液中での化学的エッチング処理等を組み合わせたアルミニウム板の表面処理工程を含んでもよい。本発明に用いられる平版印刷版用支持体の粗面化処理等の製造工程は、連続法でも断続法でもよいが、工業的には連続法を用いるのが好ましい。
本発明においては、更に、必要に応じて、親水性処理が行われる。
より具体的には、(a)機械的粗面化処理、(b)アルカリエッチング処理、(c)デスマット処理、(d)硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸電解)、(e)アルカリエッチング処理、(f)デスマット処理、(g)塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)、(h)アルカリエッチング処理、(i)デスマット処理、(j)陽極酸化処理、(k)封孔処理および(l)親水化処理をこの順に施す方法が好適に挙げられる。
また、上記方法から(g)〜(i)を省略した方法、上記方法から(a)を省略した方法、上記方法から(a)および(g)〜(i)を省略した方法、上記方法から(a)〜(d)を省略した方法も好適に挙げられる。
なお、後述する各処理におけるアルミニウム板に対する処理液の相対速度は、10〜5000cm/secであるのが好ましい。
<粗面化処理(砂目立て処理)>
まず、粗面化処理について説明する。
上記アルミニウム板は、より好ましい形状に砂目立て処理される。砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公報に記載されているような機械的砂目立て(機械的粗面化処理)、化学的エッチング、電解グレイン等がある。更に、塩酸電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て法(電気化学的粗面化処理、電解粗面化処理)や、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法等の機械的砂目立て法(機械的粗面化処理)を用いることができる。これらの砂目立て法は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩酸電解液または硝酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせが挙げられる。中でも、電気化学的粗面化処理が好ましい。また、機械的粗面化処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせて行うのも好ましく、特に、機械的粗面化処理の後に電気化学的粗面化処理を行うのが好ましい。
機械的粗面化処理は、ブラシ等を使用してアルミニウム板表面を機械的に粗面化する処理であり、上述した電気化学的粗面化処理の前に行われるのが好ましい。
好適な機械的粗面化処理においては、毛径が0.07〜0.57mmである回転するナイロンブラシロールと、アルミニウム板表面に供給される研磨剤のスラリー液とで処理する。
ナイロンブラシは吸水率が低いものが好ましく、例えば、東レ社製のナイロンブリッスル200T(6,10−ナイロン、軟化点:180℃、融点:212〜214℃、比重:1.08〜1.09、水分率:20℃・相対湿度65%において1.4〜1.8、20℃・相対湿度100%において2.2〜2.8、乾引っ張り強度:4.5〜6g/d、乾引っ張り伸度:20〜35%、沸騰水収縮率:1〜4%、乾引っ張り抵抗度:39〜45g/d、ヤング率(乾):380〜440kg/mm2)が好ましい。
研磨剤としては公知のものを用いることができるが、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているケイ砂、石英、水酸化アルミニウム、またはこれらの混合物を用いるのが好ましい。
スラリー液としては、比重が1.05〜1.3の範囲内にあるものが好ましい。スラリー液をアルミニウム板表面に供給する方法としては、例えば、スラリー液を吹き付ける方法、ワイヤーブラシを用いる方法、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方法が挙げられる。また、特開昭55−74898号公報、同61−162351号公報、同63−104889号公報に記載されている方法を用いてもよい。更に、特表平9−509108号公報に記載されているように、アルミナおよび石英からなる粒子の混合物を95:5〜5:95の範囲の質量比で含んでなる水性スラリー中で、アルミニウム板表面をブラシ研磨する方法を用いることもできる。このときの上記混合物の平均粒子径は、1〜40μm、特に1〜20μmの範囲内であるのが好ましい。
電気化学的粗面化処理は、酸性水溶液中で、アルミニウム板を電極として交流電流を通じ、該アルミニウム板の表面を電気化学的に粗面化する工程であり、後述の機械的粗面化処理とは異なる。
本発明においては、上記電気化学的粗面化処理において、アルミニウム板が陰極となるときにおける電気量、即ち、陰極時電気量QCと、陽極となるときにおける電気量、即ち、陽極時電気量QAとの比QC/QAを、例えば、0.5〜2.0の範囲内とすることで、アルミニウム板の表面に均一なハニカムピットを生成することができる。QC/QAが0.50未満であると、不均一なハニカムピットとなりやすく、また、2.0を超えても、不均一なハニカムピットとなりやすい。QC/QAは、0.8〜1.5の範囲内とするのが好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電流の波形としては、正弦波(サイン波)、矩形波、三角波、台形波等が挙げられる。中でも、矩形波または台形波が好ましい。また、交流電流の周波数は、電源装置を製作するコストの観点から、30〜200Hzであるのが好ましく、40〜120Hzであるのがより好ましく、50〜60Hzであるのが更に好ましい。
本発明に好適に用いられる台形波の一例を図4に示す。図4において、縦軸は電流値、横軸は時間を示す。また、taはアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpは電流値がゼロからカソードサイクル側のピークに達するまでの時間、tp′は電流値がゼロからアノードサイクル側のピークに達するまでの時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流を示す。交流電流の波形として台形波を用いる場合、電流がゼロからピークに達するまでの時間tpおよびtp′はそれぞれ0.1〜2msecであるのが好ましく、0.3〜1.5msecであるのがより好ましい。tpおよびtp′が0.1msec未満であると、電源回路のインピーダンスが影響し、電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる場合がある。また、tpおよびtp′が2msecを超えると、酸性水溶液中の微量成分の影響が大きくなり、均一な粗面化処理が行われにくくなる場合がある。
また、電気化学的粗面化処理に用いられる交流電流のdutyは、アルミニウム板表面を均一に粗面化する点から0.25〜0.75の範囲内とするのが好ましく、0.4〜0.6の範囲内とするのがより好ましい。本発明でいうdutyとは、交流電流の周期Tにおいて、アルミニウム板の陽極反応が持続している時間(アノード反応時間)をtaとしたときのta/Tをいう。特に、カソード反応時のアルミニウム板表面には、水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の生成に加え、酸化皮膜の溶解や破壊が発生し、次のアルミニウム板のアノード反応時におけるピッティング反応の開始点となるため、交流電流のdutyの選択は均一な粗面化に与える効果が大きい。
交流電流の電流密度は、台形波または矩形波の場合、アノードサイクル側のピーク時の電流密度Iapおよびカソードサイクル側のピーク時の電流密度Icpがそれぞれ10〜200A/dm2となるのが好ましい。また、Icp/Iapは、0.9〜1.5の範囲内にあるのが好ましい。
電気化学的粗面化処理において、電気化学的粗面化処理が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応に用いた電気量の総和は、50〜1000C/dm2であるのが好ましい。電気化学的粗面化処理の時間は、1秒〜30分であるのが好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる酸性水溶液としては、通常の直流電流または交流電流を用いた電機化学的粗面化処理に用いるものを用いることができ、その中でも硝酸を主体とする酸性水溶液または塩酸を主体とする酸性水溶液を用いることが好ましい。ここで、「主体とする」とは、水溶液中に主体となる成分が、成分全体に対して、30質量%以上、好ましくは50質量%以上含まれていることをいう。以下、他の成分においても同様である。
硝酸を主体とする酸性水溶液としては、上述したように、通常の直流電流または交流電流を用いた電気化学的粗面化処理に用いるものを用いることができる。例えば、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸化合物のうち一つ以上を、0.01g/Lから飽和に達するまでの濃度で、硝酸濃度5〜15g/Lの硝酸水溶液に添加して使用することができる。硝酸を主体とする酸性水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のアルミニウム合金中に含まれる金属等が溶解されていてもよい。
硝酸を主体とする酸性水溶液としては、中でも、硝酸と、アルミニウム塩と、硝酸塩とを含有し、かつ、アルミニウムイオンが1〜15g/L、好ましくは1〜10g/L、アンモニウムイオンが10〜300ppmとなるように、硝酸濃度5〜15g/Lの硝酸水溶液中に硝酸アルミニウムおよび硝酸アンモニウムを添加して得られたものを用いることが好ましい。なお、上記アルミニウムイオンおよびアンモニウムイオンは、電気化学的粗面化処理を行っている間に自然発生的に増加していくものである。また、この際の液温は10〜95℃であるのが好ましく、20〜90℃であるのがより好ましく、30〜70℃であるのが特に好ましい。
硝酸を主体とする酸性水溶液としては、上述したように、通常の直流電流または交流電流を用いた電気化学的粗面化処理に用いるものを用いることができる。例えば、濃度1〜100g/Lの塩酸の水溶液に、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸を含有する水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。
具体的には、塩酸濃度2〜10g/Lの塩酸水溶液に、塩化アルミニウムを溶解させてアルミニウムイオン濃度を3〜7g/Lとなるように調整した液が好ましい。
塩酸を含有する水溶液の温度は、25℃以上であるのが好ましく、30℃以上であるのがより好ましく、また、55℃以下であるのが好ましく、40℃以下であるのがより好ましい。
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。
更に、電気量を増やしていくと平均開口径0.01〜0.4μmのピットを表面に有する平均開口径1〜15μmのピットが生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、10C/dm2以上であるのが好ましく、50C/dm2以上であるのがより好ましく、さらには100C/dm2以上であるのが好ましい。また、2000C/dm2以下であるのが好ましく、600C/dm2以下であるのがより好ましい。
電気化学的粗面化処理においては、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の電解装置を用いることができるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解装置が特に好ましい。
図5は、本発明に好適に用いられるラジアル型電解装置の概略図である。図5において、ラジアル型電解装置は、アルミニウム板11が主電解槽21中に配置されたラジアルドラムローラ12に巻装され、搬送過程で交流電源20に接続された主極13aおよび13bによって電解処理される。酸性水溶液14は、溶液供給口15からスリット16を通じてラジアルドラムローラ12と主極13aおよび13bとの間にある溶液通路17に供給される。
ついで、主電解槽21で処理されたアルミニウム板11は、補助陽極槽22で電解処理される。この補助陽極槽22には補助陽極18がアルミニウム板11と対向配置されており、酸性水溶液14は、補助陽極18とアルミニウム板11との間を流れるように供給される。なお、補助電極に流す電流は、サイリスタ19aおよび19bにより制御される。
図示例では、補助陽極槽が主電解槽の後側に配置されているが、本発明においては、補助陽極槽は主電解槽の前側にあっても、後側にあってもよく、両側にあってもよい。
主極13aおよび13bは、カーボン、白金、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレス、燃料電池用陰極に用いる電極等から選定することができるが、カーボンが特に好ましい。カーボンとしては、一般に市販されている化学装置用不浸透性黒鉛や、樹脂含芯黒鉛等を用いることができる。
補助陽極18は、フェライト、酸化イリジウム、白金、または、白金をチタン、ニオブ、ジルコニウム等のバルブ金属にクラッドもしくはメッキしたもの等公知の酸素発生用電極から選定することができる。
主電解槽21および補助陽極槽22内を通過する酸性水溶液の供給方向はアルミニウム板11の進行とパラレルでもカウンターでもよい。
一つの電解装置には1個以上の交流電源を接続することができる。また、2個以上の電解装置を使用してもよく、各装置における電解条件は同一であってもよいし異なっていてもよい。
また、電解処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
上記電解装置を用いる場合においては、電解装置中のアルミニウム板がアノード反応する酸性水溶液の通電量に比例して、例えば、(i)酸性水溶液の導電率と(ii)超音波の伝搬速度と(iii)温度とから求めた硝酸およびアルミニウムイオン濃度をもとに、硝酸と水の添加量を調節しながら添加し、硝酸と水の添加容積と同量の酸性水溶液を逐次電解装置からオーバーフローさせて排出することで、上記酸性水溶液の濃度を一定に保つのが好ましい。
つぎに、酸性水溶液中またはアルカリ水溶液中での化学的エッチング処理、デスマット処理等の表面処理について順を追って説明する。上記表面処理は、それぞれ上記電気化学的粗面化処理の前、または、上記電気化学的粗面化処理の後であって後述する陽極酸化処理の前において行われる。ただし、以下の各表面処理の説明は例示であり、本発明は、以下の各表面処理の内容に限定されるものではない。また、上記表面処理を初めとする以下の各処理は任意で施される。
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、アルカリ水溶液中でアルミニウム板表面を化学的にエッチングする処理であり、上記電気化学的粗面化処理の前と後のそれぞれにおいて行うのが好ましい。また、電気化学的粗面化処理の前に機械的粗面化処理を行う場合には、機械的粗面化処理の後に行うのが好ましい。アルカリエッチング処理は、短時間で微細構造を破壊することができるので、後述する酸性エッチング処理よりも有利である。
アルカリエッチング処理に用いられるアルカリ水溶液としては、カセイソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の1種または2種以上を含有する水溶液が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム(カセイソーダ)を主体とする水溶液が好ましい。アルカリ水溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分を0.5〜10質量%を含有していてもよい。
アルカリ水溶液の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。
アルカリエッチング処理は、アルカリ水溶液の液温を20〜100℃、好ましくは40〜80℃の間とし、1〜120秒間、好ましくは2〜60秒間処理することにより行うのが好ましい。アルミニウムの溶解量は、機械的粗面化処理の後に行う場合は5〜20g/m2であるのが好ましく、電気化学的粗面化処理の後に行う場合は0.01〜10g/m2であるのが好ましい。最初にアルカリ水溶液中で化学的なエッチング液をミキシングするときには、液体水酸化ナトリウム(カセイソーダ)とアルミン酸ナトリウム(アルミン酸ソーダ)とを用いて処理液を調製することが好ましい。
また、アルカリエッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないために、ニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
アルカリエッチング処理を電気化学的粗面化処理の後に行う場合、電気化学的粗面化処理により生じたスマットを除去することができる。このようなアルカリエッチング処理としては、例えば、特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法および特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が好適に挙げられる。
<酸性エッチング処理>
酸性エッチング処理は、酸性水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチングする処理であり、上記電気化学的粗面化処理の後に行うのが好ましい。また、上記電気化学的粗面化処理の前および/または後に上記アルカリエッチング処理を行う場合は、アルカリエッチング処理の後に酸性エッチング処理を行うのも好ましい。
アルミニウム板に上記アルカリエッチング処理を施した後に、上記酸性エッチング処理を施すと、アルミニウム板表面のシリカを含む金属間化合物または単体Siを除去することができ、その後の陽極酸化処理において生成する陽極酸化皮膜の欠陥をなくすことができる。その結果、印刷時にチリ状汚れと称される非画像部に点状のインクが付着するトラブルを防止することができる。
酸性エッチング処理に用いられる酸性水溶液としては、リン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2種以上の混酸を含有する水溶液が挙げられる。中でも、硫酸水溶液が好ましい。酸性水溶液の濃度は、50〜500g/Lであるのが好ましい。酸性水溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分を含有していてもよい。
酸性エッチング処理は、液温を60〜90℃、好ましくは70〜80℃とし、1〜10秒間処理することにより行うのが好ましい。このときのアルミニウム板の溶解量は0.001〜0.2g/m2であるのが好ましい。また、酸濃度、例えば、硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度は、常温で晶出しない範囲から選択することが好ましい。好ましいアルミニウムイオン濃度は0.1〜50g/Lであり、特に好ましくは5〜15g/Lである。
また、酸性エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないために、ニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
<デスマット処理>
上記電気化学的粗面化処理の前および/または後に上記アルカリエッチング処理を行う場合は、アルカリエッチング処理により、一般にアルミニウム板の表面にスマットが生成するので、リン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸、またはこれらの2種以上の混酸を含有する酸性溶液中で上記スマットを溶解する、いわゆるデスマット処理をアルカリエッチング処理の後に行うのが好ましい。なお、アルカリエッチング処理の後には、酸性エッチング処理およびデスマット処理のうち、いずれか一方を行えば十分である。
酸性溶液の濃度は、1〜500g/Lであるのが好ましい。酸性溶液中にはアルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分が0.001〜50g/L溶解していてもよい。
酸性溶液の液温は、20℃〜95℃であるのが好ましく、30〜70℃であるのがより好ましい。また、処理時間は1〜120秒であるのが好ましく、2〜60秒であるのがより好ましい。
また、デスマット処理液(酸性溶液)としては、上記電気化学的粗面化処理で用いた酸性水溶液の廃液または後述する陽極酸化処理で用いた酸性水溶液の廃液を用いるのが、廃液量削減の上で好ましい。
デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないためにニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
<陽極酸化処理>
以上のようにして必要に応じて各処理を施されたアルミニウム板に、陽極酸化処理を施して、陽極酸化皮膜を形成させる。
陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の単独のまたは2種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流すと、アルミニウム板の表面に、陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜200V、電解時間1〜1000秒であるのが適当である。
これらの陽極酸化処理の中でも、英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸電解液中で高電流密度で陽極酸化処理する方法、および、米国特許第3,511,661号明細書に記載されている、リン酸を電解浴として陽極酸化処理する方法が好ましい。また、硫酸中で陽極酸化処理し、更にリン酸中で陽極酸化処理するなどの多段陽極酸化処理を施すこともできる。
本発明においては、陽極酸化皮膜は、傷付きにくさおよび耐刷性の点で、0.5g/m2以上であるのが好ましく、1.0g/m2以上であるのがより好ましく、2.0g/m2以上であるのが特に好ましく、また、厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要とすることを鑑みると、100g/m2以下であるのが好ましく、10g/m2以下であるのがより好ましく、6g/m2以下であるのが特に好ましい。
陽極酸化皮膜には、その表面にマイクロポアと呼ばれる微細な凹部が一様に分布して形成されている。陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの密度は、処理条件を適宜選択することによって調整することができる。
<封孔処理>
本発明においては、上述したようにしてアルミニウム板に陽極酸化皮膜を形成させた後、封孔処理を施す。この封孔処理により、陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径が小さくなり、これにより平版印刷版原版の製造の際に画像記録層がマイクロポアの内部に入ることを防止することができるため、現像性が極めて向上する。
また、この封孔処理により、機上現像後の画像記録層の残膜の量を少なくすることができ、これにより平版印刷版の非画像部の表面を親水的にすることができるので、耐汚れ性が優れたものとなる。また、この封孔処理により、陽極酸化皮膜のマイクロポアのポア径が小さくなり、これにより印刷時にインキが潜り込むことを抑制することができるので、この点からも耐汚れ性が優れたものとなる。
更に、この封孔処理により、平版印刷版用支持体の表面に10〜100nmの微細な凹凸を形成させることができるため、平版印刷版用支持体の表面積が増加し、これにより画像記録層との密着性が向上するので、感度および耐薬品性が優れたものとなる。
本発明に用いられる封孔処理は、フッ素化合物およびリン酸化合物を含有する水溶液(封孔処理液)を用いて行われる。リン酸化合物は、陽極酸化皮膜の表面の親水性を向上させ、現像性および耐汚れ性を向上させる。
フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
リン酸化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
フッ素化合物とリン酸化合物の組み合わせは、特に限定されないが、フッ素化合物がフッ化ジルコン酸ナトリウムであり、リン酸塩化合物がリン酸二水素ナトリウムであるのが好ましい。
水溶液中のフッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.5g/L以上であるのが好ましく、0.8g/L以上であるのがより好ましく、また、廃液処理コストが低くなる点で、4.0g/L以下であるのが好ましく、2.5g/L以下であるのがより好ましい。
封孔処理液中に含まれるフッ素イオン濃度は、290mg/L以上であるのが好ましく、460mg/L以上であるのがより好ましく、また、2200mg/L以下であるのが好ましく、1400mg/L以下であるのがより好ましい。
水溶液中のリン酸化合物の濃度は、親水性を十分に付与する点で、1.0g/L以上であるのが好ましく、1.5g/L以上であるのがより好ましく、また、廃液処理コストが低くなる点で、10.0g/L以下であるのが好ましく、4.0g/L以下であるのがより好ましい。
封孔処理液中に含まれるリン酸イオン濃度は、610mg/L以上であるのが好ましく、920mg/L以上であるのがより好ましく、また、6000mg/L以下であるのが好ましく、2400mg/L以下であるのがより好ましい。
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、フッ素化合物とリン酸化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
水溶液に用いられる水としては、井水または純水(イオン交換水)が好適に挙げられる。中でも、水中のカルシウムおよび/またはマグネシウムとフッ素イオンおよび/またはリン酸イオンとが反応して水溶液が白濁するのを防止する点で、純水(イオン交換水)を用いるのが好ましい。
また、水溶液の温度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、40℃以上であるのが好ましく、60℃以上であるのがより好ましく、また、水の蒸発を抑制する点で、95℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH3.0以上であるのが好ましく、pH3.2以上であるのがより好ましく、また、pH5.0以下であるのが好ましく、pH3.8以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔が、より十分に行われる。
封孔処理中は、常にpH管理を行い、pHは、リン酸または水酸化ナトリウムを添加して調整するのが好ましい。
水溶液の製造方法は、特に限定されず、フッ素化合物およびリン酸化合物を水に溶解させて得ることができる。この場合、フッ素化合物およびリン酸化合物を同時にまたは順に水に溶解させてもよく、フッ素化合物およびリン酸化合物の少なくとも一方を水に溶解させてから、混合してもよい。
粉体のリン酸化合物およびフッ素化合物を用いる場合は、フッ素化合物の解離を促進させるために、フッ素化合物を先に水に溶解させるのが好ましい。
フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、スプレー法が好ましい。スプレー法によれば、アルミニウム板の裏面が処理されないため、封孔処理液の疲労が小さくなるので、使用量が少なくなる。
封孔処理液中には、アルミニウムが溶出するが、アルミニウムイオン濃度は10〜250mg/Lの範囲内に管理するのが好ましく、100〜200mg/Lの範囲内に管理するのがより好ましい。アルミニウムイオン濃度が10mg/L以上であると、封孔処理液の更新量を抑制することができる。また、アルミニウムイオン濃度が250mg/L以下であると、フッ化アルミン酸ナトリウム(Na3AlF6、氷晶石)やリン酸アルミニウムが析出しにくくなり、フィルターでろ過したときに詰まりにくくなる。
アルミニウムイオン濃度の管理は、封孔処理液の更新量を調整することにより行う。
また、封孔処理液中には、陽極酸化処理工程からの硫酸の持ち込みや、陽極酸化皮膜中に含まれるSO4の溶解により、硫酸イオンが含まれる。硫酸イオンの濃度は、10〜200mg/Lであるのが好ましく、50〜150mg/Lであるのがより好ましい。硫酸イオン濃度が10mg/L以上であると、封孔処理液の更新量を抑制することができる。また、硫酸イオン濃度が200mg/L以下であると、封孔処理液の電気伝導度に及ぼす影響が小さくなり、より正確な濃度測定が可能となる。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法においては、この封孔処理において、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を、上述した本発明の測定方法により算出し、算出された値に基づいて、フッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を管理する。
具体的には、封孔処理中に、フッ素化合物および/またはリン酸化合物の濃度が所望の値より低くなった場合には、例えば、あらかじめ調製されたフッ素化合物の濃縮液および/またはリン酸化合物の濃縮液を封孔処理液中に添加する。また、蒸発等により、これらの濃度が高くなった場合には、水を添加する。
なお、封孔処理は、溶出したアルミニウムと封孔処理液中のナトリウム、フッ素およびリン酸が反応してフッ化アルミン酸ナトリウムやリン酸アルミニウムを生成して液が白濁を防止するため、フィルターによるろ過および沈降槽によるこれらの除去を行いつつ、循環タンクの封孔処理液を常時フィルターによりろ過しながら行うのが好ましい。
また、フィルターは詰まりやすいので、ろ過器を2系統以上設け、フィルターの圧力の管理を行って、詰まったフィルターは逆洗浄により残渣を取り除きながら、ろ過器を切り替えつつ封孔処理を行うのが好ましい。
<親水化処理>
本発明においては、封孔処理後、親水化処理を施すのが好ましい。親水化処理としては、例えば、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
また、特開昭62−19494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−33692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−97892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−56498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
親水化処理は、20〜100℃の範囲の温度で行われるのが好ましく、20〜75℃の範囲の温度で行われるのがより好ましい。
親水化処理の方法は、特に限定されないが、浸せき法、スプレー法が好適に例示される。
浸せき法の場合、浸せきさせる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
<バックコート層>
上述したようにして得られる平版印刷版用支持体には、平版印刷版原版としたときに、重ねても画像記録層が傷付かないように、裏面(画像記録層が設けられない側の面)に、有機高分子化合物からなる被覆層(以下「バックコート層」ともいう。)を必要に応じて設けてもよい。
バックコート層の主成分としては、ガラス転移点が20℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いるのが好ましい。
飽和共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸ユニットとジオールユニットとからなる。ジカルボン酸ユニットとしては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、シュウ酸、スベリン酸、セバチン酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
バックコート層は、更に、着色のための染料や顔料、支持体との密着性を向上させるためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸、カチオン性ポリマー、滑り剤として通常用いられるワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンからなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜含有することができる。
バックコート層の厚さは、基本的には合紙がなくても、後述する記録層を傷付けにくい程度であればよく、0.01〜8μmであるのが好ましい。厚さが0.01μm未満であると、平版印刷版原版を重ねて取り扱った場合の記録層の擦れ傷を防ぐことが困難である。また、厚さが8μmを超えると、印刷中、平版印刷版周辺で用いられる薬品によってバックコート層が膨潤して厚みが変動し、印圧が変化して印刷特性を劣化させることがある。
バックコート層を支持体の裏面に設ける方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、上記バックコート層用成分を適当な溶媒に溶解し溶液にして塗布し、または、乳化分散液して塗布し、乾燥する方法;あらかじめフィルム状に成形したものを接着剤や熱での支持体に貼り合わせる方法;溶融押出機で溶融被膜を形成し、支持体に貼り合わせる方法が挙げられる。好適な厚さを確保するうえで最も好ましいのは、バックコート層用成分を適当な溶媒に溶解し溶液にして塗布し、乾燥する方法である。この方法においては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤を単独でまたは混合して、溶媒として用いることができる。
平版印刷版原版の製造においては、裏面のバックコート層と表面の画像記録層のどちらを先に支持体上に設けてもよく、また、両者を同時に設けてもよい。
本発明の平版印刷版用支持体の製造方法は、封孔処理において、上述した本発明の測定方法を用いているため、得られる平版印刷版用支持体は、連続的に製造した場合であっても、品質が一定となる。
<画像記録層>
本発明により得られる平版印刷版用支持体には、画像記録層を設けて平版印刷版原版とすることができる。画像記録層には、感光性組成物が用いられる。
本発明に好適に用いられる感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルポジ型感光性組成物(以下、この組成物およびこれを用いた画像記録層について、「サーマルポジタイプ」という。)、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有するサーマルネガ型感光性組成物(以下、同様に「サーマルネガタイプ」という。)、光重合型感光性組成物(以下、同様に「フォトポリマータイプ」という。)、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有するネガ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルネガタイプ」という。)、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性組成物(以下、同様に「コンベンショナルポジタイプ」という。)、特別な現像工程を必要としない感光性組成物(以下、同様に「無処理タイプ」という。)が挙げられる。
また、本発明により得られる平版印刷版用支持体は、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ等として、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術に好適に用いられる。
以下、これらの好適な感光性組成物について説明する。
<サーマルポジタイプ>
<感光層>
サーマルポジタイプの感光性組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルポジタイプの画像記録層においては、光熱変換物質が赤外線レーザ等の光のエネルギーを熱に変換し、その熱がアルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ溶解性を低下させている相互作用を効率よく解除する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、分子中に酸性基を含有する樹脂およびその2種以上の混合物が挙げられる。特に、フェノール性ヒドロキシ基、スルホンアミド基(−SO2NH−R(式中、Rは炭化水素基を表す。))、活性イミノ基(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R(各式中、Rは上記と同様の意味である。))等の酸性基を有する樹脂がアルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
とりわけ、赤外線レーザ等の光による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有する樹脂が好ましく、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合−ホルムアルデヒド樹脂(フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂)等のノボラック樹脂が好適に挙げられる。
更に、特開2001−305722号公報(特に[0023]〜[0042])に記載されている高分子化合物、特開2001−215693号公報に記載されている一般式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物、特開2002−311570号公報(特に[0107])に記載されている高分子化合物も好適に挙げられる。
光熱変換物質としては、記録感度の点で、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好適に挙げられる。染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)が挙げられる。中でも、シアニン染料が好ましく、とりわけ特開2001−305722号公報に記載されている一般式(I)で表されるシアニン染料が好ましい。
サーマルポジタイプの感光性組成物中には、溶解阻止剤を含有させることができる。溶解阻止剤としては、例えば、特開2001−305722号公報の[0053]〜[0055]に記載されているような溶解阻止剤が好適に挙げられる。
また、サーマルポジタイプの感光性組成物中には、添加剤として、感度調節剤、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼出し剤、画像着色剤としての染料等の化合物、塗布性および処理安定性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。これらについては、特開2001−305722号公報の[0056]〜[0060]に記載されているような化合物が好ましい。
上記以外の点でも、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている感光性組成物が好ましく用いられる。
また、サーマルポジタイプの画像記録層は、単層に限らず、2層構造であってもよい。
2層構造の画像記録層(重層系の画像記録層)としては、支持体に近い側に耐刷性および耐溶剤性に優れる下層(以下「A層」という。)を設け、その上にポジ画像形成性に優れる層(以下「B層」という。)を設けたタイプが好適に挙げられる。このタイプは感度が高く、広い現像ラチチュードを実現することができる。B層は、一般に、光熱変換物質を含有する。光熱変換物質としては、上述した染料が好適に挙げられる。
A層に用いられる樹脂としては、スルホンアミド基、活性イミノ基、フェノール性ヒドロキシ基等を有するモノマーを共重合成分として有するポリマーが耐刷性および耐溶剤性に優れている点で好適に挙げられる。B層に用いられる樹脂としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂が好適に挙げられる。
A層およびB層に用いられる組成物には、上記樹脂のほかに、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、特開2002−3233769号公報の[0062]〜[0085]に記載されているような種々の添加剤が好適に用いられる。また、上述した特開2001−305722号公報の[0053]〜[0060]に記載されている添加剤も好適に用いられる。
A層およびB層を構成する各成分およびその含有量については、特開平11−218914号公報に記載されているようにするのが好ましい。
<中間層>
サーマルポジタイプの画像記録層と支持体との間には、中間層を設けるのが好ましい。中間層に含有される成分としては、特開2001−305722号公報の[0068]に記載されている種々の有機化合物が好適に挙げられる。
<その他>
サーマルポジタイプの画像記録層の製造方法および製版方法については、特開2001−305722号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<サーマルネガタイプ>
サーマルネガタイプの感光性組成物は、硬化性化合物と光熱変換物質とを含有する。サーマルネガタイプの画像記録層は、赤外線レーザ等の光で照射された部分が硬化して画像部を形成するネガ型の感光層である。
<重合層>
サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、重合型の画像記録層(重合層)が好適に挙げられる。重合層は、光熱変換物質と、ラジカル発生剤と、硬化性化合物であるラジカル重合性化合物と、バインダーポリマーとを含有する。重合層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱によりラジカル発生剤が分解してラジカルが発生し、発生したラジカルによりラジカル重合性化合物が連鎖的に重合し、硬化する。
光熱変換物質としては、例えば、上述したサーマルポジタイプに用いられる光熱変換物質が挙げられる。特に好ましいシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の[0017]〜[0019]に記載されているものが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩が好適に挙げられる。特に、特開2001−133969号公報の[0030]〜[0033]に記載されているオニウム塩が好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーが好適に挙げられる。水または弱アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが好適に挙げられる。中でも、アリル基、アクリロイル基等の不飽和基またはベンジル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れている点で好適である。
ラジカル重合性化合物およびバインダーポリマーについては、特開2001−133969号公報の[0036]〜[0060]に詳細に記載されているものを用いることができる。
サーマルネガタイプの感光性組成物中には、特開2001−133969号公報の[0061]〜[0068]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤)を含有させるのが好ましい。
重合層の製造方法および製版方法については、特開2001−133969号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
<酸架橋層>
また、サーマルネガタイプの画像記録層の一つとして、酸架橋型の画像記録層(酸架橋層)も好適に挙げられる。酸架橋層は、光熱変換物質と、熱酸発生剤と、硬化性化合物である酸により架橋する化合物(架橋剤)と、酸の存在下で架橋剤と反応しうるアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する。酸架橋層においては、光熱変換物質が吸収した赤外線を熱に変換し、この熱により熱酸発生剤が分解して酸が発生し、発生した酸により架橋剤とアルカリ可溶性高分子化合物とが反応し、硬化する。
光熱変換物質としては、重合層に用いられるのと同様のものが挙げられる。
熱酸発生剤としては、例えば、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の熱分解化合物が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物;N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物が挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーが挙げられる。
<フォトポリマータイプ>
光重合型感光性組成物は、付加重合性化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを含有する。
付加重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物が好適に挙げられる。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、例えば、モノマー、プレポリマー、これらの混合物等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
また、付加重合性化合物としては、ウレタン系付加重合性化合物も好適に挙げられる。
光重合開始剤としては、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を、使用する光源の波長により適宜選択して用いることができる。例えば、特開2001−22079号公報の[0021]〜[0023]に記載されている開始系が好適に挙げられる。
高分子結合剤は、光重合型感光性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、画像記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に対して可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が用いられる。そのような有機高分子重合体としては、特開2001−22079号公報の[0036]〜[0063]に記載されているものが好適に挙げられる。
フォトポリマータイプの光重合型感光性組成物中には、特開2001−22079号公報の[0079]〜[0088]に記載されている添加剤(例えば、塗布性を向上させるための界面活性剤、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤)を含有させるのが好ましい。
また、フォトポリマータイプの画像記録層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、その共重合体が挙げられる。
更に、特開2001−228608号公報の[0124]〜[0165]に記載されているような中間層または接着層を設けるのも好ましい。
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物は、ジアゾ樹脂または光架橋樹脂を含有する。中でも、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物;p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
結合剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体が挙げられる。具体的には、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸からなる多元共重合体が挙げられる。
コンベンショナルネガタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−281425号公報の[0014]〜[0015]に記載されている焼出し剤、染料、塗膜の柔軟性および耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルネガタイプの感光層の下には、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けるのが好ましい。
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物は、キノンジアジド化合物を含有する。中でも、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物が好適に挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂が挙げられる。
コンベンショナルポジタイプの感光性組成物には、添加剤として、特開平7−92660号公報の[0024]〜[0027]に記載されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や、特開平7−92660号公報の[0031]に記載されているような塗布性を向上させるための界面活性剤を含有させるのが好ましい。
コンベンショナルポジタイプの感光層の下には、上述したコンベンショナルネガタイプに好適に用いられる中間層と同様の中間層を設けるのが好ましい。
<無処理タイプ>
無処理タイプの感光性組成物には、熱可塑性微粒子ポリマー型、マイクロカプセル型、スルホン酸発生ポリマー含有型等が挙げられる。これらはいずれも光熱変換物質を含有する感熱型である。光熱変換物質は、上述したサーマルポジタイプに用いられるのと同様の染料が好ましい。
熱可塑性微粒子ポリマー型の感光性組成物は、疎水性かつ熱溶融性の微粒子ポリマーが親水性高分子マトリックス中に分散されたものである。熱可塑性微粒子ポリマー型の画像記録層においては、露光により発生する熱により疎水性の微粒子ポリマーが溶融し、互いに融着して疎水性領域、即ち、画像部を形成する。
微粒子ポリマーとしては、微粒子同士が熱により溶融合体するものが好ましく、表面が親水性で、湿し水等の親水性成分に分散しうるものがより好ましい。具体的には、ReseachDisclosureNo.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号および同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーが好適に挙げられる。中でも、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルが好ましい。親水性表面を有する微粒子ポリマーとしては、例えば、ポリマー自体が親水性であるもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させて表面を親水性化したものが挙げられる。
微粒子ポリマーは、反応性官能基を有するのが好ましい。
マイクロカプセル型の感光性組成物としては、特開2000−118160号公報に記載されているもの、特開2001−277740号公報に記載されているような熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセル型が好適に挙げられる。
スルホン酸発生ポリマー含有型の感光性組成物に用いられるスルホン酸発生ポリマーとしては、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマーが挙げられる。
無処理タイプの感光性組成物に、親水性樹脂を含有させることにより、機上現像性が良好となるばかりか、感光層自体の皮膜強度も向上する。親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するもの、親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
無処理タイプの画像記録層は、特別な現像工程を必要とせず、印刷機上で現像することができる。無処理タイプの画像記録層の製造方法および製版印刷方法については、特開2002−178655号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、コンベンショナルネガタイプ、コンベンショナルポジタイプおよびフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
1.データテーブルの作成
種々の濃度のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムを含有する水溶液を調製し、25〜50℃の5℃ごとの各液温において、電気伝導度を測定し、また、フッ素イオン電極法を用いてフッ素イオン濃度を測定した。得られた結果から、データテーブルを作成した。
図1に液温25℃における電気伝導度とフッ素イオン電極法によるフッ素イオン濃度との関係を表すデータテーブルを示す。
種々の濃度のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムを含有する水溶液を調製し、25〜50℃の5℃ごとの各液温において、電気伝導度を測定し、また、超音波伝搬速度を測定した。得られた結果から、データテーブルを作成した。
図2に液温40℃における電気伝導度と超音波伝搬速度との関係を表すデータテーブルを示す。
種々の濃度のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムを含有する水溶液を調製し、25〜50℃の5℃ごとの各液温において、電気伝導度を測定し、また、pHを測定した。得られた結果から、データテーブルを作成した。
図3に液温25℃における電気伝導度とpHとの関係を表すデータテーブルを示す。
2.平版印刷版用支持体の製造
(実施例1)
Si:0.073質量%、Fe:0.27質量%、Cu:0.1質量%、Mn:0.000質量%、Mg:0.000質量%、Cr:0.001質量%、Zn:0.003質量%、Ti:0.002質量%を含有し、残部はアルミニウムおよび不可避不純物である、ウェブ状のアルミニウム板を以下に示す表面処理に供し、平版印刷版用支持体を得た。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(k)の各種処理を連続的に行うことにより行った。
(a)機械的粗面化処理
図6に示したような装置を使って、研磨材(パミストンを用い、その中に含まれる粒子の平均粒径が20μmとなるように分級した研磨材)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図6において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷を、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して管理し、粗面化処理後の平均表面粗さが0.45〜0.55μmになるように押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(b)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、水酸化ナトリウム370g/Lおよびアルミニウムイオン100g/Lを含有する水溶液(液温60℃)をスプレー管より吹き付けて、アルカリエッチング処理を行った。後の工程で電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は10g/m2であった。
その後、ニップローラで液切りを行い、ついで水洗処理を行い、更にニップローラで液切りを行った。水洗処理は、自由落下カーテン状液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗することにより行った。
(c)デスマット処理
つぎに、デスマット処理を行った。デスマット処理には、次工程の電気化学的粗面化処理に用いた硝酸水溶液の廃液(液温35℃)を用いた。デスマット処理は、アルミニウム板にデスマット液をスプレーにて吹き付けて5秒間デスマット処理を行った。
その後、液切りを行わず、次工程までアルミニウム板に硝酸水溶液が付着している状態でハンドリングした。デスマット処理槽を通過した後、硝酸が付着している状態でのハンドリング時間は25秒であった。
(d)電気化学的粗面化処理(硝酸電解)
電気化学的粗面化処理を行う直前に、アルミニウム板に電気化学的粗面化処理に用いる硝酸電解液と同じ組成および温度の電解液を吹き付けた。
ついで、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸濃度10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液(液温35℃)であった。交流電源波形は図5に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1.2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図6に示すものを2槽使用した。
電流密度は交流のピーク時におけるアルミニウム板のアノード反応時で60A/dm2であった。アルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で195C/dm2であった。
アルミニウム板と電解液の相対速度は、電解槽内の平均で1.5m/sec(1〜2m/sec)であった。
その後、ニップローラで液切りを行い、ついで水洗処理を行い、更にスプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗処理を行った。更に、ニップローラで液切りを行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、水酸化ナトリウム370g/Lおよびアルミニウムイオン100g/Lを含有する水溶液(液温64℃)をスプレー管より7秒間吹き付けて、アルカリエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理を施した面のアルミニウム溶解量は3g/m2であった。
その後、ニップローラで液切りを行い、ついで水洗処理を行い、更にニップローラで液切りを行った。水洗処理は、自由落下カーテン状液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗することにより行った。
(f)デスマット処理
つぎに、デスマット処理を行った。デスマット処理には、300g/Lの硫酸水溶液中にアルミニウムイオン2g/Lを溶解させた液(液温35℃)を用いた。デスマット処理は、アルミニウム板にデスマット液をスプレーにて吹き付けて10秒間デスマット処理を行った。
その後、ニップローラで液切りを行い、ついで、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗処理を行った。更にニップローラで液切りを行った。
(g)電気化学的粗面化処理(塩酸電解)
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸濃度5g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を5g/Lに調整した電解液(液温35℃)であった。交流電源波形は図5に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図6に示すものを1槽使用した。
電流密度は交流のピーク時におけるアルミニウム板のアノード反応時で50A/dm2であった。アルミニウム板がアノード反応時の電気量の総和とカソード反応時の電気量の総和の比は0.95であった。アルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板のアノード反応時の電気量の総和で65C/dm2であった。
アルミニウム板と電解液の相対速度は、電解槽内の平均で1.5m/sec(1〜2m/sec)であった。
その後、ニップローラで液切りを行い、ついで水洗処理を行い、更にニップローラで液切りを行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、水酸化ナトリウム50g/Lおよびアルミニウムイオン5g/Lを含有する水溶液(液温35℃)をスプレー管より吹き付けて、アルカリエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理を施した面のアルミニウム溶解量は0.2g/m2であった。
その後、ニップローラで液切りを行い、ついで水洗処理を行い、更にニップローラで液切りを行った。水洗処理は、自由落下カーテン状液膜により水洗処理する装置を用いて水洗し、その後、スプレー管に取り付けられたスプレーチップより扇状に噴き出す水で5秒間水洗することにより行った。
(i)デスマット処理
つぎに、デスマット処理を行った。デスマット処理には、次工程の陽極酸化処理工程で発生した廃液(170g/Lの硫酸水溶液中にアルミニウムイオン5g/L溶解させた液、液温35℃)を用いた。デスマット処理は、アルミニウム板にデスマット液をスプレーにて吹き付けて5秒間デスマット処理を行った。
その後、ニップローラで液切りを行った。液切り後、陽極酸化処理までの間には水洗処理を行わなかった。
(j)陽極酸化処理
つぎに、アルミニウム板に陽極酸化処理を施した。陽極酸化処理は、170g/Lの硫酸水溶液に硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を5g/Lとした電解液(液温33℃)および直流電源を用いて、電解処理槽内のアルミニウム板に加わる電流密度が、アルミニウム板がアノード反応する間の平均電流密度で15A/dm2となるような条件で行い、2.4g/m2の陽極酸化皮膜を設けた。
(k)封孔処理
ついで、陽極酸化皮膜のマイクロポアを塞ぐ目的で封孔処理を施した。封孔処理は、1g/Lのフッ化ジルコン酸ナトリウム(Na2ZrF6)および3g/Lのリン酸二水素ナトリウム二水和物(NaH2PO4・2H2O)を含有する水溶液(液温75±1℃)を封孔処理液として用い、この封孔処理液をアルミニウム板に10秒間スプレーで吹き付けることにより、行った。封孔処理液は、純水(イオン交換水)を用いて調製した。封孔処理液中のアルミニウムイオン濃度は150mg/L、硫酸イオン濃度は100mg/Lであった。
ウェブ状のアルミニウム板に、連続的に封孔処理を施している間中(約24時間)、以下のようにして、封孔処理液中のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムの濃度を管理した。
まず、封孔処理液の電気伝導度を電気伝導度計により測定し、同時に、封孔処理液のフッ素イオン濃度をフッ素イオン電極によりを測定した。なお、測定に用いた液は、濃度測定装置に入る前の液温および濃度測定装置内での液温が40±0.3℃になるように管理した。また、濃度測定装置に入る前の液は、孔径0.22μmのフィルターによりろ過して、微細粒子を除去した。更に、フッ素イオン電極によりフッ素イオン濃度を測定する直前に、イオン強度調整剤を含有する水溶液(クエン酸濃度2.6質量%、クエン酸三ナトリウム二水和物30質量%;液温40±0.5℃)を、測定しようとする封孔処理液に対して、体積比で、イオン強度調整剤を含有する水溶液/封孔処理液=1/10となるように添加して混合させた。
測定された電気伝導度およびフッ素イオン濃度と、上記で得られたデータテーブルとから、封孔処理液中のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムの濃度を算出した。この際、測定された値がデータテーブルの複数のデータの中間に位置する場合は、計算により算出した。
ついで、算出された濃度に基づいて、純水(イオン交換水)、フッ化ジルコン酸ナトリウム水溶液およびリン酸二水素ナトリウム水溶液のいずれかを封孔処理液に補給して、フッ素化合物およびリン酸化合物の濃度が一定範囲内になるようにした。フッ化ジルコン酸ナトリウム水溶液としては、フッ化ジルコン酸ナトリウムを純水(イオン交換水)に溶解させて濃度4g/Lとした水溶液(液温40℃)を用いた。また、リン酸二水素ナトリウム水溶液は、リン酸二水素ナトリウム二水和物を純水(イオン交換水)に溶解させて濃度100g/Lとした水溶液(液温40℃)を用いた。
なお、本明細書中、リン酸二水素ナトリウム二水和物を水に溶解させて調製したリン酸二水素ナトリウム水溶液の濃度は、水溶液の調製に用いたリン酸二水素ナトリウム二水和物の質量を調製後の水溶液の体積で除した値で示す。
濃度測定値は、測定装置内の配管の長さや電極の応答特性により、遅れ時間が生じるため、5分ごとの濃度変化のトレンドをとり、最新の3回分の濃度変化から補給する補給液の種類および量を決定した。
封孔処理液のpHも同時に測定したところ、封孔処理をしている間中、pH3〜4の間であった。
上述したようにして、フッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を管理した結果、封孔処理をしている間中、フッ化ジルコン酸ナトリウムの濃度は0.5〜1.5g/Lの範囲内にすることができ、リン酸二水素ナトリウム二水和物の濃度は2〜4g/Lの範囲内にすることができた。
なお、封孔処理は、液の白濁を防止するため、フィルターによるろ過および沈降槽による浮遊物の除去を行いつつ、循環タンクの封孔処理液を常時フィルターによりろ過しながら行った。これにより、封孔処理液中のフッ化アルミン酸ナトリウムやリン酸アルミニウムを除去した。
フィルターは詰まりやすいので、ろ過器を3系統設け、フィルターの圧力の管理を行って、詰まったフィルターは逆洗浄により残渣を取り除きながら、ろ過器を切り替えつつ封孔処理を行った。
封孔処理液の廃液は、一旦廃液タンクに貯蔵し、その後、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸バンド、高分子凝集剤、水酸化ナトリウム、硫酸等を用いた廃液処理を行い、廃液中のフッ素およびリン酸の濃度をいずれも8ppm以下にしてから排出した。
封孔処理後、ニップロールで液切りし、水洗処理し、更にニップロールで液切りした。
(l)親水化処理
ついで、親水化処理を行った。親水化処理は、1質量%のケイ酸ナトリウム水溶液(液温50℃)にアルミニウム板を10秒間浸せきさせることにより、行った。
蛍光X線分析装置で測定したアルミニウム表面のSi量は、1.4mg/m2であった。
その後、ニップローラで液切りを行い、ついで水洗処理を行い、更にニップローラで液切りを行った。
更に、90℃の風を10秒間吹き付けて乾燥させて、平版印刷版用支持体を得た。
この平版印刷版用支持体の表面を、走査型電子顕微鏡(JSM−5500、日本電子社製。以下同じ。)を用いて、倍率50000倍で観察したところ、直径0.1μm程度の微細な凹凸が均一にかつ緻密に生成していた。
また、走査型電子顕微鏡を用いて倍率2000倍で観察したところ、直径1〜5μmの凹凸が均一に生成していた。
なお、直径0.1μm程度の微細な凹凸は、直径1〜5μmの凹凸に重畳して生成していた。
(実施例2)
上記(k)封孔処理の封孔処理液の濃度管理において、濃度測定する封孔処理液を事前に脱気し、その封孔処理液の電気伝導度および超音波伝搬速度を測定し、測定された電気伝導度および超音波伝搬速度と、上記で得られたデータテーブルとから、封孔処理液中のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムの濃度を算出した以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
その結果、封孔処理をしている間中、フッ化ジルコン酸ナトリウムの濃度は0.5〜1.5g/Lの範囲内にすることができ、リン酸二水素ナトリウム二水和物の濃度は2〜4g/Lの範囲内にすることができた。
(実施例3)
上記(k)封孔処理の封孔処理液の濃度管理において、封孔処理液の電気伝導度およびpHを測定し、測定された電気伝導度およびpHと、上記で得られたデータテーブルとから、封孔処理液中のフッ化ジルコン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムの濃度を算出した以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
その結果、封孔処理をしている間中、フッ化ジルコン酸ナトリウムの濃度は0.5〜1.5g/Lの範囲内にすることができ、リン酸二水素ナトリウム二水和物の濃度は2〜4g/Lの範囲内にすることができた。
(実施例4)
上記(k)封孔処理の封孔処理液の濃度管理において、イオン強度調整剤を含有する水溶液を、測定しようとする封孔処理液に添加する前に、封孔処理液をイオン交換繊維(キレストファイバー(GRY−L)、キレスト社製)に通してアルミニウムイオンおよびジルコニウムイオンを除去した以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版用支持体を得た。
その結果、フッ素イオン電極を用いた濃度測定装置における指示値の再現性が、実施例1に比べて更に高くなり、フッ素イオン電極を校正する頻度を約1/2にすることができた。
3.平版印刷版原版の作製および印刷試験
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、下記組成の画像記録層用塗布液をバー塗布した後、70℃で60秒間、オーブンを用いて乾燥させ、乾燥塗布量0.8g/m2の画像記録層を形成させて平版印刷版原版を得た。
<画像記録層用塗布液組成>
・水 55g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 30g
・メタノール 5g
・後述するマイクロカプセル液 5g(固形分換算)
・エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬(株)製、SR9035、エチレンオキサイド付加モル数15、分子量1000) 0.2g
・重合開始剤(上記OS−7) 0.5g
・下記式で表される赤外線吸収剤(1) 0.15g
・エチレングリコール 0.1g
・フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、メガファックF−171) 0.1g
Figure 2005265501

<マイクロカプセル液>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、下記式で表される赤外線吸収剤(2)の0.35g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成製ODB)1gおよび界面活性剤(竹本油脂(株)製、パイオニンA−41C)0.1gを酢酸エチル17gに溶解させた。水相成分としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−205)の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化させた。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分間かくはんした後、40℃で3時間かくはんした。その後、蒸留水を用いて希釈し、固形分濃度20質量%のマイクロカプセル液を得た。マイクロカプセルの平均粒径は0.3μmであった。
Figure 2005265501

得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXを用いて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で画像露光した。
その後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。ついで、湿し水(IF102(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水=4/96(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを供給した後、印刷用紙に毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
その結果、いずれの平版印刷版原版も、印刷機上の現像性、耐刷性および耐汚れ性に優れていた。
液温25℃における電気伝導度とフッ素イオン電極法によるフッ素イオン濃度との関係を表すデータテーブルである。 液温40℃における電気伝導度と超音波伝搬速度との関係を表すデータテーブルである。 液温25℃における電気伝導度とpHとの関係を表すデータテーブルである。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法におけるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。

Claims (3)

  1. 陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔するための水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法であって、
    前記水溶液の電気伝導度と、前記水溶液のフッ素イオン電極法により求められるフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHとを測定する工程と、
    測定されたフッ素イオン濃度、超音波伝搬速度またはpHと、あらかじめ作成されたデータテーブルとから、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を算出する工程と
    を具備する、水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法。
  2. 前記フッ素化合物がフッ化ジルコン酸ナトリウムであり、前記リン酸化合物がリン酸二水素ナトリウムである、請求項1に記載の水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法。
  3. アルミニウム板に、少なくとも、陽極酸化処理と、前記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封孔するためのフッ素化合物およびリン酸化合物を含有する水溶液を用いた封孔処理とを含む平版印刷版用支持体の製造方法であって、
    前記封孔処理において、前記水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を、請求項1または2に記載の水溶液中のフッ素化合物およびリン酸化合物の濃度測定方法により算出し、算出された値に基づいて、フッ素化合物およびリン酸化合物の濃度を管理する平版印刷版用支持体の製造方法。
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