JP4178896B2 - Lr複合部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器に設けられるLR複合部品に関するものである。
【0002】
【背景技術】
例えば、移動体通信機器等の電子機器は小型化が進んでおり、それに伴って電子機器を構成する電子部品には小型化が要求されている。このような状況のなかで、インダクタンス(L)素子と抵抗体(R)等を一つのチップ状の部品に内蔵した複合部品が提案されている。
【0003】
例えば、その提案の一例が図12(a)の斜視図および図12(b)の分解図に示されている(例えば特許文献1の図10および第5頁参照)。この提案の複合部品35はLCR複合部品であり、コンデンサが形成されているコンデンサブロック36と、ガラス層37と、インダクタンス成分を持つコイルパターン38と、ガラス層39と、抵抗パターン40と、ガラス層41とが順に積層形成されている積層体42を有する。この積層体42の側面には、コイルパターン38の外部接続端部38aに接続する端子電極43と、抵抗パターン40の外部接続端部40aに接続する端子電極44と、コンデンサブロック36に形成されているコンデンサに接続する端子電極45a,45bとが互いに間隔を介して形成されている。
【0004】
それら端子電極43,44,45a,45bによって、積層体42の内部に形成されているコンデンサブロック36のコンデンサとコイルパターン38と抵抗パターン40は、それぞれ、外部の回路に接続することが可能になっている。また、コイルパターン38と抵抗パターン40の各外部接続端部38a,40aとは異なる他方側の端部38b,40b同士は、コイルパターン38と抵抗パターン40との間のガラス層39に形成されたスルーホール46を介して接続されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−182892号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、その提案例では、ガラス層39およびスルーホール形成用孔部は印刷工法を利用して形成されている。その印刷工法の加工精度に起因して、ガラス層39に形成されるスルーホール46の大きさと形成位置がばらつくという問題がある。
【0007】
抵抗パターン40の抵抗値には、抵抗パターン40と端子電極44との接続部から、抵抗パターン40とスルーホール46との接続部までの長さL(図13の断面図参照)が関与している。スルーホール46の大きさや形成位置がずれてスルーホール46の端縁位置が例えば図13の点線に示されるようにずれてしまうと、抵抗パターン40の抵抗値に関与する前記長さLが変化してしまい、これによって、抵抗パターン40の抵抗値が変化してしまう。つまり、スルーホール46の大きさや形成位置のばらつきに起因して抵抗パターン40の抵抗値がばらつくという問題が生じる。
【0008】
また、コイルパターン38と抵抗パターン40の各外部接続端部38a,40aは、それぞれ、図13の断面図に示されるように、端面のみでもって端子電極43,44に接続しており、それらコイルパターン38と抵抗パターン40の各外部接続端部38a,40aと、端子電極43,44との接続面積は狭いものである。特に、抵抗パターン40は、抵抗成分を持たせるためにパターンの厚みを例えば数μm程度に薄くする必要がある。このため、抵抗パターン40の外部接続端部40aの端面面積は非常に狭く、これにより、抵抗パターン40と、端子電極44との接続の信頼性が低いという問題がある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、抵抗パターンの抵抗値のばらつきを抑制することができ、また、抵抗パターンと端子電極との接続の信頼性を向上できるLR複合部品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明のLR複合部品は、絶縁体基板上に抵抗成分を持つ抵抗パターンと、パターン間絶縁層と、インダクタンス成分を持つインダクタパターンと、保護用絶縁層とが順に積層形成された積層部を含む積層体を有し、抵抗パターンとインダクタパターンの各一端部同士はパターン間絶縁層に形成されたスルーホールを介して接続され、これら抵抗パターンとインダクタパターンの各他端部は、それぞれ、前記積層体の側面に離間形成された別々の端子電極に個別に接続されている構成を有しており、抵抗パターンの前記他端部が接続される端子電極の形成部位の積層体の側面部位においては、パターン間絶縁層の端面は抵抗パターンの端面よりも積層体の内側に引っ込んだ位置に配置されて抵抗パターンの端部には前記パターン間絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、端子電極は抵抗パターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、抵抗パターンの端面との接触部位との両方の接触部位で抵抗パターンと電気的に接続され、抵抗パターンの抵抗値を定める抵抗パターンの長さが前記パターン間絶縁層の端面から前記スルーホールまでの長さによって設定されており、前記パターン間絶縁層の端面およびスルーホールはフォトリソグラフィ工法を利用して形成されていることを特徴としている。
【0011】
第2の発明のLR複合部品は、絶縁体基板上に抵抗成分を持つ抵抗パターンと、パターン間絶縁層と、インダクタンス成分を持つインダクタパターンと、保護用絶縁層とが順に積層形成された積層部を含む積層体を有し、抵抗パターンとインダクタパターンの各一端部同士はパターン間絶縁層に形成されたスルーホールを介して接続され、これら抵抗パターンとインダクタパターンの各他端部は、それぞれ、前記積層体の側面に離間形成された別々の端子電極に個別に接続されている構成を有しており、抵抗パターンの端子電極接続側の部位は抵抗パターンの他の部位よりも幅広になっており、前記抵抗パターンの前記他端部が接続される端子電極の形成部位の積層体の側面部位においては、パターン間絶縁層の端部はこれを覆っている前記保護用絶縁層の端面よりも積層体の内側に引っ込んだ位置に配置され、さらに前記保護用絶縁層の端面は抵抗パターンの前記幅広部位の端面よりも前記積層体の内側に引っ込んだ位置に配置され、前記抵抗パターンの幅広部位の端部には前記保護用絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、端子電極は抵抗パターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、抵抗パターンの端面との接触部位との両方の接触部位で抵抗パターンと電気的に接続され、前記抵抗パターンの抵抗値を定める抵抗パターンの長さが前記保護用絶縁層の端面から前記パターン間絶縁層のスルーホールまでの長さによって設定されており、前記パターン間絶縁層のスルーホールおよび前記保護用絶縁層の端面はフォトリソグラフィ工法を利用して形成されていることを特徴としている。
【0012】
第3の発明のLR複合部品は、絶縁体基板上にインダクタンス成分を持つインダクタパターンと、パターン間絶縁層と、抵抗成分を持つ抵抗パターンと、保護用絶縁層とが順に積層形成された積層部を含む積層体を有し、インダクタパターンと抵抗パターンの各一端部同士はパターン間絶縁層に形成されたスルーホールを介して接続され、これらインダクタパターンと抵抗パターンの各他端部は、それぞれ、前記積層体の側面に離間形成された別々の端子電極に個別に接続されている構成を有しており、抵抗パターンの端子電極接続側の部位は抵抗パターンの他の部位よりも幅広になっており、前記保護用絶縁層の端面は抵抗パターンの前記幅広部位の端面よりも前記積層体の内側に引っ込んだ位置に配置され、前記抵抗パターンの幅広部位の端部には前記保護用絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、端子電極は抵抗パターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、抵抗パターンの端面との接触部との両方の接触部位で抵抗パターンと電気的に接続され、前記抵抗パターンの抵抗値を定める抵抗パターンの長さが前記保護用絶縁層の端面から前記パターン間絶縁層のスルーホールまでの長さによって設定されており、前記パターン間絶縁層のスルーホールおよび前記保護用絶縁層の端面はフォトリソグラフィ工法を利用して形成されていることを特徴としている。
【0013】
第4の発明は、第2又は第3の発明の構成を備え、抵抗パターンは帯状部位と当該帯状部位よりも幅広の端子電極接続側の部位とを有した略T字形状と成しており、帯状部位の幅をW1とし、帯状部位の長さをL1とし、端子電極接続側の幅広部の幅をW2とし、端子電極接続側の幅広部における帯状部位との接続部から保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端縁の配置位置までの長さをL2としたときに、それら帯状部位の幅W1と長さL1と、端子電極接続側の幅広部の幅W2と長さL2とは、(L2/L1)+2≦(W2/W1)の関係式を満たすことを特徴としている。
【0014】
第5の発明は、第1〜第4の発明のうちの何れか1つの発明の構成を備え、インダクタパターンの前記他端部が接続される端子電極の形成部位の積層体の側面部位においては、前記保護用絶縁層の端面がインダクタパターンの端面よりも積層体の内側に引っ込んだ位置に配置されてインダクタパターンの端子電極への接続端側には前記保護用絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、インダクタパターンが接続する端子電極は、インダクタパターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、インダクタパターンの端面との接触部位との両方の接触部位でインダクタパターンと電気的に接続されていることを特徴としている。
【0015】
第6の発明は、第1〜第5の発明のうちの何れか1つの発明の構成を備え、抵抗パターンとパターン間絶縁層とインダクタパターンと保護用絶縁層は、それぞれ、成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用して順次形成されていることを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1(a)には第1実施形態例のLR複合部品の模式的な斜視図が示され、図1(b)には図1(a)のLR複合部品のA−A部分の模式的な断面図が示され、図1(c)には第1実施形態例のLR複合部品の模式的な分解図が示されている。
【0018】
第1実施形態例のLR複合部品1は、絶縁体基板2と、抵抗成分を持つ抵抗パターン3と、パターン間絶縁層4と、インダクタンス成分を持つインダクタパターン5と、保護用絶縁層6と、端子電極7(7a,7b)とを有して構成されている。すなわち、このLR複合部品1では、絶縁体基板2と、抵抗パターン3と、パターン間絶縁層4と、インダクタパターン5と、保護用絶縁層6とが順に積層形成されて積層体8を構成し、この積層体8の互いに対向し合う側面のそれぞれに端子電極7(7a,7b)が形成されている。
【0019】
第1実施形態例では、絶縁体基板2は直方体状と成す。この絶縁体基板2を構成する絶縁材料の例としては、例えば、ガラスや、ガラスセラミックや、アルミナ等が挙げられる。
【0020】
抵抗パターン3は、全長に渡ってほぼ等幅な帯状パターンであり、絶縁体基板2の研磨処理後の平滑面に、成膜形成技術(例えば、スパッタリングや蒸着等の薄膜形成技術や、スクリーン印刷等の厚膜形成技術等)を利用して積層形成される。この抵抗パターン3の一端側の端面3aは端子電極7(7a)に接続され、抵抗パターン3の他端部3bは絶縁体基板2の側面よりも積層体8の内側の位置に配置されている。この抵抗パターン3の他端部3bはインダクタパターン5に接続するインダクタパターン接続部と成す。抵抗パターン3を構成する材料としては、例えば、体積抵抗率が4.0×10−7Ω・m以上となるものが挙げられ、例えば、NiCrやNiCu等の薄膜抵抗膜や、感光性抵抗材料などがある。
【0021】
なお、図1(b)の例では、抵抗パターン3の一端側の端面3aは、絶縁体基板2の側面2a(つまり、端子電極7(7a)の形成面)と面位置になるように形成されているが、例えば、図2の断面図に示されるように、抵抗パターン3の一端側の端面3aは絶縁体基板2の側面2aよりも内側に配置してもよい。
【0022】
パターン間絶縁層4は、例えば、感光性ポリイミド樹脂や、感光性ガラス材料等の絶縁材料により構成されており、抵抗パターン3の上部を覆うように絶縁体基板2の上面に積層形成されている。この第1実施形態例では、パターン間絶縁層4の形成領域に関して次に示すような特徴がある。図3には、絶縁体基板2と、抵抗パターン3と、パターン間絶縁層4との配置関係例がパターン間絶縁層4の上方側から見た平面図により示されている。
【0023】
第1実施形態例では、パターン間絶縁層4における端子電極7aの形成側の端縁4aは、絶縁体基板2の端子電極形成面2aよりも積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されている。このため、抵抗パターン3の端子電極接続側の端部上面にはパターン間絶縁層4が形成されない構成となっている。
【0024】
なお、図1、図3の例では、パターン間絶縁層4における端子電極7bの形成側の端縁4bは、絶縁体基板2の端子電極形成面2b(つまり、端子電極7(7b)の形成面)よりも積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されているが、図4に示されるように、そのパターン間絶縁層4の端縁4bは、絶縁体基板2の側面2bと面位置になるように形成してもよいものである。
【0025】
また、パターン間絶縁層4には、抵抗パターン3のインダクタパターン接続部3bに対応する位置に、スルーホール10が形成されている。
【0026】
インダクタパターン5はパターン間絶縁層4の上面に積層形成されたスパイラル形状のパターンである。このインダクタパターン5におけるスパイラル形状の内側の端部5aはパターン間絶縁層4に形成されたスルーホール10に接続され当該スルーホール10を介して抵抗パターン3のインダクタパターン接続部3bに接続されている。
【0027】
図1の例では、インダクタパターン5におけるスパイラル形状の外側の端部5cはインダクタパターン5の他の部位よりも幅広になって幅広部を形成しており、この幅広部(端部)5cの端面5bは、絶縁体基板2の側面2b(つまり、端子電極7(7b)の形成面)とほぼ面位置になるように形成されている。このインダクタパターン5の端子電極7b側の端面5bは端子電極7bに接続される。ところで、図1の例では、パターン間絶縁層4の端子電極7b側の端縁4bは絶縁体基板2の側面2bよりも積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されている。このために、インダクタパターン5の端子電極7b側の端縁5bが絶縁体基板2の側面2bとほぼ面位置になるようにインダクタパターン5を形成すると、必然的に、インダクタパターン5の端子電極7b側の端部(幅広部)5cの一部あるいは全部が、絶縁体基板2の上面に落ち込み形成されることになる。
【0028】
なお、そのインダクタパターン5の端子電極7b側の端面5bは、絶縁体基板2の側面2bと面位置に形成しなくともよく、例えば、図4に示されるように、絶縁体基板2の側面2bよりも内側に形成してもよい。また、図4に示すように、インダクタパターン5の端子電極7b側の端面5bは、パターン間絶縁層4の端縁4bよりも内側に配置してもよく、この場合には、インダクタパターン5の端子電極7b側の端部(幅広部)5cの全てが、他の部位と同様にパターン間絶縁層4上に積層形成されることになる。
【0029】
インダクタパターン5は、例えば、スパイラル形状パターンに形成したときの体積抵抗率が1.0×10−7Ω・m以下の抵抗率が低い導電材料により構成され、その例としては、例えば、AuやAgやAl等をスパッタリングや蒸着の薄膜形成手法により成膜されたものや、導電性ペーストや感光性導電ペースト等が挙げられる。
【0030】
保護用絶縁層6は、インダクタパターン5の上方側を覆うように形成されている。この保護用絶縁層6の端子電極7(7a,7b)の形成側の端縁6a,6bは、それぞれ、パターン間絶縁層4の端子電極側の端縁4a,4bよりも、積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されている。このため、抵抗パターン3の端子電極7a側の端部上面およびインダクタパターン5の端子電極7b側の端部5c上面には保護用絶縁層6が形成されない構成となっている。
【0031】
端子電極7a,7bは、積層体8の互いに対向し合う側面にそれぞれ形成されており、端子電極7aは抵抗パターン3に接続する抵抗パターン用端子電極と成し、端子電極7bはインダクタパターン5に接続するインダクタパターン用端子電極と成している。このような端子電極7(7a,7b)を構成する材料としては、例えば、Agや、Ag-Pdや、Cuや、NiCrや、NiCu等の導電材料が挙げられる。なお、端子電極7の表面上に、例えば湿式電解メッキにより、Niや、Snや、Sn-Pd等の金属膜を形成してもよい。
【0032】
この第1実施形態例では、前述したように、抵抗パターン3の端子電極7a接続側の端部上面にはパターン間絶縁層4および保護用絶縁層6が形成されないので、その抵抗パターン3の端子電極7a接続側の端部上面には端子電極7aの一部がパターン間絶縁層4に至るように形成されている。このため、抵抗パターン3は、端子電極7a接続側の端部上面および端面3aでもって端子電極7aに接続されている。
【0033】
また、インダクタパターン5の端子電極7b接続側の端部上面には保護用絶縁層6が形成されないので、そのインダクタパターン5の端子電極7b接続側の端部上面には端子電極7bの一部が形成されている。このため、インダクタパターン5は、端子電極7b接続側の端部上面および端面5bでもって端子電極7bに接続されている。
【0034】
この第1実施形態例では、前記の如く、抵抗パターン3の端子電極7a接続側の端部上面に端子電極7aの一部が形成されているので、抵抗パターン3の抵抗値には、抵抗パターン3の全長ではなく、図3に示す長さL(つまり、パターン間絶縁層4の端縁4aと当該パターン間絶縁層4に形成されているスルーホール10との間の間隔L)が関与することになる。後述するLR複合部品1の製造工程の説明で述べるように、パターン間絶縁層4の端縁4aと、スルーホール10を形成するための孔部とは、フォトリソグラフィ工法を利用して同時に形成される。このため、パターン間絶縁層4の端縁4aとスルーホール10との間の間隔Lのばらつきを抑制することができ、これにより、抵抗パターン3の抵抗値のばらつきを抑えることができる。その上、フォトリソグラフィ工法の加工精度は、例えば、印刷工法の加工精度の2〜3倍もの非常に高い精度であることから、パターン間絶縁層4の端縁4aの形成位置や、スルーホール10の形成位置および大きさをほぼ設定通りとすることができる。以上のように、パターン間絶縁層4の端縁4aとスルーホール用孔部を同時に形成することと、フォトリソグラフィ工法を利用することとが相俟って、パターン間絶縁層4の端縁4aとスルーホール10との間の間隔Lはほぼ設計通りに形成することが可能である。このため、LR複合部品1の抵抗パターン3の抵抗値はほぼ設計通りとなり、製品間の抵抗値のばらつきを小さく抑えることができる。
【0035】
また、抵抗パターン3およびインダクタパターン5は、それぞれ、端面だけでなく、端子電極接続側の端部上面でも端子電極7に接続されているので、従来のように端面だけで端子電極7に接続される場合に比べて、抵抗パターン3と抵抗パターン用端子電極7aとの接続面積や、インダクタパターン5とインダクタパターン用端子電極7bとの接続面積が増加して、当該抵抗パターン3と抵抗パターン用端子電極7aとの接続およびインダクタパターン5とインダクタパターン用端子電極7bとの接続の信頼性を向上させることができる。
【0036】
以下に、第1実施形態例のLR複合部品1の製造工程の一例を説明する。
【0037】
まず、図5(a)に示されるような、複数の絶縁体基板2を切り出すことができる絶縁体親基板15を用意する。そして、絶縁体親基板15において、LR複合部品(絶縁体基板2)を形成するための複数のLR複合部品形成領域Kを設定する。その後、図5(b)に示されるように、絶縁体親基板15の各LR複合部品形成領域Kにそれぞれ抵抗パターン3を成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用して次に述べるように形成する。
【0038】
成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用して抵抗パターン3を形成する手法には複数の手法がある。その一つの例を述べると、例えば、まず、図7(a)の断面図に示されるように、絶縁体親基板15の上面全面に成膜形成技術を利用して抵抗材料から成る抵抗体膜16を形成する。次に、図7(b)に示されるように、その抵抗体膜16の上面全面にフォトレジスト膜17を例えばスピンコート等を利用して形成する。そして、フォトレジスト膜17の上方側に抵抗パターン露光用のマスクを配置し、この抵抗パターン露光用のマスクの上方側からフォトレジスト膜17に向けて紫外線を照射する。これにより、抵抗パターン3の形成領域に対応するフォトレジスト膜17の部分が硬化する。
【0039】
その後、図7(c)に示されるように、フォトレジスト膜17の未硬化部分を現像により除去する。これにより、抵抗体膜16において、抵抗パターン3となる部分にはフォトレジスト膜17が形成されているが、他の部位は露出した状態となる。然る後に、図7(d)に示されるように、その抵抗体膜16の露出部分をエッチングにより除去する。その後、図7(e)に示されるように、フォトレジスト膜17を例えばアッシャー等により除去することによって、絶縁体親基板15の各LR複合部品形成領域Kのそれぞれに抵抗パターン3を形成することができる。
【0040】
また、成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用した別の抵抗パターン3の形成手法としては、次に示すような手法もある。例えば、まず、絶縁体親基板15の上面全面に、抵抗パターン3の形成材料であるペースト状の感光性抵抗材料を印刷等の成膜形成技術により形成する。次に、その感光性抵抗材料の層の上方側に抵抗パターン露光用のマスクを配置し、そのマスクの上方側から感光性抵抗材料に向けて紫外線等を照射して抵抗パターンとなる部分を硬化させる。その後、未硬化の感光性抵抗材料部分を除去することにより、絶縁体親基板15の各LR複合部品形成領域Kのそれぞれに抵抗パターン3を形成することができる。
【0041】
このように抵抗パターン3を形成した後には、その抵抗パターン3を覆うように絶縁体親基板15のほぼ上面全面に成膜形成技術によりパターン間絶縁層4を積層形成する。そして、上述したようなフォトリソグラフィ工法を利用して、図5(c)に示されるように、パターン間絶縁層4にスルーホール形成用の孔部を各LR複合部品形成領域K毎に形成すると共に、端子電極7a,7b側の端縁(端面)4a,4bとなる面を形成する。この端縁4a,4bの形成によって、抵抗パターン3における端子電極接続側の端部上面となる部分が露出する。
【0042】
然る後に、図5(d)に示されるように、パターン間絶縁層4の上面に、例えば成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用して前記抵抗パターン3と同様に、インダクタパターン5を形成する。このとき、インダクタパターン5の内側の端部5aがパターン間絶縁層4に形成されたスルーホール10の位置に合うようにインダクタパターン5が形成される。なお、図1に示されるように、インダクタパターン5の端子電極接続側の端部5cがパターン間絶縁層4の端子電極7b側の端縁4bよりも外側に配置される場合には、このインダクタパターンの形成工程において、インダクタパターン5の端子電極接続側の端部5cとなる部分は、パターン間絶縁層4の端子電極7b側の端縁4bよりも外側にはみ出し形成されて絶縁体親基板15(絶縁体基板2)の上面に落ち込み形成される。
【0043】
その後、図6(a)に示されるように、インダクタパターン5の上方側に保護用絶縁層6をパターン間絶縁層4と同様に例えば成膜形成技術とフォトリソグラフィ工法を利用して形成する。この工程では、保護用絶縁層6の端子電極側の端縁6a,6bとなる部分は、パターン間絶縁層4の端子電極側の端縁よりも内側に引っ込んだ位置に配置形成される。このため、抵抗パターン3の端子電極7a接続側の端部上面にはパターン間絶縁層4および保護用絶縁層6は積層されず、露出している状態となっている。また、インダクタパターン5の端子電極7b接続側の端部上面5cには保護用絶縁層6が積層されずに露出している状態となっている。
【0044】
然る後に、絶縁体親基板15を、LR複合部品形成領域の境界線Lに沿って、例えば、ダイシングやスクラブブレイクやレーザ等により切断する。これにより、絶縁体親基板15は、図6(b)に示されるような絶縁体基板2と抵抗パターン3とパターン間絶縁層4とインダクタパターン5と保護用絶縁層6から成る積層体8毎に分離分割する。
【0045】
次に、図6(c)に示されるように、積層体8の互いに対向し合う端子電極形成側の側面に、それぞれ、端子電極7(7a,7b)を形成する。このとき、端子電極7(7a,7b)の一部は、抵抗パターン3とインダクタパターン5の各端子電極接続側の端部上面に入り込んで形成される。このため、抵抗パターン3とインダクタパターン5は、それぞれ、端子電極接続側の端部上面および端面でもって端子電極7に接続する。その後、必要に応じて、端子電極7の表面にメッキ処理を施す。
【0046】
以上のようにして、LR複合部品1を作製することができる。
【0047】
以下に、第2実施形態例を説明する。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0048】
第2実施形態例のLR複合部品1では、図8(b)の分解図に示されるように、抵抗パターン3は、帯状部位12と、当該帯状部位12よりも幅広の端子電極接続側の部位(幅広部)13とを有した略T字形状と成している。
【0049】
図9には、抵抗パターン3と、その上側に形成されるパターン間絶縁層4と保護用絶縁層6とを保護用絶縁層6の上方側から見た平面図が示されており、この図9および図8(a)の断面図に示されるように、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aは、抵抗パターン3の幅広部13の上面上に配置されている。つまり、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aは、抵抗パターン3の端子電極接続側の端縁3aよりも積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されている。また、パターン間絶縁層4の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁4aは、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aよりも積層体8の内側に配置形成されている。
【0050】
なお、パターン間絶縁層4の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁4aは、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aよりも積層体8の内側であれば、図9の如く抵抗パターン3の端子電極接続側の幅広部13の上面に配置されていてもよいし、幅広部13よりも内側の帯状部位12の位置に配置されていてもよい。当該パターン間絶縁層4の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁4aは、例えばインダクタパターン5の形成に必要な面積等を考慮した適宜な位置に配置してよいものである。
【0051】
上記以外の構成は第1実施形態例とほぼ同様である。
【0052】
この第2実施形態例においても、第1実施形態例と同様に、パターン間絶縁層4と保護用絶縁層6の各抵抗パターン用端子電極7a側の端縁4a,6aは、それぞれ、抵抗パターン3の端子電極接続側の端縁3aよりも積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されている。このため、抵抗パターン3の端子電極接続側の端部上面にはパターン間絶縁層4および保護用絶縁層6が積層形成されておらず、当該抵抗パターン3の端子電極接続側の端部上面には抵抗パターン用端子電極7aの一部が保護用絶縁層6に至るように形成される。よって、抵抗パターン3は、端子電極接続側の端部上面および端面でもって、抵抗パターン用端子電極7aに接続される。その上、第2実施形態例では、抵抗パターン3の端子電極接続側の部位が幅広部となっているので、抵抗パターン用端子電極7aとの接続面積を第1実施形態例の構成よりも格段に増加させることができ、これにより、抵抗パターン3と抵抗パターン用端子電極7aとの接続の信頼性をより高めることができる。
【0053】
ところで、第2実施形態例では、パターン間絶縁層4の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁4aは、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aよりも積層体8の内側に配置されている。このため、抵抗パターン3の端子電極接続側の端部上面における抵抗パターン用端子電極7aの形成領域は、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極側の端縁6aによって定まることとなる。これにより、抵抗パターン3の抵抗値は、パターン間絶縁層4のスルーホール10と、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aとの間の間隔L’(図9参照)が関与することとなる。
【0054】
パターン間絶縁層4のスルーホール10と、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aとは、それぞれ、別々の工程で形成されるので、パターン間絶縁層4のスルーホール10と、保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aとの間の間隔L’は、僅かではあるがばらつくことが懸念される。この第2実施形態例では、抵抗パターン3の端子電極接続側の部位を抵抗パターン3の他の部位よりも幅広にすることで、その間隔L’のばらつきに起因した抵抗パターン3の抵抗値のばらつきを抑制している。
【0055】
それというのは、次に示すような理由によるものである。例えば、図10(b)に示されるように、抵抗パターン3が全長に渡ってほぼ等幅な帯状であるときに、抵抗パターン3の抵抗値に関与するライン長をLとし、パターン幅をWとし、抵抗パターン3の厚みをtとし、抵抗パターン3の構成材料の抵抗率をρとすると、抵抗パターン3の抵抗値Rは、数式(1)に表すことができる。
【0056】
R=ρ・L/(W・t)・・・・・(1)
【0057】
ここで、例えば、抵抗パターン3の抵抗値に関与するライン長がΔa分だけ短くなった場合には、抵抗パターン3の抵抗値R’は、数式(2)に表すことができる。
【0058】
R’=ρ・(L−Δa)/(W・t)・・・・・(2)
【0059】
その抵抗パターン3のライン長の変化による抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRは、数式(3)に表すことができる。
【0060】
ΔR=R−R’=ρ・Δa/(W・t)・・・・・(3)
【0061】
一方、抵抗パターン3が、図10(c)に示されるように、帯状部位12と幅広部13から成る略T字形状の場合に、例えば、この略T字形状の抵抗パターン3を構成する材料が、前記帯状の抵抗パターン3の構成する材料と同じとし、その構成材料の抵抗率がρであり、また、略T字形状の抵抗パターン3の厚みも帯状の抵抗パターン3の厚みtと同じとする。さらに、略T字形状の抵抗パターン3の帯状部位12の幅をW1とし、その長さをL1とし、また、略T字形状の抵抗パターン3の幅広部13の長さをL2とし、幅広部13の幅をW2とする。この場合、略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値Rtは、数式(4)に表すことができる。
【0062】
Rt=ρ・L1/(W1・t)+ρ・L2/(W2・t)・・・・・(4)
【0063】
略T字形状の抵抗パターン3の幅広部13の長さL2がΔaだけ短くなった場合には、その長さL2の変化により、略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値Rtが変化する。変化後の略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値Rt’は数式(5)に表すことができる。
【0064】
Rt’=ρ・L1/(W1・t)+ρ・(L2−Δa)/(W2・t)・・・・(5)
【0065】
略T字形状の抵抗パターン3の幅広部13の長さL2の変化による略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRtは、数式(6)に表すことができる。
【0066】
ΔRt=Rt−Rt’=ρ・Δa/(W2・t)・・・・・(6)
【0067】
第2実施形態例では、略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値を決定する要素の一つである保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aが略T字形状の抵抗パターン3の幅広部13の上面に位置していることから、保護用絶縁層6の加工精度に起因して、その抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aの形成位置が少しずれてしまい、これにより、抵抗パターン3の抵抗値に関与するライン長がΔa分だけ変化してしまっても、そのライン長の変化量Δaに対する抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRt(数式(6)参照)は、幅広部13の幅W2を大きくするにつれて小さく抑制することができる。
【0068】
ところで、例えば、略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値に関与するライン長(L1+L2)が、抵抗パターン3が等幅な帯状である場合のライン長Lと等しく(L=L1+L2)、また、帯状の抵抗パターン3の抵抗値Rと、略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値Rtとが等しい(R=Rt)という条件を前提条件とする。ここで、帯状の抵抗パターン3および略T字形状の抵抗パターン3のそれぞれにおいて、端子電極7aの形成位置が長さΔaだけずれたと仮定すると、このことに起因した帯状の抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRは数式(7)に、また、略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRtは数式(8)に、それぞれ、表すことができる。さらに、その帯状の抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRに対する略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRtの割合(ΔRt/ΔR)は、前記前提条件を考慮すると、数式(9)に表すことができる。
【0069】
ΔR=|ρ・L/(W・t)−ρ・(L±Δa)/(W・t)|・・・・・(7)
【0070】
ΔRt=|((ρ・L1/(W1・t))+(ρ・L2/(W2・t)))−((ρ・L1/(W1・t))+(ρ・(L2±Δa)/(W2・t)))|・・・・・(8)
【0071】
ΔRt/ΔR=((L2/L1)+1)/((L2/L1)+(W2/W1))・・・・(9)
【0072】
略T字形状の抵抗パターン3の帯状部位12の長さL1と、幅広部13における帯状部位12との接続部から保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極側の端縁6aの配置位置までの長さL2との比(L2/L1)を変化させた場合の前記ΔRt/ΔRと、W2/W1との関係例が、本発明者のシミュレーションにより求められて図10(a)のグラフに表されている。
【0073】
この第2実施形態例では、そのシミュレーション結果を利用して、下記の数式(10)を満たすことができるように、略T字形状の抵抗パターン3の帯状部位12の幅W1と長さL1と、幅広部13の幅W2と長さL2とが、それぞれ、設計されている。
【0074】
(L2/L1)+2≦W2/W1・・・・・(10)
【0075】
数式(10)は、帯状の抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRに対する略T字形状の抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRtの割合(ΔRt/ΔR)を0.5以下とすべく、0.5≧(L2/L1+1)/(L2/L1+W2/W1)の数式から導き出された数式である。この数式(10)を満たすように、略T字形状の抵抗パターン3の帯状部位12の幅W1と長さL1と、幅広部13の幅W2と長さL2とを、それぞれ、設計することにより、帯状の抵抗パターン3を形成する場合に比べて、抵抗パターン3の抵抗値に関与するライン長の変化による抵抗パターン3の抵抗値の変化量ΔRtを半分以下に小さく抑制することができる。これにより、抵抗パターン3の抵抗値のばらつきをより小さく抑えることが可能なLR複合部品1を提供することが可能となる。
【0076】
以下に、第3実施形態例を説明する。なお、この第3実施形態例の説明において、第1や第2の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0077】
この第3実施形態例では、図11(a)の断面図および図11(b)の分解図に示されるように、抵抗パターン3とインダクタパターン5の配置位置が、第1や第2の実施形態例の場合と逆になっている。つまり、絶縁体基板2の上側にインダクタパターン5と、パターン間絶縁層4と、抵抗パターン3と、保護用絶縁層6とが順に積層形成されている。
【0078】
この第3実施形態例では、抵抗パターン3は、第2実施形態例と同様に、帯状部位12と幅広部13を有した略T字形状と成している。この抵抗パターン3の上側に積層される保護用絶縁層6の抵抗パターン用端子電極7a側の端縁6aは、抵抗パターン3の端子電極接続側の端縁3aよりも積層体8の内側の抵抗パターン3の幅広部13の上面に配置されている。このため、抵抗パターン3の端子電極接続側の端部上面には保護用絶縁層6は積層形成されず、当該抵抗パターン3の端子電極接続側の端部上面には抵抗パターン用端子電極7aの一部が保護用絶縁層6に至るように形成されている。
【0079】
また、この第3実施形態例では、パターン間絶縁層4のインダクタパターン用端子電極7b側の端縁4bは、保護用絶縁層6のインダクタパターン用端子電極7b側の端縁6bよりも積層体8の内側に配置されている。
【0080】
上記以外の構成は、第2実施形態例とほぼ同様である。
【0081】
なお、この発明は第1〜第3の各実施形態例の形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1と第2の各実施形態例では、インダクタパターン5よりも上側に形成される保護用絶縁層6は、そのインダクタパターン用端子電極7b側の端縁6bが、インダクタパターン5の端子電極接続側の端縁5bよりも積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されていた。また、第3実施形態例では、インダクタパターン5よりも上側に形成されるパターン間絶縁層4および保護用絶縁層6の各インダクタパターン用端子電極7b側の端縁4b,6bが、それぞれ、インダクタパターン5の端子電極接続側の端縁5bよりも積層体8の内側に引っ込んだ位置に配置されていた。このような構成により、インダクタパターン5の端子電極接続側の端部上面には、保護用絶縁層6、あるいは、パターン間絶縁層4および保護用絶縁層6が積層されず、当該インダクタパターン5の端子電極接続側の端部上面には、インダクタパターン用端子電極7bの一部が形成されており、インダクタパターン5は、端子電極接続側の端部上面および端面でもってインダクタパターン用端子電極7bと接続されていた。
【0082】
しかし、例えば、インダクタパターン5の厚みが厚くて、インダクタパターン5の端子電極接続側の端面の面積が広く、このため、当該端面だけで、十分にインダクタパターン用端子電極7bとの接続の信頼性が得られる場合には、インダクタパターン5の上側に形成される保護用絶縁層6、あるいは、パターン間絶縁層4および保護用絶縁層6のインダクタパターン用端子電極7b側の端縁4b,6bがインダクタパターン5の端子電極接続側の端縁5bとほぼ同じ位置に配置されて、インダクタパターン5は、端子電極接続側の端面だけでインダクタパターン用端子電極7bと接続する構成としてもよい。
【0083】
さらに、第2や第3の各実施形態例では、抵抗パターン3の端子電極接続側の幅広部13は、積層体8の幅とほぼ等しい幅となっていたが、抵抗パターン3の幅広部13の幅W2は、積層体8の幅よりも狭くともよい。また、インダクタパターン5の端子電極接続側の端部5cに関しても同様に、その端部5cの幅は積層体8の幅よりも狭くともよい。
【0084】
さらに、第1〜第3の各実施形態例では、絶縁体基板2の上側に直接的に抵抗パターン3あるいはインダクタパターン5が形成されていたが、例えば、絶縁体基板2の表面に絶縁層を形成し、その上側に、抵抗パターン3あるいはインダクタパターン5を形成する構成としてもよい。絶縁体基板2の表面に絶縁層を形成することによって、絶縁体基板2の表面を平滑化することができるため、絶縁体基板2の上側に絶縁層を介して抵抗パターン3あるいはインダクタパターン5を積層形成することによって、例えば絶縁体基板2の表面粗さに起因した抵抗パターン3の線路長のばらつきを抑制することができる。
【0085】
【発明の効果】
この発明によれば、保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端縁が、パターン間絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端縁よりも積層体の内側に配置されているものにあっては、抵抗パターンと端子電極の接続部の位置は、抵抗パターンの上側に積層されるパターン間絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端縁の配置位置により定まることとなる。このため、抵抗パターンの抵抗値は、パターン間絶縁層に形成されたスルーホールとパターン間絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端縁との間の長さに基づいた値となり、抵抗値のばらつきを抑制することができる。また、パターン間絶縁層を成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用して形成することにより、フォトリソグラフィ工法の高い加工精度によって、パターン間絶縁層に形成されるスルーホールとパターン間絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端縁との間の長さをほぼ設計通りとすることができる。このため、その長さに基づいた抵抗パターンの抵抗値のばらつきをより確実に抑制することができる。このことから、抵抗値に対する信頼性が高いLR複合部品を提供することができる。
【0086】
また、パターン間絶縁層の抵抗パターン用端子電極接続側の端縁が、保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極接続側の端縁よりも積層体の内側に引っ込んだ位置に配置されているものや、インダクタパターンよりも上側に抵抗パターンが配置されているものにあっては、抵抗パターンにおける端子電極との接続部は保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極接続側の端縁の形成位置により定まることになる。この場合、抵抗パターンの抵抗値は、パターン間絶縁層のスルーホールの形成位置と、保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極接続側の端縁の位置との間の間隔が関与することになる。パターン間絶縁層のスルーホールと、保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極接続側の端縁とは、同時に形成されないので、それらパターン間絶縁層のスルーホールの形成位置と、保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極接続側の端縁の配置位置との間の間隔は、加工精度に起因して僅かにずれることが懸念され、これにより、抵抗パターンの抵抗値がばらつくことが想定されるが、抵抗パターンの端子電極接続側の部位を幅広部とし、保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端縁がその幅広部の上面に配置される構成とすることによって、加工精度に起因した抵抗パターンの抵抗値のばらつきを小さく抑制することができる。さらに、フォトリソグラフィ工法を利用してパターン間絶縁層および保護用絶縁層を形成することによって、より高精度の加工が実現できるので、抵抗値のばらつきをより一層確実に小さく抑制することが可能となる。
【0087】
特に、抵抗パターンが帯状部位と端子電極接続側の幅広部とを有した略T字形状と成し、その帯状部位の幅W1と長さL1と、幅広部の幅W2および当該幅広部における帯状部位との接続部から保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極接続側の端縁の配置位置までの長さL2とが、(L2/L1)+2≦W2/W1の関係式を満たすように抵抗パターンを設計することにより、抵抗パターンが全長に渡ってほぼ等幅である場合に比べて、前記加工精度に起因した抵抗パターンの抵抗値の変化量を半分以下に抑制することが可能となる。
【0088】
また、この発明では、抵抗パターンが、端子電極接続側の端部上面および端面でもって端子電極に接続されている構成としたので、従来のように、抵抗パターンが端子電極接続側の端面だけで端子電極に接続されている場合に比べて、抵抗パターンと端子電極との接続面積が拡大し、抵抗パターンと端子電極との接続の信頼性を格段に向上させることができる。
【0089】
さらに、インダクタパターンが抵抗パターンと同様に、その端子電極接続側の端部上面および端面でもって端子電極に接続されている構成とすることによって、インダクタパターンと端子電極との接続の信頼性が向上し、より一層信頼性の高いLR複合部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態例のLR複合部品を説明するための図である。
【図2】抵抗パターンの端子電極接続側の端部の配置位置のその他の例を説明するための図である。
【図3】第1実施形態例において特有な構成の一つであるパターン間絶縁層の構成を説明するための図である。
【図4】パターン間絶縁層のインダクタパターン用端子電極側の端部と、インダクタパターンの端子電極接続側の端部とのそれぞれの配置位置のその他の例を説明するための図である。
【図5】第1実施形態例のLR複合部品の製造工程の一例を説明するための図である。
【図6】図5に引き続き、第1実施形態例のLR複合部品の製造工程の一例を説明するための図である。
【図7】成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用して抵抗パターンを形成する工程の一例を説明するための図である。
【図8】第2実施形態例のLR複合部品を説明するための図である。
【図9】第2実施形態例において特有な構成の一つであるパターン間絶縁層および保護用絶縁層の構成を説明するための図である。
【図10】抵抗パターンを略T字形状に形成した場合に得られる効果を説明するための図である。
【図11】第3実施形態例のLR複合部品を説明するための図である。
【図12】特開2000-182892号公報に記載されているLCR複合部品を説明するための図である。
【図13】図12に示すLCR複合部品の部分的な拡大断面図である。
【符号の説明】
1 LR複合部品
3 抵抗パターン
4 パターン間絶縁層
5 インダクタパターン
6 保護用絶縁層
7 端子電極
7a 抵抗パターン用端子電極
7b インダクタパターン用端子電極
8 積層体
10 スルーホール
12 帯状部位
13 幅広部
Claims (6)
- 絶縁体基板上に抵抗成分を持つ抵抗パターンと、パターン間絶縁層と、インダクタンス成分を持つインダクタパターンと、保護用絶縁層とが順に積層形成された積層部を含む積層体を有し、抵抗パターンとインダクタパターンの各一端部同士はパターン間絶縁層に形成されたスルーホールを介して接続され、これら抵抗パターンとインダクタパターンの各他端部は、それぞれ、前記積層体の側面に離間形成された別々の端子電極に個別に接続されている構成を有しており、抵抗パターンの前記他端部が接続される端子電極の形成部位の積層体の側面部位においては、パターン間絶縁層の端面は抵抗パターンの端面よりも積層体の内側に引っ込んだ位置に配置されて抵抗パターンの端部には前記パターン間絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、端子電極は抵抗パターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、抵抗パターンの端面との接触部位との両方の接触部位で抵抗パターンと電気的に接続され、抵抗パターンの抵抗値を定める抵抗パターンの長さが前記パターン間絶縁層の端面から前記スルーホールまでの長さによって設定されており、前記パターン間絶縁層の端面およびスルーホールはフォトリソグラフィ工法を利用して形成されていることを特徴とするLR複合部品。
- 絶縁体基板上に抵抗成分を持つ抵抗パターンと、パターン間絶縁層と、インダクタンス成分を持つインダクタパターンと、保護用絶縁層とが順に積層形成された積層部を含む積層体を有し、抵抗パターンとインダクタパターンの各一端部同士はパターン間絶縁層に形成されたスルーホールを介して接続され、これら抵抗パターンとインダクタパターンの各他端部は、それぞれ、前記積層体の側面に離間形成された別々の端子電極に個別に接続されている構成を有しており、抵抗パターンの端子電極接続側の部位は抵抗パターンの他の部位よりも幅広になっており、前記抵抗パターンの前記他端部が接続される端子電極の形成部位の積層体の側面部位においては、パターン間絶縁層の端部はこれを覆っている前記保護用絶縁層の端面よりも積層体の内側に引っ込んだ位置に配置され、さらに前記保護用絶縁層の端面は抵抗パターンの前記幅広部位の端面よりも前記積層体の内側に引っ込んだ位置に配置され、前記抵抗パターンの幅広部位の端部には前記保護用絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、端子電極は抵抗パターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、抵抗パターンの端面との接触部位との両方の接触部位で抵抗パターンと電気的に接続され、前記抵抗パターンの抵抗値を定める抵抗パターンの長さが前記保護用絶縁層の端面から前記パターン間絶縁層のスルーホールまでの長さによって設定されており、前記パターン間絶縁層のスルーホールおよび前記保護用絶縁層の端面はフォトリソグラフィ工法を利用して形成されていることを特徴とするLR複合部品。
- 絶縁体基板上にインダクタンス成分を持つインダクタパターンと、パターン間絶縁層と、抵抗成分を持つ抵抗パターンと、保護用絶縁層とが順に積層形成された積層部を含む積層体を有し、インダクタパターンと抵抗パターンの各一端部同士はパターン間絶縁層に形成されたスルーホールを介して接続され、これらインダクタパターンと抵抗パターンの各他端部は、それぞれ、前記積層体の側面に離間形成された別々の端子電極に個別に接続されている構成を有しており、抵抗パターンの端子電極接続側の部位は抵抗パターンの他の部位よりも幅広になっており、前記保護用絶縁層の端面は抵抗パターンの前記幅広部位の端面よりも前記積層体の内側に引っ込んだ位置に配置され、前記抵抗パターンの幅広部位の端部には前記保護用絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、端子電極は抵抗パターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、抵抗パターンの端面との接触部との両方の接触部位で抵抗パターンと電気的に接続され、前記抵抗パターンの抵抗値を定める抵抗パターンの長さが前記保護用絶縁層の端面から前記パターン間絶縁層のスルーホールまでの長さによって設定されており、前記パターン間絶縁層のスルーホールおよび前記保護用絶縁層の端面はフォトリソグラフィ工法を利用して形成されていることを特徴とするLR複合部品。
- 抵抗パターンは帯状部位と当該帯状部位よりも幅広の端子電極接続側の部位とを有した略T字形状と成しており、帯状部位の幅をW1とし、帯状部位の長さをL1とし、端子電極接続側の幅広部の幅をW2とし、端子電極接続側の幅広部における帯状部位との接続部から保護用絶縁層の抵抗パターン用端子電極側の端面位置までの長さをL2としたときに、それら帯状部位の幅W1と長さL1と、端子電極接続側の幅広部の幅W2と長さL2とは、(L2/L1)+2≦(W2/W1)の関係式を満たすことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のLR複合部品。
- インダクタパターンの前記他端部が接続される端子電極の形成部位の積層体の側面部位においては、前記保護用絶縁層の端面がインダクタパターンの端面よりも積層体の内側に引っ込んだ位置に配置されてインダクタパターンの端子電極への接続端側には前記保護用絶縁層によって覆われずに露出している露出上面が形成されており、インダクタパターンが接続する端子電極は、インダクタパターンの前記露出上面を覆っての該露出上面との接触部位と、インダクタパターンの端面との接触部位との両方の接触部位でインダクタパターンと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載のLR複合部品。
- 抵抗パターンとパターン間絶縁層とインダクタパターンと保護用絶縁層は、それぞれ、成膜形成技術およびフォトリソグラフィ工法を利用して順次形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載のLR複合部品。
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