JP4178806B2 - 導電性グリース及び転動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた導電性を有するとともに導電性の経時的な低下が生じにくい導電性グリースに係り、特に、各種転がり軸受等の転動装置に好適に使用され、内外輪等の内外方部材間の電気抵抗値を低減させる導電性グリースに関する。また、電気抵抗値が小さく長期間にわたって帯電しにくい(導電性に優れる)転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般情報機器、例えば複写機においては、その可動部分には多数の転がり軸受が使用されている。該転がり軸受の軌道面と転動体との間には回転中は油膜が形成されていて、前記軌道面と前記転動体とは非接触となっている。このような転がり軸受においては回転に伴って静電気が発生するため、その放射ノイズが複写機の複写画像に歪み等の悪影響を及ぼす等の不都合が生じる場合がある。
【0003】
このような不都合を回避するため、導電性グリースを転がり軸受に封入することにより内外の軌道輪及び転動体を導電状態にするとともに、前記内外の軌道輪のうち一方を接地することにより、静電気を該転がり軸受から除去するという対策が取られている。
このことを図17を参照しながら説明する。
【0004】
図17の玉軸受121は、外輪122と、内輪123と、外輪122と内輪123との間に転動自在に配設された複数の玉124と、複数の玉124を保持する保持器125と、外輪122のシールみぞ122bに取り付けられた接触形のシール126,126と、で構成されている。また、外輪122と内輪123とシール126,126とで囲まれた空間には導電性グリース127が充填され、シール126により玉軸受121内部に密封されている。
【0005】
そして、この導電性グリース127によって、前記両輪122,123の軌道面122a,123aと玉124との接触面が潤滑されるとともに、外輪122と内輪123と玉124とが導電状態となっている。さらに、外輪122又は内輪123は、この玉軸受121が使用されている情報機器、例えば複写機等の本体を通して接地されていて(図示せず)、玉軸受121の回転により発生する静電気が除去されるようになっている。
【0006】
導電性グリースとしては、カーボンブラックを増ちょう剤及び導電性付与添加剤として添加したものが主流で(例えば、特公昭63−24038号公報に記載のもの)、このような導電性グリースは初期には優れた導電性を示す。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カーボンブラックを用いた上記従来の導電性グリースは、初期には優れた導電性を示すものの、経時的に導電性が低下して行く場合があるという問題があった。
このような現象の原因としては、従来は以下のようなことが考えられていた。すなわち、導電性グリースは当初は転がり軸受の軌道輪の軌道面と転動体との接触面に十分に存在していて、その導電性グリース中のカーボンブラックにより、前記軌道輪と前記転動体との間の導電性が確保されているものの、前記軌道輪と前記転動体との相対運動により前記導電性グリースが前記接触面から排除されたり、カーボンブラック粒子のチェーンストラクチャーが破壊されたりするためである。
【0008】
また、接触面から排除された導電性グリースが再度接触面に入りにくいのは、導電性付与添加剤(カーボンブラック)が基油に不溶の微粒子であることによると考えられていた。
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、導電性(抵抗値)の経時変化は下記のような要因によって生じるものと推察するに至った。
【0009】
カーボンブラックを含有する従来の導電性グリースを封入した転がり軸受(内径8mm、外径22mm、幅7mmの玉軸受)を回転試験(Fr=19.6N、回転速度150rpm、回転時間500時間、試験温度25℃)に供し、該回転試験後の転がり軸受の軌道面を走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散分析(EDS)により調査した。例として、内輪軌道面のSEM像を図18に示し、EDS測定チャートを図19に示す。
【0010】
まず、図18のSEM像から、内輪軌道面の初期の研磨面が消失し摩耗ピットが生成していることが分かり、このことから軌道面に摩耗が生じていることが認められた。また、図19のEDS測定チャートに酸素のピークが見られることから、軌道面に酸化膜が生成していることが認められた。
これらのことから、導電性の経時変化の原因は導電性グリースの性能劣化ではなく、導電性グリースの潤滑性能不足による軌道面への酸化膜の生成であると考えられる。
【0011】
すなわち、転動体の表面と軌道面との金属接触により、軌道面に微小な損傷が生じる。この損傷部分には新生面が露出するが、この新生面は活性が高いため、空気中の酸素等により直ちに酸化され酸化膜が形成される。この酸化膜が導電性を低下させ、結果として経時的な抵抗値の上昇が見られることとなる。
さらに、EDS測定チャートのピークから、カーボンブラックに含まれる微量成分が軸受回転の影響によって軌道面に皮膜を形成していることが分かる。この微量成分の皮膜が酸化膜と同様に導電性を低下させ、結果として経時的な抵抗値の上昇が見られることとなる。
【0012】
そして、このような現象は、相対運動する部材間で使用される導電性グリースにおいて共通の問題である。
このような現象の対策としては、粘度の高い基油を使用して油膜を確保し、金属接触を防止することが考えられるが、油膜を厚くすると導電性グリースの導電性能の低下につながる可能性があり、好ましくない。
【0013】
そこで、本発明は上記のような従来の導電性グリースが有する問題点を解決し、優れた導電性を有するとともに導電性の経時的な低下が生じにくい導電性グリースを提供することを課題とする。また、電気抵抗値が小さく長期間にわたって帯電しにくい転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の導電性グリースは、基油と導電性付与添加剤とを備えた導電性グリースにおいて、前記導電性付与添加剤をカーボンナノチューブとしたことを特徴とする。カーボンナノチューブは導電性を付与する性質を有しているので、本発明の導電性グリースは優れた導電性を有している。さらに、カーボンナノチューブは潤滑性を付与する性質も併せて有しているので、本発明の導電性グリースは潤滑性が優れている。潤滑性が優れていれば、前述のような理由により、転がり軸受の軌道面と転動体のような相対運動する部材同士の金属接触を防止できるので、前記軌道面等に酸化膜や他の成分の皮膜が生成しにくく、その結果、導電性の経時的な低下が生じにくい。
【0015】
〔カーボンナノチューブについて〕
ここで、カーボンナノチューブについて説明する。カーボンナノチューブとは、図1に示すような構造を有する化合物であり、主に炭素六員環の網目状構造を有するグラフェン(図2を参照)が丸まってチューブ状となっていてる炭素多面体である(その末端は閉口している)。なお、異径のチューブ接合部や末端の閉口部においては、炭素五員環や炭素七員環となっている場合もある。また、生成条件等により末端が開口しているものも存在する。さらに、カーボンナノチューブ類で球状の構造を取るもの、例えばC60,C70は、フラーレンとして知られている。
【0016】
カーボンナノチューブは、グラファイトと同様に炭素と炭素がsp2 混成軌道により結合していて、ダイヤモンド構造とは異なり単層で細長い形状であることから、長手方向に直角な方向に対しては比較的柔軟で摺動性を有しており、且つ強固な構造である。このようなカーボンナノチューブを導電性付与添加剤として使用することにより、グリースに良好な導電性と潤滑性を併せて付与することができる。
【0017】
本発明の導電性グリースにおいては、カーボンナノチューブの直径は0.7〜30nmであることが好ましく、長さは0.5〜30μmであることが好ましい。直径が0.7nm未満であると、チューブ構造を形成しにくいと同時に十分なチェーン構造を形成できず、30nm超過であると、カーボンナノチューブが摺動面(前述の接触面)から排除されると再度入りにくくなる。また、長さが0.5μm未満であると、十分なチェーン構造を形成できず、軸受等においてせん断を受け続けると油分が分離するおそれがあり、30μm超過であると、異物として作用して軸受等に使用した際に音響特性の劣化につながる。
【0018】
また、本発明の導電性グリースにおいては、前記カーボンナノチューブを多層カーボンナノチューブとすることができる。
カーボンナノチューブには、図1に示すような構造の単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube :SWCNT)と、図3に示すような構造の多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube:MWCNT)とがある。多層カーボンナノチューブとは、図3から分かるように複数のカーボンナノチューブが入れ子構造になっているもので、単層カーボンナノチューブを用いる場合よりも優れた導電性をグリースに付与することができる。なお、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブとを混合して用いてもよい。
【0019】
多層カーボンナノチューブの直径は2〜30nmであることが好ましく、長さは1〜30μmであることが好ましい。直径が2nm未満であると、構造上多層構造を形成しにくく、30nm超過であると硬直性が大きくなる。また、長さが1μm未満であると、軸受等においてせん断を受け続けると油分が分離するおそれがあり、30μm超過であると、異物として作用して軸受等に使用した際に音響特性の劣化につながる。
【0020】
ただし、カーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ)の大きさは、後述する増ちょう剤の大きさと同程度であることが好ましい。カーボンナノチューブが増ちょう剤よりも大きすぎると、増ちょう剤の摺動部への接着性が乏しくなって、耐フレッチング性の低下が生じたり、異物と同様に音響特性や振動へ悪影響を及ぼしたりする。逆に、増ちょう剤よりも小さすぎると、高粘度油を使用した場合やグリースを封入した転動装置の回転速度が大きい場合に、電気抵抗値が大きくなる。
【0021】
さらに、本発明の導電性グリースにおけるカーボンナノチューブの含有量は、導電性グリース全体に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、導電性グリースの導電性が不足するとともに潤滑性も不十分となり、導電性の経時的な低下が生じやすい。また、10質量%を超えるとグリースの性能低下(基油とカーボンナノチューブとの分離など潤滑不良)が生じるおそれがあり、さらに、ちょう度が小さくなり導電性グリースが硬くなり、軸受などに封入し使用する場合に軸受トルクが大きくなったりする。導電性グリースに十分な導電性を付与するためには、カーボンナノチューブは0.5質量%以上とすることがより好ましく、したがって0.5〜10質量%であることがより好ましい。
【0022】
なお、本発明の目的を損なわない範囲であれば、カーボンナノチューブに他の慣用の導電性付与添加剤を混合して用いてもよい。使用可能な導電性付与添加剤としては、例えば、カーボンブラック,アセチレンブラック等の炭素を主成分とする粒子、金,銀,銅,スズ,亜鉛,アルミニウム等の金属粒子、酸化銀,硫化ニオブ,硝酸銀等の金属化合物粒子などがあげられる。
【0023】
〔増ちょう剤について〕
本発明の導電性グリースには、所望により増ちょう剤を併用することができる。増ちょう剤を併用すれば、カーボンナノチューブの分散状態を経時的に良好に保つことができる。
増ちょう剤としては、グリースにおいて一般に使用される増ちょう剤、例えば、アルミニウム石けん,バリウム石けん,カルシウム石けん,リチウム石けん,ナトリウム石けん等の金属石けん、リチウムコンプレックス石けん,カルシウムコンプレックス石けん,アルミニウムコンプレックス石けん等の金属複合石けん、ジウレア,トリウレア,テトラウレア,ポリウレア等のウレア化合物、シリカゲル,ベントナイト等の無機系化合物、ウレタン化合物、ウレア・ウレタン化合物、テレフタルアミド酸ナトリウム等があげられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、後述する基油としてフッ素油を使用する場合には、増ちょう剤としてポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物を使用できる。
【0024】
これらの増ちょう剤の中では、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム,リチウムコンプレックス石けん等のリチウム石けんが好ましく、ステアリン酸リチウム石けんは耐フレッチング性,耐摩耗性の向上を促進する効果がある。
なお、繊維状である増ちょう剤の寸法は特に限定されるものではないが、直径は0.02〜0.5μmであることが好ましく、長さは0.2〜5μmであることが好ましい。直径が0.02μm未満であると、グリースのせん断安定性が乏しくなり、0.5μm超過であると、グリースを軸受等に封入し回転させたときに、走行面(前述の接触面)から排除され再度走行面に入りにくい。また、長さが0.2μm未満であると、カーボンナノチューブやカーボンブラックが増ちょう剤と十分に絡み合わず、5μm超過であると、軸受等に使用した際に、初期の音響特性が悪い場合がある。
【0025】
〔基油について〕
本発明の導電性グリースに使用される基油としては、鉱油,ポリ−α−オレフィン油(PAO)等の合成炭化水素油,エステル油,シリコン油,フッ素油,エーテル油,ポリグリコール油などがあげられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
基油の動粘度は使用条件(荷重,温度,速度等)によって適宜選択され、特に限定されるものではないが、粘度が大きすぎると導電性に悪影響を及ぼすので、40℃における動粘度は120mm2 /sec以下が好ましい。120mm2 /secを超えると、油膜が比較的厚くなって抵抗値が大きくなる。ただし、動粘度が5mm2 /sec未満であると、蒸発損失や潤滑性の問題から適当ではない。すなわち、基油の粘度が低すぎると、例えば軸受の回転中に軌道面と転動体との金属接触を避けるのに十分な潤滑油膜の形成が困難となる。
【0027】
また、本発明の導電性グリースにおける基油と増ちょう剤との配合比率は、適用する用途又は使用温度に適したちょう度となるものであればよく、特に限定されるものではない。ただし、適度な柔軟性(硬さ)を確保する観点から、増ちょう剤及び導電性付与添加剤の導電性グリース全体における含有量は、5〜35質量%とすることが好ましい。導電性グリースのちょう度(JIS K2220)は、通常は200〜350(ちょう度番号は1〜3番)の範囲が好ましい。
【0028】
〔添加剤について〕
本発明の導電性グリースには、酸化防止剤,油性剤,摩耗防止添加剤,及び極圧添加剤のうち少なくとも1種を添加することが好ましい。このような摩耗防止効果のある添加剤を添加すれば、転がり軸受の軌道面と転動体のような相対運動する部材同士の金属接触を防止できるので、導電性の経時的な低下をより長期間にわたって抑えることができる。
【0029】
本発明の導電性グリースに添加される酸化防止剤としては、従来のグリースに使用されるものを問題なく使用することができる。例えば、脂肪族アミン,フェノール系の芳香族アミン等のアミン化合物であり、具体的には、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン化合物や、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等のフェノール化合物などがあげられる。
【0030】
また、油性剤としては、アミン系化合物、オレイン酸,ステアリン酸等の脂肪酸、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル,ポリグリセリルオレイン酸エステル,コハク酸エステル等の脂肪酸エステル、アルケニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物、オレイルアルコール等の脂肪族アルコール、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステルなどがあげられる。
【0031】
さらに、摩耗防止添加剤としては、有機リン系化合物等があげられる。有機リン系化合物としては、例えば、一般式(RO)3 POで示される正リン酸エステル(TCP,TOP等)、一般式(RO)2 P(O)Hで示される亜リン酸ジエステルや一般式(RO)3 Pで示される亜リン酸トリエステルのような亜リン酸エステル等があげられる。なお、上記のRはアルキル基,アリール基,アルキルアリール基を示す。
【0032】
また、極圧添加剤としては、Zn−DTP(ジチオリン酸亜鉛),Mo−DTP(ジチオリン酸モリブデン)等のDTP金属化合物、Ni−DTC(ニッケルジチオカーバメイト),Mo−DTC(モリブデンジチオカーバメイト)等のDTC金属化合物、イオウ,リン,塩素等を含む有機金属化合物などがあげられる。
【0033】
これらの中から、亜リン酸エステル,TCP,TOP,DTP金属化合物,及びDTC金属化合物の化学構造式を図4に示す。これらの構造式中のR以外の官能基(図4において破線により囲まれた部分の官能基)は、軌道面等を構成する金属に対して吸着作用を有していて、そのため前記化合物が軌道面等に吸着される。このことにより潤滑性が高められるので、軌道面等に金属接触による微小な損傷が生じることが防止されて、導電性を維持する効果が発揮される。
【0034】
なお、図4において破線により囲まれた部分の官能基以外の官能基で上記の作用を有するものとしては、例えば、前述の油性剤であるオレイン酸,コハク酸エステルやその誘導体等の有機脂肪酸化合物や、アルケニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物の中に含まれる官能基、すなわち、カルボキシル基,酸無水物基があげられる。
【0035】
さらに、防錆のために使用する添加剤(防錆剤、金属不活性化剤)として、例えば、以下のような化合物を使用することができる。すなわち、有機スルホン酸のアンモニウム塩、バリウム,カルシウム,マグネシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、亜鉛の有機スルホン酸塩、カルボン酸塩、アルキルコハク酸エステル,アルケニルコハク酸エステル等のコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、オレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、1−メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類又はその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とからなるエステル、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールや2−メルカプトチアジアゾール等のチアジアゾール類、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、2−デシルジチオベンゾイミダゾールや2,5−ビスドデシルジチオベンゾイミダゾール等のジスルフィド化合物、トリスノニルフェニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル化合物などである。また、亜硝酸塩等も使用可能である。
【0036】
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール等のトリアゾール化合物があげられる。
このような添加剤の導電性グリースにおける含有量は、10質量%以下であることが好ましい。10質量%を超えて添加すると、導電性が低下する、腐食(軌道面等の金属部分の腐食)を促進させる、近傍に樹脂材等がある場合には相互作用が生じる等の悪影響が生じるおそれがある。
【0037】
そして、導電性の経時的な低下をさらに長期間にわたって抑えるためには、摩耗防止添加剤と油性剤とを併用することが好ましい。例えば、摩耗防止添加剤として亜リン酸エステル、油性剤としてカルボン酸無水物を用いた場合は、導電性の経時的な低下を抑える効果が特に優れている。
このような導電性グリースを、内方部材,外方部材,及び転動体を備える転動装置の空隙部内に充填すれば、電気抵抗値が小さく長期間にわたって帯電しにくい転動装置とすることができる。
【0038】
すなわち、本発明の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、前述のような導電性グリースを充填したことを特徴とする。
【0039】
なお、本発明は、種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明に係る導電性グリースの実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図5は本発明に係る導電性グリースを備えた玉軸受21の構造を示す縦断面図である。この玉軸受21は、外輪22と、内輪23と、外輪22と内輪23との間に転動自在に配設された複数の玉24と、複数の玉24を保持する保持器25と、外輪22のシールみぞ22bに取り付けられた接触形のシール26,26と、から構成されている。また、外輪22と内輪23とシール26,26とで囲まれた空間には導電性グリース27が充填され、シール26により玉軸受21内部に密封されている。
【0041】
そして、この導電性グリース27によって、前記両輪22,23の軌道面22a,23aと玉24との接触面が潤滑されるとともに、外輪22と内輪23と玉24とが導電状態となっている。さらに、外輪22又は内輪23が接地されていて(図示せず)、玉軸受21の回転により発生する静電気が除去されるようになっている。
【0042】
導電性グリース27は、基油としてエステル油(40℃における動粘度は26mm2 /sec)を使用し、それに増ちょう剤としてリチウム石けんと、導電性付与添加剤として単層カーボンナノチューブ(5.0質量%)と、添加剤としてコハク酸無水物(2.5質量%)と、をそれぞれ添加して、混和ちょう度を249としたものである。
【0043】
このような導電性グリース27は、カーボンナノチューブを含有していることで導電性とともに優れた潤滑性を有しているので、玉軸受21の軌道面22a,23aと玉24との金属接触が生じにくく、軌道面22a,23aに酸化膜が生成しにくい。その結果、導電性の経時的な低下が生じにくい。
また、シール26を導電性ゴムで構成する等の手法によってシール26にも導電性を保持させれば、導電性の経時的な低下をより抑制することができる。
【0044】
よって、このような導電性グリース27は、例えば複写機,レーザープリンタのような事務機器等に用いられる転がり軸受の静電気対策として顕著な有効性を発揮するものである。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0045】
例えば、本実施形態においては導電性グリースを玉軸受に適用した例を示して説明したが、本発明の導電性グリースは、その用途は特に限定されるものではなく、電気接点用グリース等のように、導電性を要求されるものであれば他の用途にも使用可能である。
ただし、前述したように、導電性の低下は、複数の部材が相対運動することにより該部材の軌道面に酸化膜が生成するために生じるものであり、また、相対運動時の前記部材間の油膜形成の程度が、導電性低下に密接に関係している。
【0046】
したがって、本発明の導電性グリースは、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等のような相対運動する部材を備えた転動装置に、特に好適に使用される。
次に、上記の玉軸受21とほぼ同様な構成の数種の玉軸受について回転中の内外輪の抵抗値を測定して、回転速度と導電性との関係、及び導電性が経時変化する程度を評価した結果について説明する。
【0047】
まず、抵抗値を測定する装置について、図6の概略構成図を参照しながら説明する。
図6中、符号1は測定対象の玉軸受を表し、その内輪1aに取付けられた軸部材2をモータ3によって回転駆動することによって、軸受1を回転するように構成されている。そして、内輪1aと一体となっている軸部材2と外輪1bとの間に、定電圧電源4によって所定の定電圧が印加されるとともに、当該定電圧電源4と並列に抵抗測定装置5が接続されている。
【0048】
抵抗測定装置5は、測定した電圧値(アナログ値)をA/D変換回路6に出力する。A/D変換回路6は、予め設定されたサンプリング周期でデジタル値に変換し、当該変換したデジタル信号を演算処理装置7に出力する。本実施形態では、サンプリング周期を50kHz(サンプリング時間間隔=0.02ms)に設定してある。
【0049】
演算処理装置7は、最大抵抗値演算部7Aと、閾値処理部7Bと、波数カウント部7Cとを備える。最大抵抗値演算部7Aは、入力したデジタル信号に基づき最大抵抗値を演算する。閾値処理部7Bは、入力したデジタル信号について所定閾値で閾値処理を行い雑音を除去する。波数カウント部7Cは、閾値処理部7Bからのパルスカウントについて、経時的なパルス値の増減変化によって、所定時間単位毎の変動回数つまり波山の波数をカウントし、その単位時間当たりの波数の平均値を求める。また演算処理装置7は、求めた最大抵抗値及び単位時間当たりの波数の平均値を表示装置8に出力する。本実施形態では、上記波数をカウントする単位時間を0.328秒に設定してある。表示装置8は、ディスプレイなどから構成され、演算処理装置7が求めた最大抵抗値及び単位時間当たりの波数の平均値を表示する。
【0050】
次に、上記構成の装置を使用した、玉軸受1の抵抗値評価の方法について説明する。
モータ3を駆動して軸部材2つまり内輪1aを所定回転速度で回転させた状態で、定電圧電源4から軸受1の内外輪1a,1b間に所定の定電圧を印加する。このとき、内外輪1a,1b間に電流が流れるが、スパーク等によって電圧が変動する。その電圧が抵抗測定装置5で測定され、続いて、A/D変換回路6によってデジタル値に変換され、そのデジタル信号に基づいて、演算処理装置7が最大抵抗値及び所定単位時間当たりの波数を求め、その値が表示装置8に表示される。
【0051】
封入するグリースの種類を変えた4種類の軸受(実施例1,2及び比較例1,2)を用意し、上記構成の装置を使用して、各軸受について回転中の内外輪1a,1b間の抵抗値(最大値)を測定した。
ここで、4種類の軸受は共に内径8mm、外径22mm、幅7mmの玉軸受である。また、4種類のグリースの構成は表1に示した通りであり、その封入量は155〜165mgである。さらに、使用した単層カーボンナノチューブは、その直径が1〜3nmで、長さが0.5〜5μmのものである(直径と長さに関しては、図1を参照)。
【0052】
【表1】
【0053】
測定条件を以下に示す。
回転速度:1000rpm(導電性の経時変化を評価する場合)
軸受1に与えるアキシアル荷重(Fa):29.4N
印可電圧 :6.2V
最大電流 :100μA
制限抵抗 :62kΩ
雰囲気温度:25℃
雰囲気湿度:50%RH
そして、サンプリング周期は50kHz、0.328秒で行った。
【0054】
次に、評価結果をグラフに示して、その内容を検討する。
まず、回転速度と導電性との関係を評価した結果について、図7のグラフを参照しながら説明する。なお、図7のグラフにおいては、実施例1の結果を菱形印(◆)、実施例2の結果を四角印(■)、比較例1の結果を三角印(▲)、比較例2の結果をバツ印(×)で示した。
【0055】
グラフから分かるように、単層カーボンナノチューブを含有するグリースを封入した実施例1及び2の軸受は、回転速度が大きくなっても軸受抵抗の最大値の上昇が抑えられている。しかしながら、比較例1及び2の軸受は、油膜形成や、グリース中のカーボンブラック成分が接触面から排除されること等が原因となって、回転速度が大きくなることに伴って軸受抵抗の最大値が上昇した。
【0056】
次に、導電性が経時変化する程度を評価した結果について、図8のグラフを参照しながら説明する。なお、図8のグラフにおいても、実施例1の結果を菱形印(◆)、実施例2の結果を四角印(■)、比較例1の結果を三角印(▲)、比較例2の結果をバツ印(×)で示した。
カーボンナノチューブを含有するグリースを封入した実施例1及び2の軸受は、経時的な抵抗値の上昇が小さく抑えられているのに対し、カーボンブラックを封入した比較例2の軸受は、時間とともに軸受抵抗の最大値が上昇した。
【0057】
また、導電性付与添加剤を含まないグリースを使用した比較例1の軸受は、軸受抵抗の最大値が初期から極めて大きかった。このような軸受は、放射ノイズを誘導するので、複写機やプリンタ等に使用された場合に、複写画像や印刷画像等の画像系に歪み等の悪影響を及ぼすおそれがある。
次に、実施例1の軸受において、グリースに添加したコハク酸無水物を他の種類の添加剤(摩耗防止添加剤,極圧添加剤,油性剤)に変更して、抵抗値(回転200時間後の軸受抵抗の最大値)の測定を行った結果を図9に示す。なお、各数値は添加剤なしの場合の値を1とした相対値である。また、各種添加剤の添加量は、2.5質量%に統一した。
【0058】
図9から分かるように、いずれの添加剤も、添加剤なしの場合と比較して軸受抵抗の最大値が小さく、添加剤の効果が見られた。
次に、実施例1の軸受において、グリースへのコハク酸無水物の添加量を変化させて抵抗値(回転200時間後の軸受抵抗の最大値)の測定を行った結果を図10に示す。なお、各数値は、コハク酸無水物の添加量が0質量%の場合の値を1とした相対値である。
【0059】
導電性から考えると添加剤量は10質量%以下が適当であることが、図10から分かる。また、軌道面等の金属部分の腐食の問題からも10質量%以下が好ましい。
次に、実施例1の軸受において、グリースへの単層カーボンナノチューブの添加量を変化させて抵抗値(回転200時間後の軸受抵抗の最大値)の測定を行った結果を図11に示す。
【0060】
カーボンナノチューブは0.1質量%程度の極少量でも導電性の付与に効果があるため、カーボンナノチューブの添加量を制限して、増ちょう剤をその分添加すれば、カーボンナノチューブの分散状態を経時的に良好に保つことができる。ただし、添加量を0.5質量%以上とすれば、抵抗値を十分に小さくできることがわかる。
【0061】
しかし、カーボンナノチューブの添加量が多すぎると、導電性の元となるカーボンナノチューブの網目構造が破壊されて早期に導電性能が変化しやすい。この網目構造の破壊は、グリース漏れや油分離を引き起こしやすくするという問題も引き起こす。
また、カーボンナノチューブの添加量が多くなると、ちょう度が小さくなりグリースが硬くなって、軸受などに封入して使用した場合に、軸受トルクが大きくなったりする。
【0062】
これらのことから、カーボンナノチューブの添加量は10質量%以下が好ましい。
次に、実施例1の軸受において、グリースの基油粘度を変化させて抵抗値(回転200時間後の軸受抵抗の最大値)の測定を行った結果を図12に示す。
図12から分かるように、基油の40℃における動粘度が高くなるほど、抵抗値が大きくなる傾向を示した。前述のように、基油の動粘度を高くしすぎると油膜が厚くなり、抵抗値が大きくなるので、基油の動粘度は120mm2 /sec以下が好ましい。
【0063】
また、軸受の回転中に軌道面と転動体との金属接触を避けるための潤滑油膜の形成には、基油の動粘度をある程度大きくする必要があり、5mm2 /sec以上とすることが好ましい。
次に、実施例1の軸受において、単層カーボンナノチューブの種類を種々変更して抵抗値(回転200時間後の軸受抵抗の最大値)の測定を行った結果を図13及び図14に示す。なお、グラフに示した各抵抗値は、実施例1の値を1とした相対値である。
【0064】
まず、単層カーボンナノチューブの直径を変化させた場合について、図13を参照しながら説明する。なお、図13のグラフにおいては、単層カーボンナノチューブの直径が1〜3nmの場合(実施例1)の結果を菱形印(◆)、3〜24nmの場合の結果を四角印(■)、7〜12nmの場合の結果を三角印(▲)で示した。また、単層カーボンナノチューブの長さは、いずれも0.5〜5μmである。
【0065】
図13のグラフから分かるように、単層カーボンナノチューブの直径にかかわらず、優れた導電性を示した。
次に、単層カーボンナノチューブの長さを変化させた場合について、図14を参照しながら説明する。なお、図14のグラフにおいては、単層カーボンナノチューブの長さが0.5〜5μmの場合(実施例1)の結果を菱形印(◆)、0.5〜10μmの場合の結果を四角印(■)、10〜30μmの場合の結果を三角印(▲)で示した。また、単層カーボンナノチューブの直径は、いずれも1〜3nmである。
【0066】
図14のグラフから分かるように、単層カーボンナノチューブの長さにかかわらず、優れた導電性を示した。単層カーボンナノチューブの長さが10〜30μmの場合は若干抵抗値が大きいが、この程度であれば実用的に十分に使用可能である。
次に、グリースに添加するカーボンナノチューブとして多層カーボンナノチューブを用いた例について説明する。
【0067】
封入された導電性グリースの種類の異なる5種類の軸受(実施例11〜14及び比較例11)を用意し、図6の装置を使用して、各軸受について回転中の内外輪間の抵抗値(最大値)を測定した。軸受の構成は、導電性グリースの構成を除いては、導電性グリースに添加するカーボンナノチューブとして単層カーボンナノチューブを用いた前述の例の場合と全く同様である。また、5種類の導電性グリースの構成は表2に示した通りであり、その封入量は155〜165mgである。
【0068】
【表2】
【0069】
なお、実施例14において使用した単層カーボンナノチューブの外径は0.7〜2.0nmで、長さは1〜5μmである。また、多層カーボンナノチューブの外径は5〜30nmで、長さは1〜10μmである。そして、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブとの混合比率は、およそ1:1である。
抵抗値の測定結果をグラフに示して、その内容を検討する。
【0070】
まず、軸受の膜厚比Λと導電性との関係を評価した結果について、図15のグラフを参照しながら説明する。なお、膜厚比Λは潤滑状態を表す計算上の指標であり、最小油膜厚さhmin と、軌道面及び転動体表面の表面粗さσ1 ,σ2 とから下記式により算出されるものである。
膜厚比Λ=hmin /(σ1 2 +σ2 2 )1/2
グラフから分かるように、膜厚比Λ、すなわち油膜の厚さが大きい程、軸受抵抗は大きくなる傾向がある。しかしながら、カーボンナノチューブを用いた場合、特に多層カーボンナノチューブを用いた実施例11,13,及び14は、膜厚比Λが大きくなっても軸受抵抗の最大値の上昇度は小さかった。
【0071】
次に、実施例11,12,14及び比較例11の軸受において、基油の40℃における動粘度を変化させて、回転中の内外輪間の抵抗値(回転48時間後の軸受抵抗の最大値)の測定を行った結果を図16に示す。なお、抵抗値の測定は、回転速度:300rpm、アキシャル荷重:19.6Nという条件で、図6の装置を使用して行った。
【0072】
図16のグラフから分かるように、多層カーボンナノチューブを用いた場合は、比較的高い動粘度を有する基油を用いた場合でも導電性が優れていた。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明の導電性グリースは、導電性の経時的な低下が生じにくい。また、本発明の転動装置は、電気抵抗値が小さく長期間にわたって帯電しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】単層カーボンナノチューブの構造を示す概念図である。
【図2】グラフェンの構造を示す概念図である。
【図3】多層カーボンナノチューブの構造を示す概念図である。
【図4】各種添加剤の化学構造式を示す図である。
【図5】本発明の導電性グリースを備えた玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図6】抵抗値を測定する装置の概略構成図である。
【図7】玉軸受の回転速度と軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図8】玉軸受の回転時間と軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図9】グリース中の添加剤の種類による軸受抵抗の最大値を示すグラフである。
【図10】コハク酸無水物の添加剤量と軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図11】単層カーボンナノチューブの添加量と軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図12】基油粘度と軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図13】単層カーボンナノチューブの直径と軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図14】単層カーボンナノチューブの長さと軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図15】膜厚比Λと軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図16】基油粘度と軸受抵抗の最大値との相関を示すグラフである。
【図17】従来の導電性グリースを備えた玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図18】従来の導電性グリースを備えた転がり軸受の回転試験後の内輪軌道面のSEM像である。
【図19】従来の導電性グリースを備えた転がり軸受の回転試験後の内輪軌道面のEDS測定チャートである。
【符号の説明】
21 玉軸受
22 外輪
22a 外輪軌道面
23 内輪
23a 内輪軌道面
24 玉
27 導電性グリース
Claims (10)
- 基油と導電性付与添加剤とを備えた導電性グリースにおいて、前記導電性付与添加剤をカーボンナノチューブとしたことを特徴とする導電性グリース。
- 前記カーボンナノチューブの直径を0.7〜30nmとし、長さを0.5〜30μmとしたことを特徴とする請求項1に記載の導電性グリース。
- 前記カーボンナノチューブを多層カーボンナノチューブとしたことを特徴とする請求項1に記載の導電性グリース。
- 前記多層カーボンナノチューブの直径を2〜30nmとし、長さを1〜30μmとしたことを特徴とする請求項3に記載の導電性グリース。
- 前記カーボンナノチューブを、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブの混合物としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性グリース。
- 前記カーボンナノチューブのグリース全体における含有量を0.1〜10質量%としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性グリース。
- 前記導電性付与添加剤として、さらにカーボンブラックを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性グリース。
- 金属石けん,金属複合石けん,ウレア化合物,及びフッ素化合物のうち少なくとも1種からなる増ちょう剤を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電性グリース。
- 前記基油の40℃における動粘度を5〜120mm2 /sとしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電性グリース。
- 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜9のいずれかに記載の導電性グリースを充填したことを特徴とする転動装置。
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