JP2006329364A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた導電性を有するため帯電や電食が生じにくく、且つ、グリース組成物の漏洩が生じにくい転がり軸受を提供する。
【解決手段】深溝玉軸受の空隙部内に、合成炭化水素油と3種のカーボンブラックとを含有する導電性グリース組成物6を封入した。第一カーボンブラックは、平均一次粒径55nm、比表面積29m2 /g、DBP吸収量130ml/100gである。第二カーボンブラックは、平均一次粒径30nm、比表面積800m2 /g、DBP吸収量360ml/100gである。第三カーボンブラックは、平均一次粒径24nm、比表面積125m2 /g、DBP吸収量165ml/100gである。
【選択図】 図1
【解決手段】深溝玉軸受の空隙部内に、合成炭化水素油と3種のカーボンブラックとを含有する導電性グリース組成物6を封入した。第一カーボンブラックは、平均一次粒径55nm、比表面積29m2 /g、DBP吸収量130ml/100gである。第二カーボンブラックは、平均一次粒径30nm、比表面積800m2 /g、DBP吸収量360ml/100gである。第三カーボンブラックは、平均一次粒径24nm、比表面積125m2 /g、DBP吸収量165ml/100gである。
【選択図】 図1
Description
本発明は、導電性を有することが望まれる機器の回転支持部に使用される導電性に優れた転がり軸受に関する。導電性を有することが望まれる機器としては、例えば、金融機器,流通機器,交通機器,ATM,自動改札機,自動券売機,自動販売機,郵便仕分け機等のような紙面,紙幣,用紙,キャッシュカード等を搬送する装置や、自動車用ワイパー,パワーウインドー,スライドドア等の電装機器及びエンジン補機の駆動用ベルトの支持駆動部に用いられるプーリ軸受装置があげられる。
事務機器(複写機,プリンター等),金融機器,流通機器,交通機器,ATM,自動改札機,自動券売機,自動販売機,郵便仕分け機等のような紙面,紙幣,用紙等を取り扱う装置は、紙との摩擦により静電気が発生する。また、自動車用ワイパー,パワーウインドー,スライドドア等の駆動用モータにおいても静電気が発生する。発生した静電気は機械本体のアースにより除電されるが、軸受に支持されたロール等の部材は軸受の回転時には電気的に断絶している状態にあるため、静電気が帯電しやすい。
このように静電気が帯電すると、静電気のクーロン力の影響で紙が正確に搬送できなくなる、静電気がセンサーの回路に流れ込むとセンサーの誤作動や破損が生じる、周辺機器へのノイズとなる等の問題が生じるおそれがある。
そのため、導電性グリースを転がり軸受内部に封入して内外の軌道輪及び転動体を導電状態にするとともに、内外の軌道輪のうち一方を接地することにより、静電気を該転がり軸受から除去し(帯電を防ぐ)、且つ、瞬間的な大電流による損傷(電食)を防ぐという対策が取られている。そして、導電性グリースとしては、カーボンブラックを増ちょう剤及び導電性付与添加剤として添加したものが主流であった(例えば、特許文献1に記載のもの)。
そのため、導電性グリースを転がり軸受内部に封入して内外の軌道輪及び転動体を導電状態にするとともに、内外の軌道輪のうち一方を接地することにより、静電気を該転がり軸受から除去し(帯電を防ぐ)、且つ、瞬間的な大電流による損傷(電食)を防ぐという対策が取られている。そして、導電性グリースとしては、カーボンブラックを増ちょう剤及び導電性付与添加剤として添加したものが主流であった(例えば、特許文献1に記載のもの)。
しかしながら、このような導電性グリースを封入した転がり軸受は、初期においては優れた導電性を示す(内外の軌道輪及び転動体が導電状態となっている)ものの、導電性が経時的に低下して転がり軸受の内外輪間の電気抵抗値(以降は軸受抵抗値と記す)が大きくなることがあるという問題点があった。そして、このような現象の原因としては、以下のようなことが考えられた。
すなわち、導電性グリースは当初は転がり軸受の軌道輪の軌道面と転動体との接触面に十分に存在していて、その導電性グリース中のカーボンブラックにより、軌道輪と転動体との間の導電性が確保されるが、軌道輪と転動体との相対運動により、時間の経過とともに導電性グリースが前記接触面から排除されたり、また、カーボンブラック粒子のチェーンストラクチャーが破壊されたりするため、導電性が低下して軸受抵抗値が経時的に大きくなるという現象が生じるのである。
また、特許文献2にも記載されているように、長時間にわたって転がり軸受を回転させた場合には、転がり軸受の軌道面に生じる酸化被膜が内外輪間の電気抵抗値を上昇させるとも言われている。この対策としては、転がり軸受の転がり接触面を保護するために極圧添加剤や摩耗防止剤を用いる方法(特許文献2を参照)や、無機化合物微粒子を配合する方法(特許文献3を参照)がある。しかしながら、極圧添加剤は、一般的には高温では効果が小さい場合が多い。また、単に無機化合物微粒子を添加した場合は、グリースが経時的に硬化又は軟化したり、長期的に離油度が安定しないことが多い。
特公昭63−24038号公報
特開2002−80879号公報
特開2003−42166号公報
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、優れた導電性を示し、且つ、グリース組成物の漏洩が生じにくい転がり軸受を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成され前記転動体が配された空隙部内に封入された導電性グリース組成物と、を備え、導電性を有することが望まれる機器の回転支持部に使用される転がり軸受において、前記導電性グリース組成物は、鉱油及び合成油の少なくとも一方を含有する基油と、2種のカーボンブラックと、を含有し、前記2種のカーボンブラックは、比表面積が20m2 /g以上80m2 /g以下の第一カーボンブラックと、比表面積が200m2 /g以上1500m2 /g以下の第二カーボンブラックであることを特徴とする。
このような構成であれば、優れた導電性を有するため帯電や電食が生じにくく、且つ、導電性グリース組成物の漏洩が生じにくい。すなわち、第一カーボンブラックにより優れた導電性が付与され、且つ、第二カーボンブラックにより導電性グリース組成物の離油が抑制される。そして、両カーボンブラックがともに含有されていることにより、カーボンブラック同士の凝集が抑制され、導電性グリース組成物に適度な流動性が付与される。
両カーボンブラックの比表面積が前記範囲内であれば、前述のような優れた効果が得られるが、第一カーボンブラックの比表面積は23m2 /g以上80m2 /g以下であることがより好ましく、23m2 /g以上60m2 /g以下であることがさらに好ましく、27m2 /g以上42m2 /g以下であることが最も好ましい。また、第二カーボンブラックの比表面積は250m2 /g以上1000m2 /g以下であることがより好ましく、320m2 /g以上1000m2 /g以下であることがさらに好ましく、370m2 /g以上1000m2 /g以下であることが最も好ましい。なお、本発明における比表面積の数値は、窒素吸着法により測定された値である。
また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックのDBP吸収量は30ml/100g以上160ml/100g以下であり、前記第二カーボンブラックのDBP吸収量は80ml/100g以上500ml/100g以下であることを特徴とする。
第一カーボンブラックのDBP吸収量が30ml/100g未満であると、第一カーボンブラックの導電性グリース組成物中への分散性が不十分となりやすく、160ml/100gを超えると、カーボンブラック同士の凝集を防止する効果が低くなる。このような問題がより生じにくくするためには、第一カーボンブラックのDBP吸収量は、50ml/100g以上160ml/100g以下であることがより好ましく、60ml/100g以上150ml/100g以下であることがさらに好ましく、67ml/100g以上140ml/100g以下であることが最も好ましい。
第一カーボンブラックのDBP吸収量が30ml/100g未満であると、第一カーボンブラックの導電性グリース組成物中への分散性が不十分となりやすく、160ml/100gを超えると、カーボンブラック同士の凝集を防止する効果が低くなる。このような問題がより生じにくくするためには、第一カーボンブラックのDBP吸収量は、50ml/100g以上160ml/100g以下であることがより好ましく、60ml/100g以上150ml/100g以下であることがさらに好ましく、67ml/100g以上140ml/100g以下であることが最も好ましい。
また、第二カーボンブラックのDBP吸収量が80ml/100g未満であると、基油の漏洩等が生じやすくなり、500ml/100gを超えると、カーボンブラック同士が凝集する傾向が強くなる。このような問題がより生じにくくするためには、第二カーボンブラックのDBP吸収量は、90ml/100g以上450ml/100g以下であることがより好ましく、100ml/100g以上400ml/100g以下であることがさらに好ましく、140ml/100g以上360ml/100g以下であることが最も好ましい。
さらに、本発明に係る請求項3の転がり軸受は、請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックとの質量比は、25:75以上95:5以下であり、前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックとの合計の含有量は、前記導電性グリース組成物の1.5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする。
このような構成であれば、両カーボンブラックの特性のバランスがとれて、導電性グリース組成物の導電性及び流動性が良好となる。また、転がり軸受からの漏洩や基油の離油が生じにくくなる。
第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの合計量における第一カーボンブラックの割合が25質量%未満(すなわち第二カーボンブラックの割合が75質量%超過)であると、カーボンブラックによる増粘効果が大きくなるので全カーボンブラックの含有量を少なくできるが、高温下における離油が大きくなるおそれがある。一方、第二カーボンブラックの割合が5質量%未満(すなわち第一カーボンブラックの割合が95質量%超過)であると、基油の保持力が不十分となるため、全カーボンブラックの含有量を多くする必要がでてくる。また、初期の導電性は良好であるが、長期間にわたって良好な導電性を維持できないおそれがある。
第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの合計量における第一カーボンブラックの割合が25質量%未満(すなわち第二カーボンブラックの割合が75質量%超過)であると、カーボンブラックによる増粘効果が大きくなるので全カーボンブラックの含有量を少なくできるが、高温下における離油が大きくなるおそれがある。一方、第二カーボンブラックの割合が5質量%未満(すなわち第一カーボンブラックの割合が95質量%超過)であると、基油の保持力が不十分となるため、全カーボンブラックの含有量を多くする必要がでてくる。また、初期の導電性は良好であるが、長期間にわたって良好な導電性を維持できないおそれがある。
このような問題がより生じにくくするためには、第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの質量比は、50:50以上95:5以下であることがより好ましく、75:25以上90:10以下であることがさらに好ましく、75:25以上88:12以下であることが最も好ましい。
また、第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの合計の含有量が、導電性グリース組成物全体の1.5質量%未満であると、導電性が不十分となるおそれがあるとともに、基油の離油が十分に抑制できないおそれがある。一方、20質量%超過であると、導電性グリース組成物の流動性が低下するおそれがある。
また、第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの合計の含有量が、導電性グリース組成物全体の1.5質量%未満であると、導電性が不十分となるおそれがあるとともに、基油の離油が十分に抑制できないおそれがある。一方、20質量%超過であると、導電性グリース組成物の流動性が低下するおそれがある。
このような問題がより生じにくくするためには、第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの合計の含有量は、導電性グリース組成物全体の3質量%以上17質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましく、7質量%以上13質量%以下であることが最も好ましい。
さらに、本発明に係る請求項4の転がり軸受は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックの平均一次粒径は40nm以上200nm以下であり、前記第二カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項4の転がり軸受は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックの平均一次粒径は40nm以上200nm以下であり、前記第二カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であることを特徴とする。
平均一次粒径が10nm未満であると、カーボンブラック同士が凝集する可能性が高くなり、200nm超過であると、導電性グリース組成物の流動性が阻害されるおそれがある。そして、平均一次粒径が異なる2種のカーボンブラックが含有されていることにより、カーボンブラックの分散性が適度に保たれ、その結果、基油の保持力が十分となる。また、剪断が作用しても、カーボンブラック粒子のチェーンストラクチャーが破壊されにくい。
さらに、本発明に係る請求項5の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成され前記転動体が配された空隙部内に封入された導電性グリース組成物と、を備え、導電性を有することが望まれる機器の回転支持部に使用される転がり軸受において、前記導電性グリース組成物は、鉱油及び合成油の少なくとも一方を含有する基油と、3種のカーボンブラックと、を含有し、前記3種のカーボンブラックは、比表面積が20m2 /g以上80m2 /g以下の第一カーボンブラックと、比表面積が200m2 /g以上1500m2 /g以下の第二カーボンブラックと、比表面積が80m2 /g超過200m2 /g未満の第三カーボンブラックと、であることを特徴とする。
このような構成であれば、極めて優れた導電性を有するため帯電や電食が極めて生じにくく、且つ、導電性グリース組成物の漏洩が極めて生じにくい。すなわち、第一及び第三カーボンブラックにより優れた導電性が付与され、且つ、第二カーボンブラックにより導電性グリース組成物の離油が抑制される。そして、3種のカーボンブラックが含有されていることにより、カーボンブラック同士の凝集が抑制され、導電性グリース組成物に適度な流動性が付与される。また、剪断が作用しても、カーボンブラック粒子のチェーンストラクチャーが破壊されにくく、基油の保持力が高い。
3種のカーボンブラックの比表面積が前記範囲内であれば、前述のような優れた効果が得られるが、第一カーボンブラックの比表面積は23m2 /g以上80m2 /g以下であることがより好ましく、23m2 /g以上60m2 /g以下であることがさらに好ましく、27m2 /g以上42m2 /g以下であることが最も好ましい。また、第二カーボンブラックの比表面積は250m2 /g以上1000m2 /g以下であることがより好ましく、320m2 /g以上1000m2 /g以下であることがさらに好ましく、370m2 /g以上1000m2 /g以下であることが最も好ましい。さらに、第三カーボンブラックの比表面積は90m2 /g以上180m2 /g以下であることがより好ましく、100m2 /g以上160m2 /g以下であることがさらに好ましく、110m2 /g以上140m2 /g以下であることが最も好ましい。
さらに、本発明に係る請求項6の転がり軸受は、請求項5に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックのDBP吸収量は30ml/100g以上160ml/100g以下であり、前記第二カーボンブラックのDBP吸収量は80ml/100g以上500ml/100g以下であり、前記第三カーボンブラックのDBP吸収量は100ml/100g以上300ml/100g以下であることを特徴とする。
第一カーボンブラックのDBP吸収量が30ml/100g未満であると、第一カーボンブラックの導電性グリース組成物中への分散性が不十分となりやすく、160ml/100gを超えると、カーボンブラック同士の凝集を防止する効果が低くなる。このような問題がより生じにくくするためには、第一カーボンブラックのDBP吸収量は、50ml/100g以上160ml/100g以下であることがより好ましく、60ml/100g以上150ml/100g以下であることがさらに好ましく、67ml/100g以上140ml/100g以下であることが最も好ましい。
また、第二カーボンブラックのDBP吸収量が80ml/100g未満であると、基油の漏洩等が生じやすくなり、500ml/100gを超えると、カーボンブラック同士が凝集する傾向が強くなる。このような問題がより生じにくくするためには、第二カーボンブラックのDBP吸収量は、90ml/100g以上450ml/100g以下であることがより好ましく、100ml/100g以上400ml/100g以下であることがさらに好ましく、140ml/100g以上360ml/100g以下であることが最も好ましい。
さらに、第三カーボンブラックのDBP吸収量が100ml/100g未満であると、第一カーボンブラックの場合と同様に導電性グリース組成物中への分散性が不十分となりやすく、160ml/100gを超えると、第一カーボンブラックの場合と同様にカーボンブラック同士の凝集を防止する効果が低くなる。このような問題がより生じにくくするためには、第三カーボンブラックのDBP吸収量は、110ml/100g以上250ml/100g以下であることがより好ましく、120ml/100g以上200ml/100g以下であることがさらに好ましく、140ml/100g以上180ml/100g以下であることが最も好ましい。
さらに、本発明に係る請求項7の転がり軸受は、請求項5又は請求項6に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックとの質量比は、25:75以上95:5以下であり、且つ、前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックと前記第三カーボンブラックとの合計の含有量は、前記導電性グリース組成物の2質量%以上25質量%以下であることを特徴とする。
このような構成であれば、3種のカーボンブラックの特性のバランスがとれて、導電性グリース組成物の導電性及び流動性が良好となる。また、転がり軸受からの漏洩や基油の離油が生じにくくなる。
第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの合計量における第一カーボンブラックの割合が25質量%未満(すなわち第二カーボンブラックの割合が75質量%超過)であると、カーボンブラックによる増粘効果が大きくなるので全カーボンブラックの含有量を少なくできるが、高温下における離油が大きくなるおそれがある。一方、第二カーボンブラックの割合が5質量%未満(すなわち第一カーボンブラックの割合が95質量%超過)であると、基油の保持力が不十分となるため、全カーボンブラックの含有量を多くする必要がでてくる。また、初期の導電性は良好であるが、長期間にわたって良好な導電性を維持できないおそれがある。
第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの合計量における第一カーボンブラックの割合が25質量%未満(すなわち第二カーボンブラックの割合が75質量%超過)であると、カーボンブラックによる増粘効果が大きくなるので全カーボンブラックの含有量を少なくできるが、高温下における離油が大きくなるおそれがある。一方、第二カーボンブラックの割合が5質量%未満(すなわち第一カーボンブラックの割合が95質量%超過)であると、基油の保持力が不十分となるため、全カーボンブラックの含有量を多くする必要がでてくる。また、初期の導電性は良好であるが、長期間にわたって良好な導電性を維持できないおそれがある。
このような問題がより生じにくくするためには、第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの質量比は、50:50以上95:5以下であることがより好ましく、75:25以上90:10以下であることがさらに好ましく、75:25以上88:12以下であることが最も好ましい。
また、第一,第二,第三カーボンブラックの合計の含有量が、導電性グリース組成物の2質量%未満であると、導電性が不十分となるおそれがあるとともに、基油の離油が十分に抑制できないおそれがある。一方、25質量%超過であると、導電性グリース組成物の流動性が低下するおそれがある。
また、第一,第二,第三カーボンブラックの合計の含有量が、導電性グリース組成物の2質量%未満であると、導電性が不十分となるおそれがあるとともに、基油の離油が十分に抑制できないおそれがある。一方、25質量%超過であると、導電性グリース組成物の流動性が低下するおそれがある。
このような問題がより生じにくくするためには、第一,第二,第三カーボンブラックの合計の含有量は、導電性グリース組成物の5質量%以上19質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上22質量%以下であることがさらに好ましく、9質量%以上20質量%以下であることが最も好ましい。
さらに、本発明に係る請求項8の転がり軸受は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックの平均一次粒径は40nm以上200nm以下であり、前記第二カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であり、前記第三カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項8の転がり軸受は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記第一カーボンブラックの平均一次粒径は40nm以上200nm以下であり、前記第二カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であり、前記第三カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であることを特徴とする。
平均一次粒径が10nm未満であると、カーボンブラック同士が凝集する可能性が高くなり、200nm超過であると、導電性グリース組成物の流動性が阻害されるおそれがある。そして、平均一次粒径が異なる3種のカーボンブラックが含有されていることにより、カーボンブラックの分散性が適度に保たれ、その結果、基油の保持力が十分となる。また、剪断が作用しても、カーボンブラック粒子のチェーンストラクチャーが破壊されにくい。
さらに、本発明に係る請求項9の転がり軸受は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記導電性グリース組成物が1質量%以上10質量%以下のリチウム石けんを含有することを特徴とする。
導電性グリース組成物には、混和ちょう度を調整するためにリチウム石けんのような増ちょう剤を添加してもよい。リチウム石けんの平均一次粒径は5nm以上10μm以下であることが好ましく、平均一次粒径が5nm未満であると増ちょう効果が乏しく、10μm超過であると転がり軸受に対して異物として作用するおそれがある。
導電性グリース組成物には、混和ちょう度を調整するためにリチウム石けんのような増ちょう剤を添加してもよい。リチウム石けんの平均一次粒径は5nm以上10μm以下であることが好ましく、平均一次粒径が5nm未満であると増ちょう効果が乏しく、10μm超過であると転がり軸受に対して異物として作用するおそれがある。
さらに、本発明に係る請求項10の転がり軸受は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記導電性グリース組成物が極圧剤及び油性剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする。
このような構成であれば、転がり軸受の軌道面に酸化被膜が形成することが抑制されるので、転がり軸受の導電性がより向上する。
このような構成であれば、転がり軸受の軌道面に酸化被膜が形成することが抑制されるので、転がり軸受の導電性がより向上する。
さらに、本発明に係る請求項11の転がり軸受は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の転がり軸受において、前記導電性グリース組成物の混和ちょう度が200以上300以下であることを特徴とする。
混和ちょう度が200未満であると、導電性グリース組成物が硬いため流動性が不十分であり、300超過であると、導電性グリース組成物がやわらかいため転がり軸受からの漏洩等が生じるおそれがある。
混和ちょう度が200未満であると、導電性グリース組成物が硬いため流動性が不十分であり、300超過であると、導電性グリース組成物がやわらかいため転がり軸受からの漏洩等が生じるおそれがある。
本発明の転がり軸受は、優れた導電性を示すため、帯電や電食が生じにくく、且つ、導電性グリース組成物の漏洩が生じにくい。
本発明に係る転がり軸受の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。図1の深溝玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1及び外輪2の間に転動自在に配置された複数の玉3と、内輪1及び外輪2の間に複数の玉3を保持する保持器4と、外輪2の両端部の内周面に取り付けられたシールド5,5と、を備えている。このシールド5は内輪1及び外輪2の間に介在され、内輪1の外周面と外輪2の内周面との間の開口部分をほぼ覆っている。
図1は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。図1の深溝玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内輪1及び外輪2の間に転動自在に配置された複数の玉3と、内輪1及び外輪2の間に複数の玉3を保持する保持器4と、外輪2の両端部の内周面に取り付けられたシールド5,5と、を備えている。このシールド5は内輪1及び外輪2の間に介在され、内輪1の外周面と外輪2の内周面との間の開口部分をほぼ覆っている。
また、内輪1及び外輪2の間に形成され玉3が配された空隙部内には、導電性グリース組成物6が封入されており、シールド5により深溝玉軸受内部に密封されている。封入されている導電性グリース組成物6の量は、前記空隙部の容積の15体積%以上35体積%以下である。なお、シールド5の代わりにゴムシールを用いてもよい。その場合には、ゴムシールのゴムを、導電性ゴムとしてもよい。
この導電性グリース組成物6は、合成炭化水素油を含有する基油と3種のカーボンブラックとを含有し、混和ちょう度が200以上300以下である。3種のカーボンブラックのうち第一カーボンブラックは、平均一次粒径が40nm以上200nm以下、比表面積が20m2 /g以上80m2 /g以下、DBP吸収量が30ml/100g以上160ml/100g以下である。第二カーボンブラックは、平均一次粒径が10nm以上40nm以下、比表面積が200m2 /g以上1500m2 /g以下、DBP吸収量が80ml/100g以上500ml/100g以下である。第三カーボンブラックは、平均一次粒径が10nm以上40nm以下、比表面積が80m2 /g超過200m2 /g未満、DBP吸収量が100ml/100g以上300ml/100g以下である。
そして、導電性グリース組成物6に含まれる第一カーボンブラックと第二カーボンブラックとの質量比は、25:75以上95:5以下であり、第一カーボンブラックと第二カーボンブラックと第三カーボンブラックとの合計の含有量は、導電性グリース組成物6全体の2質量%以上25質量%以下である。
このようなカーボンブラックは、平均一次粒径,比表面積,DBP吸収量をもとにして、各種市販品から選定するとよい。例えば、東海カーボン株式会社製の「トーカブラック」シリーズや「シースト」シリーズ、三菱化学株式会社製の「三菱カーボンブラック」シリーズ、電気化学工業株式会社製の「デンカブラック」シリーズ、ライオンアクゾ社製の「ケッチェンブラック」シリーズが使用できる。また、いわゆるアセチレンブラックやフライアッシュ等も、平均一次粒径,比表面積等の性状が本発明の範囲内であれば使用することができる。
このようなカーボンブラックは、平均一次粒径,比表面積,DBP吸収量をもとにして、各種市販品から選定するとよい。例えば、東海カーボン株式会社製の「トーカブラック」シリーズや「シースト」シリーズ、三菱化学株式会社製の「三菱カーボンブラック」シリーズ、電気化学工業株式会社製の「デンカブラック」シリーズ、ライオンアクゾ社製の「ケッチェンブラック」シリーズが使用できる。また、いわゆるアセチレンブラックやフライアッシュ等も、平均一次粒径,比表面積等の性状が本発明の範囲内であれば使用することができる。
具体的には、第一カーボンブラックとしては、「トーカブラック」シリーズのトーカブラック#7360SB,#7350/F,#7270SB,#7100F,#7050,#4500,#4400,#4300,#3845,#3800や、「シースト」シリーズのシースト3,NH,N,116HM,116,FM,SO,V,SVH,FY,S,SPが使用できる。また、「三菱カーボンブラック」シリーズのMA220,MA230,#25,#20,#10,#5,#95,#260,#3030,#3050,CF9や、「デンカブラック」シリーズのデンカブラック粒状品,粉状品,HS−100等が使用できる。
これらの中では、トーカブラック#7050(平均一次粒径66nm、比表面積28m2 /g、DBP吸収量66ml/100g),シーストV(平均一次粒径62nm、比表面積27m2 /g、DBP吸収量87ml/100g),シーストSVH(平均一次粒径62nm、比表面積32m2 /g、DBP吸収量140ml/100g),シーストS(平均一次粒径66nm、比表面積27m2 /g、DBP吸収量68ml/100g),デンカブラックHS−100(平均一次粒径48nm、比表面積39m2 /g、DBP吸収量140ml/100g)が好適に使用できる。
また、第二カーボンブラックとしては、トーカブラック#8500/F,#8300/F,#5500や、三菱カーボンブラック#2700,#2650,#2600,#2400,#2350,#2300,#2200,#990,#980,#970,#960,#950,#900,#850,#3230や、ケッチェンブラックEC等が使用できる。
これらの中では、トーカブラック#5500(平均一次粒径25nm、比表面積225m2 /g、DBP吸収量155ml/100g),三菱カーボンブラック#3230(平均一次粒径23nm、比表面積220m2 /g、DBP吸収量140ml/100g),ケッチェンブラックEC(平均一次粒径30nm、比表面積800m2 /g、DBP吸収量360ml/100g)が好適に使用できる。
さらに、第三カーボンブラックとしては、三菱カーボンブラック#3350(平均一次粒径24nm、比表面積125m2 /g、DBP吸収量165ml/100g)等が使用できる。
また、基油としては、樹脂との相性が比較的良好な合成炭化水素油が好適である。ただし、用途等によっては、鉱油や他の合成油(例えばエステル油)も使用することができるし、これらを適宜混合して使用することもできる。鉱油としては、例えばパラフィン系鉱油やナフテン系鉱油があげられ、合成油としては、例えばエーテル油,ポリグリコール油,シリコン油,合成炭化水素油,フルオロシリコーン油,フッ素油があげられる。
また、基油としては、樹脂との相性が比較的良好な合成炭化水素油が好適である。ただし、用途等によっては、鉱油や他の合成油(例えばエステル油)も使用することができるし、これらを適宜混合して使用することもできる。鉱油としては、例えばパラフィン系鉱油やナフテン系鉱油があげられ、合成油としては、例えばエーテル油,ポリグリコール油,シリコン油,合成炭化水素油,フルオロシリコーン油,フッ素油があげられる。
なお、合成炭化水素油の40℃における動粘度は、10mm2 /s以上500mm2 /s以下であることが好ましい。40℃における動粘度が10mm2 /s未満であると、耐熱性が不十分となるおそれがあり、500mm2 /s超過であると、転がり軸受のトルクが過大になるおそれがある。転がり軸受が200℃程度の高温下で使用される場合には、トルク性能と耐熱性との兼ね合いから、合成炭化水素油の40℃における動粘度は、20mm2 /s以上200mm2 /s以下であることがより好ましく、25mm2 /s以上100mm2 /s以下であることがさらに好ましい。
さらに、導電性グリース組成物6には、混和ちょう度を調整するためにリチウム石けんのような増ちょう剤を添加してもよい。
さらに、導電性グリース組成物6には、潤滑剤に一般的に使用される各種添加剤を添加してもよく、添加剤の中でも極圧剤及び油性剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。極圧剤と油性剤との合計の含有量は、導電性グリース組成物6全体の0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。
さらに、導電性グリース組成物6には、潤滑剤に一般的に使用される各種添加剤を添加してもよく、添加剤の中でも極圧剤及び油性剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。極圧剤と油性剤との合計の含有量は、導電性グリース組成物6全体の0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。
極圧剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP),ジチオリン酸モリブデン(Mo−DTP)等のDTP金属化合物や、ニッケルジチオカーバメイト(Ni−DTC),モリブデンジチオカーバメイト(Mo−DTC)等のDTC金属化合物があげられる。また、イオウ,リン,塩素等を含む有機金属化合物も好適である。さらに、二硫化モリブデン等の極圧性に優れた固体潤滑剤も、極圧剤として使用可能である。これらの極圧剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
油性剤の例としては、オレイン酸等の脂肪酸、コハク酸エステル等の脂肪酸誘導体、有機リン系化合物があげられる。有機リン系化合物としては、例えば、一般式(RO)3 POで示される正リン酸エステルや、一般式(RO)2 P(O)Hで示される亜リン酸ジエステル及び一般式(RO)3 Pで示される亜リン酸トリエステルのような亜リン酸エステルがあげられる(Rはいずれも、アルキル基,アリール基,アルキルアリール基等の炭化水素基である)。正リン酸エステルの具体例としては、トリクレジルフォスフェイトやトリオクチルフォスフェイトがあげられる。これらの油性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、極圧剤,油性剤以外の添加剤を、所望により添加してもよい。例えば、酸化防止剤,防錆剤,金属不活性化剤である。
防錆剤としては、例えば金属系防錆剤,無灰系防錆剤があげられる。金属系防錆剤の具体例としては、(石油)スルフォン酸金属塩(バリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩,ナトリウム塩,亜鉛塩,アルミニウム塩,リチウム塩等)のような油溶性スルホネートや、フェネート,サリシレート,ホスホネート等があげられる。無灰系防錆剤の具体例としては、コハク酸イミド,ベンジルアミン,コハク酸エステル,コハク酸ハーフエステル,ポリメタクリレート,ポリブテン,ポリカルボン酸アンモニウム塩等があげられる。
防錆剤としては、例えば金属系防錆剤,無灰系防錆剤があげられる。金属系防錆剤の具体例としては、(石油)スルフォン酸金属塩(バリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩,ナトリウム塩,亜鉛塩,アルミニウム塩,リチウム塩等)のような油溶性スルホネートや、フェネート,サリシレート,ホスホネート等があげられる。無灰系防錆剤の具体例としては、コハク酸イミド,ベンジルアミン,コハク酸エステル,コハク酸ハーフエステル,ポリメタクリレート,ポリブテン,ポリカルボン酸アンモニウム塩等があげられる。
さらに、酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤(脂肪族アミン系及び芳香族アミン系),フェノール系酸化防止剤,イオウ系酸化防止剤等があげられる。
さらに、金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール誘導体,亜硝酸ナトリウム,酸化亜鉛等があげられる。これらは不動態化膜を形成できるので、摩耗等に伴う軌道表面の酸化を抑制する効果がある。
さらに、金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール誘導体,亜硝酸ナトリウム,酸化亜鉛等があげられる。これらは不動態化膜を形成できるので、摩耗等に伴う軌道表面の酸化を抑制する効果がある。
このような転がり軸受は、優れた導電性を示すため、帯電や電食が生じにくく、且つ、導電性グリース組成物の漏洩が生じにくい。従来は、機械的なアース(例えばシャフトにブラシ機構を設ける方法)等により除電を行っていたが、例えば金融機器は紙幣の搬送等でいたる所にロールが設置されているため、その機構も非常に複雑となる。また、その点数も非常に多いことから、重要部分のみに設置する場合も多い。
しかしながら、前述のような導電性を有する転がり軸受を用いれば、機械的なアースを設置しなくても、静電気の除去、磁気センサーのノイズ及び破損の防止、電食防止が達成される。また、転がり軸受のみで上記効果が得られ、機械的なアースが必要ないので、機器の簡素化が図れるとともに、静電気体積が少ないと考えられていたために機械的なアースを使用していなかった部位にも適用できるので、静電気除去に対して更なる安全設計が可能となる。なお、機械的なアースを併用してもよく、併用によって上記効果がより高まる。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、転がり軸受の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、転がり軸受の種類は深溝玉軸受に限定されるものではなく、本発明は様々な種類の転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
また、軸受形式は特に限定されるものではない。例えば、深溝玉軸受(オープンタイプ,接触シール又は非接触シールを備えるタイプ),薄肉軸受,止め輪付き軸受,Oリング付きクリープ防止軸受,複列軸受,フランジ付き軸受,GR(低トルク)軸受,ニードル軸受等があげられる。
さらに、軸受仕様も特に限定されるものではなく、下記のような仕様とすることも可能である。例えば、玉数を増加させる又は予圧を付与することにより、玉と軌道面との接触数を増やし導電性の更なる向上を図った軸受でもよい。また、シールを3個以上設けた重複シール仕様の軸受でもよい。これにより、導電性グリース組成物の漏洩が生じにくくなるので、導電性がさらに向上する。さらに、内外輪の素材としてSUS材を用いたり、耐食処理として無電解ニッケルメッキ等のメッキ処理を内外輪に施した防錆仕様の軸受でもよい。これにより、搬送ロール等において外輪をローラとして使用することも可能となる。さらに、非磁性材料(オーステナイト系SUS材,チタン合金,導電性樹脂,導電性セラミック)で構成した非磁性仕様の軸受でもよい。
さらに、軸受仕様も特に限定されるものではなく、下記のような仕様とすることも可能である。例えば、玉数を増加させる又は予圧を付与することにより、玉と軌道面との接触数を増やし導電性の更なる向上を図った軸受でもよい。また、シールを3個以上設けた重複シール仕様の軸受でもよい。これにより、導電性グリース組成物の漏洩が生じにくくなるので、導電性がさらに向上する。さらに、内外輪の素材としてSUS材を用いたり、耐食処理として無電解ニッケルメッキ等のメッキ処理を内外輪に施した防錆仕様の軸受でもよい。これにより、搬送ロール等において外輪をローラとして使用することも可能となる。さらに、非磁性材料(オーステナイト系SUS材,チタン合金,導電性樹脂,導電性セラミック)で構成した非磁性仕様の軸受でもよい。
〔実施例〕
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。表1に示すような組成のグリース組成物を用意して、転がり軸受の内輪及び外輪の間に形成された空隙部内に封入した。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。表1に示すような組成のグリース組成物を用意して、転がり軸受の内輪及び外輪の間に形成された空隙部内に封入した。
表1において基油,増ちょう剤等の各成分の欄に記載されている数値は、導電性グリース組成物全体を100とした場合の各成分の質量比である。
なお、表1に記載された合成炭化水素油の40℃における動粘度は、30mm2 /sである。また、本発明の構成要件である第一カーボンブラックに相当するカーボンブラックAは、三菱化学株式会社製の#3030B(平均一次粒径55nm、比表面積29m2 /g、DBP吸収量130ml/100g)である。さらに、本発明の構成要件である第二カーボンブラックに相当するカーボンブラックBは、ライオンアクゾ社製のケッチェンブラックEC(平均一次粒径30nm、比表面積800m2 /g、DBP吸収量360ml/100g)で、本発明の構成要件である第三カーボンブラックに相当するカーボンブラックCは、三菱化学株式会社製の#3350B(平均一次粒径24nm、比表面積125m2 /g、DBP吸収量165ml/100g)である。
なお、表1に記載された合成炭化水素油の40℃における動粘度は、30mm2 /sである。また、本発明の構成要件である第一カーボンブラックに相当するカーボンブラックAは、三菱化学株式会社製の#3030B(平均一次粒径55nm、比表面積29m2 /g、DBP吸収量130ml/100g)である。さらに、本発明の構成要件である第二カーボンブラックに相当するカーボンブラックBは、ライオンアクゾ社製のケッチェンブラックEC(平均一次粒径30nm、比表面積800m2 /g、DBP吸収量360ml/100g)で、本発明の構成要件である第三カーボンブラックに相当するカーボンブラックCは、三菱化学株式会社製の#3350B(平均一次粒径24nm、比表面積125m2 /g、DBP吸収量165ml/100g)である。
また、転がり軸受の種類は、日本精工株式会社製の呼び番号608ZZの深溝玉軸受(内径8mm,外径22mm,幅7mm)であり、グリース組成物の封入量は160mgである。
そして、これらの転がり軸受を図2,3に示すような試験装置に装着して、インバータから漏れ電流を流しながら回転試験を行い、所定時間回転後の軸受抵抗値を評価した。試験条件は、以下の通りである。
そして、これらの転がり軸受を図2,3に示すような試験装置に装着して、インバータから漏れ電流を流しながら回転試験を行い、所定時間回転後の軸受抵抗値を評価した。試験条件は、以下の通りである。
回転速度:300min-1
予圧 :4.9N
印加電流:10mA
なお、軸受抵抗値の測定は、インバータからの漏れ電流を一旦止めて、回転速度300min-1で回転させながら行った。測定は1分間行い、その間のハウジングと軸との間の抵抗値の最大値を軸受抵抗値とした。また、軸受抵抗値の測定は、1種の軸受につき5個づつ行った。結果を表1に示す。表1においては、軸受抵抗値が回転初期の5倍未満であった場合を合格として○印で表示し、5倍以上であった場合を不合格として×印で表示してある。
予圧 :4.9N
印加電流:10mA
なお、軸受抵抗値の測定は、インバータからの漏れ電流を一旦止めて、回転速度300min-1で回転させながら行った。測定は1分間行い、その間のハウジングと軸との間の抵抗値の最大値を軸受抵抗値とした。また、軸受抵抗値の測定は、1種の軸受につき5個づつ行った。結果を表1に示す。表1においては、軸受抵抗値が回転初期の5倍未満であった場合を合格として○印で表示し、5倍以上であった場合を不合格として×印で表示してある。
比較例1の転がり軸受は、グリース組成物がカーボンブラックを含有しておらず導電性を有していないので、50時間回転後の段階で不合格品が発生した。これに対して、実施例1,2の転がり軸受は、カーボンブラックを含有する導電性グリース組成物を備えているので、200時間回転後でも不合格品は発生しなかった。特に、導電性グリース組成物が極圧剤を含有する実施例2の転がり軸受は、300時間回転後でも不合格品は発生しなかった。
1 内輪
2 外輪
3 玉
6 導電性グリース組成物
2 外輪
3 玉
6 導電性グリース組成物
Claims (11)
- 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成され前記転動体が配された空隙部内に封入された導電性グリース組成物と、を備え、導電性を有することが望まれる機器の回転支持部に使用される転がり軸受において、
前記導電性グリース組成物は、鉱油及び合成油の少なくとも一方を含有する基油と、2種のカーボンブラックと、を含有し、
前記2種のカーボンブラックは、比表面積が20m2 /g以上80m2 /g以下の第一カーボンブラックと、比表面積が200m2 /g以上1500m2 /g以下の第二カーボンブラックであることを特徴とする転がり軸受。 - 前記第一カーボンブラックのDBP吸収量は30ml/100g以上160ml/100g以下であり、前記第二カーボンブラックのDBP吸収量は80ml/100g以上500ml/100g以下であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
- 前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックとの質量比は、25:75以上95:5以下であり、前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックとの合計の含有量は、前記導電性グリース組成物の1.5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受。
- 前記第一カーボンブラックの平均一次粒径は40nm以上200nm以下であり、前記第二カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受。
- 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成され前記転動体が配された空隙部内に封入された導電性グリース組成物と、を備え、導電性を有することが望まれる機器の回転支持部に使用される転がり軸受において、
前記導電性グリース組成物は、鉱油及び合成油の少なくとも一方を含有する基油と、3種のカーボンブラックと、を含有し、
前記3種のカーボンブラックは、比表面積が20m2 /g以上80m2 /g以下の第一カーボンブラックと、比表面積が200m2 /g以上1500m2 /g以下の第二カーボンブラックと、比表面積が80m2 /g超過200m2 /g未満の第三カーボンブラックと、であることを特徴とする転がり軸受。 - 前記第一カーボンブラックのDBP吸収量は30ml/100g以上160ml/100g以下であり、前記第二カーボンブラックのDBP吸収量は80ml/100g以上500ml/100g以下であり、前記第三カーボンブラックのDBP吸収量は100ml/100g以上300ml/100g以下であることを特徴とする請求項5に記載の転がり軸受。
- 前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックとの質量比は、25:75以上95:5以下であり、且つ、前記第一カーボンブラックと前記第二カーボンブラックと前記第三カーボンブラックとの合計の含有量は、前記導電性グリース組成物の2質量%以上25質量%以下であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の転がり軸受。
- 前記第一カーボンブラックの平均一次粒径は40nm以上200nm以下であり、前記第二カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であり、前記第三カーボンブラックの平均一次粒径は10nm以上40nm以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の転がり軸受。
- 前記導電性グリース組成物が1質量%以上10質量%以下のリチウム石けんを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の転がり軸受。
- 前記導電性グリース組成物が極圧剤及び油性剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の転がり軸受。
- 前記導電性グリース組成物の混和ちょう度が200以上300以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の転がり軸受。
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JP2005156055A JP2006329364A (ja) | 2005-05-27 | 2005-05-27 | 転がり軸受 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2022020409A (ja) * | 2020-07-20 | 2022-02-01 | トヨタ自動車株式会社 | 摺動部材 |
JP2022020397A (ja) * | 2020-07-20 | 2022-02-01 | トヨタ自動車株式会社 | 自動車用摺動部材 |
DE112020004390B4 (de) | 2019-09-18 | 2023-03-02 | Jtekt Corporation | Schmierfettzusammensetzung und Verwendung der Fettzusammensetzung in einem Wälzlager |
-
2005
- 2005-05-27 JP JP2005156055A patent/JP2006329364A/ja active Pending
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