JP4178459B2 - 電磁誘導加熱調理器 - Google Patents

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隆 熊谷
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば鍋を誘導加熱コイルにより誘導加熱する電磁誘導加熱調理器、特にその高透磁率部材の配置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の電磁誘導加熱調理器は、第3図の(a)に示されるように、加熱コイルの内周下面及び外周下面に均等に夫々4片ずつ高透磁率材料を設け、加熱コイル直上の磁束密度を略均一にし、調理具を均一に加熱するようにしている。
また、第5図に示すものでは、加熱コイルの内周下面及び外周下面に全周にわたって高透磁率材料からなる高透磁率部材を配置し、加熱コイル直上の磁束密度を略均一にし、鍋を均一に加熱するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭60−105192号公報(第2頁、第3図及び第5図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の電磁誘導加熱調理器にあって、第3図の(a)に示すように、加熱コイルの内周下面及び外周下面に均等に夫々4片ずつ高透磁率部材を設けたものでは、加熱コイルの下側で各片の高透磁率部材がある箇所では径方向に磁束密度が均一になるが、加熱コイルの下側で各片の高透磁率部材がない箇所では径方向に磁束密度が均一にならず、特に鍋の外周部全体を均一に加熱することはできないという問題点があった。
また、図5に示すように、加熱コイルの内周下面及び外周下面に全周にわたって高透磁率部材を配置するものでは、加熱コイル直上の磁束密度が略均一になり、鍋全体、特に鍋の外周部全体も加熱することはできるが、高透磁率部材の使用量が多くなり、コストアップになるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、誘導加熱コイルの外側の周方向の全領域にわたって高透磁率部材を配置した場合と比べて同程度の鍋の外周部の温度を得ることができ、しかも高透磁率部材の使用量を減らすことができる電磁誘導加熱調理器を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電磁誘導加熱調理器は、誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルの下部に複数配置された高透磁率部材とを備えた電磁誘導加熱調理器において、
前記誘導加熱コイルの外側に略等角度間隔に複数の高透磁率部材を配置し、これら高透磁率部材の周方向の存在率を0.4〜0.75としたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の加熱部を示す平面図である。図2は同電磁誘導加熱調理器の加熱部の一部を示す斜視図、図3は高透磁率材料の周方向の存在率をパラメータとしたる鍋の温度変化の解析結果を示すグラフである。
図1及び図2において、誘導加熱コイル1の中心部には、例えばフェライトで形成された円柱状の高透磁率部材2が設けられている。また、誘導加熱コイル1の下部には例えばフェライトで形成された棒状の高透磁率部材3が等角度間隔で8本放射状に配置されている。
各棒状の高透磁率部材3で誘導加熱コイル1の外周部の外側に位置する他端の上部に円弧状の高透磁率部材4が位置し、棒状の高透磁率部材3と円弧状の高透磁率部材4とは一体に形成されている。
【0008】
これら8本の棒状の高透磁率部材3の他端にそれぞれ位置する円弧状の高透磁率部材4の長さの合計は、誘導加熱コイル1の外側の周方向の略1/2領域を占めている。
また、円柱状の高透磁率部材2と円弧状の高透磁率部材4は、その上部の高さが、誘導加熱コイル1の上面の高さと略同様の高さなるように設定されている。その理由は誘導加熱コイル1の上面側に鍋が載置されるトッププレートが配置されるから高さを揃えたものである。
【0009】
次に、本発明の実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の加熱部の作用について説明する。
一般に、鍋(図示省略)内の温度が一様であることが調理に適しているが、図1及び図2に示す電磁誘導加熱調理器の加熱部から円弧状の高透磁率部材4を除去したようなものでは、誘導加熱コイル1の外周部、即ち鍋の外周部の温度が低くなる。
理想的には従来例のように、図1及び図2に示す電磁誘導加熱調理器の高透磁率部材3,高透磁率部材4に相当する箇所を全周にわたって高透磁率部材を配置するのがよい。しかし、この場合には使用する高透磁率部材の量が多くなり、コストの増大を招いてしまう。
【0010】
そこで、汎用電磁界解析ソフト EM Solution(サイエンスソリューション株式会社製)を用いて円弧状の高透磁率部材4の周方向の長さをパラメータとして電磁界解析を行い、その結果得られた鍋の発熱密度分布を入力として、回路網を用いた伝熱解析ソフトで鍋(図示省略)の外周部付近の温度分布を計算した。
この計算における電磁界解析条件は、鍋の材質が磁性ステンレス、直径が200mm、厚さが2.5mm、高透磁率部材3の個数が8本である。上記の条件で鍋の発熱密度分布を求め、伝熱解析条件として、さらに鍋の総発熱量を400W、初期温度30℃を付け加え、鍋の最大温度部分が120℃になった時の鍋の直径180mm部分の温度を求めた。
【0011】
汎用電磁界解析ソフトによって上記電磁界解析条件に基づいて、誘導加熱コイル1の外側の周方向に高透磁率部材4が占める領域の比率(これを、高透磁率部材4の周方向の存在率と呼ぶ)をパラメータとした鍋の温度変化の解析結果を示したのが図3のグラフである。
図3のグラフを見ると、高透磁率部材4の周方向の存在率が小さいと鍋の直径180mm部の温度が低く、高透磁率部材4が全周(図3の横軸1の目盛)にあると高いことが分かる。
【0012】
ことに、高透磁率部材4の周方向の存在率が0.5以下から急激に鍋の外周部の温度が低下しており、高透磁率部材4の周方向の存在率が0.5以上、即ち高透磁率部材4が誘導加熱コイル1の外側の周方向で略1/2領域以上占めれば、高透磁率部材4の周方向の存在率が1、即ち高透磁率部材4が全周にわたって占める場合とほぼ同じ温度であることがわかる。
このように、円弧状の高透磁率部材4の周方向の存在率が0.5以上であれば、鍋の外周部の温度を高めることができることがわかる。
【0013】
通常、円弧状の高透磁率部材4には、高価なフェライトが用いられる場合が多い。少しでも使用する量を減らすことにより、コストダウンを図ることができる。
従って、鍋の外径部の温度が高く、高透磁率部材4の量が少ない、誘導加熱コイル1の外側の周方向で略1/2領域に円弧状の高透磁率部材4を配置するのが最も良いことが分かる。
このように、円弧状の高透磁率部材4の周方向の存在率が0.5が理想的であり、0.5以上でもよいとして、存在率が1であれば、従来例と同様になりコストダウンを図ることができない。
【0014】
そこで、高透磁率部材4の周方向の存在率の上限値をどれ位いにすればよいかを考えると、コストダウンを図りながら、存在率1の場合と全く同じ温度特性が得られる存在率を図3の高透磁率部材4の存在率のグラフから求めると、0.75ということになる。
他方、高透磁率部材4の存在率の下限値をどれ位にすれば、温度特性に悪影響を与えないかを考えると、例えば鍋(フライパン)でホットケーキを焼く場合には、外径部の温度が3℃違っていても目視できる焼け具合では全く差を感じないことが実験で分かっている。
従って、図3の高透磁率部材4の存在率のグラフで存在率1の場合の温度から−3℃になる存在率を求めると、0.4ということになる。
【0015】
なお、上述した実施の形態1では、図1,図2に示すように高透磁率部材2が誘導加熱コイル1の中心部に設けられている場合を示したが、図3の温度特性には余り影響を与えないので、多少中心部からずれてもかまわない。
また、棒状の高透磁率部材3が誘導加熱コイル1の下部に等角度間隔で8本放射状に配置されているが、これに限定されるものではなく6〜8本が略等角度間隔に放射状に配置されていてもよいが、この場合でも棒状の高透磁率部材3の他端に接合される円弧状の高透磁率部材4の長さの合計は、誘導加熱コイル1の外側の周方向の略1/2領域を占めていることが必要とされる。
【0016】
さらに、円柱状の高透磁率部材2と円弧状の高透磁率部材4は、その上部の高さが、誘導加熱コイル1の上面の高さと略同様の高さなるように設定されているが、これら高透磁率部材2,4の上部の高さが誘導加熱コイル1の上面の高さよりも多少低くても、高くても図3の温度特性には余り影響を与えないので、かまわない。
上述した実施の形態1の誘導加熱コイル1は、図1及び図2に示すようにその半径方向に連続して巻線されているが、図4に示す変形例のように、誘導加熱コイル1が内径側コイル1aと外径側コイル1bに分割されて巻線されている場合でも、図3の温度特性には余り影響を与えないので、かまわない。
【0017】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の加熱部の一部を示す斜視図である。
この実施の形態2は、各棒状の高透磁率部材3の他端に位置する高透磁率部材4を、実施の形態1の円弧状とは異なり、直線状にしたものである。
この実施の形態2に示すように、高透磁率部材4を直線状にすることにより、高透磁率部材4が円弧状の場合に比べて金型のコストが安価になるので、結果として高透磁率部材4の製造コストが安価になるものである。
【0018】
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器の加熱部の一部を示す斜視図である。
上述した実施の形態では各棒状の高透磁率部材3と、直線状の高透磁率部材4とが一体化されて構成されているが、この実施の形態3では、図6に示すように各棒状の高透磁率部材3と直線状の高透磁率部材14とが個別の部品であり、これらを例えば接着剤で接合して構成されているものである。
この実施の形態3のように、各棒状の高透磁率部材3と直線状の高透磁率部材14とが個別の部品で構成される場合は、高透磁率部材3と高透磁率部材14の形状が簡単になり、金型を用いなくても製作でき、高透磁率部材3と高透磁率部材4の製造コストが安価になるものである。
【0019】
この実施の形態3では、各棒状の高透磁率部材3と直線状の高透磁率部材14とはフェライトで形成されて同じ透磁率のものが用いられるが、透磁率が数百以上のものであれば、温度特性は殆ど同じになるので、両者の透磁率が異なってもよい。
この場合、透磁率が数百以上のものには、フェライトでも材質などにより透磁率が異なるものがあり、またフェライト以外にも金属軟磁性材もあり、高透磁率部材3と高透磁率部材14は高透磁率材料であればよく、フェライトに限定されるものでもない。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、誘導加熱コイルの外側に略等角度間隔に複数の高透磁率部材を配置し、これら高透磁率部材の周方向の存在率を0.4〜0.75としたので、誘導加熱コイルの外周の周方向の全領域にわたって高透磁率部材を配置した場合と比べて同程度の鍋の外周部の温度を得ることができ、しかも高透磁率部材の使用量を減らしたコストダウンが図れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係る電磁誘導加熱調理器の加熱部を示す平面図である。
【図2】 同電磁誘導加熱調理器の加熱部の一部を示す斜視図である。
【図3】 高透磁率材料の周方向の存在率をパラメータとしたる鍋の温度変化の解析結果を示すグラフである。
【図4】 同電磁誘導加熱調理器の加熱部の変形例を示す平面図である。
【図5】 本発明の実施の形態2に係る電磁誘導加熱調理器の加熱部の一部を示す斜視図である。
【図6】 本発明の実施の形態3に係る電磁誘導加熱調理器の加熱部の一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 誘導加熱コイル、2 高透磁率部材、3 高透磁率部材、4 高透磁率部材。

Claims (4)

  1. 誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルの下部に複数配置された高透磁率部材とを備えた電磁誘導加熱調理器において、
    前記誘導加熱コイルの外側に略等角度間隔に複数の高透磁率部材を配置し、これら高透磁率部材の周方向の存在率を0.4〜0.75としたことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。
  2. 前記誘導加熱コイルの外側に配置された各高透磁率部材は、直線状であることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導加熱調理器。
  3. 前記誘導加熱コイルの外側に略等角度間隔に配置された複数の高透磁率部材が前記誘導加熱コイルの下部に配置された複数の高透磁率部材とそれぞれ接合されたことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の電磁誘導加熱調理器。
  4. 前記誘導加熱コイルの下部に複数配置された高透磁率部材は、前記誘導加熱コイルの中心部から放射状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱調理器。
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