JP4178392B2 - 電子部品実装用フィルムキャリアテープ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICあるいはLSI等の電子部品を実装するために用いる電子部品実装用フィルムキャリアテープに関する。
【0002】
【従来技術】
エレクトロニクス産業の発達に伴い、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)等の電子部品を実装するプリント配線板の需要が急激に増加しているが、電子機器の小型化、軽量化、高機能化が要望され、これら電子部品の実装方法として、最近ではTABテープ、T−BGAテープ、ASICテープ等の電子部品実装用フィルムキャリアテープを用いた実装方式が採用されている。特に、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のように、高精細化、薄型化、液晶画面の額縁面積の狭小化が要望されている液晶表示素子(LCD)を使用する電子産業において、その重要性が高まっている。
【0003】
また、電子機器の小型化等に伴い、電子部品実装用フィルムキャリアテープの薄型化が望まれており、近年、比較的膜厚の薄い絶縁層を用いたCOF(チップ・オン・フィルム)テープ等が提案されている。
【0004】
このような電子部品実装用フィルムキャリアテープは、例えば、ポリイミドからなる絶縁層の幅方向両側に搬送用のスプロケットホール等を形成する工程と、スプロケットホールを用いて絶縁層を搬送しながら絶縁層の一方面に設けられた銅箔上にフォトレジスト塗布層を形成する工程と、フォトレジスト塗布層を露光・現像する工程と、フォトレジスト塗布層をパターニングしてマスクパターンを形成する工程と、マスクパターンを介して銅箔をエッチングすることで配線パターンを形成する工程と、各配線パターン上にソルダーレジスト層を形成する工程とを経て製造される。
【0005】
しかしながら、上述したCOFテープ等のような絶縁層の厚さが比較的薄いタイプでは、スプロケットホールの剛性を十分に確保できず、搬送時にスプロケットホールが変形するという問題が生じていた。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、各スプロケット孔(スプロケットホール)の周囲に電気絶縁性可撓性テープ(絶縁層)の長手方向に亘って補強層(金属層)を連続的に設けることで、テープ搬送強度を確保した構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
なお、上述した電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造工程、特に、フォトレジスト層やソルダーレジスト層を形成する各工程又はスズメッキ工程では、配線パターンが形成されていない領域にエンボスを有するスペーサ部材(エンボススペーサフィルム)と共にフィルムキャリアテープをリールに巻き取って加熱する、いわゆる硬化(キュア)工程、あるいはホイスカーの発生を防止するための加熱工程が導入されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】
実開平4−48629号公報(第1図〜第3図、実用新案登録請求の範囲)
【特許文献2】
特開2001−77157号公報(段落[0006])
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した補強層が設けられた電子部品実装用フィルムキャリアテープでは、最終製品である電子部品実装用フィルムキャリアテープの幅方向両側、すなわち、スプロケットホールが存在する領域において長手方向に亘った高さが1〜2mm程度の波状の変形が発生するという問題がある。
【0010】
このような目立った波状の変形は、スプロケットホールの周囲に補強層を設けない通常の製品にはみられず、硬化工程あるいはホイスカーの発生を防止する加熱工程において、フィルムキャリアテープに圧力を与えた状態で金属層と絶縁層との間の材料的な物性値の相違、例えば、線膨張係数や引張強度、あるいは伸び率等の相違が製造工程中の加熱・冷却などの処理等が複雑に影響し合って発生するものと考えられる。
【0011】
そして、このように波状に変形した電子部品実装用フィルムキャリアテープは、半導体実装ラインにおいて、ピンローラ等でスムーズに位置決め搬送することができず、また、搬送経路に設けられたガイド等に追従することができず、電子部品の実装不良等を招いてしまい、最終的には製品不良となってしまうという問題がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑み、半導体実装ラインでの搬送又は実装時の信頼性を向上できる平坦な電子部品実装用フィルムキャリアテープを提供することを課題とする。
【0013】
【発明が解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、絶縁層の表面に導電層からなる配線パターンと、当該配線パターンの両側に設けられた複数のスプロケットホールとを有し、且つ前記スプロケットホールの周囲に金属層が設けられた電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、前記金属層は、前記絶縁層の長手方向に沿って実質的に連続に設けられており、前記スプロケットホールの幅w2は、1.42±0.03[mm]であり、且つ前記スプロケットホールの間の領域の前記金属層の幅w1[mm]は、1.0≦w1≦(w2+1.0)の条件を満たしていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0014】
かかる第1の態様では、金属層の幅w1を所定量とすることで、金属層と絶縁層との間に発生する応力が適度に開放され、電子部品実装用フィルムキャリアテープに発生する波状の変形が低減される。これにより、平坦な電子部品実装用フィルムキャリアテープが実現され、半導体実装ラインでの搬送又は実装時の信頼性が向上する。
【0015】
本発明の第2の態様は、前記スプロケットホールが存在する領域の前記金属層の幅w3[mm]が、(w2+0.2)≦w3≦(w2+1.6)の条件を満たしていることを特徴とする第1の態様の電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0016】
かかる第2の態様では、絶縁層と金属層との間に発生する応力が適度に開放され、電子部品実装用フィルムキャリアテープに発生する波状の変形がより効果的に低減される。
【0017】
本発明の第3の態様は、前記スプロケットホールが存在する領域の前記金属層の幅w3[mm]が、(w2+0.2)≦w3≦(w2+1.1)の条件を満たしていることを特徴とする第2の態様の電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0018】
かかる第3の態様では、絶縁層と金属層との間に発生する応力が適度に開放され、電子部品実装用フィルムキャリアテープに発生する波状の変形がより効果的に低減される。
【0019】
本発明の第4の態様は、前記金属層の幅w1[mm]と前記スプロケットホールが存在する領域の前記金属層の幅w3[mm]とがw1<w3の関係を満たしていることを特徴とする第1〜3の何れかの態様の電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0020】
かかる第4の態様では、絶縁層と金属層との間に発生する応力が適度に開放され、電子部品実装用フィルムキャリアテープに発生する波状の変形がより効果的に低減される。
【0021】
本発明の第5の態様は、前記金属層は、所定個数の前記スプロケットホール毎に設けられたスリットにより前記絶縁層の長手方向に不連続であることを特徴とする第1〜4の何れかの態様の電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0022】
かかる第5の態様では、絶縁層と金属層との間に発生する応力が適度に開放され、電子部品実装用フィルムキャリアテープに発生する波状の変形がより効果的に低減される。
【0023】
本発明の第6の態様は、前記金属層と前記スプロケットホールの開口縁部との間には、前記金属層が存在しない領域が設けられていることを特徴とする第1〜5の何れかの態様の電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0024】
かかる第6の態様では、各スプロケットホールの開口周縁に金属層が設けられていないので、製造又は実装の際、各スプロケットホールに挿入されるピンローラや位置決めピン等と金属層とが接触して短絡の原因となる金属片や金属粉等が発生することはない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープを示す概略図であって、(a)が平面図であり、(b)が断面図であり、(c)が要部拡大平面図である。
【0027】
図示するように、本実施形態の電子部品実装用フィルムキャリアテープ10は、COFフィルムキャリアテープであり、テープ状の絶縁層11の一方面側に設けられた導電層12からなる配線パターン13と、配線パターン13の幅方向両側に設けられた複数のスプロケットホール14とを有する。
【0028】
配線パターン13は、絶縁層11の表面に連続的に設けられている。なお、このような配線パターン13は、詳しくは後述するが、絶縁層11の表面に設けられた導電層12上にフォトレジスト塗布後、露光・現像、及びエッチングにより導電層12をパターニングすることによって形成されている。
【0029】
また、配線パターン13上には、ソルダーレジスト材料塗布溶液をスクリーン印刷法にて塗布して形成したソルダーレジスト層15が設けられている。すなわち、配線パターン13の中央部には、図1(a)に示すように、それぞれ、半導体チップを実装する部分に配線パターン13の一部であるインナーリード13aが延設されている。一方、このインナーリード13aとは反対側のソルダーレジスト層15の外側には、配線パターン13の一部であり、外部接続用端子部となるアウターリード13bが延設されている。
【0030】
ここで、絶縁層11の材料としては、例えば、ポリイミドの他、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー等を用いることができるが、特に、ピロメリット酸2無水物と芳香族ジアミンとから合成される全芳香族ポリイミド(例えば、商品名:カプトン;東レ・デュポン(株)製)、ビフェニル骨格を有する全芳香族ポリイミド(例えば、商品名:ユーピレックス;宇部興産(株)製)を用いるのが好ましい。このような絶縁層11の厚さは、一般的には、12.5〜125μmであり、好ましくは、12.5〜75μm、さらに好ましくは12.5〜50μmである。
【0031】
一方、導電層12の材料としては、銅の他、アルミニウム、金、銀などを使用することもできるが、銅層が一般的である。また、銅層としては、蒸着やメッキで形成した銅層、電解銅箔、圧延銅箔など何れも使用することができる。導電層12の厚さは、一般的には、1〜70μmであり、好ましくは、5〜35μmである。
【0032】
また、スプロケットホール14の周囲には、半導体実装ラインの位置決め搬送において各スプロケットホール14を補強するための金属層16が設けられている。すなわち、金属層16は、絶縁層11の幅方向両側に設けられた複数のスプロケットホール14の周囲に、配線パターン13とは不連続で且つ絶縁層11の長手方向に沿って連続的に設けられている。そして、この金属層16は、例えば、本実施形態では、導電層12をパターニングすることで配線パターン13と共に形成され、各スプロケットホール14の強度を確保するためのダミー配線等として使われる。
【0033】
ここで、スプロケットホール14幅w2が1.42±0.03[mm]である本発明においては、各スプロケットホール14の間の領域にある金属層16の幅w1[mm]が、1.0≦w1≦(w2+1.0)の条件を満たすようにする(図1(c)参照)。例えば、本実施形態では、金属層16の幅w1を2.4mmとした。ここで、金属層の幅の最小値を1.0mmとしたのは、各スプロケットホール14の間の剛性を確保して、所望のテープ搬送強度を得るためである。
【0034】
また、本発明では、スプロケットホール14が存在する領域の金属層16の幅w3[mm]が、スプロケットホール14の幅をw2とした場合に(w2+0.2)≦w3≦(w2+1.6)の条件を満たすことが好ましく、さらに好ましい条件としては、(w2+0.2)≦w3≦(w2+1.1)である。例えば、本実施形態では、各スプロケットホール14の間の領域にある金属層16の幅w1と、スプロケットホール14が存在する領域にある金属層16の幅w3とを同一幅、すなわち、w1=w3とした。ここで、金属層16の幅w3の最小値をw2+0.2mmとしたのは、各スプロケットホール14の剛性を確保して、所望のテープ搬送強度を得るためである。
【0035】
なお、各スプロケットホール14の幅方向一方側にある金属層16の幅と、他方側にある金属層16の幅との関係については、同一幅であるのが好ましいが、勿論、同一幅でなくてもよい。また、金属層16は、絶縁層11の幅方向両側端部よりも内側に設けるのが好ましい。これは、製造又は実装の際、金属層16が搬送経路に設けられたガイド等に接触して金属片や金属粉等が発生するのを防止するためである。
【0036】
ここで、スプロケットホール14の幅w2については、EIAJ(日本電子機械工業会)規格によってテープ(絶縁層11)幅が35mm,48mmでは1.42±0.03mm、テープ幅が70mmでは1.98±0.03mmと標準値がそれぞれ規定されている。スプロケットホール14のピッチについては、4.75±0.05mmと標準値が規定されている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、少なくとも各スプロケットホール14の間の領域にある金属層16の幅w1を所定量に制限することで、後述する硬化工程において、金属層16と絶縁層11との間に発生する応力が適度に開放され、最終製品である電子部品実装用フィルムキャリアテープ10の幅方向両側において長手方向に亘って発生する波状の変形を低減できる。すなわち、平坦な電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を実現でき、半導体実装ラインの信頼性を向上できる。
【0038】
また、テープ全体の剛性が大きくなりすぎることがないため、搬送経路が湾曲している場合であっても、テープ自体が自在に搬送経路に追従することができ、好適に搬送することができる。
【0039】
さらに、このような構成の電子部品実装用フィルムキャリアテープ10は、例えば、半導体5〜10個分に相当する大きさで且つ短冊状に切断したものを実装装置に供給して半導体等の電子部品が実装される。この際、スプロケットホール14の周りに金属層16が設けられているので、スプロケットホール14の剛性を確保でき、高精度に電子部品を実装することができる。
【0040】
ここで、図2を参照して、上述した電子部品実装用フィルムキャリアテープ10の製造方法の一例を説明する。なお、図2は、電子部品実装用フィルムキャリアテープの一製造方法を説明する断面図である。
【0041】
本実施形態の製造方法では、後述する各製造プロセスの後に、図示しないが、配線パターンが形成されていない領域に凹凸部を有するエンボススペーサフィルムをフィルムキャリアテープ(COF積層フィルム)と一緒にリールに巻き取り、必要に応じて、加熱する硬化工程を導入している。
【0042】
まず、図2(a)に示すように、絶縁層11上に導電層12を形成したCOF用積層フィルム20を用意する。
【0043】
次に、図2(b)に示すように、パンチング等によって、絶縁層11及び導電層12を貫通させてスプロケットホール14を形成する。このスプロケットホール14は、絶縁層11の表面上から形成してもよく、また、絶縁層11の裏面から形成してもよい。
【0044】
次に、図2(c)に示すように、一般的なフォトリソグラフィー法を用いて、導電層12上の配線パターン13が形成される領域に亘ってフォトレジスト材料塗布溶液を塗布し、その後、約60〜100℃で加熱硬化させてフォトレジスト材料塗布層21を形成する。さらに、スプロケットホール14内に位置決めピンを挿入して絶縁層11の位置決めを行った後、フォトマスク22を介して露光・現像することで、フォトレジスト材料塗布層21をパターニングして、図2(d)に示すような配線パターン用レジストパターン23を形成する。
【0045】
次いで、図2(d)に示すように、例えば、本実施形態では、転写法を用いて、レジスト材料塗布溶液をスプロケットホール14に対応する領域に部分的に塗布して、金属層16を形成するための金属層用レジストパターン24を形成する。例えば、本実施形態では、各スプロケットホール14の間の領域にある金属層16の幅w1とスプロケットホール14が存在する領域にある金属層16の幅w3とを同一幅、すなわち、w1=w3となるように金属層用レジストパターン24を形成した。なお、金属層用レジストパターン24は、配線パターン用レジストパターン23を形成する前に形成してもよく、スプロケットホール14を形成する前に転写法で別途形成してもよい。もちろん、配線パターン用レジストパターン23と金属層用レジストパターン24とを同時に形成してもよい。
【0046】
次に、配線パターン用レジストパターン23及び金属層用レジストパターン24とをマスクパターンとして導電層12をエッチング液で溶解して除去し、さらに配線パターン用レジストパターン23及び金属層用レジストパターン24をアルカリ溶液等にて溶解除去することにより、図2(e)に示すように配線パターン13と金属層16とを形成する。
【0047】
次いで、図2(f)に示すように、配線パターン13及び金属層16の面上にスズメッキ層(図示しない)を形成した後、エンボススペーサを間に挟んでリールに巻き取り、約80〜200℃で加熱処理を行う。これにより、ホイスカーの発生が防止される。次いで、例えば、スクリーン印刷法を用いて、ソルダーレジスト層15を形成する。例えば、本実施形態では、配線パターン13の中央部を囲むようにソルダーレジスト層15を形成することで、配線パターン13の中央部にインナーリード13aを形成し、ソルダーレジスト層15の外側にアウターリード13bを形成する。これを、エンボススペーサを間に挟んでリールに巻き取り、約100〜200℃に加熱して硬化させる。これにより、図1に示すような電子部品実装用フィルムキャリアテープ10が完成する。
【0048】
このような電子部品実装用フィルムキャリアテープ10の各製造プロセス、特に、各レジストパターン23,24を形成する工程、ソルダーレジスト層15を形成する工程に導入された硬化工程において、本実施形態では、少なくとも各スプロケットホール14の間の領域にある金属層16の幅w1を所定量に制限することで、絶縁層11と金属層16との間に発生する内部応力を適度に開放できる。このため、このような応力により、電子部品実装用フィルムキャリアテープ10の幅方向両側において長手方向に亘って発生する波状の変形を低減できる。すなわち、平坦な電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を実現できる。また、金属層16によってスプロケットホール14の剛性を高めることができ、十分なテープ搬送強度を確保できる。したがって、例えば、電子部品等を実装する際、スプロケットホール14にピンローラ等を挿入してスムーズに位置決め搬送できると共に搬送経路に設けられたガイド等に追従することができ、半導体実装ラインでの搬送又は実装時の信頼性を向上できる。
【0049】
なお、本実施形態では、上述したように、金属層16を絶縁層11の長手方向に亘って同一幅で連続的に設けたが、勿論、金属層の形状は特に限定されるものではない。以下、実施形態に基づいて金属層の形状を例示する。
【0050】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの要部拡大平面図である。
【0051】
図3(a)に示すように、金属層16Aは、スプロケットホール14が存在する領域にある金属層16Aの幅w3より各スプロケットホール14の間にある金属層16Aの幅w1[mm]が小さく、すなわち、w1<w3の条件で設けられている。
【0052】
また、図3(b)に示すように、金属層16Bは、絶縁層11の長手方向に所定個数、例えば、3〜8個のスプロケットホール14群に対応して連続的に設けられ、且つこれらスプロケットホール14群毎にスリット17を介して不連続である。
【0053】
このような金属層16Bの長手方向の長さL[mm]は、スプロケットホール14の3〜8個分に相当する約10〜40mmであり、好ましくは、3〜6個分に相当する10〜30mmである。例えば、本実施形態では、4個のスプロケットホール14に相当する17〜19mmとした。なお、スリット17の幅は、特に限定されないが、例えば、0.1〜2.0mm程度であるのが好ましい。
【0054】
さらに、図3(c)に示すように、金属層16Cは、上述した金属層16Aにスリット17が設けられている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の電子部品実装用フィルムキャリアテープでは、各金属層16A,16B,16Cの幅や形状等を所定量に制限するようにしたので、絶縁層11と金属層16との間に発生する応力を十分に開放して、電子部品実装用フィルムキャリアテープの波状の変形をより効果的に低減できる。
【0056】
特に、本実施形態では、各スプロケットホール14の間の領域にある金属層16Aの幅w1、すなわち、各スプロケットホール14の補強に直接関与しないがフィルムキャリアテープの補強には関与する金属層16Aの幅w1をできるだけ小さく制限することで、各スプロケットホール14の補強効果を確保しつつ、各スプロケットホール14の周囲の部分と各スプロケットホール14の間の部分での金属層16Aと絶縁層11との間に生じる応力のバランスをテープの長手方向に亘って調整できる(図3(a)参照)。また、各スプロケットホール14の間の金属層16Bに所定間隔でスリット17を設けることで、上述した金属層16Aの幅w1の幅を制限したのと同様の効果を得ることができる(図3(b)参照)。さらに、各スプロケットホール14の間の領域にある金属層16Cの幅を制限すると共に所定間隔でスリット17を設けるようにすれば、さらに効果的である(図3(c)参照)。
【0057】
以上のことから、本実施形態の各金属層16A,16B,16Cの形状等を採用すれば、最終製品である電子部品実装用フィルムキャリアテープの幅方向両側において長手方向に亘って発生する波状の変形をより効果的に低減でき、半導体実装ラインでの搬送又は実装時の信頼性をさらに向上できるという効果を奏する。
【0058】
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態3に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの要部拡大平面図である。
【0059】
図4に示すように、金属層16Dとスプロケットホール14の開口縁部との間には、金属層16Dが存在しない領域が設けられている。このような金属層16Dが存在しない領域の幅w4は、例えば、0.1〜0.3mm程度であるのが好ましい。なお、図示しないが、上述した実施形態2の各金属層16A〜16Cと各スプロケットホール14の開口周縁との間に金属層が存在しない領域を設けてもよい。
【0060】
このように、金属層16Dと各スプロケットホール14の開口周縁部との間に金属層16Dが存在しない領域を設けることで、上述した各実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、製造又は実装の際、スプロケットホール14に挿入されるピンローラや位置決めピン(図示なし)等と金属層16Dとが接触して金属層16Dの欠け、すなわち、金属片や金属粉等が発生することはない。したがって、このような金属片や金属粉等が原因で発生する、例えば、配線パターンの短絡等の不具合を確実に防止できる。
【0061】
ここで、金属層の形状や幅寸法が異なる実施例1〜8と比較例1及び2とを用意し、絶縁層と金属層との材料的な物性値のバランスを考慮して、絶縁層と金属層との間に発生する応力を適度に開放して平坦な電子部品実装用フィルムキャリアテープを実現するのに好適な条件を検討した。
【0062】
(実施例1)
テープ幅35mmの絶縁層の幅方向両側にスプロケットホール(w2=1.42mm)を複数形成した後、絶縁層上に設けられた導電層をパターニングして配線パターンを形成し、スプロケットホールが形成された絶縁層の幅方向両側の領域に長手方向に亘って連続的に幅w1=2.4,w3=2.4[mm]の金属層を形成し、各配線パターン上にスズメッキ層を形成した後、さらにソルダーレジスト層を形成したものを実施例1の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図1(c)参照)。
【0063】
(実施例2)
4個のスプロケットホール毎にスリットを設けた以外は実施例1と同様のものを実施例2の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図3(b)参照)。なお、各金属層の長手方向の長さをL=18.0mmとした。
【0064】
(実施例3)
幅w1=2.2,w3=2.2[mm]の金属層を形成した以外は実施例1と同様のものを実施例3の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図1(c)参照)。
【0065】
(実施例4)
4個のスプロケットホール毎にスリットを設けた以外は実施例3と同様のものを実施例4の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図3(b)参照)。なお、各金属層の長手方向の長さをL=18.4mmとした。
【0066】
(実施例5)
幅w1=1.5,w3=2.9[mm]の金属層を形成した以外は実施例1と同様のものを実施例5の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図3(a)参照)。
【0067】
(実施例6)
4個のスプロケットホール毎にスリットを設けた以外は実施例5と同様のものを実施例6の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図3(c)参照)。なお、各金属層の長手方向の長さをL=18.0mmとした。
【0068】
(実施例7)
幅w1=1.0,w3=2.2[mm]の金属層を形成した以外は実施例1と同様のものを実施例7の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図3(a)参照)。
【0069】
(実施例8)
4個のスプロケットホール毎にスリットを設けた以外は実施例7と同様のものを実施例8の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした(図3(c)参照)。なお、各金属層の長手方向の長さをL=18.4mmとした。
【0070】
(比較例1)
幅w1=2.7,w3=2.7[mm]の金属層を絶縁層の長手方向に亘って連続的に形成したものを比較例1の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした。
【0071】
(比較例2)
幅w1=3.0,w3=3.0[mm]の金属層を形成した以外は比較例1と同様のものを比較例2の電子部品実装用フィルムキャリアテープとした。
【0072】
(試験例1)
上記の各実施例1〜8と比較例1及び2のそれぞれについて、8個のサンプルをそれぞれ用意し、各サンプルについて、配線パターンを形成し、この配線パターン上にスズメッキを施した後、エンボススペーサを間に挟んでリールに巻き取った状態で約120℃の温度条件下、60分間加熱処理した。そして、ソルダーレジスト層形成後、エンボススペーサを間に挟んでリールに巻き取った状態で約140℃の温度条件下で、120分間加熱処理した。このような各サンプルについて、配線パターン形成後、スズメッキ後、ソルダーレジスト層形成後の3回に分けて、電子部品実装用フィルムキャリアテープの波状の変形量[mm]について測定した。具体的には、各実施例及び比較例の電子部品実装用フィルムキャリアテープを基台の上に載置し、その基台の面上から電子部品実装用フィルムキャリアテープの幅方向両端部が浮き上がっている部分の最大高さを測定した。そして、各サンプルの最大高さの平均値を電子部品実装用フィルムキャリアテープの波状の変形量[mm]とした。その結果を下記表1に示す。
【0073】
なお、波状の基台からの最大高さ[mm]の測定は、例えば、基台上に載置された電子部品実装用フィルムキャリアテープの鉛直方向上側からレーザ光を照射し、レーザ光の反射によって距離を測定することができるレーザ反り測定器を用いて行った。
【0074】
(試験例2)
上記の実施例1及び3の金属層と同じ形状(図1(c)参照)とし、その金属層の幅w1,w3[mm]を1.8〜3.0mmまで変化させ、その時のソルダーレジスト層形成後の波状の変形量[mm]の変化を調べた。その結果を図5に示す。なお、図5は、金属層の幅w1,w3とソルダーレジスト層形成後の波状の変形量との関係を示すグラフである。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の結果から、実施例1及び3では、比較例1及び2と比べて、金属層の幅w1,w3を小さく制限することで、ソルダーレジスト層形成後の波状の変形量を約60〜70%近くに低減できることが分かった。また、実施例2及び4では、上記実施例1及び3の各条件に加え、所定間隔で金属層にスリットを設けることで、比較例1及び2と比べて、ソルダーレジスト層形成後の波状の変形量を約50〜65%近くに低減できることが分かった。なお、このことは、図5に示すように、金属層の幅w1が約2.5mmより小さい場合に波状の変形量[mm]が急激に低下していることから裏付けられる。
【0077】
実施例5では、上述した各比較例1及び2と比べて、各スプロケットホールの間にある金属層の幅w3をさらに小さくすれば、ソルダーレジスト層形成後の波状の変形量を約50%近くに低減できることが分かった。なお、金属層の幅w3と波状の変形量との関係についても、図5に示すグラフと同様の推移を示すと考えられるから、金属層の幅w3を小さく制限すれば、ソルダーレジスト層形成後の波状の変形量をさらに低減できるものと考えられる。また、実施例6では、上述した実施例5の条件に加え、18.0mm間隔でスリットを設けることで、上述した各比較例1及び2と比べて、ソルダーレジスト塗布加熱後の波状の変形量を約45%近くに低減できることが分かった。
【0078】
さらに、実施例7では、上述した各比較例1及び2と比べて、金属層の幅w1,w3をさらに小さく制限することで、ソルダーレジスト塗布加熱後の波状の変形を約45%近くに低減できることが分かった。また、実施例8では、実施例7の条件に加え、18.4mm間隔でスリットを設けることで、比較例1及び2と比べて、ソルダーレジスト塗布加熱後の波状の変形量を約40%近くに低減できることが分かった。
【0079】
したがって、金属層の幅w1,w3を所定量に制限し、またはスリットを設けることで、平坦な電子部品実装用フィルムキャリアテープを実現できるため、半導体実装ラインでの搬送又は実装時の信頼性を向上できる。
【0080】
また、上記表1に示すように、配線パターン形成後やスズメッキ後に発生するフィルムキャリアテープの波状の変形量を低減できることは明らかである。このため、電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造時における搬送不良等の発生を防止できるという効果もある。
【0081】
さらに、上述した各実施例1〜8では、テープ幅35mmの絶縁層を用いたが、テープ幅70mm(69.950±0.2mm)の絶縁層を用いても、上述したのと類似の結果及び効果が得られた。
【0082】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、勿論、電子部品実装用フィルムキャリアテープは上述したものに限定されるものではない。
【0083】
例えば、上述した実施形態では、配線パターン13やスプロケットホール14等からなるキャリアパターンを1列設けた電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を例示して説明したが、これに限定されず、例えば、キャリアパターンを複数列並設した多条の電子部品実装用フィルムキャリアテープであってもよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、COFフィルムキャリアテープである電子部品実装用フィルムキャリアテープ10を例示したが、その他の電子部品実装用フィルムキャリアテープ、例えば、TAB、CSP、BGA、μ−BGA、FC、QFPタイプ等であってもよく、その構成等も限定されるものではない。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも金属層を絶縁層の長手方向に沿って実質的に連続に設け、スプロケットホールの幅w2を1.42±0.03[mm]とし、且つスプロケットホールの間の領域の金属層の幅w1[mm]を1.0≦w1≦(w2+1.0)の条件を満たすようにすることで、金属層と絶縁層との間に発生する応力が適度に開放され、電子部品実装用フィルムキャリアテープに発生する波状の変形が低減される。これにより、平坦な電子部品実装用フィルムキャリアテープが実現され、半導体実装ラインでの搬送又は実装時の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープを示す概略図であって、(a)が平面図であり、(b)が断面図であり、(c)が要部拡大平面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法の一例を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの要部拡大平面図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの要部拡大平面図である。
【図5】金属層の幅w1,w3とソルダーレジスト層形成後の波状の変形量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 電子部品実装用フィルムキャリアテープ
11 絶縁層
12 導電層
13 配線パターン
14 スプロケットホール
15 ソルダーレジスト層
16 金属層
17 スリット
20 COF用積層フィルム
21 フォトレジスト材料塗布層
22 フォトマスク
23 配線パターン用レジストパターン
24 金属層用レジストパターン
Claims (6)
- 絶縁層の表面に導電層からなる配線パターンと、当該配線パターンの両側に設けられた複数のスプロケットホールとを有し、且つ前記スプロケットホールの周囲に金属層が設けられた電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、
前記金属層は、前記絶縁層の長手方向に沿って実質的に連続に設けられており、前記スプロケットホールの幅w2は、1.42±0.03[mm]であり、且つ前記スプロケットホールの間の領域の前記金属層の幅w1[mm]は、1.0≦w1≦(w2+1.0)の条件を満たしていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。 - 前記スプロケットホールが存在する領域の前記金属層の幅w3[mm]が、(w2+0.2)≦w3≦(w2+1.6)の条件を満たしていることを特徴とする請求項1記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
- 前記スプロケットホールが存在する領域の前記金属層の幅w3[mm]が、(w2+0.2)≦w3≦(w2+1.1)の条件を満たしていることを特徴とする請求項2記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
- 前記金属層の幅w1[mm]と前記スプロケットホールが存在する領域の前記金属層の幅w3[mm]とがw1<w3の関係を満たしていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
- 前記金属層は、所定個数の前記スプロケットホール毎に設けられたスリットにより前記絶縁層の長手方向に不連続であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
- 前記金属層と前記スプロケットホールの開口縁部との間には、前記金属層が存在しない領域が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
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