JP4178073B2 - 走行車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車室の後方を覆うバックルーフと、車室の上方を覆うフロントルーフとを備え且つ車室を覆う使用位置から格納室に格納自在とされたリトラクタブルルーフを備えた走行車両に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車室を覆う使用位置からトランクルームに格納自在とされたリトラクタブルルーフを備えた走行車両がある(例えば、特許文献1参照)。
この種の車両にあっては、例えば、図15に示すように、リトラクタブルルーフ3は、車室7の後方を覆うバックルーフ8と、車室7の上方を覆うフロントルーフ9とを備えてなり、駆動装置11によって、実線で示す使用位置と、仮想線で示す格納位置とに位置変更自在に支持されている。
【0003】
前記駆動装置11は、リトラクタブルルーフ3の左右両側部に配置された左右一対の4節リンク機構17と、左右各4節リンク機構17を作動させる左右のルーフシリンダ14とを備えている。
左右の4節リンク機構17は、プライマリーリンク18とセカンダリーリンク19とを備えてなり、バックルーフ8の左右両側には、車体側に固定されたメインブラケット16が配置されている。
プライマリーリンク18は、バックルーフ8の側部に取付固定されていると共に、一端側がメインブラケット16に枢軸22を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されていて、バックルーフ8を前記枢軸22廻りに回動自在に支持している。
【0004】
また、このプライマリーリンク18の他端側は、フロントルーフ9後部の側部に固定されたブラケット28に枢軸25を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されている。
セカンダリーリンク19は、一端側がメインブラケット16に枢軸26を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結され、他端側がフロントルーフ9後部に固定された前記ブラケット28に枢軸27を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されていて、前記プライマリーリンク18と共にフロントルーフ9を支持している。
【0005】
また、駆動装置11は、メインブラケット16に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結され且つルーフシリンダ14によって回動されるドライブリンク29と、このドライブリンク29とプライマリーリンク18とを連動連結する連結リンク32とを有する。
この駆動装置11にあっては、リトラクタブルルーフ3が使用位置にあるときにおいて、ルーフシリンダ14を伸長させると、枢軸22廻りに回動するプライマリーリンク18と共にバックルーフ8が回動し、且つプライマリーリンク18及びセカンダリーリンク19等で構成される4節リンク機構17によってフロントルーフ9が後方移動しながら下降し、図15に仮想線で示すように、リトラクタブルルーフ3がトランクルーム2内に格納されるようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−264658号公報。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のリトラクタブルルーフ3を備えた車両にあっては、4節リンク機構17の枢支点22,25,26,27は固定状であり、その精度は加工時に決まる。
また、通常、リトラクタブルルーフ3は、使用位置で組み付けられるので、使用位置におけるフロントルーフ9の位置精度は確保されるが、リトラクタブルルーフ3を格納位置にしたときの、フロントルーフ9の位置精度は、4節リンク機構17の枢支点22,25,26,27の位置精度によって大きく左右される。
【0008】
例えば、各枢支点22,25,26,27が1mmばらついただけで、格納位置におけるフロントルーフ9の先端位置は10〜40mmのバラツキが出るため、最悪、トランクリッドとの干渉が発生してしまう惧れがある。
また、フロントルーフ9の使用位置と格納位置でのそれぞれの位置精度を確保するためには、4節リンク機構17の各枢支点22,25,26,27間の間隔の寸法精度を±0.1mmとか±0.2mmの精度で実現する必要があるが、4節リンク機構の1つのリンクのリンク長が600mm前後あり、しかもリンクの形状は複雑であるので、各枢支点22,25,26,27間の間隔を±0.1mmとか±0.2mmの精度で、量産維持するのは非常に困難であり、通常は修正工程を入れたりして、一型追加しての精度出しを行っており、生産性がわるいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、フロントルーフの使用位置と格納位置でのそれぞれの位置精度を確保すべく、使用位置ではフロントルーフの位置が略変化せず且つ格納位置においてフロントルーフの位置が調整できるようにした走行車両を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明が技術的課題を解決するために講じた技術的手段は、車室の後方を覆うバックルーフと、車室の上方を覆うフロントルーフとを備えてなると共に車室を覆う使用位置から格納室に格納自在とされたリトラクタブルルーフを備え、前記フロントルーフを使用位置と格納位置とに位置変更自在に支持する4節リンク機構を備え、この4節リンク機構は、一端側が車体側に枢支連結され且つ他端側がフロントルーフ側に枢支連結された一対のリンクを備え、使用位置ではフロントルーフの位置が略変化せず且つ格納位置においてフロントルーフの位置が調整可能となるように、4節リンク機構の、少なくともいずれか1つの枢支点の位置を調整可能としたことを特徴とする。
【0011】
また、4節リンク機構の少なくとも1つのリンクの一方の枢支点を、リトラクタブルルーフの使用位置において、当該リンクの両枢支点間の距離を半径とし且つ当該リンクの他方の枢支点を中心とした円弧に略沿う方向に位置調整可能とするのがよい。
また、4節リンク機構は、バックルーフに取付固定されており且つ一端側が車体側に固定されたメインブラケットに枢支連結され且つ他端側がフロントルーフ側に枢支連結されたプライマリーリンクと、前記メインブラケットに一端側が枢支連結され且つ他端側がフロントルーフ側に枢支連結されたセカンダリーリンクとを備え、前記セカンダリーリンクの、メインブラケットに対する枢支点を位置調整可能としてもよい。
【0012】
また、メインブラケットに、セカンダリーリンクの一方の枢支点を支持するリンク固定部材を固定可能に取り付けると共に、この固定を解除して該リンク固定部材がセカンダリーリンクの一方の枢支点の位置調整方向に移動可能となるように構成してもよい。
また、メインブラケットに、セカンダリーリンクの一方の枢支点の位置調整方向に進退自在に設けられ且つリンク固定部材に接当する位置調整ネジを備え、この位置調整ネジを螺進・螺退してリンク固定部材を移動させることにより、セカンダリーリンクの一方の枢支点の位置を調整自在としてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1〜図10は第1の実施の形態を示している。
図1〜3において、1は格納室2に格納可能なリトラクタブルルーフ3を備えた走行車両1(乗用自動車)を示しており、この走行車両1の後部には、リッド4(トランクリッド)によって開閉自在とされたトランクルーム2(ラゲージルーム)が設けられ、このトランクルーム2が格納室2とされている(なお、車体後部に設けられる収納スペースを仕切り壁によって格納室とトランクルームとに仕切るようにしたものであってもよい)。
【0014】
前記格納室2の上方を覆うリッド4は電動式等の駆動装置(図示省略)によって、後上方に前上がり傾斜で上昇移動するように支持されており(図3(a)参照)、これにより格納室2が開閉自在とされている。
なお、格納室2の前面側は、シートの背面側に設けられた内装材(仕切り壁)によって車室7側と仕切られている。
リトラクタブルルーフ3は、後部のバックルーフ8と、前部のフロントルーフ9とを備えてなり、駆動装置11によって、車室7を覆う使用位置(図1及び図3(a)に示す)と、格納室2に格納された格納位置(図2及び図3(b))に示す)との間を移動自在(位置変更自在)とされている。
【0015】
リトラクタブルルーフ3が使用位置に位置するときにおいて、バックルーフ8は、格納室2の前部から前上方に延びていて車室7の後方側を覆い、フロントルーフ9は、バックルーフ8の上部側端部から前方に且つフロントウインドウ10の上端にまで延びていて車室7の上方を覆っている。
また、図2に示すように、リトラクタブルルーフ3が格納位置に位置するときにおいて、バックルーフ8は、その内面側(車室7側)が上を向くように格納され、フロントルーフ9は、その内面側(車室7側)を下向きとしてバックルーフ8の上方に重ね合わされるように格納される。
【0016】
リトラクタブルルーフ3を駆動する駆動装置11は、図1、図2、図4及び図5に示すように、左右一対の移動制御機構13と、この移動制御機構13を作動させる油圧シリンダ、エアシリンダや電動モータ等のアクチュエータからなる駆動手段14とを有する。
左右の各移動制御機構13は、走行車両1の車体側に立設固定されたメインブラケット16を備えており、このメインブラケット16は板材により形成されていて、使用位置にあるバックルーフ8の側部の下方側で且つ格納室2の側部に配置されている。
【0017】
左右の各移動制御機構13は、リトラクタブルルーフ3を使用位置と格納位置とに位置変更自在に支持する4節リンク機構17を備えており、この4節リンク機構17は、プライマリーリンク18とセカンダリーリンク19の一対のリンクを備えている。
プライマリーリンク18は、図1に示すように、リトラクタブルルーフ3が使用位置にあるときにおいて、下部側に位置する第1リンク20と、上部側に位置する第2リンク21とに分割され、これら第1リンク20と第2リンク21とはバックルーフ8を介して相互に連結されている(したがって、バックルーフ8がプライマリーリンク18の一部を構成しているともいえる)。
【0018】
第1リンク20は、リトラクタブルルーフ3の側部に配置されていて、バックルーフ8の側部内側にボルト等によって取付固定されていると共に、一端側(下端側)が、前記メインブラケット16の後上部の支持部16aに枢軸22(枢支点)を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されており、これによってバックルーフ8がメインブラケット16に左右方向の枢軸22廻りに回動自在に支持されている。
第2リンク21は、リトラクタブルルーフ3の左右方向中央部に配置されていて、前後一側(後部側)がバックルーフ8の上部に固定され、前後他側(前部側)がフロントルーフ9の後部側に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されていて、これによってバックルーフ8とフロントルーフ9とが連動連結されている。
【0019】
本実施の形態では、バックルーフ8の上部の左右方向中央部下面側には、正面側から見て下方に向けて開放状のコ字形に形成された取付ブラケット23がボルト等によって取付固定されており、この取付ブラケット23の左右の側壁23aに左右の第2リンク21が取付固定されている。
また、フロントルーフ9の後部側の左右方向中央部には、正面側から見て下方に向けて開放状のコ字形に形成された連結ブラケット24が取付固定されており、この連結ブラケット24の左右の側壁24a下端側に、枢軸25(枢支点)を介して左右の第2リンク21の前端側が左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されている。
【0020】
なお、左右の4節リンク機構17の第2リンク21は、1本のリンクによって兼用してもよい。
セカンダリーリンク19は、図1に示すリトラクタブルルーフ3が使用位置にあるときにおいて、リトラクタブルルーフ3の側部内側で且つバックルーフ8の下部からフロントルーフ9の後部に亘って配置され、一端側(下端側)がメインブラケット16の上部側に枢軸26(枢支点)を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結され、他端側がフロントルーフ9の側部に固定されたブラケット28に枢軸27(枢支点)を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されている。
【0021】
一方、メインブラケット16の支持部16aには、ドライブリンク29の後部が、第1リンク20を支持する枢軸22の下側において、枢軸30を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されている。
このドライブリンク29の前上部には、連結リンク32の一端側が枢軸33を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結され、この連結リンク32の他端側は、第1リンク20の下部に枢軸34を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結されている。
【0022】
また、ドライブリンク29の前下部は、前記駆動手段14として例示する油圧シリンダからなるルーフシリンダ14のシリンダロッド14aがボールジョイント等を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支連結され、このルーフシリンダ14のシリンダ本体14bは、メインブラケット16の下部にボールジョイント等を介して左右方向の軸心廻りに回動自在に枢支されている。
前記構成の、リトラクタブルルーフ3と駆動装置11とから構成されるリトラクタブルルーフ装置にあっては、リトラクタブルルーフ3を使用位置から格納室2に格納するには、先ず、図示省略の駆動装置によって、リッド4を前上がり傾斜状に後上方に上昇させて格納室2のリッド4で塞がれていた部分を開け、その後、ルーフシリンダ14を伸長させる(ルーフシリンダ14のピストンロッド14aをシリンダ本体14b内から突出させる)。
【0023】
ルーフシリンダ14を伸長させるとドライブリンク29が回動し、このドライブリンク29の回動により連結リンク32が第1リンク20下部の枢軸22より上部側を後方に向けて押動して、該第1リンク20が枢軸22廻りに後方側に回動し、これによってバックルーフ8が格納室2内にその内面側が上を向く状態で格納される。
また、バックルーフ8及びプライマリーリンク18が枢軸22廻りに後方側に回動すると、フロントルーフ9が後方に移動すると共に、それに連れてセカンダリーリンク19も枢軸26回りに後方側に回動し、フロントルーフ9は、プライマリーリンク18とセカンダリーリンク19等とで構成される4節リンク機構17によって、その内面側が下を向いた状態で支持され、この状態で後方に移動すると共に下降してバックルーフ8の上側に重ね合わされるように格納室2に格納される。
【0024】
リトラクタブルルーフ3が格納室2に格納されると、リッド4の前部が下降して格納室2の大部分が閉じられる。
また、図6に示すように、リトラクタブルルーフ3の車室7側は、内装トリム36によって覆われており、この内装トリム36は、リトラクタブルルーフ3の側部にあっては、セカンダリーリンク19の動きを阻害しないように(セカンダリーリンク19と干渉しないように)切り欠かれている。
また、この内装トリム36は左右方向中央部においても、プライマリーリンク18の第2リンク21の動きを阻害しないようにスリット37が形成されている。
【0025】
前記構成のものにあっては、プライマリーリンク18が第1リンク20と第2リンク21とに分割され、第1リンク20及び第2リンク21はそれぞれバックルーフ8に取付固定されているので、第1リンク20又は第2リンク21の取付位置を変更することにより、プライマリーリンク18の枢支点間の寸法調整(枢軸22と枢軸25との軸間距離の調整)が可能とされている。
また、プライマリーリンク18を第1リンク20と第2リンク21とに分割し、さらに、第2リンク21をリトラクタブルルーフ3の左右方向中央部に配置したので、図6に示すように、乗員の頭部の首振りラインBを広く採れ(ヘッドクリアランスを大きくすることができ)、居住性を向上させることができる。
【0026】
また、プライマリーリンク18を分割しても、コスト的には、従来の構造のものと略同等である。
さらに、本実施の形態では、プライマリーリンク18を第1リンク20と第2リンク21とに分割し、さらに、第2リンク21をリトラクタブルルーフ3の左右方向中央部に配置したので、図6に示すように、内装トリム36の切欠き幅Aは大幅に縮小できる。
なお、前記構成において、プライマリーリンク18の第2リンク21は、リトラクタブルルーフ3の左右の側部に配置されていてもよい。
【0027】
通常、リトラクタブルルーフ3は、使用位置で組み付けられるので、使用位置におけるフロントルーフ9の位置精度は確保されるが、リトラクタブルルーフ3を格納位置にしたときの、フロントルーフ9の位置精度は、4節リンク機構17の枢支点22,24,26,27の位置精度によって大きく左右され、例えば、各枢支点22,24,26,27が1mmばらついただけで、格納位置におけるフロントルーフ9の先端位置は10〜40mmのバラツキが出るため、最悪、トランクリッド4との干渉が発生してしまう惧れがある。
【0028】
そこで、本実施の形態では、フロントルーフ9の格納位置での位置を調整すべくアジャスト機構40を備えている。
このアジャスト機構40は、図1、図2、図4、図7〜図10に示すように、メインブラケット16に取付固定された支持部材41と、この支持部材41に対してセカンダリーリンク19を固定するリンク固定部材42と、位置調整ネジ43とを備えている。
支持部材41は、メインブラケット16の上部側前部にネジ等を介して取付固定される取付壁44と、この取付壁44から左右方向内方にオフセットされると共に後方に突出状とされた支持壁45と、前記取付壁44から左右方向内方に突出状とされていて位置調整ネジ43が取り付けられるネジ取付壁46とを備えている。
【0029】
セカンダリーリンク19の下端側には、前記枢軸26が左右方向外方側に突出状に設けられると共に、この枢軸26と同心状として左右方向内方側に突出状に設けられた支軸49を有する。
支持壁44の後部には、セカンダリーリンク19の下端側の枢軸26が挿通されて案内されるガイド溝47が左右方向貫通状に形成され、このガイド溝47の前側には、上下一対のネジ孔48が形成されている。
ネジ取付壁46には、ネジ孔50が貫通形成されており、このネジ孔50に前記位置調整ネジ43が螺合されている。
【0030】
リンク固定部材42の後部側には、セカンダリーリンク19の一端側(下部)の前記支軸49が、軸心廻りに相対回転自在で且つ軸心方向に直交する方向に相対移動不能に挿通される挿通孔51が形成されていて、セカンダリーリンク19の一端側とリンク固定部材42とが一体的に移動可能とされている。
このリンク固定部材42には、上下一対のネジ挿通孔52が形成され、このネジ挿通孔52を挿通して、支持部材41の支持壁45に形成されたネジ孔48に螺合される上下一対の取付ネジ53によって、リンク固定部材42が支持部材41の支持壁45に取付固定され、これにより、セカンダリーリンク19の一端側がメインブラケット16に対して、枢軸26及び支軸49の軸心廻りに回動自在で且つ枢軸26等の軸心に直交する方向に移動不能に支持されている。
【0031】
前記支持部材41のガイド溝47は、図8に示すように、セカンダリーリンク19の一端側の枢軸26と他端側の枢軸27との軸心間距離を半径Rとし、且つ枢軸27の軸心を中心とする円弧Cの接線方向Dに長い長孔とされていて、この接線方向Dにセカンダリーリンク19の一端側(枢軸26)が移動可能(位置調整可能)とされている。
また、リンク固定部材42に形成されたネジ挿通孔52は、前記接線方向Dと平行な方向に長い長孔とされていて、リンク固定部材42がセカンダリーリンク19の一端側の移動方向D(位置調整方向)と同方向に移動可能とされている。
【0032】
また、位置調整ネジ43は、セカンダリーリンク19の一端側の位置調整方向Dに螺進・螺退自在とされていると共に、リンク固定部材42に接当していて、位置調整ネジ43を螺進・螺退(位置調整方向Dに進退)させることにより、リンク固定部材42と共にセカンダリーリンク19の一端側を矢示D方向に移動調整可能としている。
したがって、取付ネジ53を締め付けて、リンク固定部材42を支持部材41に固定させることにより、セカンダリーリンク19の一端側の矢示D方向の移動が規制され、取付ネジ53の締め付けを緩めることにより、セカンダリーリンク19の一端側の矢示D方向の移動が許容されるようになっている。
【0033】
前記構成の走行車両1にあっては、リトラクタブルルーフ3は、使用位置で車体に、適正位置に正確に組み付けられる。
そして、例えば、セカンダリーリンク19の他端側の枢軸27の位置が前後又は上下に±0.3mm程度のバラツキ(誤差)があって、リトラクタブルルーフ3を格納位置に移動したときに、フロントルーフ9が適正位置に位置しない場合(フロントルーフ9が適正姿勢でない場合)、取付ネジ53の締め付けを緩めると共に位置調整ネジ43を螺進又は螺退して、フロントルーフ9の前部側の上下位置を適正位置に調節する(フロントルーフ9の姿勢を適正姿勢に調節する)。
【0034】
すなわち、取付ネジ53の締め付けを緩めてセカンダリーリンク19の一端側が動き得る状態とし、その後、位置調整ネジ43を螺進させてセカンダリーリンク19の一端側を押し上げることにより、セカンダリーリンク19の他端側が枢軸25を中心として上方移動し、図10に仮想線Xで示すように、フロントルーフ9の前部側が枢軸25を中心として上方に揺動して位置調整される。
また、位置調整ネジ43を螺退させることにより、セカンダリーリンク19の一端側が自重で下がり、セカンダリーリンク19の他端側が枢軸25を中心として下方移動し、図10に仮想線Yで示すように、フロントルーフ9の前部側が枢軸25を中心として下方に揺動して位置調整される。
【0035】
フロントルーフ9を適正位置に調整した後は、取付ネジ53を締め付けてリンク固定部材42をメインブラケット16に対して固定することにより、セカンダリーリンク19の一端側の位置を固定する。
一方、リトラクタブルルーフ3が使用位置に位置するときにあっては、セカンダリーリンク19の一端側の枢軸26は、セカンダリーリンク19の一端側の枢軸26と他端側の枢軸27との軸心間距離を半径Rとし、且つ枢軸27の軸心を中心とする円弧Cの接線方向Dに移動自在(枢軸27の軸心を中心とする円弧Cに略沿う方向に位置調整自在)とされていて、セカンダリーリンク19の一端側を矢示D方向に動かしても他端側の枢軸27は略動かないので、フロントルーフ9を、格納位置において適正位置に調整した後に、使用位置に戻してもフロントルーフ9の使用位置は略変化しない(位置変更しない)。
【0036】
フロントルーフ9を格納位置にしたときの、該フロントルーフ9の全体的な上下位置は、プライマリーリンク18の使用位置からの回動量によって決定され、例えば、格納位置での第2リンク21の停止位置を調整すること等により調整可能である。
なお、同様の考えで、4節リンク機構17の他の枢軸27,22,25を、位置調整可能に構成し、該他の枢軸27,22,25の位置を移動調整することにより、使用位置でのフロントルーフ9の位置は略変化させないで、格納位置でのフロントルーフ9の(前部側の上下)位置を調整できるようにしてもよい。
【0037】
即ち、枢軸27を位置調整可能とする場合は、リトラクタブルルーフ3の使用位置において、枢軸26と枢軸27との軸心間距離を半径とし且つ枢軸26を中心とする円弧の接線方向(又は該円弧に合致する方向)に、枢軸27を移動・固定自在に支持する。
また、枢軸22又は枢軸25を位置調整可能とする場合は、リトラクタブルルーフ3の使用位置において、枢軸22と枢軸25との軸心間距離を半径とし且つ枢軸25又は枢軸22を中心とする円弧の接線方向(又は該円弧に合致する方向)に、枢軸22又は枢軸25を移動・固定自在に支持する。
【0038】
なお、4節リンク機構17の枢支点26,27,25,22の内、少なくとも1つが位置調整自在となっていればよいが、複数が位置調整自在となっていてもかまわない。
また、セカンダリーリンク19をアクチュエータによって枢軸26廻りに駆動させて、リトラクタブルルーフ3を格納動作(位置変更動作)させるようにしてもよい。
また、前記構成において、支持部材41はメインブラケット16に一体形成されていてもよく、また、ガイド溝47及びネジ挿通孔52は、セカンダリーリンク19の他端側の枢軸27を中心とする円弧状に形成してもよい。
【0039】
また、前記実施の形態において、プライマリーリンク18は分割されているが、従来のものと同様、1本のリンクで構成されていてもよい。
図11〜図14は、第2の実施の形態を示している。
この第2の実施の形態の駆動装置11にあっては、駆動手段14として電動式のモータ14が採用され、このモータ14はメインブラケット16に取付固定されており、このモータ14の出力軸55と一体回転する駆動ギヤ56が、プライマリーリンク18の第1リンク20と共に、枢軸22の軸心廻りに一体回転する伝動ギヤ57と噛み合っていて、モータ14によって、第1リンク20が枢軸22廻りに回転駆動されるように構成されている。
【0040】
この実施の形態のメインブラケット16は、左右方向に対向状の一対の支持壁58,59の下端側同志を連結壁60によって連結してなり、外側の支持壁59に、セカンダリーリンク19の枢軸26が挿通されて案内されるガイド溝47が形成され、内側の支持壁58に、リンク固定部材42を固定するためのネジ孔48が形成されている。
また、位置調整ネジ43が取り付けられるネジ取付壁46は、メインブラケット16に一体的に設けられている。
【0041】
なお、その他の構成については、前記第1の実施の形態と略同様に構成されているので、同じ機能を有する部材等には同符号を付して説明を省略する。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、リトラクタブルルーフのフロントルーフを使用位置と格納位置とに位置変更自在に支持する4節リンク機構を備え、この4節リンク機構は、一端側が車体側に枢支連結され且つ他端側がフロントルーフ側に枢支連結された一対のリンクを備え、使用位置ではフロントルーフの位置が略変化せず且つ格納位置においてフロントルーフの位置が調整可能となるように、4節リンク機構の、少なくともいずれか1つの枢支点の位置を調整可能とされていることから、格納位置でフロントルーフの位置を調整しても、使用位置でのフロントルーフの位置は略変化しないので、リトラクタブルルーフを使用位置で適正位置に正確に組み付けておき、リトラクタブルルーフを格納したときに、フロントルーフが格納位置で適正位置に位置していないときには、フロントルーフの位置を調整することにより、フロントルーフの使用位置及び格納位置の両方での位置精度を容易に確保することができ、加工時のバラツキを最終工程で補正することが可能となり、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リトラクタブルルーフが使用位置にある場合の側面図である。
【図2】リトラクタブルルーフが格納位置にある場合の側面図である。
【図3】走行車両の側面図である。
【図4】リトラクタブルルーフ及び駆動装置の斜視図である。
【図5】第2リンクの連結部分の側面断面図である。
【図6】フロントルーフの正面断面図である。
【図7】第1の実施の形態に係るアジャスト機構の斜視図である。
【図8】リトラクタブルルーフが使用位置に位置するときにおける第2リンク及びアジャスト機構の側面図である。
【図9】第1の実施の形態に係るアジャスト機構の側面断面図である。
【図10】リトラクタブルルーフが格納位置にあるときにおける第2リンク等の側面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る走行車両の要部の側面図である。
【図12】第2の実施の形態に係るアジャスト機構の側面断面図である。
【図13】図12のE−E線矢示断面図である。
【図14】第2の実施の形態に係るアジャスト機構の斜視図である。
【図15】従来のリトラクタブルルーフの4節リンク機構の側面図である。
【符号の説明】
2 格納室
3 リトラクタブルルーフ
7 車室
8 バックルーフ
9 フロントルーフ
17 4節リンク機構
18 プライマリーリンク
19 セカンダリーリンク
26 枢軸(枢支点)
27 枢軸(枢支点)
42 リンク固定部材
43 位置調整ネジ
R 半径
C 円弧
D 位置調整方向
Claims (5)
- 車室(7)の後方を覆うバックルーフ(8)と、車室(7)の上方を覆うフロントルーフ(9)とを備えてなると共に車室(7)を覆う使用位置から格納室(2)に格納自在とされたリトラクタブルルーフ(3)を備え、前記フロントルーフ(9)を使用位置と格納位置とに位置変更自在に支持する4節リンク機構(17)を備え、この4節リンク機構(17)は、一端側が車体側に枢支連結され且つ他端側がフロントルーフ(9)側に枢支連結された一対のリンク(18,19)を備え、使用位置ではフロントルーフ(9)の位置が略変化せず且つ格納位置においてフロントルーフ(9)の位置が調整可能となるように、4節リンク機構(17)の、少なくともいずれか1つの枢支点(26)の位置を調整可能としたことを特徴とする走行車両。
- 4節リンク機構(17)の少なくとも1つのリンク(19)の一方の枢支点(26)を、リトラクタブルルーフ(3)の使用位置において、当該リンク(19)の両枢支点(26,27)間の距離を半径(R)とし且つ当該リンク(19)の他方の枢支点(27)を中心とした円弧(C)に略沿う方向(D)に位置調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
- 4節リンク機構(17)は、バックルーフ(8)に取付固定されており且つ一端側が車体側に固定されたメインブラケット(16)に枢支連結され且つ他端側がフロントルーフ(9)側に枢支連結されたプライマリーリンク(18)と、前記メインブラケット(16)に一端側が枢支連結され且つ他端側がフロントルーフ(9)側に枢支連結されたセカンダリーリンク(19)とを備え、前記セカンダリーリンク(19)の、メインブラケット(16)に対する枢支点(26)を位置調整可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の走行車両。
- メインブラケット(16)に、セカンダリーリンク(19)の一方の枢支点(26)を支持するリンク固定部材(42)を固定可能に取り付けると共に、この固定を解除して該リンク固定部材(42)がセカンダリーリンク(19)の一方の枢支点(26)の位置調整方向(D)に移動可能となるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の走行車両。
- メインブラケット(16)に、セカンダリーリンク(19)の一方の枢支点(26)の位置調整方向(D)に進退自在に設けられ且つリンク固定部材(42)に接当する位置調整ネジ(43)を備え、この位置調整ネジ(43)を螺進・螺退してリンク固定部材(42)を移動させることにより、セカンダリーリンク(19)の一方の枢支点(26)の位置を調整自在としたことを特徴とする請求項4に記載の走行車両。
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