以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
本発明を実施するための一形態において、高圧放電ランプ点灯装置は、図1に示すように、点灯手段OCおよび制御手段CCを具備していて、水銀を本質的に含まない高圧放電ランプHPLを始動し、安定に点灯させる。高圧放電ランプHPLは、本発明の一実施形態として図2および図3に示すように構成されている。
まず、水銀を本質的に含まない高圧放電ランプHPLについて説明する。
この高圧放電ランプHPLは、放電容器1、封着金属箔2、外部リード線3および放電媒体を備えて構成されている。
放電容器1は、その内部に細長い放電空間1cが形成されるとともに、放電空間1cを包囲する部分の肉厚が比較的大きくて、耐火性で、かつ、透光性の材料例えば石英ガラス、透光性セラミックスなどからなる。放電空間1cは、好ましくはほぼ円柱状をなし、軸方向の中央部の肉厚がその両側の肉厚より大きい。
また、放電容器1は、石英ガラス製の気密容器1aおよび一対の電極1bからなる。上記放電空間1cは、中空の紡錘形状に成形された気密容器1aの内部に形成されている。そして、気密容器1aの両端に一対の細長い封止部1a1を一体に備えている。
電極1bは、気密容器1a内の放電空間1cの両端部にその一対が対向して封装され、好ましくは図3に示すように電極間距離Lが6mm以下になるように設定される。なお、一対の電極1b、1bは、高圧放電ランプHPLが直流点灯される場合には、アノードとして作用する側が、定格ランプ電力の約3倍のランプ電力が供給された際に、これに耐えるように構成される。例えば、電極1bの先端に軸部より径大の球状部分1b1を形成することにより、これに対応することができる。
また、電極1bは、タングステン製で、電極軸1b1および径大部1b2を備えており、電極軸1b1の基端が封止部1a1に埋設されることによって所定の位置に支持されている。径大部1b2は、電極軸1b1と一体に形成されている。また、電極軸1b1の基部は、封止部1a1内において、封着金属箔2の一端に溶接されている。
封着金属箔2は、モリブデン箔からなり、気密容器1aの封止部1a1内に気密に封着されている。
外部リード線3は、先端が封着金属箔2に溶接され、基端が放電容器1から外部へ露出している。
本発明において点灯される高圧放電ランプHPLは、特定の放電媒体を具備している。すなわち、放電媒体は、放電容器1内の放電空間1c内に封入されていて、希ガスおよび金属ハロゲン化物が封入されている。しかし、本質的に水銀が封入されていない。
本発明において、「本質的に水銀が封入されていない」とは、水銀を全く封入していないだけでなく、気密容器1aの内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容するという意味である。しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプの電気特性を維持する場合には、短アーク形においては気密容器の内容積1cc当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、水銀量が実質的に少ないといえる。
希ガスは、5〜15気圧の圧力で封入されている。なお、希ガスは、好適にはキセノンである。希ガスの封入圧を5〜15気圧に限定している理由は、この範囲であれば、点灯直後4秒までの光束立ち上がりを早めて自動車用ヘッドライト装置に必要なその前面の代表点での光度8000cdを得ることができるからである。
金属ハロゲン化物は、少なくとも発光金属のハロゲン化物を含むものとする。発光金属のハロゲン化物としては、例えばナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)および希土類金属例えばジスプロシウム(Dy)などを含む複数種の発光金属のハロゲン化物を用いることができる。また、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)およびインジウム(I)のハロゲン化物を発光金属のハロゲン化物として封入することもできる。
さらに要すれば、金属ハロゲン化物として、蒸気圧が相対的に高くて、かつ、可視域における発光が相対的に少ない金属のハロゲン化物を、発光金属のハロゲン化物に加えることができる。この場合、発光金属のハロゲン化物を第1のハロゲン化物とすれば、上記蒸気圧が相対的に高くて、かつ、可視域における発光が相対的に少ない金属のハロゲン化物を発光金属のハロゲン化物と区別して第2の金属ハロゲン化物ということができる。第2の金属ハロゲン化物としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)からなるグループの中から選択された1種または複数種の金属のハロゲン化物を用いることができる。
本発明において、高圧放電ランプの定格ランプ電力は、一般的には250W以下、好ましくは100W以下、最適には60W以下である。
次に、図3を参照して自動車用ヘッドライト装置に用いる高圧放電ランプとしてのメタルハライドランプにける放電容器1の各部の寸法について説明する。
電極1b、1bの間の中心軸上の距離を電極間距離L(mm)とし、その中央寄り80%の中に位置する放電空間1cの最大内径をD(mm)とし、最大肉厚をt(mm)とする。そして、D/Lを0.25〜1.50、またt/Lを0.16〜1.10の範囲に設定している。
上記のように構成されているメタルハライドランプは、安定点灯時にランプ電力100W以下で点灯することができる。また、自動車用ヘッドライト装置に用いる高圧放電ランプにおいては、一般的には80W以下、好ましくは60W以下、最適には40W程度である。
以下の実施例1は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置により点灯される高圧放電ランプHPLの実施例を示す。
放電容器:中央部の外径6.5mm、最大内径4.5mm、電極間距離4.2mm、
電極軸径0.4mm、長さ7mm、径大部の直径0.6mm、
D/L約1.07、t/L0.24
放電媒体:発光金属のハロゲン化物−ScI30.2mg、NaI1.0mg、
希ガスXe8気圧
定格ランプ電力:40W
次に図1を参照して点灯手段OCおよび制御手段CCについて説明する。図1は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置の一実施形態を示す回路ブロック図である。本実施形態は、自動車用ヘッドライト装置に用いる高圧放電ランプ点灯装置である。図において、DCは直流電源、SW1は電源スイッチ、C1は電解コンデンサ、OCは点灯手段、CCは制御手段、IGはイグナイタ、HPLは高圧放電ランプである。
直流電源DCは、直流電圧12Vのバッテリーからなる。
電源スイッチSW1は、直流電源DCと後述する点灯手段OCとの間に直列接続されていて、高圧放電ランプHDLの点滅を司る。
電解コンデンサC1は、電源スイッチSWを介して直流電源DCと並列に接続している。
点灯手段OCは、高圧放電ランプHDLを点灯する手段であり、電子式に構成されていることが好ましい。また、交流電圧は、その波形を矩形波にすることができる。さらに、高圧放電ランプの安定点灯中には、定電力制御を行うことができるように構成することが好ましい。
高圧放電ランプの限流手段は、それぞれ高圧放電ランプに印加される電圧の態様に応じて適切なインピーダンスを有していなければならない。しかし、直流電源電圧値を所望に制御したり、アクティブフィルタ作用をさせたりするために、スイッチングレギュレータを用いる場合、構成要素の一部であるインダクタがスイッチングにより限流作用をも担当するので、見かけ上の限流素子を省略することができる。
また、交流点灯の際の周波数は、高圧放電ランプが音響的共鳴現象を生じないように配慮する必要がある。高圧放電ランプが自動車用ヘッドライト装置に用いるようなサイズの放電容器を備える場合においては、約2kHz以下の周波数であれば、実際上問題を生じるようなことはない。なお、好ましくは上記に加えて100Hz以上である。
さらに、点灯手段は、その無負荷出力電圧を200〜600V程度に設定することができる。
本実施形態において、点灯手段OCは、スイッチングレギュレータDC/DCおよびインバータDC/ACから構成されている。
スイッチングレギュレータDC/DCは、出力トランスT、スイッチング手段Q1、ゲートドライブ信号発生回路GDG、ダイオードD1および平滑コンデンサC2により主として構成されている。出力トランスTの1次巻線wpおよびスイッチング手段Q1は、電解コンデンサC1の両端間に直列接続している。スイッチング手段Q1は、MOSFETからなる。
なお、スイッチング手段Q1と直列に挿入されている抵抗器R1は、スイッチング電流検出用である。ゲートドライブ信号発生回路GDGは、ゲートドライブ信号を発生して、スイッチング手段Q1のゲート・ソース間に印加する。そして、外部から制御入力する制御信号に応じてゲートドライブ信号をPWM制御することができる。出力トランスTの2次巻線wsの両端にダイオードD1および平滑コンデンサC2が直列接続している。
そうして、スイッチングレギュレータDC/DCの昇圧され、かつ制御された直流出力電圧が平滑コンデンサC2の両端間に得られる。
インバータDC/ACは、フルブリッジ形インバータからなり、4つのスイッチング手段Q2〜Q5、ゲートドライブ回路GDC1〜GDC4、矩形波発振回路OSC、切換手段SW2、反転回路Nおよび非反転回路Yからなる。4つのスイッチング手段Q2〜Q5は、それぞれMOSFETからなり、ブリッジ回路を構成するように接続されている。そして、ブリッジ回路の入力端は、スイッチングレギュレータDC/DCの直流出力端間に接続している。
ゲートドライブ回路GDC1〜GDC4は、反転回路Nまたは非反転回路Yを経由した後記矩形波発振回路OSCの出力信号または直流電位に同期してゲートドライブ信号を形成して、それぞれ対応するスイッチング手段Q2〜Q5のゲート・ソース間にゲートドライブ信号を供給し、それらをオンさせる。矩形波発振回路OSCは、周波数100Hz〜2kHzの矩形波の出力信号を発振する。
切換手段SW2は、矩形波発振回路OSCの出力信号と直流電位とを選択的にゲートドライブ回路GDC1およびGDC3に対して反転回路Nを介して接続し、またゲートドライブ回路GDC2およびGDC4に対して非反転回路Yを介して接続している。
そうして、矩形波発振回路OSCの出力が切換手段SW2および反転回路Nまたは非反転回路Yを介してゲートドライブ回路GDC1〜GDC4に印加されることにより、4つのスイッチング手段のうちQ2およびQ5とQ3およびQ4とが交互にスイッチングしてインバータ動作を行い、それらが構成するブリッジ回路の出力端から交流出力電圧が得られる。
また、直流電位が切換手段SW2および反転回路Nまたは非反転回路Yを介してゲートドライブ回路GDC1〜GDC4に印加されることにより、4つのスイッチング手段のうちQ2およびQ5がオンし、Q3およびQ4がオフするので、ブリッジ回路の出力端から直流出力電圧が得られる。
以上を要約すれば、点灯手段OCは、本実施形態において、直流出力および交流出力のいずれか一方が選択されることにより、後述する高圧放電ランプHPLを直流点灯または交流点灯することができる。
制御手段CCは、点灯手段OCに対して高圧放電ランプHPLへの低温始動時の投入電力切り換え制御を行う手段である。すなわち、低温始動時には高圧放電ランプHPLに対する投入電力が定格ランプ電力の2倍より大きい値で継続して供給してから所定の一定の割合で低減し、引き続いて低減率が最初大きくて順次小さくなるように低減する目標供給ランプ電力パターンに沿って点灯手段OCが高圧放電ランプHPLに供給する実供給ランプ電力を調節するように制御する。
なお、始動時に高圧放電ランプHPLに対して印加する電圧を直流電圧とし、さらに直流点灯から交流点灯へ切り換える制御を行う場合には、上記に加えて制御手段CCは、(1)直流・交流切り換え制御、および(2)直流点灯時間制御、をそれぞれ行うように構成することができる。これらの制御については後述する。
また、制御手段CCが上述の低温始動時に行う投入電力切り換え制御は、高温始動時における制御を加えることによって、変化した周囲温度における投入ランプ電力切り換え制御を行うことができる。この投入ランプ電力切り換え制御は、高圧放電ランプHPLが始動し点灯したときに供給ランプ電力を低温始動時と高温始動時との少なくとも2段階に切り換える制御である。
低温始動時においては、光束立ち上がりが早くなるように定格ランプ電力より大きなランプ電力例えば定格ランプ電力の約3倍の電力を高圧放電ランプHPLに供給し、高温始動時においては定格ランプ電力に近いランプ電力を供給する。なお、「低温始動」とは、高圧放電ランプ内の温度が室温程度以下の温度下での始動を意味し、したがって消灯してからの経過時間が長い場合に低温になる。また、「高温始動」とは、高圧放電ランプの安定時の温度に近い温度下での始動を意味し、したがっていわゆるホットリスタートはこれに該当する。「定格ランプ電力に近い」とは、定格ランプ電力に対して105〜150%の範囲である。なお、好ましくは120〜140%の範囲である。
また、低温始動時および高温始動時の判別は、高圧放電ランプの温度、消灯してからの経過時間であるところの消灯時間または点灯時に流れるランプ電流の大きさなどに応じて行うことができる。さらに、高圧放電ランプに供給するランプ電力の制御は、高圧放電ランプに印加する電圧を変化することにより容易にこれを行うことができる。
また、要すれば、高圧放電ランプの消灯時間に応じて連続的に供給ランプ電力を制御するように構成することができる。
さらに、低温始動時および高温始動時に高圧放電ランプに対してどの程度のランプ電力を供給するかは、予め実験またはシミュレーションなどにより決定することができる。そして、低温および高温の程度とランプ電力時間との関係を予めテーブルデータとしてメモリに記憶しておき、演算に基づいて必要なデータをメモリから読み出して、点灯手段を自動的に制御するように構成することができる。
本実施形態において、制御手段CCは、ランプ電圧検出部LVD、ランプ電流検出部LCD、点灯検出部LDおよびランプ電力制御部LPCにより構成されている。なお、点灯手段OCが交流および直流を切り換えて高圧放電ランプHPLに供給する場合には、上記に加えて点灯時間制御部DCCを備えることができる。
ランプ電圧検出部LVDは、スイッチングレギュレータDC/DCの直流出力電圧が得られる平滑コンデンサC2の両端間に接続された一対の抵抗器R2、R3の直列回路からなり、抵抗器R3の両端に高圧放電ランプHPLのランプ電圧に比例した電圧が得られる。
ランプ電流検出部LCDは、スイッチングレギュレータDC/DCの直流出力およびインバータDC/ACの直流入力端の間に直列に挿入された抵抗器R4からなり、抵抗器R4の電圧降下がランプ電流に比例する。
点灯検出部LDは、ランプ電圧検出部LVDの検出出力に応動する。すなわち、高圧放電ランプHPLは、放電開始すると、その電極間に現れる電圧がそれ以前に現れる無負荷電圧より明らかに低いランプ電圧になる。そこで、点灯検出部LDは、ランプ電圧検出部LVDの検出出力を監視していて、検出出力が急減したことをもって高圧放電ランプHPLが点灯したことを検出することができる。
ランプ電力制御部LPCは、目標ランプ電力演算回路TO、実ランプ電力演算回路AOおよび差動増幅回路DAから構成されている。
目標ランプ電力演算回路TOは、予め初期値に対する目標供給ランプ電力をテーブルデータとしてメモリに記憶していて、消灯時間に応じて算出された直流電圧印加時間に応じた目標供給ランプ電力を演算する。
図4は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置の一実施形態における目標供給ランプ電力パターンを示すグラフである。このグラフは、目標供給ランプ電力特性すなわち初期値に対する目標供給ランプ電力のパターンを示すもので、目標ランプ電力設定手段としてのテーブルデータを説明している。本発明においは、低温始動時には高圧放電ランプHPLに対して定格ランプ電力の2倍より大きいランプ電力、例えば約3倍のランプ電力を投入することができる。なお、「約3倍」とは、2.5〜3.5倍程度を含む意味である。これより多くのランプ電力を始動時に供給すると、光束立ち上がりは早くなるが、電極の消耗が無視できなくなる。そして、上記ランプ電力を継続して供給してから、続いて所定の一定の割合で低減し、さらに引き続いて低減率が最初大きくて順次小さくなって安定時のランプ電力に落ち着くように低減する目標ランプ電力パターンを示している。
なお、図4において、横軸はカウンタ初期値を、縦軸は目標供給ランプ電力[W]を、それぞれ示す。上記の関係は、点灯する高圧放電ランプHPLの特性により左右されるので、ここでは実験によりテーブルデータを求め、それをグラフ化したものである。
すなわち、低温始動時したがってカウンタ初期値が小さいときには、目標供給ランプ電力が定格ランプ電力の2倍より大きいランプ電力を継続して供給するように、例えば定格ランプ電力の3倍と大きな値を所定のカウンタ値になるまで継続する。この段階を第1の段階S1とすれば、この第1の段階S1に引き続いて次の段階である第2の段階S2となる。第2の段階S2ではカウンタ初期値が大きくなるにしたがって所定の一定の割合でランプ電力を低減させる。この段階S2は、第1の段階S1に比較してカウンタ値の変化が小さい。第2の段階S2が終わると第3の段階S3に移行する。この第3の段階S3では、最初に低減率が大きくてカウンタ値が大きくなるにしたがって低減率が順次小さくなるように低減して目標供給ランプ電力が小さくなり、やがて定格ランプ電力に等しくなるように設定されている。この第3の段階S3は、カウンタ値の範囲が最も大きい。
実ランプ電力演算回路AOは、ランプ電圧検出部LVDおよびランプ電流検出部LCDの検出出力に基づいて演算により高圧放電ランプHPLに実際に供給されている実供給ランプ電力を求める。
差動増幅回路DAは、目標ランプ電力演算回路TOが演算して求めた目標供給ランプ電力と、実ランプ電力演算回路AOが演算して求めた実供給ランプ電力とを入力して、その差をゲートドライブ信号発生回路GDGの制御入力として出力する。その結果、高圧放電ランプHPLの始動から安定点灯に至るまでの間、実ランプ電力が図4に示す目標ランプ電力に沿って変化することが理解できる。
なお、本発明の実施に際して、所望により始動時には点灯手段OCにより高圧放電ランプHPLを直流点灯し、所定時間後交流点灯に切り換えるとともに、低温始動時には定格ランプ電力より大きいランプ電力を高圧放電ランプに供給し、かつ、直流点灯を相対的に短時間とし、高温始動時には定格ランプ電力に近いランプ電力を高圧放電ランプHPLに供給し、かつ、直流点灯を相対的に長時間とするように点灯手段OCを制御することが許容される。この場合、上記の構成に加えて、制御手段に直流・交流切り換え制御および直流点灯時間制御の構成を追加すればよい。これらの構成について以下説明する。
直流・交流切り換え制御は、始動時に高圧放電ランプに対して印加する電圧を直流電圧とし、さらに後述の直流点灯時間制御に基づいて直流点灯から交流点灯へ切り換えるための制御である。なお、切り換えの際に電源の瞬断が生じるのを回避すべきであり、そのためにも無接点で切り換えが行われるのが好ましい。インバータDC/ACのスイッチング手段を利用して無接点切り換えを行う場合、スイッチング手段のドライブ信号を連続信号にすればインバータDC/ACの出力端に直流が得られ、また発振周波数の断続信号にすれば発振周波数の交流が得られる。
本実施形態において、直流・交流切り換え制御は、前記インバータDC/ACの切換手段SW2により構成されている。
直流点灯時間制御は、低温始動時および高温始動時のいずれであるかにより直流点灯時間を変化させる制御である。すなわち、直流点灯は、低温始動時には相対的に短時間であり、高温始動時には相対的に長時間である。低温始動時および高温始動時の判別は、高圧放電ランプの温度、消灯してからの経過時間であるところの消灯時間または点灯時に流れるランプ電流の大きさなどに応じて行うことができる。
また、高圧放電ランプHPLの始動時の低温および高温の程度に応じて連続的に投入電力を制御するように構成することができる。
さらに、低温始動時および高温始動時にどの程度の時間直流点灯するかは、予め実験またはシミュレーションなどにより決定することができる。
本実施形態において、直流点灯時間制御は、直流点灯時間制御部DCCにより構成されている。直流点灯時間制御部DCCは、消灯時間タイマLOT、初期値設定回路IVS、カウンタCTおよび直流点灯時間タイマDVTから構成されている。
消灯時間タイマLOTは、点灯検出部LDの検出出力を監視してその出力がなくなったときを消灯と判定し、動作を開始して消灯時間を計時する。なお、消灯時間タイマLOTは、内蔵バッテリーによって電源スイッチSW1がオフになっても動作を継続するように構成されている。
初期値設定回路IVSは、予め消灯時間に対するカウンタCTの初期値すなわちカウンタ初期値をテーブルデータとしてメモリに記憶していて、後記カウンタCTに対して消灯時間に応じた初期値を付与する。
図5は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置の一実施形態における消灯時間に対するカウンタ初期値の関係を決定するテーブルデータを示すグラフである。
図6は、同じく横軸を時間的に拡大して示すグラフである。
各図において、横軸は消灯時間[秒]を、縦軸はカウンタ初期値を、それぞれ示す。上記の関係は、点灯する高圧放電ランプの特性により左右されるので、ここでは実験によりテーブルデータを求め、それをグラフ化したものである。
カウンタCTは、点灯検出部LDの検出出力に基づいて後記直流点灯時間タイマDVTおよび目標ランプ電力演算回路TOに初期値を送出する。カウンタ動作を開始するが、初期値設定回路IVSの出力であるカウンタ初期値に応じて、予め動作時間がテーブルデータとしてメモリに記憶していて、カウンタ初期値に応じて決定される直流電圧印加時間の間動作を継続する。
直流点灯時間タイマDVTは、点灯検出部LDの検出出力に基づいて時間をカウント開始するが、カウンタ初期値に応じて予め直流点灯時間がテーブルデータとしてメモリに記憶されていて、カウンタ初期値により決定される直流点灯時間の間、切換手段SW2を図1において下側に切り換えているが、カウンタCTからのカウンタ出力が直流点灯加時間に達したときに、切換手段SW2を図1において上側に切り換える。
図7は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置の一実施形態におけるカウンタ初期値に対する直流電圧印加時間の関係を決定するテーブルデータを示すグラフである。
図において、横軸はカウンタ初期値を、縦軸は直流点灯時間[m秒]を、それぞれ示す。上記の関係は、点灯する高圧放電ランプの特性により左右されるので、ここでは実験によりテーブルデータを求め、それをグラフ化したものである。
イグナイタIGは、慣用の構成であり、電源スイッチSW1が投入されることにより動作を開始して、所要の始動パルスを発生する。発生した始動パルスは、後述する高圧放電ランプHPLに印加される。
次に、本発明の回路動作を図示の本実施形態を参照して説明する。
まず、低温始動時の回路動作について説明する。この場合においては、前回の消灯時から十分に時間が経過しているため、高圧放電ランプHPLが少なくとも室温程度まで冷却している。このような状態において、電源スイッチSW1が投入されると、直流点灯時間制御部DCCのカウンタCTが初期値設定回路IVSのカウンタ初期値を読む。ところが、図5から理解できるように、消灯時間タイマLOTの出力値が十分に大きいので、カウンタ初期値は0である。
次に、カウンタ初期値に基づき、ランプ電力制御部LPCの目標ランプ電力演算回路TOが目標供給ランプ電力を図4の目標供給ランプ電力パターンに示すテーブルデータに基づいて120Wに設定する。また、切換手段SW2は、直流電圧印加時間タイマDVTにより、図1において下側に操作されている。このため、インバータDC/ACのスイッチング手段Q2およびQ5がオンし、Q3およびQ5がオフする。
一方、電源スイッチSW1の投入により、スイッチングレギュレータDC/DCの入力端に直流電源DCの電圧が印加されるので、スイッチングレギュレータDC/DCは動作を開始し、スイッチングレギュレータDC/DCの昇圧された直流出力電圧がイグナイタIGに印加される。これにより、イグナイタIGは、高電圧の始動パルスを発生する。そして、始動パルスは、高圧放電ランプHPLに直流電圧とともに印加される。この始動パルスにより、高圧放電ランプHPLは、その電極間が絶縁破壊を起こして始動し、引き続いてアーク放電に転移して点灯する。
高圧放電ランプHPLが点灯すると、スイッチングレギュレータDC/DCの直流出力電圧は、ほぼランプ電圧まで低下する。その結果、ランプ電圧検出部LVDは、この電圧低下をもって高圧放電ランプHPLが点灯したことを検出して、消灯時間タイマLOT、カウンタCTおよび直流点灯時間タイマDVTに通知する。この通知により、カウンタCTは、直流点灯時間タイマDVTにカウンタ初期値が0であったことを通知するとともに、カウントを開始する。
一方、直流点灯時間タイマDVTは、CTから通知を受けると、カウンタからCT初期値の送出を受けると、図4に示すテーブルデータに基づいて、直流点灯時間を50m秒と決定し、その間切換手段SW2を上記の状態に維持する。なお、この場合の直流点灯時間を15m秒程度にすることもできる。
他方、上記と同時にランプ電圧検出部LVDおよびランプ電流検出部LCDの検出出力が実ランプ電力演算回路AOに入力され、高圧放電ランプHPLのランプ電力にほぼ等しい値が実供給ランプ電力として演算される。そして、実供給ランプ電力と、目標ランプ電力演算回路TOから出力された目標供給ランプ電力とが差動増幅器DAに制御入力し、それらが比較演算される結果、差の電力に応じた制御信号が出力されてスイッチングレギュレータDC/DCのゲートドライブ信号発生回路GDGに制御入力する。ゲートドライブ信号発生回路GDGは、差動増幅器DAの出力に応じてゲートドライブ信号を差の電力が0になるようにPWM制御する。
すなわち、図4に示す目標供給ランプ電力パターンに沿って目標ランプ電力に等しいランプ電力が高圧放電ランプHPLに供給される。なお、高圧放電ランプHPLの点灯後、カウンタCTのカウントの進行に伴って目標供給ランプ電力は、安定点灯に達した後には図4に示すテーブルデータに沿って徐々に低減していき、定格ランプ電力に落ち着く。
そうして、高圧放電ランプHPLが点灯し、定格ランプ電力40Wの3倍である120Wのランプ電力が初期供給ランプ電力として供給され、50msの間直流点灯することにより、放電容器1の内部温度が急激に上昇し、これに伴って放電媒体の金属ハロゲン化物の蒸発が活発になり、発光効率が上昇するとともに、発生光量が増大して、図8に示すように、点灯開始4秒間で安定点灯時の光束の80%以上に到達する。しかし、カウンタCTは、カウント動作を開始してカウントアップするので、図4のテーブルデータに基づいて目標ランプ電力が順次更新され、次第に安定状態へと移行していく。そして、短時間で安定時の発光光量に落ち着く。安定した後は、発光光量が一定に維持される。
図8は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置の一実施形態における点灯時間に対する発光光量の関係を示すグラフである。
図において、横軸は点灯時間[秒]を、縦軸は安定点灯時を100%とする発光光量[%]を、それぞれ示す。なお、図において、点灯時間0秒の時点にパルス状の強い発光が現れているのは、始動パルスの印加により高圧放電ランプHPLが始動した瞬間を示している。
次に、高温始動時の回路動作について説明する。
この場合は、高圧放電ランプHPLが短時間(以下、5秒間として説明する。)消灯して再始動されるようなときである。このため、消灯前の点灯による余熱で相当な高温状態にあり、金属蒸気圧も高い。
したがって、消灯時間タイマLOTの出力値が5[秒]なので、図6から理解できるように、初期値設定回路IVSはカウンタ初期値18をカウンタCTに与える。
一方、目標ランプ電力演算回路TOは、カウンタCTからカウンタ初期値18が通知されるので、図4に示すテーブルデータに基づいて点灯初期の目標供給ランプ電力を52Wに設定する。
他方、電源スイッチSW1のオンによりスイッチングレギュレータDC/DCの直流出力電圧によってイグナイタIGが動作して始動パルスが発生すると、高圧放電ランプHPLが始動して点灯する。点灯すると、ランプ電圧検出部LVDがそれを検出して、カウンタCT、消灯時間タイマLOTおよび直流電圧印加時間タイマDVTに通知する。
カウンタCTは、この通知を受けると、カウント動作を開始するとともに、カウンタ初期値を直流点灯時間タイマDVTおよび目標ランプ電力演算回路TOに送出する。そして、目標ランプ電力演算回路TOは、上述のように点灯初期の目標供給ランプ電力を52Wに設定するので、高圧放電ランプHPLは52Wで点灯開始する。しかし、カウンタCTは、カウント動作を開始してカウントアップするので、図4の目標供給ランプ電力パターンに沿ったテーブルデータに基づいて目標ランプ電力が順次更新され、次第に安定状態へと移行していく。
ところで、直流点灯時間タイマDVTは、初期値を元にして時間をカウントし、図7に示す入出力特性が予め付与されているので、直流点灯時間を300m秒と決定する。なお、この場合の直流点灯時間を100m秒程度にすることもできる。直流点灯時間が終了すると、直流点灯時間タイマDVTは切換手段SW2を図において上側に切り換える。これにより、インバータDC/ACが動作するので、交流が発生して高圧放電ランプHPLに印加され、以後高圧放電ランプHPLは交流点灯を行う。
そして、直流点灯時間の経過に伴って順次目標供給ランプ電力を図4の目標供給ランプ電力パターンに沿ったテーブルデータに基づいて低減していき、定格ランプ電力に収斂していく。
図9は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置の一実施形態における消灯時間と初期供給ランプ電力および直流点灯時間との関係を概念的に示すグラフである。
図において、横軸は消灯時間を、縦軸は初期供給ランプ電力および直流点灯時間を、それぞれ示す。図において、曲線Aは初期供給ランプ電力、曲線Bは直流点灯時間を、それぞれ示す。
図から理解できるように、初期供給ランプ電力と直流点灯時間とは、消灯時間に対して相反的な関係にあり、これが本発明における特徴の1つである。
図10は、本発明の高圧放電ランプ点灯装置の一実施形態における実施例の初期供給ランプ電力と点灯時間の関係を示すグラフである。
図において、横軸は初期供給ランプ電力(W)を、縦軸は直流点灯時間(秒)を、それぞれ示す。なお、図において、曲線Cはランプ1を、曲線Dはランプ2を、それぞれ示す。
図11は、本発明の自動車用ヘッドライト装置の一実施形態を示す斜視図である。
図12は、同じく高圧放電ランプを示す正面図である。
各図において、11はヘッドライト装置本体、12は高圧放電ランプ、13A、13Bは高圧放電ランプ点灯装置である。
ヘッドライト本体11は、自動車用ヘッドライト装置から高圧放電ランプ12および高圧放電ランプ点灯装置13A、13Bを除いた残余の部分をいい、前面透過パネル11a、リフレクタ11b、11c、ランプソケット11dおよび取付部11eなどから構成されている。前面レンズ11aは、自動車の外面と合わせた形状をなし、所要の光学的手段たとえばプリズムを備えている。リフレクタ11b、11cは、各高圧放電ランプ12ごとに配設されていて、それぞれに要求される配光特性を得るように構成されている。ランプソケット11dは、高圧放電ランプ点灯装置の出力端に接続し、高圧放電ランプ12の口金12dに接続する。取付部11eは、ヘッドライト装置本体11を自動車の所定の位置に取り付けるための手段である。
高圧放電ランプ12は、発光管12a、外管12b、リード線12cおよび口金12dなどから構成されている。発光管12aは、図2および図3に示す構造を備え、一方の端部で口金12dに指示されている。外管12bは、発光管12aの外側を包囲している。リード線12cは、発光管12aの他方の端部から導出され、発光管12aに沿って口金に接続している。なお、12c1は、絶縁チューブである。口金12dは、ヘッドライト装置本体11のリフレクタ11b、11cに、その背面から装着されるとともに、口金12dの背面からランプソケット11dを接続する。そうして、2灯の高圧放電ランプ12がヘッドライト装置本体11に装着されて、4灯式のヘッドライト装置が構成される。各高圧放電ランプ12の発光部は、ヘッドライト装置本体11のリフレクタ11b、11cの焦点にほぼ位置する。
高圧放電ランプ点灯装置13A、13Bは、それぞれ図1に示す構成を備えていて、金属製容器13a内に収納されているとともに、高圧放電ランプ12を付勢して点灯させる。
そうして、本発明の自動車用ヘッドライト装置においては、水銀を含まない高圧放電ランプおよび請求項1の高圧放電ランプ点灯装置を備えていることにより、環境負荷の大きい水銀を封入していなくても光束立ち上がりが早くて、しかも高圧放電ランプの寿命短縮が生じにくい自動車用ヘッドライト装置が得られる。
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