JP4175186B2 - 排ガス浄化用触媒とその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の排気系などに配置されて排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関し、詳しくは排ガス中の酸素濃度の変動に関わらず安定した浄化活性を有する排ガス浄化用触媒とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
排ガス浄化用触媒(三元触媒)は、例えばコージェライト等の耐熱性セラミックスからなる担体基材と、この担体基材上に形成された活性アルミナ等からなる触媒担持層と、この触媒担持層に担持されたPt等の貴金属と、から構成されている。この三元触媒は、内燃機関の排ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化浄化し、窒素酸化物(NOx )を還元浄化する。
【0003】
ところが、運転条件などによって排ガス中の酸素濃度が大きく変動するため、三元触媒においては酸化と還元の浄化活性が不安定となる場合がある。そこで触媒担持層にセリアを添加することが行われている。セリアは、酸化雰囲気下では酸素を貯蔵し、還元雰囲気下では酸素を放出する酸素吸放出能(以下OSC という)をもち、これにより排ガス中の酸素濃度が変動しても安定した浄化活性が得られる。
【0004】
また、セリアを含む三元触媒は、 800℃以上の高温下で使用されると、セリアの結晶成長とそれに伴う貴金属の粒成長によって、OSC が低下しやすい。このため、セリアの結晶成長を抑制して高いOSC を維持するため、セリアとジルコニアの固溶体を用いることも行われている。
【0005】
しかし近年のエンジン性能の向上と高速走行の増加に伴い、排ガス温度が著しく上昇している。そのため、使用時の排ガス浄化用触媒の温度も従来に比べてかなり上昇し、セリアとジルコニアの固溶体を用いても貴金属の粒成長を抑制することが困難となっている。
【0006】
そこで特開平08−131830号公報には、アルミナ粒子にPtを担持し、さらにその表面をセリア層で覆った排ガス浄化用触媒が提案されている。この排ガス浄化用触媒によれば、アルミナは耐熱性に優れているためアルミナに担持されたPtは粒成長が抑制される。そしてセリア層によりリーン雰囲気でもPtが酸化白金となるのが抑制され、かつセリア層によって酸化白金の気相移動が抑制されるので、Ptの粒成長がさらに抑制される。
【0007】
しかしながら、この触媒においてもセリアの粒成長は抑制することが困難であるため、耐久後のOSC の低下を抑制することは困難である。
【0008】
また特開平10−202102号公報には、金属アルコキシドから調製されたAl−Ce−Zr複合酸化物担体に貴金属を担持した排ガス浄化用触媒が提案されている。Al−Ce−Zr複合酸化物を担体とすることで、セリアの粒成長が抑制され、耐久後のOSC の低下を抑制することができる。
【0009】
しかしながらこの触媒においては、貴金属に少なからず粒成長が生じ、耐久後の浄化活性の低下をさらに抑制することは困難であった。また貴金属を有効に利用しているとはいえず、OSC の発現に寄与しない貴金属が相当量存在することも明らかとなった。
【0010】
【特許文献1】
特開平08−131830号
【特許文献2】
特開平10−202102号
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、担持されている貴金属の粒成長をさらに抑制するとともに、貴金属を効率良くOSC の発現に対して利用することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の排ガス浄化用触媒の特徴は、OSC を有する酸素吸放出材粒子と酸素吸放出材粒子の表面の少なくとも一部を覆うアルミナ層とからなる複合粒子を含む担体と、担体の少なくともアルミナ層に担持された貴金属と、を含んでなることにある。
【0013】
酸素吸放出材粒子は少なくともセリアを含むことが望ましく、さらにジルコニアを含むことが望ましい。
【0014】
また本発明の排ガス浄化用触媒は、貴金属がPtである場合に特に効果的である。
【0015】
アルミナ層は厚さが1〜50nmであることが望ましく、酸素吸放出材粒子の表面の50%以上を覆っていることが望ましい。
【0016】
そして上記排ガス浄化用触媒を製造できる本発明の製造方法の特徴は、OSC を有する酸素吸放出材粒子にアルミニウム系カップリング剤を付着させ焼成することで酸素吸放出材粒子の表面の少なくとも一部を覆うアルミナ層を形成した複合粒子よりなる担体を調製し、その担体に貴金属を担持することにある。
【0017】
本発明の製造方法においても、酸素吸放出材粒子は少なくともセリアを含むことが望ましく、さらにジルコニアを含むことが望ましい。またアルミナ層は厚さが1〜50nmであることが望ましく、酸素吸放出材粒子の表面の50%以上を覆っていることが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
アルミナとセリア−ジルコニア固溶体におけるPtの粒成長の起こり易さを知るため、本願発明者らは、共沈法により製造されたAl−Ce−Zr複合酸化物粒子に対してPtを担持した触媒について 800℃でのリッチ/リーン繰り返し耐久試験を行い、その後のPt粒径をSTEMで観察した。
【0019】
先ず担体の分布をSTEMの EDXマッピングなどを用いて調べたところ、Al−Ce−Zr複合酸化物粒子は Al2O3とCeO2−ZrO2固溶体とが共存する領域と、 Al2O3のみが存在する領域とを有することがわかった。
【0020】
次にPtの粒径を観察したところ、CeO2−ZrO2固溶体上のPt粒子は最大15nm程度と大きく2nm以下の微細なPt粒子は全く観察されなかった(図1)のに対し、 Al2O3上では2nm以下の微細なPt粒子が多く観察された(図2)。このことから、PtはCeO2−ZrO2固溶体上より Al2O3上に担持された方が粒成長し難いと判断される。
【0021】
一方OSC は、PtとCeO2とが近接する部位で発現されることがわかっている。つまりCeO2と共存しない Al2O3上に担持されたPtは、粒成長が抑制され劣化が防止されているにも関わらず、三元触媒の最も重要な特性の一つであるOSC の発現には寄与しない。したがって従来のAl−Ce−Zr複合酸化物粒子にPtを担持した従来の触媒では、粒成長しにくいPtをもちながら、その一部(CeO2から乖離した Al2O3上のPt)はOSC の発現に寄与することができないという不具合があった。
【0022】
そこで本発明の排ガス浄化用触媒では、OSC を有する酸素吸放出材粒子と酸素吸放出材粒子の表面の少なくとも一部を覆うアルミナ層とからなる複合粒子を含む担体の、少なくともアルミナ層に貴金属を担持している。
【0023】
アルミナ層に担持された貴金属は、上記したように粒成長が抑制されているので、耐久後も微細な粒子として存在し表面の活性点が多く存在する。したがって耐久後の浄化活性の低下が抑制される。またアルミナ層はアモルファス状で多孔質であるので、アルミナ層に担持された貴金属に吸着した酸素は、アルミナ層の細孔を容易に通過して内部の酸素吸放出材粒子に吸蔵される。また酸素吸放出材粒子から放出された酸素は、アルミナ層の細孔を容易に通過し貴金属を介して放出される。これにより貴金属は、OSC の発現に十分に寄与する。したがって耐久後にも多くの微細な貴金属がOSC の発現に寄与できるので、耐久後にも高い浄化活性が発現される。
【0024】
OSC を有する酸素吸放出材粒子としては、CeO2、PrO4などの希土類金属酸化物、 NiO、 Fe2O3、 CuO、 Mn2O5などの遷移金属酸化物などを用いることができる。中でもCeO2が望ましく、ZrO2で安定化されたCeO2−ZrO2固溶体を用いることが特に好ましい。
【0025】
この酸素吸放出材粒子の粒径には特に制限がないが、一般的な酸化物粉末の粒径である3×10-〜3μm程度とするのがよい。
【0026】
酸素吸放出材粒子の表面のアルミナ層は薄肉であるほど好ましいが、平均厚さが1〜50nmであるのがよい。平均厚さが1nm未満では、内部の酸素吸放出材の影響を受けて貴金属が粒成長し易くなり、平均厚さが50nmを超えると酸素のアルミナ層の通過が困難となりOSC が低下する場合がある。
【0027】
またアルミナ層は、酸素吸放出材粒子の表面の少なくとも一部を覆っていればよいが、酸素吸放出材粒子の表面積の50%以上を覆っていることが望ましい。アルミナ層が覆う面積が50%未満であると、アルミナ層に担持される貴金属量が少ないために、耐久後にも微細な貴金属の量が少なくなり耐久後の活性の低下が大きくなる。
【0028】
なお担体は、アルミナ層が形成された酸素吸放出材粒子よりなる複合粒子を含めばよく、この複合粒子のみから構成してもよいし、 Al2O3,TiO2,ZrO2,SiO2など他の多孔質酸化物粉末を混合してもよい。しかし複合粒子が50体積%以上含まれるように、他の多孔質酸化物粉末の混合量は控えるべきである。
【0029】
担持される貴金属としては、Pt,Rh,Pd,Irなどの一種あるいは複数種を用いることができるが、特に粒成長し易いPtを用いた場合に本発明は効果的である。また貴金属の担持量は、触媒1リットル当たり0.05〜10gの範囲が適当である。これより少ないと十分な活性が得られず、これより多く担持しても効果が飽和するとともにコスト面で不具合がある。
【0030】
本発明の排ガス浄化用触媒を製造するには、OSC を有する酸素吸放出材粒子にアルミニウム系カップリング剤を付着させる。このアルミニウム系カップリング剤としては、例えばアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどを用いることができる。付着方法は、乾式法又は湿式法あるいはインテグラルブレンド法を用いて行うことができ、その付着量を調整することで形成されるアルミナ層の付着面積と厚さを調整することができる。
【0031】
アルミニウム系カップリング剤は、無機物である酸素吸放出材粒子の表面に化学的に結合し、Alを含む有機質の被膜を形成する。したがってこれを焼成することで、有機質が焼失するとともにAlが酸化され、アルミナ層が形成される。焼成条件は、有機質が焼失する条件であればよい。
【0032】
次に、アルミナ層が形成された酸素吸放出材粒子よりなる複合粒子を含む担体に貴金属を担持する。この担持方法は従来の触媒の製造方法と同様でよく、吸着担持法あるいは吸水担持法を用いることができる。吸着担持法を用いれば、アルミナ層に貴金属が優先的に担持されるので、特に好ましい。
【0033】
なお本発明の排ガス浄化用触媒は、複合粒子を含む担体に貴金属を担持した触媒粉末からペレットを成形してペレット触媒としてもよいし、ハニカム基材やフォーム基材に触媒粉末からコート層を形成することもできる。ハニカム触媒やフォーム触媒とする場合には、複合粒子を含む担体からコート層を形成し、その後に貴金属を担持してもよい。
【0034】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
【0036】
【化1】
【0037】
上式に示すアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート12gをn-プロパノール30mlに溶解し、共沈法で調製されたCeO2−ZrO2固溶体粉末 240gを混合して撹拌した。CeO2−ZrO2固溶体の組成は、モル比でCeO2:ZrO2=1:1である。
【0038】
よく撹拌した溶液をミリング容器に移し、セラミックボールを適当数入れて3時間ミリングした。ミリング終了後、デカンテーションにより溶媒をある程度除去し、エタノールで洗浄後、遠心分離により溶媒を除去した。この洗浄を3回繰り返した後、乾燥し 500℃で2時間焼成した。
【0039】
得られた担体粉末は、電子顕微鏡観察の結果、図3に示すように、平均粒径約 100nmのCeO2−ZrO2固溶体粒子(CZ粒子)の全表面に平均厚さ2〜5nmの Al2O3層が被覆された複合粒子から構成されていた。 Al2O3層は、アモルファス状で多孔質であった。
【0040】
この担体粉末に所定濃度のジニトロジアンミン白金溶液の所定量を含浸させ、蒸発乾固後、 500℃で2時間焼成してPtを担持した触媒粉末を得た。Ptの担持量は2重量%である。そして定法によりペレット形状に成形し、本実施例のペレット触媒を調製した。
【0041】
(比較例1)
実施例1と同様のCeO2−ZrO2固溶体粉末に所定濃度のジニトロジアンミン白金溶液の所定量を含浸させ、蒸発乾固後、 500℃で2時間焼成して触媒粉末を得た。Ptの担持量は2重量%である。そして定法によりペレット形状に成形し、本比較例のペレット触媒を調製した。
【0042】
(比較例2)
硝酸セリウム,オキシ硝酸ジルコニウム,硝酸アルミニウムを所定比率で混合した混合水溶液から共沈法にて沈殿を生成し、乾燥・焼成してAl−Ce−Zr複合酸化物粉末を調製した。得られたAl−Ce−Zr複合酸化物粉末の組成は、モル比で Al2O3:CeO2:ZrO2=1:1:1である。
【0043】
このAl−Ce−Zr複合酸化物粉末を用い、実施例1と同様にしてPtを担持した。Ptの担持量は、含まれるCeO2−ZrO2に対して実施例1と同一となる量である。そして定法によりペレット形状に成形し、本比較例のペレット触媒を調製した。
【0044】
<試験・評価>
各ペレット触媒を評価装置にそれぞれ5g充填し、λ=0.21のリーンガスとλ=3.98のリッチガスを、リッチ/リーン=1分/1分,流量5L/分の条件で交互に流しながら 800℃で5時間処理する耐久試験を行った。
【0045】
耐久試験後の各ペレット触媒を評価装置にそれぞれ3g充填し、O2を1%含むN2ガスと、COを2%含むN2ガスとを1分間隔で交互に切り替えながら流量20L/分,温度 400℃で流し、重量変化を測定することでそれぞれ酸素吸蔵量を測定した。これを5回繰り返し、2〜4回目の酸素吸蔵量の平均値を図4に示す。
【0046】
図4より、実施例1の触媒は各比較例の触媒に比べて高いOSC を示し、耐久試験後にも高いOSC を示していることがわかる。これはCeO2−ZrO2固溶体粒子の表面に Al2O3層を形成した担体を用いたことで、耐久試験時のPtの粒成長が抑制され、その微細なPtがCeO2−ZrO2固溶体のOSC の発現に寄与したためであると考えられる。
【0047】
【発明の効果】
すなわち本発明の排ガス浄化用触媒によれば、耐久後にも高いOSC が発現され、高い浄化活性を維持することができる。そして本発明の製造方法によれば、そのような排ガス浄化用触媒を容易にかつ安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ptを担持したCeO2−ZrO2固溶体の耐久試験後の粒子構造を示すTEM 写真である。
【図2】Ptを担持した Al2O3の耐久試験後の粒子構造を示すTEM 写真である。
【図3】本発明に一実施例で調製された複合粒子の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】実施例及び比較例の排ガス浄化用触媒の耐久試験後のOSC を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 酸素吸放出能を有する酸素吸放出材粒子と該酸素吸放出材粒子の表面の少なくとも一部を覆うアルミナ層とからなる複合粒子を含む担体と、該担体の少なくとも該アルミナ層に担持された貴金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
  2. 前記酸素吸放出材粒子は少なくともセリアを含む請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
  3. 前記酸素吸放出材粒子はさらにジルコニアを含む請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
  4. 前記貴金属は白金である請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
  5. 前記アルミナ層は厚さが1〜50nmである請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
  6. 前記アルミナ層は前記酸素吸放出材粒子の表面の50%以上を覆う請求項1〜5のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
  7. 酸素吸放出能を有する酸素吸放出材粒子にアルミニウム系カップリング剤を付着させ焼成することで該酸素吸放出材粒子の表面の少なくとも一部を覆うアルミナ層を形成した複合粒子よりなる担体を調製し、該担体に貴金属を担持することを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
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