JP4173941B2 - 油脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼き物、炒め物等の調理に適した油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より焼き物や炒め物等の調理には、素材に効率よく熱を伝達させ、また、加熱による調理器具への焦げ付き等を防ぎ、食品へコク味を付与するなどの目的で食用油脂が利用されている。このうち液状油としては菜種油、ハイオレイック菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ミッドオレイックひまわり油、米油、ゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、落花生油、中鎖脂肪酸(以下MCT)、亜麻仁油等が使用され、固形脂としてはパーム油、ラード等が多く使用されてきたが、調理中に油が跳ねやすく、度々周囲を汚したり、調理者が火傷を負う等といった問題が発生しており、改善が望まれてきた。
【0003】
これらの問題を解決する試みとして、近年、これらの油脂にレシチンやショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤を配合して、油跳ねや焦げ付きを軽減することができる油脂組成物が提案されており(特開平4-187048、特開平4-271748、特開平7-147902、特開平7-16051、特開平8-228677、特開平9-52865)、その中の一部が既に上市され、家庭等で使用が増えてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、レシチンを使用した油脂組成物は調理の際に泡が立ちやすく、吹きこぼれる危険があるためフライ調理には使用できず、また、高温加熱による褐変や分解物による異臭のため、外観や安全性、風味等の面で十分な品質を有しているとは言えなかった。
また、ショ糖脂肪酸エステルの場合は油に対する溶解性の点で問題があり、曇りや不溶分の析出・沈殿等が見られるケースが少なくなく、特に本発明において必須であるHLBの範囲内(5.6〜15)では油に完全に溶解するショ糖脂肪酸エステルが非常に少ないため、保存性等の面で何かしらの問題が残り使用に適さない。
本発明の目的は、焼き物や炒め物等の調理における問題点やレシチン等の乳化剤を配合した油脂組成物の欠点を改善し、安全、かつ快適に調理が行え、得られる調理品の風味が良好である油脂組成物を得ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、食用油脂に対し特定のグリセリン脂肪酸エステルを含有させた油脂組成物が上記の機能を有する事を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の油脂組成物は(1)構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基量に占めるC14〜C24の脂肪酸残基量の割合が80質量%〜100質量%、及び(2)構成グリセリン脂肪酸エステルの平均HLBが5.6〜15を満たすグリセリン脂肪酸エステル1種または2種以上を食用油脂中に0.1質量%〜10質量%含有する油脂組成物に関する。
好ましくは、グリセリン脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸モノエステルまたはジエステル、グリセリン有機酸脂肪酸モノエステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物である油脂組成物に関し、好ましくは、構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基中のC2〜C12の脂肪酸残基量が20質量%以下である油脂組成物に関し、好ましくは、平均重合度1であるグリセリン脂肪酸エステル1種以上、かつ平均重合度4〜10であるグリセリン脂肪酸エステルを1種以上含有する油脂組成物に関する。
【0006】
上記グリセリン脂肪酸エステルを、食用油脂に含有させることで本発明の油脂組成物が得られ、通常の食用油脂と比較しても保存性・外観上の遜色はなく、0℃において少なくとも5.5時間、透明状態を維持することができる。
本発明の油脂組成物は、炒め物調理に用いた場合、調理対象物への吸油量が少なく、かつ、離型性が良好なため、少量で焦げつきなく充分に調理ができ、しかも泡立ちもなく、風味も良好である。さらに、揚げ物調理においても、レシチン配合油のような泡立ちが無く安全に使用でき、例えば天ぷらでも花咲がよく、食感良好に仕上がり、フライなどでも良好なサク味を有した仕上がりとなる。
また、本発明の油脂組成物に含まれるグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基中のC2〜C12の脂肪酸残基量が20質量%以下であるため、調理品の風味がよく、また、炒め物や揚げ物を調理している最中に、C2〜C12の脂肪酸残基が由来で発生する不快な臭いが非常に少なく、調理者への負担が軽い。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の油脂組成物について記述する。
本発明の油脂組成物は下記(1)〜(2)を満たすグリセリン脂肪酸エステル1種または2種以上を食用油脂中に0.1質量%〜10質量%含有する油脂組成物である。
(1)構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基量に占めるC14〜C24の脂肪酸残基量の割合が80質量%〜100質量%
(2)構成グリセリン脂肪酸エステルの平均HLBが5.6〜15
上記構成をとることで、本発明の炒め物等に適した油脂組成物が得られる。
【0008】
グリセリン脂肪酸エステルを食用油脂中に含有する油脂組成物とは、好ましくは、グリセリン脂肪酸エステルを食用油脂中に溶解させた油脂組成物、すなわち、分散後に透明な状態を保っており、曇りや不溶分が見られない状態にした油脂組成物がよい。
グリセリン脂肪酸エステルを食用油脂中に溶解させる方法は特に限定されるものではないが、例えば、食用油脂を50〜80℃にした後、上記のグリセリン脂肪酸エステルを溶解させることで、好適に得ることができる。
構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基量に占めるC14〜C24の脂肪酸残基量の割合が多い程油脂組成物の風味が向上するため、本発明の油脂組成物には、構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基量に占めるC14〜C24の脂肪酸残基量の割合が80質量%〜100質量%、好ましくは85質量%〜100質量%、さらに好ましくは90質量%〜100質量%のグリセリン脂肪酸エステル1種または2種以上が含有される。
また、使用するグリセリン脂肪酸エステル1種または2種以上のそれぞれについて、構成脂肪酸残基量に占めるC14〜C24の脂肪酸残基量が80質量%〜100質量%、好ましくは85質量%〜100質量%、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であることがより好ましい。
本発明において、構成脂肪酸残基量とは、GLC(ガスクロマトグラフィー)を使用したTMS/GLC法(FAO/WHO規定に準拠)にて分析した脂肪酸組成から算出した数値である。グリセリン脂肪酸エステル1種または2種以上の混合物として数値を算出できるが、混合物の場合は、個々について算出した数値に混合比率を乗じて算出することもできる。
【0009】
また、逆に、構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基量に占めるC2〜C12の脂肪酸残基量が20質量%以下、好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である油脂組成物に関してはC2〜C12の脂肪酸残基が由来で発生する不快な臭いが非常に少ないため好ましい。個々の構成グリセリン脂肪酸エステルが上記条件を満たすことがさらに好ましい。
【0010】
グリセリン脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸モノエステルまたはジエステル、グリセリン有機酸脂肪酸モノエステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物である場合、本発明の油脂組成物として好ましい。
さらに好ましいのは、3種類以上かつそのうち少なくとも1種類がグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルの場合である。
ここで、グリセリン有機酸脂肪酸モノエステルを構成する有機酸とは、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸を指すが、風味や溶解性の面でクエン酸のグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルがより好ましい。
【0011】
本発明に含まれるグリセリン脂肪酸エステルは、構成グリセリン脂肪酸エステルの平均HLBが5.6〜15の範囲内であることが必要であり、6〜10の範囲内であることがより好ましい。この範囲より上回る場合は油へ溶解ぜず、曇りや不溶分の析出が見られる。また、この範囲を下回る場合は、油には溶解するが、油跳ね防止や吸油防止等、本発明の特徴である様々な機能を有しない。
ここで、HLBとは、グリセリン脂肪酸エステル中の親水基と親油基のバランスを表しており、分子中の親水基が0%の時を0、100%の時を20として等分したものであり、実験的に求めた数値を使用した。
構成グリセリン脂肪酸エステルの平均HLBとは、構成グリセリン脂肪酸エステルの個々のHLBに混合比率を乗じて算出したものである。
【0012】
また、本発明に含まれるグリセリン脂肪酸エステルは、平均重合度1であるグリセリン脂肪酸エステル1種以上、かつ平均重合度4〜10であるグリセリン脂肪酸エステルを1種以上含有する場合、つまり、平均重合度が1のものと4〜12のものをそれぞれ含む場合、本発明の効果が安定的に発揮されるため好ましい。
本発明において、平均重合度とは、水酸基価から算出した数値である。
【0013】
本発明において、食用油脂は、菜種油、ハイオレイック菜種油、大豆油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ミッドオレイックひまわり油、米油、ゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、落花生油、MCT、亜麻仁油等の液状油やパーム油、ラード等の固形脂を使用できる。これらの油脂は単独でも任意の割合の混合物でも良い。なお、本発明の所望の効果、すなわち、調理対象物への吸油防止・油分の低減、離型性、油跳ね、花咲性、調理品の保存後の食感、グリセリン脂肪酸エステルの油溶性、および低温での保存安定性等を向上させるには、エステル交換した油脂を使用するとよい。エステル交換に供する油脂としては前記の食用油脂を使用することができる。
【0014】
本発明の油脂組成物は、食用油脂に前記のグリセリン脂肪酸エステルを溶解してなるものであり、それらの添加量は合計して0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜4.0質量%である。添加量が少ないと、特に炒め物調理に使用した場合、調理素材への吸油防止効果および焦げつき防止効果が充分でなくなり問題となる。また、添加量が多いと効果は顕著に発現するが、10質量%を超えると、特に揚げ物調理に用いた場合にグリセリン脂肪酸エステルの風味が強く感じられるようになり、調理品の風味への影響が少なくない。また、発煙点が低下するために、調理への適性が著しく低下する。さらに耐冷性も悪くなり、保存中に結晶や沈殿がでやすくなるため、保存性も低下する。
【0015】
上記構成をとることにより、相乗効果により、吸油防止、焦げ付き防止、油跳ね防止、耐冷性の向上等の効果が得られ、本発明の炒め物等に適した油脂組成物が得られる。
本発明の油脂組成物、特にグリセリン脂肪酸エステルを完全に溶解させたものは、通常の食用油脂と比較しても保存性・外観上の遜色はなく、0℃において少なくとも5.5時間、透明状態を維持することができる。
この様にして得られた本発明の油脂組成物は、炒め物調理に用いた場合、調理対象物への吸油量が少なく、かつ、離型性が良好なため、少量で焦げつきなく充分に調理ができ、しかも泡立ちもなく、風味も良好であるので好ましい。さらに、揚げ物調理においても、レシチン配合油のような泡立ちが無く安全に使用でき、例えば天ぷらでも花咲がよく、食感良好に仕上がり、フライなどでも良好なサク味を有した仕上がりとなる。
また、特に、本発明の油脂組成物に含まれるグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基中のC2〜C12の脂肪酸残基量が20質量%以下であるため、炒め物や揚げ物を調理している最中に、C2〜C12の脂肪酸残基が由来で発生する不快な臭いが非常に少なく、調理者への負担が軽い。また、調理品の風味に対する影響も非常に少ないので好ましい。
【0016】
本発明の油脂組成物には、加熱調理に用いた際の焦げ付き防止効果や調理素材への吸油防止効果、揚げ物での花咲向上効果などを増大させる目的で、グリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等)も併用できる。また、本発明の油脂組成物には目的に応じて、各種の抗酸化剤、フレーバー等を添加することができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。(以下、質量%を%と現す。)
実施例1〜2及び比較例1〜4
グリセリン脂肪酸エステルとして、HLBが6.0であるクエン酸モノグリセリド(ポエムK-37:理研ビタミン(株)製)とHLBが9.1であるグリセリンステアリン酸エステル(阪本薬品工業(株)製:SY-グリスターTS-750)とHLBが7.0のグリセリンエルカ酸エステル(三菱化学フーズ(株)製:リョートーポリグリエステルER-60D)とをそれぞれ(a)、(b)、(c)とした。また、レシチンとしてペースト状レシチン(レシチンDX:日清製油(株)製)を(d)とした。これらの各添加剤を菜種油(日清製油(株)製)100gに対してに表1に示した割合になるよう添加し、50〜80℃で攪拌、溶解して、各油脂組成物を調整した。この時、対照として無添加の菜種油を使用した。
【0018】
<調理評価方法の詳細>
(1)チャーハン
強火で30秒間予備加熱した鉄製フライパン(直径24cm)に油脂組成物15ccを計り取り、鶏卵(50g)を炒めた後、冷めたご飯(220g)、ネギ(10g)、焼き豚(80g)を炒め、食塩(少々)、醤油(7.5cc)で味付けした。
【0019】
(2)焼きそば
強火で30秒間予備加熱した鉄製フライパン(直径24cm)に油脂組成物15ccを計り取り、豚バラ肉(30g)、キャベツ(50g)、人参(30g)、玉葱(50g)を炒め、油脂組成物をさらに5cc加えた後、蒸し中華麺(150g)を炒め、粉末ソース(10g)で味付けした。
【0020】
(3)天ぷら
各油脂組成物700gを、内径21cm、深さ8cmの電気フライヤー(東芝(株)製:型番HGP-106)にいれ180℃まで加熱した。約15gの車エビ(3尾)に予め調整した天ぷら用生地(小麦粉100gを氷水170ccで手早く均質化したもの)を付着させ、前記各油脂組成物に投入し、3分間を目安に揚げ、天ぷらとした。
【0021】
<評価方法>
(1)焦げ付き(炒め物)
調理が終わったフライパンについて、目視にて焦げ付きの有無とその程度を観察した。評価はそれぞれ対照の菜種油と比較して「◎:非常に少ない、○:少ない、△:若干少ない、×:同等以下」という尺度で行った。
(2)油跳ね(炒め物、揚げ物)
調理中の油跳ねの状態と調理後のフライパン等調理器具周辺の汚れについて観察した。評価はそれぞれ対照の菜種油と比較して「◎:非常に少ない、○:少ない、△:若干少ない、×:同等以下」という尺度で行った。
(3)素材への吸油(炒め物)
調理後のフライパンに残った油脂組成物の量について、目視にてその程度を観察した。評価はそれぞれ対照の菜種油と比較して「◎:残油量が明らかに多い、○:残油量が少し多い、△:若干少ない、×:同等以下」という尺度で行った。
(4)泡立ち(炒め物、揚げ物)
調理中の泡立ち(油脂組成物由来)について、目視にてその程度を観察した。評価はそれぞれ対照の菜種油と比較して「◎:非常に少ない、○:少ない、△:ほぼ同等、×:同等以下」という尺度で行った。
(5)花咲
各油脂組成物で揚げた天ぷらを専門パネル20名による視認法で行った。表中の数値は各専門パネルが「1:優、2:良、3:可、4:不可」の尺度により与えた評点の平均値である。
(6)使用量
標準使用量(チャーハン:15cc、焼きそば:20cc)の1/2および1/3量で同様に調理を行い、対照の菜種油と比較した使用感について評価した。評価は「◎:対照以上に使い易い、○:対照と同等程度に使い易い、×:対照に比べて使いにくい(焦げ付きなどで調理が充分にできない)」という尺度で行った。
(7)耐冷性
各油脂組成物100gをガラス製のサンプル瓶に計り取り、0℃に保った氷中に5.5時間浸した後、白濁または不溶分が析出するか否かを確認した。評価は「◎:清澄、△:僅かだが白濁または不溶分の析出がある、×:白濁または不溶分の析出がある」という尺度で行った。
(8)風味
チャーハン、焼きそば、天ぷらについて、各油脂組成物における調理後のサンプルを試食し、対照の菜種油と比較して「◎:同等以上、△:若干、風味は異なるが殆ど問題ない程度、×:乳化剤の風味がはっきりと感じられ美味しくない」という尺度で行った。
(9)加熱臭
チャーハン、焼きそばおよび天ぷらの調理開始から終了までの臭いの強さについて官能による評価を行った。評価は対照の菜種油と比較して「◎:同等以下、○:油臭さや刺激臭などの異臭を若干感じるが、殆ど気にならない程度、×:油臭さや刺激臭などの異臭が強く、不快に感じる」という尺度で行った。
また、各油脂組成物を容200mlビーカー中に100ml程度計り取り、180℃に加熱した際の臭いについて、専門パネル20名による官能評価を行った。表中の数値は各専門パネルが「1:不快な臭いは殆ど感じられない、2:若干、不快な臭いが感じられる、3:かなり不快な臭いが感じられる」の尺度によって得た評点の平均値である。
【0022】
【表1】
Figure 0004173941
【0023】
【表2】
Figure 0004173941
【0024】
【表3】
Figure 0004173941
【0025】
これらの結果から炒め物調理において、レシチンを使用した油脂組成物(比較例1、2)は、不自然な泡立ちが見られ、風味の面でも好ましくなかった。また、添加量が0.1%に満たない場合(比較例3)は焦げ付き、泡立ち、吸油防止の面で充分な効果が得られず、添加量が10%を超える場合(比較例4)は風味の面で好ましくなかった。
本発明の範囲内の場合(実施例1、2)は、焦げ付き、油跳ね、吸油防止効果が充分発現しており、通常に比べて少ない使用量で調理が可能であり、不自然な泡立ちもなく、得られた調理品の風味は良好であった。
【0026】
【表4】
Figure 0004173941
【0027】
これらの結果から揚げ物調理において、レシチンを使用した油脂組成物(比較例1、2)は食品を投入直後に激しい泡立ちとともに吹きこぼれ、調理を続けることが不可能であった。また、添加量が0.1%に満たない場合(比較例3)は油跳ね、泡立ち、を防止する効果や花咲の改善効果もで充分でなく、添加量が10%を超える場合(比較例4)は風味の面で好ましく、また、発煙が多いため、調理者への負担が重く、得られた調理品の風味も好ましくなかった。
本発明の範囲内の場合(実施例1、2)は、油跳ね、泡立ちの吸油防止効果が充分発現しており、花咲も改善されて良好であった。また、得られた調理品の風味も良好であった。
【0028】
【表5】
Figure 0004173941
【0029】
これらの結果から耐冷性において、レシチンを使用した油脂組成物(比較例1、2)および添加量が10%を超えるもの(比較例4)は、結晶の析出や曇りが見られたが、本発明の範囲内では(実施例1、2)透明な状態を維持しており、充分な耐冷性を有していた。
【0030】
実施例3および比較例5〜6
グリセリン脂肪酸エステルとして、HLBが6.0であるクエン酸モノグリセリド(ポエムK-37:理研ビタミン(株)製)とHLBが9.1であるグリセリンステアリン酸エステル(阪本薬品工業(株)製:SY-グリスターTS-750)とHLBが7.0のグリセリンエルカ酸エステル(三菱化学フーズ(株)製:リョートーポリグリエステルER-60D)とHLB4.2のグリセリンオレイン酸エステル(阪本薬品工業(株)製:SY-グリスターPO-500)とHLB11.9のグリセリンラウリン酸エステル(阪本薬品工業(株)製:SY-グリスターML-310)をそれぞれ(a)、(b)、(c)、(e)、(f)とした。これらの各添加剤を菜種油(日清製油(株)製)100gに対してに表6に示した割合になるよう添加し、50〜80℃で攪拌、溶解して、各油脂組成物を調整した。この時、対照として無添加の菜種油を使用した。
【0031】
【表6】
Figure 0004173941
【0032】
【表7】
Figure 0004173941
【0033】
【表8】
Figure 0004173941
【0034】
【表9】
Figure 0004173941
【0035】
これらの結果から炒め物調理において、本発明の範囲外(HLB:比較例5、構成脂肪酸残基中のC2〜C12の脂肪酸残基量とC14〜C24の脂肪酸残基量の質量%:比較例6)の油脂組成物は、焦げ付き、油跳ね、吸油防止の面で充分な効果が得られず、特にC2〜C12の脂肪酸残基量が20%超える場合(比較例6)は風味の面で好ましくなかった。
本発明の範囲内の場合(実施例3)は、焦げ付き、油跳ね、吸油防止効果が充分発現しており、通常に比べて少ない使用量で調理が可能であり、不自然な泡立ちもなく、得られた調理品の風味は良好であった。
【0036】
【表10】
Figure 0004173941
【0037】
これらの結果から揚げ物調理において、本発明の範囲外(HLB:比較例5、構成脂肪酸残基中のC2〜C12の脂肪酸残基量とC14〜C24の脂肪酸残基量の質量%:比較例6)の油脂組成物は、油跳ね、泡立ち、花咲の改善の面で充分な効果が得られず、特にC2〜C12の脂肪酸残基量が20%超える場合(比較例6)は風味の面で好ましくなかった。
本発明の範囲内の場合(実施例3)は、油跳ね、泡立ち、花咲の改善効果が充分発現しており、得られた調理品の風味は良好であった。
【0038】
【表11】
Figure 0004173941
【0039】
これらの結果から、C2〜C12の脂肪酸残基量が20%超える場合(比較例6)は結晶が析出し沈殿していた。
本発明の範囲内の場合(実施例3)は透明な状態を維持しており、充分な耐冷性を有していた。
【0040】
【表12】
Figure 0004173941
【0041】
これらの結果から、調理中およびビーカーによる加熱における加熱臭の面で、C2〜C12の脂肪酸残基量が20%超える場合(比較例6)は不快な異臭を発し、食品の調理には適していない事が確認された。
【0042】
【発明の効果】
本発明の油脂組成物は、耐冷性に優れ、これを用いることにより焼き物や炒め物などの調理において、通常の使用量(無添加の植物油を使用して調理する場合の使用量)に比べて1/2〜1/3程度の少ない量で充分に調理が可能であり、油っこくないあっさりした風味に仕上げることができる。また、調理器具への焦げ付きが無く、かつ調理中の油跳ねを抑制できるためキッチンや換気扇の油汚れを低減でき、しかも、レシチン配合油と異なり、炒め物だけでなく、揚げ物調理にも安全に使用できる汎用性を持つものである。

Claims (5)

  1. 下記(1)〜(3)を満たすグリセリン脂肪酸エステル3種以上を食用油脂中に0.5質量%〜10質量%含有し、
    前記グリセリン脂肪酸エステルのうち少なくとも1種がグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルであり、
    前記グリセリン脂肪酸エステルが、平均重合度4〜10であるグリセリン脂肪酸エステルを1種以上含有するものである、
    焼き物または炒め物調理用油脂組成物。
    (1)構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基量に占めるC14〜C24の脂肪酸残基量の割合が80質量%〜100質量%
    (2)構成グリセリン脂肪酸エステルの平均HLBが5.6〜10
    (3)平均重合度4〜10であるグリセリン脂肪酸エステルの1種が、グリセリンエルカ酸エステルである
  2. グリセリン脂肪酸エステルが、グリセリン脂肪酸モノエステルまたはジエステル、グリセリン有機酸脂肪酸モノエステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれるものである請求項1に記載の焼き物または炒め物調理用油脂組成物。
  3. 構成グリセリン脂肪酸エステルの全構成脂肪酸残基量に占めるC2〜C12の脂肪酸残基量の割合が20質量%以下である請求項1または2に記載の焼き物または炒め物調理用油脂組成物。
  4. 前記グリセリン有機酸脂肪酸モノエステルが、グリセリンクエン酸脂肪酸モノエステルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼き物または炒め物調理用油脂組成物。
  5. グリセリン脂肪酸エステルを食用油脂中に溶解させ、0℃において少なくとも5.5時間、透明状態を維持するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼き物または炒め物調理用油脂組成物。
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