JP4173610B2 - 水溶性重合体の連続的製造方法 - Google Patents

水溶性重合体の連続的製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性重合体の連続的製造方法に関する。さらに詳しくは、洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤等として有用な、分子量が低くて、かつ分子量分布の狭い水溶性重合体を、生産性良く、連続的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体等の水溶性重合体は洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤等として有用な重合体であり、比較的低分子量で、かつ分子量分布の狭い重合体が好ましく用いられる。
上記水溶性重合体を製造する代表的な方法は、単量体成分を水系媒体中で連鎖移動剤および重合開始剤の存在下に重合するというものである。工業的規模で連続的に製造する方法も従来から提案されている。
【0003】
例えば、特開昭59−66407号公報には、複数個の攪拌型反応器を用いてアクリル酸/マレイン酸コポリマーを連続的に製造する方法が開示されているが、この方法では分子量が低く分子量分布の狭い重合体は得難く、また生産性が低いという欠点を有する。
特開昭60−28409号公報には、モーションレスミキサーを備えたループ型反応器を用いて不飽和カルボン酸(共)重合体を連続的に製造する方法が開示されているが、この方法では分子量が低く分子量分布の狭い重合体は得難く、また生産性が低く、さらに残留モノマーが多いという欠点を有する。
【0004】
特開昭62−81406号公報には、モーションレスミキサーと気液分離器を備えたループ型反応器を用いて不飽和カルボン酸(共)重合体を連続的に製造する方法が開示されているが、この方法も前記特開昭60−28409号公報と同様の欠点を有する。
特開昭62−91506号公報には、混合部、熱交換器、気液分離器、循環ポンプを設けたループ2基を使用して不飽和カルボン酸(共)重合体を連続的に製造する方法が開示されているが、この方法では分子量が低く分子量分布の狭い重合体は得難く、また生産性が低いという欠点を有する。
【0005】
特開平7−278206号公報には、攪拌型反応器1台によってアクリル酸/マレイン酸コポリマーを連続的に製造する方法が開示されているが、この方法では分子量が低く分子量分布の狭い重合体は得難く、また生産性が低く、また残留モノマーが多く、さらには重合促進剤(金属)の添加が必要で、製品の色調が悪化したり、使用量によってはゲル化するおそれがあり、安全性に不安が残るという欠点を有する。
【0006】
特開平8−193101号公報には、攪拌型反応器とモーションレスミキサーを直列につないで、アクリル酸/マレイン酸コポリマーを連続的に製造する方法が開示されているが、この方法では分子量が低く分子量分布の狭い重合体は得難く、また生産性が低く、さらに高濃度で重合した場合や高分子量の製品を得ようとする場合、重合時に発泡しやすくなり、発泡すると装置の運転を停止せざるを得ないという欠点を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来提案されている水溶性重合体の連続的製法は種々の欠点を有しており、いずれの方法においても問題となっているのが、分子量が低く分子量分布の狭い重合体を得難いことと、生産性が低いことである。
したがって、本発明の課題は、洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤等として有用な、分子量が低くて、かつ分子量分布の狭い水溶性重合体を、生産性良く、連続的に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明にかかる水溶性重合体の連続的製造方法では、モーションレスミキサー(a)とリサイクルタンクとを備え、これらが配管により接続されたループ型反応器のループ内の少なくとも1箇所に不飽和モノカルボン酸(塩)および/または不飽和ジカルボン酸(塩)であるモノマーおよび重合開始剤を供給しつつ、ループ内の少なくとも1箇所より排出ラインを通じて循環液の一部を排出しながら、水溶性重合体を連続的に製造するようにする
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明を実施するのに用いられる反応器の一例を示す概略図である。
ループ型反応器は、モーションレスミキサー(a) とリサイクルタンクとを備え、これらが配管により接続されたものである。
【0010】
本発明におけるモーションレスミキサー(a) の意義は次のとおりである。従来技術にあるような1基または複数個の攪拌型反応器を使用した連続的重合法(A法とする)では、モノマーは攪拌型反応器に供給されるが、この場合、通常モノマーと反応媒体との混合性が良くないため、短期間ではあるがモノマー濃度の高い部分が存在する。これに対して本発明ではモーションレスミキサー(a) を使用するので、モノマーと反応媒体との混合性が良く、瞬間的に均一化する。この傾向は反応液の粘度が高くなるほど顕著になる。一般的にモノマー濃度が高くなると分子量が高く、分子量分布が広くなる。したがって、A法の場合、分子量が低くて、かつ分子量分布の狭い重合体は得難い。これに対して本発明では、洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤等として有用な分子量が低くて、かつ分子量分布の狭い重合体を容易に得ることができる。
モーションレスミキサー(a) としては、モーションレス(静止状態)の液体分断機構を備えてミキサー内を流れる液体を細かく分断する作用を有すれば良い。
【0011】
モーションレスミキサー(a) 内の平均滞留時間としては、特に制限はないが、30秒〜200分が好ましい。特に好ましくは1分〜20分である。30秒より短い場合、分子量が低く分子量分布の狭い重合体は得られにくくなる。また200分を越える場合は、生産性が低くなったり、装置コストが高額となる等の欠点を有する。
【0012】
本発明におけるリサイクルタンクの意義は次のとおりである。従来技術にあるような、モーションレスミキサーを有するが、リサイクルタンクを有しないループ型反応器内を用いた連続的重合法では、生産性を高めようとして重合液の濃度やモノマーフィード量を高くすると、所望の低分子量の重合体を得ることができなくなる。これに対して本発明ではループ型反応器内にリサイクルタンクを備えているため、重合液の濃度やモノマーフィード量を高くしても、所望の低分子量の重合体を得ることができ、生産性良く製造することができる。
【0013】
リサイクルタンクとしては、配管と比べて十分な容積を有することが好ましいので、その容積はループ全体の10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。
リサイクルタンクでは、単に循環液を保持・循環するだけでなく、重合反応が進行することが好ましい。このため、リサイクルタンクは攪拌機および重合開始剤や重合促進剤等の添加剤を供給するノズルを有する仕様が好ましい。つまり、リサイクルタンク内の循環液を攪拌したり、重合開始剤や重合促進剤を添加して重合を進行させることが好ましい。
【0014】
リサイクルタンクには、必要に応じて気液分離器を設けて、ガスを抜きながらループ内を循環させてもよい。
リサイクルタンク出口の循環液中のモノマー濃度が0.3モル/kg以下、さらには0.15モル/kg以下となるように制御することで、最終的に得られる製品の残留モノマーを極めて低レベルとすることができる。
【0015】
ループ内における重合反応を加圧下で行うことにより、高温で反応を行うことができ、分子量が低くて、かつ分子量分布の狭い重合体を更に容易に得ることができる。加圧下で重合反応を行うためには、例えば循環液の流量制御や温度制御等すればよい。圧力としては特に限定されないが、0.1MPa〜3.0MPaが好ましい。特に好ましい圧力は0.12MPa〜1.0MPaである。ループ内の循環液の液温としては、特に限定されず、用いる重合開始剤の半減期にもよるが、通常70〜150℃が好ましい。特に好ましくは100〜130℃である。循環液を保温するために、図1に示すように、モーションレスミキサー(a) に熱媒を通液させたり、ループを構成する配管に保温材を巻き付ける等してもよい。リサイクルタンクを加熱および/または冷却して循環液の液温を一定に保つことも勿論可能である。
【0016】
モノマーおよび/または重合開始剤は、ループ内の少なくとも1箇所に供給されるが、モーションレスミキサー(a) 内、または、ループ内の循環液の流路方向においてリサイクルタンクからモーションレスミキサー(a) までの間に供給されることが好ましい。モノマーと重合開始剤とが混合されると重合が開始するため、モーションレスミキサー(a) によりモノマーと重合開始剤とをできるだけ早く均一に混合するためである。図1には、モノマーの供給位置および重合開始剤の供給位置が、ループ内の循環液の流路方向においてリサイクルタンクからモーションレスミキサー(a) までの間である場合を示す。
【0017】
ループ内の少なくとも1箇所にアルカリ剤を供給することができる。アルカリ剤は、モノマーを部分中和または完全中和するのに用いられる。その供給位置は特に限定されないが、モーションレスミキサー(a) 内、または、ループ内の循環液の流路方向においてリサイクルタンクからモーションレスミキサー(a) までの間に供給することが好ましい。モーションレスミキサー(a) によりモノマーや重合開始剤とできるだけ早く均一に混合するためである。図1には、アルカリ剤の供給位置が、ループ内の循環液の流路方向においてリサイクルタンクからモーションレスミキサー(a) までの間である場合を示す。
【0018】
ループ内の少なくとも1箇所に重合促進剤および/または連鎖移動剤を供給することができる。その供給位置は特に限定されないが、モーションレスミキサー(a) 内、または、ループ内の循環液の流路方向においてリサイクルタンクからモーションレスミキサー(a) までの間に供給することが好ましい。図1では、重合促進剤および連鎖移動剤は供給していない。
【0019】
ループ内へ供給する被供給物(モノマー及び重合開始剤、さらに必要に応じて重合促進剤、連鎖移動剤等の供給液)の合計供給量は、ループの全循環液量の0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜20重量%であることがより好ましい。前記範囲よりも被供給物の合計供給量が少ないと生産性が著しく低下する。前記範囲よりも被供給物の合計供給量が多いと分子量が低く分子量分布の狭い重合体が得られ難くなる。また残留モノマーが多くなるという問題点も生じる。
【0020】
ループ内の循環液の温度分布は小さい方が狭い分子量分布の重合体を得るのに好都合である。温度分布幅としては、特に制限はないが、±10℃以下が好ましく、特に好ましくは±5℃以下である。温度分布幅をコントロールするための具体的手段としては、モーションレスミキサー(a) のジャケット内を流れる熱媒(または、冷媒)の温度コントロールやモノマー供給量のコントロール、配管およびリサイクルタンクの保温や必要に応じて配管およびリサイクルタンクへの熱供給、等を挙げることができる。
【0021】
本発明では、ループ内の少なくとも1箇所より循環液の一部を排出ラインを通じて排出する。排出ラインは、ループ内の循環液の流路方向において、リサイクルタンクからモノマーおよび/または重合開始剤の供給位置までの間にあることが好ましい。この位置の循環液がループ内で最もモノマー濃度が低く、重合が最も進んだ状態であるためである。
【0022】
排出ラインから排出する量は、ループ内に供給する被供給物の合計供給量と同量であることが好ましい。
排出ラインの少なくとも1箇所に、モーションレスミキサー(b) および/または攪拌型反応器を設けることで、得られる製品に含まれる残留モノマーを極めて低レベルとすることができる。図1には、モーションレスミキサー(b) を設けた場合を図示している。
【0023】
さらに、モーションレスミキサー(b) および/または攪拌型反応器内、または、それより上流側の排出ラインの少なくとも1箇所に、モノマーを供給することができる。図1には、モノマーの供給位置が、モーションレスミキサー(b) の上流側である場合を示す。
さらに、モーションレスミキサー(b) および/または攪拌型反応器内、または、それより上流側の排出ラインの少なくとも1箇所に、重合開始剤を供給することができる。図1には、重合開始剤の供給位置が、モーションレスミキサー(b) の上流側である場合を示す。
【0024】
さらに、モーションレスミキサー(b) および/または攪拌型反応器内、または、それより上流側の排出ラインの少なくとも1箇所に、重合促進剤を供給することができる。図1では、重合促進剤は供給していない。
さらに、モーションレスミキサー(b) および/または攪拌型反応器内、または、それより上流側の排出ラインの少なくとも1箇所に、連鎖移動剤を供給することができる。図1では、連鎖移動剤は供給していない。
【0025】
さらに、モーションレスミキサー(b) および/または攪拌型反応器内、または、それより上流側の排出ラインの少なくとも1箇所に、アルカリ剤を供給することができる。図1には、アルカリ剤の供給位置が、モーションレスミキサー(b) の上流側である場合を示す。
本発明においてモノマーは、ループ内及び必要に応じて排出ラインの少なくとも一箇所に供給されるが、その種類としては、重合により水溶性重合体となり得るものであれば特に制限はなく、広い範囲のモノマーが使用可能であるが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体;上記不飽和モノカルボン酸系単量体を、1価金属(ナトリウム、カリウム等)、2価金属(マグネシウム、カルシウム等)、アンモニア、有機アミン等で部分中和または完全中和してなる中和物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体;上記不飽和ジカルボン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和または完全中和してなる中和物;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸系単量体;上記不飽和スルホン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和または完全中和してなる中和物;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の含リン単量体;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの単量体は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。中でも、不飽和モノカルボン酸(塩)系単量体(不飽和モノカルボン酸系単量体および不飽和モノカルボン酸系単量体を部分中和または完全中和してなる中和物)、不飽和ジカルボン酸(塩)系単量体(不飽和ジカルボン酸系単量体および不飽和ジカルボン酸系単量体を部分中和または完全中和してなる中和物)が好ましく、アクリル酸(塩)およびマレイン酸(塩)が特に好ましい。
【0026】
本発明において重合開始剤は、ループ内及び必要に応じて排出ラインの少なくとも一箇所に供給されるが、その種類としては、特に制限はなく、広い範囲の重合開始剤が使用可能であるが、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4−シアノバレリン酸)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;空気、酸素、オゾン等の無機系酸化剤等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0027】
重合開始剤の使用量としては、特に制限はないが、通常モノマーに対して0.01〜5重量%が使用される。ガス状の無機系酸化剤については、通常後述する無機系還元剤と併用されるが、該無機系還元剤1モルに対し、標準状態に換算し10Lの以上の使用量とすることができる。
本発明において重合促進剤は、必要に応じてループ内及び排出ラインのいずれかあるいは両方の少なくとも一箇所に供給されるが、その種類としては、特に制限はなく、広い範囲の重合促進剤が使用可能であるが、例えば、アスコルビン酸(塩)や有機アミン類等の有機系還元剤;重亜硫酸(塩)や亜硫酸(塩)等の無機系還元剤;コバルト塩、鉄塩、銅塩、セリウム塩、ニッケル塩、マンガン塩、モリブデン塩、ジルコニウム塩、バナジウム塩、亜鉛塩等の遷移金属塩等を挙げることができるが、中でも無機系還元剤の使用が好ましい。これら重合促進剤は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0028】
重合促進剤の使用量としては、特に制限はないが、有機系還元剤を使用する場合は、通常モノマーに対して0.01〜5重量%が使用される。無機系還元剤を使用する場合は、通常モノマーに対して0.01〜30重量%が使用される。また、遷移金属塩を使用する場合は、通常モノマーに対して0.01〜100ppmが使用される。
【0029】
本発明において連鎖移動剤は、必要に応じてループ内及び排出ラインのいずれかあるいは両方の少なくとも一箇所に供給されるが、その種類としては、特に制限はなく、特に制限はなく、広い範囲の連鎖移動剤が使用可能であるが、例えば、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸系化合物;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸系化合物;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら連鎖移動剤は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0030】
連鎖移動剤の使用量としては、特に制限はないが、通常モノマーに対して0.01〜5重量%が使用される。
本発明においてアルカリ剤は、必要に応じてループ内及び排出ラインのいずれかあるいは両方の少なくとも一箇所に供給されるが、その種類としては、特に制限はなく、特に制限はなく、広い範囲のアルカリ剤が使用可能であるが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;アンモニア等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらアルカリ剤は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明における重合溶媒、つまり反応媒体については、特に制限はなく、広い範囲の媒体が使用可能であるが、例えば、芳香族炭化水素溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、水単独、水及び水と可溶性の混合溶液を挙げることができる。水と可溶性の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等の低級エーテル類等を挙げることができる。中でも、水単独;水及び水と可溶性の混合溶液の使用が好ましく、水単独使用が最も好ましい。
本発明により製造される水溶性重合体は、分子量が低くて、かつ分子量分布が狭く、しかも残留モノマーの少ないものである。
【0032】
洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤という用途を鑑みれば、重量平均分子量は1,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、2,000〜50,000の範囲内であることがより好ましい。洗剤ビルダーとして用いられる場合、重量平均分子量は2,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜30,000であることがより好ましい。無機顔料分散剤として用いられる場合、重量平均分子量は、2,000〜50,000であることが好ましく、3,000〜10,000であることがより好ましい。スケール防止剤として用いられる場合、重量平均分子量は、1,000〜30,000であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。
【0033】
分子量分布(D値=重量平均分子量/数平均分子量)は1.0〜7.0の範囲内にあることが好ましく、1.3〜3.0の範囲内にあることがより好ましい。
残留モノマーは、2,000ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。
本発明により製造される水溶性重合体は、従来の水溶性重合体と同様の用途に使用することができるが、本発明により、分子量が低くて、かつ分子量分布の狭い水溶性重合体を、生産性良く、連続的に製造することができるので、特に洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤として用いることが有効である。
【0034】
洗剤ビルダーとして用いる場合、本発明により製造される水溶性重合体をそれ単独で使用しても良いが、ゼオライト、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)等等の無機ビルダー100重量部に対して、該重合体を1〜1000重量部の割合で併用した場合、特に顕著な効果を奏する。
スケール防止剤として用いる場合、本発明により製造される水溶性重合体をそれ単独で使用しても良いし、必要に応じてその他の添加剤(例えば、亜鉛、クロム、モリブデン等の防蝕剤成分やスライムコントロール剤)と組み合わせて用いても良い。
【0035】
無機顔料分散剤として用いる場合、本発明により製造される水溶性重合体をそれ単独で使用しても良いし、必要に応じてその他の分散剤(例えば有機系分散剤やヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩等の無機系分散剤)と組み合わせて用いても良い。
【0036】
【実施例】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下において単に「%」とあるのは特にことわりがない限り、「重量%」を表すものとする。
[実施例1]
図1に示す容積100L(ループ全体の53%に相当する)のリサイクルタンクを備えたループ型反応器において、最終的にリサイクルタンク内に100kg、また、その他のループ内には空間容積に相当する量のポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量5,000)40%水溶液を仕込んだ。内径10cm、長さ10mのモーションレスミキサー(a) のジャケットに温度が120℃の熱媒を通液しながら、循環ポンプP1を起動し、ループ内を循環する液量が1,000kg/Hrとなるように流量を制御した。循環液の液温が120℃に到達後、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の供給を開始した。尚、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の種類、濃度及び供給速度は表1に示したとおりとした。
【0037】
【表1】
Figure 0004173610
【0038】
各液を供給開始してからも循環液量は1,000kg/Hrを維持した。また、各液が供給されている期間は、内径10cm、長さ10mのモーションレスミキサー(b) が設けられた排出ラインを通じて15kg/Hrの割合で循環液を連続的に排出した。
尚、モーションレスミキサー(b) の直前に、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム15%水溶液を0.21kg/Hrの割合で供給した。
【0039】
このようにして、連続的に24時間の運転を行い、系を安定化させた。ループ内の圧力は0.15MPaであり、ループ内の循環液の温度分布幅は±2℃であり、モーションレスミキサー(a) 内の平均滞留時間は4分であった。その後、サンプリングノズルS1より循環液を抜き出し分析した。循環液は、固形分濃度40.5%、重量平均分子量5,030、数平均分子量2,860、D値(重量平均分子量/数平均分子量)1.76、残留モノマー2,300ppmのポリアクリル酸ナトリウム水溶液であった。また、モーションレスミキサー(b) 出口の循環液は、固形分濃度40.0%、重量平均分子量5,030、数平均分子量2,860、D値1.76、残留モノマー15ppmのポリアクリル酸ナトリウム水溶液であった。
[実施例2]
実施例1で用いたのと同じループ型反応器に、最終的にリサイクルタンク内に100kg、また、その他のループ内には空間容積に相当する量のアクリル酸/マレイン酸=7/3(モル比)共重合体部分ナトリウム塩(重量平均分子量37,300)40%水溶液を仕込んだ。内径10cm、長さ10mのモーションレスミキサー(a) のジャケットに温度が120℃の熱媒を通液しながら、循環ポンプP1を起動し、ループ内を循環する液量が200kg/Hrとなるように流量を制御した。循環液の液温が120℃に到達後、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の供給を開始した。尚、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の種類、濃度及び供給速度は表1に示したとおりとした。
【0040】
【表2】
Figure 0004173610
【0041】
各液を供給開始してからも循環液量は200kg/Hrを維持した。また、各液が供給されている期間は、内径10cm、長さ10mのモーションレスミキサー(b) が設けられた排出ラインを通じて12.08kg/Hrの割合で循環液を連続的に排出した。
尚、モーションレスミキサー(b) の直前に、モノマーとしてのアクリル酸80%水溶液1.47kg/Hr、アクリル酸ナトリウム37%水溶液1.04kg/Hr、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム15%水溶液0.39kg/Hr、過酸化水素35%水溶液0.02kg/Hrの割合で供給した。
【0042】
このようにして、連続的に24時間の運転を行い、系を安定化させた。ループ内の圧力は0.15MPaであり、ループ内の循環液の温度分布幅は±2℃であり、モーションレスミキサー(a) 内の平均滞留時間は5分であった。モーションレスミキサー(b) 出口の循環液は、固形分濃度40.6%、重量平均分子量37,400、数平均分子量5,400、D値6.92、残留アクリル酸15ppm、残留マレイン酸540ppmのアクリル酸/マレイン酸=7/3(モル比)共重合体部分ナトリウム塩の水溶液であった。
[比較例1]
図2に示すリサイクルタンクを有しないループ型反応器において、ループ内に空間容積に相当する量のポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量5,000)40%水溶液を仕込んだ。内径10cm、長さ10mのモーションレスミキサー(a) のジャケットに温度が120℃の熱媒を通液しながら、循環ポンプP1を起動し、ループ内を循環する液量が1,000kg/Hrとなるように流量を制御した。循環液の液温が120℃に到達後、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の供給を開始した。尚、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の種類、濃度及び供給速度は実施例1と同一とした。
【0043】
各液を供給開始してからも循環液量は1,000kg/Hrを維持した。また、各液が供給されている期間は、排出ラインを通じて15kg/Hrの割合で循環液を連続的に排出した。
このようにして、連続的に24時間の運転を行い、系を安定化させた。その後、サンプリングノズルS1より循環液を抜き出し分析した。循環液は、固形分濃度40.5%、重量平均分子量19,610、数平均分子量5,940、D値3.30、残留モノマー7.3%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液であった。
[比較例2]
比較例1で用いたのと同じループ型反応器において、ループ内に空間容積に相当する量のアクリル酸/マレイン酸=7/3(モル比)共重合体部分ナトリウム塩(重量平均分子量37,300)40%水溶液を仕込んだ。内径10cm、長さ10mのモーションレスミキサー(a) のジャケットに温度が120℃の熱媒を通液しながら、循環ポンプP1を起動し、ループ内を循環する液量が200kg/Hrとなるように流量を制御した。循環液の液温が120℃に到達後、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の供給を開始した。尚、モノマー水溶液、重合開始剤水溶液及びアルカリ剤水溶液の種類、濃度及び供給速度は実施例2と同一とした。
【0044】
各液を供給開始してからも循環液量は200kg/Hrを維持した。また、各液が供給されている期間は、内径10cm、長さ10mのモーションレスミキサー(b) が設けられた排出ラインを通じて12.08kg/Hrの割合で循環液を連続的に排出した。
尚、モーションレスミキサー(b) の直前に、モノマーとしてのアクリル酸80%水溶液1.47kg/Hr、アクリル酸ナトリウム37%水溶液1.04kg/Hr、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム15%水溶液0.39kg/Hr、過酸化水素35%水溶液0.02kg/Hrの割合で供給した。
【0045】
このようにして、連続的に24時間の運転を行い、系を安定化させた。モーションレスミキサー(b) 出口の循環液は、固形分濃度40.6%、重量平均分子量62,800、数平均分子量7,800、D値8.05、残留アクリル酸135ppm、残留マレイン酸4,400ppmのアクリル酸/マレイン酸=7/3(モル比)共重合体部分ナトリウム塩の水溶液であった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によると、洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤等として有用な、分子量が低くて、かつ分子量分布の狭い水溶性重合体を、生産性良く、連続的に製造することができる。しかも、ループ内の残留モノマーを低レベルに制御するとともに、排出ラインに特定の工夫をこらすことで、得られる製品の残留モノマーを極めて低レベルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施するのに用いられる反応器の一例を示す概略図である。
【図2】 従来技術のループ型反応器の概略図である。

Claims (15)

  1. モーションレスミキサー(a)とリサイクルタンクとを備え、これらが配管により接続されたループ型反応器のループ内の少なくとも1箇所に不飽和モノカルボン酸(塩)および/または不飽和ジカルボン酸(塩)であるモノマーおよび重合開始剤を供給しつつ、ループ内の少なくとも1箇所より排出ラインを通じて循環液の一部を排出しながら、水溶性重合体を連続的に製造する、水溶性重合体の連続的製造方法。
  2. モノマーおよび/または重合開始剤の供給位置が、モーションレスミキサー(a)内であるか、または、ループ内の循環液の流路方向においてリサイクルタンクからモーションレスミキサー(a)までの間である、請求項1記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  3. ループ内の循環液の流路方向において、リサイクルタンクから、モノマーおよび/または重合開始剤の供給位置までの間に排出ラインを有する、請求項1または2記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  4. ループ内における重合反応を加圧下で行う、請求項1から3までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  5. リサイクルタンク出口の循環液中のモノマー濃度が0.3モル/kg以下である、請求項1から4までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  6. ループ内の少なくとも1箇所にアルカリ剤を供給する、請求項1から5までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  7. ループ内の少なくとも1箇所に重合促進剤を供給する、請求項1から6までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  8. 排出ラインの少なくとも1箇所に、モーションレスミキサー(b)および/または撹拌型反応器を設ける、請求項1から7までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  9. モーションレスミキサー(b)および/または撹拌型反応器の内部、または、それより上流側の排出ラインの少なくとも1箇所に、モノマーを供給する、請求項8記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  10. モーションレスミキサー(b)および/または撹拌型反応器の内部、または、それより上流側の排出ラインの少なくとも1箇所に、重合開始剤および/または重合促進剤を供給する、請求項8または9記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  11. 不飽和モノカルボン酸(塩)がアクリル酸(塩)である、請求項1から10までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  12. 不飽和ジカルボン酸(塩)がマレイン酸(塩)である、請求項1から11までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  13. 前記モーションレスミキサー(a)内の循環液の平均滞留時間が1分〜20分である、請求項1から12までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  14. ループ内の循環液の液温が70〜150℃である、請求項1から13までのいずれかに 記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
  15. ループ内および/または排出ラインの少なくとも1箇所に連鎖移動剤を供給する、請求項1から14までのいずれかに記載の水溶性重合体の連続的製造方法。
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