JP4031657B2 - 水溶性重合体組成物の製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性重合体組成物の製造装置および製造方法、並びにその製造方法により得られる水溶性重合体組成物、およびその用途に関するものである。詳しくは、漂白系の洗剤組成物の用途に好適に用いられる、分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、マレイン酸系重合体などの低分子量の水溶性重合体組成物の工業規模の生産に適した製造装置および製造方法、並びにその製造方法により得られる水溶性重合体組成物、およびその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無機顔料や金属イオンなどの分散剤やスケール防止剤、あるいは洗剤ビルダー、洗剤組成物に好適に用いられるものとして、ポリアクリル酸やポリマレイン酸などの水溶性重合体のうち低分子量のものが知られている。このような低分子量の水溶性重合体組成物を得る方法としては、たとえば、特開平11−315115号公報や特開2000−80396号公報等に開示されている。
【0003】
上記公報に代表される従来公知の製法方法では、1種または2種以上の水溶性の単量体成分、さらには重合開始剤や連鎖移動剤などの添加剤成分を、反応系内に予め仕込み(単に、初期仕込みといもいう)重合温度まで加熱しておいた溶媒中に個別に所定時間かけて連続して滴下し、その後、さらに一定の時間(熟成時間)をかけて重合を完結するというものである。
【0004】
しかしながら、上記公報に代表される従来公知の水溶性重合体組成物の製造方法に用いる装置は、いずれも実験室レべルのものであり、製造条件や用いる原料の種類や使用量、あるいは重合条件(重合温度や時間)など変えて、それぞれ少量で1バッチだけ行った実験例にとどまるであり、上記公報に代表される従来公知の製法方法を実施可能な生産設備を用いて工業的に大量生産を行った実施例はなく、工業化する上での生産設備における技術的課題等に関して現在までに報告されていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、水系の分散剤、スケール防止剤、洗剤ビルダー、洗剤組成物などの用途に好適に用いられる分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた水溶性重合体組成物を大規模な製造装置により工業的に生産を行う場合につき実験を重ねた結果、実験室レベルでは、重合により得られた水溶性重合体組成物が水系の分散剤、スケール防止剤、洗剤ビルダー、洗剤組成物などの用途において、十分に満足のいく性能を発現できていたにもかかわらず、多くの人と時間と金を投下して開発した高性能な水溶性重合体組成物の性能及び品質が、工業化後にも十分に発現されていると考えられ、特に問題とされることなく(すなわち、技術的課題が見出されていなかった)長年慣用されてきた製造技術につき、再度、仔細に検証を重ねた結果、工業化後において実験段階よりもその性能及び品質が低下するケースがあることを見出したものである。すなわち、工業化後の水溶性重合体組成物の性能及び品質が、洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合して用いた場合に十分な洗浄力、とりわけ漂白系の洗剤組成物では十分な漂白効果が得られないという、新たな問題が生じることがわかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決し、大規模な製造装置により工業的に生産を行う場合において、洗剤組成物、特に漂白系の洗剤組成物に配合して用いた際に、該洗剤組成物の性能及び品質を損なうことなく、優れた洗浄力を発揮させることのできる洗剤ビルダーに適した水溶性重合体組成物を重合するための製造装置および製造方法、並びにその製造方法により得られる水溶性重合体組成物、およびその用途を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記技術的課題を解決すべく、工業化後における高性能な水溶性重合体組成物の性能及び品質の低下防止を図るべく鋭意検討した結果、大規模な製造装置により工業的に生産を行う場合に発生する、重合中の反応の不均一化による性能のバラツキにより分子量の異なる重合物やゲル物の生成、未反応の単量体成分や添加剤の存在による原因などについても検証したが、いずれの原因も洗剤組成物、特に漂白系の洗剤組成物に配合して用いた際に現われる固有の原因ではなく、更なる検討を重ねた結果、使用条件に対して十分な実績のあるステンレス鋼材を用いてなる反応槽に、最終製品である洗剤組成物の性能及び品質を低下させる要因が潜在していることを見出したものである。すなわち、ステンレス鋼材の内壁面が、重合中に副生する腐食性物質等により極軽微な腐食を受け、反応液中に極微量の重金属成分を溶出することにより、得られる水溶性重合体組成物中には、0.2〜3質量ppm/固形分程度の極微量の重金属成分が混入し、かかる極微量の重金属成分が最終製品である洗剤組成物の性能及び品質にまで影響を及ぼすことになっていたことを突き止めたものである。すなわち、こうした極軽微の腐食は、通常鋼材の厚みに必要なマージンを持たせて設計することで、反応槽の耐用年数や機械的強度や熱伝導性などに与える影響は小さく、何ら問題なく利用でき、また他の水系の分散剤やスケール防止剤などでは全く問題にならないほど極微量の重金属成分が溶出するに過ぎないにもかかわらず、最終製品である洗剤組成物の性能及び品質、とりわけ洗浄力、特に漂白作用を低下させていることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
さらに、本発明者等は、反応槽の内壁面、特に液面境界部に重合中に重合物またはゲル物が形成され、かかる重合物やゲル物が最終製品に混入することで、洗剤組成物、さらには他の製品においても、分散能、キレート能、耐ゲル性等の性能及び品質に影響することを見出し、該重合物またはゲル物の発生原因を徹底的に調査・研究を重ねた結果、ここでも反応槽の内壁面が粗面化することで、特にゲル化が起こりやすいことがわかってきた。かかる粗面化の原因につき更なる研究を重ねた結果、上記と同様に使用する原料や生成物等により極めて軽微な腐食が原因であることを突き止めたものであり、こうした極軽微な腐食により、最終製品である洗剤組成物、さらには他の水系の分散剤、スケール防止剤等の製品の性能及び品質にまで影響することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
本発明の目的は、下記(1)〜(3)に記載の繊維の漂白工程用繊維処理剤およびその製造方法により達成されるものである。
【0010】
(1) 内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いて、重合開始剤の存在下で(メタ)アクリル酸(塩)の重合を行った水溶性重合体組成物、および過酸化物を含有してなるものであって、
前記重合開始剤が、過硫酸塩であることを特徴とする繊維の漂白工程用繊維処理剤。
【0011】
(2) 重金属を含有しない上記(1)に記載の繊維の漂白工程用繊維処理剤。
【0015】
(3) 内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いて、重合開始剤の存在下で(メタ)アクリル酸(塩)を重合して水溶性重合体組成物を得る工程と、
上記工程で得られた水溶性重合体組成物と過酸化物を配合する工程と、
を有するものであって、
前記重合開始剤が、過硫酸塩である繊維の漂白工程用繊維処理剤の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の水溶性重合体組成物の製造装置は、内部をグラスライニングしてなる反応槽を備えていることを特徴とするものである。本発明の製造装置は、さらに反応槽内に位置する撹拌機等の装置部材がグラスライニングされていることが好ましい。
【0017】
本発明の装置では、重合中に腐食性物質により反応槽等から溶出する極微量の重金属成分が、洗剤組成物中の漂白剤の働きを低下させることから、かかる重金属の混入を阻止すべく、供給源となる反応槽、さらには反応槽内に位置する撹拌機等の装置部材をグラスライニングすることで、水溶性重合体組成物中に重金属を含まない、すなわち、分析機器の検出限界値よりも低く抑えることで、該水溶性重合体組成物を洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合しても、洗浄漂白力を何ら損なうことがなく、該水溶性重合体組成物の持つ優れた分散能、キレート能、耐ゲル性を有効に発現することができるという利点を有するものである。
【0018】
ここで、重合中に存在する腐食性物質としては、化学的に直接金属やガラス等を溶解するもののほか、腐食反応の触媒的な働きをするもの、電解質として腐食速度を速めるもの、間接的に腐食を促進するもの、および臨界湿度を下げて結露しやすくさせるものである腐食促進物質を含むものであり、反応槽中の存在しえるもの、すなわち、原料、触媒および各種添加剤、並びに反応により生成される反応生成物(反応副生物を含む)のうち、腐食性を有するものがその対象となる。具体的には、重合開始剤の分解物、例えば、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩から発生する硫酸などのが挙げられる。
【0019】
また、上記反応槽とは、重合反応を行うことができる容器である。さらに本発明では、上記腐食性物質に対して金属成分の溶出を防止する観点から、内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いる必要がある。かかるライニング材料としては、ゴム材料、エラストマー材料、プラスチック材料、ガラス以外のセラミックスなどの無機質材料などが利用可能であるが、さらに耐熱性、耐薬品性を有し、反応槽に添加されるいずれのものに対しても不活性で非汚染性であり、また重合中に非付着性に優れることから、ガラス(ホウロウを含む)が望ましいものである。ガラス材料としては、特に制限されるものではないが、従来公知の各種ライニング用グラスを用いることができるものであり、
▲1▼RO2 ケイ素・チタン・ジルコニウムの酸化物、
▲2▼RO カルシウム・マグネシウム・バリウムの酸化物、
▲3▼R2O3 ホウ素の酸化物、
▲4▼R2O ナトリウム・カリウム・リチウムの酸化物、
の4つの酸化物グループの組み合わせからなる一般のライニング用グラスの組成などが挙げられる。これらのうちケイ酸は、グラス形成酸化物として組成の大部分を占め、酸化チタン・酸化ジルコニウムは酸およびアルカリに対する抵抗成分として、その他の酸化物はフラックスとして働く。これらの酸化物以外にも、例えば、コバルト・ニッケルの酸化物を密着剤あるいは着色剤として使用することもできる。また、ライニング用グラスは、素地金属との密着性と被覆性とを兼用した下ぐすり用グラスと、耐食性を主とした上ぐすり用グラスとを用いるのが望ましいなど、従来公知のライニング技術を適宜利用することができる。
【0020】
また、反応槽の内部にこうした材料をライニングする方法としては、特に制限されるものではなく、従来既知のライニング技術を適用することができるものである。また、母材金属材料を用いて形成された反応槽の内壁面側に、完全なグラス被覆と、耐食に対して十分なグラス厚さを持たせる観点から、所望の厚みのガラス層を形成するのが望ましい。
【0021】
また、反応槽の母材金属材料としては、従来既知の金属(合金を含む)材料を利用することができるものである。例えば、炭素鋼、鋳鉄のほか、ステンレス鋼、インコネル、ハステロイなどの耐食耐熱合金などが挙げられる。これらのうち、鋼材がコスト的に有利になるため好ましいといえる。
【0022】
反応槽の形状は、特に制限されるものではない。多角型、円筒形などがあるが、グラスライニングの加工性、撹拌効率、取り扱い性、汎用性などの点から円筒型が好ましい。また、邪魔板は問わない。
【0023】
反応槽の体積(内部容積)としては、0.1〜50m3であることが好ましい。さらに好ましくは0.2〜45m3、特に好ましくは0.5〜40m3である。反応槽の体積が0.1m3未満の場合には、生産規模が小さく、生産効率が十分でなくなるために工業的に大量生産を行うのが困難な場合がある。一方、50m3を超える場合には、反応槽内の反応温度、濃度の均質化を図るのが難しくなる。
【0024】
なお、本発明の製造装置では、上記に規定するように内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いるものであればよく、その他の装置構成としては、特に制限されるべきものではなく、例えば、図1に示すような装置構成のものなどが挙げられるが、これらに制限されるべきものでなく、さらに重合の際に必要な温度、圧力、流量などの測定装置、制御装置などが設けられていることが望ましい。
【0025】
図1は、内部をグラスライニングしてなる反応槽を備えてなる製造装置を模式的に表した概略図である。図1に示すように、重合用の反応槽101として、0.1〜50m3の体積(内容積)を有する、内部をグラスライニングしてなる反応槽が設置されている。
【0026】
また、反応槽内から生じる留出物を凝縮液化させるためのコンデンサ103が設けられている。反応槽101の塔頂部には、反応槽内で発生した留出物を槽外のコンデンサ103に導くための留出用ライン105が連結されており、留出用ライン105の他端がコンデンサ103の管内流体入口107と連結されている。さらにコンデンサ103で凝縮された留出物を反応槽101内に戻すための還流用ライン109がコンデンサ103の管内流体出口111と連結されており、該還流用ライン109の他端が反応槽101の反応液の液面よりも高い位置に連結されている。
【0027】
また、コンデンサ103には、冷却液を導入するための管外流体入口113と、熱交換後の冷却液を排出するための管外流体出口115が設けられている。冷却液としては、特に制限されるべきものではないが、経済性、安全性の点から、好ましくは水である。
【0028】
なお、コンデンサとは、反応槽から生じる留出物を凝縮液化させる装置であり、凝縮液化は、冷却液である管外流体と留出物とを熱交換させることにより行われる。反応槽内から生じる留出物とは、重合中に反応槽内で蒸発した反応液をいう。
【0029】
コンデンサの形状は、特に制限されるものではないが、同じ伝熱面積を得る上で装置の小型化が図れる点で多管式が望ましく、また複数の伝熱管を管束として胴内部に収納する際の配置の効率性、汎用性などの点から円筒型が好ましいことから、多管式円筒型がより好ましい。
【0030】
コンデンサの材質としては、JISステンレス鋼のSUS304、、304L、316、316L等のステンレス鋼製や炭素鋼などの公知のものが使用できる。工業的な生産規模に見合う大型のコンデンサに必要な機械的強度、耐久性、耐熱性、加工性、耐薬品性を有し、材料設備コスト、さらに使用中のメンテナンスの面から、JISステンレス鋼のSUS304、304L、316、316Lが好ましい。
【0031】
反応槽の体積とコンデンサの伝熱面積の比率としては、0.5〜10m-1、好ましくは0.7〜7.5m-1、より好ましくは1.0〜5m-1の範囲である。反応槽の体積とコンデンサの伝熱面積の比率が0.5m-1未満の場合には、反応槽に対してコンデンサの能力が不足するため、反応槽からの留出物の凝縮を十分に行うことができない場合があり、生成物の水溶性重合体の分子量の制御ができなくなるおそれがある。一方、10m-1を超える場合には、生成物の水溶性重合体の分子量の制御ができなくなるおそれがあるほか、コンデンサの設備費用およびランニングコストがかかりコストアップにつながるなど経済的でなく工業上の利用性が低くなる。
【0032】
さらに、図1に示す製造装置では、重合中に反応槽101内の液温が均一に維持され、重合反応が均等になされるように、該反応槽101内の反応液を撹拌するための撹拌機117が反応槽101に設けられている。
【0033】
該撹拌機117の材質としては、特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、好ましくはJISステンレス鋼のSUS304、316、316Lである。また、撹拌機のうち、反応槽の内部の位置する撹拌翼等の表面には、装置の耐久性、耐食性向上の点から、グラスライニングが施され反応原料および生成物等に対して不活性なものとするのが望ましい。これは、反応系全体から重金属成分が溶出しないようにし、得られる重合体組成物中への重金属成分量を極力低減するのが、最終製品である洗剤組成物の性能及び品質を安定に保持する上で有効なためである。
【0034】
また反応槽101の本体外周部には、反応温度、すなわち反応槽内の液温を調節する目的で、熱媒を通じることのできる外部ジャケット119が設けられている。該熱媒には、スチーム、熱油など従来公知のものを利用することができる。
【0035】
また、該反応槽101には、重合に用いる重合用組成物の各成分ごとにフィードライン121がそれぞれ連結されている。図1では、便宜上、1つの単量体成分のフィードラインのみを図示するが、実際には、重合に用いる成分ごとにフィードラインが設置されている。
【0036】
各フィードライン121の先端部のノズル123が、反応槽101塔頂部内部にそれぞれ挿通されている。反応槽内にノズル123を設けることで、供給する成分が反応槽の内壁面を伝って流下するのを防止することができ、内壁面を伝って流下する際に単量体成分などが外部ジャケットからの熱を受けて重合物やゲル物を生成する危険性を回避することができる。該重合物およびゲル物は、生成物の水溶性重合体とは分子量などが異なるため性能及び品質面からみて不純物となる。
【0037】
各フィードライン121の他端は、各成分の貯蔵タンク(図示せず)とそれぞれ連結されており、これらの成分ないしその成分溶液が、各貯蔵タンクからそれぞれのフィードライン121を通じて反応槽101内部に所定時間をかけて先端ノズル123から供給、好ましくは連続的に滴下できるように、流量調整バルブやポンプ(共に図示せず)が設けられている。
【0038】
また、本発明の装置には、単量体成分を供給した後にフィードライン内部に残存した単量体により重合物やゲル物が生成するのを防止することができように、▲1▼フィードライン121に溶媒および/または不活性ガスを導入するためのラインが形成されていてもよいし、▲2▼フィードライン121を冷却する装置が備えられていてもよい。
【0039】
次に、本発明に係る水溶性重合体組成物の製造方法は、内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いて工業的規模で重合を行うことを特徴とするものである。これにより、得られる水溶性重合体組成物への重金属成分の極微量の混入をも防止することができ、かつ分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、マレイン酸系重合体などの低分子量の水溶性重合体組成物を製造することができる。その結果、工業的規模で生産された水溶性重合体組成物を配合してなる洗剤組成物の性能及び品質、特に洗浄力の性能低下を防止することができるものである。かかる観点から、さらに反応槽内に位置する装置部材がグラスライニングされている製造装置を用いて重合を行うことが望ましいものである。
【0040】
以下、本発明の製造方法の好適な実施形態につき説明するが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の製造装置である、上述した内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いて重合を行うことで、重金属を含まない低分子量の水溶性重合体組成物を得ることができるものであればよく、例えば、特開平11−315115号公報や特開2000−80396号公報等、現在までに提案されている水溶性重合体組成物の製造方法にも幅広く適用し得るものである。
【0041】
<重合用組成物>
本発明の製造方法において、まず重合体組成物の原料である重合用組成物としては、単量体成分のほか、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等が必要に応じて、適宜用いられるものである。以下、各成分ごとに説明する。
【0042】
<単量体成分>
水溶性重合体組成物を製造する際に用いることのできる単量体成分としては、特に制限されるべきものではなく、重合体の種類に応じて適宜決定されるべきものである。水溶性重合体組成物の製造に用いられる単量体成分の例としては、以下の▲1▼〜▲4▼に示すものが挙げられる。
【0043】
▲1▼ カルボキシル基を含有する単量体
カルボキシル基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸等のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸系単量体、これらの塩および無水物が挙げられる。
【0044】
ここで、塩とは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩等が挙げられ、これらは単独で使用されるか、併用される。以下では、これらを単に塩とのみ表記することがある。
【0045】
▲2▼ スルホン酸基を含有する単量体
スルホン酸基を含有する単量体としては、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸等のモノエチレン性不飽和スルホン酸系単量体およびこれらの塩が挙げられる。
【0046】
▲3▼ 水酸基を含有する単量体
水酸基を含有する単量体としては、例えば、3−メチル−2−ブテン−1−オール(以下、プレノールともいう)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(以下、イソプレノールともいう)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(以下、イソプレンアルコールともいう)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ビニルアルコール等のモノエチレン性不飽和水酸基含有系単量体が挙げられる。
【0047】
▲4▼ その他の単量体
その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸等の含リン単量体が挙げられる。
【0048】
これら単量体▲1▼〜▲4▼は、単独で用いられるか、併用される。共重合体を得る場合は、必要に応じ、得られる重合体の水溶性を損なわない範囲で、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等の疎水性単量体を併用してもよい。
【0049】
本発明では、重合により得られる重金属を含有しない水溶性重合体組成物を、その特徴を活かして、洗剤組成物の配合成分の1種、好ましくは洗剤ビルダーとして有効に利用するものであるが、この他にも無機顔料分散剤、スケール防止剤、キレート剤、繊維処理剤、木材パルプ漂白助剤等の幅広い用途に用いることができるものであり、こうした使用目的に応じて、その他の重合体原料を配合すればよい。
【0050】
以下に好ましい単量体配合を示す。いずれも、単量体成分全量を100mol%とする。
【0051】
(a)単量体▲1▼を好ましくは50mol%以上、より好ましくは80mol%以上、最も好ましくは100mol%用いる。単量体▲1▼の中では、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)およびこれらの無水物が特に好ましい。アクリル酸(塩)/マレイン酸(塩)共重合体の場合、両単量体のモル比は40〜60/60〜40が好ましい。なお、当該(a)の配合例では、上記単量体▲1▼以外の成分およびその配合比率については、特に制限されるものではなく、例えば、上記単量体▲2▼〜▲4▼を適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよいし、さらに他の成分(例えば、疎水性の単量体成分)などを加えて適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0052】
(b)単量体▲1▼を50mol%以上、単量体▲2▼を30mol%以下で含む配合である。単量体▲1▼、▲2▼の合計で80mol%以上が好ましく、100mol%がより好ましい。この場合、単量体▲1▼の中では、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)または無水物が、単量体▲2▼の中では3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、スルホエチル(メタ)アクリレート(塩)が特に好ましい。なお、当該(b)の配合例でも、上記単量体▲1▼、▲2▼以外の成分およびその配合比率については、特に制限されるものではなく、例えば、上記単量体▲3▼〜▲4▼を適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよいし、さらに他の成分(例えば、疎水性の単量体成分)などを加えて適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0053】
なお、上記単量体成分の反応槽への供給形態としては、制限されるものではなく、後述する溶媒、好ましくは水に溶解して単量体溶液、好ましくは単量体水溶液の形態で供給するのが望ましいが、単量体成分のみ、すなわち、無溶媒の形態で供給してもよい。
【0054】
単量体溶液として用いる場合の濃度としては、各単量体成分により異なるため、使用用途に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるものではない。よって単量体▲1▼溶液の濃度としては、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。また、単量体▲2▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。さらに、単量体▲3▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。さらに、単量体▲4▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。また、これらを併用する場合であって、予め混合して添加する場合の単量体混合物の濃度は、上記各単量体の濃度に基づいて適宜決定すればよい。
【0055】
上記単量体成分の反応槽への供給方法としては、反応槽内に単量体成分のフィードラインを通じて供給、好ましくは連続的に滴下するのが好ましい(図1参照のこと)。反応槽内への供給方式としては、滴下方式以外にも、流下、噴霧、吹出など如何なる方式であってもよい。また、単量体成分が2種以上の場合には、別々のフィードラインを通じてそれぞれの単量体成分を供給するのが好ましいが、別々のフィードラインを途中で合流させ、各単量体成分を混合して反応槽内に供給するようにしてもよし、供給元の貯蔵タンク内で予め各単量体成分を混合して1つのフィードラインを通じて供給するようにしてもよい。また、反応槽内に実質的に連続的に滴下する量は、使用目的に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるべきものではないが、100質量%とすることが最も好ましい。なお、全単量体成分使用量を連続的に滴下しない場合とは、残る単量体成分を何度かに分けて断続的に滴下する場合、あるいは残る単量体成分を重合初期に反応槽内に仕込んでおく場合などが挙げられる。
【0056】
<溶媒>
溶媒としては、有機溶媒でもよいが、水などの水性の溶媒であることが好ましく、特に新鮮水が好ましい。水を用いる場合でも、単量体の溶媒ヘの溶解を良くするために、重合に悪影響を及ぼさない範囲で水に有機溶媒を適宜加えることがある。特に製造装置として、上記したように反応槽の体積(内容積)とコンデンサの伝熱面積の比率が0.5〜10m-1の反応槽とコンデンサを用いることにより、優れた冷却効果を得ることができる。その結果、当該溶媒の還流が起こる高温での重合が可能となることから、高沸点溶媒も好適に利用することができるなど、使用できる溶媒の選択範囲が広くなる点で有利である。
【0057】
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;等が挙げられ、これらは単独で用いられるか、併用される。
【0058】
上記溶媒の使用量としては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものであり、特に制限されるべきものではない。
【0059】
上記溶媒の反応槽への供給時期及び供給形態としては、制限されないが、該溶媒の多くまたは全量を重合初期に反応槽内に仕込んでおいてもよいし、溶媒の一部については、単独で重合中に反応槽内に溶媒用フィードラインを通じて適当に供給、好ましくは連続的に滴下するようにしてもよいし、あるいは単量体成分や開始剤成分やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応槽内に適当に添加するようにしてもよい。こうした溶媒は、ライニング材料であるガラスに対する腐食性がないため、重合初期に反応槽内に仕込んでおいても、反応槽からの重金属成分の溶出量に影響しないためでもある。
【0060】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、限定されないが、ラジカル重合開始剤が好ましい。過酸化水素、過硫酸塩またはこれらの併用が特に好ましい。本発明では、重合中に分解されることで硫酸などの腐食性物質を発生する重合開始剤であっても、該腐食性物質により腐食を受け難い装置構成となっている。とりわけ反応槽内部が重金属成分の溶出を防止し得るグラスライニング構造となっているため、重合開始剤の使用量の制限等を行わなくても、重金属を含まない高純度の水溶性重合体組成物を得ることができる点で有利である。
【0061】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、及び過酸化水素が挙げられる。これらは、単独で用いられるか、併用される。これらの中では、末端や側鎖にスルホン酸基を定量的に導入し、分散能やキレート能に加えて耐ゲル性にも優れた低分子量の水溶性重合体組成物が得られるほか、水溶性である点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩や過酸化水素が好ましい。
【0062】
重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、単量体の残存量が大幅に増大する傾向があったり、もはや重合開始剤の添加効果はあまり向上せず、却って経済的に不利であるほか、重合開始剤量が多い分、その分解物として硫酸などの腐食性物質を多く発生するためグラスライニングによるガラス厚みを厚くするなど、必要なマージンを多くとる必要が生じることのないように、適当な使用量を適宜決定すればよい。
【0063】
重合開始剤の供給形態としては、制限されるものではなく、重合中に上記溶媒に溶解して重合開始剤溶液の形態で供給するのが望ましいが、重合開始剤のみ、すなわち、無溶媒の形態で供給してもよい。
【0064】
重合開始剤溶液として用いる場合の濃度としては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものであり、特に制限されるべきものではない。
【0065】
重合開始剤の反応槽への供給方法としては、特に限定はされないが、反応槽内に重合開始剤用のフィードラインを通じて供給、好ましくは連続的に滴下するのが好ましい。また、重合開始剤成分が2種以上の場合には、別々のフィードラインを通じてそれぞれの重合開始剤成分を供給するのが好ましいが、別々のフィードラインを途中で合流させ、各重合開始剤成分を混合して反応槽内に供給するようにしてもよし、供給元の貯蔵タンク内で予め各重合開始剤成分を混合して1つのフィードラインを通じて供給するようにしてもよい。また、重合開始剤の分解性等に鑑みて、実質的に連続的に滴下する量を全使用量の50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、100質量%とすることが最も好ましい。なお、連続的に滴下する量が全使用量の50質量%未満であっても、本発明の範囲を外れるものではない。また、全使用量の100質量%を連続的に滴下しない場合とは、残る重合開始剤を何度かに分けて断続的に滴下するようにしてもよいし、残る重合開始剤を重合初期に反応槽内に仕込んでおいてもよい。
【0066】
重合開始剤の供給時間は、過酸化水素等の比較的分解が遅い重合開始剤成分の場合、後述する重合温度、重合pHにおいて、単量体成分の供給終了時間よりも早く終了することが好ましい。単量体成分の供給終了時前で終了しても、反応そのものに悪影響はなく、また本発明では、グラスライニングにより、腐食性物質が反応初期から存在しても重金属の溶出が起こることはないため、得られる重合体組成物の性能及び品質に悪影響を及ぼす恐れはないものといえる。
【0067】
なお、ここでいう単量体成分の供給終了時間は、単量体成分を2種以上用いる場合には、全ての単量体成分を供給し終えた時点をいう。したがって、連続的に滴下する場合であっても、断続的に何回かに分けて供給する場合であっても、最後の単量体成分を供給し終えた時点となる。また、重合開始剤、連鎖移動剤その他の添加剤成分の供給終了時間についても、単量体成分の供給終了時間と同様に定義できる。また、重合終了時点とは、重合の際に用いられる重合用組成物を全て反応槽内に供給し終えた時点、あるいは、熟成時間を設定する場合はその終了時点をいう。熟成時間とは、重合用組成物を全て反応槽内に供給し終えた時点から、その後所定時間にわたって重合を継続する時間をいう。
【0068】
他方、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い重合開始剤成分の場合は、単量体成分の供給終了時間まで供給することが好ましく、単量体成分の供給終了よりも遅く終了することがより好ましい。得られる水溶性重合体組成物中の単量体残量を減じることが出来るからである。単重体成分の供給終了時または供給終了前にこれら重合開始剤成分の供給を終了した場合には、重合反応に悪影響はないが、単量体残存の問題がある。
【0069】
重合開始剤の供給の開始は適宜で良い。例えば、単量体成分の供給開始前でも良い。重合開始剤併用系の場合は、―つの重合開始剤の供給を開始したのち、一定時間経過してから、あるいは一つの重合開始剤の供給を終了してから、別の開重合始剤の供給を開始するようにしても良い。要するに、重合開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良いのである。
【0070】
<連鎖移動剤>
本発明にて水溶性重合体組成物を製造するには、重合反応に悪影響を及ぼさない範囲内で、連鎖移動剤を重合開始剤と併用しても良い。連鎖移動剤としては、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、次亜リン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、重合開始剤である過硫酸塩に加えて、重亜硫酸塩を連鎖移動剤として併用することで、得られる重合体組成物が必要以上に高分子量化することが抑制され、低分子量の重合体組成物を効率よく製造することができる点で有利である。これらは単独で用いられるか、併用される。
【0071】
連鎮移動剤の使用量としては、質量比で重合開始剤量の2倍以内であることが好ましい。2倍を越えて使用しても、もはや添加効果は現れず、却って共重合体の純分の低下を招き、好ましくない。
【0072】
連鎮移動剤の反応槽への供給形態としては、制限されるものではなく、上記溶媒に溶解して連鎮移動剤溶液の形態で添加するのが望ましいが、連鎮移動剤のみ、すなわち、無溶媒の形態で供給してもよい。
【0073】
連鎮移動剤溶液として用いる場合の濃度としては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものであり、特に制限されるべきものではない。
【0074】
連鎖移動剤の供給方法としては、重合中に反応槽内に連鎖移動剤のフィードラインを通じて供給、好ましくは連続的に滴下するのが好ましい。すなわち、単量体成分や重合開始剤とは異なるフィードラインを通じて滴下ノズルより反応槽内に滴下するのが望ましい。
【0075】
連鎖移動剤の供給時間は、限定されず、場合に応じて適宜に設定すれば良い。
【0076】
<その他の添加剤>
本発明では、必要に応じて、pH調整剤など他の重合用組成物を適宜利用してもよい。
【0077】
<重合方法>
重合方法としては、例えば、装置的には、内部をグラスライニングしてなる反応槽を備えてなるものであればよく、好ましくはさらに反応槽内に位置する装置部材がグラスライニングされている製造装置を備えてなるものであり、攪拌重合等が挙げられ、方法的には、溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明の特徴を最大限に活用する上で、攪拌溶液重合が好ましい。また、溶液重合には、その溶媒の種類の観点から、溶剤系重合、水系重合があるが、溶媒の還流が起こる高温での重合が可能となる点、さらに安全性の点から水系重合が好ましい。従って、最も好ましい重合方法は攪拌溶液水系重合である。
【0078】
攪拌溶液水系重合について、以下詳細に説明する。
【0079】
不飽和ジカルボン酸系単量体の場合、全単量体使用量の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは全量を反応槽内に初期仕込みする。初期仕込量が50質量%未満であると未反応物が多くなり好ましくない。
【0080】
不飽和モノカルボン酸系単量体の場合、全単量体使用量の70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは全量を、実質的に連続的に滴下することにより反応槽内に供給するのが望ましい。滴下による供給の割合が70質量%未満、すなわち、初期仕込量が30質量%以上であると、非常に高分子量化しやすい。また、共重合体系の場合は、重合初期にブロック的に重合し、好ましくない。
【0081】
反応槽への単量体成分の供給時間は、単量体成分の重合性を考慮して適宜設定すれば良いが、好ましくは30〜240分間、より好ましくは60〜180分間である。供給時間が30分間より短いと、単位時間内における単量体成分の添加量が多くなり、高濃度化が起きて、非常に高分子量の重合体を生成する。また、共重合の場合は、単量体がブロック的に重合してしまう恐れがある。240分を越えると、生産性が著しく落ちて、経済上好ましくない。
【0082】
なお、かかる単量体成分の供給時間は、重合の際に用いる全ての単量体成分のうち、最初に添加し始めた単量体成分の添加開始時点から、最後に添加し始める単量体成分の添加終了時点までに要した時間をいう。
【0083】
さらに、供給開始時点は、▲1▼最初に添加し始める単量体成分が連続的に添加される場合には、該単量体成分を添加し始める時点をいい、▲2▼最初に添加し始める単量体成分を何度かに分けて断続的に添加する場合には、初回分を添加し始める時点をいう。添加終了時点は、▲1▼最後に添加し終える単量体成分が連続的に添加される場合には、添加を終える時点とし、▲2▼何度かに分けて断続的に添加される場合には、最終回分を添加し終えた時点とする。なお、不飽和ジカルボン酸系単量体のようの全量初期仕込みするものだけの場合には、該単量体の供給時間は0分間ということになる。本発明ではかかる実施形態を排除するものではない。
【0084】
<重合時のpH>
重合時のpHについては、制限されないが、不飽和ジカルボン酸系単量体を用いる場合については以下の通りとするのが好ましい。
【0085】
不飽和ジカルボン酸系単量体を用いる場合は、前述の通り、その全使用量に対して50質量%以上を初期仕込みするが、初期仕込終了時(供給開始直前あるいは重合開始直前)のpHは5〜13であり、好ましくは5〜12である。その後、他の添加物(他の単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、pH調整剤等)の供給開始により、重合が開始され、重合が進行するに連れ、徐々にpHが低下していくように設定されるのが好ましく、供給終了時点でpH4〜8に調整されるのが好ましい。これは以下の理由による。
【0086】
―般に、不飽和ジカルボン酸系単量体は、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体に比べ、重合性が著しく低いため、初期仕込の段階で多く添加するのであるが、そのため、重合初期では不飽和ジカルボン酸系単量体の濃度が非常に高く、ブロック的に重合してしまう恐れがある。そこで、このジカルボン酸系単量体の重合性を制御する必要がある。ジカルボン酸系単量体は、カルボキシル基の双方ともが酸型、―方が酸型(すなわち半中和型)、双方ともが中和型と、3種類存在する。この中で、半中和型が反応性に最も富むことが知られている。そこで、この半中和型の存在量を制御することにより、ジカルボン酸系単量体の重合性を制御することが出来るのである。すなわち、重合初期段階ではある程度存在量を制限して重合性をある程度制御し、重合が進行しジカルボン酸系単量体の濃度が低減していくと、重合性も落ちてくるので、半中和型存在量を増大させていく必要がある。これらのことに鑑み、上記pHの設定を行う。
【0087】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらは単独で用いられるか、併用される。これらの中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。本明細書では、これらのものを単に「pH調整剤」あるいは「中和剤」と言う場合がある。
【0088】
<重合温度>
重合温度は、25℃から反応液の沸点の範囲であればよいが、重合開始時点から重合終了時点までは、重合開始から終了までの全反応時間の少なくとも10%以上の時間、好ましくは50%以上の時間、さらに好ましくは80%以上の時間、最も好ましくは反応時間中常時、反応液の沸点とするのが好ましい。特に、本発明では、適切な体積と伝熱面積との比率の反応槽とコンデンサを用いることにより、優れた冷却効果を得ることができるので、反応液の沸点(この温度では溶媒の還流が起こる)という高温での重合が可能となるものである。さらに、反応液の沸点で行うことは、温度制御が非常に容易となり、そのため、得られる重合体の品質が非常に安定したものとなる点で好ましいものといえる。
【0089】
沸点でない時間においては、反応液の沸点近傍の温度とすることが好ましく、少なくとも80℃以上とすることが好ましい。80℃未満とすると、重合開始剤の使用効率が悪くなり、得られる水溶性重合体組成物の単量体残存量が増大して、好ましくない。なお、重合温度の下限を25℃としたのは、常温(25℃)から重合を開始してもよいためである。
【0090】
ここで、重合終了時点は、上記に規定したように、重合に用いる全ての成分の供給が終了した時、あるいは、熟成時間を設定する場合はその終了時をいう。
【0091】
初期仕込時および重合終了後のpH調整や濃度調整を行う際には、その温度は、特に限定されず適宜設定すれば良い。
【0092】
<重合濃度>
重合濃度は、限定されず、必要に応じて適宜設定するが、好ましくは初期仕込時で35〜75質量%、より好ましくは40〜70質量%である。35質量%未満では、不飽和ジカルボン酸系単量体の反応性が非常に悪く、75質量%を越えると、単量体の水溶性がなくなって反応液がスラリー状となり、沈澱物が生じ、均一重合となり難い。重合終了時の濃度は35〜65質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。これに見合うように添加物の濃度調整を行う。重合終了時濃度が35質量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなり、反応性が低くなって、得られる重合体中の単量体残存量が多くなり易い。65質量%を越えると、非常に高粘度となり、均一重合とならず、またハンドリング面からも好ましくない。
【0093】
<重合圧力>
重合圧力は、得られる重合体組成物の使用目的によって、適宜最適な圧力条件を設定すればよく、常圧(大気圧)、加圧、減圧のいずれでも良いが、本発明の装置では、反応系内を密閉して留出物をコンデンサで凝縮液化し還流しながら行うことが望ましい。好ましくは、重合中、亜硫酸ガスの放出を防ぎ、低分子量化が可能であることから、反応系内を密閉し、常圧下または加圧下で行うのがよい。また、溶媒の還流が起こる高温での重合が可能なように装置設計されてなる装置特性を有効に活用でき、また加圧装置や減圧装置を併設する必要がなく、耐圧製の反応槽や配管を用いる必要がないなど点から、反応系内を密閉し、常圧(大気圧)下で行うのがよい。
【0094】
<重合雰囲気>
また、反応系内の密閉した内部の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいが、不活性雰囲気とするのがよく、例えば、重合開始前に反応系内を窒素などの不活性ガスで置換することが望ましい。これにより、反応系内の雰囲気ガス、例えば、酸素ガスなどが液相内に溶解し、重合禁止剤として作用し、開始剤である過硫酸塩が失活することにより低減するのを防止することができることから、より低分子量化が可能となる点で有利である。
【0095】
<重合体組成物の生産方式>
本発明では、上記重合反応を回分式または連続式のいずれによっても行ないうるが、回分式で行うようにするのが好ましい。
【0096】
また、本発明の製造方法では、内部をグラスライニング加工した反応槽を用いて重合を行う際に、使用用途によっては、重合中および/または重合後に、反応槽内の溶液中で重金属イオンを形成し得る添加剤を供給してもよい。
【0097】
≪水溶性重合体組成物≫
次に、本発明の製造方法により得られてなることを特徴とする、重金属成分を含有しない水溶性重合体組成物の種類は、限定されるものではないが、重合体の種類が水溶性重合体である場合が、本発明の効果が最も顕著であるので好ましい。特に好ましくは、洗剤組成物に好適に用いることのできる、多くのカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、またはこれらの共重合体、あるいはこれらにスルホン酸基や水酸基等が導入された水溶性重合体組成物である。
【0098】
なお、本発明の水溶性重合体組成物とは、重合により得られた水溶性重合体を含む溶液、好ましくは水溶性重合体水溶液そのものであってもよいし、さらに固形分濃度を調整するために水などの溶媒を適量添加ないし除去してなるものであってもよいし、該溶媒を除去し乾燥して固形物としたものであってもよい。さらに必要に応じて、重合により得られた水溶性重合体の性能に影響を与えない範囲で、適当な添加剤、例えば、保存安定剤(紫外線吸収剤や抗酸化剤など)、着色剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、難燃化剤、発泡剤などを加えてなるものであってもよいなど、水溶性重合体を含むものであればよく、その形態や成分組成などに関しては特に制限されるべきものではない。このように、本発明の水溶性重合体組成物は、その名称に拘泥されることなく最も広義に解釈されるべきものであり、単に水溶性重合体溶液だけに狭く解釈されるべきものではない。製造工程の簡素化の観点からは、重合により得られた水溶性重合体を含む溶液をそのまま、洗剤組成物、さらには他の分散剤、スケール防止剤等として利用するのが望ましい。また、製品の品質安定化、保存安定性、輸送コスト低減の観点からは、水溶性重合体水溶液のようにかさばる形態ではなく、固形物として輸送し、洗剤組成物、さらには他の分散剤、スケール防止剤等としてそのまま使用または配合する際に、必要に応じて水溶液化してもよいなど、使用用途に応じて適宜最適な形態や成分組成にすればよいといえる。
【0099】
<重合体組成物の重量平均分子量>
本発明の製造方法により得られる重合体組成物は、その使用目的に応じて、所望する重量平均分子量の水溶性重合体組成物を得ることができるが、重量平均分子量500〜2000000、好ましくは1000〜1000000の重合体組成物を得るのに適している。本発明では、これらの重量平均分子量の範囲を外れる重合体組成物を得ることもできるが、重量平均分子量が500未満であるとキレート能が低下するものとなるおそれがあり、2000000を越えると分散能が低下するものとなるおそれがある。
【0100】
<重合体組成物の分散度>
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物は、その使用目的にもよるが、分散度が1.5〜5.0であるのが良く、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜4.0である。分散度が上記範囲であれば、洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れる。とりわけ分散度が1.5以上である方が、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体水溶液等の低分子量の水溶性重合体組成物の製造が繁雑とならず、生産性が良好であり、カルシウムイオン捕捉能も上昇するため好ましく、5.0以下であるとカルシウムイオン捕捉能、クレー分散能、スケール防止能などの性能が高くなるため好ましい。
【0101】
<重合体組成物中の重金属濃度>
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物は、重金属含有量が水溶性重合体組成物中の固形分量に対して0.1質量ppm未満である。ここで、0.1質量ppm未満としたのは、分析に用いたICP(inductively coupled plasma;誘導結合プラズマ)発光分光分析法により検出限界が0.1質量ppmであり、かかる検出限界よりも重金属含有量が低いため、上記規定としたものであり、実質的に重金属成分を含有しないものといえる。重金属含有量が0.1質量ppmを超える場合には、得られた水溶性重合体組成物を洗剤組成物に用いた場合に、該重金属成分量に応じて、洗浄力、特に漂白作用が低下するようになる。
【0102】
なお、上記重金属成分としては、反応槽の母材金属材料の種類等によっても異なるが、Fe,Ni,Cr、Moなどがあり、これらの各成分がいずれも上記ICP発光分光分析法では検出されないことが必要である。
【0103】
<残存単量体量>
水溶性重合体組成物中の残存単量体量は、本発明によれば非常に少なくすることが出来るが、純分換算において5000ppm以下、好ましい実施形態では4000ppm以下とすることができる。
【0104】
<重合物および/またはゲル物量>
水溶性重合体組成物中の重合物および/またはゲル物量は、反応槽の内部をグラスライニングすることで、内壁面の粗面化を抑制できるので、液面境界部での重合物および/またはゲル物の形成を防止することができるため、非常に少なくすることが出来るものであり、1000質量ppm以下に抑えることができるものである。
【0105】
<水溶性重合体組成物の好適な用途>
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物は、その特徴を活かして、洗剤組成物に好適に利用することができるほか、無機顔料分散剤、スケール防止剤、キレート剤、洗剤ビルダー、繊維処理剤、木材パルプ漂白助剤等の用途に用いることができ、それぞれの使用目的に応じて、その他の配合成分を混合すればよい。
【0106】
(洗剤組成物)
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物の主用途は、洗剤組成物は、詳しくは極微量な重金属成分の存在により、その漂白作用の低下がみられる過酸化物などの漂白成分を配合する洗剤組成物である。かかる用途において、本発明の重金属を含まない水溶性重合体組成物の特性を有効に発揮し得るためである。
【0107】
本発明により得られる水溶性重合体組成物の配合量は、洗剤組成物全体の1〜20質量%であり、界面活性剤の配合量が洗剤組成物全体の5〜70質量%であると好ましく、場合により酵素を5質量%以下の範囲で添加しても良い。
【0108】
また本発明では、漂白成分の配合量が、洗剤組成物全体の0.1〜5質量%の範囲であることが望ましい。すなわち、本発明では、重金属を含まない水溶性重合体組成物を配合することで漂白成分が分解されるなどにより漂白作用の低下を招くことがないため、漂白成分を過剰に配合する必要が無く漂白成分の配合量を抑えることができるものである。なお、漂白成分の配合量が0.1質量%未満の場合には、たとえ重金属を含まない水溶性重合体組成物を適量配合したとしても、十分な漂白作用を得ることが困難な場合がある。一方、漂白成分の配合量が5質量%を超える場合には、すでに充分な漂白作用が得られており、更なる添加に見合うだけの効果が得られないため不経済である。
【0109】
また、本発明により得られる水溶性重合体組成物の配合量が1質量%未満であると添加効果が現れず、また20質量%を超えるともはや添加した効果が洗浄力の向上につながらず経済的にも不利となり好ましくない。また、洗剤組成物の主剤である界面活性剤の量が上記の範囲を外れると、他の成分とのバランスが崩れ洗剤組成物の洗浄力に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。酵素を配合した場合、洗浄力の向上に寄与するが、5質量%を超えると、もはや添加した効果が現れず経済的にも不利となり好ましくない。
【0110】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用することができる。アニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。
【0111】
ノニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。
【0112】
両性界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができ、カチオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0113】
本発明における洗剤組成物に配合される酵素としてはプロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等を使用することができる。特にアルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
【0114】
本発明における洗剤組成物に配合される漂白成分としては、例えば、過酸化水素、過ホウ酸塩、炭酸ナトリウムやリン酸塩の過酸化物の水和物、過硫酸カリウムなどの過酸化物系漂白剤を用いる場合に、特にその漂白作用を有効に保持することができる点で有用であるが、さらに他の漂白成分、例えば、液体塩素漂白剤、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系漂白剤、二酸化硫黄、亜硫酸、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、ヒドロ亜硫酸塩、スルホキシル酸ホルムアルデヒドのナトリウム塩、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元漂白剤などを用いてもよい。
【0115】
さらに、上記洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、蛍光剤、漂白助剤、香料等の洗剤組成物に常用される成分を配合してもよい。また、ゼオライトを配合してもよい。
【0116】
アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等を用いることができる。キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等を必要に応じて使用することができる。あるいは公知の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを洗剤組成物としての効果を損なわない範囲で使用しても良い。
【0117】
(洗剤ビルダー)
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物の好適な用途である洗剤ビルダーは、当該水溶性重合体組成物を含有してなるものであればよい。これにより、水溶性重合体組成物の分子量が制御できており、また残存する単量体や重合開始剤などの不純物量が格段に低減されているため、水溶性重合体組成物が本来有する極めて優れた分散能、キレート能、耐ゲル性を発現できる安全性に優れた水溶性の洗剤ビルダーを提供できる。そのため、洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れるものである。さらに長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質で高性能で安全性、安定性に優れた洗剤ビルダーを提供できる。
【0118】
なお、本発明の洗剤ビルダーにおいては、上記水溶性重合体組成物以外の他の配合成分や配合比率に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知の洗剤ビルダーに有効に適用されてなる各種成分およびその配合比率に基づき、洗剤ビルダーとしての作用効果を損なわない範囲で、適宜適用(利用)することができるものであるが、好ましくは、本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物のみからなるものである。
【0119】
(水処理剤)
水処理剤は、好ましくは、本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を配合した組成物とすることもできる。いずれの場合でも、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で公知の水溶性重合体を含んでもよい。
【0120】
(顔料分散剤)
顔料分散剤は、好ましくは、本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0121】
何れの場合においても、この分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイ等の無機顔料等の分散剤として良好な性能を発揮する。例えば、本発明の顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0122】
顔料分散剤の使用量は、顔料100質量部に対して0.05〜2.0質量部が好ましい。使用量が0.05部より少ないと、充分な分散効果が得られず、逆に2.0質量部を超えると、もはや添加量に見合った効果が得られず経済的にも不利となる恐れがあるため好ましくない。
【0123】
(繊維処理剤)
繊維処理剤は、本発明の製造方法により得られる低分子量の水溶性重合体組成物を単独で使用してもよいが、染色剤、過酸化物、および界面活性剤等の添加剤を配合した組成物として使用することもできる。上記添加剤としては、繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。本発明により得られる水溶性重合体組成物と上記添加剤の比率は特に限定されるものではないが、本発明により得られる水溶性重合体組成物1質量部に対して、上記添加剤を、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.2〜80質量部、さらに好ましくは1〜50質量部という割合で配合する。上記添加剤の配合量が0.1質量部未満であると、添加効果が不十分になる傾向があり、100質量部を超えると、本発明の水溶性重合体組成物の持つ性能が十分に発揮できない傾向がある。また、本発明により得られる水溶性重合体組成物を含む繊維処理剤は、性能や効果を阻害しない範囲で、さらに、本発明により得られる水溶性重合体以外の重合体を含んでいてもかまわない。繊維処理剤中の本発明により得られる水溶性重合体組成物の含有量は、特に限定はされないが、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは5〜100質量%である。
【0124】
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体組成物を含む織維処理剤を使用できる織維は、特に限定はされないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ナイロン、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品などが挙げられる。
【0125】
本発明の製造方法により得られる低分子量の水溶性重合体組成物を含む繊維処理剤を精錬工程に利用する場合には、本発明により得られる水溶性重合体組成物とアルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明により得られる水溶性重合体組成物と過酸化物とアルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合するのが好ましい。特に本発明では、重金属成分を含有しない水溶性重合体組成物を配合するため、過酸化物が水溶性重合体組成物中に混入される極微量の重金属成分により分解されることも無いため、こうした過酸化物が過剰量必要となることも無く、該過酸化物の配合量を抑えることができる点で有用である。
【0126】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に記載の「%」は、特に断りがなければ「質量%」を示す。
【0127】
また、本発明にかかる水溶性重合体組成物の重金属濃度は、以下に示す方法により測定または定量した。
【0128】
重合体組成物中の重金属濃度の測定
重合により得られた(メタ)アクリル酸系重合体組成物への重金属成分の溶出濃度をICP(Inductively Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)発光分光分析法によって定量した。ここでは、反応槽及び撹拌機の反応槽内部に位置する装置部材の母材金属材料であるJISステンレス鋼のSUSの成分であるFe、Cr、Ni、Moにつき測定した。
【0129】
実施例1
温度計、撹拌機およびコンデンサーを備えた2リットルのガラス製反応容器にイオン交換水156.5gを初期仕込みし、撹拌下、90℃まで昇温した。次いで撹拌下、90℃を維持しながら、80%アクリル酸水溶液427.5g、37%アクリル酸ナトリウム水溶液63.5g、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液71.4gをそれぞれ300分で反応容器内に滴下した。また、同時に15%過硫酸ナトリウム水溶液66.7gを310分かけて反応容器内に滴下した。過硫酸ナトリウム水溶液滴下終了後、さらに90℃を維持して30分間反応させた。その後48%水酸化ナトリウム水溶液366.7gを投入し、ポリアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を得た。
【0130】
合成したポリアクリル酸ナトリウム重合体に含まれる重金属(Fe、Ni、Cr、Mo)量をICPにより測定した。得られた結果を表1に示す。
【0131】
比較例1
温度計、撹拌機およびコンデンサーを備えた2リットルのSUS製反応容器にイオン交換水156.5gを初期仕込みし、撹拌下、90℃まで昇温した。次いで撹拌下、90℃を維持しながら、80%アクリル酸水溶液427.5g、37%アクリル酸ナトリウム水溶液63.5g、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液71.4gをそれぞれ300分で反応容器内に滴下した。また、同時に15%過硫酸ナトリウム水溶液66.7gを310分かけて反応容器内に滴下した。過硫酸ナトリウム水溶液滴下終了後、さらに90℃を維持して30分間反応させた。その後48%水酸化ナトリウム水溶液366.7gを投入し、ポリアクリル酸ナトリウム重合体水溶液を得た。
【0132】
合成したポリアクリル酸ナトリウム重合体に含まれる重金属(Fe、Ni、Cr、Mo)量をICPにより測定した。得られた結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
上記表1において、未検出とは、ICP発光分光分析法での検出限界未満をいう。
【0135】
【発明の効果】
本発明では、工業上の利用性に優れた0.1〜50m3の体積を有する反応槽の内部をグラスライニングしてなることで、洗浄力、とりわけ漂白作用の低下を招くことのない洗剤組成物の配合成分として極めて有用な水溶性重合体組成物を製造することのできる装置およびこれを用いた製造方法を提供することができる。その結果、洗浄力、とりわけ漂白作用の高い洗剤組成物の配合成分の1種である洗剤ビルダーとして好適に用いられる分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた水溶性重合体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の重合体組成物の製造装置を模式的に表した概略図である。
【符号の説明】
101…グラスライングした反応槽、
103…コンデンサ、
105…留出用ライン、
107…管内流体入口、
109…還流用ライン、
111…管内用流体出口、
113…管外流体入口、
115…管外流体出口、
117…撹拌機、
119…外部ジャケット、
121…フィードライン、
123…ノズル。
Claims (3)
- 内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いて、重合開始剤の存在下で(メタ)アクリル酸(塩)の重合を行った水溶性重合体組成物、および過酸化物を含有してなるものであって、
前記重合開始剤が、過硫酸塩であることを特徴とする繊維の漂白工程用繊維処理剤。 - 重金属を含有しない請求項1に記載の繊維の漂白工程用繊維処理剤。
- 内部をグラスライニングしてなる反応槽を用いて、重合開始剤の存在下で(メタ)アクリル酸(塩)を重合して水溶性重合体組成物を得る工程と、
上記工程で得られた水溶性重合体組成物と過酸化物を配合する工程と、
を有するものであって、
前記重合開始剤が、過硫酸塩である繊維の漂白工程用繊維処理剤の製造方法。
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