JP2004051683A - 水溶性重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合用組成物を用いて重合を行い、その後に中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行って水溶性重合体を製造する方法において、中和度調整中の中和温度を40℃以上80℃未満の範囲に保持することを特徴とする水溶性重合体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系の分散剤、スケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどの用途として好適に用いられる水溶性重合体を短時間で効率よく生産することのできる製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体やポリマレイン酸(塩)系重合体などの水溶性重合体のうち、低分子量のものは、無機顔料や金属イオンなどの分散剤やスケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどに好適に用いられている。このような低分子量の水溶性重合体を得る方法としては、たとえば、特開平11−315115号公報や特開2000−80396号公報等に開示されている方法など多くの方法が知られている。
【0003】
上記公報に代表される従来公知の製法方法では、1種または2種以上の水溶性の単量体成分、さらには開始剤や連鎖移動剤などの添加剤成分を、反応容器内に予め仕込み(単に、初期仕込みともいう)重合温度まで加熱しておいた溶媒中に、所定時間かけて滴下し、その後、さらに一定の時間(熟成時間)をかけて重合を完結し、使用用途に応じて、重合終了後、反応液を放冷し、中和剤を反応液に徐々に滴下して所定の中和度またはpHに調整して所望の水溶性重合体を得るというものである。
【0004】
上記公報に記載の製造方法により得られる低分子量の水溶性重合体においては、優れた分散能、キレート能、耐ゲル性を奏することができるため、水系の分散剤、スケール防止剤、洗剤ビルダーなどの幅広い分野に有効に利用することができるというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
こうした製造方法においては、重合終了後の反応液中のポリアクリル酸等の重合体を中和剤で中和して中和度の調整を行う際、分子内のカルボキシル基の量が多いので中和熱が極めて大きくなるために、該中和熱により激しく発熱し、反応液が容易に沸点まで到達する問題があった。
【0006】
そのため、中和度調整中に急激な温度上昇を来たさないように、重合後に反応液を所定温度まで放冷し、さらに反応容器を水冷ないし氷浴して除熱を行いながら、徐々に中和剤を滴下して中和度調整を行わなければならず、中和度調整中の中和温度を40℃以上に保つことは困難であり、10〜30℃が適正温度とされていた。その結果、該中和度の調整に要する時間は、重合に要する時間の数倍も長くかかるものとなっていた。
【0007】
さらに、本発明者らは、上記適正温度にて徐々に中和剤を滴下しながら長い時間をかけて中和度調整して得られた水溶性重合体が、意外にも中和度調整前の無色透明なものに比して変色してしまうことがあるため、こうした場合には、その使用用途が大幅に制限されてしまうという新たな問題が生じることがあることを見出したものである。
【0008】
さらに、上記公報に記載の製法方法を、工業的に量産可能な生産設備を用いて行う場合でも、大型化した反応槽内の反応液は、反応槽本体の外周部に周設されたジャケットを用いて、次のように温度管理されている。重合中は該ジャケットに加熱用の熱媒を通じて反応液が重合温度、例えば、反応液の沸点ないしその近傍温度を所定時間保持できるように温度管理がなされており、また中和度調整中は、該ジャケットに除熱用の冷媒を通じて除熱することで、反応液が急激に温度上昇しないように、中和剤の供給速度を制限しながら上記適正温度を保持できるように温度管理が行われている。
【0009】
このように、装置のスケールアップに伴い、中和度調整中に反応液を冷却する上で、反応容器である実験用フラスコを水冷ないし氷浴するのに替えて大型反応槽付属のジャケットを用いて反応槽の周りから冷却するようにしている。
【0010】
しかしながら、分子内に多くのカルボキシル基を有し巨大な中和熱を発生するポリ(メタ)アクリル酸等の重合体の中和度調整では激しく発熱するので、中和剤の供給速度を制限しながら時間をかけて徐々に滴下していく必要があり、中和度調整に時間を要し、さらに中和度調整前の無色透明なものに比して変色してしまうという問題は、たとえ装置を大型化しても、上記公報の製造方法の実施例を追試した結果と何ら変わるものではなかった。
【0011】
そのため、(メタ)アクリル酸塩系重合体のような水溶性重合体では、単量体成分として(メタ)アクリル酸塩を用いて重合を行って所望の(メタ)アクリル酸塩系重合体を得る方法(こうした方法を「塩型」ともいう)よりも、(メタ)アクリル酸を主成分とした単量体成分を用いて重合を行い、重合後に中和剤を用いて中和度の調整を行って所望の(メタ)アクリル酸塩系重合体を得る方法(こうした方法を「酸型」ともいう)の方が、分子量分布が狭く、分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた重合体が得られるにもかかわらず、中和度の調整に要する時間が長く「塩型」に比べて高コストであり、また着色の問題があるため、その用途が制限されるなどの問題もあった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、水系の分散剤、スケール防止剤、洗剤ビルダーなどの用途として好適に用いられる分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた低分子量の水溶性重合体を「酸型」により、その特性を損なうことなく変色(着色)を防止した上で、短時間で効率よくかつ安価に生産することのできる製造方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、低分子量の水溶性重合体の製造方法につき、更なる生産性の向上を求めて鋭意検討した結果、以下の知見を得、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
分子内にカルボキシル基を大量に有し、その中和熱が極めて大きなものとなるポリ(メタ)アクリル酸等の重合体では、中和剤の供給速度を制限し、適正温度で中和することが必要と考えられている。
【0015】
しかしながら、反応槽内に中和剤を供給しながら反応槽内で発生する熱を除去し、かかる反応槽内の反応液が沸点しないようにすればよいのであって、従来の公知の製造方法のように反応槽内の反応液を冷却する必然性は無く、また既に重合が完了しており、反応槽外部に反応液を抜き出しても重合体に問題を生じさせるものでなく、また外部循環中に送液ポンプや多管式熱交換器などの装置に重合体を含む反応液を通じても該重合体が水溶性の低分子量であるために予想以上に良好な送液を達成できることを見出した。かかる知見から、反応槽外部に反応液を抜き出して冷却すれば、冷却能力を飛躍的に向上させる上で極めて有用かつ効果的であり、たとえ中和度調整中であっても反応液の温度を任意に制御し得ることを見出し得たものである。
【0016】
さらに、中和度調整中に反応液の温度が従来適正と考えられている温度範囲内であっても、場合によっては中和度調整前の無色透明なものに比して変色することの原因についても、混入する不純物や残留する単量体成分などの原料などについては検証されてきたが、従来の中和度調整法ではあまりに長い時間を要し極めて高コスト化することになるため、より低温域での反応液の特性については十分な検討がなされていないのが現状であった。
【0017】
しかしながら、上述したように中和度調整中であっても反応液の温度を任意に制御し得ることの知得により、更なる低温域での重合体の特性につき検討した結果、所定の低温域では、従来の変色の問題が生じず無色透明なままで中和度調整を完了し得ることを見出し得たものである。
【0018】
すなわち、上記知見に基づき、反応槽内の反応液を冷却する能力には、自ずと限界があるために制限されていた中和温度を、急激な温度上昇を抑え適正温度とされていた温度範囲よりも低い温度域であっても常に安定して保持することができることを見出したものである。これにより、中和剤の供給速度も速めることができ、中和度の調整に要する時間を大幅に短縮することができ、かつ無色透明性を保持することができ、低分子量の水溶性重合体を、「酸型」により、その特性を損なうことなく変色(着色)を防止した上で、短時間で効率よく、かつ安価に生産するという本発明の目的を達成することができるものである。
【0019】
すなわち、本発明の目的は、重合用組成物を用いて重合を行い、その後に中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行って水溶性重合体を製造する方法において、前記中和度調整中の中和温度を40℃以上80℃未満の範囲に保持することを特徴とする水溶性重合体の製造方法により達成されるものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき説明する。
【0021】
本発明に係る水溶性重合体の製造方法は、重合用組成物を用いて重合を行い、その後に中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行って水溶性重合体を製造する方法において、前記中和度調整中の中和温度を40℃以上80℃未満の範囲に保持することを特徴とするものである。これにより重合体の着色を防止することができ、無色透明性を保持することができ、さらに本発明者らが見出した外部循環除熱装置を利用して冷却することで、中和剤の供給速度を制限しなくともよいので、中和温度を低温制御しつつ中和工程を短縮することができる。
【0022】
本発明の製造方法を用いて得られる重合体の種類は、限定されないが、重合体の種類が水溶性重合体である場合が、本発明の効果が最も顕著であるので、好ましい。特に好ましくは、多くのカルボキシル基を有するポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、マレイン酸(塩)系重合体、またはこれらの共重合体、あるいはこれらにスルホン酸基や水酸基等が導入された重合体が好適である。これは、変色が生じやすいこれらの重合体の場合に、本発明の着色防止効果が最も顕著に得られるためである。
【0023】
以下に、本発明に係る重合体の製造方法を製造工程に沿って説明する。
【0024】
本発明に係る重合体の製造方法では、(1)重合工程として、重合用組成物を用いて重合を行い、(2)中和工程として、重合工程で得られた反応液に中和剤を供給して該反応液の中和度の調整を行うものであり、中和度調整中の中和温度を40℃以上80℃未満の範囲に保持することを特徴とするものである。
【0025】
(1) 重合工程
重合工程では、従来公知の各種方法を適用することができるものであり、重合の際に用いる重合用組成物としては、単量体成分のほか、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤、多価金属イオン等が必要に応じて、適宜用いられるものである。
【0026】
<単量体成分>
本発明の製造方法に用いることのできる単量体成分としては、特に制限されるべきものではなく、重合体の種類に応じて適宜決定されるべきものである。本発明の水溶性重合体の製造に用いられる単量体成分の例としては、以下の▲1▼〜▲4▼に示すものが挙げられる。
【0027】
▲1▼ カルボキシル基を含有する単量体
カルボキシル基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸等のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸系単量体、これらの塩および無水物が挙げられる。
【0028】
ここで、塩とは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩等が挙げられ、これらは単独で使用されるか、併用される。以下では、これらを単に塩とのみ表記することがある。
【0029】
▲2▼ スルホン酸基を含有する単量体
スルホン酸基を含有する単量体としては、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸等のモノエチレン性不飽和スルホン酸系単量体およびこれらの塩が挙げられる。
【0030】
▲3▼ 水酸基を含有する単量体
水酸基を含有する単量体としては、例えば、3−メチル−2−ブテン−1−オール(以下、プレノールともいう)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(以下、イソプレノールともいう)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(以下、イソプレンアルコールともいう)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ビニルアルコール等のモノエチレン性不飽和水酸基含有系単量体が挙げられる。
【0031】
▲4▼ その他の単量体
その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸等の含リン単量体が挙げられる。
【0032】
これら単量体▲1▼〜▲4▼は、単独で用いられるか、併用される。共重合体を得る場合は、必要に応じ、得られる重合体の水溶性を損なわない範囲で、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等の疎水性単量体を併用してもよい。
【0033】
水溶性重合体を、その特徴を活かして、無機顔料分散剤、スケール防止剤、キレート剤、洗剤組成物、繊維処理剤、木材パルプ漂白助剤等の用途に用いる場合、それぞれの使用目的に応じて、その他の重合体原料を配合する。
【0034】
以下に好ましい単量体配合を示す。いずれも、単量体成分全量を100mol%とする。
【0035】
(a)単量体▲1▼を好ましくは50mol%以上、より好ましくは80mol%以上、最も好ましくは100mol%用いる。単量体▲1▼の中では、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)およびこれらの無水物が特に好ましい。アクリル酸(塩)/マレイン酸(塩)共重合体の場合、両単量体のモル比は40〜60/60〜40が好ましい。なお、当該(a)の配合例では、上記単量体▲1▼以外の成分およびその配合比率については、特に制限されるものではなく、例えば、上記単量体▲2▼〜▲4▼を適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよいし、さらに他の成分(例えば、疎水性の単量体成分)などを加えて適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(b)単量体▲1▼を50mol%以上、単量体▲2▼を30mol%以下で含む配合である。単量体▲1▼、▲2▼の合計で80mol%以上が好ましく、100mol%がより好ましい。この場合、単量体▲1▼の中では、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)または無水物が、単量体▲2▼の中では3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、スルホエチル(メタ)アクリレート(塩)が特に好ましい。なお、当該(b)の配合例でも、上記単量体▲1▼、▲2▼以外の成分およびその配合比率については、特に制限されるものではなく、例えば、上記単量体▲3▼〜▲4▼を適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよいし、さらに他の成分(例えば、疎水性の単量体成分)などを加えて適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0037】
尚、本発明の製造方法では、上記▲1▼〜▲4▼のいかなる組み合わせであれ、少なくとも1種は、塩でない単量体成分を用いる必要がある。すなわち、後述する中和工程を行う必要があるものであれば、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0038】
上記単量体成分の供給形態としては、制限されるものではなく、後述する溶媒、好ましくは水に溶解して単量体溶液、好ましくは単量体水溶液の形態で供給するのが望ましいが、単量体成分のみ、すなわち、無溶媒の形態で供給してもよい。
【0039】
単量体溶液として用いる場合の濃度としては、各単量体成分により異なるため、使用用途に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるものではない。よって単量体▲1▼溶液の濃度としては、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。また、単量体▲2▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。さらに、単量体▲3▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。さらに、単量体▲4▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。また、これらを併用する場合であって、予め混合して添加する場合の単量体混合物の濃度は、上記各単量体の濃度に基づいて適宜決定すればよい。
【0040】
本発明の単量体成分の供給方法としては、反応槽内に単量体成分の供給経路を通じて供給、好ましくは連続的に滴下する方法が好ましい。反応槽内への供給方式としては、滴下方式以外にも、流下、噴霧、吹出など如何なる方式であってもよい。また、単量体成分が2種以上の場合には、別々の供給経路を通じてそれぞれの単量体成分を供給するのが好ましいが、別々の供給経路を途中で合流させ、各単量体成分を混合して反応槽内に供給するようにしてもよし、供給元の貯蔵タンク内で予め各単量体成分を混合して1つの供給経路を通じて供給するようにしてもよい。また、反応槽内に実質的に連続的に滴下する量は、使用目的に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるべきものではないが、100質量%とすることが最も好ましい。なお、全単量体成分使用量を連続的に滴下しない場合とは、残る単量体成分を何度かに分けて断続的に滴下する場合、あるいは残る単量体成分を重合初期に反応槽内に仕込んでおく場合などが挙げられる。
【0041】
<溶媒>
溶媒としては、有機溶媒でもよいが、水などの水性の溶媒であることが好ましく、特に新鮮水が好ましい。水を用いる場合でも、単量体の溶媒ヘの溶解を良くするために、重合に悪影響を及ぼさない範囲で水に有機溶媒を適宜加えることがある。
【0042】
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;等が挙げられ、これらは単独で用いられるか、併用される。
【0043】
上記溶媒の使用量としては、使用目的に応じて適宜決定されるものであり、特に制限されるものではない。
【0044】
本発明の溶媒の供給方法としては、該溶媒の多くまたは全量を重合初期に反応槽内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部については、単独で重合中に反応槽内に溶媒用供給経路を通じて適当に供給、好ましくは連続的に滴下するようにしてもよいし、あるいは単量体成分や開始剤成分やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応槽内に適当に供給するようにしてもよい。さらに、本発明の製造方法では、かかる溶媒の一部を洗浄液として、反応槽内に単量体成分を供給した後に、該単量体成分の供給経路に残存する単量体成分を洗浄するのに用いてもよい。
【0045】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、限定されないが、ラジカル重合開始剤が好ましく、過酸化水素、過硫酸塩またはこれらの併用が特に好ましい。
【0046】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、及び過酸化水素が挙げられる。これらの中では、末端や側鎖にスルホン酸基を定量的に導入し、分散能、キレート能および耐ゲル性に優れた低分子量の水溶性重合体が得られる点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩や過酸化水素が好ましい。これらは、単独で用いられるか、併用される。
【0047】
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単量体1molあたり0.1g〜10gが好ましく、1〜8gがより好ましい。重合開始剤の使用量が単量体1molあたり0.1gより少ない場合には単量体の残存量が大幅に増大する傾向があり、10gを越えると、もはや重合開始剤の供給効果はあまり向上せず、却って経済的に不利である。重合開始剤量が多い分、得られる重合体の純分量が低下するとも言える。
【0048】
重合開始剤の供給形態としては、制限されるものではなく、上記溶媒に溶解して重合開始剤溶液の形態で供給するのが望ましいが、重合開始剤のみ、すなわち、無溶媒の形態で供給してもよい。
【0049】
重合開始剤溶液として用いる場合の濃度としては、使用目的に応じて適宜決定されるものであり、特に制限されるものではない。
【0050】
重合開始剤の供給方法としては、特に限定はされないが、反応槽内に重合開始剤用の供給経路を通じて供給、好ましくは連続的に滴下する方法が好ましい。また、重合開始剤成分が2種以上の場合には、別々の供給経路を通じてそれぞれの重合開始剤成分を供給するのが好ましいが、別々の供給経路を途中で合流させ、各重合開始剤成分を混合して反応槽内に供給するようにしてもよし、供給元の貯蔵タンク内で予め各重合開始剤成分を混合して1つの供給経路を通じて供給するようにしてもよい。特に重合開始剤の分解速度により、単量体成分の供給終了時間よりも早く終了したり、遅く終了させるなど、その供給終了時間を調整するのが好ましいことから、重合開始剤成分が2種以上の場合には、別々の供給経路を通じてそれぞれの重合開始剤成分を供給するのが望ましいといえる。
【0051】
また、重合開始剤の分解性等に鑑みて、実質的に連続的に滴下する量を全使用量の50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、100質量%とすることが最も好ましい。なお、連続的に滴下する量が全使用量の50質量%未満であっても、本発明の範囲を外れるものではない。また、全使用量の100質量%を連続的に滴下しない場合とは、重合開始剤の少なくとも1部を何度かに分けて断続的に滴下するような場合、あるいは重合開始剤の少なくとも1部を重合初期に反応槽内に仕込んでおくような場合が挙げられる。
【0052】
重合開始剤の供給時間は、過酸化水素等の比較的分解が遅い開始剤の場合、後述する重合温度、重合pHにおいて、単量体成分の供給終了時間よりも10分以上早く終了することが好ましく、20分以上早く終了することがより好ましい。単量体成分の供給終了時前10分未満で終了しても、反応そのものに悪影響はないが、供給した重合開始剤が重合終了時点で残る無駄があり、残存する開始剤が得られる重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす恐れもある。
【0053】
なお、ここでいう単量体成分の供給終了時間は、単量体成分を2種以上用いる場合には、全ての単量体成分を供給し終えた時点をいうものとし、また、連続的に滴下する場合であっても、断続的に何回かに分けて供給する場合であっても、最後の単量体成分を供給し終えた時点とすればよい。また、重合開始剤、連鎖移動剤その他の添加剤成分の供給終了時間についても、単量体成分の供給終了時間同様に定義できる。また、重合終了時点とは、重合の際に用いられる重合用組成物を全て反応槽内に供給し終えた時点、あるいは、熟成時間を設定する場合はその終了時点をいう。熟成時間とは、重合用組成物を全て反応槽内に供給し終えた時点から、その後所定時間にわたって重合温度を保持し重合を完結させるために設けてなる時間をいう。ただし、該熟成時間により、完全に単量体成分の全量が反応に供されていなくともよく、微量の未反応の単量体成分が残存する場合もあり得る。
【0054】
他方、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い重合開始剤の場合は、単量体成分の供給終了時間まで供給することが好ましく、単量体成分の供給終了よりも5分以上遅く終了することがより好ましい。得られる水溶性重合体中の単量体残量を減じることが出来るからである。単重体成分の供給終了前にこれら開始剤の供給を終了しても、重合に悪影響はないが、単量体残存の問題がある。
【0055】
重合開始剤の供給の開始は適宜でよい。例えば、単量体成分の供給開始前でもよい。開始剤併用系の場合は、一つの重合開始剤の滴下を開始したのち、一定時間経過してから、あるいは一つの重合開始剤の滴下を終了してから、別の重合開始剤の供給を開始するようにしてもよい。要するに、重合開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すればよいのである。
【0056】
<連鎖移動剤>
本発明の製造方法では、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、連鎖移動剤を重合開始剤と併用しても良い。連鎖移動剤としては、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、次亜リン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、重合開始剤である過硫酸塩に加えて、重亜硫酸塩を連鎖移動剤として併用することで、得られる重合体が必要以上に高分子量化することが抑制され、低分子量の重合体を効率よく製造することができ、さらに中和工程で反応液の中和温度を低温制御するのに必要な大きな冷却能力を有する多管式熱交換器などの外部循環除熱装置に安定して反応液を外部循環する上で、こうした反応槽外部に設けた除熱装置の管壁に接触して急激に温度低下してもなお、該反応液が高粘性化することなく良好な流動性を保持し、送液ポンプにて安定して循環することができる点で有利である。これらは単独で用いられるか、併用される。
【0057】
連鎮移動剤の使用量としては、質量比で重合開始剤量の2倍以内であることが好ましい。2倍を越えて使用しても、もはや供給効果は現れず、却って共重合体の純分の低下を招き、好ましくない。
【0058】
連鎮移動剤の供給形態としては、制限されるものではなく、上記溶媒に溶解して連鎮移動剤溶液の形態で供給するのが望ましいが、連鎮移動剤のみ、すなわち、無溶媒の形態で供給してもよい。
【0059】
連鎮移動剤溶液として用いる場合の濃度としては、使用目的に応じて適宜決定されるものであり、特に制限されるものではない。
【0060】
連鎖移動剤の供給方法としては、反応槽内に連鎖移動剤の供給経路を通じて供給、好ましくは連続的に滴下する方法が好ましい。すなわち、単量体成分や重合開始剤とは異なる供給経路を通じて反応槽内に供給される。
【0061】
連鎖移動剤の供給時間は、限定されず、場合に応じて適宜に設定すれば良い。
【0062】
<多価金属イオン>
ラジカル重合開始剤の分解促進等の必要に応じて、多価金属イオンを重合開始剤と併用しても良い。有効な多価金属イオンとしては、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Cu+、V2+、V3+、VO2+等が挙げられる。これらは単独で使用されるか、併用される。
【0063】
多価金属イオンの供給方法は、特に限定されないが、全量初期仕込することが好ましい。
【0064】
使用量は、重合の際に用いる重合用組成物全量に対し100ppm以下であることが好ましい。100ppmを越えて使用すると、得られる水溶性重合体の着色が大きく、用途によっては使用できないことがある。
【0065】
多価金属イオンの供給形態については、特に制限はなく、重合系内でイオン化するものであれば、どのような金属化合物、金属であってもよい。このような金属化合物、金属としては、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2SO4・VSO4・6H2O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4)V(SO4)2・12H2O]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩、五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の金属酸化物、硫化銅(II)、硫化鉄等の金属硫化物、その他、粉末、鉄粉末を挙げることができる。
【0066】
なお、本発明の製造方法では、使用する反応槽や撹拌装置などにステンレス鋼製のものを用いた場合には、上記金属化合物、金属を供給しなくても、こうした材料から反応液への溶出により、上記に規定する極微量の多価金属イオン、例えば、Fe2+などが存在することになり、重合開始剤の分解促進効果が得られ、得られる重合体の色調(無色透明性)が良好となる。
【0067】
<重合方法>
重合方法としては、例えば、装置的には、ニーダー重合、攪拌重合等が挙げられ、方法的には、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明においては、攪拌溶液重合が好ましい。また、溶液重合には、その溶媒の種類の観点から、溶剤系重合、水系重合があるが、安全性の点からは水系重合が好ましい。従って、本発明において、最も好ましい重合方法は攪拌溶液水系重合である。
【0068】
攪拌溶液水系重合について、以下詳細に説明する。
【0069】
不飽和ジカルボン酸系単量体の場合、全単量体使用量の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは全量を反応槽内に初期仕込みする。初期仕込量が50質量%未満であると未反応物が多くなり好ましくない。
【0070】
不飽和モノカルボン酸系単量体の場合、全単量体使用量の70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは全量を供給、好ましくは実質的に連続的に滴下することにより反応槽内に供給するのが望ましい。供給の割合が70質量%未満、すなわち、初期仕込量が30質量%以上であると、非常に高分子量化しやすく、流動性が低下するために外部循環除熱装置を利用するのが困難となり、中和工程での外部循環除熱装置等を利用した中和温度の低温制御が困難となるので、中和度調整に長持間を要するようになり高コスト化することで使用用途が制限されるおそれがある。また、共重合体系の場合は、重合初期にブロック的に重合し、好ましくない。
【0071】
単量体成分の供給時間は、単量体成分の重合性を考慮して適宜設定すれば良いが、好ましくは30〜240分間、より好ましくは60〜180分間である。供給時間が30分間より短いと、単位時間内における単量体成分の供給量が多くなり、高濃度化が起きて、非常に高分子量の重合体を生成する。そのため、流動性が低下するために外部循環除熱装置を利用するのが困難となり、中和工程での外部循環除熱装置等を利用した中和温度の低温制御が困難となるので、中和度調整に長持間を要するようになり高コスト化することで使用用途が制限されるおそれがある。また、共重合の場合は、単量体がブロック的に重合してしまう恐れがある。240分を越えると、生産性が著しく落ちて、経済上好ましくない。なお、かかる単量体成分の供給時間は、重合の際に用いる全ての単量体成分のうち、最初に供給し始めた単量体成分の供給開始時点から、最後に供給し始める単量体成分の供給終了時点までに要した時間をいう。さらに、供給開始時点は、最初に供給し始める単量体成分が、連続的に供給される場合には、該単量体成分を供給し始める時点をいい、最初に供給し始める単量体成分を何度かに分けて断続的に供給する場合には、初回分を供給し始める時点をいう。供給終了時点は、最後に供給し終える単量体成分が連続的に供給される場合には、供給を終える時点とし、また何度かに分けて断続的に供給される場合には、最終回分を供給し終えた時点とする。なお、不飽和ジカルボン酸系単量体のようの全量初期仕込みするものだけの場合には、該単量体の供給時間は0分間ということになる。本発明ではかかる実施形態を排除するものではない。
【0072】
<重合中のpH>
重合中の反応液の25℃でのpHについては、限定されないが、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体を用いる場合については以下の通りとするのが好ましい。
【0073】
不飽和ジカルボン酸系単量体を用いる場合は、前述の通り、その全使用量に対して50質量%以上を初期仕込みするが、初期仕込終了時(供給開始直前あるいは重合開始直前)の25℃でのpHは5〜13であり、好ましくは5〜12である。その後、他の添加物(他の単量体、重合開始剤、連鎖移動剤等)の供給開始により、重合が開始され、重合が進行するに連れ、徐々にpHが低下していくように設定されるのが好ましく、供給終了時点でpH4〜8に調整されるのが好ましい。これは以下の理由による。
【0074】
一般に、不飽和ジカルボン酸系単量体は、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体に比べ、重合性が著しく低いため、初期仕込の段階で多く供給するのであるが、そのため、重合初期では不飽和ジカルボン酸系単量体の濃度が非常に高く、ブロック的に重合してしまう恐れがある。そこで、このジカルボン酸系単量体の重合性を制御する必要がある。ジカルボン酸系単量体は、カルボキシル基の双方ともが酸型、一方が酸型(すなわち半中和型)、双方ともが中和型と、3種類存在する。この中で、半中和型が反応性に最も富むことが知られている。そこで、この半中和型の存在量を制御することにより、ジカルボン酸系単量体の重合性を制御することが出来るのである。すなわち、重合初期段階ではある程度存在量を制限して重合性をある程度制御し、重合が進行しジカルボン酸系単量体の濃度が低減していくと、重合性も落ちてくるので、半中和型存在量を増大させていく必要がある。これらのことに鑑み、上記pHの設定を行う。
【0075】
なお、重合中の反応液のpHは、上記に制限されるべきものではなく、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体を用いる場合、重合を酸性条件下で行ってもよい。酸性条件下で行うことによって、反応槽内の反応液の粘度の上昇を抑制し、低分子量の水溶性重合体を良好に製造することができるためである。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる点で有利である。特に、重合中の中和度を1〜25mol%と低くすることで、上記重合開始剤量の低減による効果を相乗的に高めることができるものであり、不純物の低減効果を格段に向上させることができる点で望ましい。さらに重合中の反応液の25℃でのpHが1〜6となるように調整するのが望ましい。このような酸性条件下で重合を行うことにより、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができる。それゆえ、水溶性重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。
【0076】
重合を酸性条件下で行う場合、重合中の反応液の25℃でのpHは1〜6、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4である。該pHが1未満の場合には、亜硫酸ガスの発生、装置の腐食が生じるおそれがある。一方、pHが6を超える場合には、重亜硫酸塩の効率が低下し、分子量が増大する。
【0077】
重合中に供給されるpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらは単独で用いられるか、併用される。これらの中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0078】
<重合温度>
重合温度は、25℃から反応液の沸点の範囲であればよいが、重合開始時点から重合終了時点までは、重合開始から終了までの全反応時間の少なくとも10%以上の時間、好ましくは50%以上の時間、さらに好ましくは80%以上の時間、最も好ましくは反応時間中、常時、反応液の沸点とするのが好ましい。沸点でない時間においては、反応液の沸点近傍の温度とすることが好ましく、少なくとも80℃以上とすることが好ましい。80℃未満とすると、重合開始剤の使用効率が悪くなり、得られる水溶性重合体の単量体残存量が増大して、好ましくない。沸点で行うことは、温度制御が非常に容易となり、そのため、得られる重合体の品質が非常に安定したものとなり、好ましい。なお、重合温度の下限を25℃としたのは、常温(25℃)から重合を開始してもよいためである。
【0079】
ここで、重合終了時点は、上記に規定したように、重合に用いる全ての成分の供給が終了した時、あるいは、熟成時間を設定する場合はその終了時をいう。
【0080】
なお、重合用組成物の初期仕込時のpH調整や濃度調整を行う際には、その温度は、特に限定されず適宜設定すれば良い。
【0081】
<重合濃度>
重合濃度は、限定されず、必要に応じて適宜設定するが、好ましくは初期仕込時で35〜75質量%、より好ましくは40〜70質量%である。35質量%未満では、不飽和ジカルボン酸系単量体の反応性が非常に悪く、75質量%を越えると、単量体の水溶性がなくなって反応液がスラリー状となり、沈澱物が生じ、均一重合となり難く、また中和工程でも反応液がスラリー化していると、その流動性が低下するために外部循環除熱装置を利用するのが困難となり、中和工程での外部循環除熱装置等を利用した中和温度の低温制御が困難となるので、中和度調整に長持間を要するようになり高コスト化することで使用用途が制限されるおそれがある。重合終了時の濃度は35〜65質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。これに見合うように添加物の濃度調整を行う。重合終了時の濃度が35質量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなり、反応性が低くなって、得られる重合体中の単量体残存量が多くなり易い。65質量%を越えると、非常に高粘度となり、均一重合とならず、中和工程でも反応液がスラリー化していると、その流動性が低下するために外部循環除熱装置を利用するのが困難となり、中和工程での外部循環除熱装置等を利用した中和温度の低温制御が困難となるので、中和度調整に長持間を要するようになり高コスト化することで使用用途が制限されるおそれがあるほか、ハンドリング面からも好ましくない。
【0082】
<重合圧力>
重合圧力は、限定されるものではなく、常圧(大気圧)、加圧、減圧のいずれでも良い。好ましくは、重合中、亜硫酸ガスの放出を防ぎ、低分子量化が可能であることから、反応系内を密閉し、加圧下で行うのがよい。また、加圧装置や減圧装置を併設する必要がなく、また耐圧製の反応容器や配管を用いる必要がないなど製造コストの観点からは、反応系内を密閉し、常圧(大気圧)下で行うのがよい。すなわち、得られる(メタ)アクリル酸系重合体組成物の使用目的によって、適宜最適な圧力条件を設定すればよいといえる。
【0083】
<重合雰囲気>
また、反応系内の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいが、不活性雰囲気とするのがよく、例えば、重合開始前に反応系内を窒素などの不活性ガスで置換することが望ましい。これにより、重合開始剤が、雰囲気中の酸素ガス等が溶存して出来た酸素ラジカルとの反応により低減するのを防止することができることから、より低分子量化が可能となる点で有利である。さらに、重合中や重合後に亜硫酸ガスの一部が液相に溶解して不純物を形成するのを防止する観点からは、連続的または断続的に、反応系内の雰囲気中に不活性ガスを導入して反応系内部の亜硫酸ガスを追い出すようにしてもよし、反応槽内部の発生ガスを吸引して亜硫酸ガスを抜き出してもよい。
【0084】
(2) 中和工程
中和工程では、上記重合工程後、直ちに、好ましくは所定の液温、通常40℃以上80℃未満、好ましくは50〜70℃まで放冷した後に、重合工程で得られた反応液に中和剤を供給して該反応液の中和度の調整を行うものであり、中和度調整中の中和温度を40℃以上80℃未満の範囲に保持することを特徴とするものである。
【0085】
なお、中和工程を行う際、必要に応じて、反応液を反応槽から中和槽に移し替えてもよく、この間に反応液を放冷することもできる。特に回分式でなく、連続式により生産を行うような場合には、こうした方式を採用するのが便利である。ただし、以下の説明では、主に反応槽内で引き続き中和度調整を行う場合を中心に説明するが、決して本発明がこれらに制限されるべきものではなく、同様に中和槽でも行い得るし、また連続式でも行い得ることはいうまでもない。
【0086】
<中和剤>
中和工程で供給される中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらは単独で用いられるか、併用される。これらの中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0087】
<中和剤の供給量>
中和剤の供給量は、使用目的に応じて反応液の最終中和度が異なるため、特に限定されるものではない。
【0088】
<中和剤の供給形態>
中和剤の供給形態としては、制限されるものではないが、局所的に急激に大量の中和熱が発生するのを防止する観点からは、適当な溶媒に溶解して中和剤溶液の形態で供給するのが望ましいが、中和剤のみ、すなわち、無溶媒の形態で供給してもよい。なお、溶媒としては、重合で用いた溶媒と同様のものを用いるのが好ましい。
【0089】
<中和剤溶液濃度>
中和剤溶液として用いる場合の濃度としては、中和度調整に要するのに大量の中和剤溶液が必要となるために、その温度制御が困難となったり、中和度調整の目的のためだけに、こうした大量の中和剤溶液をも収容可能な巨大な反応槽の設置が必要となることがないように適当な濃度を決定すればよく、特に制限されるべきものではない。
【0090】
<中和剤の供給方法>
中和剤の供給方法としては、特に限定はされないが、反応槽内に中和剤の供給経路を通じて供給、好ましくは反応槽内に設置された先端ノズル部より連続的に滴下する方法が好ましい。また、槽内に広く拡散して供給できるように、噴霧方式やノズル先端から拡散して滴下できる拡散滴下方式を用いてもよい。また、中和剤成分が2種以上の場合には、別々の供給経路を通じてそれぞれの中和剤成分を供給するのが好ましいが、別々の供給経路を途中で合流させ、各中和剤成分を混合して反応槽内に供給するようにしてもよいし、供給元の貯蔵タンク内で予め各中和剤成分を混合して1つの供給経路を通じて供給するようにしてもよい。
【0091】
<中和剤の供給速度>
中和剤の供給速度は、中和温度を低温制御しつつ中和工程を短縮するとの目的に反することになったり、中和温度を低温制御する上で、巨大な外部循環除熱装置の設置が不可欠となり設置コストが著しく増大することがないように適当な供給速度を決定すればよく、特に制限されるべきものではない。
【0092】
<中和度調整中の中和温度>
上記中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行う間、反応槽内の反応液の中和温度は、40℃以上80℃未満、好ましくは50〜70℃の範囲内になるように低温制御するものである。これにより、得られる重合体の着色を防止し無色透明性を保持することができ、中和工程に要する時間を大幅に短縮することができるものである。反応槽内の反応液の温度が40℃未満の場合には、得られる重合体の着色を防止し無色透明性を保持することはできるものの、中和温度を低温制御する上で、巨大な外部循環除熱装置の設置が不可欠となり設置コストが著しく増大することになる。一方、反応槽内の反応液の温度が80℃以上の場合には、得られる重合体の変色を十分に防止することが困難となり無色透明性を保持することができないおそれがある。
【0093】
ここでいう中和温度とは、中和度調整を行う槽内の反応液の温度をいう。なお、槽内の反応液の温度は中和度調整中、撹拌していても温度差が発生する。例えば、中和剤が供給ないし滴下される液面部と槽底部とでは温度差が生じやすいし、また外部循環除熱装置を利用して中和温度を低温制御する場合には、外部循環経路入口近傍部と、外部循環経路出口部近傍部とでも温度差が生じやすくなっているため、事前に中和度調整中の槽内の反応液の温度分布を十分に調査しておき、少なくとも最も高温となる箇所と、最も低温となる箇所との温度を計測し、いずれもが上記中和温度の範囲内になるようにするのが望ましいものである。
【0094】
<中和度調整中の中和温度の低温制御方法>
中和度調整中の中和温度の低温制御方法としては、反応槽本体外周部に設けたジャケットだけでもよいが、この場合には、巨大な中和熱を発生する重合体を短時間で中和する際に、従来に増してより一層激しく発熱する反応液の中和温度を低温制御するのは困難であるため、好ましくは、既に述べているように、新たに高い除熱能力を持つ外部循環除熱装置を利用して、一時に大量の中和熱を除熱するのが望ましい。なお、本発明では、中和温度の低温制御ができるものであればこれらに制限されるべきものではなく、例えば、撹拌装置内部にも冷却媒体を通じることのできる構造とし、中和度調整中に該撹拌装置に冷却媒体を通じて反応槽内部からも冷却するようにしてもよいし、重合に用いた反応槽とは別に専用の中和槽を設け、槽内部にも撹拌の妨げにならないように、コイルなどの冷却装置を内設し、該コイル内に冷媒を通じて冷却するようにしてもよいし、これらを適当に組み合わせて冷却しても良いなど制限されるものではない。
【0095】
<中和度調整中に外部循環除熱装置を利用する場合の実施形態>
中和度調整中に外部循環除熱装置を利用する場合、反応槽外部への循環量は、折角の高い冷却能力を持つ外部循環除熱装置を十分に利用できず、中和温度の低温制御しつつ中和工程を短縮するのが困難となったり、反応槽内部の反応液量が大幅に減少し、反応槽付属ジャケットの利用が十分になされないほか、撹拌羽根の一部が液面上に露出し、所望の撹拌効果が得られないことがないように適当な循環量を決定すればよく、特に制限されるべきものではない。
【0096】
中和度調整中に外部循環除熱装置を利用する場合、反応液(供給される中和剤量は除く)の全量に相当する量を外部循環させるのに要する時間は、強力な外部循環用ポンプの設置が必要となったり、外部循環流が反応槽内の撹拌流に影響し、反応槽内での均一な撹拌が困難となったり、除熱効率が充分でなく中和温度の低温制御が困難となり、反応槽内で発生する中和熱により反応液が上記に規定する温度を超え、得られる重合体の変色(着色)を防止するのが困難となり無色透明性を保持することができないおそれが生じないように適宜最適な外部循環時間を決定すればよく、特に制限されるべきものではない。
【0097】
また、中和度調整中に外部循環除熱装置を利用する場合、外部循環除熱装置による除熱期間としては、中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行う間である。この間は、大きな中和熱が発生するため、これらを十分な除熱能力を持つ外部循環除熱装置を利用して中和温度の低温制御を行うのが望ましいためである。
【0098】
さらに重合終了後から中和剤を供給するまでの間、あるいは中和度調整後以降にも、反応液を外部循環して冷却してもよい。こうすることで、これらの所要時間を短縮することができるためである。すなわち、重合終了後から中和剤を供給する前までに予め反応液を上記に規定する所定温度にまで冷却しておくのが望ましく、かかる冷却に際しても、反応槽付属のジャケットだけよりも外部循環除熱装置も利用して冷却するのが短時間で所望の温度まで冷却できる点で好ましいといえる。すなわち、この間は、反応槽付属のジャケット内部の熱媒を冷媒に切り替える操作が必要であるため、反応槽付属のジャケットを用いてすぐに反応槽内を冷却するのは困難なためである。ただし、熱媒から冷媒に切り替わり次第、反応槽付属のジャケットでも冷却を始めて問題はない。同様に、中和度の調整後、反応液を反応槽ないし中和槽から抜き出す前に、上記に規定する所定温度から、さらに取り扱いや貯蔵が容易なように所定温度に冷却する際にも、低分子量の重合体では、外部循環除熱装置を利用することが可能であることから、反応槽ないし中和槽付属のジャケットのほかに、かかる外部循環除熱装置を利用して冷却を行ってもよい。なお、中和剤の供給前後の冷却は、反応槽ないし中和槽付属のジャケット等の他の冷却手段を用いて、あるいは自然放冷だけでも性能上の問題はないが、冷却に要する時間が短縮できる点で外部循環除熱装置を利用して冷却するのが好ましいといえる。
【0099】
なお、外部循環除熱装置については、本発明に用いることのできる製造装置の説明にて詳述するので、ここでの説明は省略する。
【0100】
<中和工程中の槽内圧力>
中和工程中の槽内圧力は、限定されるものではなく、常圧(大気圧)、加圧、減圧のいずれでも良い。すなわち、得られる重合体の使用目的によって、適宜最適な圧力条件を設定すればよいといえる。好ましくは、中和工程中、中和熱で発生するガスの放出を防ぎ、溶液の粘度の増加を抑制でき、加圧装置や減圧装置を併設する必要がなく、また耐圧製の反応容器や配管を用いる必要がないなど製造コストの観点からも、系内を密閉し、常圧(大気圧)下で行うのがよい。
【0101】
<中和工程中の槽内雰囲気>
また、中和工程中の槽内雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいし、不活性雰囲気としてもよい。例えば、中和工程を重合で用いた反応槽で引き続き行うような場合には、すでに反応槽内の雰囲気が窒素などの不活性ガスで置換されていることもあるためである。
【0102】
<中和剤で調整した後の中和度>
中和剤で調整した後の水溶性重合体の中和度(最終中和度)は、重合終了後に、中和工程にて中和剤を適宜供給することによって所望の範囲に設定することができる。
【0103】
上記最終中和度は、その使用用途によって異なるため特に制限されるべきものではなく、1〜100mol%の極めて広範囲に設定可能である。特に中性ないしアルカリ性の重合体として使用する場合の最終中和度としては、好ましくは75〜100mol%、より好ましくは85〜99mol%である。また、中性ないしアルカリ性の重合体として使用する場合の最終中和度が99mol%を超える場合には、上記に規定するように中和温度を低温制御してもなお重合体水溶液が着色するおそれがある。なお、酸性の重合体として使用する場合の最終中和度としては、好ましくは1〜75mol%、より好ましくは5〜70mol%である。本発明では、こうした酸性の重合体を得る場合であっても、上記中和工程を行う場合には適用され得るものである。
【0104】
<重合体の生産方式>
本発明の製造方法において、上記重合工程および中和工程は、回分式または連続式のいずれによっても行ないうるが、回分式で行うことが好ましい。
【0105】
<本発明の製造方法により得られる重合体>
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体としては、上述したように用いる単量体成分に応じて種々のものを製造することができるものであり、特に本発明の作用効果を十分に教授し得るものである、多くのカルボキシル基を有するポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、マレイン酸(塩)系重合体、またはこれらの共重合体、あるいはこれらにスルホン酸基や水酸基等が導入された重合体が好適である。なお、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系重合体のようにポリ(メタ)アクリル酸塩系重合体だけでなくポリ(メタ)アクリル酸系重合体をも含めたのは、最終中和度によっては、完全中和する場合以外の形態を含むため、双方が混在し得る場合もあり得るためである。
【0106】
<重合体の重量平均分子量>
本発明によれば、所望する重量平均分子量の重合体を得ることができるのであるが、本発明の製造方法は、特に、重量平均分子量500〜2000000、好ましくは1000〜1000000の重合体を得るのに適している。本発明の製造方法では、これらの重量平均分子量の範囲を外れる重合体を得ることもできるが、重量平均分子量が500未満であるとキレート能が低下するものとなるおそれがあり、2000000を越えると分散能が低下するものとなるおそれがある。
【0107】
<重合体の分散度>
また、本発明の製造方法により得られる重合体は、分散度が1.5〜5.0であるのが良く、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜4.0である。分散度が上記範囲であれば、洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れる。とりわけ分散度が1.5以上である方が、水溶性重合体の製造が繁雑とならず、生産性が良好であり、カルシウムイオン捕捉能も上昇するため好ましく、5.0以下であるとカルシウムイオン捕捉能、クレー分散能、スケール防止能などの性能が高くなるため好ましい。
【0108】
<残存単量体量>
得られる水溶性重合体中の残存単量体量は、本発明によれば非常に少なくすることが出来るが、純分換算において5000ppm以下、好ましい実施形態では4000ppm以下とすることができる。
【0109】
<不純物量>
得られる水溶性重合体中の不純物(残存単量体を除く)量は、本発明の製造方法によれば非常に少なくすることが出来るが、使用用途によって、不純物と見なすか、有用成分と見なすかが異なる成分もあるため、一義的に規定することができないが、純分換算において1000ppm以下とするのが望ましい。なお、使用用途によって、不純物と見なすか、有用成分と見なすかが異なる成分としては、重金属成分などが該当する。例えば、漂白剤を配合する洗剤組成物に用いる場合に、微量の重金属成分の存在であっても漂白剤を分解するため不純物となるが、漂白剤を配合しない洗剤組成物では、微量の重金属成分の存在により残存する他の不純物である過酸化物の量を低減でき、該過酸化物による皮膚刺激性の問題を解消できるため有効成分として機能するという具合である。
【0110】
<本発明により得られる重合体の用途>
本発明の製造方法により得られる低分子量の水溶性重合体は、その特徴を活かして、洗剤ビルダー、洗剤組成物、無機顔料分散剤、スケール防止剤、キレート剤、繊維処理剤、木材パルプ漂白助剤等の用途に用いることができる。特に、本発明の製造方法により得られる低分子量の水溶性重合体は、無色透明性に優れるため、家庭用洗剤など着色していることで性能が低下されているとの先入観や思い込みによる誤解・誤認を招くようなケースへの使用が特に有用である。また、洗剤などは、他の製品との識別力を持たせる上で、あえて鮮やかな色調に着色して用いる場合もあるが、こうした場合にもベースとなる水溶性重合体が有色(有彩色)である場合には、鮮やかな色調に発色させるのが困難となり、他の製品との色調による差別化が困難となる場合もある。これらの用途に利用する場合には、それぞれの使用目的に応じて、その他の原料を適宜配合すればよい。以下、代表的な用途への利用形態につき簡単に説明する。
【0111】
(洗剤ビルダー)
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体の好適な用途である洗剤ビルダーは、当該水溶性重合体を含有してなるものであればよい。これにより、水溶性重合体の分子量が制御できており、また残存する単量体や重合開始剤などの不純物量が格段に低減されており、かつ従来の「酸型」による製造方法に比して、中和工程を格段に短縮できるため、水溶性重合体が本来有する極めて優れた分散能、キレート能、耐ゲル性を発現できる安全性に優れた水溶性の、無色透明な洗剤ビルダーを極めて安価に提供できるものである。さらに洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れるものである。さらに長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出なども生じることのない極めて高品質で高性能で安定性に優れた、無色透明な洗剤ビルダーを極めて安価に提供できる。
【0112】
なお、本発明の洗剤ビルダーにおいては、上記水溶性重合体以外の他の配合成分や配合比率に関しては、特に制限されるべきものではなく、従来公知の洗剤ビルダーに有効に適用されてなる各種成分およびその配合比率に基づき、洗剤ビルダーとしての作用効果を損なわない範囲で、適宜適用(利用)することができるものであるが、好ましくは、本発明の製造方法により得られる水溶性重合体のみからなるものである。
【0113】
(洗剤組成物)
本発明の洗剤組成物においては、本発明の水溶性重合体の配合量が洗剤組成物全体の1〜20質量%であり、界面活性剤の配合量が洗剤組成物全体の5〜70質量%であると好ましく、場合により酵素を5質量%以下の範囲で供給しても良い。
【0114】
本発明の重合体の配合量が1質量%未満であると供給効果が現れず、また20質量%を超えるともはや添加した効果が洗浄力の向上につながらず経済的にも不利となり好ましくない。また、洗剤組成物の主剤である界面活性剤の量が上記の範囲を外れると、他の成分とのバランスが崩れ洗剤組成物の洗浄力に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。酵素を配合した場合、洗浄力の向上に寄与するが、5質量%を超えると、もはや添加した効果が現れず経済的にも不利となり好ましくない。
【0115】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用することができる。アニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。
【0116】
ノニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。
【0117】
両性界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができ、カチオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0118】
本発明における洗剤組成物に配合される酵素としてはプロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等を使用することができる。特にアルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
【0119】
さらに、本発明の洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、蛍光剤、漂白剤、漂白助剤、香料等の洗剤組成物に常用される成分を配合してもよい。また、ゼオライトを配合してもよい。
【0120】
アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等を用いることができる。キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等を必要に応じて使用することができる。あるいは公知の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを本発明の効果を損なわない範囲で使用しても良い。
【0121】
(水処理剤)
水処理剤は、好ましくは、本発明の重合体のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を配合した組成物とすることもできる。いずれの場合でも、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で公知の水溶性重合体を含んでもよい。
【0122】
(顔料分散剤)
顔料分散剤は、好ましくは、本発明の重合体のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0123】
何れの場合においても、この分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイ等の無機顔料等の分散剤として良好な性能を発揮する。例えば、本発明の顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0124】
顔料分散剤の使用量は、顔料100質量部に対して0.05〜2.0質量部が好ましい。使用量が0.05部より少ないと、充分な分散効果が得られず、逆に2.0質量部を超えると、もはや添加量に見合った効果が得られず経済的にも不利となる恐れがあるため好ましくない。
【0125】
(繊維処理剤)
繊維処理剤は、本発明の重合体を単独で使用してもよいが、染色剤、過酸化物、および界面活性剤等の添加剤を配合した組成物として使用することもできる。上記添加剤としては、繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。本発明の重合体と上記添加剤の比率は特に限定されるものではないが、本発明の重合体1質量部に対して、上記添加剤を、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.2〜80質量部、さらに好ましくは1〜50質量部という割合で配合する。上記添加剤の配合量が0.1質量部未満であると、添加効果が不十分になる傾向があり、100質量部を超えると、本発明の重合体の効果が発揮できない傾向がある。また、本発明の重合体を含む繊維処理剤は、性能や効果を阻害しない範囲で、さらに、本発明の重合体以外の重合体を含んでいてもかまわない。繊維処理剤中の本発明の重合体の含有量は、特に限定はされないが、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは5〜100質量%である。
【0126】
本発明の重合体を含む織維処理剤を使用できる織維は特に限定はされないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ナイロン、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品などが挙げられる。
【0127】
本発明の重合体を含む繊維処理剤を精錬工程に利用する場合には、本発明の重合体とアルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体と過酸化物とアルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合するのが好ましい。
【0128】
[本発明の重合体の製造装置]
次に、本発明の重合体の製造装置としては、回分式、連続式の違いによっても異なるものであり、特に制限されるべきものではないが、既に説明したように、中和工程において中和温度の低温制御が容易なように、該中和工程中に反応液を外部循環除熱装置を利用して冷却することができるような装置構成を有するものが好ましい。以下に、こうした好適な装置構成を用いてなる製造装置の実施形態を中心に、図面を用いて説明するが、本発明がこれらの装置に制限されるべきものでないことはいうまでもない。
【0129】
本発明に係る製造装置としては、重合に用いる反応槽と、その後の反応液の中和度の調整に用いる中和槽と、重合中に該反応槽内から発生した留出物を液化凝縮させて反応槽内に戻すための留出物循環経路と、該留出物循環経路内の留出物を液化凝縮させるためのコンデンサと、該反応槽内の溶液を撹拌するための撹拌機とを備えてなる重合体の製造装置において、さらに重合後に中和槽内の反応液を外部循環するための外部循環経路と、該外部循環経路内の反応液を中和温度の低温制御可能なように冷却するための除熱装置とを設けてなるものである。
【0130】
かかる装置構成を有することで、中和温度を低温制御しつつ中和工程での所要時間を著しく短縮化し生産性を飛躍的に向上することができ、中和工程での重合体溶液の着色を防止でき、製造コストを大幅に低減できるものである。そのため、該装置を用いることで、従前の水溶性重合体製品に比して、無色透明性に優れると共に、その性能を損なうことなくより安価に提供できるため、水系の分散剤、スケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどの用途における、利用価値(製品価値)を大幅に高めることができるものである。特に、上記中和槽として上記反応槽を用いることで、装置の共用化による製造時間の短縮化、装置の小型化などが図れる点で有利である。
【0131】
本発明の製造装置の代表的な実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。
【0132】
図1は、本発明の製造方法に用いることのできる製造装置の好適な1つの実施形態として、重合およびその後の反応液の中和度の調整に用いる反応槽と、重合中に該反応槽内から発生した留出物を液化凝縮させて反応槽内に戻すための留出物循環経路と、該留出物循環経路内の留出物を液化凝縮させるためのコンデンサと、該反応槽内の溶液を撹拌するための撹拌機とを備えてなる重合体の製造装置において、さらに重合後に反応槽内の反応液を外部循環するための外部循環経路と、該外部循環経路内の反応液を冷却するための除熱装置とを設けてなる装置を模式的に表した概略図である。
【0133】
図1に示すように、重合およびその後の反応液の中和度の調整に用いるための反応槽101が設置されている。
【0134】
また、重合中に該反応槽内101から生じる留出物を液化凝縮させて再び反応槽101内に戻すための留出物循環経路103が設けられており、該留出物循環経路103上には該経路内を流れるガス状の留出物を液化凝縮させるためのコンデンサ105が設けられている。また、コンデンサ105には、冷却液を導入するための導入経路107と、熱交換後の冷却液を排出するための排出経路109がそれぞれ連結されている。
【0135】
さらに、重合およびその後の中和度の調整を行う際に、反応槽101内の温度及び濃度の偏在化を防止し、重合および中和処理が均等になされるように、該反応槽101内の溶液を撹拌するための撹拌機111が反応槽101に設置されている。
【0136】
さらにまた、上記反応槽101本体の側面(さらには底面)外周部には、重合およびその後の中和度の調整を行う際の反応槽101内の反応液の温度を調整するための外部ジャケット113が周設されている。本実施形態では、外部ジャケット113に、重合中は熱媒を、その後の中和度の調整中には冷媒を通じることができるように、適当な切替機構が設けられている。
【0137】
さらに重合およびその後の中和度の調整を行う際に必要な温度、圧力、流量などの測定装置、制御装置などが適宜設けられているのが望ましい。
【0138】
さらに、本発明では、上記装置構成に加えて、さらに、重合終了後に該反応槽101内の反応液を外部循環するために外部循環経路115が反応槽101の下部、詳しくは、外部循環後の反応槽内の液面よりも下部に連結されている。そして、該外部循環経路115上に該経路内を流れる反応液を、槽内の中和温度を低温制御するのに必要な温度にまで除熱・冷却するための除熱装置117が設けられている。
【0139】
さらに、前記反応槽101内部に重合用組成物の各成分および中和剤を供給することができるように、重合用組成物の各成分および中和剤の貯蔵部(図示せず)からの各供給経路の先端ノズル部(図1では、便宜上、中和剤供給経路119およびその先端ノズル部121を図示するが、実際には、重合に用いる成分ごとに同様の供給経路が設置されているが、図面上省略した。)が反応槽101内の反応液の最高液面高さよりも上方空間部に位置するように設けられている。
【0140】
また、上記各供給経路のほか、留出物循環経路および外部循環経路上には、必要に応じて、各種ポンプやバルブが適宜設けられているのが望ましい。
【0141】
以上が、本発明の装置の好適な実施形態である。以下、該実施形態を中心に各装置構成につき、説明する。
【0142】
まず、上記反応槽は、装置の共用化による製造時間の短縮化、装置の小型化などが図れる点で有利であることから、上記中和槽としても用いることができる装置構成となっている。ただし、本発明では、重合に用いる反応槽と、その後の反応液の中和度の調整に用いる中和槽とを別々に設けてもよく、その場合には、反応槽の底部から反応液を抜き出し、中和槽の上部からこれらの反応液を投入することができるように、両槽を結ぶ経路を設ければよい。そして、それぞれの槽の目的に応じて、上記反応槽に設けた装置構成部材の一部を中和槽側に設ければよい。そのため、以下の説明では、中和槽についての説明は省略するものである。すなわち、以下に説明する反応槽の説明のうち中和処理に関する説明を中和槽に適用することができるためである。
【0143】
上記反応槽としては、重合およびその後の反応液の中和度の調整を行うことができる容器であれば特に制限されるものではない。
【0144】
反応槽の形状は、特に制限されるものではない。多角型、円筒形などがあるが、撹拌効率、取り扱い性、汎用性などの点から円筒型が好ましい。また、邪魔板は問わない。
【0145】
反応槽の体積(内容積)としては、0.1〜50m3であることが好ましい。さらに好ましくは0.2〜45m3、特に好ましくは0.5〜40m3である。反応槽の体積が0.1m3未満の場合には、生産規模が小さく、生産効率が十分でなくなるために工業的に大量生産を行うのが困難な場合がある。一方、50m3を超える場合には、重合およびその後の中和度調整に際し、反応槽内の反応液の温度および濃度の均質化を図るのが難しくなる。本発明では、特にこうした工業上の利用性を有する大型反応槽を用いる際に、反応槽を球体化するのは困難であり、反応槽の体積(内容積)に比して、反応槽側面(さらには底面)外周囲に付設のジャケットによる伝熱面積だけでは冷却能力が相対的に小さくなるため、装置を大型化すればするほど、十分な冷却効果が得られない(例えば、反応槽を球体とした場合、(槽の体積)/(槽の表面積;伝熱面積)=/{(4/3)π×(半径)3}/(4π×(半径)2)=r/3となり、単位伝熱面積当たりの槽の体積量は半径、すなわち槽の大きさに比例して増大する)点を解消し得る点で極めて有用である。
【0146】
反応槽の内部の材質としては、特に制限されず、例えば、ステンレス製、好ましくはJISステンレス鋼のSUS304、316、316Lである。また、反応槽の内部にグラスライニング加工等が施され反応原料、生成物および中和剤等に対して不活性なものとしてもよい。
【0147】
上記コンデンサは、重合中に、反応槽から生じる留出物を凝縮液化させる装置であり、凝縮液化は、冷却液である管外流体と留出物とを熱交換させることにより行われる。反応槽内から生じる留出物とは、重合中に反応槽内で蒸発した反応液をいう。またコンデンサに用いる冷却液としては、特に制限されるべきものではないが、経済性、安全性の点から、好ましくは水である。なお、中和の際には、かかるコンデンサは作用させていないため、外部循環経路および除熱装置を設けない場合には、中和熱により反応液が容易に沸点まで到達し、大量の留出物が発生するようになり、槽内圧力が漸次上昇し、その結果反応液の沸点上昇につながるため、反応液中の重合体への熱的影響が現われるおそれがある。
【0148】
上記コンデンサの形状は、特に制限されるものではないが、同じ伝熱面積を得る上で装置の小型化が図れる点で多管式が望ましく、また複数の伝熱管を管束として胴内部に収納する際の配置の効率性、汎用性などの点から円筒型が好ましいことから、多管式円筒型がより好ましい。
【0149】
上記コンデンサの材質としては、JISステンレス鋼のSUS304、304L、316、316L等のステンレス鋼製や炭素鋼などの公知のものが使用できる。工業的な生産規模に見合う大型のコンデンサに必要な機械的強度、耐久性、耐熱性、加工性、耐薬品性を有し、材料設備コスト、さらに使用中のメンテナンスの面から、JISステンレス鋼のSUS304、304L、316、316Lが好ましい。
【0150】
また、外部留出物循環経路の材質としては、JISステンレス鋼のSUS304、304L、316、316L等のステンレス鋼製や炭素鋼などの公知のものが使用できる。好ましくは内面が鏡面仕上げまたはグラスライニングされているのが、還流液が滞留せずに流れるのでゲル物などの生成を抑えられる点で好ましい。
【0151】
外部留出物循環経路の配管径は、反応槽で発生する留出物が反応槽内に滞留し反応槽の内部圧力が上昇することがないように、該留出物の発生量に応じた大きさとなるように設定すればよい。
【0152】
なお、上記外部留出物循環経路およびコンデンサは、それぞれ複数設けてもよいが、装置の簡素化の観点からは図1に示すように1経路および1機で構成するのがよい。
【0153】
上記反応槽の体積(内容積)とコンデンサの伝熱面積の比率(コンデンサの伝熱面積/反応槽の体積)としては、0.5〜10m−1、好ましくは0.7〜7.5m−1、より好ましくは1.0〜5m−1の範囲である。反応槽の体積とコンデンサの伝熱面積の比率が0.5m−1未満の場合には、反応槽に対してコンデンサの能力が不足するため、反応槽からの留出物の凝縮を十分に行うことができない場合があり、生成物の水溶性重合体の分子量の制御ができなくなるおそれがある。一方、10m−1を超える場合には、得られる重合体の分子量の制御ができなくなるおそれがあるほか、コンデンサの設備費用およびランニングコストがかかりコストアップにつながるなど経済的でなく工業上の利用性が低くなる。
【0154】
上記撹拌機の材質としては、特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、好ましくはJISステンレス鋼のSUS304、316、316Lである。また、撹拌機のうち、反応槽の内部の位置する撹拌翼等の表面には、装置の耐久性、耐食性向上の点から、グラスライニングが施され反応原料および生成物等に対して不活性なものとしてもよい。これは、反応系全体から重金属成分が溶出しないようにし、得られる重合体組成物中への重金属成分量を極力低減するのが、最終製品である洗剤組成物の性能及び品質を安定に保持する上で有利な場合があるためである。
【0155】
また、撹拌機の撹拌羽根の形状、大きさ、数に関しては、重合および中和度の調整の際に、反応槽内の反応液の温度および濃度が均一化されるものであればよく、特に制限されるべきものではない。ただし、本発明では、重合初期には、重合用組成物の全量が投入されているわけではないので、こうした場合にも十分な撹拌が行えると共に、重合用組成物の全量が投入された後も、同様に十分な撹拌を行うには、図1に示すように反応槽の上下に複数の撹拌羽根を設けるのが望ましい。また、重合中に反応液、特に未反応の単量体成分などが液跳ねして反応槽上部空間の内壁面に付着しないように、撹拌羽根の形状、さらには使用時の撹拌機の撹拌速度などに留意する必要がある。これは、液跳ねして反応槽上部空間の内壁面に付着した反応液が加熱されて所望の重合体とは異なる分子量の重合物ないしゲル物(不純物)を形成するという新たな課題に対する解決法である。
【0156】
また、上記外部ジャケットは、反応槽本体の側面外周部に設けられていればよいが、好ましくは、さらに反応槽本体底面部にも設けられているのが好ましい。なお、側面外周部の設けられる外部ジャケットの下端は、図1に示すように、反応槽側面の下端に位置するようにするのが冷却効率を高める上で望ましい。一方、ジャケットの上端は、重合用組成物を全量投入した際の反応槽内の反応液の液面と同等かそれ以上の位置になるようにするのが望ましい。
【0157】
また、外部ジャケットに用いる熱媒には、スチーム、熱油などを利用することができる。外部ジャケットに用いる冷媒には、水などを利用することができる。
【0158】
また、上記供給経路(中和剤以外の供給経路を含む)の材質としては、特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、好ましくはJISステンレス鋼のSUS304、316、316Lである。
【0159】
また、上記供給経路には、単量体成分や他の添加剤や中和剤を供給した後にそれぞれの供給経路内部に残存した成分により重合物やゲル物が生成したり、該成分が固着するのを防止することができるように、▲1▼これらの供給経路に、溶媒および/または不活性ガスを導入するための機構が付設されていてもよいし、▲2▼供給経路を冷却する装置が付設されていてもよい。▲1▼の機構としては、溶媒および/または不活性ガス導入用経路のほかに、適当な時期にこれらの溶媒や不活性ガスの導入開始や停止などの操作や導入量の調整などの調整を行うためのバルブやポンプ、さらにこれらの制御装置などが設けられているものなどが挙げられる。
【0160】
また、上記供給経路の先端部のノズルを、反応槽塔頂部内部に位置するようにしたのは、供給する成分が反応槽の内壁面を伝って流下するのを防止することができ、内壁面を伝って流下する際に単量体成分などが外部ジャケットにより加熱され、重合物やゲル物を生成する危険性を回避することができるためである。該重合物およびゲル物は、生成物の水溶性重合体とは分子量などが異なるため性能及び品質面からみて不純物となる。さらに、中和剤が内壁面を伝って流下する際には、中和剤による腐食を受けやすく、また、中和後に内壁面に中和剤の一部が付着したまま残るおそれがあるためである。
【0161】
次に、上記装置の特徴部分である上記外部循環除熱装置(反応液の外部循環中の冷却手段)としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知の各種除熱装置を利用して冷却することができるものであるが、大きな電源をとることで装置の小型化が図れる点から、従来公知の各種熱交換器を用いるのが好ましい。具体的には、多管式熱交換器などを用いることができる。本発明の除熱装置は、少なくとも中和度の調整中に、反応液から中和熱に相当する熱分の一部ないし全部を除熱するための装置であり、該除熱は、例えば、管内流体に反応液を、管外流体に冷却液を用い、冷却液である管外流体と反応液とを熱交換させることにより行われる。
【0162】
除熱装置に用いる冷却液としては、特に制限されないが、熱交換器の伝熱面積、反応槽付属ジャケットの冷媒との共用化、経済性、安全性などを勘案して、水などを用いるのが好ましい。
【0163】
上記除熱装置の形状は、特に制限されるものではないが、同じ伝熱面積を得る上で装置の小型化が図れる点で多管式が望ましく、また複数の伝熱管を管束として胴内部に収納する際の配置の効率性、汎用性などの点から円筒型が好ましいことから、多管式円筒型がより好ましい。
【0164】
上記除熱装置の材質としては、JISステンレス鋼のSUS304、304L、316、316L等のステンレス鋼製や炭素鋼などの公知のものが使用できる。工業的な生産規模に見合う除熱装置に必要な機械的強度、耐久性、耐熱性、加工性、耐薬品性を有し、材料設備コスト、さらに使用中のメンテナンスの面から、JISステンレス鋼のSUS304、304L、316、316Lが好ましい。
【0165】
上記反応槽の体積(内容積)に対する上記除熱装置の伝熱面積の比率は、十分な冷却能力を付加することができず、中和に要する時間を大幅に短縮するのが困難な場合があったり、過剰能力の大型装置を稼動させるため余計にコストがかかり不経済となることがないように適宜最適な伝熱面積の比率を決定すればよく、特に制限されるべきものではない。
【0166】
上記外部反応液循環経路の材質としては、JISステンレス鋼のSUS304、304L、316、316L等のステンレス鋼製や炭素鋼などの公知のものが使用できる。
【0167】
外部反応液循環経路の配管径は、上記製造方法で規定した反応液の循環流量に適したものとなるように設定すればよい。
【0168】
なお、本発明の装置では、上記外部反応液循環経路および/または除熱装置を複数設けてもよいが、装置の簡素化の観点からは図1に示すように1経路および1機で構成するのがよい。
【0169】
また、上記中和工程終了後に、反応槽内の反応液を抜き出す際に、上記外部反応液循環経路および除熱装置内部に反応液が残留しないように、こうした残留溶液をポンプ等を使って反応槽側に押し出してもよいし、上述した供給経路内部に残存する成分を反応槽内に押し出すのに用いたのと同様の装置機構をこれらの外部反応液循環経路ないし除熱装置に設けてもよい。
【0170】
本発明の装置は、従来公知の各種水溶性重合体の製造に好適に利用することができるものであるが、特に水溶性の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、マレイン酸(塩)系重合体、またはこれらの共重合体、あるいはこれらにスルホン酸基や水酸基等が導入された重合体の製造に好適に用いることができるものである。
【0171】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に記載の「%」は、特に断りがなければ「質量%」を示す。
【0172】
実施例1
図1に示した反応槽101へ、重量平均分子量60,000のアクリル酸/マレイン酸共重合体(50%中和品、50%水溶液)3tを投入した。
【0173】
液温を60℃とした後、48%NaOH 300kgを60分にわたって投入を行った。
【0174】
投入終了時点での液温は、75℃であった。
【0175】
アクリル酸/マレイン酸共重合体の色調は、APHAで30であった。
【0176】
比較例1
図1に示した反応槽101へ、重量平均分子量60,000のアクリル酸/マレイン酸共重合体(50%中和品、50%水溶液)3tを投入した。
【0177】
液温を95℃とした後、48%NaOH 300kgを60分にわたって投入を行った。
【0178】
投入終了時点での液温は、101℃であった。
【0179】
アクリル酸/マレイン酸共重合体の色調は、APHAで120であった。
【0180】
比較例2
図1に示した反応槽101へ、重量平均分子量60,000のアクリル酸/マレイン酸共重合体(50%中和品、50%水溶液)3tを投入した。
【0181】
液温を30℃とした後、30℃に保ちながら48%NaOH 300kgを投入したところ480分を要した。
【0182】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、分子中に多くのカルボキシル基を有し膨大な中和熱を発生し得る(メタ)アクリル酸系重合体のような水溶性重合体では、中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行う際に、中和温度を低温制御することにより、重合体の着色を防止することができ、無色透明性を保持することができる。さらに本発明者らが見出した外部循環除熱装置を利用して冷却することで、中和剤の供給速度を制限しなくともよいので、中和温度を低温制御しつつ中和工程を短縮することができる。そのため、水系の分散剤、スケール防止剤、洗剤ビルダーなどの用途として好適に用いられる分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた低分子量の水溶性重合体を、その特性を損なうことなく変色(着色)を防止した上で、短時間で効率よく、かつ安価に生産することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重合体の製造方法に用いることのできる製造装置を模式的に表した概略図である。
【符号の説明】
101…反応槽、 103…留出物循環経路、
105…コンデンサ、 107…冷却液導入経路、
109…冷却液排出経路、 111…撹拌機、
113…外部ジャケット、 115…外部循環経路、
117…除熱装置、 119…中和剤の供給経路、
121…先端ノズル部。
Claims (1)
- 重合用組成物を用いて重合を行い、その後に中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行って水溶性重合体を製造する方法において、
前記中和度調整中の中和温度を40℃以上80℃未満の範囲に保持することを特徴とする水溶性重合体の製造方法。
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JP2002207823A JP2004051683A (ja) | 2002-07-17 | 2002-07-17 | 水溶性重合体の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007197519A (ja) * | 2006-01-24 | 2007-08-09 | Toagosei Co Ltd | 水溶性重合体組成物の製造方法及び製造装置 |
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2002
- 2002-07-17 JP JP2002207823A patent/JP2004051683A/ja active Pending
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JP2007197519A (ja) * | 2006-01-24 | 2007-08-09 | Toagosei Co Ltd | 水溶性重合体組成物の製造方法及び製造装置 |
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