以下、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
本発明は、重合反応器を有する反応装置を用いた(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法であって、製造後の前記(メタ)アクリル酸系重合体(固形分換算)100質量%に対して0.5〜10質量%の(メタ)アクリル酸系重合体が前記反応装置中に予め存在する状態で、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分を前記重合反応器中でバッチ式で重合して重合体を得る工程を有することを特徴とする、(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法である。以下、本発明の製造方法を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の具体的な形態によって制限されるべきではない。
[反応装置]
まず、本発明の製造方法を実施するために好適に用いられる反応装置について説明する。本発明の製造方法において用いられる反応装置は、重合反応器と、これに接続された貯蔵手段とを有する。その他の形態について特に制限はない。以下、本発明において用いられうる好ましい反応装置について、図1を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示す反応装置は、重合反応器としての重合釜101と、貯蔵手段としてのタンク123とを有する。重合釜101は、重合工程(中和工程を含む)に用いられる。
重合釜101には、撹拌機111が設置されている。この撹拌機111は、重合工程(中和工程を含む)において、重合釜101内の温度および濃度の偏在化を防止し、重合反応および中和処理が均等になされるように、重合釜101内の溶液を撹拌するための撹拌手段として機能する。
重合釜101本体の側面(さらには底面)外周部には、外部ジャケット113が周設されている。この外部ジャケット113は、重合工程(中和工程を含む)において、重合釜101内の反応液の温度を調整するための温度調整手段として機能する。図1に示す実施形態では、外部ジャケット113に、重合反応時には熱媒を、中和工程では冷媒を通じることができるように、適当な切替機構(図示せず)が設けられている。
かような装置構成を有することで、とりわけ中和工程での所要時間を著しく短縮化し生産性を飛躍的に向上することができ、また製造コストを大幅に低減できる。そのため、従来の水溶性重合体製品に比してその性能を損なうことなくより安価に製品が提供されうる。その結果、水系の分散剤、スケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどの用途における、利用価値(製品価値)を大幅に高めることができる。特に、重合反応と中和工程とを同一の反応器(重合釜101)を用いて行なうことで、装置の共用化による製造時間の短縮化、装置の小型化などが図れる点で有利である。
なお、重合工程(中和工程を含む)に必要な温度、圧力、流量などの測定装置、制御装置などが適宜設けられていることが好ましい。
反応装置が反応液の外部循環経路および当該外部循環経路を循環する反応液を除熱するための除熱装置を有することにより、重合熱の効率的な除熱が可能となる。かような形態によれば、コンデンサを用いた溶剤の潜熱を利用する除熱や、ジャケットを用いて外部から冷却する場合と比較して、マイルドな条件で重合反応を行なうことが可能となる。また、厳密な温度制御も可能となる。これらに起因して、得られる重合体のクレー分散能が向上するため、反応装置は反応液の外部循環経路および当該外部循環経路を循環する反応液を除熱するための除熱装置を有することが特に好ましい。
さらに、図1に示す実施形態では、上述した装置構成に加えて、さらに、重合釜101の下部(詳細には、重合釜内の液面よりも下部)に、外部循環経路115が連結されている。この外部循環経路115は、重合工程において重合釜101内の反応液を外部循環するための循環手段として機能する。また、外部循環経路115上には、該経路内を流れる反応液を冷却するための除熱装置117が設けられている。
さらに、重合釜101内部に重合用組成物の各成分および中和剤を供給することができるように、重合用組成物の各成分および中和剤の貯蔵部(図示せず)からの各供給経路の先端ノズル部が重合釜101内の反応液の液面よりも上方空間部に位置するように設けられている。ただし、先端ノズル部121は反応液の液中に位置してもよい。図1では、便宜上、ただ1つの供給経路119およびその先端ノズル部121のみが図示されているが、実際には、それぞれの成分を個別に添加できるように、重合に用いる各成分(例えば、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、中和剤など)のそれぞれに対応した(全体では複数の)供給経路119および先端ノズル部121が設置されている。また、上記各供給経路のほか、留出物循環経路および外部循環経路上には、必要に応じて、各種ポンプやバルブが適宜設けられていてもよい。
また、図1に示す実施形態の反応装置では、重合釜101とは別に、得られた重合体を貯蔵するための貯蔵手段として、タンク123が設けられている。このタンク123には、重合釜101の下部底面に接続された反応液抜き出し経路125の他端が接続されている。反応液抜き出し経路上にも、必要に応じて、各種ポンプやバルブが適宜設置されうる。反応液抜き出し経路125は、重合釜101で製造された(メタ)アクリル酸系重合体をタンク123へと移送するための移送手段として機能する。
タンク123は、外部ジャケットやヒータ等の内温調節機構を有することが好ましい。また、タンク123は攪拌装置を有することが好ましい。かような攪拌装置としては、例えば、軸を介して攪拌翼を回転させる装置や、外部に設置したポンプにより重合体水溶液を循環させることによって混合する装置などが挙げられる。
以上、本発明の製造方法に用いられうる反応装置について簡単に説明したが、この装置を構成する個々の構成要素の具体的な形態や、留出物循環経路および外部循環経路の具体的な構成・使用形態について特に制限はなく、例えば特開2003−268037などの従来公知の知見が適宜参照されうる。
例えば、重合釜101には、重合中に重合釜から留出する留出物を液化凝縮させて再び重合釜内に戻すための留出物循環経路が設けられてもよい。かような形態では、通常、当該留出物循環経路内を流れるガス状の留出物を液化凝縮させるためのコンデンサを、当該経路上に設ける。また、コンデンサには、冷却液を導入するための導入経路および熱交換後の冷却液を排出するための排出経路をそれぞれ連結する形態が例示されうる。
[重合工程]
本発明の(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、重合工程を必須に含む。重合工程では、例えば重合反応器内で、(メタ)アクリル酸を含む単量体成分をバッチ式で重合する。これにより、(メタ)アクリル酸系重合体(溶液)が得られる。
本工程において用いられる単量体成分は、(メタ)アクリル酸系重合体を重合することができる1種または2種以上の単量体からなるものであればよく、特に制限されない。少なくとも(メタ)アクリル酸(以下、「単量体(I)」とも称する)を含有するものであればよいが、必要があれば(メタ)アクリル酸に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(II)」とも称する)および/または他の単量体(以下、「単量体(III)」とも称する)が含まれていてもよい。ここでいう単量体は、単量体成分で構成されるものであって、重合の際に用いる他の成分である溶媒や開始剤その他の添加剤は含まない。
単量体(I)としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。これらは、1種単独であってもよいし、組み合わせてもよい。好ましくは、アクリル酸が単独で、またはメタクリル酸と所定比率で混合された混合物の形態で用いられる。
単量体成分中の単量体(I)の配合量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは50〜100モル%であり、より好ましくは70〜100モル%であり、さらに好ましくは90〜100モル%である。単量体(I)の配合量が50モル%以上であれば、キレート能およびクレー等の分散能に優れた重合体が得られる。一方、上限については、100モル%、すなわち全量(メタ)アクリル酸であってもよい。さらに、単量体(I)としてアクリル酸およびメタクリル酸を併用する場合には、メタクリル酸の配合量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは0.5〜4モル%であり、さらに好ましくは1〜3モル%である。メタクリル酸の配合量が5モル%以下であれば、重合体のキレート能の低下が防止されうる。
なお、単量体(I)は、後述する溶媒(好ましくは水)に溶解されて単量体(I)の溶液(好ましくは水溶液)の形態で用いられうる。単量体(I)溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の当該溶液中の単量体(I)の濃度は、好ましくは10〜100質量%であり、より好ましくは30〜95質量%であり、さらに好ましくは50〜90質量%である。ここで、単量体(I)溶液の濃度が10質量%以上であれば、製品の濃度低下が防止され、輸送および保管が簡便となる。一方、当該濃度の上限は特に制限されず、100質量%(すなわち、全量)単量体(I)、すなわち、無溶媒であってもよい。
単量体(II)、すなわち(メタ)アクリル酸に共重合可能な水溶性モノエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、単量体(I)の(メタ)アクリル酸をナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;単量体(I)をアンモニアもしくはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩;クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸などのモノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸;前記モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸をアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;前記モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸をアンモニアもしくはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸;前記モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸をアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;前記モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸をアンモニアもしくはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩;スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体;前記モノエチレン性不飽和単量体をアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;前記モノエチレン性不飽和単量体をアンモニアもしくはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩;(メタ)アリルアルコール、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)などの水酸基を含有する不飽和単量体やこれらにアルキレンオキサイドが付加重合されてなる単量体;などが挙げられる。ただし、これらのみに限定されない。
単量体(II)としては、上記に列挙した各化合物から必要に応じて1種または2種以上が適宜選択されて用いられうる。また、上述した化合物の中でも、特に、キレート能、分散能、耐ゲル化能等に優れる場合がある、不飽和脂肪族ジカルボン酸、スルホン酸基を含有する不飽和炭化水素、およびそれらの部分または完全中和塩より選択される1種または2種以上の化合物が好ましく用いられる。
単量体成分中の単量体(II)の配合量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは0〜50モル%であり、より好ましくは0〜30モル%であり、さらに好ましくは0〜10モル%である。単量体(II)の配合量が50モル%以下であれば、単量体(I)の配合量が十分に確保される結果、キレート能やクレー等の分散能に優れた重合体が得られる。一方、単量体(II)は任意成分であることから、その配合量の下限値は0モル%である。すなわち、単量体(II)を用いなくとも、単量体(I)成分による単独重合体(ホモポリマー)や共重合体(コポリマー)であれば、各種用途に好ましい作用効果を十分に発現する。
単量体(II)もまた、後述する溶媒(好ましくは水)に溶解されて単量体(II)の溶液(好ましくは水溶液)の形態で用いられうる。単量体(II)溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の当該溶液中の単量体(II)の濃度は、好ましくは10〜100質量%であり、より好ましくは20〜95質量%であり、さらに好ましくは30〜90質量%である。ここで、単量体(II)溶液の濃度が10質量%以上であれば、製品の濃度低下が防止され、輸送および保管が簡便となる。一方、上限については特に制限されず、100質量%(すなわち、全量)単量体(II)、すなわち、無溶媒であってもよい。
単量体(I)、(II)以外の他の単量体(III)は、特に制限されない。例えば、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルエーテル類、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステルなどの疎水性単量体が用いられうる。これらの単量体(III)は、必要に応じて1種または2種以上が適宜選択されて用いられうる。単量体(III)として疎水性単量体を用いると、疎水性化合物の分散性の点で優れるものの、得られる(メタ)アクリル酸系重合体の耐ゲル性を悪化させることがある。このため、使用用途に応じて、その配合量を制限する必要がある。
単量体(III)として疎水性単量体を配合する場合、単量体(III)の配合量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは40モル%未満であり、より好ましくは0〜20モル%であり、さらに好ましくは0〜10モル%である。換言すれば、単量体(I)および単量体(II)を合わせた親水性単量体(すなわち、(メタ)アクリル酸を50モル%以上含む親水性単量体)の配合量は、単量体成分の全量に対して60モル%以上であり、より好ましくは80〜100モル%であり、さらに好ましくは90〜100モル%である。単量体(III)としての疎水性単量体の配合量が40モル%以上の場合(=上記単量体(I)および単量体(II)を合わせた親水性単量体の配合量が60モル%未満の場合)には、米国特許第3,646,099号に開示されているように、得られる重合体は水溶性とはならない。また、耐ゲル性に優れた(メタ)アクリル酸系重合体を得られない虞がある。
単量体(III)もまた、後述する溶媒(好ましくは有機溶媒を含む)に溶解されて単量体(III)の溶液の形態で用いられうる。単量体(III)溶液として用いる場合の当該溶液中の単量体(III)の濃度は、好ましくは10〜100質量%であり、より好ましくは20〜95質量%であり、さらに好ましくは30〜90質量%である。単量体(III)溶液の濃度が10質量%以上であれば、製品の濃度低下が防止され、輸送および保管が簡便となる。一方、上限については特に制限されず、100質量%(すなわち、全量)単量体(III)、すなわち、無溶媒であってもよい。
本工程では、上述した各種の単量体を含有する単量体成分を水溶液中で重合することが好ましい。一実施形態において、当該水溶液は、溶媒、開始剤、その他の添加剤を含む。
単量体成分を水溶液中で重合する際に重合反応系に用いられる溶媒は、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール類などの水性の溶媒であることが好ましく、特に好ましくは水である。これらは1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、単量体成分の溶媒への溶解性を向上させるために、各単量体の重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒が適宜添加されうる。
前記有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノールなどの低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒドなどのアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類;などから、1種または2種以上を適宜選択されて用いられうる。
溶媒の使用量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは40〜200質量%であり、好ましくは45〜180質量%であり、さらに好ましくは50〜150質量%である。溶媒の使用量が10質量%以上であれば、分子量の増大が抑制されうる。一方、溶媒の使用量が200質量%以下であれば、製造された(メタ)アクリル酸系重合体の濃度低下が防止され、溶媒除去等の別工程が不要となる。なお、溶媒の多くまたは全量を、重合初期に反応容器内に仕込んでもよい。溶媒の一部は、単独で重合中に反応系内に適当に添加(滴下)されてもよい。あるいは、単量体成分や開始剤成分やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、溶媒をこれらの成分と共に重合中に反応系内に適当に添加(滴下)してもよい。
なお、重合形態は上述の形態のみには制限されない。例えば、前記水溶液重合以外にも懸濁重合や乳化重合が採用されてもよい。また、反応装置の観点からは、撹拌重合やニーダー重合などが採用されうる。
本工程において、重合は、過硫酸塩および重亜硫酸塩の存在下で行なわれることが好ましい。かような形態においては、重合中、過硫酸塩は重合開始剤として機能する。また、重亜硫酸塩は連鎖移動剤として機能する。これらの組み合わせの重合開始剤/連鎖移動剤を用いることで、得られる重合体の末端にスルホン酸基が定量的に導入され、耐ゲル性に優れた(メタ)アクリル酸系重合体が得られる。かような重合体は、各種用途に適した作用効果を有効に発現しうる。また、かような形態によれば、後述するように、得られる重合体が高重合濃度条件下でも必要以上に高分子量化することが抑制され、低分子量の重合体が効率よく製造されうる。
過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。また、重亜硫酸塩としては、具体的には、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムおよび重亜硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
重亜硫酸塩の添加量は、過硫酸塩1質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは1〜12質量部であり、さらに好ましくは2〜5質量部である。過硫酸塩1質量部に対して重亜硫酸塩が0.5質量部以上であれば、重亜硫酸塩による効果が十分に得られる。すなわち、重合体の末端に十分にスルホン酸基が導入され、分散能やキレート能に加えて耐ゲル性にも優れた(メタ)アクリル酸系重合体が得られる。また、(メタ)アクリル酸系重合体の重量平均分子量の増大も防止される。一方、過硫酸塩1質量部に対して重亜硫酸塩が20質量部以下であれば、重合反応系における重亜硫酸塩の無駄な消費が防止される。その結果、過剰な重亜硫酸塩の分解に起因する亜硫酸ガスの発生量の増大も防止される。そのほか、(メタ)アクリル酸系重合体中の不純物の生成も抑制され、重合体の性能低下や低温保持時の不純物析出も防止されうる。
過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加量は、単量体成分1モルに対して、過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計量が、好ましくは2〜20gであり、より好ましくは4〜15gであり、さらに好ましくは5〜12gであり、特に好ましくは6〜9gである。当該添加量が上述した範囲内の値であれば、製造過程での亜硫酸ガスの発生や不純物の発生が低減されうる。このため、得られる(メタ)アクリル酸系重合体の末端や側鎖にスルホン酸基等の硫黄含有基が十分に導入されうる。そのほか、得られる(メタ)アクリル酸系重合体の性能低下や低温保持時の不純物析出も防止される。また、過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計添加量が2g以上であれば、得られる重合体の分子量の増大が抑制されうる。一方、添加量が20g以下であれば、添加量に見合った過硫酸塩および重亜硫酸塩の効果が得られ、重合体の純度低下などの悪影響も防止される。
過硫酸塩は、上述した溶媒(好ましくは水)に溶解されて過硫酸塩の溶液(好ましくは水溶液)の形態で用いられうる。過硫酸塩溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の当該溶液中の過硫酸塩の濃度は、好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは5〜35質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。ここで、過硫酸塩溶液の濃度が1質量%以上であれば、製品の濃度低下が防止され、輸送および保管が簡便となる。一方、過硫酸塩溶液の濃度が35質量%以下であれば、過硫酸塩の析出が防止されうる。
重亜硫酸塩もまた、上述した溶媒(好ましくは水)に溶解されて重亜硫酸塩の溶液(好ましくは水溶液)の形態で用いられうる。重亜硫酸塩溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の当該溶液中の重亜硫酸塩の濃度は、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは20〜40質量%であり、さらに好ましくは30〜40質量%である。ここで、重亜硫酸塩溶液の濃度が10質量%以上であれば、製品の濃度低下が防止され、輸送および保管が簡便となる。一方、重亜硫酸塩溶液の濃度が40質量%以下であれば、重亜硫酸塩の析出が防止されうる。
ここまで、過硫酸塩/重亜硫酸塩の存在下で重合を行なう形態を好ましい形態として説明したが、本工程においては、他の重合開始剤や連鎖移動剤が用いられても勿論よい。
本工程で用いられて重合開始剤や連鎖移動剤として機能しうる他の化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、および過酸化水素が挙げられる。
これらの化合物もまた、上述した溶媒(好ましくは水)に溶解されて溶液(好ましくは水溶液)の形態で用いられうる。溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の当該溶液中の上記化合物の濃度は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、通常は、上述した過硫酸塩や重亜硫酸塩の溶液と同程度の濃度に適宜決定される。
本工程において用いられうる他の添加剤としては、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適当な添加剤を適量添加されうる。かような添加剤としては、例えば、重金属濃度調整剤、有機過酸化物、H2O2/金属塩などが挙げられる。
重金属濃度調整剤としては、特に制限されないが、多価金属化合物または単体が挙げられる。具体的には、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2SO4・VSO4・6H2O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4)V(SO4)2・12H2O]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセトナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末、鉄粉末が挙げられる。
上述した重金属濃度調整剤を用いると、得られる(メタ)アクリル酸系重合体における重金属イオン濃度が0.05〜10質量ppm程度に抑えられうるため、好ましい。また、既存の鋼鉄(スチール)製や銅基合金製の反応容器内壁面に耐腐食性に優れるグラスライニング加工等された反応容器やSUS(ステンレス)製の容器や撹拌器などを用いると、本発明の製造条件下においては、重金属イオン(特に鉄イオン)が、容器等の材質であるSUSから反応溶液中に溶出することが知られている。これは、費用対効果の面から有利である。本発明では、こうしたSUS製の反応容器や撹拌翼などの反応装置を利用する場合には、上記重金属濃度調整剤を添加する場合と同様の作用効果を奏しうる。なお、既存の鋼鉄(スチール)製や銅基合金製の反応容器であっても問題はないが、重金属イオンが多く溶出する虞がある。そうした場合には、重金属による色がでてしまうため、こうした重金属イオンを除去する操作が必要となり、不経済である。また、グラスライニング加工等された反応容器であっても問題はなく、必要に応じて、重金属濃度調整剤を使用すればよい。
本工程における重合温度は、通常25〜99℃であり、好ましくは50〜95℃であり、より好ましくは70〜90℃であり、特に好ましくは80〜90℃である。重合温度が25℃以上であれば、分子量の上昇や不純物の増加などの問題の発生が抑制される。そのほか、重合時間の延長が防止され、生産性の低下も防ぐことができる。一方、重合温度が99℃以下であれば、重亜硫酸塩の分解が抑えられ、亜硫酸ガスの多量発生やこれに伴う不純物量の増大が防止される。また、系外への亜硫酸ガスの排出に起因する回収処理コストの高騰も抑止できる。そのほか、重亜硫酸塩が亜硫酸ガスとして抜けてしまうことに起因する効果の減少、すなわち、分子量の増大も防止されうる。なお、「重合温度」とは、反応系における反応溶液の温度を意味する。
重合温度は、重合中、常に略一定に保持する必要はなく、本発明の作用効果を損なわない範囲であれば、重合温度のプロファイルに特に制限はない。例えば、室温(25℃未満であってもよい。すなわち、上述した重合温度の範囲を一時的に外れることがあっても本発明の技術的範囲を外れるものではない)から重合を開始し、適当な昇温時間(または昇温速度)で設定温度まで昇温し、その後、反応系を当該設定温度に保持してもよい。あるいは、単量体や開始剤などの滴下成分ごとに滴下時間を変えてもよい。滴下の仕方によっては、重合途中に上記温度範囲内で経時的に温度変動(昇温または降温)させてもよい。
特に、室温から重合を開始する方法(室温開始法)の場合には、例えば、300分処方であれば、好ましくは120分以内に、より好ましくは0〜90分間で、さらに好ましくは0〜60分間で設定温度に達するようにする。昇温時間がかような範囲内の値であれば、得られる重合体の高分子量化が抑制されうる。なお、反応系の温度が設定温度に達した後は、重合終了まで反応系を当該設定温度に維持することが好ましい。ここでは重合時間が300分の例を示したが、重合時間の処方が異なる場合には当該例を参照に、重合時間に対する昇温時間の割合が同様になるように昇温時間を設定すればよい。
単量体成分の重合に際して、反応系内の圧力は、特に限定されない。常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれの圧力下であってもよい。好ましくは、重合中、亜硫酸ガスの放出を防ぎ、低分子量化を可能にするため、常圧または、反応系内を密閉し、加圧下で行うのがよい。また、常圧(大気圧)下で重合を行うと、加圧装置や減圧装置を併設する必要がなく、また耐圧製の反応容器や配管を用いる必要がない。このため、製造コストの観点からは、常圧(大気圧)が好ましい。すなわち、得られる(メタ)アクリル酸系重合体の使用目的によって、適宜最適な圧力条件を設定すればよい。
反応系内の雰囲気は、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのがよい。例えば、重合開始前に系内を窒素などの不活性ガスで置換することが好ましい。これにより、反応系内の雰囲気ガス(例えば、酸素ガスなど)が液相内に溶解して重合禁止剤として作用することが抑制される。その結果、重合開始剤である過硫酸塩が失活して低減するのが防止され、重合体のより一層の低分子量化が可能となる。
本発明の(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法は、予め反応装置内にある程度の量の(メタ)アクリル酸系重合体を存在させた状態で、バッチ式で(メタ)アクリル酸系重合体の重合を行なう点に特徴を有する。具体的には、製造する(メタ)アクリル酸系重合体100質量%に対して0.5〜5質量%の(メタ)アクリル酸系重合体が前記反応装置中に予め存在する状態で、上述した重合工程を行なう。なお、本発明において反応装置中に予め存在する重合体を、以下、「初期仕込み重合体」とも称する。
初期仕込み重合体の具体的な形態(構成単位の組成、分子量等)に特に制限はなく、上述した重合工程と同様の手法により製造可能な(メタ)アクリル酸系重合体であれば好適に用いられうる。ただし、初期仕込み重合体の中和度は、好ましくは90〜100%であり、より好ましくは95〜100%である。初期仕込み重合体の中和度がかような範囲内の値であれば、得られる重合体の耐ゲル性が向上しうるという利点がある。
初期仕込み重合体の由来は特に制限されない。連続したバッチ式の製造過程においては、前バッチから反応装置内に残存した重合体をそのまま初期仕込み重合体として用いてもよい。あるいは、所望の組成の(メタ)アクリル酸系重合体を別途の操作により反応装置中に添加して、初期仕込み重合体としてもよい。
また、上述したように、(メタ)アクリル酸系重合体は水溶液の形態で製造される場合があるが、かような場合においては、初期仕込み重合体もまた、水溶液の形態であってもよい。
初期仕込み重合体の存在量は、製造後の(メタ)アクリル酸系重合体(固形分換算)100質量%に対して、0.5〜10質量%であり、好ましくは0.5〜8質量%であり、より好ましくは0.6〜5質量%であり、さらに好ましくは0.7〜4質量%であり、特に好ましくは0.8〜3質量%である。初期仕込み重合体の存在量が0.5質量%未満であると、得られる重合体の耐ゲル性が低下する虞がある。一方、当該存在量が10質量%を超えると、得られる重合体が高分子量化してしまう虞がある。
ここで、「重合工程において製造される(メタ)アクリル酸系重合体(固形分換算)100質量%に対して」とは、重合工程を経て(中和工程がある場合にはさらに中和工程を経て)得られる(メタ)アクリル酸系重合体組成物(単量体成分(単量体組成物)を重合(さらに中和)して得られる組成物;水溶液の形態で製造される場合は、(メタ)アクリル酸系重合体水溶液)の固形分100質量%を基準とすることを意味する。当該重合組成物は、通常、(メタ)アクリル酸系重合体のほかに、微量の開始剤や連鎖移動剤の残渣等や初期仕込み重合体を固形分として含み、固形分以外には溶剤等を含む。なお、(メタ)アクリル酸系重合体水溶液の固形分の値としては、後述する実施例に記載の手法により得られる値を採用するものとする。なお、初期仕込み重合体が水溶液の形態である場合には、上述した存在量もまた、水溶液としての存在量を意味する。
初期仕込み重合体は、反応装置中に存在するものであればよい。換言すれば、重合反応器中に存在するもののみが、初期仕込み重合体とされるわけではない。図1に示すように外部循環経路を備えた反応装置を用いて重合体の製造を行なう場合には、当該外部循環経路に予め存在する重合体もまた、初期仕込み重合体である。
上述したような手段を採用することで、製造される(メタ)アクリル酸系重合体の耐ゲル性が有意に向上するという驚くべき結果が得られた。当該効果が得られるメカニズムに関しては、完全に明らかではないが、製造される(メタ)アクリル酸系重合体水溶液には、僅かに低分子量域の生成物が多いことが観測された。よって、当該低分子量成分のうちのいずれかが、カルシウムイオンを捕捉した重合体を水へと溶解させるような助剤として機能し、析出を抑制していると考えられる。ただし、本発明の技術的範囲が当該メカニズムに拘束されることはない。
本工程では、単量体成分の重合反応は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で重合を行うことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇が抑制される。その結果、低分子量の(メタ)アクリル酸系重合体が良好に製造されうる。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる。特に、重合中の中和度を1〜25モル%と低くすることで、不純物の低減効果を格段に向上させることができる。具体的には、重合中の反応溶液の25℃でのpHは、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜4である。反応溶液のpHが1以上であれば、亜硫酸ガスの発生や装置の腐食といった問題の発生が抑制されうる。一方、pHが6以下であれば、重亜硫酸塩の作用効率の低下が抑制され、分子量の増大が防止される。また、上述したような酸性条件下で重合反応を行うことにより、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程が省略されうる。それゆえ、(メタ)アクリル酸系重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制されうる。
なお、かような形態では、重合工程において中和度が一時的に上述した範囲を超えるような形態も採用されうる。重合終了時点において中和度が1〜25モル%の範囲内となっていれば、上述したメリットが得られるのである。ただし、単量体(I)の添加開始時から重合の終了までの間、中和度が1〜25モル%の範囲内に維持されることが好ましく、重合工程中は一貫して中和度が1〜25モル%の範囲内に維持されることがより好ましい。
重合中の反応溶液のpHを調整するためのpH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらの中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。本明細書では、これらのものを単に「pH調整剤」あるいは「中和剤」と称する場合がある。
上述した通り、重合中の中和度は好ましくは1〜25モル%であるが、重合に用いられる単量体成分が単量体(I)のみからなる場合には、重合中の中和度は、好ましくは2〜15モル%であり、より好ましくは3〜10モル%である。単量体成分が単量体(I)に加えて単量体(II)を含む場合には、単量体(II)の一部または全量を初期に仕込むことが可能であるが、このときの重合中の中和度は、好ましくは1〜25モル%であり、より好ましくは3〜10モル%である。重合中の中和度がかような範囲内の値であれば、単量体成分が単量体(I)のみからなる場合であっても、単量体(I)と単量体(II)とが含まれる場合であっても、最も良好に(共)重合を行なうことが可能である。また、重合反応系の水溶液の粘度上昇が最小限に抑制され、低分子量の重合体が良好に製造されうる。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる。なお、重合中の中和度が1モル%以上であれば、亜硫酸ガスの発生量の増大が抑制され、分子量の増大が防止される。一方、重合中の中和度が25モル%以下であれば、重亜硫酸塩の連鎖移動効率が十分に確保され、同様に分子量の増大が防止される。そのほか、重合の進行に伴う重合反応系の水溶液の粘度上昇も抑制される。その結果、やはり低分子量の重合体が得られる。さらに、上述した中和度低減による効果が十分に発揮され、不純物の発生が大幅に低減されうる。
なお、中和の方法は特に制限されない。中和剤として、例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのアルカリ性の単量体(II)を利用してもよい。あるいは、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などを用いてもよい。これらが併用されてもよい。また、中和の際の中和剤の添加形態は、固体の形態であってもよいし、適当な溶媒(好ましくは水)に溶解された溶液の形態であってもよい。溶液を用いる場合の溶液中の中和剤の濃度は、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは20〜55質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。当該濃度が20質量%以上であれば、製品の濃度低下が防止され、輸送および保管が簡便となる。一方、60質量%以下であれば、中和剤の析出の虞が低減され、かつ粘度も低く抑えられるため、送液も簡便である。
重合に際しては、単量体、過硫酸塩および重亜硫酸塩その他の添加剤は、通常、これらを予め適当な溶媒(好ましくは被滴下液用の溶媒と同種の溶媒)に溶解し、単量体溶液、過硫酸塩溶液および重亜硫酸塩溶液その他の添加剤溶液とする。そして、それぞれを反応容器内に仕込んだ(水性の)溶媒(必要があれば所定の温度に調節したもの)に対して、所定の滴下時間に亘って連続的に滴下しながら重合することが好ましい。さらに水性の溶媒の一部についても、反応系内の容器に予め仕込んでなる初期仕込みの溶媒とは別に、後から滴下してもよい。ただし、他の形態も採用されうる。例えば、滴下方法に関しては、連続的に滴下しても、断続的に何度かに小分けして滴下してもよい。単量体(II)は、一部または全量を初期仕込みしてもよい(この場合には、重合開始時に一時に全量またはその一部を滴下したものと見なすこともできる)。また、単量体(II)の滴下速度(滴下量)も、滴下の開始から終了まで常に一定(一定量)として滴下してもよいし、あるいは重合温度等に応じて経時的に滴下速度(滴下量)を変化させてもよい。また、全ての滴下成分を同じように滴下せずとも、滴下成分ごとに開始時や終了時をずらしたり、滴下時間を短縮させたり延長させてもよい。このように、本発明の製造方法は、本発明の作用効果を損なわない範囲で適当に変更可能である。また、溶液の形態で各成分を滴下する場合には、反応系内の重合温度と同程度まで滴下溶液を加温しておいてもよい。こうしておくと、重合温度を一定に保持する場合に、温度変動が少なく温度調整が容易である。
単量体(I)、(II)および/または(III)を(共)重合する場合、単量体それぞれの重合性に応じて滴下時間を制御するとよい。例えば、重合性の低い単量体を用いる場合には、滴下時間を短くしてもよい。また、予め単量体の一部または全量を反応系内の容器に仕込んでおいてもよい。
さらに、重合体の分子量については、重合初期の分子量が最終分子量に大きく影響する。このため、重合体の初期分子量を低下させるために、重合開始より60分以内、好ましくは30分以内、より好ましくは10分以内に重亜硫酸塩またはその溶液を5〜20質量%添加(滴下)することが好ましい。当該形態は、室温から重合を開始する場合には特に有効である。
また、重合に際しては、重合温度を低くして亜硫酸ガスの発生を抑え、不純物の形成を防止することがより重要である。このため、重合の際の総滴下時間は、好ましくは30〜360分であり、より好ましくは60〜300分であり、さらに好ましくは90〜240分である。総滴下時間が30分以上であれば、過硫酸塩/重亜硫酸塩による効果が十分に発揮されうる。一方、総滴下時間が360分以下であれば、生産性の低下が抑制されうる。なお、「総滴下時間」とは、最初の滴下成分(1成分とは限らない)の滴下開始時から最後の滴下成分(1成分とは限らない)を滴下完了するまでの時間をいう。
また、重合の際の滴下成分のうち、重亜硫酸塩(溶液)の滴下終了時間については、単量体(I)(溶液)の滴下終了よりも、好ましくは1〜30分、より好ましくは1〜20分、さらに好ましくは1〜15分滴下終了を早めるとよい。これにより、重合終了後の重亜硫酸塩量を低減でき、重亜硫酸塩による亜硫酸ガスの発生や不純物の形成を有効かつ効果的に抑制することができる。その結果、重合終了後に気相部の亜硫酸ガスが液相に溶解して生じる不純物の発生が格段に低減されうる。重合終了後に重亜硫酸塩が残存する場合には、不純物を生成し重合体の性能低下や低温保持時の不純物析出等を招くことにつながる。したがって、重合の終わりには重亜硫酸塩を含む開始剤が消費され残存していないことが好ましい。
換言すれば、重亜硫酸塩(溶液)の滴下終了時間を、単量体(I)(溶液)の滴下終了時間よりも1分以上早めることで、重合終了後の重亜硫酸塩の残存が防止されうる。その結果、亜硫酸ガスの発生や不純物の形成が有効かつ効果的に抑制されうる。一方、重亜硫酸塩(溶液)の滴下終了から単量体(I)(溶液)の滴下終了までが30分以内であれば、重合終了までに重亜硫酸塩が消費されてしまうことが防止され、分子量の増大が抑制されうる。そのほか、重合中に重亜硫酸塩の滴下速度が単量体(I)(溶液)の滴下速度に比して速くなりすぎず、滴下期間中の不純物や亜硫酸ガスの多量発生が防止されうる。
また、重合の際の滴下成分のうち、過硫酸塩(溶液)の滴下終了時間については、単量体(I)(溶液)の滴下終了時間よりも、好ましくは1〜30分、より好ましくは1〜20分、さらに好ましくは1〜15分遅らせる。これにより、重合終了後に残存する単量体成分量を低減できるなど、残存モノマーに起因する不純物を格段に低減することができる。
ここで、過硫酸塩(溶液)の滴下終了が単量体(I)(溶液)の滴下終了よりも1分以上遅ければ、重合終了後の単量体成分の残存が防止されうる。その結果、不純物の形成が有効かつ効果的に抑制されうる。一方、過硫酸塩(溶液)の滴下終了が単量体(I)(溶液)の滴下終了から30分以内であれば、重合終了後の過硫酸塩またはその分解物の残存が抑制され、これに起因する不純物の発生が防止されうる。
各成分の滴下が終了し、重合反応系における重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度(すなわち単量体の重合固形分濃度)は、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは40〜70質量%であり、さらに好ましくは45〜65質量%である。このように重合反応終了時の固形分濃度が35質量%以上であれば、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、効率よく低分子量の(メタ)アクリル酸系重合体を得ることができる。例えば、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができる。それゆえ、その製造効率を大幅に上昇させたものとすることができる。その結果、(メタ)アクリル酸系重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。
重合反応系において固形分濃度を高くすると、従来の方法では、重合反応の進行に伴う反応溶液の粘度の上昇が顕著となり、得られる重合体の重量平均分子量も大幅に高くなるという問題点を生じていた。しかしながら、開始剤として過硫酸塩/重亜硫酸塩を用いた重合反応を酸性側(25℃でのpHが1〜6であり、中和度が1〜25モル%の範囲)で行なうと、重合反応の進行に伴う反応溶液の粘度の上昇が抑制されうる。それゆえ、重合反応を高濃度の条件下で行っても低分子量の重合体を得ることができ、重合体の製造効率を大幅に上昇させることができる。
ここで、重合反応が終了した時点とは、全ての滴下成分の滴下が終了した後、所定の熟成時間を経過し(重合が完結し)た時点を意味する。
熟成時間は、通常1〜120分間であり、好ましくは5〜60分間であり、より好ましくは10〜30分間である。熟成時間が1分間以上であれば、熟成が十分になされ、単量体成分の残存やこれに伴う不純物の生成・性能低下などが防止されうる。一方、熟成時間が120分間以内であれば、重合体溶液の着色の虞が低減されうる。そのほか、重合完結後に徒に熟成時間を延長することは不経済である。
また、熟成中は、重合反応期間内であるため、上述した重合温度が適用される。したがって、ここでの温度も一定温度(好ましくは滴下終了時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。したがって、重合時間とは、上述した総滴下時間+熟成時間をいい、最初の滴定開始時点から熟成終了時点までに要した時間を意味することとなる。
[中和工程]
上述した通り、重合工程では、重合は、酸性条件下(重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であり、重合中の中和度が1〜25モル%である)で行われることが好ましい。かような形態では、得られる(メタ)アクリル酸系重合体の中和度(最終中和度)を、重合が終了した後に、後処理として適当なアルカリ成分を適宜添加することによって所定の範囲に設定する。
重合体の最終中和度は、その使用用途によって異なるため特に制限されず、1〜100モル%の極めて広範囲に設定可能である。例えば、素肌に優しいといわれている弱酸性洗剤などに、洗剤ビルダーとして利用するような場合には、酸性のまま中和せずに使用してもよい。また、中性洗剤やアルカリ洗剤などに使用するような場合には、後処理としてアルカリ成分で中和して中和度90モル%以上に中和して使用してもよい。特に酸性の重合体として使用される場合の重合体の最終中和度は、好ましくは1〜75モル%であり、より好ましくは5〜70モル%である。また、中性・アルカリ性の重合体として使用される場合の重合体の最終中和度は、好ましくは75〜100モル%であり、より好ましくは85〜99モル%である。なお、中性・アルカリ性の重合体として使用される場合の重合体の最終中和度が99モル%以下であれば、重合体水溶液の着色が防止されうる。
中和工程で用いられうるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類で代表されるようなものが挙げられる。上記アルカリ成分は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
中和剤の供給形態は、特に制限されないが、局所的に急激に大量の中和熱が発生するのを防止する観点からは、適当な溶媒に溶解して中和剤溶液の形態で供給することが好ましい。ただし、中和剤のみ(すなわち、無溶媒の形態)で供給してもよい。中和剤溶液として用いる場合の溶液濃度は、使用目的に応じて適宜決定され、特に制限されない。
中和剤の供給方法もまた、特に限定されないが、重合反応器内に中和剤の供給経路を通じて供給、好ましくは先端ノズル部より連続的に滴下する方法が好ましい。また、中和剤成分が2種以上の場合には、別々の供給経路を通じてそれぞれの中和剤成分を供給するのが好ましい。ただし、別々の供給経路を途中で合流させ、各中和剤成分を混合して反応器内に供給するようにしてもよいし、供給元の貯蔵タンク内で予め各中和剤成分を混合して1つの供給経路を通じて供給するようにしてもよい。
中和剤の供給速度は使用目的に応じて適宜決定され、特に制限されない。
中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行う間、反応器内の反応液の温度は、発生する中和熱の除熱が充分でなく、反応液の大量の蒸発が起こったり、反応液に気泡が混ざるようになり、外部循環経路や外部除熱装置の内壁や管壁面に付着し熱交換効率の低下を招くことのないように、適宜最適な反応液温度を決定すればよく、特に制限されない。
なお、従来の完全中和方式や部分中和方式で得られる(メタ)アクリル酸塩系重合体を脱塩処理することで、最終中和度を設定することも可能ではある。しかし、この場合には、脱塩工程の追加により製造工程が煩雑化し、製造コストも上昇することになる。このため、使用用途が制限される場合がある。
また、上述したように酸性のまま中和せずに使用するような場合には、反応系内が酸性のため、反応系内の雰囲気中に毒性のある亜硫酸ガス(SO2ガス)が残存している場合がある。こうした場合には、過酸化水素などの過酸化物を添加して分解するか、あるいは空気や窒素ガスを導入(ブロー)して追い出しておくことが好ましい。
[他の工程]
以上、本発明の特徴的な構成である重合工程(中和工程を含む)について主に説明したが、本発明の製造方法は、必要に応じて、他の工程をさらに含んでもよい。他の工程としては、まず、移送工程が挙げられる。移送工程では、重合工程(中和工程を含む)で得られた重合体(水溶液)を反応槽101から抜き出し、貯蔵手段であるタンク123へと移送する。移送には、移送手段としての反応液抜き出し経路125が用いられる。移送された重合体(水溶液)は、(場合によっては既に貯蔵されていた重合体(水溶液)と混合されて)タンク中に貯蔵される。
移送工程の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、移送される重合体(好ましくは重合体水溶液)の温度(タンクへ流入する際の温度)は、好ましくは20〜90℃であり、より好ましくは30〜80℃であり、さらに好ましくは40〜70℃である。移送される重合体(水溶液)の温度が20℃以上であれば、水溶液の粘度が低く抑えられ、ポンプ等の移送手段にかかる負担の増大が防止されうる。一方、移送される重合体(水溶液)の温度が90℃以下であれば、移送される重合体(水溶液)の着色が防止されうる。なお、重合工程(中和工程を含む)後の反応液を上記範囲内の温度に調節した後に移送工程を行なってもよいし、移送とともに上記範囲内の温度に調節してもよい。
移送工程においては、従来、可能な限り多くの重合体(水溶液)を反応槽101から抜き出すことが試みられている。しかしながら、反応装置を用いて重合工程を行なうための反応装置はある一定のサイズを有していることから、完全に全ての重合体(水溶液)を反応槽101から抜き出すことは困難である。換言すれば、移送工程後に、ある一定量の重合体(水溶液)が反応装置中に残存することは避けられない。かような反応装置への重合体(水溶液)の残存は、反応槽101以外にも各種の構成要素(留出物循環経路103や外部循環経路115)を有する図1に示す形態の反応装置を用いた場合に特に顕著である。本発明によれば、図1に示すように外部循環経路を有する反応装置を用いて重合体を製造することで、あるバッチ製造後に重合体を重合反応器から抜き出す際に、上述した好ましい範囲内の量で重合体を反応装置中に残存させ、これを次バッチでの初期仕込み重合体といて用いることが可能となるため、好ましい。また、かような形態によれば、初期仕込み重合体を別途添加するためのコストや労力が削減されるため、経済的である。さらに、かような形態によれば、得られる重合体の性状も安定しやすい。
あるバッチで製造された重合体(水溶液)をタンク123へと移送する際に、予めタンク123に前バッチまでに製造された重合体(水溶液)が貯蔵されている場合には、移送された重合体(水溶液)と、予め貯蔵されていた重合体(水溶液)とは、タンク123において混合される。ここで、混合の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。混合した後はそのまま放置してもよいし、場合によってはタンクに適当な撹拌手段を設置して、適宜撹拌することにより均一な混合を達成してもよい。
[(メタ)アクリル酸系重合体]
本発明の製造方法により得られる(メタ)アクリル酸系重合体は、不可避的不純物が混入しうること以外は純粋な重合体のみの形態であってもよいし、上述したように水溶液重合によって得られる場合などには、水溶液の形態であってもよい。
本発明により製造される重合体(水溶液の場合にはこれに含まれる重合体)の重量平均分子量(Mw)について特に制限はない。ただし、重合体の重量平均分子量は、好ましくは1000〜20000であり、より好ましくは1500〜18000であり、さらに好ましくは2000〜16000であり、特に好ましくは3000〜14000である。本発明の製造方法では、これらの重量平均分子量の範囲を外れる重合体を得ることもできるが、重量平均分子量が1000以上でかつ20000以下であれば、耐ゲル性に優れるという利点がある。なお、重量平均分子量(Mw)の値としては、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値を採用するものとする。
本発明の製造方法により製造される(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)は、優れた耐ゲル化能(耐ゲル性)を示す。具体的には、得られる重合体(水溶液)の耐ゲル化能は、好ましくは0.008以下であり、より好ましくは0.007以下であり、さらに好ましくは0.006以下である。なお、耐ゲル化能の値としては、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値を採用するものとする。
本発明においては、上述したように、過硫酸塩の滴下終了を単量体の滴下終了よりも一定時間遅らせる等の操作を施すことで、得られる重合体中の残存単量体量を低減させることが可能である。具体的には、純分換算において5000質量ppm以下、好ましい実施形態では4000質量ppm以下とすることができる。
本発明においては、上述したように、開始剤/連鎖移動剤等の単量体以外の成分を必要以上に添加しない、または適切な重合温度で重合を行なう等の操作を施すことで、得られる重合体中の不純物(残存単量体を除く)量を低減させることも可能である。具体的には、使用用途によって、不純物と見なすか、有用成分と見なすかが異なる成分もあるため、一義的に規定することは困難であるが、純分換算において10000質量ppm以下とすることが好ましい。なお、使用用途によって、不純物と見なすか、有用成分と見なすかが異なる成分としては、重金属成分などが該当する。例えば、漂白剤を配合する洗剤組成物に用いる場合に、微量の重金属成分の存在であっても漂白剤を分解するため不純物となるが、漂白剤を配合しない洗剤組成物では、微量の重金属成分の存在により残存する他の不純物である過酸化物の量を低減でき、該過酸化物による皮膚刺激性の問題を解消できるため有効成分として機能するという具合である。
[用途]
本発明の製造方法により得られる重合体(水溶液)は、その特徴を活かして、水処理剤、無機顔料分散剤、洗剤ビルダー、洗剤組成物、スケール防止剤、キレート剤、繊維処理剤、木材パルプ漂白助剤等の用途に用いられうる。各種用途での使用時には、それぞれの使用目的に応じて、その他の原料を配合すればよい。
本発明の製造方法により得られる重合体(水溶液)の好適な用途である水処理剤は、好ましくは本発明により提供される(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)のみからなる。ただし、必要に応じて、他の配合剤として重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を配合した組成物の形態であってもよい。いずれの場合でも、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で公知の水溶性重合体を含んでもよい。
顔料分散剤は、好ましくは本発明により提供される(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)のみからなる。ただし、必要に応じて、他の配合剤として重合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを配合した組成物の形態であってもよい。いずれの場合においても、顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質または軽質炭酸カルシウム、クレー等の無機顔料等の分散剤として良好な性能を発揮する。例えば、顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。顔料分散剤の使用量は、顔料100質量部に対して、好ましくは0.05〜2.0質量部である。使用量が0.05質量部以上であれば、十分な分散効果が得られる。一方、2.0質量部以下であれば、添加量に見合った効果が得られ、経済的にも好ましい。
洗剤ビルダーは、当該重合体(水溶液)を含有してなるものであればよい。これにより、(メタ)アクリル酸系重合体が本来有する極めて優れた分散能、キレート能、耐ゲル性を発現できる水溶性の洗剤ビルダーが極めて安価に提供されうる。
なお、洗剤ビルダーにおける上記重合体(水溶液)以外の他の配合成分や配合比率に関しては、特に制限はなく、洗剤ビルダーに従来有効に適用されている各種成分およびその配合比率に基づき、洗剤ビルダーとしての作用効果を損なわない範囲で、適宜適用(利用)されうる。ただし、好ましくは、本発明の製造方法により得られる重合体(水溶液)がそのまま洗剤ビルダーとして用いられる。
上述した洗剤ビルダーは、洗浄能力を発揮しうる界面活性剤等の洗剤成分と混合されて、洗剤組成物を構成しうる。洗剤組成物における上記洗剤ビルダーの配合量は、重合体(水溶液)の固形分換算で、洗剤組成物に対して、好ましくは0.1〜20質量%である。重合体の配合量が0.1質量%以上であれば、洗剤ビルダーとしての効果が十分に発揮されうる。一方、重合体の配合量が20質量%以下であれば、添加量に見合っただけの効果が得られ、経済的にも好ましい。また、界面活性剤の配合量は、洗剤組成物全体の5〜70質量%であると好ましく、場合により酵素が5質量%以下の範囲で配合されうる。洗剤組成物の主剤である界面活性剤の量がかような範囲内の値であれば、他の成分とのバランスに優れ、洗剤組成物の洗浄力が十分に確保されうる。また、酵素の配合量については、5質量%以下で十分に添加効果が得られ、経済的にも好ましい。
界面活性剤の具体的な種類としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる
両性界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられ、カチオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
洗剤組成物に配合される酵素としては、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が挙げられる。特に、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
さらに、洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、蛍光剤、漂白剤、漂白助剤、香料等の洗剤組成物に常用される成分が配合されてもよい。
アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。キレートビルダーとしては、ゼオライト、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等が必要に応じて使用されうる。あるいは公知の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーが本発明の効果を損なわない範囲で使用されてもよい。
繊維処理剤は、本発明により提供される(メタ)アクリル酸系重合体(水溶液)を単独で使用してもよいが、染色剤、過酸化物、および界面活性剤等の添加剤を配合した組成物として使用することもできる。上記添加剤としては、繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。上記重合体と上記添加剤との配合比率は特に限定されないが、重合体1質量部に対して、上記添加剤を、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.2〜80質量部、さらに好ましくは1〜50質量部という割合で配合する。上記添加剤の配合量が0.1質量部以上であれば、十分な添加効果が得られる。一方、100質量部以下であれば、重合体が含有されることによる効果が十分に確保される。また、上記重合体を含む繊維処理剤は、性能や効果を阻害しない範囲で、さらに、上記重合体以外の他の重合体を含んでいてもかまわない。本発明により提供される重合体の繊維処理剤中への配合量は、特に限定されないが、繊維処理剤の全量に対して、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは5〜100質量%である。上述した織維処理剤を使用できる織維は特に限定されないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ナイロン、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品などが挙げられる。上述した繊維処理剤を精錬工程に利用する場合には、本発明により提供される重合体とアルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合には、上記重合体に加えて、過酸化物、および、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤をさらに配合することが好ましい。