JP5312183B2 - カルボキシル基含有重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カルボキシル基含有重合体の製造方法に関する。
低分子量のカルボキシル基含有重合体は、洗剤ビルダー等の洗剤添加物、無機物質の分散剤、水処理剤添加物等として有用なことが知られている。
カルボキシル基含有単量体をラジカル重合してカルボキシル基含有重合体を製造するに際し、重合開始剤や連鎖移動剤とともに、モール塩等の重金属イオン塩を使用することにより、重合開始剤の分解を促進して、低分子量の重合体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
ここで、近年の消費者の環境問題への意識の高まりより、例えば洗剤ビルダーに要求される性能が変化しつつある。すなわち、消費者が風呂の残り湯を洗濯に使用することにより節水を図ったり、排水する洗剤成分の低減の志向により使用量の少ない洗剤(洗剤組成物のコンパクト化)を好んだりするようになってきた。
残り湯の使用により、汚れ成分や硬度成分の多い条件下で洗濯をしなければならない問題が発生する。上記問題に対処すべく、汚れ成分の洗濯中の繊維などへの再付着を抑制する再汚染防止能が従来より一層高い剤が要求されている。
特開2004−75971号公報
このように、カルボキシル基含有重合体等が洗剤ビルダー等として有効であることが報告されてはいるものの、上述した現在の消費者ニーズに更に適応した、従来より良好な性能を有する洗剤ビルダーの開発が強く求められている。
そこで、本発明は、洗剤用途等に用いられた場合に従来より良好な再汚染防止能を有する重合体を安定的に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、カルボキシル基含有重合体において、カルボキシル基含有単量体を重金属イオンの存在下で重合し、該重金属塩を重合系内に供給する際に、重金属塩とカルボキシル基含有化合物を含む水溶液として供給することにより、良好な性能を有する所望のカルボキシル基含有重合体等が安定して製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるカルボキシル基含有重合体の製造方法は、重金属イオンの存在下でカルボキシル基含有単量体を重合するカルボキシル基含有重合体の製造方法において、重金属塩を重合系内に供給する際に、重金属塩とカルボキシル基含有化合物を含む水溶液として供給することを特徴とする製造方法である。
本発明のカルボキシル基含有重合体の製造方法によれば、優れた再汚染防止能を有するカルボキシル基含有重合体を安定して製造することができる。とりわけ所望の分子量を有するカルボキシル基含有重合体をバッチ毎の分子量のばらつきを抑え、製造することができる。
本発明の製造方法に好適に用いられる反応装置の一実施形態を示す概略図である。
101 重合釜
102 攪拌機
113 外部ジャケット
115 外部循環経路、
117 除熱装置、
119 供給経路、
121 先端ノズル部、
123 タンク、
125 反応液抜き出し経路。
以下、本発明を詳細に説明する。
[重金属イオン]
本発明の重合方法は、重金属イオンの存在下でカルボキシル基含有単量体を重合することを特徴としている。重金属イオンは、重合開始剤の分解を促進する等して重合開始剤を有効に働かせる等の効果を奏する。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンは、本発明においては、重金属化合物を溶解してなる水溶液または水性溶液を重合系に添加することにより、反応系に存在させる。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明の疎水基含有共重合体の製造において、重合反応を著しく妨げるものでなければ、重金属化合物の溶解性を損ねない範囲で使用できる。
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である重合体を例えば洗剤ビルダーとして用いる場合に、洗剤用ビルダーの汚れの原因となるおそれがある。
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体を引き続きアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
重合系に添加する、重金属化合物を溶解してなる水溶液または水性溶液中の重金属化合物の濃度は、0.1質量%〜10質量%とすることが好ましい。
[カルボキシル基含有化合物]
本発明の製造方法において、上記の通り、重金属イオンは、重金属塩の水溶液または水性溶液として重合系に添加されるが、本発明の製造方法において、当該重金属塩は重合系内に供給する際に、重金属塩とカルボキシル基含有化合物を含む水溶液として供給されることを特徴としている。重金属塩は重合系内に供給する際に、重金属塩とカルボキシル基含有化合物を含む水溶液として供給することにより、重金属イオンの効果を安定して発揮することができる為、得られる重合体の分子量のばらつきが少なく、所望の分子量の重合体を安定して製造することができるという効果を奏する。なお、「重合系」とは、重合反応が行なわれる、または行なわれている反応容器の内部を意味し、通常は初期仕込みの重合溶媒、または重合中の重合溶液内を意味する。カルボキシル基含有化合物を含まない重金属塩水溶液として重合系に供給する場合、原料タンクなどにおいて、重金属塩が経時的に析出する。重金属塩が鉄イオンの塩の場合、その傾向は顕著であり、モール塩の場合、特に顕著である。重金属塩水溶液が上記カルボキシル基含有化合物を含む場合、重金属塩の水溶液の不溶化が抑制されるという効果を奏する為、重金属塩が鉄イオンの塩の場合、本発明の効果は顕著であり、モール塩の場合、本発明の効果は特に顕著である。
上記カルボキシル基含有化合物としては、カルボキシル基を有する有機化合物であり、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、蟻酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、グリオキシル酸等でも構わないが、不純物低減の観点から、重合性の不飽和二重結合を有する化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸等およびこれらの無水物が例示される。なかでも、得られる重合体の分子量のばらつきを少なくする効果が高いという観点からは、カルボキシル基含有単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であることがより好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸であることがさらに好ましく、マレイン酸であることが特に好ましい。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
重合系に添加する際の重金属塩水溶液における重金属塩とカルボキシル基含有化合物の比率としては、水溶液のpHが8以下になるように設定することが好ましく、7以下になるように設定することがより好ましく、6以下になるように設定することが特に好ましい。
具体的には、重合系に添加する際の重金属塩水溶液における重金属塩とカルボキシル基含有化合物の比率は、重金属塩100質量部に対し、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは、10〜80質量部である。
[カルボキシル基含有重合体]
(カルボキシル基含有単量体)
本発明において、カルボキシル基含有重合体とは、少なくともカルボキシル基含有単量体由来の構造を有する重合体である。本発明においてカルボキシル基含有単量体とは、炭素‐炭素二重結合と、カルボキシル基、カルボキシル基の塩から選ばれる1つ以上の基を有する単量体である。カルボキシル基の塩とは、具体的にはカルボキシル基のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、4級アミン塩等を表す。
上記カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸、及びこれらの塩等が例示される。なかでも、重合性が高く得られる共重合体の再汚染防止能が高いという観点からは、カルボキシル基含有単量体は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、これらの塩であることがより好ましく、アクリル酸、マレイン酸であることがさらに好ましく、アクリル酸であることが特に好ましい。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。ここで、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸、メタクリル酸の総称である。
なお、上記カルボキシル基含有単量体由来の構造とは、カルボキシル基含有単量体がラジカル重合により共重合した構造であり、例えばカルボキシル基含有単量体がアクリル酸である場合、−CH−CH(COOH)−で表される構造を言う。
(その他の単量体)
本発明において、カルボキシル基含有重合体は、カルボキシル基含有単量体の1種以上を必須として含む単量体組成物を重合して得ることを特徴とするが、本発明における(メタ)アクリル酸系重合体は、カルボキシル基含有単量体以外に、他の単量体を含めて重合しても良い。
他の単量体としては、特に制限はないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアルキル基のエステルである、アルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体及びこれらの塩;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸などのホスホン酸基を有する単量体等(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール:ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、モノアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリルート、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドが1〜300モル付加した構造を有する単量体等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体、等が挙げられる。これらの他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
本発明において、全単量体(カルボキシル基含有単量体とその他の単量体の合計)におけるカルボキシル基含有単量体の割合は、全単量体100モル%に対し、50モル%以上好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。カルボキシル基含有単量体の割合が上記範囲であれば、カルボキシル基含有重合体の再汚染防止能が向上する傾向にあることに起因して洗剤ビルダー等として好適に使用することができる。
(カルボキシル基含有重合体の物性)
本発明の製造方法により得られるカルボキシル基含有重合体の重量平均分子量は、使用する用途についての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されない。本発明の製造方法によれば、所望の分子量のカルボキシル基含有重合体を、分子量のばらつき等を抑え、製造することができる。これにより、例えば洗剤ビルダーとして使用した場合に、従来の製造方法で得られた重合体と比較して、良好な性能を発現する。
本発明のカルボキシル基含有重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは100〜50000であり、より好ましくは500〜30000であり、さらに好ましくは1000〜20000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のカルボキシル基含有重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
また、本発明のカルボキシル基含有重合体の数平均分子量は、洗剤ビルダー等としての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明のカルボキシル基含有重合体の数平均分子量は、具体的には、好ましくは100〜20000であり、より好ましくは200〜15000であり、さらに好ましくは500〜10000である。この数平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この数平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のカルボキシル基含有重合体の数平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
[重合開始剤、連鎖移動剤、反応促進剤]
本発明の製造方法において、カルボキシル基含有重合体は、カルボキシル基単量体を必須として含む単量体組成物を、重合開始剤(開始剤とも言う)の存在下に重合して得ることができる。
開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
重合反応における重合開始剤の使用量は、単量体成分の使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、単量体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、20質量部以下、より好ましくは0.005質量部以上、15質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以上、10質量部以下である。
本発明の製造方法は、重合開始剤の他に、連鎖移動剤を使用することが好ましい。この際使用できる連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、公知の連鎖移動剤が使用できる。具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明の製造方法は、重金属イオンの存在下でカルボキシル基含有単量体を重合することを特徴としており、重金属イオン(あるいは重金属塩)は、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物として作用する。本発明の製造方法おいて、重金属イオンの他に、他の分解触媒や還元性化合物(反応促進剤ともいう)を使用(重合系に添加)してもよい。
重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、還元性化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテル付加物、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
(連鎖移動剤と開始剤の組み合わせ)
上記連鎖移動剤、開始剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過酸化水素(H)、過酸化水素(H)/過硫酸ナトリウム(NaPS)、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/酸素、次亜燐酸ナトリウム(SHP)/過硫酸ナトリウム(NaPS)、亜燐酸ナトリウム/過硫酸ナトリウム(NaPS)等の形態が好ましい。より好ましくは、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)、次亜燐酸ナトリウム(SHP)/過硫酸ナトリウム(NaPS)、過酸化水素(H)/過硫酸ナトリウム(NaPS)である。本発明の製造方法においては、上記組み合わせに加えて、重金属塩を必須として使用することとなる。
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、全単量体成分1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明の疎水基含有共重合体を効率よく生産することができ、また、疎水基含有共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
開始剤の使用量は、特に後述する場合を除き、全単量体成分1モルに対して、15g以下、より好ましくは0.1〜12gであることが好ましい。
連鎖移動剤の添加量は、特に後述する場合を除き、全単量体成分1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、連鎖移動剤が残留したり、重合体純分が低下するおそれがある。
(過硫酸塩)
開始剤として過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、単量体1モルに対して0.1〜5.0gであることが好ましく、0.2〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られる共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに、得られる共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
過硫酸塩と亜硫酸塩を組み合わせて使用する場合、過硫酸塩と亜硫酸塩との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩0.5〜8質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、亜硫酸塩の上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは7質量部であり、最も好ましくは6質量部である。ここで、亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加するおそれがあり、逆に8質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
過硫酸塩の添加方法としては、その分解性等を鑑み、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
滴下時間においても特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤においては、単量体の滴下終了時間まで滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、共重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る効果を見出せる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた共重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良いものである。
これら比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、或は特に併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、或は終了してから別の開始剤の滴下を開始しても良い。何れも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
(過酸化水素)
上記連鎖移動剤として過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、単量体1molに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
過酸化水素の添加方法としては、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは90重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過酸化水素は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
過酸化水素の滴下は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体(初期仕込みする単量体を除く)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。好ましくはカルボキシル基含有単量体の滴下開始後1分以上経過後、更に好ましくは3分以上経過後、より好ましくは5分以上経過後、最も好ましくは10分以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始時間を遅らすことにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始時間を遅らす時間は、単量体の滴下開始後60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下を単量体の滴下と同時に開始すること、単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、単量体の滴下開始時間から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応等が起こらなくなる為、重合初期の分子量が高くなる。
過酸化水素の滴下終了時間は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体の滴下終了時間と同時に終了することが好ましく、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することがより好ましく、30分以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、過酸化水素としての効果が得られず無駄となり、また、過酸化水素が多量に残存する恐れがあることから、得られた共重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくはない。
[カルボキシル基含有重合体のその他の製造条件]
本発明のカルボキシル基含有重合体の重合方法は、特に断りの無い限りは、公知の重合方法あるいは公知の方法を修飾した方法が使用できる。
上記重合方法としては、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒または水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。ここで重合の際、水とともに使用できる溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
上記重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。
上記重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器(重合容器)への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、洗剤ビルダー等として用いる場合の分散性を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
上記重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入しても
よく、単量体成分を構成する各単量体、溶媒等とあらかじめ混同しておいてもよい。
本発明の重金属塩(水)溶液(上記の通り、重金属化合物とカルボキシル基含有化合物を必須とする)の反応容器(重合容器)への添加方法としては、重合開始前に全量添加(初期仕込み)しても構わないし、全量を重合開始後に添加しても構わないが、少なくとも一部を重合開始前に添加することが好ましい。
本発明のカルボキシル基含有重合体の製造方法は、上記重合開始剤、連鎖移動剤、反応促進剤の他にも、必要に応じてpH調節剤、緩衝剤などを用いることができる。
重合の際の温度は好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75〜110℃であり、さらに好ましくは80〜100℃である。重合時の温度が上記範囲であれば、残存単量体成分が少なくなり、重合体の再汚染防止能が向上する傾向にある。なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間または昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温または降温)させてもよい。
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜240分である。なお、本発明において、「重合時間」とは単量体を添加している時間を表す。
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる重合体の分子量の点では、常圧下、または、反応系内を密閉し、加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
[反応装置]
本発明の製造方法を実施するために好適に用いられる反応装置について説明する。本発明の製造方法において用いられる反応装置は、重合反応器(重合反応釜)と、重合反応器に単量体(1)を添加するための供給経路を有する。その他の形態について特に制限はない。
重合反応釜には、撹拌機が設置されていることが好ましい。この撹拌機は、重合工程(該当する場合には中和工程を含む)において、重合反応釜内の温度および濃度の偏在化を防止し、重合反応および中和処理が均等になされるように、重合反応釜内の溶液を撹拌するための撹拌手段として機能する。
重合反応釜本体の側面(さらには底面)外周部には、外部ジャケットが周設されていることが好ましい。該外部ジャケットは、重合工程(該当する場合には中和工程を含む)において、重合反応釜内の反応液の温度を調整するための温度調整手段として機能する。熱媒と冷媒を通じることができるように、適当な切替機構を設けることが好ましい。
重合工程(該当する場合には中和工程を含む)に必要な温度、圧力、流量などの測定装置、制御装置などが適宜設けられていることが好ましい。
反応装置が重合反応釜内の反応液を外部循環させる経路および当該外部循環経路を循環する反応液を除熱するための除熱装置を有することにより、重合熱の効率的な除熱が可能となる。かような形態によれば、コンデンサを用いた溶剤の潜熱を利用する除熱や、ジャケットを用いて外部から冷却する場合と比較して、マイルドな条件で重合反応を行なうことが可能となる。また、厳密な温度制御も可能となる。これらに起因して、得られる重合体の再汚染防止能等が向上するため、反応装置は反応液の外部循環経路および当該外部循環経路を循環する反応液を除熱するための除熱装置を有することが特に好ましい。
以上、本発明の製造方法に用いられうる反応装置について簡単に説明したが、この装置を構成する個々の構成要素の具体的な形態や、留出物循環経路および外部循環経路の具体的な構成・使用形態について特に制限はなく、例えば特開2003−268037などの従来公知の知見が適宜参照されうる。
上記以外の設備として例えば、重合反応釜には、重合中に重合反応釜から留出するガス条の留出物を液化凝縮させて再び重合反応釜内に戻すための留出物循環経路が設けられてもよい。かような形態では、通常、当該留出物循環経路内を流れるガス状の留出物を液化凝縮させるためのコンデンサを、当該経路上に設ける。また、コンデンサには、冷却液を導入するための導入経路および熱交換後の冷却液を排出するための排出経路をそれぞれ連結する形態が例示されうる。
[カルボキシル基含有重合体組成物(重合体組成物)]
本発明の製造方法により製造される重合体組成物中には、本発明のカルボキシル基含有重合体が必須に含まれる。このほか、未反応のカルボキシル基含有単量体、未反応の重合開始剤、重金属イオン(重金属化合物)、重合開始剤分解物等が含まれうる。本発明の重合体組成物は、重金属イオン(重金属塩)の効果を再現性良く発現することが可能である為、例えば重合性の低い単量体を共重合した場合においても残存単量体を低減することができる。よって、重合体組成物の経時安定性が向上するという副次的な効果(増粘の抑制等)も奏する。
重合体組成物中に存在する未反応の単量体の含有量は、使用する単量体の種類によっても異なるが、重合体組成物の固形分100質量%に対して1質量%未満が好ましい。より好ましくは0.5%未満であり、0.1%未満である。
なお、本願でいう重合体組成物は、特に制限されるものではないが、生産効率性の観点から、好ましくは、不純物除去などの精製工程を経ずに得られる。さらに、重合工程の後に、得られた重合組成物を、取り扱いの便のため、少量の水にて希釈(得られた混合物に対して1〜400質量%程度)したものも本願でいう重合体組成物に含まれる。
本発明の製造方法により製造した重合体、重合体組成物(それぞれ本発明の重合体、本発明の重合体組成物とも言う)は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
<水処理剤>
本発明の重合体組成物は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
<繊維処理剤>
本発明の重合体組成物は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体組成物を含む。
上記繊維処理剤における本発明の重合体組成物の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
本発明の重合体組成物と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体組成物と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明の重合体組成物は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
上記無機顔料分散剤中における、本発明の重合体組成物の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
<洗剤組成物>
本発明の重合体組成物は、洗剤組成物にも添加しうる。
本発明の重合体組成物は、上述したカルボキシル基含有重合体を含むが、洗剤組成物における当該スルホン酸基含有共重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、カルボキシル基含有重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗剤組成物は、本発明の重合体組成物に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
また、本発明の重合体組成物を洗剤ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは400mg/L以下であり、さらに好ましくは300mg/L以下であり、特に好ましくは200mg/L以下であり、最も好ましくは100mg/L以下である。カオリン濁度の値としては、以下の手法により測定される値を採用するものとする。
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、本発明のカルボキシル基含有重合体の重量平均分子量、数平均分子量、再汚染防止能、未反応の単量体の定量、重合体組成物および重合体水溶液の固形分量は、下記の方法に従って測定した。
<重量平均分子量および数平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:HITACHI UV Detector L−2400
カラム:東ソー製 TSK−GEL G3000PWXL
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYETHYLENGLYCOL STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
<重合体組成物、重合体水溶液の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、170℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
<重合体組成物中のカルボキシル基含有単量体等の測定>
該単量体の測定は、下記表1の条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX RSpak DE−413
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min
<再汚染防止率の測定方法>
(1) Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(2) 塩化カルシウム2水和物4.41gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した。
(3) 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0g、炭酸ナトリウム6.0g、硫酸ナトリウム2.0gに純水を加えて100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。
(4) ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で2%の重合体水溶液1g、ゼオライト0.15g、カーボンブラック0.25gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌した。その後、白布10枚を入れ100rpmで10分間攪拌した。
(5) 手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。これを2回行った。
(6) 白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度白布の白度を反射率にて測定した。
(7) 以上の測定結果から下式により再汚染防止率を求めた。
Figure 0005312183

<重金属塩水溶液の調整1>
モール塩0.25質量部、カルボキシル基含有化合物として、無水マレイン酸0.05質量部、イオン交換水4500質量部を混合し、重金属塩水溶液(1)を製造した。
<重金属塩水溶液の調整2>
モール塩0.05質量部、カルボキシル基含有化合物として、無水マレイン酸0.01質量部、イオン交換水515質量部を混合し、重金属塩水溶液(2)を製造した。
<比較重金属塩水溶液の調整1>
モール塩0.25質量部、イオン交換水4500質量部を混合し、比較重金属塩水溶液(1)を製造した。
<比較重金属塩水溶液の調整2>
モール塩0.05質量部、イオン交換水515質量部を混合し、比較重金属塩水溶液(2)を製造した。
<実施例1>
重合釜(SUS製、容積5m)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路およびコンデンサ、ジャケット、供給経路(重合用組成物用および中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路および除熱装置)を有する反応装置(図1を参照)を用い、以下に示す重合処方・条件で、バッチ式による製造を繰り返した。重金属塩水溶液は、重金属塩水溶液(1)を使用した。そのうちの1回について以下に記載する。なお、以下の製造工程の開始時においては、前バッチから残存したポリアクリル酸ナトリウム水溶液が反応装置中に存在していた。当該重合体の量は、以下の工程で最終的に得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液(固形分換算)100質量%に対して約1質量%であった。また、当該残存重合体の中和度は95%であった。
上記前バッチの残存重合体が存在する重合釜に、各供給経路を通じて先端ノズルより、重金属塩水溶液(1)全量を流下して仕込んだ。なお、仕込み溶液中の鉄イオン濃度は、最終の重合体水溶液に対して1質量ppmであった。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常温下、外部ジャケットにより水溶液の温度を85℃まで昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)12729質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する)588質量部、35質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する)2102質量部、および15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)1690質量部をそれぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより、80%AAおよび48%NaOHは180分間に亘って、35%SBSは80%AAと同時に滴下を開始して175分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分前まで)、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して185分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分後まで)滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行なった。全ての滴下終了後、さらに30分間、反応系を85℃に維持して熟成を行い、重合を完成させた。この間、コンデンサでは冷却水を用いて留出物の凝縮液化を行なった。重合後の反応液中のポリアクリル酸ナトリウムの中和度は5%であった。
その後、反応液を50℃まで冷却し、48質量%水酸化ナトリウム水溶液10606質量部をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に60分間かけて徐々に滴下して、重合体を中和した。なお、重合体を中和する間、常に反応液を外部循環させながら、除熱装置によって当該反応液を冷却した。
以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液(1)を得た。得られた水溶液(1)中のポリアクリル酸ナトリウム水溶液の中和度は95%であった。得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液(1)中のポリアクリル酸ナトリウムの重合平均分子量(Mw)は表2に示した通りであった。上述した重合処方を表1に示す。
再汚染防止能を上述の方法で評価したところ3、5、10バッチ目でそれぞれ92%、91%、93%であった。
<実施例2>
重合釜(SUS製、容積5m)と、当該重合釜に備えられた温度計、攪拌器(パドル翼)、外部留出物循環経路およびコンデンサ、ジャケット、供給経路(重合用組成物用および中和剤用)、並びに、外部循環冷却装置(外部反応液循環経路および除熱装置)を有する反応装置(図1を参照)を用い、以下に示す重合処方・条件で、バッチ式による製造を繰り返した。重金属塩水溶液は、重金属塩水溶液(2)を使用した。そのうちの1回について以下に記載する。なお、以下の製造工程の開始時においては、前バッチから残存したポリアクリル酸ナトリウム水溶液が反応装置中に存在していた。当該重合体の量は、以下の工程で最終的に得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液(固形分換算)100質量%に対して約1質量%であった。また、当該残存重合体の中和度は98%であった。
上記前バッチの残存重合体が存在する重合釜に、各供給経路を通じて先端ノズルより、重金属塩水溶液(2)を流下して仕込んだ。なお、仕込み溶液中の鉄イオン濃度は、最終の重合体水溶液に対して3質量ppmであった。さらに45%次亜リン酸ナトリウム(以下、「45%SHP」とも称する)を156部仕込んだ。その後、重合釜内の水溶液を撹拌しながら、常温下、外部ジャケットにより水溶液の温度を80℃まで昇温させた。
次に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する)9000質量部、45%SHPを667質量部、および15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する)667質量部をそれぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより、80%AAおよび45%SHPは80%AAと同時に滴下を開始して150分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分前まで)、15%NaPSは80%AAと同時に滴下を開始して155分間に亘って(すなわち、80%AAの滴下終了5分後まで)滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行なった。全ての滴下終了後、さらに30分間、反応系を80℃に維持して熟成を行い、重合を完成させた。
その後、反応液を50℃まで冷却し、48質量%水酸化ナトリウム水溶液8160質量部をその供給経路を通じて先端ノズルより重合釜内に60分間かけて徐々に滴下して、重合体を中和した。なお、重合体を中和する間、常に反応液を外部循環させながら、除熱装置によって当該反応液を冷却した。
以上のようにして、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液(2)を得た。得られた水溶液(2)中のポリアクリル酸ナトリウム水溶液の中和度は98%であった。得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液(2)中の未反応アクリル酸及びポリアクリル酸ナトリウムの重合平均分子量(Mw)は表2に記載した。
再汚染防止能を上述の方法で評価したところ3、5、10バッチ目でそれぞれ90%、92%、91%であった。
<比較例1>
実施例1において、重金属塩水溶液(1)に変えて比較重金属水溶液(1)を使用する他は実施例1と同様にして、バッチ式による製造を繰り返した。再汚染防止能を上述の方法で評価したところ3、5、10バッチ目でそれぞれ84%、88%、92%であった。
<比較例2>
実施例2において、重金属塩水溶液(2)に変えて比較重金属水溶液(2)を使用する他は実施例1と同様にして、バッチ式による製造を繰り返した。再汚染防止能を上述の方法で評価したところ3、5、10バッチ目でそれぞれ86%、82%、89%であった。
Figure 0005312183
Figure 0005312183

表2に示す結果から、本発明の重合体の製造方法は従来の製造方法と比較して、ばらつき少なく、高性能の重合体を製造することができることが確認された。
従って、本発明の重合体を各種製品に配合した場合、製品ロット間の性能のばらつきが抑制されることが期待される。

Claims (2)

  1. 鉄イオンの存在下でカルボキシル基含有単量体を重合するカルボキシル基含有重合体の製造方法において、
    鉄イオンの塩を重合系内に供給する際に、鉄イオンの塩とカルボキシル基含有化合物を含む水溶液として供給することを特徴とし、
    該カルボキシル基含有化合物が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸およびこれらの無水物から選択される少なくとも一つである、
    カルボキシル基含有重合体の製造方法。
  2. 上記鉄イオンの塩とカルボキシル基含有化合物を含む水溶液を、予めpH8以下に調整する、請求項1に記載のカルボキシル基含有重合体の製造方法。
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