JP3863795B2 - 重合体の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系の分散剤、スケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどの用途として好適に用いられる分散能やキレート能に加えて、耐ゲル性に優れた低分子量の重合体、とりわけ水溶性重合体を工業的に大量生産するのに適した製造方法およびその製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリアクリル酸やポリマレイン酸などの水溶性重合体のうち、低分子量のものは、無機顔料や金属イオンなどの分散剤やスケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどに好適に用いられている。このような低分子量の水溶性重合体を得る方法としては、たとえば、特開平11−315115号公報や特開2000−80396号公報等に開示されている方法など多くの方法が知られている。
【0003】
上記公報に代表される従来公知の製法方法では、1種または2種以上の水溶性の単量体成分、さらには開始剤や連鎖移動剤などの添加剤成分を、反応系(反応槽)内に予め仕込み(単に、初期仕込みといもいう)重合温度まで加熱しておいた溶媒に個別に所定時間かけて連続して滴下し、その後、さらに一定の時間(熟成時間)をかけて重合を完結するというものである。
【0004】
しかしながら、上記公報に代表される従来公知の製法方法は、いずれも実験室レべルのものであり、製造条件や用いる原料の種類や使用量、あるいは重合条件(重合温度や時間)など変えて、それぞれ少量で1バッチだけ行った実験例にとどまるであり、上記公報に代表される従来公知の製法方法を用いて工業的に大量生産を行った実施例はなく、大量生産を行う上で新たに生じる問題点については、何らの見出されていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記公報に代表される従来公知の製法方法を用いて、工業的に大量生産を行うことを試みたところ、同じ原料(種類や使用量)を用いて同じ重合条件で生産を続けているにもかかわらず、生産を重ねることで、得られる水溶性重合体中に重合物および/またはゲル化物のような不純物がみられるようになり、生産ロットで不純物量にバラツキがあるものの無視できないため、原料の種類や使用量、さらには製造条件を変えてみたが、解消することができなかった。そのため、こうした不純物を含んだままでは、水系の分散剤、スケール防止剤、あるいは洗剤ビルダーなどに用いた場合、分散能、キレート能、耐ゲル性などの性能低下を招くおそれがあるため、こうした不純物を得られた水溶性重合体から取り除く必要があるが決して容易ではなく、品質、性能およびコストアップにもつながることがわかった。このように上記公報に代表される従来公知の製法方法には、実験室レベルでは問題なく良好な結果が得られているにもかかわらず、工業的に大量生産に移行する上で、解決しなければならない重要な技術的課題(問題点)を有することを新たに見出したものである。なお、上記重合物および/またはゲル物とは、製造目的の水溶性重合体とは異なる分子量のものをいい、水溶性重合体の性能や品質に低下の要因となり得るものである。
【0006】
そこで、本発明者らは、単量体を水溶液中で重合してなる重合体の製造方法であって、分散能やキレート能に加えて、耐ゲル性にも優れた低分子量の水溶性重合体を工業的に大量生産する上での新たな課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、単量体成分を供給するフィードラインにおいて、単量体成分を供給後に僅かに残留する単量体成分が、その後の重合期間中に、反応槽内の高温雰囲気ガスや反応槽壁材からの伝熱効果により加熱されることで、重合物および/またはゲル化物を形成してしまい、フィードライン内部に付着する。そのため生産を重ねることで、こうした重合物および/またはゲル化物が、次に単量体成分を供給する際に、その一部が単量体成分に混入し、反応系内に持ち込まれることがあることを見出し得たものである。特に、反応槽内部に位置するフィードライン先端の滴下ノズル部分では反応槽内の高温雰囲気ガスにより温められ、雰囲気ガス温度近くまで昇温しているため、高温に晒されることで、連続して2〜3バッチ行っただけでもフィードラインに重合物および/またはゲル物が生成することがあり、そのままさらに重合を行う場合には、生成した重合物および/またはゲル物の一部が次に単量体成分を供給する際に反応槽内に滴下され、不純物として残留する場合があるため、得られる水溶性重合体の純度が低下し、製品の性能・品質の低下につながるおそれがあるものであった。さらに、生産を重ねることで、フィードライン内部での重合物および/またはゲル化物の生成、付着量が増加し、フィードラインが閉塞するおそれがあることも見出し得たものである。そのため、各生産ロット(1バッチ生産)ごとにかかるフィードラインおよび反応槽内部を洗浄する必要があり、極めて生産性が良くないものであった。このように工業的に大量生産によって、分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた低分子量の水溶性重合体を、上記重合物および/またはゲル物のような不純物の混入を抑え、高純度で高品質のものを効率よく製造する技術(方法およびその装置)はなお充分に確立されていないものであった。
【0007】
そこで、本発明者らは、上記問題点に鑑み、分散能、キレート能、耐ゲル性に優れた高性能の低分子量の水溶性重合体を工業的に大量生産すべく、生産を重ねても、個々の単量体成分のフィードラインに重合物および/またはゲル物の発生がなく、また、得られる重合体中に重合物および/またはゲル物の混入もなく高純度で高品質の重合体、とりわけ水溶性重合体を製造する方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、低分子量の重合体、特に水溶性重合体の製造方法につき鋭意検討した結果、単量体成分の滴下終了後に、フィードライン内部に残る単量体成分が、その後の熟成時間中の反応槽からの熱放射ないし熱伝達により加熱されて重合物ないしゲル物を生成することを見出し、重合滴下後にフィードライン内部に単量体成分などが残存しないようにすることで、こうした重合物および/またはゲル物の形成を阻止し、高品質で低分子量の水溶性重合体を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、下記(1)〜(10)の重合体の製造方法およびその装置により達成されるものである。
【0010】
(1) カルボキシル基を有する単量体を50mol%以上を用いてなる単量体成分、さらには重合開始剤を含む添加剤成分を、反応槽内に予め仕込み重合温度まで加熱しておいた溶媒にそれぞれ滴下し、その後、さらに時間をかけて重合を完結してなる重合体の製造方法において、
反応槽内に前記単量体成分を供給した後に、該単量体成分のフィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入して該フィードラインを洗浄することを特徴とするものであって、
前記フィードラインが、内面の凹凸を抑える表面処理、および/または撥水ないし撥液処理による内面処理されていることを特徴とする重合体の製造方法。
【0011】
(2) 前記カルボキシル基を有する単量体が、不飽和モノカルボン酸系単量体を含有し、
該不飽和モノカルボン酸系単量体の90質量%以上を連続的に滴下することにより反応系に添加することを特徴とする上記(1)に記載の重合体の製造方法。
【0012】
(3) 重合終了時の濃度が、35〜65重量%であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の重合体の製造方法。
【0013】
(4) 前記内面処理が、研磨処理、撥水ないし撥液処理の内のいずれかであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の重合体の製造方法。
(5) 洗浄液とパージガスを組み合わせて導入することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の重合体の製造方法。
(6) 洗浄液とパージガスを同時に導入するか交互に導入することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の重合体の製造方法。
(7) 反応槽と、
前記反応槽に連結されてなる、前記反応槽内にカルボキシル基を有する単量体を50mol%以上を用いてなる単量体成分を供給するフィードラインと、
前記フィードラインの経路上に連結されてなる前記フィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入するためのラインと、が備えられてなることを特徴とする重合体の製造装置であって、
前記フィードラインが、内面の凹凸を抑える表面処理、および/または撥水ないし撥液処理による内面処理されていることを特徴とする重合体の製造装置。
(8) 前記内面処理が、研磨処理、撥水ないし撥液処理の内のいずれかであることを特徴とする上記(7)に記載の重合体の製造装置。
(9) 前記フィードラインに洗浄液とパージガスを組み合わせて導入するためのラインが形成されてなることを特徴とする上記(7)または(8)に記載の重合体の製造装置。
(10) 前記フィードラインに洗浄液とパージガスを同時に導入するか交互に導入するためのラインが形成されてなることを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の重合体の製造装置。
【0014】
【発明の実施の形態】
[本発明の重合体の製造方法]
本発明に係る重合体の製造方法は、反応槽内に単量体成分を供給した後に、該単量体成分のフィードラインに洗浄液/パージガスを導入して該フィードラインを洗浄することを特徴とするものである。好ましくは、さらに反応槽内に添加剤成分を供給した後に、該添加剤成分のフィードラインにも洗浄液/パージガスを導入して該フィードラインを洗浄するものである。
【0015】
これにより、単量体成分、さらには開始剤その他の添加剤成分を滴下終了後に、所定時間熟成して重合を完結する間に、個々のフィードライン内部に残留する成分が、反応槽からの熱放射や伝熱により重合温度付近まで加熱されることで、重合物やゲル物を形成したり、濃縮固化されるのを有効かつ効果的に防止することができるものである。
【0016】
本発明の製造方法を用いて得られる重合体の種類は、限定されないが、重合体の種類が水溶性重合体である場合が、本発明の効果が最も顕著であるので、好ましい。特に好ましくは、多くのカルボキシル基を有するアクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、またはこれらの共重合体、あるいはこれらにスルホン酸基や水酸基等が導入された重合体が好適である。
【0017】
以下では、水溶性重合体の製造を例に挙げて、本発明に係る重合体の製造方法を製造工程に沿って説明する。
【0018】
まず、本発明に係る重合体の製造方法では、重合の際に用いる重合用組成物として、単量体成分のほか、溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤、多価金属イオン等が必要に応じて、適宜用いられるものである。以下、各成分ごとに説明する。
【0019】
<単量体成分>
本発明の製造方法に用いることのできる単量体成分としては、特に制限されるべきものではなく、重合体の種類に応じて適宜決定されるべきものである。上記水溶性重合体の製造に用いられる単量体成分の例としては、以下の▲1▼〜▲4▼に示すものが挙げられる。
【0020】
▲1▼ カルボキシル基を含有する単量体
カルボキシル基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸等のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸系単量体、これらの塩および無水物が挙げられる。
【0021】
ここで、塩とは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩等が挙げられ、これらは単独で使用されるか、併用される。以下では、これらを単に塩とのみ表記することがある。
【0022】
▲2▼ スルホン酸基を含有する単量体
スルホン酸基を含有する単量体としては、例えば、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸等のモノエチレン性不飽和スルホン酸系単量体およびこれらの塩が挙げられる。
【0023】
▲3▼ 水酸基を含有する単量体
水酸基を含有する単量体としては、例えば、3−メチル−2−ブテン−1−オール(以下、プレノールともいう)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(以下、イソプレノールともいう)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(以下、イソプレンアルコールともいう)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ビニルアルコール等のモノエチレン性不飽和水酸基含有系単量体が挙げられる。
【0024】
▲4▼ その他の単量体
その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸等の含リン単量体が挙げられる。
【0025】
これら単量体▲1▼〜▲4▼は、単独で用いられるか、併用される。共重合体を得る場合は、必要に応じ、得られる重合体の水溶性を損なわない範囲で、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等の疎水性単量体を併用してもよい。
【0026】
水溶性重合体を、その特徴を活かして、無機顔料分散剤、スケール防止剤、キレート剤、洗剤組成物、繊維処理剤、木材パルプ漂白助剤等の用途に用いる場合、それぞれの使用目的に応じて、その他の重合体原料を配合する。
【0027】
以下に好ましい単量体配合を示す。いずれも、単量体成分全量を100mol%とする。
【0028】
(a)単量体▲1▼を好ましくは50mol%以上、より好ましくは80mol%以上、最も好ましくは100mol%用いる。単量体▲1▼の中では、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)およびこれらの無水物が特に好ましい。アクリル酸(塩)/マレイン酸(塩)共重合体の場合、両単量体のモル比は40〜60/60〜40が好ましい。なお、当該(a)の配合例では、上記単量体▲1▼以外の成分およびその配合比率については、特に制限されるものではなく、例えば、上記単量体▲2▼〜▲4▼を適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよいし、さらに他の成分(例えば、疎水性の単量体成分)などを加えて適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(b)単量体▲1▼を50mol%以上、単量体▲2▼を30mol%以下で含む配合である。単量体▲1▼、▲2▼の合計で80mol%以上が好ましく、100mol%がより好ましい。この場合、単量体▲1▼の中では、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)または無水物が、単量体▲2▼の中では3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、スルホエチル(メタ)アクリレート(塩)が特に好ましい。なお、当該(b)の配合例でも、上記単量体▲1▼、▲2▼以外の成分およびその配合比率については、特に制限されるものではなく、例えば、上記単量体▲3▼〜▲4▼を適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよいし、さらに他の成分(例えば、疎水性の単量体成分)などを加えて適当な配合比率にて適宜組み合わせて用いてもよい。
【0030】
なお、上記単量体成分の供給形態としては、制限されるものではなく、後述する溶媒、好ましくは水に溶解して単量体溶液、好ましくは水溶液の形態で供給するのが望ましいが、単量体成分のみ、すなわち、無溶媒の形態で添加してもよい。
【0031】
単量体溶液として用いる場合の濃度としては、各単量体成分により異なるため、使用用途に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるものではない。よって単量体▲1▼溶液の濃度としては、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。また、単量体▲2▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。さらに、単量体▲3▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。さらに、単量体▲4▼溶液の濃度としても、製品の濃度が低下してしまい、輸送および保管が繁雑とならないように、適当な濃度を適宜決定すればよい、特に制限されるものではない。また、これらを併用する場合であって、予め混合して添加する場合の単量体混合物の濃度は、上記各単量体の濃度に基づいて適宜決定すればよい。
【0032】
本発明の単量体成分の添加方法としては、反応槽内に単量体成分のフィードラインを通じて供給、好ましくは連続的に滴下する方法が好ましい。反応槽内への供給方式としては、滴下方式以外にも、流下、噴霧、吹出など如何なる方式であってもよい。また、単量体成分が2種以上の場合には、別々のフィードラインを通じてそれぞれの単量体成分を供給するのが好ましいが、別々のフィードラインを途中で合流させ、各単量体成分を混合して反応槽内に供給するようにしてもよし、供給元の貯蔵タンク内で予め各単量体成分を混合して1つのフィードラインを通じて供給するようにしてもよい。また、反応槽内に実質的に連続的に滴下する量は、使用目的に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるべきものではないが、100質量%とすることが最も好ましい。なお、全単量体成分使用量を連続的に滴下しない場合とは、残る単量体成分を何度かに分けて断続的に滴下する場合、あるいは残る単量体成分を重合初期に反応槽内に仕込んでおく場合などが挙げられる。
【0033】
<溶媒>
溶媒としては、有機溶媒でもよいが、水などの水性の溶媒であることが好ましく、特に新鮮水が好ましい。水を用いる場合でも、単量体の溶媒ヘの溶解を良くするために、重合に悪影響を及ぼさない範囲で水に有機溶媒を適宜加えることがある。
【0034】
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;等が挙げられ、これらは単独で用いられるか、併用される。
【0035】
上記溶媒の使用量としては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものであり、特に制限されるべきものではない。
【0036】
本発明の溶媒の添加方法としては、該溶媒の多くまたは全量を重合初期に反応槽内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部については、単独で重合中に反応槽内に溶媒用フィードラインを通じて適当に供給、好ましくは連続的に滴下するようにしてもよいし、あるいは単量体成分や開始剤成分やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応槽内に適当に添加するようにしてもよい。さらに、本発明の製造方法では、かかる溶媒の一部を洗浄液として、反応槽内に単量体成分を供給した後に、該単量体成分のフィードラインに残存する単量体成分を洗浄するのに用いてもよい。
【0037】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、限定されないが、ラジカル重合開始剤が好ましい。過酸化水素、過硫酸塩またはこれらの併用が特に好ましい。場合により、連鎖移動剤、開始剤の分解促進剤として多価金属イオンが用いられる。
【0038】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、及び過酸化水素が挙げられる。これらの中では、末端や側鎖にスルホン酸基を定量的に導入し、分散能やキレート能に加えて耐ゲル性にも優れた低分子量の水溶性重合体が得られる点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩や過酸化水素が好ましい。これらは、単独で用いられるか、併用される。
【0039】
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単量体1molあたり0.1g〜10gが好ましく、1〜8gがより好ましい。重合開始剤の使用量が単量体1molあたり0.1gより少ない場合には単量体の残存量が大幅に増大する傾向があり、10gを越えると、もはや開始剤の添加効果はあまり向上せず、却って経済的に不利である。開始剤量が多い分、得られる重合体の純分量が低下するとも言える。
【0040】
重合開始剤の添加形態としては、制限されるものではなく、上記溶媒に溶解して重合開始剤溶液の形態で添加するのが望ましいが、重合開始剤のみ、すなわち、無溶媒の形態で添加してもよい。
【0041】
重合開始剤溶液として用いる場合の濃度としては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものであり、特に制限されるべきものではない。
【0042】
重合開始剤の添加方法としては、特に限定はされないが、反応槽内に重合開始剤用のフィードラインを通じて供給、好ましくは連続的に滴下する方法が好ましい。また、重合開始剤成分が2種以上の場合には、別々のフィードラインを通じてそれぞれの重合開始剤成分を供給するのが好ましいが、別々のフィードラインを途中で合流させ、各重合開始剤成分を混合して反応槽内に供給するようにしてもよし、供給元の貯蔵タンク内で予め各重合開始剤成分を混合して1つのフィードラインを通じて供給するようにしてもよい。また、重合開始剤の分解性等に鑑みて、実質的に連続的に滴下する量を全使用量の50質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましく、100質量%とすることが最も好ましい。なお、連続的に滴下する量が全使用量の50質量%未満であっても、本発明の範囲を外れるものではない。また、全使用量の100質量%を連続的に滴下しない場合とは、残るラジカル重合開始剤を何度かに分けて断続的に滴下するようにしてもよいし、残るラジカル重合開始剤を重合初期に反応槽内に仕込んでおいてもよい。
【0043】
重合開始剤の供給時間は、過酸化水素等の比較的分解が遅い開始剤の場合、後述する重合温度、重合pHにおいて、単量体成分の供給終了時間よりも10分以上早く終了することが好ましく、20分以上早く終了することがより好ましい。単量体成分の供給終了時前10分未満で終了しても、反応そのものに悪影響はないが、添加した重合開始剤が重合終了時点で残る無駄があり、残存する開始剤が得られる重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす恐れもある。
【0044】
なお、ここでいう単量体成分の供給終了時間は、単量体成分を2種以上用いる場合には、全ての単量体成分を供給し終えた時点をいうものとし、また、連続的に滴下する場合であっても、断続的に何回かに分けて供給する場合であっても、最後の単量体成分を供給し終えた時点とすればよい。また、重合開始剤、連鎖移動剤その他の添加剤成分の供給終了時間についても、単量体成分の供給終了時間同様に定義できる。また、重合終了時点とは、重合の際に用いられる重合用組成物を全て反応槽内に供給し終えた時点、あるいは、熟成時間を設定する場合はその終了時点をいう。熟成時間とは、重合用組成物を全て反応槽内に供給し終えた時点から、その後所定時間にわたって重合温度を保持し重合を完了するまでの時間をいう。
【0045】
他方、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤の場合は、単量体成分の供給終了時間まで供給することが好ましく、単量体成分の供給終了よりも5分以上遅く終了することがより好ましい。得られる水溶性重合体中の単量体残量を減じることが出来るからである。単重体成分の供給終了前にこれら開始剤の供給を終了しても、重合反応に悪影響はないが、単量体残存の問題がある。
【0046】
開始剤の供給の開始は適宜で良い。例えば、単量体成分の供給開始前でも良い。開始剤併用系の場合は、―つの開始剤の滴下を開始したのち、一定時間経過してから、あるいは一つの開始剤の滴下を終了してから、別の開始剤の供給を開始するようにしても良い。要するに、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良いのである。
【0047】
<連鎖移動剤>
本発明の製造方法では、重合反応に悪影響を及ぼさない範囲内で、連鎖移動剤をラジカル重合開始剤と併用しても良い。連鎖移動剤としては、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、次亜リン酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、重合開始剤である過硫酸塩に加えて、重亜硫酸塩を連鎖移動剤として併用することで、得られる重合体が必要以上に高分子量化することが抑制され、低分子量の重合体を効率よく製造することができる点で有利である。これらは単独で用いられるか、併用される。
【0048】
連鎮移動剤の使用量としては、質量比で重合開始剤量の2倍以内であることが好ましい。2倍を越えて使用しても、もはや添加効果は現れず、却って共重合体の純分の低下を招き、好ましくない。
【0049】
連鎮移動剤の添加形態としては、制限されるものではなく、上記溶媒に溶解して連鎮移動剤溶液の形態で添加するのが望ましいが、連鎮移動剤のみ、すなわち、無溶媒の形態で添加してもよい。
【0050】
連鎮移動剤溶液として用いる場合の濃度としては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものであり、特に制限されるべきものではない。
【0051】
連鎖移動剤の添加方法としては、反応槽内に連鎖移動剤のフィードラインを通じて供給、好ましくは連続的に滴下する方法が好ましい。すなわち、単量体成分や重合開始剤とは異なるフィードラインを通じて反応槽内に供給される。
【0052】
連鎖移動剤の供給時間は、限定されず、場合に応じて適宜に設定すれば良い。
【0053】
<多価金属イオン>
ラジカル重合開始剤の分解促進等の必要に応じて、多価金属イオンをラジカル重合開始剤と併用しても良い。有効な多価金属イオンとしては、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Cu+、V2+、V3+、VO2+等が挙げられる。これらは単独で使用されるか、併用される。
【0054】
多価金属イオンの添加方法は、特に限定されないが、全量初期仕込することが好ましい。
【0055】
使用量は、反応液全量に対し100ppm以下であることが好ましい。100ppmを越えて使用すると、得られた水溶性重合体の着色が大きく、用途によっては使用できないことがある。
【0056】
多価金属イオンの供給形態については、特に制限はなく、重合反応系内でイオン化するものであれば、どのような金属化合物、金属であってもよい。このような金属化合物、金属としては、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH42SO4・VSO4・6H2O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4)V(SO42・12H2O]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩、五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の金属酸化物、硫化銅(II)、硫化鉄等の金属硫化物、その他、粉末、鉄粉末を挙げることができる。
【0057】
なお、本発明の製造方法では、使用する重合反応槽や撹拌装置などにステンレス製のものを用いた場合には、上記金属化合物、金属を添加しなくても、こうした材料から反応液への溶出により、上記に規定する極微量の多価金属イオン、例えば、Fe2+などが存在することになり、ラジカル重合開始剤の分解促進効果が得られ、得られる重合体の色調(無色透明性)が良好となる。
【0058】
<重合方法>
重合方法としては、例えば、装置的には、ニーダー重合、攪拌重合等が挙げられ、方法的には、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明において、攪拌溶液重合が好ましい。また、溶液重合には、その溶媒の種類の観点から、溶剤系重合、水系重合があるが、安全性の点からは水系重合が好ましい。従って、本発明において、最も好ましい重合方法は攪拌溶液水系重合である。
【0059】
攪拌溶液水系重合について、以下詳細に説明する。
【0060】
不飽和ジカルボン酸系単量体の場合、全単量体使用量の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは全量を初期仕込みする。初期仕込量が50質量%未満であると未反応物が多くなり好ましくない。
【0061】
不飽和モノカルボン酸系単量体の場合、全単量体使用量の70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは全量、を実質的に連続的に滴下することにより反応系に添加するのが望ましい。滴下の割合が70質量%未満(すなわち、初期仕込量が30質量%以上)であると、非常に高分子量化しやすい。また、共重合体系の場合は、重合初期にブロック的に重合し、好ましくない。
【0062】
単量体成分の供給時間は、単量体成分の重合性を考慮して適宜設定すれば良いが、好ましくは30〜240分間、より好ましくは60〜180分間である。供給時間が30分間より短いと、単位時間内における単量体成分の添加量が多くなり、高濃度化が起きて、非常に高分子量の重合体を生成する。また、共重合の場合は、単量体がブロック的に重合してしまう恐れがある。240分を越えると、生産性が著しく落ちて、経済上好ましくない。なお、かかる単量体成分の供給時間は、重合の際に用いる全ての単量体成分のうち、最初に添加し始めた単量体成分の添加開始時点から、最後に添加し始める単量体成分の添加終了時点までに要した時間をいう。さらに、供給開始時点は、最初に添加し始める単量体成分が、連続的に添加される場合には、該単量体成分を添加し始める時点をいい、最初に添加し始める単量体成分を何度かに分けて断続的に添加する場合には、初回分を添加し始める時点をいう。添加終了時点は、最後に添加し終える単量体成分が連続的に添加される場合には、添加を終える時点とし、また何度かに分けて断続的に添加される場合には、最終回分を添加し終えた時点とする。なお、不飽和ジカルボン酸系単量体のようの全量初期仕込みするものだけの場合には、該単量体の供給時間は0分間ということになる。本発明ではかかる実施形態を排除するものではない。
【0063】
<重合時のpH>
重合時のpHについては、限定されないが、不飽和ジカルボン酸系単量体を用いる場合については以下の通りとするのが好ましい。
【0064】
不飽和ジカルボン酸系単量体を用いる場合は、前述の通り、その全使用量に対して50質量%以上を初期仕込みするが、初期仕込終了時(供給開始直前あるいは重合開始直前)のpHは5〜13であり、好ましくは5〜12である。その後、他の添加物(他の単量体、開始剤、pH調整剤等)の供給開始により、重合が開始され、重合が進行するに連れ、徐々にpHが低下していくように設定されるのが好ましく、供給終了時点でpH4〜8に調整されるのが好ましい。これは以下の理由による。
【0065】
―般に、不飽和ジカルボン酸系単量体は、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体に比べ、重合性が著しく低いため、初期仕込の段階で多く添加するのであるが、そのため、重合初期では不飽和ジカルボン酸系単量体の濃度が非常に高く、ブロック的に重合してしまう恐れがある。そこで、このジカルボン酸系単量体の重合性を制御する必要がある。ジカルボン酸系単量体は、カルボキシル基の双方ともが酸型、―方が酸型(すなわち半中和型)、双方ともが中和型と、3種類存在する。この中で、半中和型が反応性に最も富むことが知られている。そこで、この半中和型の存在量を制御することにより、ジカルボン酸系単量体の重合性を制御することが出来るのである。すなわち、重合初期段階ではある程度存在量を制限して重合性をある程度制御し、重合が進行しジカルボン酸系単量体の濃度が低減していくと、重合性も落ちてくるので、半中和型存在量を増大させていく必要がある。これらのことに鑑み、上記pHの設定を行う。
【0066】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらは単独で用いられるか、併用される。これらの中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。本明細書では、これらのものを単に「pH調整剤」あるいは「中和剤」と言う場合がある。
【0067】
<重合温度>
重合温度は、25℃から反応液の沸点の範囲であればよいが、重合開始時点から重合終了時点までは、重合開始から終了までの全反応時間の少なくとも10%以上の時間、好ましくは50%以上の時間、さらに好ましくは80%以上の時間、最も好ましくは反応時間中常時、反応液の沸点とするのが好ましい。沸点でない時間においては、反応液の沸点近傍の温度とすることが好ましく、少なくとも80℃以上とすることが好ましい。80℃未満とすると、重合開始剤の使用効率が悪くなり、得られる水溶性重合体の単量体残存量が増大して、好ましくない。沸点で行うことは、温度制御が非常に容易となり、そのため、得られる重合体の品質が非常に安定したものとなり、好ましい。なお、重合温度の下限を25℃としたのは、常温(25℃)から重合を開始してもよいためである。
【0068】
ここで、重合終了時点は、上記に規定したように、重合に用いる全ての成分の供給が終了した時、あるいは、熟成時間を設定する場合はその終了時をいう。
【0069】
初期仕込時および重合終了後のpH調整や濃度調整を行う際には、その温度は、特に限定されず適宜設定すれば良い。
【0070】
<重合濃度>
重合濃度は、限定されず、必要に応じて適宜設定するが、好ましくは初期仕込時で35〜75質量%、より好ましくは40〜70質量%である。35質量%未満では、不飽和ジカルボン酸系単量体の反応性が非常に悪く、75質量%を越えると、単量体の水溶性がなくなって反応液がスラリー状となり、沈澱物が生じ、均一重合となり難い。重合終了時の濃度は35〜65質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。これに見合うように添加物の濃度調整を行う。重合終了時濃度が35質量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなり、反応性が低くなって、得られる重合体中の単量体残存量が多くなり易い。65質量%を越えると、非常に高粘度となり、均一重合とならず、またハンドリング面からも好ましくない。
【0071】
<重合圧力>
重合圧力は、限定されるものではなく、常圧(大気圧)、加圧、減圧のいずれでも良い。好ましくは、重合中、亜硫酸ガスの放出を防ぎ、低分子量化が可能であることから、反応系内を密閉し、加圧下で行うのがよい。また、加圧装置や減圧装置を併設する必要がなく、また耐圧製の反応容器や配管を用いる必要がないなど製造コストの観点からは、常圧(大気圧)下で行うのがよい。すなわち、得られる(メタ)アクリル酸系重合体組成物の使用目的によって、適宜最適な圧力条件を設定すればよいといえる。
【0072】
<重合雰囲気>
また、反応系内の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいが、不活性雰囲気とするのがよく、例えば、重合開始前に反応系内を窒素などの不活性ガスで置換することが望ましい。これにより、開始剤が、雰囲気中の酸素ガス等が溶存して出来た酸素ラジカルとの反応により低減するのを防止することができることから、より低分子量化が可能となる点で有利である。さらに、重合中や重合後に亜硫酸ガスの一部が液相に溶解して不純物を形成するのを防止する観点からは、連続的または定期的(断続的)に、(圧力をコントロールしながら)反応系内の雰囲気中に不活性ガスを導入して反応系内部の亜硫酸ガスを追い出すようにしてもよし、反応系内部の発生ガスを吸引して(一部減圧になってもよい)亜硫酸ガスを抜き出してもよい。
【0073】
≪単量体成分の供給後のフィードラインの洗浄≫
本発明の製造方法においては、反応槽内に単量体成分を供給した後に、該単量体成分のフィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入して該フィードラインを洗浄することを特徴とするものである。
【0074】
具体的には、反応槽内に単量体成分を供給した後に、該フィードラインに洗浄液/パージガスを導入して残留する単量体成分を短時間で速やかに反応槽に押し出すことで、フィードライン内部に単量体成分が残らないようにする。これにより、反応槽内に単量体成分を供給した後に、フィードラインが反応槽からの熱放射や熱伝導により単量体成分の重合/ゲル化温度以上に加熱されても、重合物/ゲル物の発生源である残留単量体成分がフィードライン内部に全く存在しないので重合物/ゲル物を発生する心配がなく、連続して大量生産を行っても、得られる水溶性重合体中に重合物および/またはゲル物のような不純物がみられることはなく、良好な性能および品質を保持することができるものである。
【0075】
なお、フィードラインとは、反応槽内に単量体成分などの重合に用いる成分を供給するための配管(ライン)をいう。例えば、単量体成分のフィードラインという場合には、その一方が供給元の単量体成分貯蔵タンクに連結されており、他方の反応槽内に連通されたノズルまでを結ぶ配管をいうものとする。
【0076】
<洗浄液>
上記洗浄液は、フィードラインに残存する単量体成分と共に反応槽内に押し出されることから重合反応に悪影響を及ぼさないものであれば、特に制限されるべきものではないが、フィードラインに残留する単量体成分、さらには他の反応液成分との相溶性に優れ、また重合後に反応液中から洗浄液を分離する必要がなく生産効率に優れるものが望ましく、反応液成分の1種である溶媒成分と同様の成分を洗浄液として用いるのが望ましい。より好ましくは、溶媒成分の1部として洗浄液を用いることである。こうすることで、重合に必要な溶媒量を加えた後に、洗浄液が別途加わることで反応温度を維持するのに必要な熱量が余分に必要となることがなく経済的でもある。
【0077】
洗浄液としては、例えば、有機溶媒でもよいが、水などの水性の溶媒であることが好ましく、特に新鮮水が好ましい。水を用いる場合でも、残留する単量体成分の洗浄液ヘの溶解を促進するために、重合に悪影響を及ぼさない範囲で水に有機溶媒を適宜加えてもよい。
【0078】
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;等が挙げられ、これらは単独で用いられるか、併用される。
【0079】
<パージガス>
上記パージガスは、フィードラインに残存する単量体成分と共に反応槽内に押し出されることから、反応活性のない安定した不活性ガスであれば、特に制限されるべきものではない。
【0080】
上記パージガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガスなどが挙げられ、これらは単独で用いられるか、併用される。
【0081】
<フィードラインへの洗浄液/パージガスの導入形態>
また、本発明では、フィードラインの洗浄に際して、洗浄液およびパージガスのいずれか一方のみを単独で導入して使用することもできれば、洗浄液とパージガスを組み合わせて導入して使用することもできる。洗浄液とパージガスを組み合わせて導入する場合には、洗浄液とパージガスをフィードラインに交互に導入することもできれば、同時に導入することもできる。洗浄液とパージガスとをフィードラインに交互に導入する場合には、例えば、▲1▼洗浄液→パージガスの順、▲2▼パージガス→洗浄液の順、▲3▼洗浄液→パージガス→洗浄液の順、▲4▼パージガス→洗浄液→パージガスの順など、導入する順序や回数は、制限されるものではない。また、交互に導入する方式と、同時に導入する方式を組み合わせても良い。
【0082】
また、洗浄液/パージガスの導入は、1つのラインからの導入に制限されるべきものではなく、フィードライン上に複数の洗浄液/パージガスの導入ラインを形成してもよい。
【0083】
<フィードライン内部への洗浄液/パージガスの導入温度>
フィードライン内部への洗浄液/パージガスの導入温度は、フィードライン内部に残留する単量体成分を重合させることなく、効率よく反応槽に押し出すことがその目的であることから、残留する単量体成分の粘性や付着力の増大を招くおそれがあったり、また、反応槽に押し出された後に、反応槽上部の反応液の重合温度(沸点ないしその近傍温度)の低下を招くおそれがあったり、残留する単量体成分が該洗浄液/パージガスとの接触によりむしろ重合/ゲル化を引き起こすおそれのないように、適当な導入温度を適宜選択すればよい。
【0084】
<フィードライン内部への洗浄液/パージガスの導入圧力>
フィードライン内部への洗浄液/パージガスの導入圧力は、洗浄液、パージガスの種類、洗浄液/パージガスの導入量、フィードラインの管径などによっても異なるため、残留する単量体成分を確実に洗い流して高い洗浄効果を得ることができる範囲を適宜選択すればよい。
【0085】
<フィードライン内部への洗浄液/パージガスの導入量>
洗浄液/パージガスの導入量は、洗浄液、パージガスの種類、洗浄液/パージガスの導入圧力、フィードラインの管径などによっても異なるため、残留する単量体成分を確実に洗い流して高い洗浄効果を得ることができる範囲を適宜選択すればよく、▲1▼洗浄液の場合、反応槽の容積に占める洗浄液量の割合が大きくなり、反応液量が制限されるおそれがあるため、生産性の低下につながるおそれがあり、また重合温度を保持する上で、より多くの熱量が必要になるなど不経済となることのないように適当な導入量を適宜選択すればよい。▲2▼パージガスの場合、大量のパージガスを消費することになるため、不経済であったり、また回収できなくはないが、気体であるため貯蔵設備が極めて大きくなるので、貯蔵するには液化する必要があるが、そのためには別途、大規模な回収貯蔵設備が必要となることのないように適当な導入量を適宜選択すればよい。
【0086】
<フィードライン内部への洗浄液/パージガスの導入装置>
フィードライン内部への洗浄液/パージガスの導入装置としては、反応槽内に単量体成分を供給するフィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入するためのラインが形成されて装置を用いればよく、かかる導入装置については、本発明の製造装置において、詳しく説明する。
【0087】
<フィードライン内部での洗浄液/パージガスの流速>
フィードライン内部での洗浄液/パージガスの流速は、洗浄液、パージガスの種類、洗浄液/パージガスの導入量や導入圧力、フィードラインの管径などによっても異なるため、残留する単量体成分を確実に洗い流して高い洗浄効果を得ることができる範囲を適宜選択すればよく、▲1▼洗浄液の場合、適当な流速を適宜選択すればよい。▲2▼パージガスの場合、フィードライン内部の残留単量体成分を吹き飛ばして反応槽に押し出すだけの力が十分に得られないおそれがあったり、一フィードライン内部の残留単量体成分を吹き飛ばして反応槽に押し出すだけの力にあるが、大量のパージガスが密閉系の反応槽内に導入されるため、内圧が上昇するため、かかる内圧上昇に耐え得る耐圧構造の反応槽が必要となることのないように適当な流速を適宜選択すればよい。
【0088】
<フィードラインの洗浄の開始時期>
フィードラインの洗浄の開始時期は、単量体成分を供給した後であって、フィードライン内部に残存する単量体成分の重合やゲル化を防止する目的に適うものであればよく、単量体成分を供給した後の反応槽側の温度などによって異なるものである。
【0089】
例えば、(1)不飽和ジカルボン酸系単量体のように、単量体成分を全量初期仕込みすることがあっても、該単量体成分を初期仕込み後に、該フィードラインを洗浄しておかないと、その後の重合過程で、該フィードライン内部に残留する不飽和ジカルボン酸系単量体が重合物および/またはゲル物を生成し、フィードライン内に付着し、生産を重ねるごとに堆積していき、ラインの閉塞を招くことにもなるため、本発明のフィードラインの洗浄の適用は有用である。この際の該単量体成分を初期仕込み後の反応槽側の温度は、常温開始重合法あるいは重合開始時から所定の重合温度にて行う重合法のいずれかによって大きく異なるがいずれの場合にも、初期仕込み直後から洗浄開始までの間に反応槽からの熱により残存する単量体成分が重合物/ゲル物を生じはじめるおそれが生じないように、反応槽に単量体成分を初期仕込み直後からの適当な洗浄の開始時期を適宜決定すればよい。
【0090】
(2)不飽和モノカルボン酸系単量体のように、重合開始時から単量体成分を供給、好ましくは連続的に滴下する場合には、供給し終えた後に行えばよく、熟成時間を設ける場合および熟成時間を設けない場合いずれであっても、熟成期間中に、あるいは重合終了後に反応槽内の反応液を抜き出したりする間に、反応槽からの熱により残存する単量体成分が重合物/ゲル物を生じはじめるおそれが生じないように、反応槽に単量体成分を供給した直後からの適当な洗浄の開始時期を適宜決定すればよい。
【0091】
(3)上記(2)のように単量体成分を連続的に供給する以外にも、何回かに分けて断続的に供給を行う場合には、それぞれの供給終了後ごとに単量体成分のフィードラインの洗浄を行うようにしてもよい。供給間隔や重合温度などによっては、フィードライン内で重合物やゲル物が生成してしまうこともあり得るためである。したがって、供給間隔や重合温度などによっては、この間に反応槽からの熱により残存する単量体成分が重合物/ゲル物を生じはじめるおそれのないように、反応槽内にそれぞれの供給分の単量体成分を供給した直後からの適当な洗浄の開始時期を適宜決定すればよい。
【0092】
<フィードラインの洗浄時間>
また、フィードラインの洗浄時間は、残存する単量体成分の粘性や使用する洗浄液やパージガスの洗浄力により異なるため、残存する単量体成分を重合/ゲル化させること無く確実に反応槽内に押し出すことができる範囲を適宜選択すればよく、必要かつ十分な洗浄液/パージガスを導入できないおそれがあったり、残存する単量体成分の全量を確実に反応槽内に押し出すことが困難な場合があったり、反応槽からの熱により残存する単量体成分が重合物/ゲル物を生じる前に確実に反応槽内に押し出すことができない場合があり、反応槽内に重合物/ゲル物が混入するおそれが生じないように、適当な洗浄時間を適宜決定すればよい。
【0093】
<パージガスの排出>
パージガスを用いる場合には、反応槽内に噴き出されたパージガスによる内圧上昇を防止するために、例えば、コンデンサーで蒸発した反応液を凝縮液化して反応槽に戻すラインから凝縮液化せずに残るパージガスだけを系外に排出ないし回収するのが望ましい。これは、直接反応槽の上部からパージガスを抜き出す場合には。蒸発した反応液の一部が同伴されるおそれがあるためである。
【0094】
<単量体成分以外の重合用組成物の各成分のフィードラインの洗浄>
本発明の製造方法においては、さらに反応槽内に単量体成分以外の他の重合用組成物の成分を供給した後に、該成分のフィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入して該フィードラインを洗浄するのが望ましい。例えば、重合開始剤や連鎖移動剤のフィードラインについても、供給終了後に該フィードラインの供給ノズル部分などが重合温度付近まで加熱されるため、単量体成分のフィードラインと同様に、洗浄液および/またはパージガスで洗浄を行うことが好ましいといえる。
【0095】
具体的には、反応槽内に単量体成分以外の他の重合用組成物の成分を供給した後に、該フィードラインに洗浄液/パージガスを導入して残留する単量体成分以外の他の重合用組成物の成分を短時間で速やかに反応槽に押し出すことで、フィードライン内部にこうした成分が残らないようにする。これにより、反応槽内に単量体成分以外の他の重合用組成物の成分を供給した後に、該フィードラインが反応槽からの熱放射や熱伝導により単量体成分以外の他の重合用組成物の成分の乾固する温度以上に加熱されても、残留する成分がフィードライン内部に全く存在しないので、乾固してフィードラインに付着する心配がなく、連続して大量生産を行っても、前の製造ロットでフィードライン内部に固着していた成分が、次の製造ロットで新たにこうした成分を供給する際に溶出し、供給する成分濃度を高めてしまい、重合初期に高濃度化した反応液を与えることがないため、得られる水溶性重合体の性能および品質を安定させることができるものである。
【0096】
なお、単量体成分以外の他の重合用組成物の成分を供給するフィードラインへのこうした洗浄液/パージガスの導入による洗浄方法に関しては、上記した単量体成分を供給するフィードラインへの洗浄液/パージガスの導入による洗浄方法を同様に適用することができるため、ここでの説明は省略する。
【0097】
また、単量体成分以外の他の重合用組成物の成分であっても、フィードラインの洗浄が有効であるものについては、本発明の洗浄方法を有効かつ効果的に適用できるものである。
【0098】
≪単量体成分の供給後のフィードラインの冷却≫
また、本発明に係る水溶性重合体の製造方法としては、反応槽内に単量体成分を供給した後に、フィードラインを冷却することを特徴とするものである。
【0099】
これにより、該フィードラインに残留する単量体成分が重合またはゲル化する温度以下に保持し、重合物および/またはゲル物の発生を防止することができるものである。
【0100】
<フィードラインの冷却温度>
フィードラインの冷却温度としては、該フィードライン内部に残留する単量体成分が、反応槽からの熱により重合/ゲル化するのを防止できるだけの冷却効果が得られるものであれば良く、通常単量体成分が重合/ゲル化する温度未満であればよく、特に制限されるものではない。
【0101】
<フィードラインの冷却時間>
フィードラインの冷却時間としては、該フィードライン内部に残留する単量体成分が、反応槽からの熱により重合/ゲル化するのを防止する観点から、応槽内に単量体成分を供給した後に、該フィードライン内部の単量体成分が重合/ゲル化する温度にならないように、適宜温度センサなどにより、フィードライン内部の温度を監視しながら、必要に応じて適時冷却を行えばよい。すなわち、重合物/ゲル物の発生防止の観点からは、反応槽内に単量体成分を供給した後に、連続かして冷却を行うのが望ましいが、反面コスト高となることから、必要に応じて適宜冷却を行うのがよいといえる。
【0102】
<フィードラインの冷却箇所>
重合物/ゲル物の発生防止の観点からは、フィードライン全体を冷却する必要はなく、反応槽からの熱を効果的に防止する上で、反応槽側だけを冷却してもよい。これは、フィードラインの材質にもよるが、反応槽近傍部分だけを十分に冷却すれば、反応槽から離れた部分にまで、反応槽からの熱が伝わることも無いためである。
【0103】
<フィードラインの冷却装置>
フィードラインの冷却装置としては、特に制限されるべきものではなく、後述する本発明の製造装置において、説明する。
【0104】
<単量体成分以外の重合用組成物の各成分のフィードラインの冷却>
本発明の製造方法においては、さらに反応槽内に単量体成分以外の他の重合用組成物の成分を供給した後に、該成分のフィードラインを冷却するのが望ましい。例えば、重合開始剤や連鎖移動剤のフィードラインについても、供給終了後に該フィードラインの供給ノズル部分などが重合/ゲル化温度以上に加熱されるため、単量体成分のフィードラインと同様に、重合/ゲル化温度に達しないように十分に冷却を行うことが好ましいといえる。
【0105】
なお、単量体成分以外の他の重合用組成物の成分を供給するフィードラインの冷却方法に関しては、上記した単量体成分を供給するフィードラインの冷却方法を同様に適用することができるため、ここでの説明は省略する。
【0106】
単量体成分以外の他の重合用組成物の成分でも、フィードラインの冷却が有効であるものには、本発明の冷却方法を有効かつ効果的に適用することができる。
【0107】
<重合体の生産方式>
本発明の製造方法において、上記重合反応は、回分式または連続式のいずれによっても行ないうるが、回分式で行うことが好ましい。
【0108】
<重合体の重量平均分子量>
本発明によれば、所望する重量平均分子量の重合体を得ることができるのであるが、本発明の製造方法は、特に、重量平均分子量500〜2000000、好ましくは1000〜1000000の重合体を得るのに適している。本発明の製造方法では、これらの重量平均分子量の範囲を外れる重合体を得ることもできるが、重量平均分子量が500未満であるとキレート能が低下するものとなるおそれがあり、2000000を越えると分散能が低下するものとなるおそれがある。
【0109】
<重合体の分散度>
また、本発明の製造方法により得られる重合体は、分散度が1.5〜5.0であるのが良く、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜4.0である。分散度が上記範囲であれば、洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れる。とりわけ分散度が1.5以上である方が、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造が繁雑とならず、生産性が良好であり、カルシウムイオン捕捉能も上昇するため好ましく、5.0以下であるとカルシウムイオン捕捉能、クレー分散能、スケール防止能などの性能が高くなるため好ましい。
【0110】
<残存単量体量>
得られる水溶性重合体中の残存単量体量は、本発明によれば非常に少なくすることが出来るが、純分換算において5000ppm以下、好ましい実施形態では4000ppm以下とすることができる。
【0111】
<不純物量>
得られる水溶性重合体中の不純物(残存単量体を除く)量は、本発明の製造方法によれば非常に少なくすることが出来る。好ましくは純分換算において10000ppm以下とするのが望ましい。
【0112】
<本発明の製造方法により得られる低分子量の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の好適な用途>
本発明の製造方法により得られる低分子量の水溶性重合体を、その特徴を活かして、無機顔料分散剤、スケール防止剤、キレート剤、洗剤組成物、繊維処理剤、木材パルプ漂白助剤等の用途に用いる場合、それぞれの使用目的に応じて、その他の原料を配合すればよい。
【0113】
(洗剤組成物)
本発明の洗剤組成物においては、本発明の重合体の配合量が洗剤組成物全体の1〜20質量%であり、界面活性剤の配合量が洗剤組成物全体の5〜70質量%であると好ましく、場合により酵素を5質量%以下の範囲で添加しても良い。
【0114】
本発明の重合体の配合量が1質量%未満であると添加効果が現れず、また20質量%を超えるともはや添加した効果が洗浄力の向上につながらず経済的にも不利となり好ましくない。また、洗剤組成物の主剤である界面活性剤の量が上記の範囲を外れると、他の成分とのバランスが崩れ洗剤組成物の洗浄力に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。酵素を配合した場合、洗浄力の向上に寄与するが、5質量%を超えると、もはや添加した効果が現れず経済的にも不利となり好ましくない。
【0115】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用することができる。アニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。
【0116】
ノニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。
【0117】
両性界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができ、カチオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0118】
本発明における洗剤組成物に配合される酵素としてはプロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等を使用することができる。特にアルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
【0119】
さらに、本発明の洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、蛍光剤、漂白剤、漂白助剤、香料等の洗剤組成物に常用される成分を配合してもよい。また、ゼオライトを配合してもよい。
【0120】
アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等を用いることができる。キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等を必要に応じて使用することができる。あるいは公知の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを本発明の効果を損なわない範囲で使用しても良い。
【0121】
(水処理剤)
水処理剤は、好ましくは、本発明の重合体のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を配合した組成物とすることもできる。いずれの場合でも、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で公知の水溶性重合体を含んでもよい。
【0122】
(顔料分散剤)
顔料分散剤は、好ましくは、本発明の重合体のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0123】
何れの場合においても、この分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイ等の無機顔料等の分散剤として良好な性能を発揮する。例えば、本発明の顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0124】
顔料分散剤の使用量は、顔料100質量部に対して0.05〜2.0質量部が好ましい。使用量が0.05部より少ないと、充分な分散効果が得られず、逆に2.0質量部を超えると、もはや添加量に見合った効果が得られず経済的にも不利となる恐れがあるため好ましくない。
【0125】
(繊維処理剤)
繊維処理剤は、本発明の重合体を単独で使用してもよいが、染色剤、過酸化物、および界面活性剤等の添加剤を配合した組成物として使用することもできる。上記添加剤としては、繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。本発明の重合体と上記添加剤の比率は特に限定されるものではないが、本発明の重合体1質量部に対して、上記添加剤を、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.2〜80質量部、さらに好ましくは1〜50質量部という割合で配合する。上記添加剤の配合量が0.1質量部未満であると、添加効果が不十分になる傾向があり、100質量部を超えると、本発明の重合体の効果が発揮できない傾向がある。また、本発明の重合体を含む繊維処理剤は、性能や効果を阻害しない範囲で、さらに、本発明の重合体以外の重合体を含んでいてもかまわない。繊維処理剤中の本発明の重合体の含有量は、特に限定はされないが、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100質量%、より好ましくは5〜100質量%である。
【0126】
本発明の重合体を含む織維処理剤を使用できる織維は特に限定はされないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ナイロン、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品などが挙げられる。
【0127】
本発明の重合体を含む繊維処理剤を精錬工程に利用する場合には、本発明の重合体とアルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体と過酸化物とアルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合するのが好ましい。
【0128】
[本発明の重合体の製造装置]
本発明に係る重合体の製造装置は、反応槽内に単量体成分を供給するフィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入するためのラインが形成されてなることを特徴とするものである。かかる装置構成を有することで、フィードラインに残存する該単量体成分による重合物/ゲル化物発生防止手段として有効に機能し得るものである。
【0129】
かかる装置構成を有することで、フィードラインに残存する該単量体成分による重合物/ゲル化物発生防止手段として有効に機能し得るものである。すなわち、反応槽内に単量体成分を供給した後のフィードラインに残存する該単量体成分が、加熱され重合物やゲル物を生成する前に、速やかに洗浄液および/またはパージガスにより反応槽内部に押し出され、フィードライン内に残存する単量体成分を取り除くことができるものである。特に、こうした洗浄液/パージガスを用いる装置構成では、重合反応中、常に動作させる必要がなく、極めて短時間で重合物/ゲル化物発生防止効果を得ることができる点でも優れたものと言える。さらに、単量体成分を数回に分けて断続的に反応槽内にフィードラインを通じて添加するような場合に合っても、各回ごとの供給後に、導入ラインを通じて、短時間で重合反応に影響を与えることなく洗浄液/パージガスを導入してフィードライン内に残存する単量体成分を取り除くことができる。
【0130】
本発明の重合体の製造装置の代表的な実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。
【0131】
図1は、本発明の重合体の製造装置の好適な1つの実施形態として、水溶性重合体を製造するための反応槽と、該反応槽内の反応液を攪拌するための攪拌機と、蒸気化した反応液を冷却して該反応槽内ヘ戻すためのコンデンサーとを備えたものであって、さらに該反応槽内に単量体成分を供給するフィードラインに、洗浄液および/またはパージガス(以下、単に洗浄液/パージガスとも略記する)を導入するためのラインが形成されてなる装置を模式的に表した概略図である。
【0132】
図1に示すように、水溶性重合体を製造するための反応槽101が設置されている。該反応槽101には、重合に用いる成分ごとに供給用のフィードライン103がそれぞれ連結されている。図1では、便宜上、1つの単量体成分のフィードラインのみを図示するが、実際には、重合に用いる成分ごとに同様の該フィードラインが設置されている。各フィードライン103の先端部のノズル105は、反応槽101塔頂部にそれぞれ挿通されている。各フィードライン103の他端は、各成分の貯蔵タンク106とそれぞれ個別に連結されており、これらの成分ないしその成分溶液が、各貯蔵タンクからそれぞれの個別のフィードライン103を通じて反応槽101内部に所定時間をかけて先端ノズル105から滴下できるように、流量調整バルブやポンプが設けられている。
【0133】
そして、反応槽内に単量体成分を供給するフィードラインに洗浄液/パージガスを導入するためのラインが設けられている。具体的には、単量体成分のフィードライン103の経路上には洗浄液/パージガス導入用共通ライン107が切替弁109を介して設けられている。また、該共通ライン107は、途中で分岐され、一方が洗浄液導入用ライン111として洗浄液タンク113に連結されており、もう一方が、パージガス導入用ライン115として、パージガスタンク117に連結されている。さらに、単量体成分を滴下した後、それぞれのフィードライン103上に設けられた切替弁109を切り替えて、洗浄液タンク113からライン111、107を通じて洗浄液を、あるいはパージガスタンク117からライン115、107を通じてパージガスを導入し、該フィードライン103に残る単量体成分を反応槽内に押し出すことができるように、これらのライン107、111、115上の適所には、流量調節あるいは流路の開閉自在なように圧入ポンプやバルブが適宜設けられている。また、パージガスを用いる場合には、反応槽内に噴き出されたパージガスによる内圧上昇を防止するために、ライン135には該パージガスを系外に排出することのできるガス抜きラインまたはガス回収用のライン(図示せず)が設けられてる。
【0134】
また、本発明の製造装置においては、この他に、重合中は、反応槽内の液温が均一に維持され、重合反応が均等になされるように、該反応槽101内の反応液を撹拌するための撹拌機121が反応槽101に設けられている。また反応槽101の胴側の外周囲には、反応温度、すなわち反応槽内の液温を調節する目的で外部ジャケット137が設けられている。さらに、重合中に反応槽内で蒸発した反応液を槽外に留出させ、コンデンサで凝縮液化して再び反応槽に戻すために、反応槽101の塔頂部には、重合中に反応槽101内で蒸気化した反応液を槽外に留出させるためのライン123が連結されており、該ライン123の他端が、槽外に留出した蒸気化した反応液を冷却して凝縮液化させるためのコンデンサ125の被冷却用流体入口127と連結されている。さらに該コンデンサ125で液化された反応液を反応槽101内に戻すためにライン135がコンデンサ125の被冷却用流体出口129と連結されており、該ライン135の他端が反応槽101上部に連結されている。また、該コンデンサ125には、留出物を冷却するための冷却媒体入口131および出口133が設けられている。
【0135】
<洗浄液/パージガスの導入ラインの実施形態>
図1では、洗浄液とパージガスとを共通ライン107を通じてフィードライン103に導入するようにしているが、これらに制限されるべきものではなく、洗浄液とパージガスとを別々のラインを通じてフィードラインに導入できるように独立したラインを形成してもよいが、ライン数の低減を図る観点からは、共通ラインとするのが望ましい。なお、同様のことが、フィードラインにも言える。すなわち、各成分ごとに個別にフィードラインを設けるように説明したが、反応槽に供給する前に予め混合可能な成分同士は、共通のフィードラインを用いるなどして、フィードライン数の低減を図るのが望ましい。
【0136】
<洗浄液/パージガスの導入ラインの設置角度>
洗浄液/パージガスの導入ラインの設置角度は、図1に示すように、フィードラインに対して洗浄液やパージガスを導入するためのラインを垂直に連結してもよいが、洗浄液やパージガスの導入圧力が出来るだけ損なわれないようにし、フィードライン内部で渦流を発生させてフィードライン内部の洗浄効果を高めることができるように、フィードラインに対して洗浄液やパージガスを導入するためのラインを傾斜させて連結してもよい。あるいは、フィードライン内部に洗浄液やパージガスを均等に導入できるように、洗浄液やパージガスの導入ラインを複数に分岐させて、フィードラインの軸線方向に垂直断面の外周囲上に等間隔で連結してもよい。
【0137】
<洗浄液/パージガスの導入ラインの設置箇所>
フィードライン上への洗浄液/パージガス導入ラインの設置箇所としては、フィードライン内部に残留する単量体成分が、反応槽からの熱放射や熱伝導により重合および/またはゲル化する温度に達する領域を含む部分に設置すればよい。また、フィードライン全体に単量体成分が残存しないように、供給元の貯蔵タンクの連結部に導入ラインを設置してもよい。これは、工業的に生産を行う過程で単量体成分の濃度や種類を変えることもあり、こうした場合、異なる単量体成分がフィードラインに残留していない方が望ましいためである。
【0138】
<洗浄液/パージガスの導入ラインの設置数>
上記洗浄液/パージガスの導入ラインの設置箇所は、洗浄液/パージガスの導入ラインを1ライン設置する場合であるが、本発明では、洗浄液/パージガスの導入ラインを複数形成しても良く、この場合には、少なくとも1つの洗浄液/パージガスの導入ラインが上記洗浄液/パージガスの導入ラインの設置箇所の要件を満足するように適当な位置に適宜設置すればよい。
【0139】
<フィードラインの材質>
反応槽側からの熱放射や熱伝導によってフィードラインが長い範囲で加熱されるのを抑えるために、該フィードライン、さらには切替弁の材質としては、熱伝導性の低いものを用いるのがよい。なお、該フィードライン、切替弁全体の材質でなくとも、残存する単量体成分の加熱を抑えられるように、少なくともフィードラインの内面部に熱伝導性の低いものを用いるのが好ましい。
【0140】
<フィードラインの内面処理>
フィードラインの内面は、洗浄液/パージガスを通じた際に、残存する単量体成分が流れ出しやすいように、表面処理されているのが好ましい。例えば、内面の凹凸を抑え平滑な表面になるように研磨などの処理を行ったり、単量体成分が内面に付着しにくいように、単量体成分を撥ねるように撥水ないし撥液処理するなどしてもよい。
【0141】
≪フィードライン冷却装置≫
本発明に係る重合体の製造装置としては、反応槽内に単量体成分を供給するフィードラインを冷却する装置が備えられてなることを特徴とするものである。これにより、反応槽内に単量体成分を供給した後に、フィードライン内部に残存する単量体成分が反応槽側からの熱により重合/ゲル化する温度に達しないように、反応槽内での重合反応が完了し、反応槽側からの熱の発生がなくなるまで、常に安定して冷却することができるものである。
【0142】
<フィードライン冷却装置の形態>
反応槽内に単量体成分を供給するフィードラインを冷却する装置としては、例えば、(1)二重管を用い、該二重管の内管を、単量体成分を供給するフィードラインに使用し、該二重管の外管に冷媒を通じてフィードラインの冷却装置としてもよいし、(2)フィードラインの外周囲の所望の箇所に、例えば、コイルなどを巻きつけ、該コイル内部に冷媒を通じることのできる冷却装置を設置してもよいし、(3)フィードラインの所望の箇所を冷却するためのクーリングファンをフィードライン沿いに設置してもよいなど、制限されるものではない。
【0143】
また、本発明の製造装置では、反応槽内に添加剤成分を供給するフィードラインに残存する添加剤成分の濃縮を防止する手段(以下、単に濃縮防止手段ともいう)が設けられてなることが望ましい。これにより、反応槽内に単量体成分を供給するフィードラインに残存する単量体成分と同様に反応槽側の熱により、フィードラインに残存する添加剤成分が濃縮、乾固することで、次ロットで添加剤成分を供給する際に濃縮、乾固した添加剤成分も再溶解して反応槽に混入し、反応槽に供給される添加剤濃度が不均一化するのを防止することができる。また、添加剤成分が濃縮することで、フィードライン内壁面を腐蝕するのを防止することもできる。
【0144】
<単量体成分以外のフィードラインへの適用>
反応槽内に単量体成分以外の他の成分を供給するフィードラインに洗浄液/パージガスを導入するためのラインが形成されてなるものであってもよいし、該フィードラインを冷却する装置を備えてなるものであってもよいなど、先に説明した単量体成分のフィードラインに適用した装置構成のものを用いることができる。
【0145】
<他の装置構成>
本発明の重合体の他の装置構成としては、特に制限されるべきものではない。
【0146】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に記載の「%」は、特に断りがなければ「質量%」を示す。
【0147】
実施例1
温度計、撹拌機およびコンデンサ(伝熱面積17.6m2)を備えた反応槽(体積6m3)に、イオン交換水1453.5kgを初期仕込みし、攪拌下、沸点還流状態まで昇温した。
【0148】
次いで攪拌下、還流状態を維持しながら、30%アクリル酸ナトリウム水溶液3648.5kg、7%過硫酸ナトリウム水溶液166.3kgをそれぞれ別個のフィードラインを通じてそれぞれの滴下ノズルよりそれぞれ120分かけて反応槽に滴下した。それぞれの滴下時間の間、各成分の滴下速度は一定とし、連続的に滴下した。
【0149】
滴下終了後、30%アクリル酸ナトリウム水溶液、7%過硫酸ナトリウム水溶液のフィードラインの残液をそれぞれ水を用いて反応槽内に押し出した。
【0150】
また、滴下終了後30分間さらに沸点還流状態を維持して熟成し重合を完結させた。このようにして、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。得られたポリアクリル酸ナトリウム水溶液中には重合物/ゲル物の不純物は認められなかった。フィードラインにゲル物の生成はなかった。
【0151】
そのため、わざわざフィードライン内部を洗浄することなく、連続して何バッチもの重合を行うことができた。
【0152】
比較例1
実施例1において、30%アクリル酸ナトリウム水溶液、7%過硫酸ナトリウム水溶液の滴下終了後に、フィードラインの残液を除去しなかった以外は同様にして行ったところ、連続2〜3バッチ目で30%アクリル酸ナトリウム水溶液のフィードラインにゲル物が生成していた。
【0153】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、フィードラインにアクリル酸等の単量体成分が残存することにより、フィードラインが重合物および/またはゲル化物により閉塞したり、ゲル化物や高分子量物が反応系内に混入したりするのを防止することができる。これにより、フィードラインが閉塞すると、原料を反応槽内にフィードすることができなくなることから、製造を適切に行うことができなくなり、生成したゲル物が反応系内に混入する不具合も生じる恐れがあるが、本発明によりこうした問題を解決することができる。
【0154】
また、本発明の製造方法にあっては、重合過程での各単量体成分のフィードラインにおいて、性能低下の原因ともなり得る重合物および/またはゲル物の発生が効果的に防止され、その結果、反応系、ひいては反応生成物へのこうした不純物の混入が未然に防止できるため、極めて高品質な重合体を得ることができるものである。さらに、簡単な操作でかつ短時間にこうした不純物の原因となるフィードライン内部の残留単量体成分を取り除くことができる。また、そのための装置増設も簡単なラインを設ければよく、生産性に影響を及ぼすこともなく、生産性の向上につながると共に、製造コストの低減にもつながるものである。また、生産を中止して反応槽やライン内部に付着した重合物やゲル物を擦り落としたりする必要が無く、装置のメンテナンスの回数が格段に低減できる。
【0155】
本発明の重合体の製造装置では、単量体成分を供給した後であって、所定時間熟成して重合を完結するまでの間などに、個々のフィードライン内部に残留する単量体成分が、反応槽からの熱放射や伝熱により重合および/またはゲル化する温度にまで加熱されることで重合物やゲル物が生成するのを有効かつ効果的に防止することができるものである。そのため、工業的に生産を重ねても該重合物やゲル物によるフィードラインの閉塞や、製品に重合物やゲル物が不純物として混入し、生成される重合体、とりわけ水溶性重合体の性能、品質が低下するのを防止防止することができる。さらに開始剤その他の添加剤成分を供給した後に、個々のフィードライン内部に残留する添加剤成分が濃縮、乾固することで、工業的に生産を重ねる場合に、次ロットで添加剤成分を供給する際に濃縮、乾固した添加剤成分も再溶解して反応槽に混入し、反応槽に供給される添加剤濃度が不均一化するのを防止することができる。また、添加剤成分が濃縮することで、フィードライン内壁面を腐蝕するのを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の重合体の製造装置を模式的に表した概略図である。
【符号の説明】
101…反応槽、
103…フィードライン、
105…ノズル、
107…洗浄液/パージガス導入用共通ライン、
109…切替弁、
111…洗浄液導入用ライン、
113…洗浄液タンク、
115…パージガス導入用ライン、
117…パージガスタンク、
121…撹拌機、
123…蒸発反応液留出用ライン、
125…コンデンサ、
127…被冷却用流体入口、
129…被冷却用流体出口、
131…冷却媒体入口、
133…冷却媒体出口、
135…反応液還流用ライン、
137…外部ジャケット。

Claims (10)

  1. カルボキシル基を有する単量体を50mol%以上を用いてなる単量体成分、さらには重合開始剤を含む添加剤成分を、反応槽内に予め仕込み重合温度まで加熱しておいた溶媒にそれぞれ滴下し、その後、さらに時間をかけて重合を完結してなる重合体の製造方法において、
    反応槽内に前記単量体成分を供給した後に、該単量体成分のフィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入して該フィードラインを洗浄することを特徴とするものであって、
    前記フィードラインが、内面の凹凸を抑える表面処理、および/または撥水ないし撥液処理による内面処理されていることを特徴とする重合体の製造方法。
  2. 前記カルボキシル基を有する単量体が、不飽和モノカルボン酸系単量体を含有し、
    該不飽和モノカルボン酸系単量体の90質量%以上を連続的に滴下することにより反応系に添加することを特徴とする請求項1に記載の重合体の製造方法。
  3. 重合終了時の濃度が、35〜65重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の重合体の製造方法。
  4. 前記内面処理が、研磨処理、撥水ないし撥液処理の内のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
  5. 洗浄液とパージガスを組み合わせて導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
  6. 洗浄液とパージガスを同時に導入するか交互に導入することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体の製造方法。
  7. 反応槽と、
    前記反応槽に連結されてなる、前記反応槽内にカルボキシル基を有する単量体を50mol%以上を用いてなる単量体成分を供給するフィードラインと、
    前記フィードラインの経路上に連結されてなる前記フィードラインに洗浄液および/またはパージガスを導入するためのラインと、が備えられてなることを特徴とする重合体の製造装置であって、
    前記フィードラインが、内面の凹凸を抑える表面処理、および/または撥水ないし撥液処理による内面処理されていることを特徴とする重合体の製造装置。
  8. 前記内面処理が、研磨処理、撥水ないし撥液処理の内のいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の重合体の製造装置。
  9. 前記フィードラインに洗浄液とパージガスを組み合わせて導入するためのラインが形成されてなることを特徴とする請求項7または8に記載の重合体の製造装置。
  10. 前記フィードラインに洗浄液とパージガスを同時に導入するか交互に導入するためのラインが形成されてなることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の重合体の製造装置。
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