JP4172977B2 - 油性ボールペン用油性インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールペン用油性インキとして好適に用いられ、書き出し時の筆記カスレを抑制し、筆跡の柔らかく滑らかな筆感及び高荷重下で筆記した時のインキ転写性を潤滑にすることに優れたボールペン用油性インキ組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、油性ボールペンは、ボールチップ先端部のインキの溶剤が蒸発してインキが増粘した場合、書き出し時にインキが吐出し難くなって筆跡がカスレたりボールが十分回転する様になるまで十分濃い筆跡が得られないといった欠点が発生しやすかった。また、このカスレ現象は、環境条件による依存性も強く、低温及び高温下でたびたび発生し、不快なものとなっていた。更に請求項に示す様な揮発性の高い溶剤を使用するとこの様な問題は顕著になり大きな問題となる。この様な欠点を解決するために従来より種々の工夫が検討されてきた。例えば、特公昭61−52872号公報に記載されている発明では、特定の非イオン系界面活性剤を添加してインキの流動性を保持し、特公昭57−38629号公報には高沸点芳香族炭化水素を溶剤としインキが乾燥したり、吸湿して変質するのを低減する発明が記載され、特開平3−28279号公報に記載の発明では、リン酸エステルを添加してインキの流動性を保持し、特開平6−247093号公報に記載の発明では、不揮発性の溶剤を使用しインキが完全に乾ききるのを防ぐ。
【0003】
特開平11−158421号公報に記載の発明では、塩基性染料とリン酸エステルとの塩を配合したことによりペン先での染料の結晶化を抑制し、ペン先端部で乾燥固化し難くグリス状からペースト状を得ることなどでインキの流動性を保持するなどを施して滑らかに書き出し、それぞれ問題となるカスレ現象を改善しようとしている。また、特開平11−21495号公報に記載の発明も、酸性ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを所定のアルキルアルカノールアミンまたはモルホリンで中和することによって同様な効果を生み出している。しかし、ここで使用されているアミン物質は臭気が強く、反応性が高いことから溶剤、染料等の選択の自由度が狭くなる傾向にあった。また、安定な中和物というものを決める手だてがなかった。
【0004】
しかし、従来油性ボールペンに使用される様な蒸気圧が0.01mmHgより低い溶剤では問題になり難いが、蒸気圧が高い溶剤ではボール周囲にインク凝着物が固化してしまうと、ボールを動かす書き出しに対して非常に強い筆記荷重が必要となる。
【0005】
また、従来の油性ボールペンに使用されている2−フェノキシエタノールやベンジルアルコールの混合溶剤では潤滑性に関してもあまり問題なく、特にオレイン酸を代表とする脂肪酸系のものを入れるという発明はあるが、表面張力が30dyn /cmと低い溶剤ではあまり効果が発揮できず、しかも顔料を使用してしまうとその潤滑性の悪さは顕著であった。
【0006】
【特許文献1】
特公昭61−52872号公報
【特許文献2】
特公昭57−38629号公報
【特許文献3】
特開平3−28279号公報
【特許文献4】
特開平6−247093号公報
【特許文献5】
特開平11−158421号公報
【特許文献6】
特開平11−21495号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の方法とは異なり、書き出し時の筆記カスレを抑制し、筆跡の柔らかく滑らかな筆感及び高荷重下で筆記した時のインキ転写性を潤滑にすることに優れたことを可能にしたボールペン用インキ組成物及びそれを用いた油性ボールペンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明におけるボールペン用油性インキ組成物は、以下に示す点を特徴とすることにより課題を解決できることを見いだし本発明を完成した。
(1)少なくとも色材、樹脂、下記化学構造式(1)又は(2)で表される化学物質を含み、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であるアルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を全溶剤の50%以上占める主溶剤として含むことを特徴とするボールペン用油性インキ組成物。
【0009】
【化4】
【0010】
【化5】
【0011】
(2)グリコールエーテルが下記化学構造式(3)
【0012】
【化6】
【0013】
の溶剤である上記(1)記載のボールペン用油性インキ組成物。
(3)化学構造式(1)又は(2)で表される化学物質の添加量がインキ組成物に対して0.5重量%〜10重量%であることを特徴とする上記(1)(2)記載のボールペン用油性インキ組成物。
(4)色材は、顔料あるいは顔料と染料併用であることを特徴とする上記(1)〜(3)に記載のボールペン用油性インキ組成物。
(5)リン酸エステルとアミン系化合物の混合物をさらに含むことを特徴とする上記(1)〜(4)に記載のボールペン用油性インキ組成物。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物に用いられる主溶剤(全溶剤の50重量%以上)としては、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上のアルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を用いる。この様に蒸気圧の高い特定の溶剤を使用することで筆跡の滑らかな筆感などの効果を与えることができる。本発明のボールペン用油性インキ組成物はこの様に蒸気圧の高い特定の溶剤を使用した場合に特有の問題を解決することを目的として開発されたものである。主溶剤とは全溶剤の50重量%以上用いられることをいうが、必要に応じて70重量%以上、さらには80重量%以上、特に90重量%以上用いることができる。
【0015】
具体的にアルコール類としては、炭素数が2以上の脂肪族アルコールであり、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコールやその他多種の高級アルコール等が挙げられる。
【0016】
また、多価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の分子内に2個以上の炭素、2個以上の水酸基を有する多価アルコールが挙げられる。
【0017】
グリコールエーテルとしては、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0018】
特に好ましいのは化学構造式(3)に示されるような溶剤が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール等が挙げられる。
【0019】
以上挙げた溶剤の中で特に好ましいのは、炭素数2〜7のグリコールエーテルが特に効果が解り易い。また、安全性及び経口毒性等の点から好ましくはエチレングリコール誘導体等以外の有機溶剤を使用した方が好ましい。
【0020】
それらの例として、多価アルコール類誘導体があり、ソルビタン脂肪酸系、ポリグリセリン高級脂肪酸系、ショ糖脂肪酸系、プロピレングリコール脂肪酸系等の誘導体も挙げられる。
【0021】
それ以外にはエステル類等もあげられ、エステル類の溶剤としては例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート等様々なエステルが挙げられる。
【0022】
また、分子内に水酸基を持たない溶剤であるジエーテルやジエステルとしては、具体的には、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
本発明のボールペン用油性インキに用いる着色剤(色材)としては、限定されないが、顔料あるいは顔料と染料併用の形で使用することが好ましい。顔料を用いることで堅牢性に優れることができる。顔料としてはカーボンブラック、フタロシアニン、アゾ、キナクリドン、ジケトピロロピロール、インダスレン、ジオキサジン等の有機顔料を使用することができる。
【0024】
また、顔料としては、用いる有機溶剤に溶解し難く分散後の平均粒径が30nm〜700nmとなるものが好ましい。顔料の配合量は、インキ組成物全量に対し、0.5〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%までの範囲で必要に応じて配合することができる。
【0025】
使用できる顔料は、単独又は2種以上の混合で使用することができる。また、必要に応じて無機顔料を用いた分散体や染料等も分散安定性に悪影響を与えない程度で添加することができる。染料を用いると発色性に優れる効果がある。更に、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル、アクリルニトリル、オレフィン系モノマーを重合して得られる樹脂エマルションや、インキ中では膨潤して不定形となる中空樹脂エマルション、または、これらのエマルション自身を着色剤で染着して得られる染着樹脂粒子からなる有機多色顔料等が挙げられる。
【0026】
本発明に使用する色材が顔料である場合は、顔料分散インキ組成物を製造するには、従来から公知の種々の方法が採用できる。例えば、上記各成分を配合し、ディゾルバー等の攪拌機により混合攪拌することによって、また、ボールミルやロールミル、ビーズミル、サンドミル、ピンミル等によって混合粉砕した後、遠心分離や濾過によって顔料の粗大粒子、及び未溶解物、混入固形物を取り除くことによって容易に得ることができる。
【0027】
これらの顔料に対して併用する染料としては分散系を破壊しないものであれば特に制限なく使用することができる。それらの染料としては、通常の染料インキ組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料等や通常の顔料インキ組成物に用いられる無機および有機顔料の中から任意のものを使用することができる。その配合量は、組成物全量当たり1〜50重量%の範囲で選ばれる。
【0028】
本発明のボールペン用油性インキ組成物には樹脂を使用する。ボールペン用油性インキ組成物において樹脂は、粘度調整やペン先での摩耗性の改良などの目的で添加されるが、顔料を添加する場合にはその分散剤としても使用される。ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂がある。
【0029】
これらの樹脂の配合量としては、1〜30重量%がよく、より好ましくは1〜20重量%である。その配合量が1重量%未満であると粘度調整やペン先での摩耗が困難となり、30重量%超だと樹脂以外の原材料が配合できなくなったり、書き味に悪影響を及ぼすことになる。
【0030】
本発明の好適な実施態様としてインキ組成物の色材に顔料を使用する場合、用いる分散剤としては上記に挙げたような樹脂の中から顔料を分散できるものを選択して使用することができ、活性剤やオリゴマーでも目的にあえばどの様なものでも種類を問わない。具体的な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げられる。
【0031】
本発明のインキ組成物には、化学構造式(1)あるいは(2)に示される化学物質を必ず使用することを特徴とする。化学構造式(1)あるいは(2)に示される化学物質は、チップ内のボールと受け座間の接触部の抵抗がインキの各種成分により増加するのを抑制して、ボールの回転の阻害を防止し、インキを良好に転写させる効果がある。この効果は、不明であるが、チップ内のボールと受け座間の接触部が連続的な層状のインキ吐出を阻害することに対して、インキ原材料との相互作用により潤滑剤的な効果を発揮し、またこれらの物質によるコーティング効果が抑制する作用を奏するようである。特に色材に顔料を含有するインキでは摩耗が激しいので、この効果は顕著であり有用である。化学構造式(1)あるいは(2)のアルキル基は炭素数10以上30以下が好ましいが、特に好ましくは、化学構造式(1)では炭素数10〜20であり、更に好ましくは12〜18である。具体的にはラウリル、ステアリルの形であるものが上市されており、アデカ製アデカアンホートPB−30L、花王社製のアンヒトール86B、日光ケミカルズ社製AM−301、松本油脂社製のビスターML、ビスターMS等がある。また、化学構造式(2)でも同様であり、日光ケミカルズ社製AM−3130N、松本油脂社製のビスターCAP等が挙げられる。
【0032】
化学構造式(1)あるいは(2)に示される化学物質の添加量はインキ組成物に対して0.5重量%〜10重量%が好適である。この範囲において顔料を使用したインキでも金属ボールの回転を阻害することなくインキを良好に転写できる効果が著しい。この添加量が10重量%を超えると溶解性の点から不具合を引き起こしたり、吸湿性の点で多湿条件下での安定性に欠ける様な不具合を生じる恐れがあり、0.5重量%〜10重量%が好適である。できる限り添加量を低減することがより望ましく、より好適には0.5〜10重量%、更に好適には0.5〜7.0重量%である。
【0033】
本発明のインキ組成物では、さらにリン酸エステルとアミン系化合物の混合物を使用することが好ましい。とりわけリン酸エステルとアミン系化合物との中和物として使用されることが望ましい。これはボール表面のインキ凝着物を取り除き易くする効果を提供し、書き出し時の筆記カスレを抑制すると共に、高揮発性溶剤による筆跡の柔らかく滑らかな筆感及び化学構造式(1)あるいは(2)に示される化学物質の添加による高荷重下で筆記した時のインキ転写性を潤滑にする効果を増大させる効果を奏する。
【0034】
具体的には、リン酸エステルは、通常、リン酸モノエステル、ジエステル及び微量のトリエステルからなるものであり、エステル構造も芳香族や脂肪族の2系統がある界面活性剤が主である。リン酸エステル構造を形成し得るアルキル基に関しては、天然及び合成の高級アルコール等から得られるアルキル基を導入している。炭素数10〜20のアルキル基と0〜50のポリオキシエチレン鎖を有するリン酸エステルが使用される。特に炭素数15〜20のアルキル基と0〜4個のポリオキシエチレン鎖を有する様なリン酸エステルが好適である。
【0035】
また、中和するためのアミン系物質としてはアルカノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、両性界面活性剤、脂肪アミン系物質などのアミン系化合物で中和することが望ましい。特にこれらのアミン系化合物として、3級アミンが好適に使用でき、更にアルカノールアミンに関しては、20℃での蒸気圧が1mmHg以下のアルカノールアミンが好ましく、具体的にはN−メチルジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0036】
これらの添加量に関しては、中和による混合物で、インキ組成物に対して、0.01重量%〜15重量%を配合することが好ましいが、より好適には0.1〜10重量%である。また、特に好適には0.1〜8重量%である。これらは0.01重量%未満だとボール表面のインキ凝着物を取り除き易くすることができない。また、15重量%を超えて配合してしまうと描線品位としてボールからはじかれ過ぎて描線割れが生じやすくなる等の不具合を起こし易くなってしまう。
【0037】
更に、本発明では必要に応じて、インキに悪影響を及ぼさず相溶することができる防錆剤、防黴剤、界面活性剤、潤滑剤及び湿潤剤等を配合することができる。特に脂肪酸などは、潤滑剤として好適に使用できる。また、乾燥抑制用添加剤として製品特性上、悪影響を及ぼさない範囲で主溶剤に相溶する不揮発性溶剤等も配合することができる。
【0038】
本発明のインキ組成物をボールペンに用いる場合には、インキ追従体をボールペン後端部に付与することが好ましい。使用する溶剤は揮発性があるので、揮発防止、吸湿性防止、インキ漏れ防止としてインキ追従体を添加するものである。
【0039】
インキ追従体としては、インキに使用する溶剤に対して低透過性、低拡散性が必要であり、そのベースとしては不揮発性や難揮発性の流動体、具体的には、ポリブテンや流動パラフィン等、請求項に示す溶剤と基本的に相溶性を有さない非シリコン系の油脂類を使用することができる。これらの物質の粘度が低い場合、増粘剤やゲル化剤を用いるとよい。具体的には、金属セッケン類、ベントナイト類、脂肪酸アマイド類、水添ヒマシ油類、酸化チタンやシリカやアルミナ等を含む金属微粒子類、セルロース類、エラストマー類等が挙げられる。
【0040】
この様な効果を発揮する理由としてはインキ組成物に特徴があり、書き出し時の筆記カスレを抑制し、筆跡の柔らかく滑らかな筆感及び高荷重下で筆記した時のインキ転写性を円滑にすることに優れたインキが得られる理由は定かではないが、有機溶剤系のインキ特に顔料インキに化学構造式(1)あるいは(2)を使用することにある。これは油性インキ中で存在しにくい化学構造式(1)あるいは(2)が金属ボールとインキの界面で原材料への溶解性をコントロールするのではないかと考えられる。これによって摩耗や摩擦抵抗を軽減し、潤滑効果を発揮しているのではないかと考えられる。以上のことをもとに書き出し時のカスレが良好になり、筆跡の柔らかく滑らかな筆感及び高荷重下で筆記した時のインキ転写性を円滑にすることに優れたボールペン用油性インキ組成物を提供することが可能となった。
【0041】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって限定されるものではない。
【0042】
インキの調製として使用するリン酸エステル中和物に関しては、リン酸エステルとアミン系化合物各々2%の主溶剤溶液に調製したもので中和滴定を行い中和点を得た。この中和比を用いて所定の値で混合することでリン酸エステル中和物とした。また、実施例で使用する化学構造式(1),(2)の物質は、使用する主溶剤を溶剤とする50重量%溶液を作成し、その溶液を他の成分に混合して使用した。
【0043】
以下の実施例及び比較例で用いた成分は下記のものである。
【0044】
YP90L:テルペンフェノール樹脂
スピロンバイオレットC−RH:メチルバイオレットを母体として酒精溶性染料
スピロンイエローC−GNH:酒精溶性黄染料
Printex#35:カーボンブラック
ハイラック110H:アルコール可溶性樹脂
スピロンブルーC−RH:酒精溶性青染料
クロモフタルブルーA−3R:インダスレン(顔料)
クロモフタルバイオレット B:ジオキサジンバイオレット(顔料)
POE(2)ラウリルエーテル:ポリオキシエチレン2モル付加物ラウリルエーテル
実施例1〜4、比較例1〜4は以下の通りである。
以上の様に実施例や比較例で得られたインキを充填し、下記評価テストを行った。
【0045】
試験に用いたボールペンは、内径1.60mmのポリプロピレンチューブ、ステンレスチップ(ボールは超硬合金で、直径1.0mmである)を有するものである。また、充填した後、25℃65%条件下にて30分後に下記評価を行う。
1)書出時カスレ評価(官能評価):
「三菱」という文字を書き、文字のカスレ度合いで判定する。
【0046】
ほとんどカスレないもの(「三」の1あるいは2番目の線以降書ける);◎
僅かにカスレるもの(「三」の2番目の線が多少かすれるが、それ以降かすれない);○
少し多いもの(「菱」以降かすれない);△
非常に多いもの(「菱」が最後まで書けない);×
とした。
2)書出時カスレ評価(機械評価):
25℃65%条件下にてペンを60°にセットし、200gの荷重をかけ、接触する紙を2m/min の速度で動かし、その筆記描線を観察。その時、始点から書出始めた描線の距離を測定する。ペンは5本用意し、その平均値にて測定値とした。
【0047】
測定値≦10mm:◎
10mm<測定値≦50mm:○
50<測定値≦100mm:△
100<測定値:×
下記試験に用いたボールペンは、内径1.60mmのポリプロピレンチューブ、ステンレスチップ(ボールは超硬合金で、直径0.7mmである)を有するものである。また、充填した後、25℃65%条件下にて30分後に下記評価を行う。高荷重筆記性能においてはボール径が小さいものほど筆圧を大きく受けるため、あえて上記の1),2)と変えて小さいボール径にした。
3)高荷重筆記評価:
25℃65%条件下にてペンを60°にセットし、300gの荷重をかけ、接触する紙を4.5m/min の速度で自転させながら動かし、その筆記描線を観察。その時、ボールの回転によってインキの転写できない描線状態を官能的に判断する。
【0048】
全く問題がないもの:○
少し転写できない部分があるもの:△
転写できない部分が多くひどいもの:×
【0049】
【表1】
【0050】
以上の結果から明らかなように本発明の範囲となる実施例1〜4のインキ組成物は、本発明の範囲外となる比較例1〜4のインキ組成物に比べて書出時のかすれに対して非常に優れ、筆跡の柔らかく滑らかな筆感及び低速で筆記した時のインキ転写性を潤滑にすることに優れていることが判明した。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の方法とは異なり、書き出し時の筆記カスレを抑制し、筆跡の柔らかく滑らかな筆感及び高荷重で筆記した時のインキ転写性を潤滑にすることに優れたことを可能にしたボールペン用インキ組成物が提供される。
Claims (4)
- 化学構造式(1)又は(2)で表される化学物質の添加量がインキ組成物に対して0.5重量%〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載のボールペン用油性インキ組成物。
- 色材は、顔料あるいは顔料と染料併用であることを特徴とする請求項1または2に記載のボールペン用油性インキ組成物。
- リン酸エステルとアミン系化合物の混合物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボールペン用油性インキ組成物。
Priority Applications (9)
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