JP4172980B2 - ボールペン用油性インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールペン用油性インキとして好適に用いられ、柔らかく滑らかな筆感及び筆記面に対する素早いインキの浸透、筆記によるインキのペン先への拡張濡れ(付着ボテ)やそれを伴い紙面に対するインキのボタ落ち(描線ボテ)を極力抑制するボールペン用油性インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油性ボールペンは、その簡単な構造によりチップ先端からインキが漏れ出す、いわゆる垂れ下がり現象やチップへの拡張濡れや紙面を汚すボテ現象を抑制するためインキの粘度を10,000 mPa・s程度に調整したり、インキ収容管内径やペン先のクリアランス等の構造上の設計からインキ流出機構を制限したり、インキに無機フィラー粒子を添加する等をしてチキソトロピー性を持たせたり、特定の高分子を添加することでインキ吐出に影響を与えることで問題解決へのアプローチを行っていた。しかし、これらはインキ溶剤に揮発性の低い芳香族系グリコールエーテルと芳香族系アルコールなどの混合溶剤を使用するのが通例であったため、上記の様な操作を行うこと以外に大きな進展を見ることはなかった。
【0003】
【特許文献1】
特願平2−232004号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の方法とは異なり、インキ溶剤の揮発性をコントロールし、極端なボール表面への乾燥を防ぎ、インキの内部凝集力をコントロールすることによりボテ現象を抑制することを可能にしたボールペン用インキ組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明におけるボールペン用油性インキ組成物は、以下に示す点を特徴とすることにより課題を解決できることを見いだし本発明を完成した。
(1)少なくとも色材、樹脂、重合度900(計算分子量60,000)以上の高重合度ポリブチルビニラールを0.01〜1.5重量%含み、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であるアルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を全溶剤の50%以上占める主溶剤として含むことを特徴とするボールペン用油性インキ組成物。
(2)グリコールエーテルが下記化学構造式(1)
【0006】
【化2】
【0007】
の溶剤である上記(1)記載のボールペン用油性インキ組成物。
(3)色材は、顔料あるいは顔料と染料併用であることを特徴とする上記(1)(2)記載のボールペン用油性インキ組成物。
(4)顔料の分散剤として重合度900(計算分子量60,000)以下のポリビニルブチラールを使用することを特徴とする上記(1)〜(3)に記載のボールペン用油性インキ組成物。
(5)前記分散剤として重合度200以上〜500以下の計算分子量10,000〜30,000のポリビニルブチラールを使用することを特徴とする上記(4)記載のボールペン用油性インキ組成物。
(6)添加剤としてリン酸エステル中和物を含むことを特徴とする上記(1)〜(5)記載のボールペン用油性インキ組成物。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物に用いられる主溶剤(全溶剤の50重量%以上)としては、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上のアルコール、多価アルコール、グリコールエーテルから選ばれる溶剤を用いる。このように蒸気圧の高い特定の溶剤は滑らかな筆感及び筆記面に対する素早いインキの浸透などの効果を与える。本発明のボールペン用油性インキ組成物はこの様に蒸気圧の高い特定の溶剤を使用した場合に特有の問題を解決することを目的として開発されたものである。主溶剤とは全溶剤の50重量%以上をいうが、必要に応じて70重量%以上、さらには80重量%以上、特に90重量%以上であることができる。
【0009】
具体的にアルコール類としては、炭素数が2以上の脂肪族アルコールであり、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコールやその他多種の高級アルコール等が挙げられる。
【0010】
また、多価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3ブンタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の分子内に2個以上の炭素、2個以上の水酸基を有する多価アルコールが挙げられる。
【0011】
グリコールエーテルとしては、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0012】
特に好ましいのは化学構造式(1)に示されるような溶剤が挙げられ、1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール等が挙げられる。
【0013】
以上挙げた溶剤の中で特に好ましいのは、炭素数2〜7のグリコールエーテルが特に効果が解り易い。また、安全性及び経口毒性等の点から好ましくはエチレングリコール誘導体等以外の有機溶剤を使用した方が好ましい。
【0014】
また、以上に挙げた溶剤の他に以下に挙げる溶剤を添加することも可能である。この場合、他の溶剤としては、後記するリン酸エステルとアミン系化合物の混合物を添加する場合にはそれとの溶解性や発揮性能を妨げない範囲で添加することが好ましい。
【0015】
それらの例として、多価アルコール類誘導体があり、ソルビタン脂肪酸系、ポリグリセリン高級脂肪酸系、ショ糖脂肪酸系、プロピレングリコール脂肪酸系等の誘導体も挙げられる。
【0016】
エステル類の溶剤としては例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート等様々なエステルが挙げられる。
【0017】
また、分子内に水酸基を持たない溶剤ジエーテルやジエステルは具体的には、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0018】
本発明のボールペン用油性インキに用いる着色剤としては、限定されないが、顔料あるいは顔料と染料併用の形で使用することが好ましい。顔料を用いることで堅牢性に優れることができる。顔料としてはカーボンブラックやフタロシアニン系やモノアゾ、ジスアゾ、縮合アゾ、キレートアゾ等の不溶性アゾ系と難溶性アゾ、可溶性アゾ等の溶性アゾを含むアゾ系やキナクリドン系やジケトピロロピロール系やスレン系やジオキサジン系およびイソインドリノン系等の有機顔料を使用することができる。
【0019】
特にカーボンブラックに関しては、なるべく比表面積の小さなものを使用すべきである、BET法にて測定した値で100m2 /g以下のものが好ましい。具体的には、三菱化成製カーボンブラックとして#33、#32、#30、#25、CF9等があり、キャボット社製カーボンブラックとしてREGAL(400R,500R,330R,300R),ELFTEX(8,12),STERLING R等があり、デグサ社製としてPrintex(45,40,300,30,3,35,25,200,A,G),SB(250,200)等があり、コロンビアン社製としてRAVEN(1040,1035,1020,1000,890,890H,850,500,450,420,410,H20,22,16,14)等がある。
【0020】
また、顔料としては、用いる有機溶剤に溶解し難く分散後の平均粒径が30nm〜700nmとなるものが好ましい。顔料の配合量は、インキ組成物全量に対し、0.5〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%までの範囲で必要に応じて配合することができる。
【0021】
使用できる顔料は、単独又は2種以上の混合で使用することができる。また、必要に応じて無機顔料を用いた分散体や染料等も分散安定性に悪影響を与えない程度で添加することができる。染料を用いると発色性に優れることができる。更に、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル、アクリルニトリル、オレフィン系モノマーを重合して得られる樹脂エマルションや、インキ中では膨潤して不定形となる中空樹脂エマルション、または、これらのエマルション自身を着色剤で染着して得られる染着樹脂粒子からなる有機多色顔料等が挙げられる。
【0022】
本発明に使用する色材が顔料である場合は、顔料分散インキ組成物を製造するには、従来から公知の種々の方法が採用できる。例えば、上記各成分を配合し、ディゾルバー等の攪拌機により混合攪拌することによって、また、ボールミルやロールミル、ビーズミル、サンドミル、ピンミル等によって混合粉砕した後、遠心分離や濾過によって顔料の粗大粒子、及び未溶解物、混入固形物を取り除くことによって容易に得ることができる。
【0023】
これらの顔料に対して併用する染料としては分散系を破壊しないものであれば特に制限なく使用することができる。それらの染料としては、通常の染料インキ組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料等や通常の顔料インキ組成物に用いられる無機および有機顔料の中から任意のものを使用することができる。その配合量は、組成物全量当たり1〜50重量%の範囲で選ばれる。
【0024】
本発明のボールペン用油性インキ組成物には樹脂を使用する。油性インキ組成物において樹脂は粘度調整やペン先での摩耗性の改良のために用いられ、また顔料を用いる場合にはその分散剤としても使用される。そのような樹脂としては、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂がある。
【0025】
これらの樹脂の配合量としては、1〜30重量%がよく、より好ましくは1〜20重量%である。その配合量が1%重量未満であると粘度調整やペン先での摩耗が困難となり、30重量%超だと樹脂以外の原材料が配合できなくなったり、書き味に悪影響を及ぼすことになる。
【0026】
本発明のインキ組成物の色材に顔料を使用する場合、用いる分散剤としては上記に挙げたような樹脂の中から顔料を分散できるものを選択して使用することができ、活性剤やオリゴマーでも目的に合えばどの様なものでも種類を問わない。具体的な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。しかし、特にここではポリビニルブチラールが好適に使用され、特に重合度200以上〜500以下の計算分子量10,000〜30,000のボリビニルブチラールが好適に使用されることができる。これらの添加量は0.01〜10重量%までの間で使用される顔料の特性や添加量によって異なる。
【0027】
さらに、本発明のボールペン用油性インキ組成物では、必ず重合度900(計算分子量60,000)以上の高重合度ポリブチルビニラールを使用する。これは、インキの内部凝集力をコントロールする原材料であり、これを添加することにより色剤および樹脂を含む500〜3,000 mPa・sの低粘度インキに対しても内部凝集力により転写時の過剰なインキにより発生するボテを回収することを可能にする効果がある。これらの効果を発揮する高重合度ポリブチルビニラールの重合度としては900以上であり、それより小さいと全く効果を示さない。本発明のインキ組成物において、この高重合度ポリブチルビニラールの添加量は、インキ組成物に対して0.01〜1.5重量%と非常に低い量にすべきである。添加量において0.01重量%より低いと上記ボテ現象に対して過剰なインキを回収する効果がなく、また1.5重量%より高いと粘度が上がりすぎたり、原材料に対して悪影響を及ぼすこととなる。なお、使用する溶剤によっても内部凝集力の付き方が変わるため、主溶剤によっては補助溶剤の選択によってその溶存状態をコントロールすることでボテ現象の低減の度合いは変わることがある。
【0028】
また、好ましくは、本発明のインキ組成物にはボール周囲のインキ乾燥凝固物を取れ易くするためにリン酸エステルを使用する。特に樹脂や色材その他の成分が原因でボール周囲にインキ乾燥凝固物が形成され易いが、リン酸エステルを添加するとインキ乾燥凝固物を取れ易くする効果がある。また、高重合度ポリブチルビニラールはその内部凝集力でボール表面を濡れにくくする作用があり、リン酸エステルと協働する。
【0029】
リン酸エステルとしては、通常、リン酸モノエステル、ジエステル及び微量のトリエステルからなるものであり、エステル構造も芳香族や脂肪族の2系統がある界面活性剤が主である。リン酸エステル構造を形成し得るアルキル基に関しては、天然及び合成の高級アルコール等から得られるアルキル基を導入している。炭素数10〜20のアルキル基と0〜50のポリオキシエチレン鎖を有するリン酸エステルが使用される。特に炭素数15〜20のアルキル基と0〜4個のポリオキシエチレン鎖を有する様なリン酸エステルが好適である。
【0030】
リン酸エステルは中和物にするためにアミン系物質との混合物として使用することが好ましい。中和するためのアミン系物質としてはアルカノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、両性界面活性剤、脂肪アミン系物質などのアミン系化合物で中和することが望ましい。
【0031】
リン酸エステル及びアミン系化合物の添加量に関しては、中和による混合物でインキ組成物の0.01重量%〜15重量%を配合することが好ましいが、より好適には0.1〜10重量%である。また、特に好適には0.1〜8重量%である。これらは0.01重量%未満だとボール表面のインキ凝着物を取り除き易くすることができない。また、15重量%超配合してしまうと描線品位としてボールからはじかれ過ぎて描線割れが生じやすくなる等の不具合を起こし易くなってしまう。
【0032】
更に、本発明では必要に応じて、インキに悪影響を及ぼさず相溶することができる防錆剤、防黴剤、界面活性剤、潤滑剤及び湿潤剤等を配合することができる。特に脂肪酸などは、潤滑剤として好適に使用できる。また、乾燥抑制用添加剤として製品特性上、悪影響を及ぼさない範囲で主溶剤に相溶する不揮発性溶剤等も配合することができる。
【0033】
本発明のインキ組成物をボールペンに用いる場合には、インキ追従体をボールペン後端部に付与することが好ましい。使用する溶剤は揮発性があるので、揮発防止、吸湿性防止、インキ漏れ防止としてインキ追従体を添加するものである。
【0034】
インキ追従体としては、インキに使用する溶剤に対して低透過性、低拡散性が必要であり、そのベースとしては不揮発性や難揮発性の流動体、具体的には、ポリブテンや流動パラフィン等、請求項に示す溶剤と基本的に相溶性を有さない非シリコン系の油脂類を使用することができる。これらの物質の粘度が低い場合、増粘剤やゲル化剤を用いるとよい。具体的には、金属セッケン類、ベントナイト類、脂肪酸アマイド類、水添ヒマシ油類、酸化チタンやシリカやアルミナ等を含む金属微粒子類、セルロース類、エラストマー類等が挙げられる。
【0035】
この様な効果を発揮する理由としてはインキ組成物に特徴があり、従来の様にインキの粘度を10,000 mPa・s程度に調整したり、インキ収容管内径やペン先のクリアランス等の構造上の設計からインキ流出機構を制限したり、インキに無機フィラー粒子を添加する等をしてチキソトロピー性を持たせたり、高分子量のポリビニルピロリドンを添加することでボテ現象を発現させるわけでなない。特に高分子量ポリビニルピロリドンを使用できない理由としては、吸湿性が高い主溶剤に対して高分子量ポリビニルピロリドンを使用してしまうと高温多湿下では吸湿が激しくなり、インキ中の水分量が激増し、それに伴って粘度も低下する。その結果、チップ先端からのインキ垂れが誘発する描線へのインキ溜まりの落下がボールペンとしての描線品位が低下してしまう。また、更に水分量が増え続けるとインキ中の原材料の析出なども生じ、筆記性能への不具合を増長させてしまう結果となる。ポリビニルピロリドンの様な吸湿が起こらず、内部凝集力を高める高分子としてここでは高重合度ポリビニルブチラールを使用した。特に分子内のブチラール化度が少なく、水酸基量が高く、高重合度のものほどボテ現象を抑制する効果は大きくなる傾向がある。以上のことから高重合度ポリビニルブチラールを使用することで非常にボテ現象を発現させ難いボールペン用油性インキ組成物を提供することが可能となった。
【0036】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、この実施例によって限定されるものではない。
【0037】
インキの調製として使用するリン酸エステル中和物に関しては、リン酸エステルとアミン系化合物各々2%の主溶剤溶液に調製したもので中和滴定を行い中和点を得る。この中和比を用いて所定の値で混合することでリン酸エステル中和物とする。
【0038】
以下の実施例及び比較例で用いた成分は下記のものである。
【0039】
YP90L:テルペンフェノール樹脂
スピロンバイオレットC−RH:メチルバイオレッドを母体として酒精溶性染料
スピロンイエローC−GNH:酒精溶性黄染料
Printex#35:デグッサ社製カーボンブラック
ハイラック110H:アルコール可溶性樹脂
スピロンブルーC−RH:酒精溶性青染料
クロモフタルブルーA−3R:インダスレン(顔料)
クロモフタルバイオレットB:ジオキサジンバイオレット(顔料)
ポリビニルピロリドンK−90:ポリビニルピロリドン樹脂
実施例1〜4、比較例1〜4は以下の通りである。なお以下の配合量は重量基準である。
以上の様に実施例や比較例で得られたインキを充填し、下記評価テストを行った。
【0040】
1)ボテ現象評価(官能評価):
25℃65%条件下にてペンを60°に傾け、定規にて30cm直線書きを連続で3回行い、ペン先に付着するインキの程度を観察する。
【0041】
インキ溜まりが少なくきれいなもの:○
インキ溜まりがあり多少汚れるもの:△
インキの溜まりが多く汚れがひどいもの:×
試験に用いたボールペンは、内径1.60mmのポリプロピレンチューブ、ステンレスチップ(ボールは超硬合金で、直径1.0mmである)を有するものである。また、充填した後、25℃65%条件下にて30分後に下記評価を行う。
【0042】
2)多湿度経時ボテ現象評価(官能評価):
50℃80%の高温槽に2週間ペン体を横向きに放置し、取り出した後、25℃65%条件下にて1日放置した後、同条件下にてペンを60°にセットし、200gの荷重をかけ、接触する紙を4.5m/min の速度で動かし、その筆記描線を観察する。
【0043】
筆記描線にインキ汚れが少なくきれいなもの:◎
筆記描線にインキ汚れが多少あるが、比較的きれいなもの:○
筆記描線にインキ汚れが多くきれいではないもの:△
筆記描線にインキ汚れが極端に多くきたないもの:×
試験に用いたボールペンは、内径1.60mmの金属製チューブ、ステンレスチップ(ボールは超硬合金で、直径1.0mmである)を有するものである。また、充填した後、25℃65%条件下にて30分後に下記評価を行う。
【0044】
【表1】
【0045】
以上の結果から明らかなように本発明の範囲となる実施例1〜4のインキ組成物は、本発明の範囲外となる比較例1〜4のインキ組成物に比べて筆記によるインキのペン先への拡張濡れ(付着ボテ)やそれを伴い紙面に対するインキのボタ落ち(描線ボテ)を極力抑制することに優れていることが判明した。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の方法とは異なり、インキの内部凝集力をコントロールすることによりボテ現象を抑制することを可能にしたボールペン用油性インキ組成物が提供される。
Claims (5)
- 色材は、顔料あるいは顔料と染料併用であることを特徴とする請求項1記載のボールペン用油性インキ組成物。
- さらに顔料分散剤として重合度900以下のポリビニルブチラールを使用することを特徴とする請求項1または2に記載のボールペン用油性インキ組成物。
- 前記顔料分散剤として重合度200以上〜500以下のポリビニルブチラールを使用することを特徴とする請求項3に記載のボールペン用油性インキ組成物。
- 添加剤としてリン酸エステル中和物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のボールペン用油性インキ組成物。
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