JP4171856B2 - テーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムの製造方法 - Google Patents

テーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムと混合することによって、低発熱性を示し、ウェットスキッド抵抗性、引張強度および耐摩耗性に優れるテーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムに関する。
【0002】
【従来の技術】
省資源や環境対策などが重視されるにつれて、自動車の低燃費化に対する要求がより厳しくなり、自動車タイヤについても、転動抵抗を小さくすることにより低燃費化することが求められている。一般に、タイヤの転動抵抗を小さくするためには、タイヤ材料として低発熱性の架橋ゴムが用いられる。
【0003】
一方、タイヤは、自動車の安全性のために、制動距離を縮めることが求められている。ウェットスキッド制動性として表される、ウェット路面での制動距離を縮めるためには、一般に高発熱性の架橋ゴムが用いられる。
【0004】
これらの相反する特性を満足させるため、ジエン系ゴム分子にベンゾフェノン化合物を反応させることにより変性する方法(特開昭58−189203号公報など)や、置換アミノ基やアルコキシシリル基を導入したジエン系ゴムに補強剤としてシリカを配合したゴム組成物を用いる方法(特開昭64−22940号公報、特開平9−151275号公報、特開平9−151276号公報、特開平9−208621号公報、特開平9−227628号公報、特開平9−235324号公報など)など、変性ゴムを用いる方法が提案されている。しかし、低発熱性と高発熱性のバランスを取ることは困難であり、これらの方法では、低燃費性とウェットスキッド制動性を十分に満足させたものは得られなかった。
【0005】
低燃費性とウェットスキッド制動性のバランスを取れたゴムとして、これらの変性ゴムのほかに、重合体分子の分子量に対してスチレン単位含有率を連続的に変化させたスチレン−ブタジエン共重合ゴムが提案されている(特開昭57−53511号公報など)。しかし、このスチレン−ブタジエン共重合ゴムは、原則的に複数種の共重合ゴムのブレンドしたものである。一連の重合工程で一括して製造する方法も開示されているが、重合工程を複数段階に別けて各段階で重合開始剤と単量体を追加して製造しており、各工程では前工程に引き続いて重合が進行する重合体分子のほかに、同時に新たに重合が開始された重合体分子が加わっており、得られるものは、複数種の共重合ゴムのブレンド物である。そのため、一定の品質の共重合ゴムを製造するのが困難であったり、品質の変更が困難なものであった。また、このスチレン−ブタジエン共重合ゴムを天然ゴムに配合してタイヤのゴム成分として用いると、耐摩耗性やウェットスキッド制動性に優れてはいるものの、厳しくなった低燃費化要求を満足させるものではなかった。
【0006】
テーパード・スチレン−ブタジエン共重合ゴムとして、ブタジエン単位中のビニル結合単位量の大きいものを用いることによって、天然ゴムなどとの相溶性を与えて防振ゴム用に用いることが提案されている(特開平1−167346号公報など)。しかし、このゴムと天然ゴムなどとの組成物は、損失係数の温度分散プロファイルが一山となり、かつ損失係数のピーク位置が低温にシフトしてしまうことから、0℃付近の損失係数が低く、ウェットスキッド抵抗性に劣り、タイヤ用ゴム組成物としては用いることができなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低発熱性とウェットスキッド抵抗性に優れ、しかも優れた引張強度と耐摩耗性を有するタイヤ用材料として用いることができるテーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムを提供することにある。
【0008】
【問題を解決するための手段】
本発明者は、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究を重ねた結果、テーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムであって、重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位量の変化が特定のものに、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムを配合することにより、該テーパードゴムの構造の一部分が天然ゴムまたは合成イソプレンゴムと相溶し、残部が相溶せず、発熱性、ウェットスキッド抵抗性、引張強度および耐摩耗性に優れるゴム組成物を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明によれば、炭化水素溶媒中、極性化合物存在下、有機金属化合物を開始剤として、共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体からなる単量体混合液を重合して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量分布曲線のピークの頂点に対応する分子量をMpとすると、[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]/[分子量Mpを有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]の値が1.12〜1.3であるテーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムを製造する方法であって、テーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムにおける、単量体混合液の重合転化率が0重量%から30重量%の間において重合される部分の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が25〜70重量%、単量体混合液の重合転化率が40重量%から50重量%の間において重合される部分の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が18重量%〜50重量%、単量体混合液の重合転化率が60重量%から100重量%の間において重合される部分の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が20重量%以下となるように、単量体混合液の芳香族ビニル系単量体の量を調節するテーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムの製造方法が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
(テーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴム)本発明のテーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴム(a)(以下、テーパードゴム(a)という)は、直鎖状の重合体であって、重合開始点から、他端に向かって、芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が連続的に減少し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量分布曲線のピークの頂点に対応する分子量、いわゆるピークトップ分子量の大きさをMpとすると、[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]/[分子量Mpを有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]の値が1.12〜1.3の重合体である。
【0013】
重合開始点から、他端に向かって、芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が連続的に増加するとは、重合体分子鎖中の部分での芳香族ビニル系単量体単位量の重分率が、重合開始点から他端に向かって徐々に増加していくことである。例えば、重合体分子鎖中に二つ以上の部分を選んだ場合に、常に、重合開始端に近い部分よりも重合開始端から遠い部分が芳香族ビニル単量体単位の重量分率が、大きくなることである。その場合、芳香族ビニル単量体単位の重量分率を比較する重合体分子鎖の部分の分子量の下限は、好ましくは2000、より好ましくは4000、特に好ましくは10000である。各部分の分子量が小さくなりすぎると、わずかなバラツキで、一見、芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が減少したような結果となる場合がある。
【0014】
本発明のテーパードゴム(a)においては、共役ジエン系単量体単位の重量分率の下限は、好ましくは50重量%、より好ましくは60重量%、特に好ましくは70重量%であり、上限は、好ましくは90重量%、より好ましくは88重量%、特に好ましくは85重量%である。芳香族ビニル系単量体単位の割合の下限は、好ましくは10重量%、より好ましくは12重量%、特に好ましくは15重量%であり、上限は、好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%、特に好ましくは30重量%である。
【0015】
テーパードゴム(a)の重合体分子は、共役ジエン系単量体単位の重分率が大きく、かつ共役ジエン系単量体単位中のビニル結合単位の割合が大きい部分ほど、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムと相溶しやすく、逆に共役ジエン系単量体単位重量分率が少ない部分ほど、または共役ジエン系単量体単位中のビニル結合単位量の割合が小さい部分ほど、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムと相溶しにくい。重合体分子中の天然ゴムまたは合成イソプレンゴムと相溶しやすい部分と相溶しにくい部分の大きさのバランスによって、様々な特性が示される。重合体分子中の天然ゴムまたは合成イソプレンゴムと相溶しやすい部分が大きすぎ、相溶しにくい部分が小さすぎると、本発明のゴム組成物のウェットスキッド抵抗性が十分でない場合がある。重合体分子中の天然ゴムまたは合成イソプレンゴムと相溶しやすい部分が小さすぎ、相溶しにくい部分が大きすぎると、本発明のゴム組成物の低発熱性、引張強度、耐摩耗性などが劣る場合がある。
【0016】
共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンなどが好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン系単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明のテーパードゴム(a)中において、共役ジエン系単量体単位中のビニル結合単位の割合(共役ジエン系単量体単位全量に対する、1,2−ビニル結合した単位量および3,4−ビニル結合した単位量の総量の割合)は、一定であっても、分子鎖に沿って増加または減少していてもよい。一般には、共役ジエン系単量体単位中のビニル結合単位の割合は、芳香族ビニル系単量体単位の割合の増加や重合温度の上昇にともなって減少し、後述の極性化合物の添加量が増加するのにともなって増加する。
【0018】
テーパードゴム(a)中において、共役ジエン系単量体単位中のビニル結合単位の重量分率の下限は、好ましくは50重量%、より好ましく55重量%、特に好ましくは60重量%であり、上限は、好ましくは90重量%、より好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%である。共役ジエン系単量体単位中のビニル結合単位の割合が小さすぎると、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムとの相溶性が悪く、ゴム組成物が低発熱性、引張強度、耐摩耗性などに劣る場合があり、大きすぎると製造が困難な場合がある。
【0019】
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレンなどを挙げることができる。これらの中でも、スチレンが特に好ましい。これらの芳香族ビニル系単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0020】
本発明のテーパードゴム(a)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)分析において、[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]/[分子量Mpを有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]の値の下限は、1.12、より好ましくは1.15であり、上限は、1.3、好ましくは1.25、より好ましくは1.2である。この値が大きすぎると本発明のゴム組成物のウェットスキッド抵抗性が不十分な場合があり、小さすぎると本発明のゴム組成物の低発熱性、引張強度、耐摩耗性などに劣る。
【0021】
本発明のテーパードゴム(a)に含有されるMpの60%の分子量を有する重合体分子は、重合中に重合体鎖の活性末端に結合した有機活性金属が何らかの理由で失活したものが主成分であり、分子量Mpを有する重合体分子と比較することにより、テーパードゴム(a)中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率の変化を示す指標のひとつとなる。
【0022】
なお、[分子量Mpを有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]と、[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]は、GPCでのそれぞれの分子量に対応する溶出成分を示差屈折計で測定した吸収強度、紫外分光検出器で測定した吸収強度、赤外分光検出器で測定した吸収強度などにより測定することができる。
【0023】
本発明のテーパードゴム(a)中において、芳香族ビニル系単量体単位の重量分率は、分子鎖の重合開始端から他方の末端に向かい連続的に減少する。テーパードゴム(a)を製造するには、[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]/[分子量Mpを有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]の値が上記のようになるように、かつ、テーパードゴムとなるように、重合転化率に応じて、重合反応液中の芳香族ビニル系単量体量を調節すればよい。本発明のテーパードゴム(a)においては、重合転化率0重量%から30重量%の間に重合された部分の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率の下限は、好ましくは25重量%、より好ましくは28重量%、特に好ましくは30重量%であり、上限は、好ましくは70重量%、より好ましくは60重量%、特に好ましくは55重量%である。また、重合転化率40重量%から50重量%の間に重合された部分の芳香族ビニル系単量体単位の重分率の下限は、好ましくは18重量%、より好ましくは20重量%、特に好ましくは22重量%であり、上限は、好ましくは50重量%、より好ましくは45重量%、特に好ましくは40重量%である。さらに、重合転化率60重量%から100重量%の間に重合された部分の芳香族ビニル系単量体単位の重分率の上限は、好ましくは20重量%、より好ましくは15重量%、特に好ましくは13重量%である。
【0024】
テーパードゴム(a)中の重合転化率0重量%から30重量%の間に重合された部分において、芳香族ビニル単量体単位の重分率が小さすぎると、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムとの相溶性が高くなり、ウェットスキッド抵抗性が下がる場合があり、多すぎると、低発熱性に劣る場合がある。重合転化率40重量%から50重量%の間に重合された部分において、芳香族ビニル単量体単位の重量分率が少なすぎると、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムとの相溶性が高くなり、ウェットスキッド抵抗性が下がる場合があり、多すぎると、芳香族ビニル単量体の重分率を連続的に変化させることが難しく、低温での硬度が高くなりすぎる場合があり、ウェットスキッド抵抗性が下がる場合がある。重合転化率60重量%から100重量%の間に重合された部分において、芳香族ビニル単量体単位の重分率が多すぎると、天然ゴムまたは合成イソプレンゴムとの相溶性が下がる場合があり、引張強度、耐摩耗性などが劣る場合がある。
【0025】
本発明のテーパードゴム(a)中において、共役ジエン系単量体単位中の1,4−結合単位の割合(共役ジエン系単量体の全量に対する、1,4−シス結合単位と1,4−トランス結合単位の総和)の変化が小さいことが好ましい。テーパードゴム(a)を分子量で十等分した各部分の共役ジエン系単量体単位中の1,4−結合単位の割合を測定し、その最大値と最小値の差の上限は、好ましくは25モル%、より好ましく20モル%、特に好ましくは15モル%である。この差が大きすぎると、架橋ゴム組成物の架橋密度分布が不均一になり、引張強度、耐摩耗性などに劣る場合がある。
【0026】
本発明のテーパードゴム(a)の分子量は、特に限定されないが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーのポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限は、好ましくは50,000、より好ましくは100,000、特に好ましくは150,000であり、上限は、好ましくは2,000,000、より好ましくは1,500,000、特に好ましくは1,200,000である。重量平均分子量(Mw)が、小さすぎると本発明のゴム組成物は、低発熱性、ウェットスキッド抵抗性、引張強度、耐摩耗性などが劣る場合があり、大きすぎるとゴム組成物の加工性が劣る場合がある。
【0027】
本発明のテーパードゴム(a)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)の下限は、好ましくは1.05、より好ましくは1.1であり、上限は、好ましくは3.5、より好ましくは3、特に好ましくは2.5である。テーパードゴム(a)の分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると加工性、耐摩耗性などが劣る場合があり、大きすぎると発熱性や引張強度が劣る場合がある。
【0028】
(テーパード・芳香族ビニル系単量体−共役ジエン系単量体共重合ゴムの製造方法)
本発明のテーパードゴム(a)の製造方法は特に限定されない。例えば、炭化水素溶媒中、極性化合物存在下、有機活性金属を開始剤として、重合の進行に合わせて、供給する単量体混合液の組成を変化させながら、重合すればよい。
【0029】
この重合工程で用いられる炭化水素溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0030】
極性化合物としては、エーテル化合物、三級アミン、アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられ、エーテル類と三級アミンが好ましい。
【0031】
有機活性金属としては、有機アルカリ金属が好ましく、有機モノリチウム化合物や多官能性有機リチウム化合物などの有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物などが挙げられ、有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物が特に好ましい。
【0032】
炭化水素溶媒の使用量は特に限定されないが、単量体濃度が1〜50重量%になるように用いることが好ましい。有機活性金属の使用量は、要求される生成重合体の分子量によって適宜選択されるが、単量体100g当り、0.1〜30ミリモルが好ましい。
【0033】
開始剤として用いる有機活性金属1モルに対する極性化合物の使用量の下限は、好ましくは0.1モル、より好ましくは0.3モル、特に好ましくは0.5モルであり、上限は、好ましくは100モル、より好ましくは50モル、特に好ましくは30モルである。極性化合物の使用量が少なすぎると、共役ジエン結合部分のビニル結合割合を十分に高くすることができず、用途によっては問題となる場合があり、多すぎてもビニル結合割合は大きくなりにくい。
【0034】
重合反応は、好ましくは−78〜150℃の範囲で、回分式あるいは連続式などの重合様式で行われ、好ましくは回分式で行われる。芳香族ビニル系単量体単位がランダムに結合していくように、また、重合が進むに従って、本発明のテーパードゴム(a)の芳香族ビニル系単量体単位の重量基準の割合が減少するよう、単量体混合液の芳香族ビニル系単量体と共役ジエン系単量体の組成比を変化させつつ、重合反応液に単量体混合液を連続的あるいは断続的に供給する。
【0035】
テーパードゴム(a)の有機活性金属と結合している重合体鎖末端を変性剤と反応させた末端変性テーパードゴムや、有機アルカリ金属アミドを開始剤として用い重合開始端を変性させた末端変性テーパードゴムとしてもよい。末端変性による変性率が大きいほど、一般的に、ウェットグリップ性、低発熱性が改善される。変性剤を重合体鎖と反応させた場合には、有機活性金属結合部位に極性基を重合体鎖に導入することができる。
【0036】
変性剤は、重合体鎖に錫原子、窒素原子などを導入できるものが好ましい。錫原子を導入できる変性剤としては、トリメチルモノクロルスズ、トリフェニルモノクロルスズなどが挙げられる。窒素原子を導入できる変性剤としては、 N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタアクリル酸のエステルなどのN,N−ジ置換アミノアルキルアクリレートまたはN,N−ジ置換アミノアルキルメタクリレート化合物;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのN,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミド化合物またはN,N−ジ置換アミノアルキルメタクリルアミド化合物;N,N−ジメチルアミノエチルスチレンなどのスチレン誘導体などのN,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物またはピリジル基を有するビニル化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのN−置換環状アミド類;1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンなどのN−置換環状尿素類;4、4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのN−置換アミノケトン類;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドなどのN−置換アミノアルデヒド類;ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのN−置換カルボジイミド類; N−エチルエチリデンイミン、N−メチルベンジリデンイミンなどのシッフ塩基類;2、4−トリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類、およびその重合物などが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物、N−置換環状アミド類、N−置換アミノケトン類が好ましく、特にN,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N−フェニル−2−ピロリドン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0037】
変性剤の使用量は、共役ジエン系ゴムに要求される特性によって適宜選択され、好ましくは、有機活性金属に対して、0.1〜50当量である。
【0038】
これらの変性剤で重合体鎖を変性後、末端変性重合鎖がモノマーと重合可能な場合、さらにモノマーを添加し重合しても構わない。
【0039】
末端変性後に、さらに変性処理を行ってもよい。例えば、重合体鎖に第三級アミノ基が導入されている場合、四級化剤で処理し、第三級アミノ基を第四級アミノ基に変えてもよい。そのような四級化剤としては、硝酸アルキル、アルキル硫酸カリウム、ジアルキル硫酸、アリールスルホン酸アルキルエステル、ハロゲン化アルキル、金属ハロゲン化物などが挙げられる。
【0040】
変性反応における反応温度および反応時間は、広範囲に選択できるが、好ましくは15〜120℃、1秒〜10時間である。変性率は、全重合体中の末端変性された重合体分子の割合であって、好ましくは10〜100重量%である。変性率は、GPCの示差屈折計で測定した示差屈折率(RI)に対する紫外可視分光光度計で測定した吸収強度(UV)の割合(UV/RI)を求め、予め作成した検量線によって決定することができる。
【0041】
重合反応終了後、または重合反応後の変性反応終了後に、重合体末端に結合したままの有機活性金属を失活させて除去するために、重合反応液に反応停止剤を添加として重合反応を停止する。反応停止剤としては、メタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。有機活性金属に対する反応停止剤の添加量の下限は、好ましくは1当量、より好ましくは1.5当量、特に好ましくは2当量であり、上限は、好ましくは50当量、より好ましくは20当量、特に好ましくは10当量である。反応停止剤の添加量が少なすぎると、重合反応が完全に停止せず、テーパードゴム(a)の安定性が問題となる場合があり、過剰に添加しなくても、重合反応は実質的に停止する。
【0042】
反応停止工程後の重合反応液に、必要に応じて、配合剤を添加してもよい。次工程で溶媒除去や乾燥の工程で重合体が加熱される場合は、特にフェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤をこの工程で添加することが好ましい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて決めればよい。
【0043】
また、テーパーゴム(a)は、重合反応液に配合剤としてプロセスオイルを添加し、油展ゴムとしてもよい。
【0044】
テーパードゴム(a)の回収方法は特に限定されない。例えば、重合反応液を加熱などにより乾燥させて溶媒を除去する直接乾燥方法、重合したゴムの貧溶媒中に重合反応液を注ぎ込んで析出させたゴムを濾別などにより回収し、乾燥して溶媒を除去する方法、重合反応液に高温のスチームを吹き込んで溶媒を除去すると共にスチームが冷却さて生成した水中にゴムをクラム状に析出させ、濾別などにより回収し、乾燥して水分を除去するスチームストリッピング法などがある。また、これらの方法で金属残渣などの不純物が十分に除去できない場合は、ゴムの良溶媒に溶解し、貧溶媒中で析出させる処理を繰り返して洗浄して、ゴムを回収してもよい。
【0045】
(カップリング型テーパードゴム)
本発明のカップリング型テーパードゴム(b)は、上記のテーパードゴム(a)の複数の重合体分子の末端同士を結合させたカップリング型ゴムである。
【0046】
カップリング型テーパードゴム(b)を製造するには、テーパードゴム(a)の製造において、重合反応停止工程前に、有機活性金属と結合している重合体鎖末端をカップリング剤と反応させればよい。カップリング剤を重合体鎖と反応させることにより、カップリング剤を介して複数の重合体分子重合体鎖が重合体分子の末端に位置する有機活性結合部位で結合し、カップリング型テーパードゴム(b)となる。
【0047】
カップリング剤も、カップリング型テーパードゴム(b)を製造できる限り特に限定されず、スズ系カップリング剤、ケイ素系カップリング剤、不飽和ニトリル系カップリング剤、エステル系カップリング剤、ハライド系カップリング剤、リン系カップリング剤などを挙げることができる。これらのカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
カップリング剤の使用量は、要求される重量平均分子量やカップリング率、カップリング剤の反応性などに応じて適宜選択することができるが、有機活性金属に対して、0.1〜10当量が好ましい。カップリング反応は、好ましくは、0〜150℃で、0.5〜20時間の反応条件で行われる。カップリング率は、適宜選択することができるが、好ましくは10〜100%である。カップリング率は、カップリング反応の前後にGPCにより示差屈折計で測定したピークについて、カップリング反応前のピークと同一位置のカップリング反応後のピークの面積と、カップリング反応後のそれよりも高分子量のピークの面積との比率から求めることができる。
【0049】
カップリング反応終了後の反応停止処理は、反応停止剤の種類と添加量、配合剤の種類と添加量、カップリング型テーパードゴム(b)の回収方法などは、上記テーパードゴム(a)と同様である。
【0050】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、[テーパードゴム(a)またはカップリング型テーパードゴム(b)]と[天然ゴムまたは合成イソプレンゴム]とを含有する。
【0051】
[テーパードゴム(a)またはカップリング型テーパードゴム(b)]と[天然ゴムまたは合成イソプレンゴム]の総量に対して、[テーパードゴム(a)またはカップリング型テーパードゴム(b)]の量の下限は、10重量%、好ましくは20重量%、特に好ましくは40重量%であり、上限は、90重量%、好ましくは85重量%、特に好ましくは80重量%である。少なすぎると、耐摩耗性、低発熱性に劣り、多すぎると、製造上制御が困難である。
【0052】
本発明のゴム組成物は、本発明の目的、効果を阻害しない範囲で、さらにこれら以外に、その他のゴム(c)を混合して用いても良い。混合できるその他のゴムは特に限定されない。ジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴムなどが挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0053】
ゴム組成物中のゴム成分の総量に対する、その他のゴム(c)の量の上限は、好ましくは80重量%、より好ましくは70重量%、特に好ましくは60重量%である。多すぎると、発熱性、ウェットスキッド性、引張強度、耐摩耗性などが劣る場合がある。
【0054】
本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、可塑剤、滑剤、補強材などの配合剤をそれぞれ必要量含量することができる。
【0055】
補強剤としては、シリカ、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどを用いることができる。これらの中でも、特にファーネスブラックが好ましい。ゴム成分100重量部に対する補強剤の配合量の下限は、好ましくは10重量部、より好ましくは20重量部、特に好ましくは30重量部であり、上限は、好ましくは200重量部、より好ましくは150重量部、特に好ましくは120重量部である。
【0056】
また、タイヤ用材料として使用する場合は、補強剤を含有させることが好ましい。補強材としては、シリカ、カーボンブラックなどが例示される。これらは併用してもよい。また、補強剤としてシリカを用いる場合は、シランカップリング剤を添加すると、低発熱性や耐摩耗性がさらに改善されるので好適である。
【0057】
架橋剤としては、ゴムの架橋に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄; ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物; トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメートなどの有機多価アミン化合物; などが挙げられ、これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。
【0058】
ゴム成分100重量部に対する架橋剤の配合量の下限は、好ましくは0.1重量部、より好ましくは0.3重量部、特に好ましくは0.5重量部であり、上限は、好ましくは15重量部、より好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部である。架橋剤の配合量が小さすぎると、発熱性、引張強度、耐摩耗性が劣る場合があり、大きすぎるとウェットグリップ性や耐摩耗性に劣る場合がある。
【0059】
架橋促進剤も、ゴムの架橋において使用されるものであれば特に限定されず、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などの架橋促進剤が挙げられる。
【0060】
ゴム成分100重量部に対する架橋促進剤の配合量の下限は、好ましくは0.1重量部、より好ましくは0.3重量部、特に好ましくは0.5重量部であり、上限は、好ましくは15重量部、より好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部である。
【0061】
架橋活性化剤もゴムの架橋において使用されるものであれば、特に限定されず、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸、酸化亜鉛などが挙げられる。架橋活性化剤の配合割合は、架橋活性化剤の種類により適宜選択される。
【0062】
その他の配合剤も、ゴムに配合されるものであれば特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填剤;プロセス油、ワックスなどが挙げられる。
【0063】
本発明のゴム組成物は、各成分を混合することにより得ることができる。例えば、架橋剤と架橋促進剤を除く配合剤とゴム成分を混合後、その混合物に架橋剤と架橋促進剤を混合してゴム組成物を得ることができる。架橋剤と架橋促進剤と除く配合剤を混合する場合は、ゴム成分の混練終了時の温度の下限は、好ましくは80℃、より好ましくは90℃、特に好ましくは100℃であり、上限は、好ましくは200℃、より好ましくは190℃、特に好ましくは180℃である。また、混合時間の下限は、好ましくは30秒、より好ましくは1分であり、上限は、好ましくは30分である。混合温度が高すぎると、混合中にゴム組成物が焼けてしまう場合があり、低すぎると配合剤とゴムが均一に混合できず、発熱性、耐摩耗性に劣る場合がある。混合時間が短すぎると、配合剤とゴムが均一に混合できず、発熱性、耐摩耗性に劣る場合があり、長すぎると混合中にゴム組成物が焼けてしまう場合があり、また、ある程度以上の時間混合しても、配合剤とゴムの均一化が進行し難い。
【0064】
架橋剤と架橋促進剤の混合は、上記混合物の冷却後に行うのが好ましく、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下まで冷却後に行う。混合時の温度が高すぎると、混合時に架橋が開始してしまうため、加工性が問題となり、また、目的の架橋成形品を得るのが困難になる。
【0065】
架橋剤と架橋促進剤を配合した場合、本発明のゴム組成物は架橋することができる。架橋温度の下限は、好ましくは120℃、より好ましくは140℃であり、上限は、好ましくは200℃、より好ましくは180℃である。
【0066】
(用途)
本発明のゴム組成物は、例えば、オールシーズンタイヤ、スタッドレスタイヤなどのタイヤトレッド、サイドウォール、アンダートレッド、カーカス、ビード部などのタイヤの構造、防振ゴム、ホース、窓枠、ベルト、靴底、自動車部品などのゴム材料として用いることができ、さらに、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂などの製造に用いる改質剤である樹脂強化ゴムとして利用できる。特に、低燃費タイヤと高性能タイヤのタイヤトレッドに適している。
【0067】
【実施例】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
【0068】
(1)重合体中のスチレン単位量は、JIS K6383(屈折率法)に準じて測定した。重合体鎖中の一部のスチレン単位量は、重合反応中にサンプリングした重合反応液を解析した重合転化率と重合反応液中の重合体鎖のスチレン単位の重量分率の関係から求めた。なお、[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中のスチレン単位の重量分率]/[分子量Mpを有する重合体分子中のスチレン単位の重量分率]の値は、標準ポリスチレン換算のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでカラムとしてGMH−HR−H(東ソー社製)を二本連結したものを用い、溶出した液を紫外分光検出器UV−8020(東ソー社製)(検出波長254nm)と示差屈折計RI−8020(東ソー社製)とで測定して求めた吸収強度比(UV/RI)を用いた[ Mpの60%の分子量を有する重合体分子のUV/RI]/[分子量Mpを有する重合体分子のUV/RI]の値である。
【0069】
(2)1,4−結合単位量の最大値と最小値の差(1,4−結合単位量差)は、重合反応中にサンプリングした重合反応液を解析した重合転化率と重合反応液中の重合体鎖における1,4−結合量の関係を求め、そのデータに基づいて、重合体鎖を重量で末端から十等分した各部分の1,4−結合単位量を求め、その最大値と最小値の差として記載した。なお、重合反応液中の重合体鎖における1,4−結合量は、H−NMR分析(5.4−5.6ppm)で求めた。
【0070】
(3)重合体中のブタジエン単位中のビニル結合単位含量は、赤外分光法(ハンプトン法)で測定した。
【0071】
(4)重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)で測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。GPCはHLC−8020(東ソー社製)で、カラムとしてGMH−HR−H(東ソー社製)を二本連結したものを用い、検出は、示差屈折計RI−8020(東ソー社製)を用いて行った。
【0072】
(5)引張強度は、JIS K6301に準じて300%応力(kgf/cm2)を測定した。この特性は、指数(引張強度指数)で表示した。この値は大きいほど好ましい。
【0073】
(6)発熱性は、RDA−II(レオメトリックス社製)を用い、0.5%ねじれ、20Hz、60℃のtanδを測定した。この特性は、指数(発熱指数)で表示した。この値は、高いほど好ましい。
【0074】
(7)ウェットスキッド抵抗性は、レオメトリックス社製RDA−IIを用い、0.5%ねじれ、20Hz、0℃のtanδを測定した。この特性は、指数(発熱指数)で表示した。この値は、高いほど好ましい。
【0075】
(8)耐摩耗性は、JIS−K6264に従い、ランボーン摩耗試験機を用いて測定した。この特性は、指数(耐摩耗指数)で表示した。この値は、大きいほど好ましい。
【0076】
実施例1
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、スチレン200g、1,3−ブタジエン100gおよびテトラメチルエチレンジアミン12ミリモルを仕込んだ後、n−ブチルリチウム7.8ミリモルを加え、40℃で重合を開始した。重合開始3分後から7分間かけて、1,3−ブタジエン130gを一定速度で連続的に添加し、重合開始10分後から10分間かけて、1,3−ブタジエン100gを一定速度で連続的に添加した。続けて、重合開始20分後から10分間かけて、ブタジエン80gを一定速度で連続的に添加し、重合開始30分後から20分かけて、1,3−ブタジエン50gを一定速度で連続的に添加した。さらに続けて、重合開始50分後から20分間かけて、1,3−ブタジエン250gを一定速度で連続的に添加した。添加終了後20分間反応させた後、重合開始90分後から10分間かけて、1,3−ブタジエン90gを一定速度で連続的に添加した。重合途中5分毎に、反応器から重合反応液を少量採取し、その時点での重合転化率およびスチレン単位の重量分率量を調べた。重合転化率が100%になったことを確認してから、停止剤としてメタノールを12ミリモル添加し、重合停止した重合反応液を得た。重合時の最高到達温度は45℃であった。
【0077】
重合停止した重合反応液中のゴム100重量部あたり2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.15重量部を重合反応液に添加し、スチームストリッピング法により重合体の回収を行い、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて重合体の乾燥を行って、ゴムAを得た。なお、ストリッピング帯の水として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルを30ppm添加したものを用い、ストリッピング帯の水に対して、クラム状のジエン系ゴムの濃度は、5重量%になるようにスチームストリッピングした。
【0078】
ゴムAの[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中のスチレン単位の重量分率]/[分子量Mpを有する重合体分子中のスチレン単位の重量分率]、重合転化率0重量%から40重量%までの間に重合した部分、重合転化率50重量%から60重量%までの間に重合した部分、重合転化率70重量%から100重量%までの間に重合した部分のそれぞれについてのスチレン単位の重量分率およびブタジエン単位中のビニル結合単位量を測定し、さらに、1,4−結合単位量差、全分子中でのスチレン単位の平均重量分率、ブタジエン単位中の平均ビニル結合単位量、Mp、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
比較例1
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、スチレン200g、1,3−ブタジエン40gおよびテトラメチルエチレンジアミン12ミリモルを仕込み、45℃にした、n−ブチルリチウム7.8ミリモルを加えて重合を開始した。重合開始5分後から10分間かけて、1,3−ブタジエン180gを一定速度で連続的に添加し、続けて、重合開始15分後から10分間かけて、1,3−ブタジエン150gを一定速度で連続的に添加し、さらに続けて、重合開始25分後から20分間かけて、1,3−ブタジエン80gを一定速度で連続的に添加し、重合開始45分後から20分間かけて、1,3−ブタジエン250gを一定速度で連続的に添加した。20分間反応させた後、重合開始から85分後から10分間かけて、1,3−ブタジエン100gを一定速度で連続的に添加した。重合途中5分毎に、反応器から重合反応液を少量採取し、その時点での重合転化率およびスチレン単位量を調べた。重合転化率が100%になったことを確認してから、停止剤としてメタノールを12ミリモル添加し、重合停止した重合反応液を得た。重合時の最高到達温度は50℃であった。実施例1と同様にして得られた重合体溶液からゴムBを取り出した。
【0080】
ゴムAと同様にゴムBも各値を測定し、その結果を表1に示す。
【0081】
比較例2
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、スチレン150gと1,3−ブタジエン450gおよびテトラメチルエチレンジアミン12ミリモルを仕込んだ後、n−ブチルリチウム9.5ミリモルを加え、40℃で重合を開始した。重合開始10分後から50分間かけて、スチレン50gと1,3−ブタジエン350gの混合物を一定速度で連続的に添加した。重合転化率が100%になったことを確認してから、停止剤としてメタノールを12ミリモル添加し、重合停止した重合反応液を得た。重合時の最高到達温度は60℃であった。実施例1と同様にして得られた重合反応液からゴムCを取り出した。
【0082】
なお、重合途中5分毎に反応器から重合反応液を少量採取し、その際の重合転化率および重合体中のスチレン単位の重量分率を求めた。ゴムAと同様にゴムCも各値を測定し、その結果を表1に示す。
【0083】
実施例2
実施例1と同様の手法にて重合を行い、重合転化率が100%に達した時点で、1,3−ブタジエン5gを添加、次いで、四塩化錫を0.45ミリモル添加し、15分間反応させた。この間、重合開始から5分毎に、また、四塩化錫を添加する直前に、反応器から重合反応液を少量採取し、その時点での重合転化率およびスチレン単位の重量分率を調べた。さらに、4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン4.5ミリモルを添加し10分間反応させた。最後に、停止剤としてメタノールを12ミリモル添加し、重合停止した重合反応液を得た。重合時の最高到達温度は60℃であった。実施例1と同様にして得られた重合反応液からゴムDを取り出した。また、四塩化錫を添加する直前に採取した重合反応液から同様にゴムdを回収した。
【0084】
ゴムdおよびゴムDについて測定した各値を表1に示す。
【0085】
比較例2と同様の手法にて重合を行い、重合転化率が100%に達した時点で、4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの代りにN−メチル−ε−カプロラクタムを用いる以外は実施例2と同様の手法にて反応させてゴムを回収し、ゴムの代わりにゴムeを、ゴムの代わりにゴムE得た。ゴムAと同様にゴムEも各値を測定し、その結果を表1に示す。
【0086】
比較例4
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、スチレン300g、1,3−ブタジエン300gおよびテトラメチルエチレンジアミン12ミリモルを仕込み、40℃にした後、n−ブチルリチウム12.0ミリモルを加え、重合を開始した。重合開始10分後から30分間かけて、スチレン150gと1,3−ブタジエン250gの混合液を一定速度で連続的に添加した。なお、重合途中5分毎に、反応器から重合反応液を極少量採取し、その時点での重合転化率および重合体中のスチレン単位の重量分率を測定した。重合転化率が100%になったことを確認してから、停止剤としてメタノールを20ミリモル添加し、重合停止した重合反応液sf1を得た。重合時の最高到達温度は70℃であった。
【0087】
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、スチレン150g、1,3−ブタジエン670gおよびテトラメチルエチレンジアミン10ミリモルを仕込み、40℃にした後、n−ブチルリチウム7.8ミリモルを加え、40℃で重合を開始した。重合開始20分後から40分間かけて、スチレン5gと1,3−ブタジエン290gの混合液を一定速度で連続的に添加した。重合転化率が100%になったことを確認してから、1,3−ブタジエン20gを添加、次いで、四塩化錫を0.45ミリモル添加し15分間反応させた。なお、重合開始から5分毎に、また、四塩化錫を添加する直前に、反応器から重合反応液を極少量採取し、その時点での重合転化率および重合体中のスチレン単位量を測定した。次いで停止剤としてメタノールを12ミリモル添加し、重合停止した重合反応液sf2を得た。重合時の最高到達温度は70℃であった。
【0088】
重合停止した重合反応液sf1と重合停止した重合反応液sf2を1:9の比で混合し、実施例1と同様にしてsf1とsf2の混合液からゴムFを取り出した。また、同様に重合停止した重合反応液sf1からゴムf1を、重合停止した重合反応液sf2を調製する際の四塩化錫を添加する直前に採取した重合反応液からゴムf2を、重合停止した重合反応液sf2からF2を回収した。
【0089】
得られたゴムf1、f2およびFについて、実施例1と同様に各値を測定した。結果を表1に示す。なお、表1中のゴムHの[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中のスチレン単位の重量基準の割合]/[分子量Mpを有する重合体分子中のスチレン単位の重量基準の割合] の値は、多角度光錯乱検出機を用いて、絶対分子量と分子サイズの関係から、カップリングした分子を除いて、を除いて、直鎖構造の重合体分子のみについて測定した値である。
【0090】
【表1】
Figure 0004171856
【0091】
なお、表1中で、0−30、40−50、60−100とあるのは、それぞれ、重合転化率0重量%から30重量%の間で重合した部分、重合転化率40重量%から50重量%の間で重合した部分、重合転化率60重量%から100重量%の間に重合した部分を表している。
【0092】
実施例3
実施例1で得たゴムA60重量部、天然ゴム(CV−60)40重量部、カーボンブラックN339(シーストKH、東海カーボン社製、HAF−HS、窒素吸着比表面積93m2/g、DBP吸着量119ml/100g)50重量部、プロセス油(フッコールM、富士興産社製)5重量部、ステアリン酸2重量部、亜鉛華3重量部および老化防止剤(ノクラック6C、大内新興社製)1重量部を容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、混練物の排出時の温度が120℃になるようにして4分間混練して組成物を得た。
【0093】
次に、50℃のオープンロールを用いて、上記の組成物に硫黄1重量部および架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)1.7重量部を加えて混練して、架橋性組成物を調製した。
【0094】
得られた架橋性組成物を160℃で15分間プレス架橋して試験片を作成し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
比較例5〜6
実施例1で得たゴムAに代えて、比較例1で得たゴムBまたは比較例2で得たゴムCを用いる以外は実施例3と同様に処理し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
Figure 0004171856
【0097】
なお、表2中指数で示したデータは、比較例のデータを100として表した。
【0098】
実施例4
実施例1で得たゴムA60重量部と天然ゴム40重量部に代えて、実施例2で得たゴムD70重量部と天然ゴム30重量部を用いる以外は、実施例3と同様に処理し、各物性を測定した。結果を表3に示す。
【0099】
比較例7〜8
実施例1で得たゴムAを60重量部と天然ゴムを40重量部用いる代わりに、比較例で得たゴムEまたは比較例4で得たゴムFを70重量部と天然ゴムを30重量部用いる以外は、実施例と同様に処理し、各物性を測定した。結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
Figure 0004171856
【0101】
なお、表3中指数で示したデータは、比較例のデータを100として表した。
【0102】
実施例
実施例2で得たゴムD60重量部、天然ゴム(CV−60)40重量部、シリカ(Zeosil 1165MP)30重量部、シランカップリング剤(Si69)2.4重量部およびプロセス油(フッコールM)10重量部を2分間混練し、シリカ(Zeosil 1165MP)15重量部、シランカップリング剤(Si69)1.2重量部およびステアリン酸1.5重量部を加えて、混練物の排出時の温度が150℃になるようにさらに3分間混練した。この混練物に、50℃のオープンロールを用いて、亜鉛華1重量部および老化防止剤(ノクラック6C)2重量部を配合した。次いで、容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、この混練物の排出時の温度が150℃になるように3分間混練した。最後に、50℃のオープンロールを用いて、この混練物に、硫黄1重量部および架橋促進剤2.5重量部(ジフェニルグアニジン1.1重量部およびN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド1.4重量部)を配合した。
【0103】
得られた組成物を160℃で15分間プレス架橋して試験片を作成し、各物性を測定した。結果を表4に示した。
【0104】
実施例2で得たゴムDに代えて、比較例3で得たゴムEを用いる以外は実施例と同様に処理し、物性を測定した。結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
Figure 0004171856
【0106】
なお、指数で表したデータは、比較例9のデータを100として表した。
【0107】
比較例5のゴム組成物は、本発明の条件を外れた直鎖のテーパードゴム(比較例1で得たゴムB)を天然ゴムに配合しているが、発熱性、ウェットスキッド抵抗性が十分でない。
【0108】
比較例6のゴム組成物は、直鎖のランダム重合体(比較例2で得たゴムC)を天然ゴムに配合しているが、発熱性、ウェットスキッド抵抗性、強度特性、耐摩耗性のいずれもが十分でない。
【0109】
比較例7のゴム組成物は、末端変性カップリング型ランダム重合体(比較例3で得たゴムE)を天然ゴムに配合しているが、発熱性、ウェットスキッド抵抗性、強度特性、耐摩耗性のいずれもが十分でない。
【0110】
比較例8は、ランダム重合体のブレンド物であり、ブレンドするゴムの一部がカップリング型であるゴム(比較例で得たゴム)を天然ゴムに配合しているが、発熱性、ウェットスキッド抵抗性、耐摩耗性のいずれの特性も十分でなく、特に発熱性、ウェットスキッド抵抗性が大きく劣っている。
【0111】
比較例9のゴム組成物は、末端変性カップリング型ランダム重合体(比較例3で得たゴムE)を天然ゴムに配合しているが、発熱性、ウェットスキッド抵抗性、強度特性、耐摩耗性のいずれもが十分でなく、熱性、ウェットスキッド抵抗性、強度特性が大きく劣っている。
【0112】
それに対し、実施例3〜によって、用いるテーパードゴムが直鎖のゴム(実施例1で得たゴムA)であっても、末端変性カップリング型ゴム(実施例2で得たゴムD)であっても、本発明のゴム組成物は、発熱性、ウェットスキッド抵抗性、強度特性、耐摩耗性のいずれの特性も優れることが判る。

Claims (1)

  1. 炭化水素溶媒中、極性化合物存在下、有機金属化合物を開始剤として、共役ジエン単量体および芳香族ビニル単量体からなる単量体混合液を重合して、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量分布曲線のピークの頂点に対応する分子量をMpとすると、[Mpの60%の分子量を有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]/[分子量Mpを有する重合体分子中の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率]の値が1.12〜1.3であるテーパード・芳香族ビニル単量体−共役ジエン単量体共重合ゴムを製造する方法であって、テーパード・芳香族ビニル単量体−共役ジエン単量体共重合ゴムにおける、単量体混合液の重合転化率が0重量%から30重量%の間において重合される部分の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が25〜70重量%、単量体混合液の重合転化率が40重量%から50重量%の間において重合される部分の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が18重量%〜50重量%、単量体混合液の重合転化率が60重量%から100重量%の間において重合される部分の芳香族ビニル系単量体単位の重量分率が20重量%以下となるように、単量体混合液の芳香族ビニル単量体の量を調節するテーパード・芳香族ビニル単量体−共役ジエン単量体共重合ゴムの製造方法。
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