JP4170812B2 - 有機el素子及びその製造方法 - Google Patents

有機el素子及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4170812B2
JP4170812B2 JP2003106560A JP2003106560A JP4170812B2 JP 4170812 B2 JP4170812 B2 JP 4170812B2 JP 2003106560 A JP2003106560 A JP 2003106560A JP 2003106560 A JP2003106560 A JP 2003106560A JP 4170812 B2 JP4170812 B2 JP 4170812B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic
layer
ion beam
ions
cathode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003106560A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004311340A (ja
Inventor
幹宏 山中
淳 工藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2003106560A priority Critical patent/JP4170812B2/ja
Publication of JP2004311340A publication Critical patent/JP2004311340A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4170812B2 publication Critical patent/JP4170812B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL素子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、有機化合物の薄膜に電界を印加して光を放出する有機EL素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子(発光ディスプレイやレーザー素子等)は、強い蛍光性を有する有機絶縁体薄膜の両面に取り付けた陽極及び陰極に直流電圧を印加した際に放出される光を利用するものである。具体的には、直流電圧を印加すると、陽極及び陰極からそれぞれ正負の電荷が注入され、生じた電場により正負の電荷が薄膜中を移動し、ある確率で再結合する。この再結合の際に放出されるエネルギーは、蛍光分子の一重項励起状態(分子励起子)の形成に消費され、その発光量子効率の割合だけ外部に光を放出する。光を放出した後、エネルギーは基底状態に戻る。
【0003】
上記の有機絶縁体薄膜は、例えば電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等からなり、総称して有機EL層と呼ばれる。陰極にはアルミニウムやマグネシウム合金(MgAg、MgCa等)が使われることが多く、陽極には光を取り出すために、ITO等の透明電極が用いられることが多い。また陰極、陽極それぞれと有機EL層の間には、電子注入、正孔注入を効率よく行うためのバッファ層が形成される場合が多い。
【0004】
この有機EL素子の実用化の課題としては、電子、正孔の注入効率の改善、有機EL層を構成する材料自身の発光効率の改善、素子動作時の信頼性の向上等が挙げられる。中でも信頼性の向上に関する課題では、他のディスプレイに比べて、輝度劣化が顕著であること、ダークスポットと呼ばれる非発光領域が存在すること、ダークスポットが径時で拡大していくこと等が挙げられる。
【0005】
信頼性を低下させる原因の一例として、外界からの水分、酸素等の浸入により、特に陰極と有機EL層の界面が剥離することが知られている。そのため、素子を不活性ガス雰囲気の下、ガラス基板や窪みをもった金属缶を、光硬化型エポキシ樹脂で固定する方法が一般的に行われている(特開平9−148066号公報;特許文献1)。また、有機EL素子をガラス封止する方法も知られている。
【0006】
金属缶の窪みには、吸湿剤(保水剤)が添加されており、この保水剤としては、シリカゲルやゼオライト等の物理吸着型や、酸化バリウム、五酸化リン、酸化カルシウムのような化学反応型のものがある。この構造を採用した場合、有機EL素子の断面方向の厚みが1.5〜2.0mmにもなる。
【0007】
近年では、金属缶への固定やガラス封止を行う前に、陽極及び陰極に保護膜を作製することが検討されている。この保護膜の種類には、ポリパラキシリレンのような有機材料のものと、SiO2、SiNx、SiOxNy、MgF、In23等のような無機材料のものが知られている(特開平8−111286号公報;特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−148066号公報
【特許文献2】
特開平8−111286号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、依然として発光効率の劣化による寿命の短さ、ダークスポットの存在は未解決であり、有機EL素子の信頼性を損なっているのが現状である。更に、先述のガラス封止は封止構造により有機ELパネルそのものが厚くなってしまうことも深刻な問題である。また、封止工程は基本的に窒素ガス雰囲気中での作業ではあるが、酸素、水分の存在を完全に除去することは難しいのも現状である。
【0010】
一方、保護膜を作製する場合、別途プラズマCVD装置やRFスパッタ装置を用意する必要があり、製造コストが上がるという課題がある。また、保護膜形成用のプロセスガス(シランガスや酸素ガス等)に素子そのものが曝されて素子特性が劣化する問題、保護膜の製膜に要する時間的ロス、製膜時の100℃以上になるプロセス温度により素子特性が劣化する問題等がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者等は、上記課題を解決するために、有機EL素子にイオンビームを照射することで素子表面を改質したブロック層を形成することで、外界の水分、酸素等の進入を阻害することができることを見い出し本発明に至った。
【0012】
かくして本発明によれば、基板上に、厚さ0.1nm〜10μmの陰極、有機EL層及び陽極の積層体を形成した有機EL素子からなり、前記積層体の側部に露出する前記陰極と前記有機EL層との界面を少なくとも含む前記有機EL素子の表面にイオンビームを照射して表面を改質したブロック層を備え、前記イオンビームが、Gaイオン、Arイオン及びHイオンから選択されるイオンのビームであることを特徴とする有機EL素子が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、基板上に、厚さ0.1nm〜10μmの陰極、有機EL層及び陽極の積層体を形成した有機EL素子の前記積層体の側部に露出する前記陰極と前記有機EL層との界面を少なくとも含む表面にイオンビームを照射して表面を改質したブロック層を形成することからなり、前記イオンビームが、Gaイオン、Arイオン及びHイオンから選択されるイオンのビームであることを特徴とする有機EL素子の製造方法が提供される。
【0014】
有機EL素子において封止技術は、実用化するための重要な要素技術の一つである。有機EL素子に使われている有機材料や陰極金属材料は、いずれも酸素や水分に対して安定な特性を維持できないため、酸素、水分の完全なる排除、もしくはその進入を阻害するための工夫が必要である。本発明は、酸素、水分等の有機EL素子の信頼性を損なう不純物の素子への進入を防ぐことができるブロック層を、イオンビーム照射により素子に作製することを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の有機EL素子を図1に従い説明する。図1は本発明の有機EL素子の模式図であり、1はブロック層、2はイオンビーム、3は陰極、4は有機EL層、5は陽極、6は基板を各々示す。
【0016】
陰極3に用いられる材料は、一般的に低仕事関数の金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属、あるいは、これらを主成分とする合金が望ましい。また、大気中で比較的安定な金属(例えば、Al、Ag等)に低仕事関数の上記金属を微量ドープした材料を用いることも可能である。陰極の厚さは通常0.1nm〜10μmであり、好ましくは50nm〜1μmである。
【0017】
陰極の製造方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法及び塗布法により形成することができる。真空蒸着法では、材料を入れた坩堝を真空容器内に設置して、適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気後、坩堝を加熱して材料を目的の膜厚だけ昇華又は蒸発させることで陰極を形成することができる。塗布法では適当なバインダー樹脂溶液や塗布性改良材に分散した陰極形成用の導電性金属微粒子を、スピンコートやインクジェット等で目的とする箇所へ塗布し、その後熱処理することにより陰極を形成することができる。
【0018】
更に、陰極と有機EL層の間に、陰極バッファ層を含む場合もある。この陰極バッファ層は、陰極と有機EL層との密着性を向上させるとともに、陰極材料の有機発光層側への拡散を防止し、さらに陰極からの電子注入効率を向上させる機能を兼ね備える。
【0019】
陰極バッファ層に用いられる材料は、主としてアルカリ金属ハロゲン化合物、アルカリ土類金属ハロゲン化合物や各種酸化物が挙げられる。具体的にはフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化リチウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム等のハロゲン化合物や酸化リチウム、酸化ルビジウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化セシウム、酸化ストロンチウム、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウム等の酸化物が挙げられる。
【0020】
陰極バッファ層は、通常真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法により形成され、層厚は通常0.2nm〜30nmであり、好ましくは0.2〜15nmである。
【0021】
有機EL層4は、例えば、電界を与えられた陰極及び陽極間において、陰極からの電子を効率よく正孔輸送層の方向に輸送することができる電子輸送層、素子の発光を司り、また発光色を変える目的で作製される発光層、また陽極から注入された正孔を効率よく発光層側へ輸送することができる正孔輸送層等から構成される。なお、電子輸送層及び正孔輸送層は必要に応じて設けられる。
【0022】
電子輸送層には、電子親和力が大きく、電子移動度が大きく、安定性に優れ、製造時や使用時に電子のトラップとなる不純物が発生しにくいことが要求される。このような条件を満たす化合物材料としては、テトラフェニルブタジエン等の芳香族化合物、Alq3等の金属錯体、10−ハイドロキシベンゾ〔h〕キノリン金属錯体、混合配位子アルミニウムキレート錯体、シクロペンタジエン誘導体、ぺリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ぺリレン誘導体、クマリン化合物、希土類錯体、ジスチリルピラジン誘導体、p−フェニレン化合物、チアジアゾロピリジン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ナフチリジン誘導体等が挙げられる。各々の電子輸送層に、上記のような材料を一種、もしくは複数種用いても構わない。
【0023】
電子輸送層は真空蒸着法あるいは塗布法を用いて形成でき、層厚は、通常5〜1000nmであり、好ましくは10〜100nmである。
【0024】
発光層において、発光色を変える例としては、例えば電子輸送材料であるAlq3をホスト材料とし、クマリン等のレーザー用蛍光色素をドープすること等が知られている。電子輸送材料をホスト材料として、蛍光色素をドープすることは、素子の駆動寿命を改善する目的においても重要である。例えばAlq3をホスト材料とし、ルブレンに代表されるナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン誘導体等の縮合多環芳香族環を、ホスト材料に対して0.1〜10重量%ドープすることにより、素子の発光特性、特に駆動安定性を大きく向上させることができる。
【0025】
これら発光層は真空蒸着法、塗布法により形成でき、層厚は、通常5〜200nmであり、好ましくは10〜100nmである。
【0026】
正孔輸送層には、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対する透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性がよく、製造時や使用時に正孔のトラップとなる不純物が発生しにくい、ガラス転移温度が70℃以上である耐熱性に優れた材料が望ましい。このような要求を満たす材料は、例えば、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の芳香族ジアミン化合物、4,4’−ビス〔(N−1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル等の芳香族アミン、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン、N,N,N−トリフェニルアミン誘導体、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−p−キシレン等が挙げられる。
【0027】
正孔輸送層は真空蒸着法、塗布法により形成でき、層厚は、通常5〜200nmであり、好ましくは10〜100nmである。
【0028】
陽極5は、発光層への正孔注入を果たす。陽極は通常インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいはポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成することができる。
【0029】
陽極の厚さは、透明性が要求される場合には、可視光の透過率を60%以上、好ましくは80%以上としうる厚さであることが望ましく、通常5〜1000nmであり、好ましくは10〜500nmである。なお、透明性が要求されず、不透明でよい場合は基板8と同じ材料を用いてもよい。
【0030】
陽極は、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法又は塗布法により形成でき、中でもスパッタリング法や塗布法は一度に大面積が形成可能であるため、比較的よく用いられる。
【0031】
また、正孔注入効率や有機EL層との密着性を改善するために陽極と有機EL層との間に陽極バッファ層を形成してもよい。陽極バッファ層に用いられる材料は、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成できることと、融点が300℃以上、ガラス転移点が100℃以上の熱的安定性を有すること好ましい。更にイオン化ポテンシャルが低く、陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが望ましい。このような要求を満たす材料として、ポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物等が挙げられる。陽極バッファ層は真空蒸着法や塗布法にて形成され、層厚は通常3〜100nmであり、好ましくは10〜50nmである。
【0032】
有機EL素子は、通常支持体となる基板6上に形成される。基板は、ガラスや石英、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等からなる基板が用いられる。特にガラス基板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネイト、ポリスルホン等の透明な合成樹脂基板が望ましい。
【0033】
なお、上記では陽極側から光を取り出す構成を主として説明しているが、陰極側から光を取り出す構成でもよい。また、基板側の裏面から有機EL層を介さす光を取り出す構成、基板の表面から有機EL層を介して光を取り出す構成でもよい。
【0034】
有機EL素子作製後、図1に示すように、積層体の側部に露出する陰極と有機EL層との界面を少なくとも含む有機EL素子の表面にイオンビーム2を照射し、素子の一部にブロック層1を作製する。ブロック層1は、外界の水分、酸素等の各種不純物の拡散を阻害することを所望する上記界面を含む領域に形成される。例えば、有機EL素子の側面、側面と上面、側面と底面又は全面、あるいは有機EL素子を構成する積層体の側面に形成してもよい。図1では、陰極3、有機EL層4、陽極5及び基板6に渡って作製されている。
【0035】
ブロック層は、各層の構成材料中にイオンが含まれた層である。この際イオンビーム種類は各種不純物(例えば酸素、水分)の拡散を妨げるブロック層を形成しうるものなら種類は選ばない。イオンビーム種類としては、例えば、Gaイオン、Auイオン、Arイオン、Hイオン、Oイオン、Csイオン、Naイオン、Mgイオン等が挙げられる。また、イオンビーム照射条件は、各種不純物の拡散を妨げるブロック層を形成しうるものなら特に限定されない。また、有機EL素子側面にブロック層を作製するのと同時に、表面にスパッタリング現象が起きないイオンエネルギー照射条件にてブロック層を作製することを併用しても構わない。
【0036】
図2に本発明の有機EL素子の作製において、イオンビーム2の入射方向を、その素子の積層方向に対して±20°以内までにコントロールすることで素子表面を均一の厚さに改質し、ブロック層1を作製した場合を示す。有限の大きさのビーム径に集束したイオンビームには、その径の中心と円周領域で電流密度が異なるため、ビームを垂直に入射しただけでは、その素子の膜厚によってはブロック層ができない領域が存在する可能性がある。そのため試料に対するイオンビームの入射方向を厳密に制御できる光学レンズシステム、もしくは機械的制御システムを備えることが好ましい。有機EL素子は、通常、各層の総膜厚が3μmにも満たないため、その素子の積層方向に対して±10°まで制御できれば十分であるが、3μm以上の膜厚の厚い素子の場合、±20°までの制御することが好ましい。
【0037】
図3に本発明の有機EL素子の作製において、イオンビーム2の入射方向を試料ステージ7の角度を任意に調整することで、均一の厚さで素子表面を改質してブロック層1が形成できることを示す。この時イオンビームの素子に対する入射方向は±20°以内となることが望ましい。ステージ7の傾斜は簡易にはモータギア等を用いて制御可能である。
【0038】
図2と同様、有機EL素子は、通常、各層の総膜厚は3μmにも満たないため、その素子の積層方向に対して±10°まで制御できれば十分であるが、3μm以上の膜厚の厚い素子の場合、±20°まで制御することが好ましい。
【0039】
図4に本発明の有機EL素子の作製において、イオンビーム2の印加電圧を可変し数eVから数MeVまで連続的にエネルギーを変化させたビームを照射することで、任意の厚さのブロック層1が形成できることを示す。
【0040】
例えばシリコン基板にパラジウムイオンのエネルギーを変化させ照射した場合、約350eVのエネルギーに加速するとスパッタ率は1になり、イオンは基板上に堆積しなくなる。さらに加速エネルギーを上げるとスパッタ現象が顕著となり約80keV位で最大となり、次第に下がり始める。これはイオンが固体中に深く進入し、基板表面の原子をはじき出すことができなくなるからである。
【0041】
一般にイオンと固体の衝突において、イオンのエネルギーが高い場合、イオンは周りの電子の存在が無視できるほど固体構成原子に近づくので、核が作るクーロンポテンシャルのみに影響を受けて散乱される(ラザフォード衝突)。イオンエネルギーが低くなると、原子核周りの電子の存在が無視できなくなり、原子核の作るクーロン場はこの軌道電子により遮蔽されて、あたかも電子雲で囲まれた球が動いているように作用する(剛体球衝突)。この剛体球衝突とラザフォード衝突の境になるエネルギーは、入射イオンの質量が軽い程低く、また基板を構成する原子の原子番号が小さい程低い。
【0042】
水素のような軽いイオンをシリコンに照射したときは約1keVが境のエネルギーであるが、水銀の様な重い原子をシリコンに照射したときは約1.2MeVになる。イオンビームのエネルギーを低くしていくと固体の損傷は低減される。固体表面の原子数を1015個/cm2として考えると、500eVのエネルギーでSiにArイオンビームを照射すると、基板原子は表面から約20層乱されることになる。イオンビームのエネルギーを更に数10eVまで下げるとイオンはもはや基板原子を動かせなくなる。この閾値を基板原子の変位の閾エネルギーと言う。
【0043】
Si基板をArビームで照射した場合、この閾値は22eV程度であるが、Ga又はAsの場合、7〜12eVとなり、材料とイオンビームの組み合わせで異なる。Siに各種原子を注入する場合、例えばArの場合、20keVのエネルギーで21.5nmの位置まで注入され(投影飛程)、60keV、100keVとエネルギーが上がっていくに従って60.9nm、102nmとその飛程が伸びる。
【0044】
また、高加速イオンエネルギーのビームの裾野を積極的に利用することでも、素子表面におけるブロック層の厚さを可変することは可能である。例えばイオンビームの裾野の利用方法としては、30keVの加速されたGaイオンをSiに照射した場合、膜断面には10〜20nm程度の非晶質層が生成され、このような母材に対する変質層をブロック層として利用することも可能である。
【0045】
図5に本発明の有機EL素子の作製において、真空環境を達成するために、イオンビーム発生装置8を有機EL製造装置9内に設置し、該装置内を真空排気するための真空排気装置10を備えた製造装置の概略図を示す。このようにイオンビーム発生装置を有機EL製造装置内に組み込むことで、大気圧程度の窒素ガス雰囲気内での封止作業も不必要となり、また上述の通り、別途用意されたCVDチャンバーやスパッタ装置内での製膜プロセスにおける諸問題の解決も可能となり、素子の信頼性を向上することができる。
【0046】
有機EL製造装置とイオンビーム発生装置をそれぞれ別の領域に分け、輸送ポートで試料の受け渡しをする場合、有機EL製造装置を窒素等の不活性雰囲気にして、イオンビーム発生装置でブロック層を作製することも可能である。
【0047】
従来、封止技術は樹脂を用いるため、素子作製と同一真空レベルで作業できなかった。そのため、真空リーク、窒素パージ、封止樹脂塗布、封止位置確認等の工程があり、素子開発におけるスループットに問題が生じていた。また窒素パージにより制御するといっても、素子作製時の真空レベルと比較して、不純物なかでも特に酸素、水分の排除できるレベルに限界を生じていた。本発明により、これら課題の解決できる。
【0048】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例で作製した有機EL素子の層構造の確認にはオージェ電子分光装置、紫外線光電子分光装置、エックス線光電子分光分析装置、原子間力顕微鏡、真空紫外可視分光光度計、フォトルミネッセンス測定装置、エレクトロルミネッセンス測定装置、ラマン分光装置、光学顕微鏡、エネルギーフィルター透過型電子顕微鏡を用いた。
【0049】
(実施例1)
ガラス基板上にITO透明導電膜を150nmの厚さで積層した。このITO膜付き基板を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプパターンの陽極を形成後、アセトンによる超音波洗浄、純水による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄を行ない、窒素ブローにて乾燥させた。最後に紫外線オゾン洗浄を行ない、真空蒸着装置へ設置後1×10-4Paになるまで、真空ポンプにて排気した。以下、この装置を用いて蒸着を行う。まず、陽極バッファ層として、下記構造式の銅フタロシアニン
【0050】
【化1】
Figure 0004170812
【0051】
を温度150℃、真空度2×10-4Pa、蒸着速度0.1nm/秒の条件で蒸着し、15nmの陽極バッファ層を得た。次に正孔輸送層として、下記構造式の4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル
【0052】
【化2】
Figure 0004170812
【0053】
を、温度120℃、真空度2×10-4Pa、蒸着速度0.1nm/秒の条件で蒸着し、30nmの正孔輸送層を得た。引き続き発光層として、下記構造式のAlq3
【0054】
【化3】
Figure 0004170812
【0055】
と、下記構造式のキナクリドン誘導体
【0056】
【化4】
Figure 0004170812
【0057】
をAlq3に対してキナクリドン誘導体が2重量%になるようにそれぞれを別々の膜厚モニターで正確に監視しながら、真空度2×10-4Pa、Alq3を温度160℃、蒸着速度0.2nm/秒、キナクリドン誘導体を温度120℃、蒸着速度0.1nm/秒の条件で蒸着し、30nmの発光層を得た。
【0058】
さらに、電子輸送層として、Alq3を温度160℃、真空度2×10-4Pa、蒸着速度0.2nm/秒にて蒸着し、10nmの電子輸送層を得た。
【0059】
引き続いて陰極バッファ層として、フッ化リチウム(LiF)を温度570℃、真空度2×10-4Pa、蒸着速度0.1nm/秒の条件で蒸着し、膜厚1nmの陰極バッファ層を得た。最後、アルミニウム製の蒸着用2mm幅シャドーマスクマスクを、素子表面から5μm離れた位置に陽極と直交するように、マニュピレータを用い設置し、100nmの厚さでアルミニウムを蒸着して陰極を形成した。このようにして2mm×2mmサイズの発光面積部を有する有機EL素子が得られた。
【0060】
この有機EL素子を同一真空チャンバー内に設置されたSEM(走査電子顕微鏡)にて、加速電圧1KeVの条件で素子の位置を確認後、素子の周辺部のみに30keVに加速したGaイオンビームを照射することで、ほぼ5nmのブロック層を作製した。実施例1の素子の断面構造は図1に示す模式図と同じものである(但し、陰極及び陽極バッファ層は図示していない)。実施例1の素子特性を、陽極を正、陰極を負の極性にして直流電圧を印加して評価した結果、ブロック層無しで初期輝度100cd/m2、半減期は10,000時間であったものが、ブロック層を作製することで初期輝度100cd/m2、10,000時間を経過後も輝度の低減が認められなかった。
【0061】
(実施例2)
Gaイオンビームを30keVに加速し、静電レンズで集束後、偏向レンズの励磁比を図2に示すように調整することで、実施例1の有機EL素子の積層方向に対して7°の入射位置を達成することで、素子表面から基板全体にほぼ10nmのブロック層を作製することができた。この後素子特性を評価したところ、初期輝度100cd/m2、10,000時間を経過後も輝度の低減が認められなかった。
【0062】
(実施例3)
Gaイオンビームを30keVに加速し、静電レンズで集束後、実施例1と同一の有機EL素子を保持した試料ステージを、図3に示すように素子の積層方向に対して7°の入射位置になるように調製することで、素子表面から基板全体にほぼ10nmのブロック層を作製することができた。この後素子特性を評価したところ、初期輝度100cd/m2、10,000時間を経過後も輝度の低減が認められなかった。
【0063】
(実施例4)
Gaイオンビームを500eVに加速した場合、実施例1の有機EL層にはほぼ2nmのブロック層が作製され、30keVに加速した場合、有機EL層にはほぼ20nmのブロック層が作製された(図4に対応)。どちらの場合も入射ビームに対する試料の傾斜は行わなかった。2nmのブロック層が作製された素子の特性を評価したところ、初期輝度100cd/m2、8,000時間を経過後はじめて、初期輝度の20%の輝度劣化が確認された。20nmのブロック層が作製された素子の特性を評価したところ、初期輝度100cd/m2、10,000時間を経過後も輝度の低減が認められなかった。なお、ブロック層の厚みは、例えば高温多湿の場所等、素子の使用環境の程度により使い分けることが可能である。
【0064】
(実施例5)
実施例1の素子を作製後、トランスポート機能を組み込んだマルチチャンバーシステムにより試料をイオン照射装置へ輸送する。試料作製時の真空度は1.0×10-4Paまで排気されて、イオン照射装置内は1.0×10-5Paまで排気されている。ブロック層作製後、大気圧に戻し、素子の特性を評価したところ、初期輝度100cd/m2、10,000時間を経過後も輝度の低減が認められなかった。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、有機EL素子において、イオンビームを照射することで素子表面を改質させ、外界の水分、酸素等の進入を阻害するためのブロック層を形成することで、素子の高度に高い動作安定性を有する素子構造を提供できるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の模式断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の模式断面図である。
【図3】本発明の有機EL素子の模式断面図である。
【図4】本発明の有機EL素子の模式断面図である。
【図5】本発明の有機EL素子の製造装置の模式断面図である。
【符号の説明】
1…ブロック層
2…イオンビーム
3…陰極
4…有機EL層
5…陽極
6…基板
7…試料ステージ
8…イオンビーム発生装置
9…有機EL製造装置
10…真空排気装置

Claims (6)

  1. 基板上に、厚さ0.1nm〜10μmの陰極、有機EL層及び陽極の積層体を形成した有機EL素子からなり、前記積層体の側部に露出する前記陰極と前記有機EL層との界面を少なくとも含む前記有機EL素子の表面にイオンビームを照射して表面を改質したブロック層を備え、前記イオンビームが、Gaイオン、Arイオン及びHイオンから選択されるイオンのビームであることを特徴とする有機EL素子。
  2. 基板上に、厚さ0.1nm〜10μmの陰極、有機EL層及び陽極の積層体を形成した有機EL素子の前記積層体の側部に露出する前記陰極と前記有機EL層との界面を少なくとも含む表面にイオンビームを照射して表面を改質したブロック層を形成することからなり、前記イオンビームが、Gaイオン、Arイオン及びHイオンから選択されるイオンのビームであることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  3. 前記イオンビームが、前記積層体の積層方向に対して±20°以内の方向から照射される請求項2に記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記イオンビームは、前記有機EL素子を載置する試料ステージの角度を調整することで入射方向が調整される請求項2に記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記ブロック層は、前記イオンビームの加速電圧を可変することで厚さが制御される請求項2に記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記イオンビームが、前記積層体の形成装置内に設置されたイオンビーム発生装置により照射され、前記積層体の形成と前記イオンビームの照射が、連続して真空環境下で行われる請求項2に記載の有機EL素子の製造方法。
JP2003106560A 2003-04-10 2003-04-10 有機el素子及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4170812B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003106560A JP4170812B2 (ja) 2003-04-10 2003-04-10 有機el素子及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003106560A JP4170812B2 (ja) 2003-04-10 2003-04-10 有機el素子及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004311340A JP2004311340A (ja) 2004-11-04
JP4170812B2 true JP4170812B2 (ja) 2008-10-22

Family

ID=33468717

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003106560A Expired - Fee Related JP4170812B2 (ja) 2003-04-10 2003-04-10 有機el素子及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4170812B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4674848B2 (ja) * 2004-11-09 2011-04-20 トッキ株式会社 有機el素子の製造装置
KR100668415B1 (ko) 2004-12-14 2007-01-16 한국전자통신연구원 유기발광소자 및 그 제조방법
JP2006269108A (ja) * 2005-03-22 2006-10-05 Hitachi Displays Ltd 有機発光表示装置及びその欠陥画素の修復方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004311340A (ja) 2004-11-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102685809B1 (ko) 패턴화 코팅 위에 전도성 코팅을 선택적으로 증착시키는 방법 및 전도성 코팅을 포함하는 디바이스
US6551725B2 (en) Inorganic buffer structure for organic light-emitting diode devices
JP6305997B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンスデバイス
KR20180075589A (ko) 표면 상에 코팅을 패턴화하는 방법 및 패턴화된 코팅을 포함하는 디바이스
US20090065741A1 (en) Apparatus and method for the application of a material layer to display devices
JP2006318837A (ja) 有機電界発光素子及び有機電界発光装置
JP5624141B2 (ja) 有機el素子
JP2004014511A (ja) 有機発光ダイオードデバイス
JP5933171B2 (ja) 有機発光素子及びその製造方法
JPH10214682A (ja) 有機電界発光素子の製造装置及び製造方法
Zheng et al. Green solvent processed tetramethyl-substituted aluminum phthalocyanine thin films as anode buffer layers in organic light-emitting diodes
JP4394331B2 (ja) 有機el素子
JP4170812B2 (ja) 有機el素子及びその製造方法
JP4494126B2 (ja) 成膜装置および製造装置
KR100615221B1 (ko) 유기 전계 발광 표시 장치 및 이의 제조 방법
JP4310843B2 (ja) 有機電界発光素子の製造方法
JP4439827B2 (ja) 製造装置および発光装置の作製方法
JP4233469B2 (ja) 蒸着装置
JP2000223265A (ja) 発光素子
JP2009193774A (ja) 有機el素子及びその製造方法
JP3972584B2 (ja) 有機電界発光素子及びその製造方法
JP2004006311A (ja) 発光装置の作製方法および製造装置
JP2008282652A (ja) 有機el素子の製造方法
JP2007234325A (ja) 有機電界発光素子及びその製造方法
JP2003168565A (ja) 有機el素子

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050810

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080507

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080513

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080625

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080805

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080807

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110815

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110815

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120815

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120815

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130815

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees