JP2007234325A - 有機電界発光素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短絡部分の発生を未然に防止し、より長寿命の有機EL素子を提供する。
【解決手段】陽極層、陰極層及びこれらに挟持された有機発光層を含む積層体が封止された状態で基板上に設けられてなる素子であって、少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されていることを特徴とする有機電界発光素子に係る。
【選択図】図3

Description

本発明は、有機電界発光素子(以下有機EL素子という)、特にその素子特性の劣化を防止する技術に関する。
有機EL素子は、ガラス基板上にITO(Indium Tin Oxide)透明電極(陽極)、有機膜(有機正孔輸送層、有機発光層等)、金属電極(陰極)が形成されて構成されている。ところが、このような有機EL素子において、有機膜又は金属電極が酸化あるいは熱に対して弱いことが知られている。そこで、有機EL素子の長寿命化を図るために、素子を水分や酸素を排除した雰囲気に設置したり、素子の発光の際に発生する熱が効率良く逃げられるような構造を採用して酸化あるいは熱による劣化を防止する必要がある。
このような見地より、一般に、有機EL素子は、図1に示すような構造が採用されている。つまり、素子の電極及び有機膜が大気に触れないように素子表面に保護膜を形成したり、封止用筐体を用いて素子を封止し、封止空間に熱伝導性の良い不活性ガスのHeを封入する方法(特許文献1)、溶存酸素濃度が1ppm以下の不活性な液状弗素化炭素を封入する方法(特許文献2)等が提案されている。また、封止空間の封入ガス内の微量な水分又は酸素を取り除くために、酸素・水分の吸着層を封止用筐体中に形成する方法(特許文献3)も知られている。
一方、有機EL素子では、水分あるいは酸素による問題のほかに、陽極層と陰極層の短絡(ショート)の問題についての対策を講じる必要がある。有機EL素子の有機膜は100〜300nm程度の厚さであり、非常に薄い。また、通常の半導体プロセス用のクリーンな環境で有機EL素子を作製しても、100nm程度の大きさのダストやパーティクルが存在する。加えて、ITO透明電極は、平坦性に欠け、50〜100nmのスパイク状の突起がある。
これらの要因が重なって、ITO電極と陰極金属電極間に微小領域で短絡した部分が発生する。例えば、図2に示すように、ITO電極と金属電極間に、ダストやパーティクルやITOのスパイク状突起により微小領域で短絡した部分が発生する。短絡は、最初は1個ないしは複数個のピクセル単位のごく微小な領域で発生し(ピクセルショート)、かかる領域は非発光部分を形成する。これが進行すればディスプレイ機能も損なわれ、結果として素子寿命も縮めることになる。
この問題を解決するため、酸素存在下に放置し、通電することで金属電極を酸化することにより絶縁性を回復する技術(特許文献4)が提案されている。しかし、この技術は、既に短絡している部分あるいはそれにごく近い状態にある箇所の修復には効果があるものの、素子の駆動中、つまり通電時間を重ねることによって現れてくる潜在的な短絡箇所には効果を発揮することができない。そのため、通電時間が長くなると、徐々に部分的に電流が多く流れ、ついには陽極層と陰極層の短絡により素子の非発光部分が生成され、また素子寿命も短くなる。
他方、樹脂封止膜の存在を前提としてその残留応力を緩和するためにポリパラキシレン膜が用いた電界発光素子が知られている(特許文献5)。しかし、ポリパラキシレン膜を用いても、樹脂封止膜を必須とする限り、その残留応力の問題は完全に解消することはできない。
また、有機発光層等の露出部分を覆うポリパラキシレン膜からなる保護層を設けた電荷注入型発光素子が提案されている(特許文献6)。ところが、かかる保護層を用いても、長寿命化という点においてさらなる改善の余地がある。
特開平4−249092号公報 特開平9−35868号公報 特開平6−176867号公報 特開平11−312580号公報 特開2001−338754号公報 特開2002−313559号公報
短絡部分には、過剰な電流が流れるために、このような短絡部分を有する有機EL素子は、その初期特性(低電流駆動に対する発光挙動)が不安定であるという問題がある。しかも、微小な短絡部分が、素子の駆動に伴って徐々に拡大進行する可能性があり、素子寿命にも影響を与える。そして、この問題は、素子が大型であるほど顕著になる。
短絡の問題における対策方法として、(i)素子作製工程中の100nm程度以上のダストを完全に除去する方法、(ii)有機膜の膜厚を厚くする方法が考えられる。
ところが、前記(i)のように100nm程度のダストを完全に除去することは、現在の技術では困難であり、ディスプレイサイズが大きくなればなるほど、ディスプレイ全面に全くダストが付着しないようにすることが不可能となる。また、前記(ii)のように有機膜を厚くする方法では、ダストの影響は少なくなる。しかし、有機膜中のキャリアは、空間電荷制限電流に従って流れるため、一定電流を流そうとすると、膜厚の1.5乗の電圧が必要であり、非常に駆動電圧が高くなる。このため、素子の熱による劣化が大きくなり実用的でない。
そこで、素子の初期特性を安定させるとともに素子寿命を延ばすためには、微小な短絡部分があっても、素子完成前にそれを修復しておくことが好適であると考えられる。つまり、微小な短絡部分があっても、短絡部分の微少な亀裂間隙を埋め、短絡部分を修復するような方法が考えられる。これにより微小な短絡部分が素子の駆動に伴ってだんだんと拡大進行することを未然に防ぐことが可能となる。また、これにより、人間の目には見えない程度の大きさのダークスポットに抑えることもできる。さらに、素子の初期特性を安定化させることもでき、好適であると考えられる。
このように、短絡を効果的に防止できれば、素子の長寿命化等を図ることができるが、現在のところそのような技術は未だ開発されるに至っていないのが実情である。
従って、本発明の主な目的は、短絡部分の発生を未然に防止し、より長寿命の有機EL素子を提供することにある。
本発明者は、上記の従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の材料が積層された層構成を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の有機電界発光素子及びその製造方法に係る。
1. 陽極層、陰極層及びこれらに挟持された有機発光層を含む積層体が封止された状態で基板上に設けられてなる素子であって、少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されていることを特徴とする有機電界発光素子。
2. 前記ポリパラキシレン系絶縁層が、陰極層、有機発光層及び陽極層の実質的にすべて覆うように形成されている、前記項1に記載の有機電界発光素子。
3. (1)前記積層体が封止用筐体により封止された状態で基板上に形成されており、(2)前記積層体は、前記基板に対して陽極層、有機発光層及び陰極層の順になるように設けられており、(3)少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されており、(4)a)前記絶縁層表面が封止用筐体内間の空間に露出している又はb)前記絶縁層表面が封止用筐体に直接接するように配置されている、前記項1又は2に記載の有機電界発光素子。
4. 前記ポリパラキシレン系絶縁層の厚みが20nm〜10μmである、前記項1〜3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
5. 陽極層、陰極層及びこれらに挟持された有機発光層を含む積層体を封止することにより有機電界発光素子を製造する方法であって、
前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層を気相法により形成する工程を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
6. 前記気相法の原料としてパラキシレン及び/又はパラキシレンオリゴマーを用いる、前記項5に記載の製造方法。
7. 前記気相法が熱CVD法である、前記項5又は6に記載の製造方法。
本発明の有機EL素子によれば、特定の材料により陰極表面が被覆されているので、短絡を未然に回避することができる結果、素子の長寿命化を図ることができる。これにより、素子の大型化を図ることができ、高性能の大型ディスプレス等を提供することも可能になる。
前記のように、有機EL素子は、大気中の酸素や水分により劣化が進むため、酸素・水分量の含有量が1ppm以下の不活性ガスで封止された構造をとるのが一般的である。素子の初期駆動時に、ダストやパーティクルによる短絡部分が多く存在すると、発光に寄与しない漏れ電流が多く流れる。また、このような素子を連続駆動すると、数分から数時間で制御不能な短絡部分に過大な電流が流れ、これに起因して、1素子(1ピクセル)中に表示欠陥となる絶縁破壊部分が多数発生する場合があることが明らかになった。
駆動初期における漏れ電流の発生原因は、微小な漏れ領域の存在、つまり現在の半導体プロセスで完全になくすことができないパーティクルあるいはITO電極のスパイク状突起等による短絡の存在であると考えられ、この短絡を予め絶縁化させる、すなわちポリパラキシレン系絶縁層で修復を行っておけば、駆動初期の漏れ電流、あるいはその後の表示欠陥部分の発生を未然に防ぐことが可能となる。本発明では、陽極、有機膜(有機発光層)及び陰極が形成されて構成された素子要素に直接熱CVD法を用い、パラキシレンダイマーを原料として、陰極層上及びそのナノレベルの亀裂間隙にも漏れなくポリパラキシレン系絶縁層を形成する。この処理により、例え陽極と陰極との間がパーティクルによって短絡しかかっていても、両極間の絶縁性が修復されることとなる。このような修復処理を素子の完成前に行っておくことで、初期特性の安定な有機EL素子を歩留まりよく作製することが可能となる。よって、今まで困難とされていた有機ELパネルの大型化にも対応することが可能となる。特に、大面積が必須である有機薄膜太陽電池のショート対策としても本発明は有効である。
本発明の実施の形態を示す図3に基づいて説明すれば以下のとおりとなる。基板1上に、陽極2と陰極4との間に有機膜3を挟むようにして形成されて構成される素子要素が、封止用筐体又は水分、酸素に対するハイバリアー保護膜で封止された有機電界発光素子であり、有機電界素子の完成前に陰極層の上に直接にポリパラキシレン系絶縁層5を積層する。この処理により、陽極2と陰極4との間がパーティクルやスパイク状突起によって短絡していても、該短絡部分の亀裂部間隙にポリパラキシレンのナノ薄膜が形成され、両電極間の絶縁性が修復される。この修復処理は、パラキシレンダイマーを用い、熱CVD法で形成することによりナノレベルの亀裂間隙にも確実にポリパラキシレン誘導体有機ナノ薄膜の絶縁層を形成することができる。素子要素はその後、封止用筐体又は水分、酸素に対するハイバリアー保護膜で封止する。これにより微小領域での短絡を回避し、素子本来の初期特性を発揮することができる。有機EL素子は、今後は大面積化が求められるが、大面積になるほどこの技術は生産安定上重要な役割を発揮できる。
本発明の有機電界発光素子(以下「有機EL素子」ともいう。)は、陽極層、陰極層及びこれらに挟持された有機発光層を含む積層体が封止された状態で基板上に設けられてなる素子であって、少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されていることを特徴とする。
すなわち、本発明の有機EL素子は、少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されているという構成以外は、基本的に公知の有機EL素子と同様の構成要素を採用することができる。
基板は、透明性を有するものであれば限定されない。例えば、各種のガラス基板を採用することができる。
陽極層は、一般的な有機EL素子で採用されているものと同じものを採用することができる。例えば、本発明では、ITO透明電極等を好適に用いることができる。
有機発光層は、単層型又は2層以上の多層型のいずれであっても良い。各層自体は、一般的な有機EL素子で採用されているものと同じものを採用することができる。例えば、陽極に正孔輸送層及び発光層(電子輸送層)の順で積層された2層型有機発光層を好適に採用することができる。特に、正孔輸送層を構成する材料としては、例えばトリフェニルアミン誘導体により好適に形成することができる。また、発光層を構成する材料(発光材料)としては、高分子系又は低分子系のいずも適用可能であるが、特に低分子系が好ましい。例えば、キノリノールアミン錯体(Alq)により好適に形成することができる。
また、有機発光層は、必要に応じて単色又はカラー(RGB3色)のいずれにも設計することができる。カラーの場合は、3色塗り分け方式、カラーフィルター方式、色変換方式等を適宜採用することができる。
陰極層は、例えば各種の金属膜を金属電極として採用することができる。金属としては、例えばAl、Mg、Li、Ag等の単体あるいはそれらの化合物又は合金(MgAg、AlLi等)を採用することができる。また、2種以上の層が積層された構成を採用することもできる。特に、本発明では、有機発光層に対してLiF層とAl層を順に積層した構成(LiF−Al積層体)を陰極層として好適に用いることができる。この場合、LiF層とAl層の厚みは限定的ではないが、LiF層は0.1〜2nm程度とすれば良い。また、Al層は50〜600nm程度とすれば良い。
ポリパラシキレン系絶縁層は、ポリパラキシレン及び/又はその誘導体により構成される。前記誘導体としては、パラキシレンを基本単位とするものであれば限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。好ましい市販品としては、例えば製品名「diX C」、「diX D」「diX F」「diX N」(いずれも第三化成(株)製品)等が挙げられる。
ポリパラシキレン系絶縁層は、少なくとも陰極層上に形成されている。この場合、少なくとも陰極層の上面を覆うようにポリパラシキレン誘導体層を形成すれば良い。特に、陰極層の上面及び側面を覆うようにポリパラシキレン系絶縁層を形成することが望ましい。すなわち、陰極層がすべて覆われるようにポリパラシキレン系絶縁層を形成することが望ましい。また、後記の実施の形態1でも示すように、陰極及び有機発光層(有機層)のすべてを覆うようにポリパラシキレン系絶縁層を形成することもできる。
ポリパラシキレン系絶縁層の厚みは、用いるポリパラシキレン又はその誘導体の種類、有機EL素子の種類・形式等に応じて適宜設定できるが、通常は20nm〜10μm程度、特に50nm〜1μm、さらには50nm〜900nmとすることが好ましい。かかる範囲に設定することにより、より効果的に短絡の発生を防止することができる結果、素子の長寿命化を図ることができる。
ポリパラシキレン系絶縁層の形成方法は、上記のような構成が形成できる限り特に制限されず、気相法、液相法又は固相法のいずれも採用することができる。例えば、ポリパラキシレン系絶縁層を形成するための原料(例えばパラキシレン(モノマー)及び/又はパラキシレンオリゴマー)を用い、気相法により形成する方法等が好ましい。すなわち、本発明では、ポリパラシキレン系絶縁層として、ポリパラキシレン誘導体の原料(例えばパラキシレン(モノマー)及び/又はパラキシレンオリゴマー)を用い、気相法により形成されてなるポリパラシキレン系絶縁層を好適に採用することができる。特に、パラキシレンオリゴマー(好ましくはパラキシレンダイマー)を原料として用い、気相法により形成されてなるポリパラシキレン系絶縁層がより好適である。
気相法は、例えばCVD法、PVD法等が採用できる。この中でも、CVD法、特に熱CVD法を好ましく採用することができる。この場合の,熱分解温度条件は600〜700℃程度とすることが好ましい。また、雰囲気は1.0Pa以下の真空雰囲気とすることが好ましい。堆積速度は1〜2nm/分程度とすれば良い。熱CVD法は、公知又は市販の装置を用いて実施することができる。
なお、前記の原料あるいはポリパラシキレン又はその誘導体は、公知又は市販の製品を用いることができる。
なお、ポリパラシキレン誘導体に関し、ダークスポットの発生を防止するために有機EL素子を構成する各層間に有機ポリマーによるバリアー層を形成する技術がある(特表2005−510851号公報)。その「要旨」記述によると「その有機ポリマーによるバリアー層は酸素/水分バリアーを有する。これらのバリアーは有機ポリマーから形成され、酸素及び水分による透過を阻止し、且つ、金属移動を抑制するように構成される。」とされている。また、別の項目として、その有機膜はダークスポットの発生を防止するための素子全体の保護膜として提案されている。その有機ポリマーのひとつとしてパリレン(ポリパラキシレンポリマーの製品名)が提案されている。ところが、この技術は、あくまでダークスポットの発生を防止する目的で提案されている。これは、陽極(ITO電極)と陰極(陰極金属電極)と間に微小領域で短絡した部分が発生することを避ける技術とは本質的に異なる。ちなみに、ポリパラキシレン(製品名:パリレン)有機膜は、水分/酸素に透過性があり、この膜で水分/酸素に対するバリアー層あるいは保護膜としてダークスポットの発生を防止するには不十分である。
本発明の有機EL素子では、前記の陽極層、陰極層及びこれらに挟持された有機発光層を含む積層体が封止されている。封止方法は、公知の有機EL素子と同様にすることができる。例えば、封止用筐体及び封止材を用いて外部(外気)から遮断することができる。封止材としては、例えば公知又は市販の紫外線硬化型樹脂を使用することができる。
以下、図面を用いてこの発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」という)について説明する。
<実施の形態1>
図3には、本発明の典型例として、実施の形態1に係る有機EL素子の概略構成を示す。
上記有機EL素子は、ガラス基板1上に陽極であるITO透明電極2が形成され、前記透明電極2上に有機発光層を含む有機膜3が形成されている。有機膜3上には、陰極として金属電極4が形成されている。また、有機膜3は、例えば正孔輸送材料と発光材料との積層から構成され、または発光層と金属電極4との間に更に電子輸送層が設けられた積層膜である。金属電極4は、MgAg、またLiFとAlとを積層したものが用いられている。さらに、基板の一部とその上に積層された素子、陰極の金属電極全体に直接にポリパラキシレン系絶縁層5が積層されている。
また、このような素子要素には、さらに素子要素に密着しないように間隙を持たせた構造の封止用筐体6がエポキシ系樹脂、紫外線硬化樹脂等の樹脂7(封止材)により封止されている。封止空間内には、必要に応じて水分ゲッターシート8を設置することもできる。好ましくは、水分・酸素ゲッターシートを用いる。また、封止空間は不活性ガス雰囲気とされていることが望ましい。不活性ガスとしては、例えばN、Ar、He等を用いることができる。
なお、本実施形態において、素子要素のEL素子要素(陽極2、有機膜3、陰極4)は、図3に示す構成又は上記材料に限らず、どのような素子構成であっても効果が得られる。
このように、本発明において、特に、(1)前記積層体が封止用筐体により封止された状態で基板上に形成されており、(2)前記積層体は、前記基板に対して陽極層、有機発光層及び陰極層の順になるように設けられており、(3)少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されており、(4)a)前記絶縁層表面が封止用筐体内間の空間に露出している又はb)前記絶縁層表面が封止用筐体に直接接するように配置されている、という構成を採用することにより、より優れた発光特性等を発揮することができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより詳細に説明する。但し、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
実施例1−1〜実施例1−4
実施の形態1に示す構造をもつ有機EL素子を製造した。その成膜時間、膜厚等を表1に示す。
Figure 2007234325
本実施例では、製造装置として、封止機構を有する予備排気室a、熱CVD成膜室b及び成膜室cを備えた装置を用いた。これを用い、1)EL素子要素を備えた素子要素の作製、2)熱CVDナノ薄膜の形成及び3)前記素子要素と封止用筐体との封着をそれぞれ行った。
このような構成の装置は、基板の導入から上記1)のEL素子要素の成膜まで真空中で実施でき、また上記2)の熱CVDナノ薄膜の形成まで真空中で実施できるため、大気中の水分や酸素を取り除いた条件で有機EL素子を作製することができる。上記3)の封止用筐体との封着は、大気中で実施した。
また、素子の作製にあたっては、清浄度がクラス1000(1000個/フィート)程度のクリーンな環境下で実施した。素子製造工程中においては、素子要素は、大気には曝されず全て高真空中で素子の搬送を行った。
1)工程1
素子要素を形成するための基板1としては、陽極2となるITOが既にパターンニングされているガラス基板を用いた。この基板1を有機アルカリ洗浄剤「セミコクリーン56(フルウチ化学(株)製)」、超純水、アセトン、イソプロピルアルコールをこの順に用いて超音波洗浄した後、基板1を窒素ブローで乾燥した。
2)工程2
その後、ITO透明電極2の表面の有機汚染物質を除去するために、UVオゾン処理を行い、すばやく予備排気室にセットした。
3)工程3
次に、基板1を真空状態にした成膜室中に搬送し、ここで基板1の上に有機膜用のシャドウマスクを装着した。アルミナ坩堝を加熱することにより、有機膜3として、正孔輸送層[トリフェニルアミン誘導体](厚み50nm)、発光層[キノリノールアミン錯体(Alq)](厚み20nm)の順で、それぞれ2〜4nm/分の成膜レートで各層を成膜した。なお、この場合、好ましくは、特開2006−24432号公報に記載の構造を採用することもできる。
4)工程4
真空を維持したまま、上記有機膜用シャドウマスクを陰極用シャドウマスクに交換し、アルミナ坩堝を抵抗加熱し、フッ化リチウムを1nm成膜し、陰極4として、アルミニウムを、200nm成膜した。成膜速度は10〜15nm/minとし、成膜は、4×10-4Pa以下の圧力(真空中)で行った。また、上記陽極2、有機膜3及び陰極4の積層構造からなる有機EL素子の発光面積は、20mm×30mmとした。
5)工程5
これら素子要素を形成した後、真空を維持したまま、上記で作製した有機EL素子要素を熱CVD製膜装置にセットした。原料として市販のジクロロパラキシレン(製品名「diX−C」第三化成(株)製)を用いた。この原料を、気化室内で150℃に加熱して気化させた。真空減圧下0.8Paで気化した原料は、所定の温度で加熱された配管内を通過し、熱分解室にて675℃から700℃に加熱した。この際に上記原料はラジカルモノマーに熱分解され、このラジカルモノマーがさらに成膜室内まで移動し、セットされた有機EL素子要素のアルミニウム電極表面においてラジカル重合を繰り返すことによってポリジクロロパラキシレンの薄膜をポリパラキシレン系絶縁層として形成した。
この場合、前記薄膜の厚みを変えることにより、ポリパラキシレン系絶縁層:800nmに係る素子を「実施例1−1」、600nmに係る素子を「実施例1−2」、200nmに係る素子を「実施例1−3」、100nmに係る素子を「実施例1−4」とした。
6)工程6
素子要素の表面にポリパラキシレン系絶縁層を形成した後、封止機構を有する予備排気室に移し、窒素ガスを用いて大気圧とした。また、水分吸収材(より好ましくは水分及び酸素吸収材)を備え付けた、中央を削り取ったガラス板よりなる封止用筐体6をセットし、窒素雰囲気下に置換した後、この封止用筐体6の周囲には、封止用樹脂7としての紫外線硬化樹脂を塗布した。
封止用筐体と、素子基板を大気圧の窒素雰囲気下の状態で密着させ、150WのUVランプでクーリングフィルターを通して紫外線を照射することにより封止用樹脂6をUV硬化させ、80℃×1時間のアフターキュアを行い、封止構造を有する有機EL素子を作製した。
比較例1
実施例1に係る有機EL素子の比較例1として、上記「工程5」の素子要素の表面にポリパラキシレン系絶縁層を形成していない有機EL素子を作製した。
比較例2
実施例1に係る有機EL素子の比較例2として、上記「工程5」の素子要素の表面にポリパラキシレン系絶縁層を形成していない有機EL素子を作製した。さらに、封止する前に素子基板を真空排気した状態で予備排気室に搬送した。予備排気室で酸素ガス濃度2%の窒素ガスを導入し大気圧とし、その環境下で15mAの電流を30分間通電した。通電終了後、封止用筐体6を密着させ、150WのUVランプでクーリングフィルターを通して紫外線を照射することにより、封止用樹脂6をUV硬化させ、80℃×1時間のアフターキュアを行い、封止構造を有する有機EL素子を作製した。
試験例1
各実施例及び比較例で作製された有機EL素子について諸特性を調べた。各有機EL素子の初期特性は、注入電流を1mA〜100mA(電流密度にして0.15mA/cm〜15mA/cm)の範囲で階段状に増加させ、その時の輝度を測定した。
図4には、ポリパラキシレン系絶縁層の厚みを10nm〜1μmの範囲で変えた素子の発光輝度−注入電流(注入電化密度)特性を示す。ポリパラキシレン誘導体有機ナノ薄膜無しの比較例1に係る有機EL素子では、電流スキャンの際、発光に寄与しない漏れ電流が大きいため、5mA/cm程度の電流を流しても、漏れ電流が大きく発光せず、非常に不安定であった。
これに対し、いずれの実施例の素子も、図4に示す通り、電流密度の上昇とともに安定的に発光輝度は上昇することが確認された。
また、表1には、これら各素子の寿命特性を示す。寿命特性は、15mA/cmの直流定電流を素子に流し、輝度の時間変化を測定することにより調べた。表1に示すように低電流付近での発光特性である初期特性の不安定であった比較例1(ポリパラキシレン系絶縁層がないもの)に係る有機EL素子では、10分程度で輝度が0cd/mになってしまい、実質的に発光不能な状態になってしまっていることがわかる。素子要素中の微小な短絡部分が、素子駆動により壊滅的な短絡破壊を起こしたためと考えられる。
これに対し、ポリパラキシレン系絶縁層を形成した実施例1−1に係る有機EL素子では、ポリパラキシレン系絶縁層により短絡部分が予め電気的に自己修復されるためと推察されるが、素子駆動により短絡破壊が進行することはなく、図5に示すように、駆動経過時間とともに緩やかに輝度が低下する傾向を示しており、実用に適した素子が得られていることがわかる。
ここで、比較例2と実施例1−3とを図5に基づいて比較すると、比較例2に係る有機EL素子では、100時間程度で電気的短絡箇所が現れ、まもなく輝度が0cd/mになってしまい、実質的に発光不能な状態になっていることがわかる。これに対し、ポリパラキシレン系絶縁層100nmの実施例1−1の素子、ポリパラキシレン系絶縁層200nmの実施例1−3の素子、ポリパラキシレン系絶縁層1μmの素子では、1000時間程度では、電気的短絡箇所は発生せず、輝度の経時変化を外挿した結果、半減寿命は1000時間以上であり、ポリパラキシレン系絶縁層の厚みは50nm以上(より好ましい範囲としては100nm以上)であれば長い寿命の素子がより確実に得られることがわかる。
以上説明したように、実施の形態1のようにポリパラキシレン系絶縁層を用いることにより、有機EL素子要素中のダストやパーティクルによってできる微小な短絡部分が、絶縁性を持つようになる。このため、発光に寄与しない短絡部分(電流漏れ部分)が電気的に無くなる。よって、上記測定結果から明らかなように低い注入電流密度から発光が開始する正常な素子初期特性を示すようになる。なお、微小な短絡部分によるダークスポットは、数μm程度と小さいため、ポリパラキシレン系絶縁層での修復過程を経てできる非発光部分は、発光時に肉眼によって観察されることはなく、表示素子と実用上問題ない。
実施例で作製した有機ELデバイスの発光面積は20mm×30mmである。特に、本発明は、10mm以上×10mm以上(好ましくは20mm以上×20mm以上)の発光面積をもつ有機ELデバイスの短絡(ショート)対策技術として有効である。一般に、発光面積が大きくなるほどショートが発生する確率が高くなり、それだけ発光に障害が起こる。これは、ショートし得る発光部分が増えるためである。すなわち、ITO電極の表面の凹凸、有機薄膜成膜工程途中でのパーティクル(完全除去が困難なサブミクロンオーダーの微小パーティクル)の混在、有機薄膜又はアルミニウム電極の成膜時の欠陥(ピンホール)等が存在する確率が高くなるためである。そして、発光部分の1点でもショートすると、その部分に電流が集中して流れ、発光面全体に電圧がかからなくなり、ショートポイント以外の発光面部分も発光しなくなる。
一般によく用いられている試験で作製される10mm×10mmよりも小さな発光面積を有するデバイスではショートが発生する確率はそれだけ低くなる。しかし、1mm×1mm以下の発光面積を有するデバイスであっても、数千個ないしは数万個に及ぶ素子(画素)を有しており、これらのすべての素子(画素)がショートせずに発光を持続させることは容易ではない。このことから、10mm×10mmよりも小さな発光面積を有するデバイスにおいても本発明は有効である。
従来の有機電界発光素子の基本構成を示す概略図(断面図)である。 陽極と陰極との間で短絡が発生した様子を示すイメージ図である。 本発明の有機電界発光素子の基本構成を示す概略図(断面図)である。 実施例の有機EL素子における平均輝度−電流密度特性を示すグラフである。 実施例及び比較例の有機EL素子における輝度寿命特性を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 陽極層、陰極層及びこれらに挟持された有機発光層を含む積層体が封止された状態で基板上に設けられてなる素子であって、少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されていることを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 前記ポリパラキシレン系絶縁層が、陰極層、有機発光層及び陽極層の実質的にすべて覆うように形成されている、請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. (1)前記積層体が封止用筐体により封止された状態で基板上に形成されており、(2)前記積層体は、前記基板に対して陽極層、有機発光層及び陰極層の順になるように設けられており、(3)少なくとも前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層が形成されており、(4)a)前記絶縁層表面が封止用筐体内間の空間に露出している又はb)前記絶縁層表面が封止用筐体に直接接するように配置されている、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記ポリパラキシレン系絶縁層の厚みが20nm〜10μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
  5. 陽極層、陰極層及びこれらに挟持された有機発光層を含む積層体を封止することにより有機電界発光素子を製造する方法であって、
    前記陰極層上にポリパラキシレン系絶縁層を気相法により形成する工程を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
  6. 前記気相法の原料としてパラキシレン及び/又はパラキシレンオリゴマーを用いる、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記気相法が熱CVD法である、請求項5又は6に記載の製造方法。
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