JP4167960B2 - 飲酒運転防止装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車、電車、船、飛行機などの乗物に後付けできる飲酒運転防止装置に関し、観光バス、タクシー、長距離トラックなどの営業車に好適に適用される発明である。
乗客を運搬するタクシーや観光バス、或いは昼夜を通して運転される長距離トラックなどでは、自動車事故の未然防止が極めて重要であり、万が一にも飲酒運転や酒気帯び運転があってはならない。そのため、運行管理者には、確実に、社員の酒気帯び運転を防止する人事管理上の厳しい責任が課されている。
ところで、かかる飲酒運転を未然防止する装置として、古くから各種の発明が提案されている(特許文献1〜10)。
特開昭47−040994 特開昭48−094128 特開昭49−042186 特公昭51−021698 特開昭50−012725 特開昭50−014034 特開昭50−073340 特開昭59−220421 特開昭63−053120 特開平06−197897
しかしながら、何れの発明も有効性に欠ける面があった。先ず、上記の発明の殆どは、運転者の呼気を運転開始時に吸気ポンプで吸収する構成であるため、検出感度が低いという問題点がある。ここで、無理にアルコールセンサの感度を上げると、運転者以外の乗客(酒気を帯びた乗客)のアルコールに反応してしまい誤動作が避けられないという問題がある。
一方、アルコールセンサに運転者の呼気を吹き当てる構成も提案されているが(特許文献1〜3)、不正操作による違法運転の可能性があるなど、まだまだ機器構成上の完成度に欠けている。しかも、これらの構成は、そもそも購入後の自動車に後付けできるものではないという致命的な欠点がある。すなわち、バスやトラックは極めて高価であるところ、単に、運行管理者の責任を果たすためだけに、新たに営業車を購入するとは考えられず、したがって、上記特許文献に記載の提案は、飲酒運転防止に関して現実性に欠けている。
また、上記の各提案は、一般の乗用車を対象としており、営業車を全く意図していないが、飲酒運転防止装置は営業車にこそ必要であり、一般の乗用車なら運転者のモラルに任せれば足りる。すなわち、乗客や重要な貨物を運搬しない一般の運転者なら、携帯用のアルコールチェック製品を使用して自己のアルコール濃度を把握すれば足り、その後の判断は各自に委ねたら良い。
更にまた、上記の各提案は、機器の故障に対する対策が施されておらず、この点も重大な欠点である。すなわち、電子回路には故障がつきものであるところ、万一、電子回路上のトラブルで自動車が始動できなくなった場合には、自動車の一般のトラブルと違い、JAF(社団法人:日本自動車連盟)等では対応できず、自動車を始動できない弊害は、特に営業車の場合には致命的である。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、営業車を中心として購入済みの乗物にも適用可能であり、高精度にアルコールを検出でき、不正操作の可能性も低い飲酒運転防止装置を提供することを課題とする。また、電子回路のトラブル時にも自動車を始動できる飲酒運転防止装置を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、運転者の吹き付け動作に反応して呼気中のアルコール濃度を検出する検査部と、前記検査部からの信号を受ける制御回路を内蔵する本体部とを有して構成され乗物に搭載されているバッテリ電圧と、乗物始動用のスタートスイッチと、の直列回路に接続されて、受電した前記バッテリ電圧を出力するか否かを制御する飲酒運転防止装置であって、前記制御回路は、前記スタートスイッチのON操作に基づいて前記バッテリ電圧を受けると共に、アルコールチェックの異常判定結果に対応して第1リレーコイルを通電させる一方、正常判定結果に対応して第1リレーコイルの通電を禁止る第1回路と、第1リレーコイルの通電時に、第1リレーコイルの第1リレー接点が開放されることで、受電した前記バッテリ電圧の出力を禁止する第2回路と、操作スイッチのON操作によって第2回路を短絡させることで、機器トラブル時に前記バッテリ電圧を強制出力する第3回路と、を有して構成され前記操作スイッチは、一度剥離すると再貼着できないシート材によって操作不能に構成されている
本発明において、運転者の吹き付け動作を確実に検出するため、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、又は、流量センサの何れか一つ、又は一以上を組み合わせて使用するのが好適である。一以上のセンサを組み合わせて使用する場合には、複数個のセンサの出力が同期して変化することによって吹き付け動作を確認できる。
本発明の検査部には、アルコールセンサの他に、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、流量センサの何れか一以上が内蔵されることで、運転者の呼気吹き付け動作にのみ反応して、呼気中のアルコール濃度を検出するよう構成することが好ましい。この場合、温度センサ及び/又は湿度センサからの信号が、定常時に比べて有意に変化したことに基づいて、運転者の吹き付け動作を検出するのが効果的である。
発明において、定常時に比べて有意に変化したか否かは、検査動作に先だって検出されたセンサからの信号に基づいて判定されるのが好適である。この場合、定常時の温度や湿度がもともと極端に高い環境下では、数値上の有意な変化がなくても、有意な変化があると擬制するのが好適である。
以上説明した本発明によれば、購入済みの乗物にも適用可能であり、高精度にアルコールを検出でき、不正操作の可能性も低い飲酒運転防止装置を実現できる。
以下、実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1(a)は、実施例に係る飲酒運転防止装置EQUの外観状態を図示したものである。図示の通り、この装置EQUは、本体部1とベース板2とが一体化され、自動車の運転席のフロアーに取り付けられるようになっている。なお、フロアーへの取り付けは、ボルト/ナットを使用しても良いが、ベース板2の裏面に貼着した両面接着層を利用するのが簡易的である。
本装置EQUの本体部1は、自動車バッテリからの電圧を利用して動作するが、その頂面には、各種センサを内蔵して呼気の吹き込みを受ける検査部HNと、アルコールチェック時に操作される検査ボタンBTと、アルコール濃度の検査結果を示す報知ランプPLとが現われている。ここで、検査部HNは、適度な強度で巻き取り方向に付勢されており(図1(b)参照)、使用時にのみ引き出され、通常は、図示の状態に巻き取られている。なお、検査ボタンBTは跳ね返り型スイッチであり、報知ランプPLは赤色と緑色に発光可能な二色LEDである。
ところで、検査部HNの最大引き出し長さは1m程度であるので、本装置EQUを、右ハンドル車の運転席右側のフロワーに設置しておけば(左ハンドル車では運転席左側フロワー)、運転者以外の者が検査部HNに息を吹き込むことはできない。このように、本装置EQUは、運転席のフロアーに取り付けられ、しかも、検査部HNが本体部1に強制的に巻き取られているので、直射日光を受けることがなく、温度センサや湿度センサは、運転席の温度や湿度を正確に計測することができる。
また、本体部1の頂面には、スライドスイッチSWの上面を操作不能に覆う剥離シート3が貼着されている。スライドスイッチSWは、図2に示す通り、本装置EQUの故障時などに、本装置EQUを自動車から切り離すためのスイッチであり、一度剥離すると二度と貼着できない剥離シート3で覆われている。なお、剥離シート3は、必ずしも、スライドスイッチSW全体を覆う必要はなく、図1(c)のように、スライド操作が不能となるように貼着したのでも良い。
図2は、本体部1に収容された制御回路4の回路図を図示したものである。図示の通り、この制御回路4は、第1コネクタCN1,CN1を通して検査部HNと接続されており、ヒータ電源V及び電源電圧Vを検査部HNに供給する一方、検査部HNからは、アルコールセンサ出力V、温度センサ出力V、及び湿度センサ出力Vを受けている。
図3は、検査部HNに内蔵されたアルコールセンサRの接続構成を示したものである。この実施例では、ガス(ここではエタノール)が、酸化物半導体の表面で吸着反応して電気的抵抗が変化することを利用する「表面制御型半導体ガスセンサ」を使用している。なお、酸化物半導体としては、SnOやZnOなどのn型半導体が用いられる。
表面制御型半導体ガスセンサは、所定温度に加熱しておく必要があるので、本体部1からヒータ電源Vを受けて、アルコールセンサRを所定温度に加熱している。また、アルコールセンサRに直列に負荷抵抗Rが接続されており、本体部1から受けた電源電圧Vを分圧して出力電圧Vとしている。アルコールセンサRは、呼気中のエタノール濃度が高まるほど抵抗値が低下するので、出力電圧Vはエタノール濃度に対応して増加することになる。なお、本実施例では、ヒータ電源Vと電源電圧Vを別々に供給しているが、同一電圧で動作可能なアルコールセンサRを使用して、1つの電源を共用するのが好適である。
温度センサや湿度センサも、公知のセンサを使用可能であるが、この実施例では、温度センサとしてはサーミスタを使用し、湿度センサとして「インピーダンス変化センサ」を使用している。ここで、インピーダンス変化センサとは、電解質、高分子、金属酸化物(セラミック)など、湿度によって電気抵抗が変化するものを意味する。
図2に戻って説明を続けると、本体部1に内蔵された制御回路4は、第2コネクタCNを通して本体部1頂面の検査ボタンBTと報知ランプPLに接続されている。また、制御回路4は、第3コネクタCNを通して、自動車の電気回路とも接続されている。具体的には、制御回路4は、自動車のバッテリEの出力端子と、グランド端子Gと、及びスタートスイッチSWの出力端子とに、それぞれ接続されている。また、制御回路4から自動車のイグニッション回路5に対して、直流電圧が出力されている。
図2に示すように、制御回路4の回路基板は、スタートスイッチSWとイグニッション回路5との配線を切断し、その間(A−A’間)に配置する必要がある。そのため、本実施例では、自動車のヒューズボックスからヒューズを除去し、ヒューズボックスの入力端子Aから制御回路4への入力配線LINを引出し、制御回路4の出力配線LOUTをヒューズボックスの出力端子A’に接続している。なお、ヒューズボックスから取り出したヒューズHUは、本体部1のヒューズボックス6(図1)に装着している。
続いて、図2に示す制御回路4の回路構成について説明する。この制御回路4は、ワンチップマイコン7と、通電制御回路8(8A,8B,8C)と、電源部9とを中心に構成されている。ワンチップマイコン7には、CPUコア、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート11,12の他に、A/Dコンバータ10が内蔵されており、アルコールセンサ、温度センサ、及び湿度センサからのアナログ出力電圧をそれぞれ受けて、デジタルデータに変換している。
そして、変換されたデータは、図6に示す判定プログラムで処理され、ワンチップマイコン7に内蔵された出力ポート11から1ビットの制御データを出力するようになっている。また、ワンチップマイコン7は、入出力ポート12も内蔵しており、検査ボタンBTは入力ポートに接続され、報知ランプPLは出力ポートに接続されている。
通電制御回路8は、自動車バッテリEを電源電圧としてON/OFF動作する第1回路8Aと、自動車バッテリEを通電制御する第2回路8Bと、機器トラブル時に本装置EQUを自動車から切り離す第3回路8Cとで構成されている。ここで、第3回路は、剥離シート3でスライド操作片を覆われたスライドスイッチSWで構成されている。
第1回路8Aは、出力ポート11のプルアップ抵抗Rと、出力ポート11の出力する制御データをベース端子に受けるスイッチングトランジスタTrと、トランジスタTrのコレクタ端子に接続された第1リレーコイルL及び常閉リレー接点SWとで構成されている。
第2回路8Bは、第1リレーコイルLが導通すると開放される常閉リレー接点SWと、通電されると常閉リレー接点SWを開放させる第2リレーコイルLと、常閉リレー接点SWとリレーコイルLの接続点をグランドに接続するコンデンサCとで構成されている。なお、第1回路8A、第2回路8Bとも、自動車のスタートスイッチSWがON状態になると自動車バッテリEの電圧を共通して受けるよう接続されている。
電源部9は、この実施例では、二つのDC/DCコンバータで構成されており、自動車バッテリの電圧を降下させてヒータ電源Vと電源電圧VCC、Vを得ている。なお、この実施例では、自動車バッテリの電圧を直接受けているので、その分、自動車と本装置EQUとの配線がやや煩雑となる。そのため、図7(a)に示すように、DC/DCコンバータに代えて、充電回路と充電電池を配置するのも好適である。
このような充電電池を搭載した回路構成では、自動車バッテリと直結する配線が不要となり、自動車運転中は、充電電池が充電されつつ各回路が動作し、自動車の停止中は、充電電池の出力のみでワンチップマイコン7を含む各回路が動作することになる。この場合、ヒータ電圧Vと電源電圧V,VCCとを一致させるのが望ましい。
また、図2の回路構成の場合には、自動車停止中も自動車バッテリの電圧が使用されるので、バッテリ放電量が問題になることもある。そこで、かかる場合には、本装置EQUに電源スイッチを設けて、自動車を長時間使用しない場合(例えば入庫時)には、バッテリからの通電を遮断するのが好適である。
また、原則としてバッテリ電圧を使用しない構成とし、運転者が検査ボタンBTを押圧したことに対応して通電を開始させるようにしても良い。この場合には、図7(b)に示すように、検査ボタンBTの操作に対応して手動的でON動作し、自動車停止に対応して強制的にOFF動作する電源スイッチBT’を配置する。但し、この場合には、検査ボタンBT’を押圧操作後、数秒待ってアルコール検査を開始する必要がある。もっとも、自動車の始動回路を起動させないで、バッテリ供給だけが可能なスイッチ状態を有する車であれば、バッテリを供給状態でアルコールチェックをすれば良く、検査ボタンBTや電源スイッチBT’は不要となる。
続いて、図4及び図5に基づいて本装置EQUの制御回路4の動作を説明する。
<自動車のスタートスイッチSWが投入される前の初期状態>
図4(a)に示すように、初期状態では、ワンチップマイコン7の出力ポート11の出力はHレベルになっている。また、リレーコイルL,Lは共に通電しておらず、常閉リレー接点SW,SWは閉鎖状態である。
<検査動作を経ることなくスタートスイッチSWが投入された場合>
自動車を発車させる前には、アルコールチェックを受けることになっているが、アルコールチェック処理を経ることなく、スタートスイッチSWを投入した場合を考える。このような場合には、図4(b)に示すように、スタートスイッチSWの投入と共に、自動車バッテリの電圧が第1回路8Aと第2回路8Bに等しく加わる。
但し、第2回路8BではコンデンサCが充電されるので、直ぐには、リレーコイルLに電流が流れない。これに対して、第1回路8Aでは、ON状態のスイッチングトランジスタTrを通してリレーコイルLに電流が流れるので、これに対応して、常閉リレー接点SWが開放状態となる。この常閉リレー接点SWの開放状態はそのまま維持されるので、自動車のイグニッション回路5への通電は、引き続き阻止されて自動車が始動することはない。
<検査動作を経てスタートスイッチが投入された場合>
一方、運転席に着いた運転者がアルコールチェックの検査動作を行うと、呼気中のアルコール濃度が所定値を超えない限り、ワンチップマイコン7は、出力ポートにLレベルの制御データを出力する。したがって、第1回路8AのスイッチングトランジスタTrはOFF状態となり、自動車のスタートスイッチSWがON状態となっても、第1回路8Aには通電電流が流れない。
一方、第2回路8Bでは、コンデンサCに過渡的な充電電流が流れた後、イグニッション回路5に向けて電流が流れ、リレーコイルLが通電することによって、常閉リレー接点SWが開放状態となる。
<自動車運転中>
以上の動作の結果、回路動作は図5(b)の状態となり、その後のスイッチングトランジスタTrの動作に係わらず、第1回路8Aが通電することはあり得ない。すなわち、雑音などの影響でワンチップマイコン7のプログラムが暴走して、スイッチングトランジスタTrにHレベルの制御データが加わることがあっても、常閉リレー接点SWの開放状態によって、第1回路8Aの通電が防止される。また、第1回路8Aの通電が防止されることにより、常閉リレー接点SWの異常開放も防止される。このように、本装置EQUでは、第1回路8Aの非通電状態が保証されるので、ワンチップマイコン7の出力ポート11の制御データを、適当な時間経過後にHレベルに移行させている。
以上、アルコールチェックで異常レベルのアルコール濃度が検出されなかった場合について説明したが、もし、異常レベルのアルコール濃度が検出されれば、出力ポート11の出力は、Hレベルのままであるから、図4(b)に関して説明したのと同じ動作によって、第2回路8Bの通電が阻止されたままとなる。
<運転停止時>
自動車が停止して、スタートスイッチSWが切られると、第2回路8B(リレーコイルL)の通電も無くなるので、常閉リレー接点SWは閉鎖状態に戻り、図4(a)の初期状態となる。
続いて、上記の動作を実現するワンチップマイコンの検査動作を、図6のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ワンチップマイコンは、温度センサや湿度センサからの信号に基づいて温度及び湿度を計測・記憶しつつ(ST1)、運転者が、検査ボタンBTをON操作するのを待つ(ST2)。そして、検査ボタンBTが押されたら、報知ランプPLを赤色に点灯させると共に、検査動作における温度と湿度の判定基準値を決定する(ST3)。
判定基準値としては、検査ボタンBTが押圧された瞬間の温度や湿度を採用しても良いが、本装置EQUでは、自動車停止時にも温度や湿度を計測しているので、過去分の温度や湿度の計測値を考慮して、その推移による現在値の推定値や、過去データの平均値などから各判定基準値を決定している。
そのため、例えば、運転者がセンサに息を吹きかけつつ検査ボタンBTを押したような場合や、検査動作を繰返したような場合にも誤動作の虞れがない。すなわち、本装置EQUでは、各センサからの出力が正常レベルでないと判定されると(ST4,ST5,ST7参照)、再検査できるように構成されているが、そのような場合、仮に前回の検査動作時の呼気雰囲気(温度・湿度)が残っていても、判定基準値が不合理な値にならない。
いずれにしても、ステップST3の処理によって、温度や湿度の判定基準値が適宜に決定されるので、次に、各センサの出力電圧を入力して記憶する(ST4)。なお、報知ランプPLが点灯しても運転者が直ちに検査動作を開始するとは限らないので、所定間隔(例えば1秒)に行うデータ入力処理を、所定の継続時間(例えば2分)実行し、取得データを順次メモリに記憶する(ST4)。
その後、記憶データをチェックして、運転者が呼気をセンサに吹き込んだ結果として、温度が有意に上昇したかを先ず確認する(ST5)。これは検査ボタンBTを押した後、運転者が何もしない可能性があり、そのような場合にアルコールチェック判定をしたのでは、意味もなく正常判定されてしまうからである。
ここで、有意に温度が上昇したか否かの判定は、温度判定基準値との関係で決定され、判定基準値が低い場合(寒い場合)と、高い場合(暑い場合)とでは判定ロジックを変えている。これは、寒い場合には、呼気の吹き付けにより、大きく温度が上昇する反面、暑い場合には、殆ど温度が上昇しないからである。そのため、判定基準値が所定値(例えば28℃)より高い場合には、ステップST5の処理が事実上スキップされる。
いずれにしても、温度判定処理に合格すれば、次に、運転者の呼気の吹き込みによって、有意に湿度が上昇したか否かが判定される(ST6)。そして、湿度の有意な上昇が認められなかった場合には、温度判定の場合と同様、報知ランプPLを赤色に点滅させて、ステップST1の処理に戻る(ST8)。
逆に、温度判定や湿度判定によって計測値の有意な上昇が認められたら、そのタイミングにおけるアルコールセンサからの検査電圧に基づいて、アルコール濃度が正常レベルか否かを判定する(ST7)。この判定では、呼気中のアルコール濃度が0.15mg/リットル(エタノール濃度73ppm程度)を超えれば、異常であると判定している。そして、異常レベルの場合には、報知ランプPLを赤色に点滅させて、ステップST1の処理に戻している(ST8)。
したがって、運転者は再検査を受けることが可能となるが、アルコール濃度が正常レベルでない限り、出力ポート11の制御データがHレベルからLレベルに変ることはなく、自動車を発車させることはできない。なお、本装置EQUでは、温度センサと湿度センサとによって常に温度と湿度とを把握しているので、アルコールセンサの出力電圧とアルコール濃度との関係を適宜に校正することが可能となり、この意味でも検査精度が高い。
ステップST7の判定で、アルコール濃度が所定値未満であると判定されると、次にワンチップマイコン7は、出力ポート11からLレベルの制御データを出力する(ST9)。この動作の結果、スイッチングトランジスタTrがOFF状態となり、第2回路8Bの短絡状態が維持されて、自動車が問題なく始動可能となる(図5(a)(b)参照)。
そこで、ワンチップマイコン7は、正常となった判定結果を報知するべく報知ランプPLを緑色に点灯させ(ST10)、所定時間(例えば3分)消費した後(ST11)、出力ポート11の出力する制御データをHレベルに戻す(ST12)。また、報知ランプPLを消灯させてステップ1の処理に戻る(ST13)。このような、本装置では、報知ランプPLが緑色に点灯している限り、自動車の始動操作が可能であるが、その間に自動車の始動を終えないと、報知ランプPLが消灯した後は、再度、アルコールチェックを受ける必要が生じる。
以上、本発明の一実施例について具体的に説明したが、具体的な記載内容は何ら本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更可能である。例えば、アルコール濃度を計測することは必須であるが、簡易的には温度センサや湿度センサを省略しても良い。逆に、温度センサや湿度センサに加えて圧力センサや流量センサを加えても良い。このようにセンサを追加すると、事実上、不正なアルコールチェックが不可能となる。
また、実施例で説明した構成に加えて、計時機能とデータ保存機能とデータ読出機能とを設け、運転者が検査動作を受けた時刻や回数やアルコール濃度値をメモリに記憶し、適時に記憶データを読み出すのも好適である。このような構成を採ると、より綿密に運行管理をすることができる。
なお、図2の実施例では、アルコールチェックに合格してから自動車のスタートスイッチSWをON操作する操作例を説明したが、図2の回路構成によれば、スタートスイッチSWをON操作してから、アルコールチェックを実施しても正常に動作する。そして、自動車のスタートスイッチSWをON操作してからアルコールチェックを受ける場合には、図2の回路構成に限らず、図7(c)のように、自動車バッテリに依存しない機器構成が可能となる。
図7(c)の回路構成の場合には、(a)先ず、自動車のスタートスイッチSWをON操作する必要があり、(b)その後、温度及び湿度を計測すると共に、アルコールセンサが加熱されるのを60秒程度待った後、(c)検査ボタンBTの押圧があると、各センサからの電圧を入力することになる(図6のST4)。その後の処理は、図6のステップST5〜ST13と同じであるが、自動車が突然始動すると、慣れない運転者には違和感がある。そこで、報知ランプを緑色に変更すると共にブザー等を鳴らし、更に数秒経過した後に、出力ポート11からLレベルの制御データを出力するのが好適である。
もっとも、ジーゼルエンジンを搭載した乗物のように予熱動作が必要な場合には、その予熱動作時に上記したアルコールチェックを受けることができ、アルコールチェックをパスした後、円滑に始動動作に移行できる。
実施例に係る飲酒運転防止装置の外観状態を図示したものである。 飲酒運転防止装置の制御回路を示したものである。 アルコールセンサ回路を例示したものである。 制御回路の動作を説明する図面である。 制御回路の動作を説明する別の図面である。 ワンチップマイコンの制御動作を説明するフローチャートである。 図2の変形例を図示したものである。
符号の説明
EQU 飲酒運転防止装置
HN 検査部
1 本体部
4 制御回路
8A 第1回路
8B 第2回路

Claims (8)

  1. 運転者の吹き付け動作に反応して呼気中のアルコール濃度を検出する検査部と、前記検査部からの信号を受ける制御回路を内蔵する本体部とを有して構成され
    乗物に搭載されているバッテリ電圧と、乗物始動用のスタートスイッチと、の直列回路に接続されて、受電した前記バッテリ電圧を出力するか否かを制御する飲酒運転防止装置であって、
    前記制御回路は、前記スタートスイッチのON操作に基づいて前記バッテリ電圧を受けると共に、アルコールチェックの異常判定結果に対応して第1リレーコイルを通電させる一方、正常判定結果に対応して第1リレーコイルの通電を禁止る第1回路と、
    第1リレーコイルの通電時に、第1リレーコイルの第1リレー接点が開放されることで、受電した前記バッテリ電圧の出力を禁止する第2回路と、
    操作スイッチのON操作によって第2回路を短絡させることで、機器トラブル時に前記バッテリ電圧を強制出力する第3回路と、を有して構成され
    前記操作スイッチは、一度剥離すると再貼着できないシート材によって操作不能に構成されていることを特徴とする飲酒運転防止装置。
  2. 前記制御回路は、ヒューズが除去された状態のヒューズボックスの入力端子と出力端子との間に接続されている請求項1に記載の飲酒運転防止装置。
  3. 前記制御回路は、前記バッテリ電圧をイグニッション回路に出力することで、乗物の始動とその後の運転を可能にしている請求項1又は2に記載の飲酒運転防止装置。
  4. 前記検査部にアルコールセンサの他に、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、流量センサの何れか一以上が内蔵されることで、運転者の呼気吹き付け動作にのみ反応して、呼気中のアルコール濃度を検出するよう構成された請求項1〜3の何れかに記載の飲酒運転防止装置。
  5. 第1回路の通電路は、第1リレーコイルと、第2回路の通電動作に起因して開放される第2リレー接点と、が直列接続されて構成されている請求項1〜4の何れかに記載の飲酒運転防止装置。
  6. 第2回路は、第2リレー接点を開閉させる第2リレーコイルと、第2リレーコイルに直列接続される第1リレー接点と、第2リレーコイルと第1リレー接点の接続点をグランドに接続するコンデンサと、を有して構成されている請求項5に記載の飲酒運転防止装置。
  7. 温度センサ及び/又は湿度センサからの信号が、定常時に比べて有意に変化したことに基づいて、運転者の吹き付け動作を検出している請求項1〜6の何れかに記載の飲酒運転防止装置。
  8. 定常時に比べて有意に変化したか否かは、検査動作に先だって検出されたセンサからの信号に基づいて判定されている請求項7に記載の飲酒運転防止装置。
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