JP4167818B2 - 主軸装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、マシニングセンター等の工作機械を構成する主軸装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の工作機械に使用される主軸装置として特開2000−246592号公報に示すものが提案されている。この主軸装置においては、主軸の前端部に工具ホルダをクランプするクランプ機構が設けられている。このクランプ機構をクランプ状態とアンクランプ状態に切り換え作動するドローイングバーが主軸内に進退自在に設けられている。前記ドローイングバーは付勢部材によって、常にはクランプ方向に付勢され、前記付勢部材の付勢力に抗してドローイングバーを前進移動させると、クランプ機構がクランプ状態からアンクランプ状態に切り換えられるようになっている。そして、工具ホルダの交換作業を行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の主軸装置においては、ドローイングバーをクランプ状態に付勢する付勢部材の収容室に外気が進入する。このため、空気中に含まれる水分が付勢部材を錆び付かせる。又、付勢部材に防錆油を塗布したとしても、徐々に乾燥していずれは錆びる。その錆びの影響によりドローイングバーの切り換え動作を円滑に行うことができないとともに、付勢部材が破損するという問題があった。
【0004】
この発明の目的は上記従来の技術に存する問題点を解消して、付勢部材の錆び付きを防止することができる主軸装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、主軸頭の内部に主軸を回転可能に支持し、該主軸の前端部に工具ホルダをクランプするクランプ機構を装着し、主軸の貫通孔に前記クランプ機構のクランプ動作又はアンクランプ動作を行うドローイングバーを収容し、前記ドローイングバーの外周面と主軸の貫通孔の内周面との間に該ドローイングバーをクランプ方向に付勢する付勢部材を収容した主軸装置において、前記付勢部材の後端はドローイングバーの後端部に設けたバネ受け部材に係止され、付勢部材の前端は、主軸の貫通孔の内周面に形成した段差部に係止され、前記バネ受け部材に接合した可動部材の外周面と主軸の貫通孔の内周面との間には第1シールリングが介在され、前記ドローイングバーの前端寄り外周面と主軸の貫通孔の内周面との間には第2シールリングが介在され、前記両シールリングの間に前記付勢部材の収容室を密閉状態に保持する密閉収容室が形成され、該密閉収容室に防錆剤、防錆液体又は防錆気体封入されていることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、主軸頭の内部に主軸を回転可能に支持し、該主軸の前端部に工具ホルダをクランプするクランプ機構を装着し、主軸の貫通孔に前記クランプ機構のクランプ動作又はアンクランプ動作を行うドローイングバーを収容し、前記ドローイングバーの外周面と主軸の貫通孔の内周面との間に該ドローイングバーをクランプ方向に付勢する付勢部材を収容した主軸装置において、前記ドローイングバーの後端部にはバネ受け部材が一体に形成され、該バネ受け部材の外周面と主軸の貫通孔内周面との間には第1シールリングが介在され、前記ドローイングバーの前端寄り外周面と主軸の貫通孔の内周面との間には第2シールリングが介在され、前記両シールリングの間に前記付勢部材の収容室を密閉状態に保持する密閉収容室が形成され、該密閉収容室には防錆剤、防錆液体又は防錆気体が封入されていることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記ドローイングバーの中心部には軸心方向にクーラント通路が形成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記付勢部材は、皿バネ又はコイルバネであることを要旨とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態を、図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、主軸装置11の主軸頭12は外筒13及び内筒14から構成され、その内筒14の内側には主軸15が複数のベアリング16を介して回転可能に支持されている。主軸15の軸心に沿って形成された貫通孔15a内にはドローイングバー17が配設されている。このドローイングバー17は、主軸15の貫通孔15a内を前後方向に摺動可能に挿通されている。このドローイングバー17には、その軸心に沿って前後方向にクーラント通路18が穿設されている。該バー17は付勢部材としての皿バネ19によって後退方向(図1の右方)に付勢されている。
【0011】
図1及び図2に示すように、主軸頭12の前端面には外側リング21が固着され、主軸15の前端面には内側リング22が固着されている。図2に示すように、内側リング22内方において主軸15の前端部にはカラー23が配設され、そのカラー23前端部の対向位置には、一対の保持孔24が穿設されている。各保持孔24内にはボール25が嵌入されている。
【0012】
前記ドローイングバー17の前端部には、前記カラー23の保持孔24と対応する位置に、一対の第一凹部26が半球状に窪んだ形状に穿設されるとともに、各第一凹部26の前方には第二凹部27がテーパ状に形成されている。図1及び図2に示すように、これら第一凹部26及び第二凹部27は、前記一対のボール25と係合することができるようになっている。内側リング22の内周面は、前端側(図2の左方)ほど拡がるテーパ形状に形成されたテーパ孔28となっている。
【0013】
図2に示すように、主軸15の前端部には工具31を装着した工具ホルダ32が嵌脱可能に装着される。この工具ホルダ32の後端部にはテーパシャンク33が突出されている。工具ホルダ32の後部をボール25を介して主軸15側へ押し込むか又は引き出すことによって、工具ホルダ32をクランプ又はアンクランプさせることができるように構成されている。前記テーパシャンク33の中央部には、前記カラー23の保持孔24と対応する位置に一対の固定孔34が穿設され、前記一対のボール25と係合することができるようになっている。
【0014】
この実施形態では、前記ドローイングバー17、カラー23、ボール25、第一凹部26、第二凹部27及びテーパ孔28等により前記工具ホルダ32のクランプ機構を構成している。
【0015】
工具ホルダ32から工具31の前端に至る工具31の軸心にはクーラント通路18が穿設されている。そして、図2に示す工具ホルダ32のクランプ状態において前記ドローイングバー17に穿設されたクーラント通路18と連通するようになっている。
【0016】
図1,3に示すように、前記ドローイングバー17の後端部にはバネ受け部材41が嵌合され、ビス42によってドローイングバー17に固定されている。図2に示すように前記主軸15の貫通孔15aに形成した段差部15bには皿バネ19の前端側を受け止めるバネ受け座43が配置されている。
【0017】
図3に示すように、前記主軸15の貫通孔15aの後端部内周面には可動部材44が軸線方向の往復動可能に収容され、該可動部材44の前端面は前記バネ受け部材41の後端面に接合されている。前記可動部材44の中央部にはストローク規制部材45がラジアル方向に貫通固定されている。このストローク規制部材45は主軸15の後端部に形成した案内溝15cに沿って主軸15の軸線方向に所定のストローク範囲で往復動可能に挿入されている。
【0018】
前記可動部材44及びストローク規制部材45の中心部にはクーラント供給管46が貫通固定され、該クーラント供給管46の前端部は前記ドローイングバー17の後端部に嵌入接合されている。前記外筒13の後端部には位置規制筒体47が軸線方向の往復動可能に収容され、該位置規制筒体47は外筒13の所定位置に固定した位置規制環48によって後方への位置が規制されている。前記主軸15の後端部にはフランジ継ぎ手50が連結され、図示しない回転駆動機構に連結されている。前記クーラント供給管46の後端部にはクーラント供給管49の前端部が嵌入されている。そして、図示しないクーラント供給源からクーラントがクーラント通路18を通してドローイングバー17内に供給されるようになっている。
【0019】
次に、この発明の要部構成について説明する。
前記可動部材44の外周面には環状溝44aが形成され、該環状溝44aには第1シールリングとしてのシールリング51が収容されている。前記可動部材44の外周面にはグリース収容溝44bが形成され、該グリース収容溝44bにはグリースが収容されている。
【0020】
前記クーラント供給管46の前端外周部には環状溝46aが形成され、両溝にはシールリング52が収容され、ドローイングバー17とクーラント供給管46との接合部のシールを行うようにしている。
【0021】
一方、図2に示すように前記ドローイングバー17の前端外周面には環状溝17aが形成され、該溝には第2シールリングとしてのシールリング53が収容されている。そして、ドローイングバー17の前端外周面と主軸15の貫通孔15aの内周面との間の気密を保持するようになっている。
【0022】
前記主軸15の貫通孔15aの内周面とドローイングバー17の外周面とにより形成された前記バネ19の収容室20は、シールリング51,53により気密保持されている。このバネ19の密閉収容室20内には、防錆気体としてのアルゴン、窒素等の不活性ガスが封入されている。前記皿バネ19には防錆剤としてグリースが付着されている。
【0023】
上記実施形態の主軸装置11の作用について以下に説明する。
図2は主軸15に工具ホルダ32が装着されたクランプ状態の主軸装置11を示す。この状態において、工具ホルダ32を交換する場合には、まず、主軸15がオリエンテーションされる。図3に示されるようにこの状態で主軸装置11各部の動作を制御する図示しない制御装置の制御により、クーラント供給管49が左方へ前進されると、可動部材44、クーラント供給管46、ストローク規制部材45及びドローイングバー17が皿バネ19の付勢力に抗して前進される。このとき、ドローイングバー17前端部の第二凹部27に係合されていた一対のボール25は、いずれもカラー23の外周面よりも内方に移動されて第一凹部26と係合され、図1に示されるようなアンクランプ状態になる。
【0024】
次に、図示しない工具交換装置の工具交換アームにより工具ホルダ32を主軸15の前端部から引き抜くことによって、工具ホルダ32のテーパシャンク33がテーパ孔28から離間される。
【0025】
その後、図示しない工具交換アームにより交換用の別の工具ホルダ32のテーパシャンク33をテーパ孔28内に挿入した後、皿バネ19の付勢力を利用してドローイングバー17を後方に摺動させる。このとき、カラー23前端部の両第一凹部26と係合されていた一対のボール25は、ドローイングバー17の摺動に伴って、第二凹部27と係合されるとともに、テーパシャンク33の固定孔34と係合されることによって、工具ホルダ32を主軸15の前端部に抜け止め係止することができる。
【0026】
その結果、主軸装置11は再び図2に示されるようなクランプ状態になる。この交換された工具31を装着したクランプ状態の工具ホルダ32を、主軸15によって回転させてワークを加工する場合には、図示しない制御装置により、図2に矢印で示されるように、ドローイングバー17、工具ホルダ32及び工具31のクーラント通路18内に、クーラントを供給しながら主軸15を回転させる。
【0027】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)前記実施形態では、ドローイングバー17と主軸15との間に形成された皿バネ19の収容室20の後端部側をシールリング51によりシールし、前端側をシールリング53によりシールし、密閉収容室とした。又、皿バネの密閉収容室20内にアルゴン、窒素等の不活性ガスを封入し、皿バネ19にグリースを付着した。このため、外気の侵入が阻止されて皿バネ19が酸素により錆び付くことを防止でき、皿バネ19の損傷を未然に防止することができる。又、クランプ状態とアンクランプ状態の切り換え動作を長期にわたって安定して行うことができる。
【0028】
(2)前記実施形態では、可動部材44の環状溝44aにシールリング51を係合し、ドローイングバー17の環状溝17aにシールリング53を係合するシール構造を採用した。このため、バネ密閉収容室20の密封構造を簡単かつ安価に構成することができる。
【0029】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。なお、前記実施形態と同様の機能を有する部材は同一の符号を付して説明を省略する。
○図4に示す主軸装置11に具体化してもよい。この主軸装置11は工具ホルダ32のテーパシャンク33の後端部にプルスタッド55が設けられている。ドローイングバー17の前端部にはボール25を収容する凹部56が設けられている。そして、ドローイングバー17を左方に押動することによりボール25が凹部56から外方に退避してボール25とプルスタッド55との係合が外れ、工具ホルダ32がアンクランプ状態となる。反対に、工具ホルダ32が主軸15に押し込まれた状態で、皿バネ19の付勢力によりドローイングバー17が左方のアンクランプ位置から右方に移動されると、プルスタッド55に凹部56内のボール25が係合され、図4に示すように工具ホルダ32がクランプされる。なお、この別例の基本構造は例えば特開平11−216632号公報に開示されている。
【0030】
この別例も前記実施形態と同様の効果を有する。
○図5に示すように、前記ドローイングバー17に対しバネ受け部材41と可動部材44を一体に形成してもよい。この場合には密閉収容室20の後端部側のシールリング51により気密を保持することができる。
【0031】
○図示しないが、前記バネ受け座43を省略し、主軸15の段差部15bに皿バネ19を当接してもよい。
○バネの密閉収容室20に不活性ガスを封入する機構として、主軸15に対し外部と収容室20を連通する二つの通路を設け、一方の通路により空気を外部に放出し、他方の通路から不活性ガスを注入するようにしてもよい。この場合には両通路にそれぞれ逆止弁を設けるとよい。
【0032】
○防錆油等の防錆液体を収容室20に収容してもよい。
○皿バネ19に代えてコイルバネを用いてもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明はクランプ機構のドローイングバーを付勢する付勢部材の錆び付きを防止してその破損を防止でき、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の工作機械の主軸装置を示す縦断面図。
【図2】 工具ホルダのクランプ状態を示す縦断面図。
【図3】 アンクランプ状態を示す縦断面図。
【図4】 この発明の別例を示す縦断面図。
【図5】 この発明の別例を示す部分断面図。
【符号の説明】
11…主軸装置、12…主軸頭、15…主軸、17…ドローイングバー、20…密閉収容室、44…可動部材、44a…環状溝、45…ストローク規制部材、47…位置規制筒体、51…第1シールリングとしてのシールリング、53…第2シールリングとしてのシールリング。

Claims (4)

  1. 主軸頭の内部に主軸を回転可能に支持し、該主軸の前端部に工具ホルダをクランプするクランプ機構を装着し、主軸の貫通孔に前記クランプ機構のクランプ動作又はアンクランプ動作を行うドローイングバーを収容し、前記ドローイングバーの外周面と主軸の貫通孔の内周面との間に該ドローイングバーをクランプ方向に付勢する付勢部材を収容した主軸装置において、
    前記付勢部材の後端はドローイングバーの後端部に設けたバネ受け部材に係止され、付勢部材の前端は、主軸の貫通孔の内周面に形成した段差部に係止され、前記バネ受け部材に接合した可動部材の外周面と主軸の貫通孔の内周面との間には第1シールリングが介在され、前記ドローイングバーの前端寄り外周面と主軸の貫通孔の内周面との間には第2シールリングが介在され、前記両シールリングの間に前記付勢部材の収容室を密閉状態に保持する密閉収容室が形成され、該密閉収容室に防錆剤、防錆液体又は防錆気体封入されていることを特徴とする主軸装置。
  2. 主軸頭の内部に主軸を回転可能に支持し、該主軸の前端部に工具ホルダをクランプするクランプ機構を装着し、主軸の貫通孔に前記クランプ機構のクランプ動作又はアンクランプ動作を行うドローイングバーを収容し、前記ドローイングバーの外周面と主軸の貫通孔の内周面との間に該ドローイングバーをクランプ方向に付勢する付勢部材を収容した主軸装置において、
    前記ドローイングバーの後端部にはバネ受け部材が一体に形成され、該バネ受け部材の外周面と主軸の貫通孔内周面との間には第1シールリングが介在され、前記ドローイングバーの前端寄り外周面と主軸の貫通孔の内周面との間には第2シールリングが介在され、前記両シールリングの間に前記付勢部材の収容室を密閉状態に保持する密閉収容室が形成され、該密閉収容室には防錆剤、防錆液体又は防錆気体が封入されている主軸装置。
  3. 請求項1または請求項2において、前記ドローイングバーの中心部には軸心方向にクーラント通路が形成されている主軸装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、前記付勢部材は、皿バネ又はコイルバネである主軸装置。
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