JP4167554B2 - インモールド転写成形方法及び打痕除去フィルム - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、連続フィルムを固定金型と可動金型間を通過させるインモールド転写成形方法、及び該インモールド転写成形方法に用いられる打痕除去フィルムであって、成形品の打痕を防止して成形品の歩留を向上させることができるインモールド転写成形方法及び打痕除去フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、固定金型と可動金型により形成されるキャビティ内に連続フィルムを通過し、この連続フィルムの間に樹脂を流入させて成形品を成形するインモールド転写成形方法があった(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかるインモールド転写成形方法では、キャビティ内に箔バリ、ゴミ等の異物が残り、成形品の表面に打痕を形成し、成形品の歩留が低下するという問題点があった。
【0003】
かかる成形品の打痕、成形品の歩留の低下を防止するため、種々のインモールド転写成形方法が開発されている。例えば、特願2002-263619では、連続フィルムの両端を押さえることにより、キャビティ内への異物進入を防止し、打恨による歩留まりを押さえている。
【0004】
【特許文献1】
特許公開2001-260168号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のようなインモールド転写成形方法では、連続フィルムの両端を押さえていない時に、キャビティ内への異物進入する可能性がある。そして、一度キャビティ内への異物が進入すると、連続して打痕が形成され、かかる異物を除去するために装置を停止しなければならないという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、キャビティ内に残った異物を除去することで、連続して成形品に打痕が発生することを防止して成形品の歩留を向上させることができるインモールド転写成形方法、及び該インモールド転写成形方法に用いられる打痕除去フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る代表的なインモールド転写成形方法は、少なくともベースフィルム層と、その上に形成された転写層とを有する連続フィルムを固定金型と可動金型との間に通過させて、該連続フィルムの前記転写層を成形品に転写するインモールド転写成形方法であって、ベースフィルムの表面に粘着層を積層した打痕除去フィルムを用い、前記連続フィルムを前記固定金型及び前記可動金型の間に通過させる段階と、前記打痕除去フィルムを、前記連続フィルムと、前記固定金型または前記可動金型に形成されたキャビティとの間を、前記粘着層を前記キャビティに対向させて通過させる段階と、前記可動金型と前記固定金型を合わせた上で前記キャビティ内に合成樹脂を射出して成形品を成形する段階と、前記可動金型と前記固定金型を開き、前記転写層が転写された成形品を前記連続フィルムから剥離させる段階と、前記連続フィルムを所定距離だけ送るとともに、前記打痕除去フィルムを前記キャビティから剥離させた後、所定距離だけ送る段階と、からなることを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明に係る代表的な打痕除去フィルムは、連続フィルムを固定金型と可動金型間を通過させるインモールド転写成形に用いられる打痕除去フィルムであって、該打痕除去フィルムは、ベースフィルムの表面に粘着層を積層して構成し、前記粘着層を前記固定金型または可動金型に形成されるキャビティに対向させて、前記連続フィルムと前記キャビティ間を通過させることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係るインモールド転写成形方法及び打痕除去フィルムの実施形態について、図を用いて説明する。
【0010】
図1に、本実施形態により製造される加飾付き樹脂成形品の例を示す。この加飾付き樹脂成形品Pは携帯電話等の電子機器表示窓のパネルとして用いられる。図1に示す加飾付き樹脂成形品Pは透明なアクリルの板体1aであって周囲に枠1bを印刷し、中央部に液晶画面を表示するための透明な表示窓1cを残している。
【0011】
以下、本実施形態に係る加飾付き樹脂成形品Pの製造方法について説明する。本実施形態は、連続フィルムを送り出す形式のインモールド転写成形方法、及びこのインモールド転写成形方法に用いられる打痕除去フィルムの例である。
【0012】
図2乃至図7に示すように、射出成形金型は、固定金型3、可動金型4からなり、固定金型3と可動金型4との間の可動金型4側に連続フィルム7及び打痕除去フィルム12を連続して通過させる。
【0013】
固定金型3には、透明樹脂を注入するスプルー形成部3aと、これに連結するキャビティ3bが形成されている。また、可動金型4には、キャビティ4bが形成されている。スプルー形成部3aは、キャビティ3bの中央に直接連結しており、キャビティ3b、4bは、連続フィルム7、打痕除去フィルム12の通過領域内に形成されている。
【0014】
ここで、図2、図3に示すように、可動金型4には、第1の巻き取り装置5と第2の巻き取り装置6とが取り付けられている。それぞれの巻き取り装置5、6は、送り出しロール5a、6aと、巻き取りロール5bを有しており、両者間に連続フィルム7、打痕除去フィルム12を巻き掛けている。
【0015】
連続フィルム7と打痕除去フィルム12は、それぞれ送り出しロール5a、6aに巻き付けられて保持され、先端を固定金型3と可動金型4との間を通過させて、巻き取りロール5bに巻き付けられることで準備を完了する。
【0016】
ここで図4(a)に示すように、連続フィルム7は、PET製のベースフィルム8上に順に、接着性を有しない材質からなる剥離層9、転写層を形成する印刷層10と接着層11を積層している。また図4(b)に示すように、打痕除去フィルム12は、PET製のベースフィルム13の表面に粘着層14を積層している。粘着層14は、所定の温度になると接着する感熱接着層又は、所定の圧力で接着する感圧接着層により形成されている。尚、図5(a)に示すように、連続フィルム7の転写層は、印刷層10に変えて表面の硬度を向上させるためのハードコート層としてUVハードクリア層15を積層したものでもよい。また、図5(b)に示すように、連続フィルム7の転写層は、剥離層9と印刷層10の間にUVハードクリア層15を積層したものでてもよい。
【0017】
印刷層10には印刷が施された部分と施されない部分が形成され、この印刷が施されない部分から裏面に、透明アクリル樹脂層がのぞくことで、透明な表示窓(図1参照)が形成されている。また、印刷層10は独立した印刷パターンを所定間隔で複数形成している。
【0018】
連続フィルム7は、可動金型側にベースフィルム8がキャビティ4bに対面するように配置される。打痕除去フィルム12は、連続フィルム7と可動金型4との間を、粘着層14をキャビティ4bに対向させて通過するように配置される。連続フィルム7、打痕除去フィルム12は、幅が広く、キャビティ3b、4bの全体を覆うことができる。
【0019】
そして、巻き取り装置5、6を作動させて、連続フィルム7と打痕除去フィルム12が平行するように固定金型3と可動金型4の間に間欠送りされる。この間欠送り作業は、連続フィルム7の印刷パターンが、固定金型3、可動金型4のキャビティ3b、4bと常に一致するように制御される。なお、打痕除去フィルム12については、連続フィルム7のような高精度の間欠送りでなくともよい。
【0020】
次に、樹脂の射出工程について説明する。図2、図3に示すように、巻き取り装置5を作動させて、連続フィルム7、打痕除去フィルム12を固定金型3と可動金型4の間に間欠送りする。そして、連続フィルム7の印刷パターンを連続フィルム7の移動方向下流側のキャビティ3b、4bの位置に停止させ、その後、図6(a)に示すように、固定金型3と可動金型4とを合わせ型閉めする。
【0021】
そして、図6(b)に示すように、固定金型3と可動金型4とを合わせた上でスプルー形成部3aに透明樹脂を射出する。射出された透明樹脂は、連続フィルム7、打痕除去フィルム12を可動金型4側に付勢しながらキャビティ3b、4bに充填されて連続フィルム7に印刷された絵柄等が射出された樹脂表面に転写される。このとき、打痕除去フィルム12の粘着層14がキャビティ4bに貼着し、キャビティ内に残った箔バリ、ゴミ等の異物が粘着層14に付着する。
【0022】
図6(c)に示すように、樹脂が硬化した後、固定金型3と可動金型4を開く。そして、固定型側に残した樹脂が硬化した成形品21をバキューム式の取出機(不図示)により吸引して取り出す。この際、硬化した樹脂は、連続フィルム7の接着層11に接着しており、成形品21の取り出しとともに連続フィルム7は可動金型4から離れる。一方、打痕除去フィルム12は粘着層14がキャビティ4bに貼着したまま、可動金型4に貼着している。
【0023】
そして、図6(d)に示すように、連続フィルム7の剥離層9にて、成形品21と連続フィルム7を分離させる。その後、成形品21からスプルー形成部3aに形成されたスプルーを切断除去し樹脂成形品Pが形成される。
【0024】
樹脂成形品Pの形成後、次の樹脂成形品Pの形成に備え、巻き取り装置6を作動させて打痕除去フィルム12をキャビティ4bから剥離させる。このとき、キャビティ4b内に残った箔バリ、ゴミ等の異物が粘着層14に付着したまま打痕除去フィルム12が剥離し、キャビティ4b内から異物が除去される。
【0025】
尚、打痕除去フィルム12の剥離は、独立した工程として設けなくてもよく、打痕除去フィルム12の間欠送りにより打痕除去フィルム12を剥離させることとしてもよい。また、打痕除去フィルム12は、樹脂成形品Pを成形するたびに間欠送りせずに、樹脂成形品Pを所定数成形するごとに間欠送りすることとしてもよい。
【0026】
また、打痕除去フィルム12が送り出しロール6aに巻き付けられて保持されている構成として説明したが、連続フィルム7と打痕除去フィルム12を二重にして送り出しロール5a、巻き取りロール5bに巻きつけてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、連続フィルム7、打痕除去フィルム12を平行して送ることとして説明したが、図7に示すように、打痕除去フィルム12を巻き取る巻き取りロール6bを設け、連続フィルム7、打痕除去フィルム12を交差して送ることとしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、連続フィルム7、打痕除去フィルム12は、可動金型4側を通過することとしたが、固定金型3側を通過することとしてもよいし、固定金型3、可動金型4の両側を通過させてもよい。また、打痕除去フィルム12は、固定金型と可動金型の間に2つの連続フィルムを通過させる両面インモールド転写成形方法に用いることもできる。
【0029】
このように、打痕除去フィルム12を可動金型4に貼着したまま、成形品21の取り出しや、スプルーの切断を行うことにより、カットゴミ等の異物が金型のキャビティ3b、4b内に進入することを防止することができる。
【0030】
また、キャビティ4b内への異物が進入した場合でも、打痕除去フィルム12の粘着層14にキャビティ4b内に残った異物を付着させて除去することにより、連続して樹脂成形品Pに打痕が発生することを防止することができ、樹脂成形品Pの歩留を飛躍的に向上させることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、打痕除去フィルムを用いることにより、キャビティ内への異物の進入を防止できるとともに、キャビティ内に残った異物を除去することにより連続して成形品に打痕が発生すること防止することができ、成形品の歩留を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の樹脂成形品の斜視図である。
【図2】固定金型と可動金型の間に連続フィルム、打痕除去フィルムを連続して通過させる段階の説明図である。
【図3】可動金型側に連続フィルム、打痕除去フィルムを連続して通過させた状態の平面図である。
【図4】連続フィルム、打痕除去フィルムの断面図である。
【図5】他の連続フィルムの断面図である。
【図6】樹脂成形品の製造工程の説明図である。
【図7】可動金型側に連続フィルム、打痕除去フィルムを交差して通過させた状態の平面図である。
【符号の説明】
P …樹脂成形品
1a …板体
1b …枠
1c …表示窓
3 …固定金型
3a …スプルー形成部
3b …キャビティ
4 …可動金型
4b …キャビティ
5、6 …巻き取り装置
5a、6a …送り出しロール
5b、6b …巻き取りロール
7 …連続フィルム
8、13 …ベースフィルム
9 …剥離層
10 …印刷層
11 …接着層
12 …打痕除去フィルム
14 …粘着層
15 …UVハードクリア層(ハードコート層)
21 …成形品
Claims (9)
- 少なくともベースフィルム層と、その上に形成された転写層とを有する連続フィルムを固定金型と可動金型との間に通過させて、該連続フィルムの前記転写層を成形品に転写するインモールド転写成形方法であって、
ベースフィルムの表面に粘着層を積層した打痕除去フィルムを用い、
前記連続フィルムを前記固定金型及び前記可動金型の間に通過させる段階と、
前記打痕除去フィルムを、前記連続フィルムと、前記固定金型または前記可動金型に形成されたキャビティとの間を、前記粘着層を前記キャビティに対向させて通過させる段階と、
前記可動金型と前記固定金型を合わせた上で前記キャビティ内に合成樹脂を射出して成形品を成形する段階と、
前記可動金型と前記固定金型を開き、前記転写層が転写された成形品を前記連続フィルムから剥離させる段階と、
前記連続フィルムを所定距離だけ送るとともに、前記打痕除去フィルムを前記キャビティから剥離させた後、所定距離だけ送る段階と、
からなることを特徴とするインモールド転写成形方法。 - 前記打痕除去フィルムを前記連続フィルムに平行して送ることを特徴とする請求項1に記載のインモールド転写成形方法。
- 前記打痕除去フィルムを前記連続フィルムに交差して送ることを特徴とする請求項1に記載のインモールド転写成形方法。
- 前記粘着層を感熱接着層により形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインモールド転写成形方法。
- 前記粘着層を感圧接着層により形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインモールド転写成形方法。
- 前記転写層は、接着層の表面側に、印刷層および/またはハードコート層を有し、ベースフィルム層上に積層された剥離層の上に積層されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインモールド転写成形方法。
- 連続フィルムを固定金型と可動金型間を通過させるインモールド転写成形に用いられる打痕除去フィルムであって、
該打痕除去フィルムは、ベースフィルムの表面に粘着層を積層して構成し、
前記粘着層を前記固定金型または可動金型に形成されるキャビティに対向させて、前記連続フィルムと前記キャビティ間を通過させることを特徴とする打痕除去フィルム。 - 前記粘着層を感熱接着層により形成していることを特徴とする請求項7に記載の打痕除去フィルム。
- 前記粘着層を感圧接着層により形成していることを特徴とする請求項7に記載の打痕除去フィルム。
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