JP3863984B2 - 射出成形同時絵付方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形と同時に型内で図柄や文字等が施された絵付シートを射出樹脂成形体の表面に一体的に接着積層して加飾積層品(製品)を得るようにした射出成形同時絵付装置及び方法並びにそれに用いる絵付シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
射出成形と同時に射出樹脂成形体の表面に絵付シートを一体的に接着する射出成形同時絵付方法としては、従来より幾つもの態様が提案されているが、それらの大半は、次の(a)〜(i)の工程の全部又は幾つかを記述順に又はその順番を入れ換えて、順次、又は複数の工程を同時に重複してもしくは並列的に行うようにされている(特公昭50−19132号、実公平3−56344号、特公平7−41637号公報等を参照)。
【0003】
(a)絵付シートを射出成形に用いられる雌型のパーティング面上に供給するシート供給工程。
(b)絵付シートを雌型のパーティング面に固定保持するクランプ工程。
(c)絵付シートを熱盤等により加熱軟化させる加熱軟化工程。
(d)絵付シートを真空吸引及び/又は圧空供給等により雌型のキャビティに沿わせるように延伸させる延伸工程(予備成形工程)。
(e)雌型と雄型の一方(通常は雌型)を他方(通常は雄型)側へ移動させて型締めを行う型締め工程。
【0004】
(f)雌型と雄型との間に形成されるキャビティ内に雄型側から流動状態の樹脂(熔融樹脂等)を注入充填して固化せしめて射出成形を行う射出成形工程。
(g)雌型と雄型とを離間させる型開き工程。
(h)絵付シートのうちの射出樹脂成形体に接着付随させるべき部分を他の部分(余剰部分)から切り離すシートトリミング工程。
(i)絵付シートが接着積層された積層品を雄雌両成形型から取り出す取出工程。
【0005】
なお、複数の工程を同時に重複して行うとは、複数の工程が一工程に含まれることをいい、例えば、前記(e)の型締め工程において絵付シートを雌型と雄型との間に挟んで固定保持するようになせば、該型締め工程と同時に重複して前記(b)のクランプ工程が行われたことになり、また、前記(f)の射出成形工程において絵付シートを射出された熔融樹脂の熱と圧力により延伸させるようになせば、該射出成形工程と同時に重複して前記(d)の延伸工程が行われたことになる場合をいう。
【0006】
また、絵付シートとしては、製品種別に応じて貼合わせ積層シート(ラミネートシート)と転写シートのいずれかが用いられ、ラミネートシートである場合には、射出成形によりそのままで絵付けが行われたことになり、射出樹脂成形体の表面にシート全層が接着一体化して化粧層となる。それに対し、絵付シートが転写シートである場合には、射出樹脂成形体の表面に一体化した絵付シートのうちの支持体シートを剥離し、装飾層等の転写層のみを射出樹脂成形体側に残留させて化粧層となすことにより絵付けが完了する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の射出成形同時絵付方法及び装置においては、通常、連続的に巻き出される長尺帯状の絵付シートから先端側1ショット分を切り離すにあたっては、例えば、特開平6−315950号公報等にも所載のように、雌型の上流側に、切断刃(カッター)や加熱線條等の切断部の形状が絵付シートの搬送方向に対して垂直ないし若干傾斜した角度を有する切断手段を配備し、この切断手段により、連続的に巻き出される長尺帯状の絵付シートから先端側1ショット分を切り離すようにされているので、絵付シート(の次ショット分)の先端切口形状は直線となっている。
【0008】
このように先端切口形状が直線とされている絵付シートを、雌型のパーティング面上に、それに沿うように搬送して供給すると、次のような問題が生じることがあった。
この問題を以下に、図10〜図12に示される射出成形同時絵付装置10を参照しながら説明する。ここでは、説明が煩瑣になるのを避けるため、概略構成のみを簡単に説明する。
【0009】
図示射出成形同時絵付装置10においては、雌型12(雄型は図示省略)に得るべき積層品(製品)の形状に対応したキャビティ13が設けられており、さらに、前記キャビティ13に開口する所定本の真空吸引孔(図示省略)が設けられ、また、雄型には、樹脂射出用のランナーやゲート等が設けられている。
前記雌型の真空吸引孔は、真空吸引通路及び導管を介して外部に設置された真空源としての真空タンク、真空ポンプに接続されている。
【0010】
また、前記雌型12には、絵付シートSを雌型12のパーティング面14に押圧固定するための矩形枠状のクランパー20が付設されている。このクランパー20は、雌型12の四隅近くに設けられた貫通穴に摺動自在に嵌挿された4本の連結ロッド24によって図示していない駆動機構により雌型12のパーティング面14に対して垂直方向に進退動できるようになっている。
【0011】
さらに、前記雌型12のパーティング面14には、前記キャビティ13を囲むように、Oリング22が装着される環状溝23が設けられている。前記Oリング22は、前記枠状のクランパー20が、間に絵付シートSを挟んで雌型12のパーティング面14に押し付けられた際、前記キャビティ12と外部とを気密的に遮断する役目を果たす。
【0012】
一方、前記雌型12の上流側(上側)には、上流に配置された巻出機から連続的に巻き出される長尺帯状の絵付シートSを、雌型のパーティング面上に、それに沿うように搬送して供給すべく、絵付シートを挟み得るように上下一対のニップロール62と左右一対のコ字状のガイド63、64が配備されている。
また、前記ニップロール62上流側近傍には、前記加熱軟化工程を行うための熱盤40が配置(待機)されている。
【0013】
このような構成とされた射出成形同時絵付装置10においては、射出成形同時絵付を行うにあたり、まず、雌型12のパーティング面14上に絵付シートSを供給するシート供給工程が行われるのであるが、この場合、絵付シートSはニップロール62により前記ガイド64に案内されながら、その先端側を自由にした状態で、前記雌型パーティング面14とクランパー20及び連結ロッド24との間に形成されたスペースを通るように上から下へと下方に垂らすように搬送される。
【0014】
ところが、雌型パーティング面14上の絵付シートSには、特に先端部に、幅方向に不所望なうねりが生じている場合があり、また加熱によるシートカットでカット先端部が熱によるうねりが生じることもあり、図11、図12に示される如くに、その先端うねり部分Saが雌型12のキャビティ13の開口縁部13aに引っ掛かって、絵付シートの先端部がそれ以上送られないという不具合が生じることがあった。
絵付シートSの先端部に上記不所望なうねりが生じる原因は、シートの性状や雰囲気温度等にもよるが、とりわけ、絵付シートの次ショット分が雌型12の上流側で位置せしめられているとき、待機中の熱盤40により、その先端部の幅方向中央部分(図11においてSeで示されている部分)が加熱されることも主因の一つと考えられる。
【0015】
この場合、絵付シートSを前記のように上下一対のニップロール62と左右一対のコ字状のガイド64により下方に垂らすように搬送するのではなく、例えば、絵付シートSの先端部を搬送チャックで挟持して、該搬送チャックと共に下方に移動させるようになせば、前記した不具合は生じ難くなるが、このように搬送チャックを使用すると、搬送チャック及びその駆動機構が必要となって装置構成が複雑となるとともに装置コストも高くなり、また、絵付シートを搬送した搬送チャックを次ショットに備えて雌型12の上流側に戻す必要があるため、サイクルタイムが増加し、生産性の面からも良いとはいえない。
【0016】
本発明は、上述の如くの問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、絵付シートの先端部が雌型キャビティの開口縁部に引っ掛かって搬送に支障を来すように事態を生じ難くでき、かつ、装置構成を簡素にできて装置コストを低く抑えることができ、また、サイクルタイムを可及的に減少させて生産性の向上を図り得る絵付シート並びに射出成形同時絵付方法及び装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成すべく、本発明に係る射出成形同時絵付方法は、先端切口形状が搬送方向とは反対側に凹んだ円弧の緩やかな曲線部を持つ長尺帯状の絵付シートを、雌型のパーティング面上に、それに沿うように搬送して供給するシート供給工程と、前記絵付シートを前記雌型のパーティング面上に固定保持するクランプ工程と、前記長尺帯状の絵付シートから次ショット分の先端切口形状が搬送方向とは反対側に凹んだ円弧の緩やかな曲線部を有するように先端側1ショット分を切り離す切断工程と、前記絵付シートを加熱軟化させる加熱軟化工程と、前記絵付シートを前記雌型のキャビティに沿わせて密着させるように延伸させる延伸工程と、前記雌型と雄型の一方を他方側へ移動させて型締めを行う型締め工程と、前記雌型と雄型との間に形成されるキャビティ空間に前記雄型側から流動状態の樹脂を注入充填する射出成形工程と、前記雌型と雄型とを離間させる型開き工程と、前記絵付シートが接着積層された積層品を前記雌型から取り出す取出工程と、を含んでなる。
【0018】
また、本発明に係る射出成形同時絵付装置は、上記方法を実施するためのもので、前記雌型の上流側に、切断部形状が前記絵付シートの搬送方向とは反対側に凹んだ円弧の緩やかな曲線部を有している切断手段が配備されてなる。
【0019】
この場合、好ましい態様では、前記切断手段は、切断部が曲線刃又は加熱線條で構成されてなる。特に、本発明では、前記加熱線條を用いることが好ましく、この場合、加熱線條としては、ニクロム線(ニッケル−クロム合金線)等の、通電することによって発熱する電熱線を使用することができ、この電熱線を前記した如くの曲線形状に曲成して使用する。
上述した如くの構成を有する絵付シートを用いた本発明の方法装置においては、雌型のパーティング面上に絵付シートを供給する以前に、該絵付シートの先端切口が、搬送方向とは反対側に凹んだ円弧等の緩やかな曲線部を有する凹状切口とされる。
【0020】
このように、絵付シートの先端切口形状が搬送方向とは反対側に凹んだ円弧等の緩やかな曲線部を有するものとされていることにより、絵付シートの先端部(凹状切口)にはうねりが生じ難くなるとともに、例え先端部にうねりが生じたとしても、凹状切口の幅方向両端部(先端)は、雌型のパーティング面上に位置してキャビティ内には入り込まず、しかも、凹状切口の先端(幅方向両端部)はその中央部分より先行しているので、仮にその中央部分(曲線部)がキャビティ内に入り込んでいても、絵付シートの進行に伴いキャビティの開口縁部を滑り出るようにしてパーティング面上に出る。
【0021】
このため、従来の、先端切口形状が直線状の絵付シートを用いた場合のように、絵付シートの先端部が雌型キャビティの開口縁部に引っ掛かって搬送に支障を来すように事態は生じず、また、搬送チャック等を使用しないで済むので、装置構成を簡素にできて装置コストを低く抑えることができ、また、サイクルタイムを可及的に減少できて生産性の向上を図り得る。
本発明において、雄雌両成形型は、鉄等の金属あるいはセラミックス等で作製され、それらに必要に応じて、真空吸引や圧空供給用に小孔(真空吸引孔等)を設ける。
【0022】
また、雌型を複数の分割部分の集合体で構成(いわゆる入れ子構造に)し、隣合う分割部分間にスリット状の隙間を形成してこの隙間を真空吸引孔として用いて真空吸引を行うようにしてもよい。
前記雄型には、流動状態の樹脂を射出するためのランナーと所要本のゲートを設ける。ゲートの本数、位置、形状等は、得るべき製品の形状等を勘案して自由に設定することができる。
【0023】
絵付シートは、ロール状に巻き取られた長尺の連続帯状シートの状態から必要量づつ(1ショット分づつ)供給するようにしてもよいし、予め所定寸法に裁断した枚葉シートを供給するようにしてもよい。また、帯状シート(の次ショット部分)もしくは枚葉シートからなる絵付シートを対向配置された雌型と雄型との間に供給するには、巻き出し機を用いて帯状シートを連続して1ショット分づつ供給するようにし、帯状シートを雌型パーティング面上に固定保持した後、次ショット分を帯状シート先端から切断する方式でもよい。生産性の面からはこの方式が推奨される。この場合、本発明では、装置コスト等を抑えるべく、搬送チャックを用いず、ニップロールやガイド等の不動部材により絵付シートを下方に垂らすように搬送することが望ましい。
【0024】
また、絵付シートを雌型パーティング面に固定保持すべくクランプ手段を付設する。クランプ手段としては、枠状の押さえ板等を用いることができ、その駆動は、型締め動作等の成形用駆動力を用いたり、エジェクターピン駆動機構の動力を利用したりすることができる他、別途に流体圧アクチュエーター等の駆動手段を設けることによりなされる。
絵付シートは、基材シートとその上に積層された装飾層からなり、基材シートを成形品と密着一体化させたまま最終製品として使用する貼り合わせ積層シート(ラミネートシート)、あるいは一旦絵付シートと成形品とを一体化させた後、装飾層(転写層)のみを成形品側に残して基材シート(支持体シート)を剥離する転写シートのいずれも使用することができる。
【0025】
前記貼合わせ積層シートの場合、基材シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。基材シートの厚さは、通常20〜500μm程度である。装飾層としては、印刷絵柄、着色又は透明塗装、金属薄膜、あるいは、硬質塗膜、防曇塗料、導電性層等の機能性層等を用いることができる。
【0026】
前記転写シートの場合は、一旦剥離性の支持体シート上に形成した絵柄層等よりなる転写層を、別の被転写体に転移させるためのもので、支持体シート上には必要に応じて離型層を設けても良く、転写層としては、剥離層、装飾層、接着剤層、等からなり、装飾層以外の層は必要に応じて選択する。装飾層としては、絵柄層、金属薄膜層(部分又は全面)あるいは硬質塗膜、防曇塗膜、導電性層等の機能性層から選ばれる。
【0027】
支持体シートは、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等、可撓性を有する熱可塑性樹脂フィルムあるいはそれらの積層体が好ましい。
射出成形用の樹脂としては、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を加熱熔融して液状ないし流動状態となったもの、あるいは、二液硬化型、触媒硬化型の樹脂、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の未硬化液等の射出成形同時絵付用として従来より知られている材料を使用でき、製品の要求物性やコスト等に応じて選定される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る射出成形同時絵付装置の一実施形態の雌型周辺部を示す斜視図、図2はその平面図、図9は型締め状態の雌型及び雄型を示している。
本実施形態の射出成形同時絵付装置10は、図9に示される如くに、凹凸形状の雌型12と雄型25とを備え、それら雌型12及び雄型25にはそれぞれ得るべき積層品の形状に対応したキャビティ13及びコア部26が設けられている。
【0029】
前記雌型12は、その底部が可動盤(図示せず)に固定されていて、流体圧シリンダのラム(図示せず)により水平方向、言い換えれば、雄型25に対して接近−離隔する方向に進退動するようされている。
なお、本実施形態では、上記のように雌型12が可動型とされていて水平方向に移動するようにされているが、これに限定される訳ではなく、例えば、雄型、雌型を上下に対向配置してそれらの一方を鉛直方向に移動させる等の形態を採用することもできる。
【0030】
また、雌型12には前記キャビティ13に開口する所定本の真空吸引孔17、17、…が所定のピッチで設けられ、この雌型の真空吸引孔17、17、…は、真空吸引通路18、導管19、及び電磁切換弁(図示せず)を介して外部に設置された真空源としての真空タンク45、ロータリー式の真空ポンプ46に接続されている。
【0031】
さらに、前記雌型12には、図1及び図2を参照すればよくわかるように、絵付シートSを雌型12のパーティング面14に押圧固定するための矩形枠状のクランパー20が付設されている。このクランパー20は、雌型12の四隅近くに設けられた貫通穴に摺動自在に嵌挿された4本の連結ロッド24によって図示していない駆動機構により雌型12のパーティング面14に対して垂直方向に進退動できるようになっている。
【0032】
前記雌型12のパーティング面14には、前記キャビティ13の全周を囲むように、Oリング22が装着される環状溝23が設けられている。前記Oリング22は、前記枠状のクランパー20が、間に絵付シートSを挟んで雌型12のパーティング面14に押し付けられた際、前記キャビティ12と外部とを気密的に遮断する役目を果たす。
【0033】
一方、雄型25は、射出成形機のノズルが装着される固定盤に固定されており、この雄型25には、外周側に前記雌型12のパーティング面14に絵付シートSを挟んで対接せしめられるパーティング面34が設けられ、このパーティング面34に、図9に示される型締め状態において前記クランパー20を収容し得る溝状凹部29が穿設されている。また、雄型25には、その前面中央部に突設されたコア部26に、前記射出成形機のノズルからの熔融樹脂を図示していないランナーを介してキャビティ空間3に射出するための、2本のゲート37が設けられている。
【0034】
上記構成に加え本実施形態においては、前記雌型12の上流側(上側)には、上流に配置された巻出機から連続的に巻き出される長尺帯状の絵付シートSを、雌型のパーティング面上に、それに沿うように搬送して供給すべく、絵付シートを挟み得るように上下一対のニップロール62と左右一対のコ字状のガイド64が配備されている。
また、前記ニップロール62上流側近傍には、前記加熱軟化工程を行うための熱盤40が配置(待機)されている。
【0035】
そして、本実施形態の射出成形同時絵付装置10においては、連続的に巻き出される長尺帯状の絵付シートから先端側1ショット分を切り離す際、次ショット分との境界の先端切口形状が搬送方向とは反対側に凹んだ円弧等の緩やかな曲線部を有するように切断すべく、前記雌型12の上流に、図6に示される如くの、切断機70が配備されている。この切断機70は、絵付シートSに対して直交する方向に進退可能とされた角筒状の可動基体71と、この可動基体72の両端部から絵付シートS側に突出する左右一対の保持部73、73と、この保持部73、73にその両端部が保持された加熱線條75と、を備えている。
【0036】
前記加熱線條75は、ニクロム線等の、通電することによって発熱する電熱線からなっており、この電熱線を、前記絵付シートSの搬送方向とは反対側に凹んだ円弧状の緩やかな中央曲線部75aを持つように曲成したものである。
この切断機70においては、前記絵付シートSの上下を一対のニップロール61及び左右一対の挟持具65を挟んだ状態において、前記曲線切断部としての加熱線條75に通電して発熱させた後、切断機70全体を絵付シートS側に前進させて、前記加熱線條75を絵付シートSに押し付けることにより、絵付シートSを熔融切断して切り離すようにされる。
【0037】
このようにして切断された絵付シートSは、その先端切口形状が、搬送方向とは反対側に凹んだ円弧状の緩やかな曲線部Sgを有するものとなる。
なお、前記切断機70は、図7において仮想線で示される如くに、前記したニップロール62とガイド64との間に配置することもできる。この場合は、クランパー20が前記挟持具65の役目を果たし、追加の部材、装置スペースを削減することができる。
したがって、本実施形態では、雌型12のパーティング面14上に絵付シートSを供給する以前に、該絵付シートSの先端切口は、搬送方向とは反対側に凹んだ円弧状の緩やかな曲線部を有する凹状切口SKとされる。
【0038】
なお、前記絵付シートSとして、ここでは、アクリル樹脂製の基材シート(厚みは125μm)と、その上にグラビア印刷法により積層された装飾層(アクリル樹脂と塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の1:1重量比混合物をバインダーとしたグラビアインキを使用)と、接着剤層(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系)とからなり、基材シートを射出樹脂成形体と密着一体化させたまま最終製品として使用する貼り合わせ積層シート(ラミネートシート)を用いている。前記装飾層(絵柄層)は、柄版を3色組み合わせた木目模様となっており、また、前記接着剤層は、スクリーン線数40線/cmのグラビアベタ印刷版(版深60μm)を2度用いて(グラビア印刷2色刷りして)形成した厚みが2μmの層である。
【0039】
上記の如くの構成とされた本実施形態の射出成形同時絵付装置10では、射出成形同時絵付を行うにあたっては、まず、雌型12のパーティング面14上に、先端が前記凹状切口SKの絵付シートSを供給するシート供給工程が行われるのであるが、この場合、絵付シートSは前記ニップロール62によりガイド63、64に案内されながら、その先端側を自由にした状態で、前記雌型パーティング面14とクランパー20及び連結ロッド24との間に形成されたスペースを通るように上から下へと下方に垂らすように搬送される。
【0040】
この場合、絵付シートSの先端切口形状が搬送方向とは反対側に凹んだ円弧状の緩やかな曲線部を有する凹状切口SKであることにより、絵付シートSの先端部(凹状切口部SK)にはうねりが生じ難くなるとともに、例え先端部にうねりが生じたとしても、凹状切口部SKの幅方向両端部Si(先端)は、図3〜図5を参照すればよくわかるように、雌型12のパーティング面14上に位置してキャビティ13内には入り込まず、しかも、凹状切口部SKの先端(幅方向両端部Si)は曲線中央部分Sgより先行しているので、仮にその曲線中央部分Sgがキャビティ13内に入り込んでいても、絵付シートSの進行に伴いキャビティ13の開口縁部13aを滑り出るようにしてパーティング面14上に出る。
【0041】
このため、従来の、先端切口形状が直線状の絵付シートを用いた場合のように、絵付シートSの先端部が雌型キャビティ13の開口縁部13aに引っ掛かって搬送に支障を来すように事態は生じず、また、搬送チャック等を使用しないで済むので、装置構成を簡素にできて装置コストを低く抑えることができ、また、サイクルタイムを可及的に減少できて生産性の向上を図り得る。
上記のようにしてシート供給工程が行われた後は、図8に示される如くに、前記クランパー20により前記雌型12のパーティング面14に押圧固定される(クランプ工程)。
【0042】
続いて、流体圧シリンダ等の移送機構42に支持された熱盤40を前記クランパー20により押圧固定されている前記絵付シートS上に移動させて、この熱盤40により前記絵付シートSを加熱軟化(例えば表面温度330℃の加熱面からの赤外線輻射で3秒間非接触加熱)させ(加熱軟化工程)、続いて、図8の仮想線矢印で示される如くに、雌型12における絵付シートSで密封されているキャビティ13内の空気が前記真空吸引孔17、17、…から真空吸引通路18及び導管19を通じて真空吸引(約5秒間)され、前記絵付シートSが前記雌型12のキャビティ13に沿わせて密着させるように延伸させる延伸工程が行われる。
【0043】
この延伸工程が行われた後は、図9に示される如くに、前記雌型12を雄型25側へ移動させて型締めを行う型締め工程が行われ、雌型12のパーティング面14と雄型25のパーティング面34とが間に絵付シートSを挟んで対接せしめられる。これにより、雌型12と雄型25との間に得るべき積層品に対応したキャビティ空間3が形成され、その後は、前記キャビティ空間3内に前記雄型25のランナー及び2本のゲート37を通じて熔融樹脂Pmが所定の射出圧をもって注入充填される射出成形工程が行われ、その後は、前記キャビティ空間3内の樹脂が硬化した後、雌型12と雄型25とを離間させる型開き工程、前記絵付シートSが接着された積層品Pを取り出す取出工程等が行われる。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明に係る絵付シートを用いた射出成形同時絵付方法及び装置によれば、絵付シートの先端部が雌型キャビティの開口縁部に引っ掛かって搬送に支障を来すように事態を生じ難くでき、かつ、装置構成を簡素にできて装置コストを低く抑えることができ、また、サイクルタイムを可及的に減少させて生産性の向上を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る射出成形同時絵付装置の一実施形態の雌型周辺を示す斜視図。
【図2】図1に示される雌型周辺の平面図。
【図3】図1に示される装置のシート供給工程の説明に供される平面図。
【図4】図3のIV矢視図。
【図5】図3のV矢視図。
【図6】図1に示される装置に備えられる切断機の一例を示す斜視図。
【図7】図6に示される切断機の配置態様の他の例を示す斜視図。
【図8】図1に示される装置のクランプ工程等の説明に供される図。
【図9】図1に示される装置の射出成形工程等の説明に供される図。
【図10】従来の射出成形同時絵付装置の一例の雌型周辺を示す斜視図。
【図11】図10に示される従来装置の雌型周辺の平面図。
【図12】図11のXI矢視図。
【符号の説明】
S 絵付シート
SK 凹状切口部
Si 幅方向両端部分
Sg 曲線中央部分
10 射出成形同時絵付装置
12 雌型
13 キャビティ
14 パーティング面
20 枠状のクランパー
25 雄型
62 ニップロール
63、64 ガイド
70 切断機
75 加熱線條
Claims (3)
- 先端切口形状が搬送方向とは反対側に凹んだ円弧の緩やかな曲線部を持つ長尺帯状の絵付シートを、雌型のパーティング面上に、それに沿うように搬送して供給するシート供給工程と、前記絵付シートを前記雌型のパーティング面上に固定保持するクランプ工程と、前記長尺帯状の絵付シートから次ショット分の先端切口形状が搬送方向とは反対側に凹んだ円弧の緩やかな曲線部を有するように先端側1ショット分を切り離す切断工程と、前記絵付シートを加熱軟化させる加熱軟化工程と、前記絵付シートを前記雌型のキャビティに沿わせて密着させるように延伸させる延伸工程と、前記雌型と雄型の一方を他方側へ移動させて型締めを行う型締め工程と、前記雌型と雄型との間に形成されるキャビティ空間に前記雄型側から流動状態の樹脂を注入充填する射出成形工程と、前記雌型と雄型とを離間させる型開き工程と、前記絵付シートが接着積層された積層品を前記雌型から取り出す取出工程と、を含んでなる射出成形同時絵付方法。
- 請求項1に記載の射出成形同時絵付方法を実施するための装置であって、前記雌型の上流側に、切断部形状が前記絵付シートの搬送方向とは反対側に凹んだ円弧の緩やかな曲線部を有している切断手段が配備されていることを特徴とする射出成形同時絵付装置。
- 前記切断手段は、切断部が曲線刃又は加熱線條で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の射出成形同時絵付装置。
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