JP4240664B2 - 射出成形同時絵付方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形と同時に型内で図柄や文字等が施された絵付シートを射出樹脂成形体の表面に一体的に接着積層して加飾積層品(積層製品)を得るようにした射出成形同時絵付装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
射出成形と同時に射出樹脂成形体の表面に絵付シートを一体的に積層して接着する射出成形同時絵付方法としては、従来より幾つもの態様が提案されているが、それらの大半は、次の(a)〜(i)の工程の全部又は幾つかを記述順に又はその順番を入れ換えて、順次、又は複数の工程を同時に重複してもしくは並列的に行うようにされている(特公昭50−19132号、実公平3−56344号、特公平7−41637号公報等を参照)。
【0003】
(a)絵付シートを射出成形に用いられる雌型のパーティング面上に供給するシート供給工程。
(b)絵付シートを雌型のパーティング面に固定保持するクランプ工程。
(c)絵付シートを熱盤等により加熱軟化させる加熱軟化工程。
(d)絵付シートを真空吸引及び/又は圧空供給等により雌型のキャビティに沿わせるように延伸させる延伸工程(予備成形工程)。
(e)雌型と雄型の一方(通常は雌型)を他方(通常は雄型)側へ移動させて型締めを行う型締め工程。
【0004】
(f)雌型と雄型との間に形成されるキャビティ内に雄型側から流動状態の樹脂(熔融樹脂)を注入充填して射出成形を行う射出成形工程。
(g)雌型と雄型とを離間させる型開き工程。
(h)絵付シートのうちの射出樹脂成形体に接着付随させるべき部分から他の部分(余剰部分)を切り離すトリミング工程。
(i)絵付シートが接着積層された積層製品を雌型又は雄型から取り出す取出工程。
【0005】
なお、複数の工程を同時に重複して行うとは、複数の工程が一工程に含まれることをいい、例えば、前記(e)の型締め工程において絵付シートを雌型と雄型との間に挟んで固定保持するようになせば、該型締め工程と同時に重複して前記(b)のクランプ工程が行われたことになり、また、前記(f)の射出成形工程において絵付シートを射出された熔融樹脂の熱と圧力により延伸させるようになせば、該射出成形工程と同時に重複して前記(d)の延伸工程が行われたことになる場合をいう。
【0006】
また、絵付シートとしては、製品種別に応じて貼合わせ積層シート(ラミネートシート)と転写シートのいずれかが用いられ、ラミネートシートである場合には、射出成形によりそのままで絵付けが行われたことになり、射出樹脂成形体の表面にシート全層が接着一体化して化粧層となる。それに対し、絵付シートが転写シートである場合には、射出樹脂成形体の表面に一体化した絵付シートのうちの支持体シートを剥離し、装飾層等の転写層のみを射出樹脂成形体側に残留させて化粧層となすことにより絵付けが完了する。
【0007】
ところで、特に絵付シートがラミネートシートである場合、1ショット分の絵付シートには、シート供給時やシートクランプ時に、それを保持固定しておく必要等があることから、得るべき積層製品に接着付随させる必要のない余剰部分が必ず生じ、積層製品を商品として完成させるには、その余剰部分をトリミングするトリミング工程が要求される。
【0008】
ここで、上記した如くに絵付シートがラミネートシートである場合の射出成形同時絵付けの実際例を、図5〜図7を参照しながら以下に簡単に説明する。図5は、従来より使用されている射出成形同時絵付装置10’の加熱軟化工程、延伸工程を示しており、この装置10’により得るべき積層製品1は、例えば、縦断面外形がコ字状のトレー形パネルであり、射出樹脂成形体P(図6)の表面に、例えば木目模様等の装飾層を有する絵付シートS(ラミネートシート)を接着積層したものである。
【0009】
前記装置10’は、前記積層製品1に対応した凹凸形状の雌型12と雄型25とを備え、前記雌型12には、得るべき積層製品1(図7)に対応したキャビティ13が設けられるとともに、延伸工程用の真空吸引手段としての、キャビティ13周りに設けられた環状の真空吸引溝16、真空吸引孔17、スリット状の真空吸引隙間15、真空吸引通路18、外部に真空源に接続された導管19等が設けられ、そのパーティング面14上には、図5のX方向から見た平面視外形が矩形枠状ないし井桁状のクランパー20が4本の摺動ロッド24(図7)を介して前記パーティング面14に対して接離する方向(X方向)に進退可能に配置され、また、前記パーティング面14の外周側にはOリング22が装着された装着溝23が形成されており、該Oリング22は前記クランパー20と対向している。
【0010】
そして、絵付シートSは、図示していない搬送チャック等のシート供給手段により雌型12のパーティング面14に供給されて、前記クランパー20によりパーティング面14に押圧固定され、これに前後して図示していないカッターや加熱線条等のシート切断手段により幅方向に切断されて1ショット分の枚葉シートとされる。また、クランパー20によりパーティング面14に押圧固定された絵付シートSを加熱軟化すべく、熱盤60が備えられている。
【0011】
この熱盤60は、熱盤移送手段62により、雄雌両成形型外の待機位置からそれらの間(雌型12のパーティング面14上)の対向加熱位置(図5の位置)に移動せしめられ、この対向加熱位置にて、前記絵付シートSを非接触状態で輻射熱によって加熱軟化するようになっている。
【0012】
一方、前記雄型25は、図示はされていないが、射出成形機のノズルが装着される固定盤に固定されており、この雄型25には、前記積層製品1形状に対応した凸部(コア部)26が設けられるとともに、その内部には、熔融樹脂射出用のランナー27及びそれに連なるゲート28が設けられている。また、前記雄型25には、図6に示される如くの型締め、射出成形工程時において前記クランパー20が収容される収容凹部29が形成されている。
【0013】
このような構成とされた本例の装置10’においては、射出成形同時絵付を行うにあたっては、まず、シート供給手段により、雌型12のパーティング面14とクランパー20との間の部分に1ショット分の絵付シートSを供給する。より詳しくは、例えば、巻出機から送りロールを介して巻き出された絵付シートSの先端部を搬送チャックにより雌型12における絵付シートSの搬送方向で見て上流側端部(上端部)付近で把持して雌型12の下流側端部付近まで引っ張って搬送し、この搬送チャックにより搬送されて来た絵付シートSの先端部を受取固定チャックにより受け取って把持固定する(図示略)。このとき、絵付シートSには所定のテンションが付与され、絵付シートSは、パーティング面14上にピーンと張った状態で配置される。
【0014】
続いて、クランパー20をパーティング面14側に前進させて、供給された絵付シートSをこのクランパー20のシート押圧面部20aによって前記パーティング面14上に押圧固定し、次いで、シート切断手段により絵付シートを雌型12の上端部付近で幅方向に切断して、1ショット分の枚葉シートとなす。(図5の状態)。
【0015】
続いて、熱盤60を、クランパー20により押圧固定されている絵付シートS上に移動させて該絵付シートSを加熱軟化させるとともに、前記した真空吸引溝16、真空吸引孔17、真空吸引隙間15等で構成される真空吸引手段による真空吸引を行って、前記絵付シートSを雌型キャビティ13に沿って密着させるべく延伸させる。
【0016】
しかる後、図6に示される如くに、雌型12を雄型25側に移動させて、雄型25と雌型12との型締めを行って、射出成形機からの熔融樹脂P’を雌型12と雄型25との間、言い換えれば、キャビティ13とコア部26とで形成される製品成形部へ射出充填し、この樹脂が固化した後、前記雄雌両成形型12、25の型開きを行い、次いで、図7に示される如くに、射出樹脂成形体P表面に絵付シートS(のうちの接着付随させるべき製品部分Sp)が接着積層された、未だ余剰部分Szがトリミングされていない積層製品1(半製品)を取り出す(通常は、雄型25に付着した状態でキャビティ13から引き離され、イジェクターピンや圧縮空気等の製品取出手段により雄型25から引き離される)。
【0017】
その後は、絵付シートSのうちの射出樹脂成形体Pに接着付随させるべき製品部分Spから余剰部分Szを切り離すトリミングを行う。ここでは、射出樹脂成形体Pの外周端縁角部が前記製品部分Spと余剰部分Szとの境界となっており、この境界部分(境界線)Jを適宜のトリミング手段で切断して完成品としての積層製品1を得る。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
前記トリミング方法としては、従来、(A)カッター等を使用してハンドワークで行う方法、(B)NC(数値制御)ルータを利用して機械的かつ自動的に行う方法、(C)境界部分(境界線)Jの形状に対応した切断刃を用いて押し切る方法、(D)前記雄雌両成形型12、25のコア部26とキャビティ13の端縁部(前記境界部分Jに相当する)に剪断刃を設けて、あるいは、剪断刃を設けた専用の一対の剪断型を用いて切断する方法が知られている。
しかしながら、上記した既案のトリミング方法(A)、(B)、(C)(D)では、それぞれ次のような問題があった。
【0019】
すなわち、前記(A)のカッターを使用したハンドワークによるトリミング方法では、複雑な形状のものをトリミングするには長時間かかり、トリミングコストが高くなる嫌いがあるとともに、作業者に多大な労力を強いることになり、また、仕上げが安定しない。
前記(B)のNCルータによるトリミング方法では、物品毎にトリミングすべき形状を装置にティーチングすることが必要であるため、初期設定が煩雑で、しかも装置が高価となる等の問題があった。
【0020】
また、前記(C)、(D)のトリミング方法では、切断刃、剪断刃等の刃部は、熱膨張や摩耗等により経時的に劣化することが避けられず、ある期間(回数)使用すると、噛み合い不良等により絵付シートを適正に切断できなくなるので、頻繁に交換しなければならず、また、刃部が劣化した場合でも型全体の交換が必要となり、トリミングに要するコストが高くなる嫌いがあった。
【0021】
本発明は、上述の如くの問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、得るべき積層製品に付随させる必要のない余剰部分を切り取るトリミング工程を、別途に専用装置を設けることを要しないで、容易かつ適正に行うことができ、もって、装置コスト、トリミングコストを可及的に低減できるとともに、生産効率の向上、省力化等も図ることができるようにされた射出成形同時絵付装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成すべく、本発明に係る射出成形同時絵付装置は、基本的には、雄雌両成形型を備え、絵付シートを前記雌型のパーティング面上に供給するとともに、該絵付シートをクランプ手段により前記雌型のパーティング面上に押圧固定し、前記雌型と雄型の型締めを行い、前記キャビティ内に前記雄型に設けられたランナー及びゲートを通じて流動状態の樹脂を射出充填し、この樹脂が固化した後、前記雌型と雄型との型開きを行って、前記絵付シートが接着積層された積層製品を前記雄雌両成形型から取り出すようにされている。
【0023】
そして、前記雄雌両成形型における、絵付シートを接着付随させるべき製品部を成形するための製品成形部に隣接してその外周側及び/又は内周側に、前記流動状態の樹脂が射出充填される製品外成形凹部が形成されるとともに、前記製品成形部と前記製品外成形凹部との境界部分がそれらより薄厚の狭窄部とされていることを特徴としている。
好ましい態様では、前記製品外成形凹部にサブマリンゲートを介して前記流動状態の樹脂を射出充填するようになっている。
【0024】
また、本発明に係る射出成形同時絵付方法は、上記装置を用いたもので、絵付シートを雌型のパーティング面上に供給するシート供給工程と、絵付シートをクランプ手段により前記雌型のパーティング面上に押圧固定するクランプ工程と、前記雌型と雄型の型締めを行う型締工程と、前記キャビティ内に前記雄型に設けられたランナー及びゲートを通じて流動状態の樹脂を射出充填する射出成形工程と、前記樹脂が固化した後、前記雌型と雄型との型開きを行う型開工程と、前記絵付シートが接着積層された積層製品を前記雄雌両成形型から取り出す取出工程と、取り出された積層製品における前記製品外成形凹部で固化した非製品部を前記製品成形部で固化した製品部に対して前記狭窄部で折るようにして切り離すとともに、前記絵付シートの境界部分に生じる応力集中を利用して、絵付シートのうちの、前記製品部に接着付随させるべき製品部分から余剰部分を切り離すトリミング工程とを含んで構成される。
【0025】
前記製品成形部は、通常、雌型のキャビティと雄型のコア部とで形成され、前記製品外成形凹部は、得るべき積層製品に窓部等が無い場合は、前記成形品成形部の外周側、つまり、前記雌型のキャビティ及び/又は雄型のコア部の外周側に形成され、得るべき積層製品に窓部等がある場合は、その窓部等に位置する絵付シートは余剰部分となるので、前記成形品成形部の外周側だけでなく、その内周側、つまり、前記窓部等に相当する、前記雌型のキャビティ及び/又は雄型のコア部の内周側にも形成する必要がある。前記製品外成形凹部は、雄型側、雌型側、或いは雄型側と雌型側の両側のいずれに設計してもよい。
【0026】
このような構成とされた射出成形同時絵付装置及び方法の好ましい態様においては、射出成形工程時に、前記雄雌両成形型における製品成形部に流動状態の樹脂が射出充填されるとともに、該製品成形部に隣接してその外周側及び/又は内周側に形成されている製品外成形凹部にも、好ましくはサブマリンゲートを介して前記流動状態の樹脂が射出充填される。
【0027】
このようにして製品成形部及び製品外成形凹部に射出充填された流動状態の樹脂が固化した後、前記雌型と雄型との型開きを行い、前記絵付シートが接着積層された積層製品を前記雄雌両成形型から取り出す(通常は、雄型に付着した状態でキャビティから引き離され、イジェクターピンや圧縮空気等の製品取出手段により雄型から引き離される)。
【0028】
この場合、取り出された積層製品(半製品)は、前記製品成形部で固化した製品部(射出樹脂成形体)に前記製品外成形凹部で固化した非製品部が前記狭窄部で固化した境界部を介して連設されており、かつ、それらの外表面には絵付シートが接着積層されている。
【0029】
次いで、取り出された積層製品における前記製品外成形凹部で固化した非製品部を前記製品成形部で固化した製品部に対して前記狭窄部で折るようにして切り離す。かかる切り離しは、ハンドワークで容易に行える。この製品部と非製品部との切り離し時には、前記絵付シートにおける製品部分と余剰部分との境界部分に応力集中が生じるので、この応力集中を利用して、絵付シートのうちの、前記製品部に接着付随させるべき製品部分から余剰部分を切り離してトリミングを行う。
【0030】
このように本発明の射出成形同時絵付装置及び方法では、雄雌両成形型に予め製品成形部に加えて製品外成形凹部を設け、その製品成形部と製品外成形凹部との境界部分を狭窄部となし、トリミング工程を、製品成形部で固化した製品部に対して製品外成形凹部で固化した非製品部を境界部で折るようにして切り離し、この切り離し時に絵付シートに生じるに応力集中を利用して、前記製品部に接着付随させるべき製品部分から余剰部分を切り離すことにより行うようにされるので、別途に専用装置を設けることを要しないで、容易かつ適正に行うことができ、装置コスト、トリミングコストを可及的に低減できるとともに、生産効率の向上、省力化等も図ることができる。
【0031】
本発明において、雄雌両成形型は、鉄等の金属あるいはセラミックス等で作製され、前記した如くに、絵付シートを接着付随させるべき製品部を成形するための製品成形部(キャビティ、コア部)に隣接してその外周側及び/又は内周側に、前記流動状態の樹脂が射出充填される製品外成形凹部を形成するとともに、前記製品成形部と前記製品外成形凹部との境界部分をそれらより薄厚の狭窄部となし、さらに、必要に応じて、真空吸引や圧空供給用に小孔(真空吸引孔等)を設ける。
【0032】
また、雌型を複数の分割部分の集合体で構成(いわゆる入れ子構造に)し、隣合う分割部分間にスリット状の隙間を形成してこの隙間を真空吸引孔(及び圧空供給孔)として用いて真空吸引(及びエアーブロー)を行うようにしてもよい。
前記雄型には、流動状態の樹脂を射出するためのランナーと所要本のゲートを設ける。ゲートの本数、位置、形状等は、得るべき製品の形状等を勘案して自由に設定することができ、また、ゲートをサブマリンゲートとして、前記製品成形部及び/又は製品外成形凹部に流動状態の樹脂を供給するようにしてもよい。
【0033】
さらに、雄型には、張り付いている積層製品を分離するためのイジェクターピン、あるいは、加圧空気噴出手段等の積層品分離手段を設けることが好ましい。また、絵付シートを雌型パーティング面に固定保持すべくクランプ手段を付設する。クランプ手段としては、従来技術の場合と同様の平面視形状で枠状ないし井桁状のものを用いることができる。
クランプ手段を雌型パーティング面に対して進退動させるには、型締め動作等の成形用駆動力を用いたり、イジェクターピン駆動機構の動力を利用したりすることができる他、別途に流体圧アクチュエーター等の駆動手段を設けることによりなされる。
【0034】
また、本発明装置では、前記クランプ工程後に、前記巻出機から巻き出された絵付シートを、前記クランプ手段より上流側において、1ショット分の枚葉シートに切断するため、前記雌型における、シート供給方向で見て上流側端部付近に、前記絵付シートを幅方向に切断するシート切断手段を設ける。このシート切断手段としては、切断刃(カッター)、ニクロム線等の電熱式の加熱線条、その他、超音波カッター、剪断機等、種々のものが使用できる。この切断手段は、通常は熱盤上に設けるのが好ましいが、クランプ手段上に設けることもできる。 さらに、本発明装置では、好ましくは、予備成形を行うべく、熱盤を備える。熱盤としては、伝導熱を用いる接触加熱方式、あるいは輻射熱や誘電加熱を用いる非接触加熱方式のいずれを採用してもよい。また、熱盤に絵付シートを幅方向に切断する切断手段を設けてもよい。切断手段としては、切断刃やニクロム線等の電熱線からなる加熱線条を用いることができる。
【0035】
絵付シートは、基材シートとその上に積層された装飾層からなり、基材シートを成形品と密着一体化させたまま最終製品として使用する貼り合わせ積層シート(ラミネートシート)、あるいは一旦絵付シートと成形品とを一体化させた後、装飾層(転写層)のみを成形品側に残して基材シート(支持体シート)を剥離する転写シートのいずれも使用することができるが、本発明は、特に、トリミング工程が必須のラミネートシートを用いる場合に有効である。
【0036】
前記貼合わせ積層シートの場合、基材シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。基材シートの厚さは、通常20〜500μm程度である。装飾層としては、印刷絵柄、着色又は透明塗装、金属薄膜、あるいは、硬質塗膜、防曇塗料、導電性層等の機能性層等を用いることができる。
【0037】
前記転写シートの場合は、一旦剥離性の支持体シート上に形成した絵柄層等よりなる転写層を、別の被転写体に転移させるためのもので、支持体シート上には必要に応じて離型層を設けても良く、転写層としては、剥離層、装飾層、接着剤層、等からなり、装飾層以外の層は必要に応じて選択する。装飾層としては、絵柄層、金属薄膜層(部分又は全面)あるいは硬質塗膜、防曇塗膜、導電性層等の機能性層から選ばれる。
【0038】
支持体シートは、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等、可撓性を有する熱可塑性樹脂フィルムあるいはそれらの積層体が好ましい。 射出成形用の樹脂としては、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を加熱熔融して液状ないし流動状態となったもの、あるいは、二液硬化型、触媒硬化型の樹脂、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の未硬化液等の射出成形同時絵付用として従来より知られている材料を使用でき、製品の要求物性やコスト等に応じて選定される。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る射出成形同時絵付装置の代表的な一実施形態を示す全体概略縦断面図である。
【0040】
本実施形態の射出成形同時絵付装置10により得るべき積層製品1は、前述した図5〜図7に示される装置10’で得られるものと同様に、縦断面外形がコ字状のトレー形パネルであり、射出樹脂成形体P(図3)の表面に、例えば木目模様の装飾層を有する絵付シートS(ラミネートシート)を接着積層したものである。
【0041】
本実施形態の射出成形同時絵付装置10は、前記した得るべき積層製品に対応した凹凸形状の雌型12と雄型25とを備え、雌型12は、図示はされていないが、その底部が可動盤に固定されていて、流体圧シリンダのラム等により水平方向(図1のX方向)、言い換えれば、雄型25に対して接近離隔する方向に進退動するようされている。
【0042】
なお、本実施形態では、上記のように雌型12が可動型とされていて水平方向に移動するようにされているが、これに限定される訳ではなく、例えば、雄型、雌型を上下に対向配置してそれらの一方を鉛直方向に移動させる等の形態を採用することもできる。
前記雌型12は、ここでは複数の分割型からなる入れ子構造のものが採用されており、分割型間にスリット状の隙間15が形成されていてこの隙間15を後述するように溝状の真空吸引孔として用いて真空吸引を行うようになっている。
【0043】
そして、この雌型12には、前記積層製品1に対応したキャビティ13が形成されるとともに、その周囲にはパーティング面14が形成されており、該パーティング面14におけるキャビティ13の外周に、該キャビティ13を囲むように絵付シートSを真空吸引するための環状のシート吸引溝16が形成されるとともに、このシート吸引溝16に所定本の真空吸引孔17が所定のピッチで開口せしめられている。
【0044】
前記真空吸引孔17は、前記雌型12内部に穿設された真空吸引通路18及び導管19を介して外部の真空ポンプに接続されており、本実施形態では、前記分割型間に形成されて前記キャビティ13の隅角部上と前記真空吸引通路18とを連通させる前記スリット状の隙間15、前記シート吸引溝16、このシート吸引溝16に開口せしめられた前記真空吸引孔17、前記真空吸引通路18、前記導管19、及び外部の真空ポンプ等で真空吸引手段が構成されている。
【0045】
さらに、前記雌型12のパーティング面14には、前記キャビティ13を囲むように、Oリング22が装着されている。このOリング22は、後述する平面視枠状のクランパー20が、間に絵付シートSを挟んで雌型12のパーティング面14に押し付けられた際、前記キャビティ12と外部とを気密的に遮断する役目を果たす。
【0046】
一方、前記雄型25は、図示はされていないが、射出成形機のノズルが装着される固定盤に固定されており、この雄型25には、図2に示される如くに、前記積層製品1に対応した凸状のコア部26が設けられるとともに、その内部には、熔融樹脂射出用の逆T字状のランナー27、及び、それに連なる柱状のメインゲート28、前記ランナー27の両端部に直交するように連設された2組のV字状のサブマリンゲート30、30、該サブマリンゲート30に連なる柱状の2本の製品外用ゲート35が設けられている。なお、前記ランナー27の周囲には熔融樹脂を流動状態で保持すべく電熱線39が配設され、また、前記サブマリンゲート30は、前記ランナー27部に連通する往路部31、この往路部31の先端に設けられて雌型12のパーティング面14(上の絵付シートS)により封止される流出部32、この流出部32から前記製品外用ゲート35の頂部付近まで伸びる復路部33とからなっており、復路部33の下流端は取出工程時に前記製品外用ゲート35から切り離しやすくするための狭窄部となっている。
【0047】
そして、雄型25には、さらに、前記製品外用ゲート35の先端部に連なるように、前記雄雌両成形型12、25における、絵付シートSを接着付随させるべき製品部(射出樹脂成形体P)を成形するためのキャビティ13とコア部26とで形成される製品成形部9に隣接してその外周側に、熔融樹脂P’が射出充填される断面三角形状の製品外成形凹部36が形成されるとともに、前記製品成形部9と前記製品外成形凹部36との境界部分にそれらより薄厚の狭窄部37が形成されており、前記製品成形部9と製品外成形凹部36とは前記狭窄部37を介して連通せしめられている。
【0048】
また、前記雌型12には、供給された1ショット分の絵付シートSを前記パーティング面14上に押圧して固定保持すべく、X方向から見た平面視形状が矩形枠状ないし井桁状のクランパー20が設けられている。このクランパー20は、その四隅に連結された4本の摺動ロッド24(図3)を介して駆動手段により前記パーティング面14に対して垂直方向(図のX方向)に進退動できるようになっている。
【0049】
ここでは、絵付シートSは、図示していない搬送チャック等のシート供給手段により雌型12のパーティング面14に供給されて、前記クランパー20によりパーティング面14に押圧固定され、これに前後して図示していないカッターや加熱線条等のシート切断手段により幅方向に切断されて1ショット分の枚葉シートとされる。また、クランパー20によりパーティング面14に押圧固定された絵付シートSを加熱軟化すべく、熱盤60が備えられている。
【0050】
この熱盤60は、熱盤移送手段62により、雄雌両成形型外の待機位置からそれらの間(雌型12のパーティング面14上)の対向加熱位置(図1の位置)に移動せしめられ、この対向加熱位置にて、前記絵付シートSを非接触状態で輻射熱によって加熱軟化するようになっている。熱盤60は、図1の例では赤外線輻射による非接触加熱方式であるが、勿論、絵付シートと接触させて熱伝導を利用する接触加熱方式であってもよい。
【0051】
このような構成とされた本例の装置10においては、射出成形同時絵付を行うにあたっては、まず、シート供給手段により、雌型12のパーティング面14とクランパー20との間の部分に1ショット分の絵付シートSを供給する。より詳しくは、例えば、巻出機から送りロールを介して巻き出された絵付シートSの先端部を搬送チャックにより雌型12における絵付シートSの搬送方向で見て上流側端部(上端部)付近で把持して雌型12の下流側端部付近まで引っ張って搬送し、この搬送チャックにより搬送されて来た絵付シートSの先端部を受取固定チャックにより受け取って把持固定する(図示略)。このとき、絵付シートSには所定のテンションが付与され、絵付シートSは、パーティング面14上にピーンと張った状態で配置される。
【0052】
続いて、クランパー20をパーティング面14側に前進させて、供給された絵付シートSをこのクランパー20のシート押圧面部20a(図3参照)によって前記パーティング面14上に押圧固定し、次いで、シート切断手段(図示略)により絵付シートを雌型12の上端部付近で幅方向に切断して、1ショット分の枚葉シートとなし、続いて、熱盤60を、クランパー20により押圧固定されている絵付シートS上に移動させて該絵付シートSを加熱軟化させるとともに、前記した真空吸引溝16、真空吸引孔17、真空吸引隙間15等で構成される真空吸引手段による真空吸引を行って、前記絵付シートSを雌型キャビティ13に沿って密着させるべく延伸させる(図1の状態)。
【0053】
しかる後、図6に示される如くに、雌型12を雄型25側に移動させて、雄型25と雌型12との型締めを行い、続いて、射出成形機からの熔融樹脂P’をランナー27からメインゲート28を介して、キャビティ13とコア部26とで形成される製品成形部9に射出充填するとともに、サブマリンゲート30、30及び製品外用ゲート35、35を介して製品外成形凹部36(及び狭窄部37)に射出充填する。
【0054】
このようにして製品成形部9及び製品外成形凹部36に射出充填された熔融樹脂P’が固化した後、前記雌型12と雄型25との型開きを行い、前記絵付シートSが接着積層された積層製品1を前記雄雌両成形型から取り出す(通常は、雄型25に付着した状態で雌型キャビティ13から引き離され、イジェクターピンや圧縮空気等の製品取出手段により雄型から引き離される)。このとき、前記サブマリンゲート30で固化したV字状樹脂部Qは、前記製品外用ゲート35から切り離された状態で引き出され、また、取り出された積層製品(半製品)Pは、前記製品成形部9で固化した製品部(射出樹脂成形体)Pに前記製品外成形凹部36で固化した非製品部Eが前記狭窄部37で固化した境界部Jを介して連設されており、かつ、それらの外表面には余剰部分Szを伴った絵付シートSが接着積層されている。
【0055】
次いで、前記メインゲート28で固化し柱状の樹脂部Dをその根元から切除(折り取る)し、さらに、図4に示される如くに、取り出された積層製品1における前記製品外成形凹部37で固化した非製品部Eを、それに連なる製品外用ゲート35で固化した柱状樹脂部Fを手で左右に振る等して、前記製品成形部9で固化した製品部Pに対して前記狭窄部37で折るようにして切り離す。かかる切り離しは、ハンドワークで容易に行える。この製品部Pと非製品部E、Fとの切り離し時には、前記絵付シートSにおける製品部分Spと余剰部分Szとの境界部分Sjに応力集中が生じるので、この応力集中を利用して、絵付シートのうちの、前記製品部Pに接着付随させるべき製品部分Spから余剰部分Szを切り離してトリミングを行う。
【0056】
このように本実施形態の射出成形同時絵付装置10では、雄雌両成形型12、25に予め製品成形部9に加えて製品外成形凹部36を設け、その製品成形部9と製品外成形凹部36との境界部分を狭窄部37となし、トリミング工程を、製品成形部9で固化した製品部Pに対して製品外成形凹部37で固化した非製品部Eを境界部Jで折るようにして切り離し、この切り離し時に絵付シートSの境界部分Sjに生じるに応力集中を利用して、前記製品部Pに接着付随させるべき製品部分Spから余剰部分Szを切り離すことにより行うようにされるので、別途に専用装置を設けることを要しないで、容易かつ適正に行うことができ、装置コスト、トリミングコストを可及的に低減できるとともに、生産効率の向上、省力化等も図ることができる。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明によれば、得るべき積層製品に付随させる必要のない余剰部分を切り取るトリミング工程を、別途に専用装置を設けることを要しないで、容易かつ適正に行うことができ、装置コスト、トリミングコストを可及的に低減できるとともに、生産効率の向上、省力化等も図え得る射出成形同時絵付装置及び方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る射出成形同時絵付装置の一実施形態の延伸工程、加熱軟化工程の説明に供される概略縦断面図。
【図2】図1に示される装置の射出成形工程の説明に供される概略縦断面図。
【図3】図1に示される装置の取出工程の説明に供される概略縦断面図。
【図4】図1に示される装置から取り出された積層製品のトリミング工程の説明に供される図。
【図5】従来の射出成形同時絵付装置の一例の延伸工程、加熱軟化工程の説明に供される概略縦断面図。
【図6】図5に示される装置の射出成形工程の説明に供される概略縦断面図。
【図7】図5に示される装置の取出工程の説明に供される概略縦断面図。
【符号の説明】
1 積層製品
9 製品成形部
10 射出成形同時絵付装置
12 雌型
13 キャビティ
14 パーティング面
15 真空吸引孔
20 クランパー
25 雄型
26 コア部
27 ランナー
28 メインゲート
30 サブマリンゲート
35 製品外用ゲート
36 製品外成形凹部
37 狭窄部
S 絵付シート(ラミネートシート)
P 製品部
E 非製品部
J 境界部
Sp 製品部分
Sz 余剰部分
Claims (2)
- 雄雌両成形型を備え、絵付シートを前記雌型のパーティング面上に供給するとともに、該絵付シートをクランプ手段により前記雌型のパーティング面上に押圧固定し、前記雌型と雄型の型締めを行い、前記キャビティ内に前記雄型に設けられたランナー及びゲートを通じて流動状態の樹脂を射出充填し、この樹脂が固化した後、前記雌型と雄型との型開きを行って、前記絵付シートが接着積層された積層製品を前記雄雌両成形型から取り出すようにされた射出成形同時絵付装置において、
前記雄雌両成形型における、絵付シートを接着付随させるべき製品部を成形するための製品成形部に隣接してその外周側及び/又は内周側に、前記流動状態の樹脂が射出充填される製品外成形凹部が形成されるとともに、前記製品成形部と前記製品外成形凹部との境界部分がそれらより薄厚の狭窄部とされており、さらに前記製品外成形凹部にサブマリンゲートを介して前記流動状態の樹脂を射出充填するようにされていることを特徴とする射出成形同時絵付装置。 - 請求項1に記載の装置を用いた射出成形同時絵付方法であって、絵付シートを雌型のパーティング面上に供給するシート供給工程と、絵付シートをクランプ手段により前記雌型のパーティング面上に押圧固定するクランプ工程と、前記雌型と雄型の型締めを行う型締工程と、前記キャビティ内に前記雄型に設けられたランナー及びゲートを通じて流動状態の樹脂を射出充填する射出成形工程と、前記製品外成形凹部にサブマリンゲートを介して前記流動状態の樹脂を射出充填する工程と、前記樹脂が固化した後、前記雌型と雄型との型開きを行って、前記絵付シートが接着積層された積層製品を前記雄雌両成形型から取り出す取出工程と、取り出された積層製品における前記製品外成形凹部を折り曲げるようにして切り離すとともに、前記絵付シートの境界部分に生じる応力集中を利用して、絵付シートのうちの、前記製品部に接着付随させるべき製品部分から余剰部分を切り離すトリミング工程と、を含んで構成されていることを特徴とする射出成形同時絵付方法。
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