JP4167382B2 - 炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素含有耐火物は,転炉や混銑車の内張り、溶鋼鍋及び溶銑鍋のスラグライン等に広く使用され、窯炉の長寿命化に貢献している。この材質は炭素による耐スラグ浸潤性と耐スポーリング性等の効果をあわせて、優れた耐用性を発揮しており、コスト削減を目的として、さらに高耐用化が望まれている。これまで、実験室における代表的な耐用性の評価方法としては、高周波誘導炉内張り法や回転侵食法がある。いずれも、高温下でスラグ及び鋼を溶融させ、耐火物に当該溶融物をある一定時間接触させて、耐火物の損耗量を比較して耐用性を評価する方法である。
例えば、特開平06−18520号公報では、高周波誘導炉に耐火物を内張りし、鋼及びスラグを加えて、耐用性の評価を行っている。また、特開平03−291550号公報では、鋼を封入したままで、炉を振動させ評価耐火物に摩耗損傷を生じさせたのちに、その損耗量で耐火物の耐用性を評価する方法が開示されている。
高周波誘導炉内張り法は、多くの試料を一度に比較試験でき、かつ、雰囲気制御も可能で実炉に近い溶損が再現できる場合が多い反面、設備が高価で準備にも手間がかかり、実験操作も簡単でないため、普及度では回転侵食法に劣る。
【0003】
回転侵食法は、鉄製のドラム内部に耐火物を内張りし、その内部でスラグや鉄を溶解させて耐火物と反応させる試験であり、適量の酸素及びプロパンの混合ガスを供給しながら、その熱で耐火物表面の温度を所定の試験温度とする。試料形状が比較的小さく、築炉と解体も容易で設備も簡単なことから広く行われている試験であるが、雰囲気制御が困難で、火炎と共に大気を巻き込むことから、実炉の場合よりも酸化による損傷が大きくなる傾向がある。特に、炭素含有耐火物では、それらが試料間の耐食性、耐摩耗性の相対的評価に及ぼす影響が極めて大きい。酸素/プロパン比の変更で、ある程度燃焼ガス組成は制御できるものの、火炎と共に大気を巻き込むことが避けられない。
【0004】
また、MgO−Cれんがの鱗状黒鉛の配向性は、れんがの特性に大きな影響を与えることは良く知られている(岩佐宇一、国米博之、沖川伸司:耐火物、33(1981),p.521)。大型高周波誘導炉を用いて、各種MgO−Cれんが試料を内張りし、それと同一の試料を回転可能なホルダーに取り付けスラグ/溶湯に装入し、試料を回転させて動的な浸食試験を行った例もある(池末明生、鹿野弘:耐火物、42(1990)、p.316)。この報告では、物理的な損傷要因が強くなるほど鱗状黒鉛の配向性の影響が強まると報告されているが、この方法では、耐火物内部に実炉に合った温度勾配が得られず、十分に実機使用条件を反映させることができない。
【0005】
炭素含有耐火物の耐酸化性の評価方法としては、酸化性雰囲気中で一定時間熱処理し、冷却後の試料の酸化脱炭層の厚さを測定する方法が一般的である。具体的には、耐火物技術協会編,耐火物手帳‘99,p.68に記載されているように、一片50mm程度以下の立方体、直方体あるいは円柱状の試料を酸化性雰囲気中で一定時間熱処理し、冷却後に試料を切断し、表面に生じた酸化脱炭層の厚さを計測し、その厚さの大小で耐酸化性の評価を実施する。
また、酸化脱炭に伴う試料の重量減少により評価する方法もある。試料間では酸素濃度が低下し、試料間隔が狭いと酸化の程度に大きなバラツキを生じるので、大気を供給しながら炉床を回転させる方法も提案されている。これらの方法では、熱処理炉内での試料の配置とガスの流れが、耐酸化性の評価の精度に対して大きな影響を与える。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法で、特に、所定の試験温度までに昇温する過程で、炭素の酸化による脱炭層が形成され、初期のスラグで脱炭層の部分が失われることが明らかになった。さらに、この昇温中に形成される脱炭層が最終的な損耗量に対する割合が大きく、炭素含有耐火物の相対的な評価を行うのは極めて困難であることがわかった。また、高周波誘導炉中で、試料をホルダーに取り付けて回転させる方法では、試料内部に実炉を反映した温度勾配を形成させることができず、高精度な評価を行うことは困難であることが明らかになった。また、耐酸化性の評価を行う各種の酸化試験においても、試料内部に実炉を反映した温度勾配を形成させることができず、高精度な評価を行うことは困難であることが明らかになった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、炭素含有耐火物の加熱昇温時の炭素の酸化を防止した高精度な耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法を提供することにある。本発明は、上記のような点を鑑みて、昇温中の炭素の酸化が耐火物の相対評価に及ぼす悪影響の問題を解決するために、加熱源と耐火物との間に保護板を導入することで空気と遮断し、昇温中に火炎や空気による炭素の酸化損耗を抑制する、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法を提供するものである。
【0008】
本発明の特徴とするところは、
(1)加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱した後、スラグ及び/又は溶鉄を耐火物容器内に挿入し、所定時間経過後の耐火物の残厚及び/又は損耗面積を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐食性の評価方法。
(2)加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱した後、摩耗媒体を耐火物容器内に装入したのちに、容器を回転させ、所定時間経過後の耐火物の残厚及び/又は損耗面積を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐摩耗性の評価方法。
(3)前記耐火物容器内に、摩耗媒体に加えてスラグ及び/又は溶鉄を装入することを特徴とする前記(2)記載の炭素含有耐火物の耐摩耗性の評価方法。
(4)横型ドラム内側に炭素含有耐火物を内張りし耐火物容器を形成し、加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱して所定温度まで昇温させ、前記保護板を除去又は焼却した後、下記の工程を少なくとも1回以上繰り返した後に、耐火物の残厚及び/又は損耗面積を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐食性又は耐摩耗性の評価方法。
スラグ、溶鉄及び摩耗媒体の1種又は2種以上を耐火物容器内に装入し、加熱しながら前記ドラムを回転させ、所定時間経過後に横型ドラムを傾転させ容器内の残留物を排出する工程。
(5)前記摩耗媒体の粒径を10〜100mmとすることを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項に記載の炭素含有耐火物の耐食性又は耐摩耗性の評価方法。
(6)加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱した後、所定時間加熱後に生成した耐火物の脱炭層厚み及び/又は脱炭部分の面積を測定する炭素含有耐火物の耐酸化性の評価方法。
(7)前記保護板が円筒状であり、前記円筒状保護板の内部から加熱することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法。
(8)前記炭素含有耐火物が、物理的及び/又は化学的性質に異方性を有し、異方性の異なる複数の方向に切り出した炭素含有耐火物試料で耐火物容器を形成させる(1)〜(7)のいずれか1項に記載の炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法。
(9)耐火物及び/又は保護板の表面温度を連続的に測定することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法。
ここで、保護板とは火炎などの熱源と耐火物の間に存在して、火炎の直接的な耐火物表面への作用や火炎と共に巻き込まれる大気による作用を遮断する役割を果たす板と定義する。摩耗媒体とは評価対象とする耐火物と接触させて耐火物を摩耗させる役割を果たす媒体と定義する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する酸化防止用保護板の材質は、鉄、アルミ、銅などから選ばれる一種あるいは併用でもよい。鉄、アルミ、銅の化学成分は特に限定するものではなく、合金系でも構わない。保護板に熱伝導率の高い材料を用いれば、れんが表面もほぼ所定の温度に達していると考えられる。本発明の効果を十分に発揮するには、耐熱性を考慮すると、融点が試験温度に近く、融点が試験温度±200℃以下が好ましい。融点が試験温度−200℃未満の場合、れんがの表面が火炎や空気と接触する時間が長くなり、表面に脱炭層が形成されることになる。融点が試験温度+200℃の場合、保護板を取り除くのに時間がかかるか、一度、保護板を溶融するまで加熱したのちに、温度を降下させて所定の試験温度にするまでの時間が長くなり、れんがの表面が火炎や空気と接触する時間が長くなり、表面に脱炭層が形成されることになる。
【0010】
本発明の対象とする耐火物は、C,Al2O3−C,Al2O3−SiC−C,MgO−C,Al2O3−MgO−C,MgO−SiC−C,MgO−CaO−C等、炭素を含有する耐火物であれば、特に限定するものではない。本発明は、酸化性雰囲気、Ar、N2、He、H2、真空下などの非酸化性雰囲気での加熱に限定することなく、空気、酸素の巻き込みも含めて耐火物が酸素と接触する可能性のある全ての加熱条件下で適用可能である。
【0011】
加熱手段は、バーナー加熱、誘導加熱、電気抵抗加熱、アーク加熱等いずれを用いても良い。また、バーナー加熱に際し使用するガスは、プロパン−酸素、メタン−酸素、コークス炉ガス等、いずれを用いても良い。前記(1)の発明においては、試験条件に応じ、1300〜1700℃に加熱したのち、従来法によりスラグ及び/又は銑鉄,鋼片を挿入し、所定時間経過後の損耗状態を測定することにより、耐火物の正確な耐食性の評価ができる。耐火物容器は縦型でも横型でも耐火物を間接的に加熱するのであれば、加熱中の耐火物の酸化が防止できるので、耐火物の正確な耐食性の評価ができる。スラグ及び/又は溶鉄(銑鉄、鋼片等)の装入後は、高周波誘導加熱など、公知の加熱手段により加熱しても良い。前記(2)の発明においては、摩耗媒体としては、その成分は、特に限定するものではないが、評価対象とする耐火物を構成する主要な原材料よりも硬度が高い材料を使用することが好ましい。また、試験温度よりも、融点が400℃以上高く、試験温度付近で安定な材料を用いることが好ましい。例えば、ジルコニアブロックやマグネシアの粗粒子などを使用すればよい。
【0012】
摩耗媒体の粒径は、特に限定するものではないが、粒径が10mm未満では、耐火物に十分な力を加えることができず、試験時間を長くすることが必要となり、100mmを超えると、評価対象の耐火物の種類に関わらず、摩耗量が大きくなるために、評価対象の試料間の相対的な比較が困難になるので、前記(5)の発明においては粒径10〜100mmであることが好ましい。試験条件に応じ、1300〜1700℃に加熱した後に、前記(3)の発明においては、前記の摩耗媒体とスラグ及び/又は溶鉄を装入し、所定時間経過後の耐火物厚み又は損耗面積を測定することにより、耐火物の正確な耐摩耗性の評価ができる。
【0013】
炉の回転速度は、特に限定するものではないが、通常0.5〜3rpm程度で行えばよい。0.5rpmより遅い場合、耐火物の摩耗量が小さく試験時間を長くすることが必要となり、3rpmより速いと、評価対象の耐火物の種類に関わらず、摩耗量が大きくなるために、評価対象の試料間の相対的な比較が困難になる場合があるので、前記の範囲とすることが好ましい。
【0014】
前記(4)の発明においては、横型ドラム内側に炭素含有耐火物を内張りし、加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱、昇温させ、保護板を除去又は焼却した後、スラグ、溶鉄及び摩耗媒体の1種又は2種以上を耐火物容器内に装入し、加熱しながら前記ドラムを回転させ、所定時間経過後に横型ドラムを傾転させ、容器内の残留物を排出する工程を少なくとも1回以上繰り返した後に耐火物の残厚及び/又は損耗面積を測定するものであり、耐火物の耐食性の評価を行うことができる。
【0015】
また、前記(6)の発明においては、加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱することにより、所定時間加熱後に生成した耐火物の脱炭層厚み及び/又は脱炭部分の面積を測定する方法なので、耐火物の耐酸化性を高精度で評価できる。
耐火物の脱炭層厚みとは、初期の厚みから試験後の非酸化物層の厚みを差し引いたものであり、また、脱炭部分の面積とは、画像解析により、脱炭層の部分の面積を近似的に求めたものと定義する。
【0016】
耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性の評価については、試験後に炉を解体し取り出した耐火物試料の残寸(耐酸化性の場合は非酸化層厚み)を元寸から差し引いて損耗量を求めることで、評価する。耐摩耗性については、損耗量が大きく、試験後の形状が直線状であるとは限らないので、試験後の試料を2次元の画像として取り込み、損耗した部分の面積を求めることで評価しても良い。耐食性及び耐酸化性についても、損耗量が大きい場合は、損耗した部分の面積を求めることで評価しても良い。もちろん、損耗部分の体積を求めて比較、評価することも本発明の範囲に属する。
【0017】
保護板の形状については、特に規定しないが、前記(7)の発明においては、組み込むれんがの枚数に相当する多角形の筒や円筒で、れんがとの隙間ができるだけ小さいことが好ましい。また、前記(8)の発明においては、異方性の影響の評価のために、物理的及び/又は化学的性質に異方性を有する炭素含有耐火物を異方性の異なる複数の方向に切り出した耐火物で耐火物容器を形成させることとする。物理的異方性とは、強度や弾性率に関するもので、化学的異方性とはスラグや溶鉄に対する耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性に関する異方性を表すことと定義する。評価条件の定量化を図るために、前記(9)の発明においては、放射温度計で保護板及び/又は耐火物の表面温度を測定することによって、安定した評価を行うことができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明を、MgO−Cれんがを対象として、回転侵食法による評価を行った実施例である。
本試験に用いた試料は純度98%の電融マグネシアクリンカーを77%,純度98%の鱗状黒鉛を20%含有し,フェノール樹脂をバインダーとして用い、金属Alを3%添加したMgO−Cれんがであり、転炉の内張り耐火物として広く用いられているものである。
【0019】
回転炉には、このMgO−Cれんがを図1の形状に切り出して試験片を作製し、図2のように試験片を8枚内張りして組み込んだ。a=67mm,b=41mm,c=48mm,d=114mmとした。内部には図2、図3のように直径150mm、厚さ2mmの中空の一般ガス配管用炭素鋼鋼管2を組み込み、その内部からバーナー3の燃焼により昇温させた。図中4はスラグ、5は充填材である。
燃焼ガスとして体積比でプロパン1:酸素5のものを用いた。炉体の回転数は2rpmで行った。1675℃に達したのちに、5分間温度が安定したところで、バーナー3を止め、炉を解体して試験片の残寸の測定を行った。保護板2となる鋼管又は後述する円管は、1675℃に達した時点では全て溶け落ちるため、評価に関しては全く問題はない。損耗寸法は、20mmおきに5点の残寸(脱炭層厚みの場合は非酸化層厚み)を測定し初期厚み(48mm)との差を算出して、その平均を求め、さらに、8枚の平均値と定義した。数値が小さいほど、酸化による脱炭脆弱層が少ない。
【0020】
図4は1675℃で安定したところで解体したときの、MgO−Cれんがの脱炭層の厚みの比較を示すグラフに関するものである。耐火物の温度は、放射温度計で測定した。実施例1、2では、保護板の利用及び保護板の材質に関する検討を行った。
実施例1では直径150mm,厚さ2mmの中空の鋼管を組み込んだものである。実施例2では、直径150mm,厚さ2mmのアルミニウム製の円管を組み込んだものである。比較例1は保護板を使用しない従来までの方法である。
その結果、保護板の融点と試験温度の差が120℃の実施例1では、昇温中の炭素含有耐火物表面の酸化による脱炭層の厚みを1mm以下に抑制し、比較例1と比べて大幅に酸化損耗を低減できたことがわかる。
保護板の融点と試験温度の差が900℃を超える実施例2では、脱炭層厚みは抑制できたものの、実施例1に比べると、その抑制効果は低いレベルであることがわかる。これらの試験結果が示すように、本発明例による試験方法では、大幅に初期の酸化損耗量を抑制し、全体に占める損耗量に対する初期損耗の影響を最小限にとどめることができた。
【0021】
図5は、耐火物の温度が1675℃で安定したのちに、スラグによる侵食試験を実施し、侵食試験終了後のMgO−Cれんがの溶損量の比較を示すグラフに関するものである。
実施例3では、実施例1の方法により、耐火物を加熱後、実際にスラグを導入して耐食性の評価試験を行った場合である。スラグの組成は、CaO=50.45,SiO2=16.85,MgO=7,Al2O3=2,MnO=3.5,FeO=20.2として、試験温度は1675℃、25分を1チャージとしてスラグ500gを入れ替え、合計20チャージ、8時間20分の試験を実施した。スラグの入れ替えは、横型ドラムを傾転させ排出する方法で行った。溶損量は、耐火物試料の残寸を元寸から差し引いて溶損量を求めた。スラグの加熱は、酸素/プロパンガスを用いたバーナーにより行った。7mm程度と、昇温中の脱炭層の厚みと比べても十分な損耗量があり、炭素含有耐火物の耐食性を高精度に評価することができた。
比較例2は、比較例1の加熱に引き続き実施例3と同じ条件でスラグを導入した際の評価結果であり、実施例3と比較し、大きく外れた溶損量を示し、高精度の評価ができなかった。
【0022】
図6は、耐火物の温度が1675℃で安定したのちに、炉内に粒径30〜70mmに整粒化したジルコニアブロックを投入し、摩耗試験を行い、試験終了後のMgO−Cれんがの摩耗量の比較を示すグラフに関するものである。実施例4では、実施例1の方法により耐火物を加熱後、30〜70mmに整粒化されたジルコニアブロック100gを投入し、25分を1チャージとして入れ替え、試験温度は1675℃、合計6チャージ、150分の耐摩耗性の試験を行った場合である。耐摩耗性試験中の耐火物の加熱は、酸素/プロパンガスを用いたバーナーにより行った。摩耗量は4.5mm程度と、昇温中の脱炭層厚みと比べても十分な損耗量があり、炭素含有耐火物の耐摩耗性を高精度に評価することができた。比較例3は比較例1の加熱に引き続き実施例4と同じ条件でジルコニアブロックを導入した際の評価結果であり、実施例4と比較し、大きく外れた損耗量を示し、高精度の評価ができなかった。
【0023】
図7は、耐火物の温度が1675℃で安定したのちに、3時間バーナーにより燃焼ガスを吹き込む酸化試験を行い、試験終了後のMgO−Cれんがの脱炭層厚みの比較を示すグラフに関するものである。
実施例5では、実施例1の方法により、試験温度が1675℃に安定して達したのちに、3時間、バーナーで燃焼ガスを吹き込み続ける耐酸化性の試験を行った場合である。炉内に内張りしたいずれの試料も脱炭層厚みが3mm前後で、バラツキの少ない高精度な耐酸化性の評価を行うことができた。
比較例4は、直径50mm,厚さ20mmのMgO−Cれんがの試験片を酸化性雰囲気の電気炉中で1675℃、3h熱処理し、冷却後に試料を切断し、表面に生じた酸化脱炭層の厚さを1試料につき8点計測した結果である。熱処理炉内での試料配置等が影響し、同一試料にも関わらず、バラツキが大きく、十分な評価を行うことができなかった。
【0024】
図8は、スラグや溶鉄等と接触する稼動面に対して、図9に示すように鱗状黒鉛の配向面に垂直方向の試料に加えて、鱗状黒鉛の配向面に平行な方向の試料も併せて組み込み、耐火物の温度が1675℃で安定したのちに、スラグによる侵食試験を実施し、侵食試験終了後のMgO−Cれんがの溶損量の比較を示すグラフに関するものである。
実施例6では、実施例3の方法により、鱗状黒鉛の配向面に垂直方向の試料に加えて、鱗状黒鉛の配向面に平行な方向の試料も併せて組み込み、耐火物の温度が1675℃で安定したのちに、スラグによる侵食試験を実施した場合である。バラツキは少なく、鱗状黒鉛の配向性に垂直方向の試料の方が明らかに、耐食性に優れることが示された。
比較例5は、比較例1の方法により実施例6と同じ条件で試験を行った場合であるが、昇温中の酸化のためにバラツキが大きく、高精度の評価が困難であった。
【0025】
図10は、炉を傾転させてスラグを排滓した場合と鉄製の棒で炉内のスラグを掻き出した場合の、Output MgO−Input MgO(%)を示す。1チャージは25分で、その時点でスラグを入れ替える。Output MgOは、スラグ入れ替え時にサンプリングしたスラグ中のMgO濃度で、InputMgOは投入するスラグ中のMgO濃度である。したがって、Output MgO−Input MgO(%)が各チャージにおける、MgO−CれんがからのMgOの溶出量に相当することになる。
実施例7では、実施例3の方法により行った場合で、スラグの投入・入れ替え時に、炉を傾転させてスラグを排滓した場合と比較例6として鉄製の棒で炉内のスラグを掻き出した場合の比較を行った。例として1〜4チャージ目の各チャージのOutput MgO−Input MgO(%)を示す。炉を傾転させてスラグを排滓することにより、各チャージ毎のMgO溶出量が正確に評価できる。
【0026】
【発明の効果】
本発明では、保護板により、火炎や火炎と共に巻き込まれる空気との接触を遮断することで、耐火物表面の酸化を抑制しているので、本発明による保護板を用いた試験方法では、所定の試験温度までの昇温中の酸化による脱炭、表面の組織の脆弱化を抑制することで、炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性及び耐酸化性を高精度に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転侵食法に用いた試料の形状を示す説明図。
【図2】回転侵食炉の概略を示す説明図。
【図3】回転侵食炉の概略を示す断面図。
【図4】1675℃で安定したところで解体したときの、MgO−Cれんがの脱炭層の厚みの比較を示す説明図。
【図5】スラグによる侵食試験を実施したのちの、MgO−Cれんがの溶損量の比較を示す説明図。
【図6】ジルコニアブロックによる摩耗試験を実施したのちの、MgO−Cれんがの摩耗量の比較を示す説明図。
【図7】バーナーによるガス吹き込むによる酸化試験を実施したのちの、MgO−Cれんがの脱炭層厚みの比較を示す説明図。
【図8】鱗状黒鉛の配向性がMgO−Cれんがの耐食性への影響を示す説明図。
【図9】鱗状黒鉛の配向性を示す説明図。
【図10】炉を傾転させてスラグを排滓させた場合と鉄製の棒でスラグを掻き出した場合の、耐火物からのMgO溶出量の推移の比較を示す説明図。
【符号の説明】
1 耐火物
2 保護板
3 バーナー
4 スラグ
5 充填材
Claims (9)
- 加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱した後、スラグ及び/又は溶鉄を耐火物容器内に挿入し、所定時間経過後の耐火物の残厚及び/又は損耗面積を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐食性の評価方法。
- 加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱した後、摩耗媒体を耐火物容器内に装入したのちに、容器を回転させ、所定時間経過後の耐火物の残厚及び/又は損耗面積を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐摩耗性の評価方法。
- 前記耐火物容器内に、摩耗媒体に加えてスラグ及び/又は溶鉄を装入することを特徴とする請求項2記載の炭素含有耐火物の耐摩耗性の評価方法。
- 横型ドラム内側に炭素含有耐火物を内張りし耐火物容器を形成し、加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱して所定温度まで昇温させ、前記保護板を除去又は焼却した後、下記の工程を少なくとも1回以上繰り返した後に、耐火物の残厚及び/又は損耗面積を測定することを特徴とする炭素含有耐火物の耐食性又は耐摩耗性の評価方法。
スラグ、溶鉄及び摩耗媒体の1種又は2種以上を耐火物容器内に装入し、加熱しながら前記ドラムを回転させ、所定時間経過後に横型ドラムを傾転させ容器内の残留物を排出する工程。 - 前記摩耗媒体の粒径を10〜100mmとすることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の炭素含有耐火物の耐食性又は耐摩耗性の評価方法。
- 加熱源と炭素含有耐火物の間に保護板を介して間接的に耐火物を加熱した後、所定時間加熱後に生成した耐火物の脱炭層厚み及び/又は脱炭部分の面積を測定する炭素含有耐火物の耐酸化性の評価方法。
- 前記保護板が円筒状であり、前記円筒状保護板の内部から加熱することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法。
- 前記炭素含有耐火物が、物理的及び/又は化学的性質に異方性を有し、異方性の異なる複数の方向に切り出した炭素含有耐火物試料で耐火物容器を形成させる請求項1〜7のいずれか1項に記載の炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法。
- 耐火物及び/又は保護板の表面温度を連続的に測定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭素含有耐火物の耐食性、耐摩耗性又は耐酸化性の評価方法。
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