JP4166685B2 - トナー用バインダー樹脂およびトナー - Google Patents

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Description

本発明は、トナー用バインダー樹脂およびトナーに関する。より詳しくは、ポリエステル樹脂を含有するトナー用バインダー樹脂およびトナーに関する。
オフィスオートメーションの発展に伴い、電子写真法を利用した複写機やプリンターの需要は急激に増加しており、それらの性能に対する要求も高度化している。一般に、電子写真法では、光感光体上に静電気的潜像を形成し、ついで潜像を、トナーを用いて現像し、紙などの被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールで加熱圧着する方法(熱ロール定着方式)が行われている。この熱ロール定着方式においては、消費電力低減等の経済性の向上、複写速度の高速度化、用紙等のカール防止等のため、より低温で定着可能な定着性の良好なトナーが要求されている。
一般に、トナーの定着性を改善する為には、溶融時のトナーの粘度を低下させる必要がある。その為、従来は使用するトナーバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)を低下させたり、分子量を小さくする方法が取られていた。しかしながらこのような方法では以下のような不都合を生じる。即ち、トナーは使用時あるいは貯蔵時に粉体として安定して存在すること、即ち耐ブロッキング性に優れていることが必要であるが、一般的にはガラス転移点の低い樹脂はこの耐ブロッキング性が不良となる。また、バインダー樹脂の分子量を小さくすると、粘度は低下するものの、同時に樹脂の凝集力も低下する為、定着ロールへのオフセット現象が発生する問題が生じる。オフセット現象を改善させる方法としては、トナー中にパラフィンワックス、低分子量ポリオレフィン等を離型剤として添加する方法がある。スチレン・アクリル系樹脂を用いたバインダー樹脂を使用する場合には特開昭49−65232号、特開昭50−28840号、特開昭50−81342号等の技術が開示されている。しかしながら、上記の方法ではオフセット現象を改善する反面、現像性やトナー粒子の耐ブロッキング性が不足する事があった。
一方、複写機、プリンターの高速化に伴い、帯電部位の高性能化の要求も高まってきている。すなわちトナーに対し、より高度な耐久性が必要とされてきており、長期耐刷安定性が必要になりつつある。そういった中で、従来主に用いられてきたスチレン−アクリル系樹脂に代えて、バインダー樹脂としてより高密度なポリエステル樹脂を用いたトナーが種々提案されている。(例えば、特開昭61−284771号公報、特開昭62−291668号公報、特公平7−101318号公報、特公平8−3663号公報、米国特許第4,833,057号明細書等)
ポリエステル樹脂と、ポリプロピレンやポリエチレン系のワックスあるいは植物性ワックスやモンタンワックス等、エステル基等の極性部を含有するワックスとの相溶性は、スチレン-アクリル系樹脂とワックスとのそれに比べ、一般的に低い傾向がある。この為、一般にポリエステル樹脂へのワックスの分散は困難、即ち一般的には、樹脂中でのワックスの分散粒径は大きく、トナーの生産性悪化、現像における耐久性劣化等、種々の問題が生じる事が報告されている。
また、特殊なワックスを使用することにより、トナー性能の改善を図ろうとする試みもなされており、特開昭59−174853号公報(特許文献1)、特開平10−186722号公報(特許文献2)、特開2000−1532号公報(特許文献3)等の報告がある。しかしながら、市場からはより高い性能のトナーを求められている。
このように、市場が要求するような低温定着性と耐オフセット性の両者の性能を十分満足させ、その他の性能も高いレベルにあるトナーを提供することは難しいのが現状である。更に高画質の複写画像を提供することが可能なトナーを提供するためには、上述のトナーに十分な電子写真特性を付与する必要がある。現在までに、複写画像の高画質,高精細化を図るために、種々の手法が試みられてはいるものの、上述の問題点を全て改善することができる手段は現在までのところ得られていなかった。
特開昭59−174853号公報 特開平10−186722号公報 特開2000−1532号公報
本発明は、このような従来のトナーの有する問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の課題は、低温定着性、耐オフセット性、さらに長期にわたって複写する場合でも、現像耐久性に優れたトナー用バインダー樹脂およびトナーを提供することにある。
本発明者らは上記の諸問題点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。 即ち本発明は、
(1)テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)0.1〜40質量%と、
テトラヒドロフラン可溶成分(A−S)99.9〜60質量%
とからなり、
テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)が、0.1〜20質量%の官能基含有ワックス(W)を有し、
テトラヒドロフラン可溶成分(A−S)が、0〜5質量%の官能基含有ワックス(W)を有し、かつ、
(A−I)成分中のワックス(W)含有率(α)と(A−S)成分中のワックス(W)含有率(β)において、(α)/(β)が2以上
であるポリエステル樹脂(A)を含むことを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(2) 好ましくは、ワックス(W)が、カルボキシル基および/または水酸基を含有するワックス(W−A)であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(3) 好ましくは、ワックス(W)が植物系ワックスおよび/またはモンタン酸エステルワックスであることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(4) 好ましくは、テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)が、多価イソシアネート由来の構造単位(UI1)を含有するポリエステル樹脂であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(5) 好ましくは、ポリエステル樹脂(A)が、
OH価が20〜90KOHmg/gであるポリエステル樹脂(a)10〜60質量%と、
OH価が10KOHmg/g以下であるポリエステル樹脂(b)40〜90質量%と、
多価イソシアネートとから得られるポリエステル樹脂(A1)であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(6) 好ましくは、ポリエステル樹脂(A)中のアルコール由来の構造単位の全てを100モル%として、下記(式1)の構造単位(AN1)が1モル以下であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
Figure 0004166685
(7) 上記のトナー用バインダー樹脂を含有するトナーである。
本発明のトナー用バインダー樹脂およびトナーは、ワックスがポリエステル樹脂に良好に分散する構成を取っていると考えられ、定着性、耐オフセット性、現像耐久性、粉砕性、耐ブロッキング性に優れたトナーを得ることが出来る。従って、この発明のトナー用バインダー樹脂およびトナーは、複写機およびプリンター等の高速化、低温定着化など、近年高まっている要求に充分に対応することができる。このため、本発明の工業的意義は大きい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるトナー用バインダー樹脂はポリエステル樹脂(A)を含んでいる。ポリエステル樹脂(A)は、テトラヒドロフランに不溶な成分(A−I)が0.1〜40質量%とテトラヒドロフランに可溶な成分(A−S)が99.9〜60質量%とからなる。好ましくはテトラヒドロフラン不溶成分(A−I)が0.5〜25質量%であり、テトラヒドロフラン可溶成分(A−S)が99.5〜75質量%である。テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)が0.1質量%未満では耐オフセット性が十分でない場合があり、40質量%を越えると定着性が不充分となることがある。
本発明におけるテトラヒドロフラン不溶成分(A−I)は官能基含有ワックス(W)を有するポリエステル樹脂である。上記の官能基とは、後述するポリエステル樹脂との反応性を有する物であれば制限はない。具体的にはカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。本発明における官能基含有ワックス(W)としては、カルボキシル基、水酸基を含有するワックス(W−A)であることが好ましい。
このワックス(W)は、テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)中に0.1〜20質量%含有される。好ましくは0.1〜15質量部であり、更に好ましくは、1〜10質量部である。
官能基を含有するワックス(W)は、ポリエステルと化学的な結合を形成するのに好適である。本発明に用いられる官能基を含有するワックス(W)として好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類やフィッシャートロプシュワックスやマイクロクリスタリンワックス等の変性物が挙げられる。上記の変性方法としては、酸化、マレイン酸などの二重結合を有するエステルとのグラフト反応等、公知の反応を制限無く用いることが出来る。
他の好ましいワックスとしては、エステル基を有するワックスが挙げられる。上記のワックスは、具体的には分子末端などに脂肪酸残基および水酸基残基を有しており、ポリエステルとの反応性を有すると考えられる。上記のエステル基を有するワックスとしては、植物性ワックスおよびモンタン酸エステルワックスが特に好ましい。植物性ワックスについてより具体的に例示すると、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、ホホバワックス等が上げられ、この中でもカルナバワックスがより好ましい。
上記の官能基を有するワックスは、ポリエステルや、多価カルボン酸、多価アルコール等を用い、重縮合反応や、必要に応じて解重合反応を組み合わせた、従来公知の手法によって、ポリエステル骨格中に導入することができる。官能基を有するワックスの中でも、エステル基を有するワックスはポリエステル原料との相溶性が良好であり、この為、ポリエステル骨格中に均一に導入することができると考えられるので好ましく用いられる。また、エステル基を有するワックスを導入したポリエステル樹脂(A1)は、後述するトナーとすると、より良好な性能を示すものと考えられる。
本発明におけるテトラヒドロフラン不溶成分(A−I)は、多価イソシアネート由来の構造単位(UI1)を有することが好ましい。多価イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート等が例示できる。特に好ましくはトリレンジイソシアネートである。イソシアネート化合物由来の構造単位は高い分子間結合力を有しており、良好な機械的耐久性を得ることができる効果があるので好ましく用いられる。
THF不溶成分(A−I)の多価イソシアネート由来の構造単位は、ポリエステル樹脂(A)の全ての多価カルボン酸、多価アルコールおよび必要に応じて用いられる多価アミン由来の構造単位の和を100モル%とした場合、0.1〜10モル%であることが好ましく、より好ましくは0.5モル%以上であり、7モル%以下である。多価イソシアネート化合物由来の構造単位が、0.1モル%未満の場合は、耐オフセット性が不足する場合があり、10モル%を超えると定着性が不足する事がある。
本発明におけるテトラヒドロフラン可溶成分(A−S)は0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜2質量%のワックス(W)を有するポリエステル樹脂である。ワックス(W)の含有量を上記範囲に制御することにより、良好な耐ブロッキング性を発現させることができる。
本発明において、テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)中のワックス(W)の含有率を(α)、テトラヒドロフラン可溶成分(A−S)中のワックス(W)の含有率を(β)とした時、(α)/(β)値が2以上である。上記の範囲にワックス(W)の含有率を制御することにより、即ちワックス成分を選択的にテトラヒドロフラン不溶成分に導入することにより、驚くべきことに良好な耐ブロッキング性、現像耐久性等を発現することができる。
なお、本発明におけるワックスの含有率は、例えば赤外分光法(IR)、紫外分光法、質量分析法、NMR等の公知の分析装置を用いて分析することにより求めることができる。なお、テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)中のワックスおよび/またはワックス残基の含有率に関しては、上記の分析方法に加え、例えばテトラヒドロフラン不溶成分(A−I)を加水分解反応で徹底的に分解した後に、上記の分析方法の他、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等を用いて分析することにより求めることができる。また、ポリエステル樹脂(A−I)、ポリエステル樹脂(A−S)の組成についても同様の方法で求めることができる。
本発明のポリエステル樹脂(A)は、上記のワックス(W)の他、多価カルボン酸やその酸無水物由来の構造単位と多価アルコール由来の構造単位を含んでいる。また、多価アミン由来の構造単位や前述のイソシアネート由来の構造単位を含有していても良い。
多価カルボン酸由来の構造単位とは具体的には、下記のような構造のものが好ましい。
Figure 0004166685


(Rは、炭素、水素、および必要に応じて窒素、酸素、燐、珪素から選ばれる元素からなる基である。)
多価アルコール由来の構造単位とは具体的には、下記のような構造のものが好ましい。
Figure 0004166685
(Rは、炭素、水素、および必要に応じて窒素、酸素、燐、珪素から選ばれる元素からなる基である。)
多価イソシアネート由来の構造単位とは具体的には、下記のような構造のものが好ましい。
Figure 0004166685
(Rは、炭素、水素、および必要に応じて窒素、酸素、燐、珪素から選ばれる元素からなる基である。)
多価アミン由来の構造単位とは具体的には、下記のような構造のものが好ましい。
Figure 0004166685
(Rは、炭素、水素、および必要に応じて窒素、酸素、燐、珪素から選ばれる元素からなる基である。
、Rは、炭素、水素、および必要に応じて窒素、酸素、燐、珪素から選ばれる元素からなる基、もしくは水素基である。)
上記の構造単位の中で、多価カルボン酸由来の構造単位と多価アルコール由来の構造単位とは、ポリエステル樹脂(A)中で例えば下記(式6)の様な構造を形成している。
Figure 0004166685
また、多価カルボン酸由来の構造単位と好ましく含まれる多価アミン化合物由来の構造単位とは、ポリエステル樹脂(A)中で例えば下記(式7)の様な構造を形成している。
Figure 0004166685
加えて、好ましく含まれる多価イソシアネート化合物由来の構造単位と多価アルコール由来の構造単位とは、ポリエステル樹脂(A)中で例えば下記(式8)の様な構造を形成している。
Figure 0004166685
上記の多価カルボン酸成分として具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類、これらジカルボン酸の無水物である無水フタル酸等が挙げられる。また、これらのジカルボン酸の低級アルキルエステルなどを挙げることができる。これらのエステルは、多価アルコールとのエステル交換反応によってポリエステルとすることが出来る。上記の多価のカルボン酸は2種以上を併用することが出来る。また、分子量を調整する目的で1価のカルボン酸および多価カルボン酸を用いることもできる。1価のカルボン酸で好ましいものとしては、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、分岐していても、不飽和基を有していてもよい。また、これら脂肪族1価カルボン酸は、ガラス転移点を下げる性質があるため、ガラス転移点調節のために用いることもできる。一方、安息香酸やナフタレンカルボン酸などの芳香族カルボン酸を用いてもよい。上記の1価のカルボン酸は2種以上を併用することが出来る。
また、多価アルコール成分として具体的には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、トリメチロールエタンシクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、フタリルアルコール、ビスフェノールF、ビスフェノールS誘導体、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等とビスフェノールF、ビスフェノールSとの反応物であるアルキレンオキサイドやビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物等の、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の多価アルコールが挙げられる。上記の多価アルコールは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
また、分子量を調整する目的で1価のアルコールおよび3価以上の多価アルコールを用いることもできる。1価のアルコールで好ましいものとしては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコールなどが挙げられ、分岐や不飽和基を有していてもよい。3価以上の多価アルコールは、分子量分布を広げる効果があるため好ましく用いられ、具体的には、トリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン等が挙げられ、特にトリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、トリメチロールエタンが好ましい。上記の1価のアルコールや3価以上の多価アルコールは2種以上を併用することが出来る。
上記の多価アミン化合物としては、ジアミンであることが好ましい。その具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、1-3ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、(メタ)キシレンジアミン等を挙げることができるが、メタキシレンジアミンが特に好ましい。
通常、定着速度を高めたり、低温で定着性の向上を図るには樹脂の低分子量化が効果的であるが、樹脂の低分子量化は、ガラス転移温度の低下を招くため、耐オフセット性や耐ブロッキング性に悪影響を及ぼすことがある。しかし、上記の多価アミン由来の構造を含む樹脂の場合は、低分子量でも高いガラス転移温度を実現することが容易で、耐オフセット性、耐ブロッキング性などの性能を維持しつつ、優れた定着性を達成することが出来るので好ましい。また、上記の多価アミン由来の構造を含む樹脂は、定着性の他、スメア性にも優れている。これらは、多価アミン化合物由来の構造単位を含有させることにより、ポリエステル樹脂(A)を高極性化することができ、その結果、被定着体である紙等との親和性が高まることにより、良好な紙への定着性やスメア性が発現されるものと考えられる。また、多価アミン化合物由来の構造単位を含有するポリエステル樹脂をトナーとした場合、トナー強度にも優れている。これは、樹脂の極性が高く、分子間力が強いことに起因すると考えられる。
上記の様な極性の高い樹脂は、ワックスとの分散性が低い場合があるが、本願のポリエステル樹脂(A)はワックス(W)を含有しているので、ワックスとの分散性にも優れている。
本発明のポリエステル樹脂(A)は、ワックス(W)と上記の多価カルボン酸、多価アルコール、必要に応じて多価アミン、多価イソシアネート等とを反応させる方法や、多価カルボン酸、多価アルコール、多価アミン等の重縮合で得られるポリエステル樹脂とワックス(W)と必要に応じて多価イソシアネートとを反応させる方法等で得ることが出来る。
この他、本発明におけるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合物を原料に用いることもできる。上記縮合物は、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)が上げられる。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、廃物より回収されたリサイクル品であっても良い。リサイクル品PETは、フレーク状に加工したものであり、重量平均分子量で30000〜90000程度のものであるが、PETの分子量分布、組成、製造方法、使用する際の形態等に制限されることはない。また、リサイクル品に制限されることはない。
上記のポリエステルを用いる方法としては、上記の多価カルボン酸、多価アルコール、多価アミン等と共に解重合を行った後、重縮合を行う方法や、重縮合と解重合とを同時に行う方法などを好適な例として挙げることが出来る。尚、本発明のおいて解重合反応とは、加水分解反応やエステル交換反応等、種々の重縮合の逆反応のことを指す。
本発明におけるポリエステル樹脂を得る際の重縮合および解重合反応は、窒素ガス等の不活性ガス中での、例えば無溶剤下高温重縮合、溶液重縮合等の公知の方法により行うことができる。反応に際しての酸モノマーとアルコールモノマーの使用割合は、前者のカルボキシル基に対する後者の水酸基の割合で0.7〜1.4であることが一般的である。
上記ポリエステル樹脂を得る際の重縮合反応および解重合反応において、用いられる触媒はジブチル錫オキサイド等の錫系触媒や三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒やチタン、ゲルマニウム、アルミニウムから選ばれる元素を含有する触媒等を例示することができる。本発明におけるより好ましい触媒はチタン系の触媒である。チタンを含有する触媒として、チタンアルコキシド、チタンアシレート、チタンキレート等を使用することがさらに好ましく、特に好ましくは、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2‐エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネートを使用することが好ましい。その際の添加量としては0.01質量%〜1.00質量%であることが好ましい。上記の触媒は、複数を同時に使用しても良く、また触媒の添加時期は、重合開始時に添加しても良く、また、重合途中で添加しても良い。
上記チタンを含有する触媒に相当するものの具体的商品名として、チタンアルコキシドとしては、オルガチックスTA‐25(テトラノルマルブチルチタネート)、TA‐30(テトラ(2‐エチルヘキシル)チタネート)、TA‐70(テトラメチルチタネート)等、チタンアシレートとしては、オルガチックスTPHS(ポリヒドロキシチタンステアレート)等、チタンキレートとしては、オルガチックスTC‐401(チタンテトラアセチルアセトナート)、TC‐200(チタンオクチレングリコレート)、TC‐750(チタンエチルアセトアセテート)、TC‐310(チタンラクテート)、TC‐400(チタントリエタノールアミネート)等(いずれも松本製薬工業株式会社製)、を例示することができるが、これに限定されるものではない。
本発明におけるポリエステル樹脂は、200℃〜270℃で解重合及び重縮合、もしくは重縮合反応によって製造することが好ましく、更には220℃〜260℃で製造することが好ましい。反応温度が200℃以下の場合、反応時間が長くなり、また、反応温度が270℃以上の場合、原料の分解が起こることがある。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の特に好ましい製造方法として、OH価が20〜90KOHmg/gであるポリエステル樹脂(a)10〜60質量%と、OH価が10KOHmg/g以下であるポリエステル樹脂(b)40〜90質量%と、多価イソシアネートとを反応させる方法が挙げられる。上記ポリエステル樹脂(a)は、数平均分子量が1000〜6000、ガラス転移点が0〜60℃である事が好ましく、ポリエステル樹脂(b)は、数平均分子量が1000〜5000、ガラス転移点が40〜80℃であることが好ましい。尚、本発明の分子量は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定された値である。
以下、本発明のポリエステル樹脂(a)について詳述する。
本発明のポリエステル樹脂(a)のOH価は20〜90KOHmg/gである。好ましくは、30KOHmg/g以上であり、80KOHmg/g以下である。本発明において、ポリエステル樹脂(a)は主として、後述する多価イソシアネートと反応して高分子量化すると考えられる。OH価が20KOHmg/g未満の場合には、多価イソシアネートとの反応量が少なくなり、すなわち上記のイソシアネート由来の構造が少なくなるため、トナーの耐現像耐久性が不充分となることがある。90KOHmg/gより大きくなると、ポリエステル樹脂(a)の分子量を高めることが難しく、耐オフセット性が不十分となることがある。
また、ポリエステル樹脂(a)の分子量は、数平均分子量で1000〜6000であることが好ましい。数平均分子量が1000未満の場合には、Tgが下がり過ぎてブロッキングしやすくなることがあり、また6000を超えると定着性が不十分となることがある。
さらに、ポリエステル樹脂(a)のガラス転移点は0〜60℃であることが好ましい。ガラス転移点が0℃未満では、耐ブロッキング性が不足することがあり、また、60℃を超えると定着性が不十分となることがある。
本発明における、ポリエステル樹脂(a)は、ポリエステル樹脂骨格の質量100質量%に対して、ワックス(W)を2〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の割合で、ポリエステルの骨格中に含有していることが好ましい。ワックス(W)の含有量が30モル%以上であると、トナーの耐ブロッキング性が逆に低下する場合がある。
ワックス(W)は、上記ポリエステルの骨格中において、分子鎖末端に結合していることが、良好なワックスの分散性効果を発現させる上でより好ましい。分子末端に結合したワックス成分は、側鎖に存在する場合に比べて、ワックス成分部分が分子レベルで動きやすいことにより、より良好なワックス分散効果を発現し得るものと考えられる。ポリエステル樹脂(a)は、多価イソシアネートと反応して、主にTHF不溶成分を形成するが、この場合でもワックスは主として分子鎖末端に存在する構造を維持すると考えられるので、優れたワックスとの分散性は維持される。このような分子構造を実現する為に、カルボン酸基や水酸基を有したワックスやエステル基を含有するワックスをポリエステル樹脂(a)製造の際に原料である多価カルボン酸、多価アルコール、ポリエステル樹脂などと反応させることが好ましい。より好ましくは、エステル基を含有するワックスが用いられる。上記、エステル基を含有するワックスは、縮合反応を利用してポリエステル樹脂に導入することが好適であることは既述の通りである。特にカルボキシル基や水酸基を分子鎖中に1つ有するワックスが好適であり、この具体的な例が、カルナバワックス等の植物性ワックスである。
次いで、本発明のポリエステル樹脂(b)について詳述する。
本発明のポリエステル樹脂(b)のOH価は10KOHmg/g以下であることが好ましい。本発明においてポリエステル樹脂(b)のOH価が上記範囲内に制御することにより、ポリエステル樹脂(b)は、後述する多価イソシアネートと反応することは少なく、同反応後、主にTHF可溶成分を形成する。OH価が10KOHmg/gを超えると後述する多価イソシアネートと反応し易くなりTHF可溶成分の現象をもたらすため、定着性が不充分となることがある。
また、ポリエステル樹脂(b)の分子量は、数平均分子量で1000〜5000であることが好ましい。数平均分子量が1000未満の場合には、Tgが下がり過ぎてブロッキングを起こしやすくなることがあり、また4000を超えると定着性が不十分となることがある。
さらに、ポリエステル樹脂(b)のガラス転移点は40〜80℃であることが好ましい。ガラス転移点が40℃未満では、耐ブロッキング性が不足することがあり、また、80℃を超えると定着性が不十分となることがある。
なお、OH価は、樹脂1g中のOH基をエステル化するのに必要な酸無水物を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を指す。より詳しくは、実施例の項に示した方法で決定される値である。
また、本発明のポリエステル樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)の比率は質量比で、(a):(b)が10:90〜60:40であり、特に10:90〜40:60とすることが好ましい。ポリエステル樹脂(a)の含有率が10質量%未満では、耐オフセット性が不十分となることがあり、ポリエステル樹脂(a)の含有率が60質量%を超えると定着性が不十分となることがある。
また、本発明の多価イソシアネートの使用量は、ポリエステル樹脂(a)のOH基とポリエステル樹脂(b)のOH基との合計のOH基1当量当り、NCO基として0.6〜1.6モル当量であり、特に0.8〜1.4モル当量となる量が好ましい。
多価イソシアネートの使用量が、NCO基として0.6モル当量未満の場合には、耐オフセット性が不充分となることがあり、1.6モル当量を超える場合には、反応すべきOH基が不足して未反応のNCO基が残り、安全性などに問題が生じることがある。
上記の多価イソシアネートとポリエステルとのウレタン伸長反応は、溶液法やバルク法等で製造でき、例えば以下のような方法で製造することができる。すなわち、ポリエステル樹脂(a)とポリエステル樹脂(b)との混合物を二軸押出混練機に一定速度でフィードし、同時に多価イソシアネートも一定速度で注入し、分散混合しながら100〜200℃で反応させる方法である。
勿論、ポリエステル樹脂(a)と多価イソシアネートとを接触、混練した後にポリエステル樹脂(b)と混練しても良いし、ポリエステル樹脂(b)と多価イソシアネートとを接触、混練した後にポリエステル樹脂(a)と混練しながら反応しても良い。また各成分を別々に2軸押出混練機にフィードすることも可能である。
本発明において、ポリエステル樹脂製造の際にはポリエステル樹脂骨格に固定されないワックス(W)、即ち未反応のワックス(W)が存在することがある。上記のウレタン伸長反応は、当該未反応ワックス(W)が多価イソシアネート等と反応し、ポリエステル骨格と結合する構造をとることが出来る。これもウレタン伸長反応が本発明で好適に用いられる理由の一つである。
本発明に係るポリエステル樹脂(A)中には、全アルコール由来の構造単位を100モル%として(式1)に示されるビスフェノールA由来の構造単位(AN1)が1モル%以下であることが好ましい。
Figure 0004166685
ポリエステル樹脂(a)、ポリエステル樹脂(b)でも同様である。従って、本発明のポリエステル樹脂(A)の製造時には、上記のカルボン酸成分およびアルコール成分として、全アルコールを100モル%として、ビスフェノールA骨格を有する化合物を1モル%以下の量使用することが好ましく、更には使用しないことが好ましい。ポリエステル樹脂(a)、ポリエステル樹脂(b)の製造でも同様である。上記のビスフェノールA骨格を有する化合物として具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールA−2プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA−3プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA−ポリプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA−2エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA−3エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA−ポリエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。一般に、上記ビスフェノールA骨格を有する化合物を使用しないと、ポリエステル中のエステル基数が増加することが多い。このエステル基数の増加によると推定される極性の上昇に伴い、トナーとした時の定着性能やスメア性等が向上する。一方でワックスの分散性は低下し、トナーとしての現像耐久性等の劣化を招く可能性があるが、本発明におけるワックス(W)を含有するポリエステル樹脂(A)を用いると、ワックスの分散性を高めることが出来るため、高い性能のトナーを得ることができる。
上記のようにして得られる本発明のトナー用バインダー樹脂の溶融温度は、110℃以上、180℃以下であることが好ましい。該範囲内の溶融温度を有することにより、定着性とオフセット性の双方の性能を満足するのに有利である。
本発明のトナー用バインダー樹脂には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックスや、ライスワックス、シュガーワックス、ウルシロウ、蜜蝋、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス等の天然ワックスを含有させても良い。本発明のポリエステル樹脂に導入したワックスおよび/またはワックス残基との相乗効果により、非常に良好な性能を示すことができる。その含有量は、トナー用バインダー樹脂中0〜10質量%の範囲であることが好ましい。また、上記のワックスの導入方法は任意であり、ポリエステル樹脂(A)とワックスとを押し出し機で混練する方法や、前記のウレタン伸長反応を上記ワックスの存在下に行う方法等が挙げられる。後者は、上記ワックスを分散させやすい方法なので特に好ましい。
また、本発明のトナー用バインダー樹脂中には、本発明の効果を損なわない範囲で上記ポリエステル樹脂の他に、スチレン系共重合体、ポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂を添加してもよい。その添加量はトナー用バインダー樹脂中0〜50質量%であることが好ましい。
以下、本発明のトナーについて詳述する。
本発明のトナーは、少なくとも先の本発明のトナー用バインダー樹脂、帯電調整剤(CCA)、着色剤、表面処理剤を含むものである。本発明のトナーは、キャリアと混合し現像を行う、所謂二成分系現像材用のトナーや、磁性粉をトナー中に含有した所謂、磁性一成分トナーや、トナーのみで現像を行う一成分トナー等のトナーとして用いることができる。なお、その際、本発明のトナ−用バインダー樹脂の量は、トナー中に50〜95質量%であることが好ましい。
着色剤は、従来公知のカーボンブラック、マグネタイト、有機顔料等を用いることができる。その添加量としては、トナー用バインダー樹脂100質量部に対して3〜15質量部であることが好ましい。
帯電調整剤としては、ニグロシン、4級アンモニウム塩や含金属アゾ染料をはじめとする公知の帯電調整剤を適宜選択して使用することができ、その使用量はトナー用バインダー樹脂100質量部に対して、通常用いられる0.1〜10質量部であることが本発明においても好ましい。
表面処理剤としては、シリカや酸価チタン等、公知のものを用いることができ、その添加量は、トナー用バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部で使用することが好適である。
本発明のトナーは、ポリオレフィンワックスを含んでも良く、その量はトナー用バインダー樹脂100質量部に対して0〜10質量部である。具体例としては、前述のポリオレフィンワックスが挙げられる。本発明のトナーは、前述した特定のワックスを含んだトナー用バインダー樹脂を用いているので、上記ポリオレフィンワックスの分散性が良好であり、より高い性能のトナーを容易に得ることが出来る。
これらの材料を含む本発明のトナーの製造方法としては、本発明のトナー用バインダー樹脂、着色剤、必要であればその他の添加剤を粉体混合機により充分に混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーといった混練機を用いて溶融、混練して各構成成分を充分に混合する。これを冷却後、粉砕、分級を行なって、通常8〜20μmの範囲の粒子を集め、粉体混合法により表面処理剤をまぶしてトナーを得る。
本発明により得られるトナーは種々の現像プロセス、例えばカスケード現像法、磁気ブラシ法、タツチダウン現像法等に用いることができるが、これに限定されるものではない。
また,本発明により得られるトナーは、オイルレス定着法以外の種々の定着方法にも用いることができる。具体的には、オイル塗布ヒートロール法、フラッシュ法、オーブン法、圧力定着法などに用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以降「部」は、特に断わらない限り質量%を表す。
本発明におけるトナー用バインダー樹脂の分子量および分子量分布の測定は、GPCを用いて求めたものである。測定は、市販の単分散標準ポリスチレンを標準とし、以下の条件で行った。
検出器; SHODEX RI-71S
溶剤; テトラヒドロフラン
カラム; KF-G 1本、KF-807L 3本、KF800D 1本を直列接続
(カラムは何れも昭和電工製)
流速; 1.0 ml/分
試料; 0.25 %THF溶液
なお、測定の信憑性は上記の条件で測定したNBS706ポリスチレン試料(Mw=288,000, Mn=137,000, Mw/Mn=2.11)のMw/Mnが、2.11±0.10となることにより確認し得る。
本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、DSC−20(セイコー電子工業社製)によって測定した。試料約10mgを−20℃から100℃まで10℃/分で昇温し、得られたカーブのベースラインと吸熱ピークの傾線の交点よりTgを求める。この昇温測定の前に、一旦樹脂を200℃程度まで昇温し、5分間保持した後、即座に常温(25℃)まで降温する操作を行い、樹脂の熱履歴を統一することが望ましい。
本発明において、THF不溶成分量とTHF可溶成分量は、以下のようにして求められる。約2.5gの樹脂と約47.5gのTHFを用いて約5質量%の溶液を調製する。(以下、上記溶液の濃度を以下”RC”と示す。) すなわち上記の混合物を25±3℃で12時間攪拌し、可溶成分を完全に溶解させる。次いで得られた溶液を16時間静置する。不溶部と上澄みとが分離した後、上澄み液を濃度分析のために分析する。(以下、上澄み液の濃度を”SC”と示す。この値は上澄み液5gを採取し、150℃で1時間乾燥してテトラヒドロフランを除去し、残った樹脂の質量の測定値から計算される。)
THF不溶成分とTHF可溶成分の値は、RC値とSC値とから下記の式によって求められる。
THF可溶成分比率 = (SC/RC) × 100 (%)
THF不溶成分比率 = [(RC−SC)/RC]× 100 (%)
次に、該溶液から上澄み液をデカンテーションによって除き、残査をTHFで数回洗浄する。その残査を減圧下、40℃で乾燥してTHF不溶成分が得られる。
また、本発明における酸価は、樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数をいう。酸価の測定は、中和滴定法により求めた。試料5gをキシレン/ジメチルホルムアミド=1/1(質量比)の混合溶剤50ccに溶解させ、指示薬としてフェノールフタレイン/エタノール溶液を数滴加えた後、1/10規定 KOH水溶液で滴定を行った。試料溶液の色が無色から紫色に着色した点を終点とし、この際の滴定量と試料質量から酸価(KOHmg/g)を算出した。
また、本発明におけるOH価の測定は、下記の酸無水物による逆滴定により行った。樹脂2gに、別途調製したフタル化試薬(ピリジン500cc/フタル酸70g/イミダゾール10gの割合で調製)5ccを加え、溶解させた後、100℃で1時間静置させる。その後、該樹脂溶液に水1cc、テトラヒドロフラン70cc、フェノールフタレイン/エタノール溶液を数滴加え、0.4規定NaOH水溶液で滴定を行った。試料溶液の色が無色から紫色に着色した点を終点とし、この際の滴定量と試料質量からOH価(KOHmg/g)を算出した。
また、以下に本発明で行ったトナーの評価方法を記載する。
1、定着性
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した後、この未定着画像を市販の複写機を、定着温度、定着速度の任意制御が可能なように改造した熱ローラー定着装置を用いて定着させた。熱ロールの定着速度は200 mm/secとし、熱ローラーの温度を5℃ずつ変化させてトナーの定着を行った。得られた定着画像を綿布により、0.5 Kgfの荷重をかけ、10回摩擦させ、画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。各温度での画像濃度の変化率が80%以上となった最低の定着温度をもって最低定着温度とし、下記の規定に従って評価した。なお、ここに用いた熱ローラ定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものである。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃,相対湿度55%)とした。
1 ; 最低定着温度 ≦ 160℃
2 ;180℃ ≧ 最低定着温度 > 160℃
3 ; 最低定着温度 > 180℃
2、耐オフセット性
耐オフセット性の評価は、上記最低定着温度の測定に準じた方法で行う。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した後、トナー像を転写して上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行い、次いで白紙の転写紙を同様の条件下で当該熱ローラ定着装置に送って転写紙上にトナー汚れが生ずるか否かを目視観察する。この操作を、前記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた最低の設定温度をもってオフセット発生温度とし、下記の規定に従って評価した。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃,相対湿度55%)とした。
1 ; オフセット発生温度 ≧ 230℃
2 ; 230℃ > オフセット発生温度 ≧ 210℃
3 ; 210℃ > オフセット発生温度
3、現像耐久性
市販の複写機(東芝製、プレシオ5560)により連続して100,000枚にわたる実写テストを行った後、画像濃度、画質の劣化を確認し、下記の規定に従って評価した。
1 : 劣化が確認されなかった
2 : 劣化が確認された
4、耐ブロッキング性
温度50℃、相対湿度55%の環境条件下に70時間放置した後、150メッシュのふるいにトナーを5gのせ、パウダーテスター(細川粉体工学研究所)の加減抵抗機の目盛りを2にして、3分間振動を与える。振動後のメッシュ上に残った重量を測定し、残存重量比を求め、下記の規定に従って評価した。
1 : 20%より小さい
2 : 20%以上35%以下
3 : 35%より大きい
(ポリエステル樹脂製造例1)
5リットルの四つ口フラスコに還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び撹拌装置を取り付け、フレーク状のリサイクルPET(重量平均分子量:75000)をPET中のエチレングリコール由来の構造単位で55mol%、ネオペンチルグリコール(NPG)30mol%、トリエチレングリコール(TEG)8mol%、トリメチロールプロパン(TMP)7mol%、テレフタル酸(TPA)33mol%、カルナバワックス(精製カルナバ1号;(株)加藤洋行輸入品)5質量%、チタンラクテート(オルガチックスTC-310;(株)マツモト交商社)0.2質量%を仕込み、フラスコ内に窒素を導入しながら240℃で解重合及び脱水重縮合を行った。なお、本発明の製造例で示すmol%は、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパンの量およびエチレングリコール由来の構造単位の量の総和を100モル%とした時の相対値であり、また、ワックス成分における質量%は全原料、すわなちPET、多価カルボン酸、多価アルコール、ワックス、触媒の総量を100質量%とした際の質量%を示す。反応生成物の酸価が所定値に達したところでフラスコより抜き出し冷却、粉砕して樹脂(a−1)を得た。なお、得られた樹脂は透明であった。仕込み組成および得られた樹脂(a−1)の物性を表1に示す。
(ポリエステル樹脂製造例2〜7)
表1に示した仕込み組成とした以外はポリエステル樹脂製造例1に準じて、樹脂(a−2)〜樹脂(a−7)を製造した。得られたポリエステル樹脂の物性を表1に併せて示す。
(ポリエステル樹脂製造例8)
5リットルの四つ口フラスコに還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び撹拌装置を取り付け、フレーク状のリサイクルPET(重量平均分子量:75000)をPET中のエチレングリコールユニット単位で70mol%、(NPG)30mol%、イソフタル酸(IPA)32mol%、安息香酸6mol%、テトラノルマルブチルチタネート(オルガチックスTA-25;(株)マツモト交商社)0.3質量%を仕込み、フラスコ内に窒素を導入しながら240℃で解重合及び脱水重縮合を行った。反応生成物の酸価が所定値に達したところでフラスコより抜き出し冷却、粉砕してポリエステル樹脂(b−1)を得た。仕込み組成および得られたポリエステル樹脂(b−1)の物性を表2に示す。
(ポリエステル樹脂製造例9、10)
表2に記載の仕込み組成としたポリエステル樹脂製造例8に準じて、樹脂(b−2)および樹脂(b−3)を製造した。得られたポリエステル樹脂の物性を表2に併せて示す。
Figure 0004166685
Figure 0004166685
(実施例1〜5および比較例1〜5)
実施例1を代表例として具体的に記述する。樹脂2〜10について、即ち実施例2〜5および比較例1〜5については、樹脂(a−1)〜樹脂(a−7)と樹脂(b−1)から樹脂(b−3)の配合比やトリレンジイソシアネート添加量およびトナー化の際に添加したワックスの種類および量を表3に示した条件に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行って樹脂およびトナーを得た。樹脂のテトラヒドロフラン不溶成分量、テトラヒドロフラン不溶成分中のワックス成分含有量(α)、テトラヒドロフラン可溶成分中のワックス成分含有量(β)、α/β比の値およびトナー特性評価を表3、表4に併せて示した。
樹脂a−1を25質量部、樹脂b−1を75質量部およびトリレンジイソシアネートを2.0質量部とを、170℃において二軸押出機で混練反応し樹脂1を得た。得られた樹脂のTHF不溶成分は、9質量%であった。
100質量部の樹脂1に対してカーボンブラック(MA−100・三菱化学社製)6質量部、帯電調整剤(BONTRON E-84;オリエント化学工業社製)1.5質量部、カルナバワックス(カルナバ1号;(株)加藤洋行輸入品)3.0質量部をヘンシェルミキサーにて分散混合した後、二軸押出機・PCM−30(池貝鉄工社製)にて120℃で溶融混練して塊状のトナー組成物を得た。このトナー組成物をハンマーミルにて粗粉砕した。さらに、ジェット粉砕機(日本ニューマチック社製IDS2型)にて微粉砕し、ついで気流分級して平均粒径8μmのトナー微粉末を得た。次いで、上記トナ−微粉末100質量部に対して、疎水性シリカ(R−972、アエロジル社製)を0.3質量部となる割合で外部から添加し、これをヘンシェルミキサーにより混合してトナ−を得た。更に、このトナーの性能評価を実施した。
Figure 0004166685
Figure 0004166685

Claims (7)

  1. テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)0.1〜40質量%と、
    テトラヒドロフラン可溶成分(A−S)99.9〜60質量%
    とからなり、
    テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)が、0.1〜20質量%の官能基含有ワックス(W)を有し、
    テトラヒドロフラン可溶成分(A−S)が、0〜5質量%の官能基含有ワックス(W)を有し、かつ、
    (A−I)成分中のワックス(W)の含有率(α)と(A−S)成分中のワックス(W)の含有率(β)において、(α)/(β)が2以上
    であるポリエステル樹脂(A)を含むことを特徴とするトナー用バインダー樹脂。
  2. ワックス(W)が、カルボキシル基および/または水酸基を含有するワックス(W−A)であることを特徴とする請求項1記載のトナー用バインダー樹脂。
  3. ワックス(W)が植物系ワックスおよび/またはモンタン酸エステルワックスであることを特徴とする請求項1記載のトナー用バインダー樹脂。
  4. テトラヒドロフラン不溶成分(A−I)が、多価イソシアネート由来の構造単位(UI1)を含有するポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1記載のトナー用バインダー樹脂。
  5. ポリエステル樹脂(A)が、
    OH価が20〜90KOHmg/gであるポリエステル樹脂(a)10〜60質量%と、
    OH価が10KOHmg/g以下であるポリエステル樹脂(b)40〜90質量%と、
    多価イソシアネートとから得られるポリエステル樹脂(A1)であることを特徴とする請求項1記載のトナー用バインダー樹脂。
  6. ポリエステル樹脂(A)中のアルコール由来の構造単位の全てを100モル%として、下記(式1)の構造単位(AN1)が1モル以下であることを特徴とする請求項1記載のトナー用バインダー樹脂。
    Figure 0004166685
  7. 請求項1記載のトナー用バインダー樹脂を含有するトナー。
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